JP2019203063A - ポリアミド樹脂ペレット及びその製造方法、並びに、ポリアミド組成物の製造方法 - Google Patents

ポリアミド樹脂ペレット及びその製造方法、並びに、ポリアミド組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】非晶性半芳香族ポリアミド及び結晶性ポリアミドを含むポリアミド組成物のペレット製造時におけるペレットの着色及びストランド切れを抑制することができるポリアミド樹脂ペレットを提供する。【解決手段】ポリアミド樹脂ペレットは、ジカルボン酸単位とジアミン単位とからなるポリアミドを含むポリアミド樹脂ペレットであって、前記ジカルボン酸単位の総モル量に対してイソフタル酸単位を60モル%以上含み、前記ジアミン単位の総モル量に対して炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位を50モル%以上含み、前記ポリアミド樹脂ペレットの総質量に対して前記ポリアミドを90質量%以上含み、前記ポリアミド樹脂ペレットの総質量に対する水分含有率が2500ppm以上7500ppm以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂ペレット及びその製造方法、並びに、ポリアミド組成物の製造方法に関する。
ポリアミド6(以下、「PA6」と略記する場合がある)及びポリアミド66(以下、「PA66」と略記する場合がある)等に代表されるポリアミドは、成形加工性、機械物性又は耐薬品性に優れていることから、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用等の各種部品材料として広く用いられている。
ポリアミド6Iはイソフタル酸成分を導入した非晶性半芳香族ポリアミドであり、ポリアミド66は結晶性脂肪族ポリアミドであり、これらポリアミドを含むポリアミド組成物は、ポリアミド樹脂の成形品の耐候安定性及びアルコール性塩溶液への耐性を向上できることが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
このような2種以上のポリアミド種を含むポリアミド組成物を製造するためには、それぞれのポリアミド樹脂ペレット及びガラス繊維等の添加剤を押出機によって溶融混練し、ポリアミド組成物のペレットを製造する方法が一般的に用いられる。
特開昭63−205353号公報
しかし、特許文献1に開示された非晶性半芳香族ポリアミドと結晶性脂肪族ポリアミドとを含むポリアミド組成物の製造においては、製造されたポリアミド組成物に着色がみられる場合があった。また、ポリアミド組成物のペレット製造時にストランド切れが生じる場合があった。そのため、ポリアミド組成物の色調及び製造安定性に課題を有していた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、非晶性半芳香族ポリアミド及び結晶性ポリアミドを含むポリアミド組成物のペレット製造時におけるペレットの着色及びストランド切れを抑制することができるポリアミド樹脂ペレット及びその製造方法、並びに、前記ポリアミド樹脂ペレットを用いたポリアミド組成物の製造方法を提供する。
発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率を特定の範囲とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係るポリアミド樹脂ペレットは、ジカルボン酸単位とジアミン単位とからなるポリアミドを含むポリアミド樹脂ペレットであって、前記ジカルボン酸単位の総モル量に対してイソフタル酸単位を60モル%以上含み、前記ジアミン単位の総モル量に対して炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位を50モル%以上含み、前記ポリアミド樹脂ペレットの総質量に対して前記ポリアミドを90質量%以上含み、前記ポリアミド樹脂ペレットの総質量に対する水分含有率が2500ppm以上7500ppm以下である。
前記ポリアミドの結晶化エンタルピーが4J/g未満であってもよい。
上記第1態様に係るポリアミド樹脂ペレットは、前記ジカルボン酸単位の総モル量に対して前記イソフタル酸を75モル%以上含んでもよい。
上記第1態様に係るポリアミド樹脂ペレットは、前記ジカルボン酸単位の総モル量に対して前記イソフタル酸を100モル%含んでもよい。
前記ポリアミドがポリアミド6Iであってもよい。
本発明の第2態様に係る製造方法は、上記第1態様に係るポリアミド樹脂ペレットの製造方法であって、ジカルボン酸とジアミンとを重合して、前記ポリアミドを得る重合工程と、前記ポリアミドの溶融物をストランドとして押し出し、押し出されたストランドを、冷却及びカッティングすることにより、ポリアミドのペレットを得るペレット形成工程と、前記ペレットを乾燥する乾燥工程と、を含む方法であり、前記乾燥工程において、温度又は時間を調整することで、前記ペレットの水分含有率を2500ppm以上7500ppm以下に調整する。
本発明の第3態様に係る製造方法は、上記第1態様に係るポリアミド樹脂ペレットの製造方法であって、ジカルボン酸とジアミンとを重合して、前記ポリアミドを得る重合工程と、前記ポリアミドの溶融物をストランドとして押し出し、押し出されたストランドを、冷却及びカッティングすることにより、ポリアミドのペレットを得るペレット形成工程と、を含み、前記ペレット形成工程の後、前記ペレットを乾燥させる乾燥工程を実質的に含まない方法である。
本発明の第4態様に係るポリアミド組成物の製造方法は、上記第1態様に係るポリアミド樹脂ペレットと、結晶性ポリアミドとを含む原料成分を溶融混練する溶融混練工程と、前記溶融混練工程で得た溶融混練物をストランドとして押し出し、押し出されたストランドを、冷却及びカッティングすることにより、ポリアミド組成物のペレットを得るペレット形成工程と、を含む方法である。
上記態様のポリアミド樹脂ペレット及びその製造方法によれば、非晶性半芳香族ポリアミド及び結晶性ポリアミドを含むポリアミド組成物のペレット製造時におけるペレットの着色及びストランド切れを抑制することができる。上記態様のポリアミド組成物の製造方法は、前記ポリアミド樹脂ペレットを用いることで、得られるポリアミド組成物のペレットの着色及びストランド切れを抑制することができる。
≪ポリアミド樹脂ペレット≫
本実施形態のポリアミド樹脂ペレットは、ジカルボン酸単位とジアミン単位とからなるポリアミドを含む。
また、上記ポリアミドにおいて、ジカルボン酸単位の総モル量に対してイソフタル酸単位を60モル%以上含み、ジアミン単位の総モル量に対して炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位を50モル%以上含む。
また、本実施形態のポリアミド樹脂ペレットは、ポリアミド樹脂ペレットの総質量に対して上記ポリアミドを90質量%以上含む。
また、本実施形態のポリアミド樹脂ペレットは、ポリアミド樹脂ペレットの総質量に対する水分含有率が2500ppm以上7500ppm以下である。
なお、本明細書において、「ポリアミド」とは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体を意味する。
本実施形態のポリアミド樹脂ペレットは、上記構成を有することで、非晶性半芳香族ポリアミド及び結晶性ポリアミドを含むポリアミド組成物のペレット製造時におけるペレットの着色及びストランド切れを抑制することができる。
なお、ポリアミド組成物のペレットの着色は、具体的には、例えば、後述する実施例に記載のとおり、ポリアミド組成物のペレットのb値を色差計で測定することで、評価することができる。
<ポリアミド>
本実施形態のポリアミド樹脂ペレットに含まれるポリアミドにおいて、ジカルボン酸単位及びジアミン単位の合計モル量に対する、イソフタル酸単位及び炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位の含有量は、80モル%以上100モル%以下が好ましく、90モル%以上100モル%以下がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
なお、本明細書において、ポリアミドの各構成単位(ポリアミドを構成する所定の単量体に由来する単位)の割合は、例えば、核磁気共鳴分光法(NMR)等により測定することができる。
次いで、ポリアミドの各構成単位についての詳細を以下に説明する。
[ジカルボン酸単位]
ポリアミドにおいて、ジカルボン酸単位の総モル量に対してイソフタル酸単位を60モル%以上含み、75モル%以上100モル%以下含むことが好ましく、80モル%以上100モル%以下含むことがより好ましく、90モル%以上100モル%以下含むことがさらに好ましく、100モル%で含むことが特に好ましい。
ポリアミドにおいて、ジカルボン酸単位の総モル量に対するイソフタル酸単位の含有量が上記下限値以上であることにより、機械的性質、特に吸水剛性、高温使用下での剛性(以下、「熱時剛性」と称する場合がある)、流動性、表面外観性等を同時に満足する、ポリアミド組成物を得ることができる。
また、ポリアミドにおいて、ジカルボン酸単位として、イソフタル酸単位以外のジカルボン酸単位を含んでもよい。イソフタル酸単位以外のジカルボン酸単位としては、例えば、イソフタル酸単位以外の芳香族ジカルボン酸単位、脂肪族ジカルボン酸単位、脂環族ジカルボン酸単位等が挙げられる。
(イソフタル酸単位以外の芳香族ジカルボン酸単位)
イソフタル酸単位以外の芳香族ジカルボン酸単位を構成する芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基を有するジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の芳香族基は、無置換でもよく、又は、置換基を有していてもよい。
置換基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基、炭素数7以上10以下のアリールアルキル基、ハロゲン基、炭素数1以上6以下のシリル基、スルホン酸基及びその塩等が挙げられる。ハロゲン基としては、例えば、クロロ基、ブロモ基等が挙げられる。スルホン酸基の塩としては、スルホン酸ナトリウム基等が挙げられる。
イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸として具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の無置換又は所定の置換基で置換された炭素数8以上20以下の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸単位を構成する芳香族ジカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(脂肪族ジカルボン酸単位)
脂肪族ジカルボン酸単位を構成する脂肪族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジグリコール酸等の炭素数3以上20以下の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸単位を構成する脂肪族ジカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(脂環族ジカルボン酸単位)
脂環族ジカルボン酸単位(以下、「脂環式ジカルボン酸単位」と称する場合がある)を構成する脂環族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数が3以上10以下の脂環構造を有する脂環族ジカルボン酸が挙げられ、中でも、炭素数が5以上10以下の脂環構造を有する脂環族ジカルボン酸が好ましい。
このような脂環族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。中でも、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸単位を構成する脂環族ジカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、脂環族ジカルボン酸の脂環族基は、無置換でもあってもよく、又は、置換基を有していてもよい。置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1以上4以下のアルキル基等が挙げられる。
中でも、イソフタル酸単位以外のジカルボン酸単位としては、芳香族ジカルボン酸単位が好ましく、炭素数が6以上である芳香族ジカルボン酸がより好ましい。
このようなジカルボン酸を用いることにより、ポリアミド組成物の機械的性質、特に吸水剛性、熱時剛性、流動性、表面外観性等がより優れる傾向にある。
また、ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸としては、上記ジカルボン酸として記載の化合物に限定されるものではなく、上記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。
ここで「ジカルボン酸と等価な化合物」とは、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位と同様のジカルボン酸単位となり得る化合物をいう。このような化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物等が挙げられる。
(3価以上の多価カルボン酸単位)
また、ポリアミドは、必要に応じて、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸単位をさらに含んでもよい。
3価以上の多価カルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[ジアミン単位]
ポリアミドにおいて、ジアミン単位の総モル量に対して炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位を50モル%以上含む。
炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン等の炭素数4以上10以下の直鎖状飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
中でも、炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位としては、炭素数4以上10以下の直鎖状飽和脂肪族基を有するジアミン単位が好ましく、炭素数6以上10以下の直鎖状飽和脂肪族基を有するジアミン単位がより好ましく、ヘキサメチレンジアミン単位がさらに好ましい。
ポリアミドがこのようなジアミン単位を有することにより、機械的性質、特に吸水剛性、熱時剛性、流動性、表面外観性等により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
また、ポリアミドにおいて、ジアミン単位として、炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位以外のジアミン単位を含んでもよい。炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位以外のジアミン単位としては、例えば、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位以外の脂肪族ジアミン単位、脂環族ジアミン単位、芳香族ジアミン単位等が挙げられる。
(炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位以外の脂肪族ジアミン単位)
炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位以外の脂肪族ジアミン単位を構成する脂肪族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン等の炭素数2以上3以下及び炭素数11以上20以下の直鎖状飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
脂肪族ジアミン酸単位を構成する脂肪族ジアミンは、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(脂環族ジアミン単位)
脂環族ジアミン単位を構成する脂環族ジアミン(以下、「脂環式ジアミン」と称する場合がある)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
脂環族ジアミン酸単位を構成する脂環族ジアミンは、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(芳香族ジアミン単位)
芳香族ジアミン単位を構成する芳香族ジアミンとしては、芳香族基を含有するジアミンであれば以下に限定されるものではないが、例えば、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
芳香族ジアミン酸単位を構成する芳香族ジアミンは、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(3価以上の多価脂肪族アミン単位)
また、ポリアミドは、必要に応じて、例えば、ビスヘキサメチレントリアミン等の3価以上の多価脂肪族アミン単位をさらに含んでもよい。
3価以上の多価脂肪族アミン単位は、1種のみ単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[ポリアミドの好適な例]
本実施形態のポリアミド樹脂ペレットに含まれるポリアミドとしては、ポリアミド6I、9I、又は、10Iであることが好ましく、ポリアミド6Iであることがより好ましい。
[ポリアミドのポリマー末端]
ポリアミドのポリマー末端としては、特に限定されないが、以下のように分類され、定義することができる。
すなわち、1)アミノ末端、2)カルボキシル末端、3)封止剤による末端、4)その他の末端である。
1)アミノ末端は、アミノ基(−NH基)を有するポリマー末端であり、原料のジアミン単位に由来する。
2)カルボキシル末端は、カルボキシル基(−COOH基)を有するポリマー末端であり、原料のジカルボン酸に由来する。
3)封止剤による末端は、重合時に封止剤を添加した場合に形成される末端である。封止剤としては、上述した末端封止剤が挙げられる。
4)その他の末端は、上述した1)〜3)に分類されないポリマー末端であり、アミノ末端が脱アンモニア反応して生成した末端や、カルボキシル末端から脱炭酸反応して生成した末端等が挙げられる。
[末端封止剤]
ポリアミドの末端は、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよい。
このような末端封止剤は、上記ジカルボン酸と上記ジアミンとから、ポリアミドを製造する際に、分子量調節剤としても添加することができる。
また、末端封止剤により末端封止されたポリアミドを含有するポリアミド組成物は、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、剛性により優れる傾向にある。
末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等が挙げられる。酸無水物としては、例えば、無水フタル酸等が挙げられる。
中でも、末端封止剤としては、モノカルボン酸又はモノアミンが好ましい。ポリアミドの末端が末端封止剤で封鎖されていることにより、熱安定性により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
末端封止剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、ポリアミドの末端に存在し得るアミノ基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等が挙げられる。脂環族モノカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。芳香族モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等が挙げられる。
モノカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、ポリアミドの末端に存在し得るカルボキシル基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族モノアミン、脂環族モノアミン、芳香族モノアミン等が挙げられる。脂肪族モノアミノとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等が挙げられる。脂環族モノアミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。芳香族モノアミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等が挙げられる。
モノアミンは、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[ポリアミドの物性]
(ポリアミドの結晶化エンタルピーΔH)
ポリアミドの示差走査熱量計によって20℃/minで測定した場合の融解熱(結晶化エンタルピーΔH)は、機械的性質、特に吸水剛性、熱時剛性の観点から、4J/g未満が好ましい。すなわち、本実施形態のポリアミド樹脂ペレットに含まれるポリアミドは、非晶性ポリアミドであることが好ましい。
ポリアミドの結晶化エンタルピーΔHの測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
[ポリアミドの含有量]
本実施形態のポリアミド樹脂ペレット中のポリアミドの含有量は、ポリアミド樹脂ペレットの総質量に対して、90質量%以上であり、95質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。ポリアミドの含有量が上記下限値以上であることにより、ポリアミド製造時の生成される反応副生成物等の夾雑物の含有量がより低減されており、本実施形態のポリアミド樹脂ペレットが奏する効果をより顕著に発揮することができる。
<ポリアミド樹脂ペレットの製造方法>
本実施形態のポリアミド樹脂ペレットは、例えば、重合工程と、ペレット形成工程と、乾燥工程と、を含む方法等により製造することができる。
重合工程では、ジカルボン酸とジアミンとを重合して、前記ポリアミドを得る。
ペレット形成工程では、前記ポリアミドの溶融物をストランドとして押し出し、押し出されたストランドを、冷却及びカッティングすることにより、ポリアミドのペレットを得る。
乾燥工程では、前記ペレットを乾燥する。また、乾燥工程において、温度又は時間を調整することで、前記ペレットの水分含有率を2500ppm以上7500ppm以下に調整することができる。
また、別法としては、本実施形態のポリアミド樹脂ペレットは、例えば、重合工程と、ペレット形成工程と、を含み、ペレット形成工程の後、乾燥工程を実質的に含まない方法等により製造することができる。ここでいう、重合工程、ペレット形成工程及び乾燥工程とは、上記製造方法において記載された工程と同様の作業を行う工程である。また、ここでいう「乾燥工程」を実質的に含まないとは、乾燥工程を全く行わない、又は、ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率が変化しない程度の乾燥しか行わないことを意味する。
ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率は、ストランドを冷却する際の水浸漬時間、ストランドをカットして得られたペレットを遠心分離により脱水させる脱水工程の有無、ストランドをカットして得られたペレットを乾燥させる乾燥工程の有無、ペレットの乾燥温度及び時間等を調整することにより調整することができる。
例えば、ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率を高くする場合には、例えば、水浸漬時間を長くすること、ペレットを脱水する脱水工程を行わないこと、脱水工程における遠心分離機の回転数を低くすること、脱水時間を短くすること、乾燥工程を行わないこと、乾燥温度を低くすること、及び、乾燥時間を短くすることからなる群より選ばれる少なくとも一つを行うことで達成できる。
次いで、本実施形態のポリアミド樹脂ペレットの製造方法の各工程について、以下に詳細を説明する。
[重合工程]
重合工程において、ジカルボン酸の添加量とジアミンの添加量とは、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中のジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、ジカルボン酸全体のモル量1に対して、ジアミン全体のモル量は、0.9以上1.2以下であることが好ましく、0.95以上1.1以下であることがより好ましく、0.98以上1.05以下であることがさらに好ましい。
重合方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸と、ジアミン単位を構成するジアミンと、必要に応じてラクタム単位及びアミノカルボン酸単位のうち少なくともいずれか一つを構成するラクタム及びアミノカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つと、を重合して重合体を得る方法等が挙げられる。
また、重合工程において、ポリアミドの重合度を上昇させる重合度上昇工程を、さらに含むことが好ましい。また、重合工程において、必要に応じて、得られた重合体の末端を末端封止剤により封止する封止工程を含んでいてもよい。
具体的な重合方法としては、例えば、以下に例示するように種々の方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸−ジアミン塩、ジカルボン酸とジアミンとの混合物の水溶液、又は、これらの水を溶媒とした懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と称する場合がある)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合及び固相重合法」と称する場合がある)。
3)ジカルボン酸−ジアミン塩、又は、ジカルボン酸とジアミンとの混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と称する場合がある)。
4)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分とを用いて重合させる方法(以下、「溶液法」と称する場合がある)。
中でも、熱溶融重合法を含む重合方法が好ましく、熱溶融重合法によりポリアミドを製造する際には、重合が終了するまで、溶融状態を保持することが好ましい。溶融状態を保持する方法としては、ポリアミドの組成に適した重合条件で製造することが挙げられる。例えば、熱溶融重合法における重合圧力を14kg/cm以上25kg/cm以下(ゲージ圧)に制御し、加熱を続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm)になるまで、30分以上かけながら降圧する方法等が挙げられる。
重合形態としては、特に限定されず、バッチ式でもよく、連続式でもよい。
重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置を用いることができ、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等が挙げられる。
以下、重合方法として、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造する方法を具体的に示すが、重合方法は、これに限定されない。
まず、例えば、ポリアミドの原料成分(ジカルボン酸、ジアミン、及び、必要に応じて、ラクタム及びアミノカルボン酸のうち少なくともいずれか一つ)を、約40質量%以上60質量%以下含有する水溶液を、110℃以上180℃以下の温度、及び、約0.035MPa以上0.6MPa以下(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65質量%以上90質量%以下に濃縮して濃縮溶液を得る。
次いで、得られた濃縮溶液をオートクレーブに移し、当該オートクレーブにおける圧力が約1.2MPa以上2.2MPa以下(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。
その後、オートクレーブにおいて、水及びガス成分のうち少なくともいずれか一つを抜きながら圧力を約1.2MPa以上2.2MPa以下(ゲージ圧)に保ち、温度が約220℃以上260℃以下に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。
オートクレーブ内の圧力を大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。
[ペレット形成工程]
重合工程後に得られたポリアミドをオートクレーブ等反応器に入れた状態で、窒素等の不活性ガスで加圧し、オートクレーブからポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。押し出されたストランドを、冷却及びカッティングすることにより、ポリアミドのペレットが得られる。このとき、ストランドを冷却する際の水浸漬時間を適宜調整することで、ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率を上記範囲内に調整することができる。
[乾燥工程]
ペレット形成工程後に得られたペレットを乾燥する。なお、上述したように、ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率がすでに上記範囲内である場合、乾燥工程を行わなくてもよい。
乾燥温度及び乾燥時間としては、ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率を上記範囲内に調整できる温度及び時間とすることができる。具体的には、例えば60℃以上100℃以下程度の温度で、例えば1時間以上12時間以下程度の時間、ペレットを乾燥することで、ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率を上記範囲内に調整できる。
[その他の工程]
本実施形態のポリアミド樹脂ペレットの製造方法において、上記重合工程、上記ペレット形成工程及び上記乾燥工程に加えて、その他の工程を含んでもよい。その他の工程としては、例えば、脱水工程等が挙げられる。
脱水工程は、上記ペレット形成工程の後であって、上記乾燥工程の前に行うことができる。脱水工程では、具体的には、例えば、遠心分離機等を用いて、ペレットを脱水させる。脱水時間及び遠心分離機の回転数を適宜調整することで、ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率を上記範囲内に調整することができる。
<ポリアミド樹脂ペレットの特性>
ポリアミド樹脂ペレットの特性である重量平均分子量Mw(A)及び水分含有率は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
[重量平均分子量Mw(A)]
ポリアミド樹脂ペレットの分子量の指標としては、重量平均分子量Mw(A)を利用できる。なお、重量平均分子量Mw(A)は、後述する実施例に記載のとおり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
[水分含有率]
ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率は2500ppm以上7500ppm以下であり、3000ppm以上7000ppm以下が好ましく、4000ppm以上6000ppm以下がより好ましい。
ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率が上記下限値以上であることで、ポリアミド樹脂ペレットと結晶性ポリアミドとを含むポリアミド組成物のペレットを製造する際に、ポリアミド組成物のペレットの着色をより効果的に抑制できる。
ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率が上記上限値以下であることで、ポリアミド樹脂ペレットと結晶性ポリアミドとを含むポリアミド組成物のペレットを製造する際に、押出時のストランド切れをより効果的に防止することができる。
ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率を上記範囲内に制御する方法としては、ポリアミド樹脂ペレットの製造時に、水で冷却を行い、冷却時間を調節する方法、又は、ペレット化した後に乾燥温度や時間を調節する方法が挙げられる。
ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率は、後述する実施例に記載のとおり、例えば、カールフィッシャー法水分計を用いて測定することができる。
≪ポリアミド組成物の製造方法≫
本実施形態のポリアミド組成物は、上記(A)ポリアミド樹脂ペレットと、(B)結晶性ポリアミドとを含み、例えば、溶融混錬工程と、ペレット形成工程とを含む方法等により製造できる。
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法は、上記(A)ポリアミド樹脂ペレットを用いることで、得られるポリアミド組成物のペレットの着色及びストランド切れを抑制することができる。
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法の各工程について、以下に詳細を説明する。
<製造工程>
[溶融混錬工程]
溶融混錬工程では、上記(A)ポリアミド樹脂ペレットと、(B)結晶性ポリアミドとを含む原料成分を押出機で溶融混練する。押出機の設定温度を、得られるポリアミド組成物の融解ピーク温度Tm2+30℃以下とすることが好ましい。
(A)ポリアミド樹脂ペレットの配合量は、得られるポリアミド組成物に含まれる樹脂の総質量に対して、5.0質量%以上50.0質量%以下とすることができ、10.0質量%以上45.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以上40.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以上37.5質量%以下がさらに好ましく、22.5質量%以上35.0質量%以下が特に好ましく、22.5質量%以上30.0質量%以下が最も好ましい。ポリアミド樹脂ペレットの配合量を上記範囲とすることで、(A)ポリアミド樹脂ペレットの水分含有率によるポリアミド組成物の分子量の低下をより効果的に抑制することができる。
上記(A)ポリアミド樹脂ペレットと、(B)結晶性ポリアミドとを含む原料成分を溶融混練する方法としては、例えば、(A)ポリアミド樹脂ペレットと、(B)結晶性ポリアミドと、その他の原料とをタンブラー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、溶融混練機に供給し混練する方法、又は、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性ポリアミドに、サイドフィーダーからその他の原料を配合する方法等が挙げられる。
ポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよく、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250℃以上350℃以下程度であることが好ましい。
溶融混練時間は、0.25分以上5分以下程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロール等の溶融混練機を用いることができる。
[ペレット形成工程]
ペレット形成工程は、上記「ポリアミド樹脂ペレットの製造方法」における「ペレット形成工程」に記載の作業と同様の作業を行うことができる。なお、上記(A)ポリアミド樹脂ペレットを用いることで、ペレット形成工程において、得られるポリアミド組成物のペレットの着色及びストランド切れを抑制することができる。
[その他の工程]
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法は、上記溶融混錬工程及び上記ペレット形成工程に加えて、その他の工程を含んでもよい。その他の工程としては、例えば、脱水工程、乾燥工程等が挙げられる。
脱水工程は、上記ペレット形成工程の後に行うことができ、遠心分離機等を用いて、得られたペレットを脱水する。脱水時間及び遠心分離機の回転数等は、ポリアミド組成物の使用用途に応じて、適宜調整することができる。
乾燥工程は、上記ペレット形成工程又は上記脱水工程の後に行うことができ、得られたペレットを乾燥する。乾燥温度及び乾燥時間は、ポリアミド組成物の使用用途に応じて、適宜調整することができる。
<ポリアミド組成物の構成成分>
本実施形態の製造方法で得られるポリアミド組成物は、上記(A)ポリアミド樹脂ペレットと、(B)結晶性ポリアミドとを含む。
[(B)結晶性ポリアミド]
本明細書において、「結晶性ポリアミド」とは、示差走査熱量計によって20℃/minで測定した場合の結晶の融解熱(結晶化エンタルピーΔH)が4J/g以上であるポリアミドである。
(B)結晶性ポリアミドとして具体的には、以下に制限されないが、例えば、(B−a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(B−b)ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(B−c)ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びに、これらの共重合物等が挙げられる。結晶性ポリアミドとしては、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
上記(B−a)ポリアミドに用いられるラクタムは、以下に制限されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタム等が挙げられる。
上記(B−b)ポリアミドに用いられるω−アミノカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸等が挙げられる。
上記ラクタム又は上記ω−アミノカルボン酸としては、それぞれ1種単独で縮合させてもよく、2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
上記(B−c)ポリアミドに用いられるジアミン(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、直鎖状飽和脂肪族ジアミン、分岐状飽和脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン等が挙げられる。直鎖状飽和脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン等が挙げられる。分岐状飽和脂肪族ジアミンとしては、例えば、2−メチルペンタンジアミン、2−エチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。芳香族ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン等が挙げられる。シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン、シクロオクタンジアミン等が挙げられる。
上記(B−c)ポリアミドに用いられるジカルボン酸(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。脂環式ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
上記した単量体としてのジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ1種単独で縮合させてもよく、2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
なお、(B)結晶性ポリアミドは、必要に応じて、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸単位をさらに含んでもよい。3価以上の多価カルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
((B)結晶性ポリアミドの好適な例)
(B)結晶性ポリアミドとして、具体的には、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及び、これらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
中でも、(B)結晶性ポリアミドとしては、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド610(PA610)、又は、ポリアミド612(PA612)が好ましい。PA66は、耐熱性、成形性及び靭性に優れていることから、自動車部品に適した材料である。また、PA610等の長鎖脂肪族ポリアミドは、耐薬品性に優れる。
((B)結晶性ポリアミドの重量平均分子量)
(B)結晶性ポリアミドの分子量の指標としては、重量平均分子量Mw(B)を利用できる。なお、重量平均分子量Mw(B)の測定は、後述する実施例に記載のとおり、GPCを用いて測定することができる。
本実施形態の製造方法で得られるポリアミド組成物は、上記(A)ポリアミド樹脂ペレット及び上記(B)結晶性ポリアミドに加えて、(C)無機充填材、(D)造核剤、(E)潤滑剤、(F)安定剤、(G)その他のポリマー、(H)亜リン酸金属塩及び次亜リン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに、(I)亜リン酸エステル化合物からなる群から選ばれる1種以上の成分を含んでもよい。
[(C)無機充填材]
(C)無機充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、クレー、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、アパタイト等が挙げられる。これら(C)無機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、機械的強度をより一層向上させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維及びクレーからなる群より選択される1種以上が好ましい。また、中でも、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム及びクレーからなる群より選択される1種以上がより好ましい。
(C)無機充填材がガラス繊維又は炭素繊維である場合、数平均繊維径(d)が3μm以上30μm以下が好ましく、3μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上12μm以下がさらに好ましく、3μm以上9μm以下が特に好ましく、4μm以上6μm以下が最も好ましい。
数平均繊維径を上記上限値以下とすることにより、靭性、及び成形品の表面外観により優れたポリアミド組成物とすることができる。一方、数平均繊維径を上記下限値以上とすることにより、コスト面及び粉体のハンドリング面と物性(流動性等)とのバランスにより優れたポリアミド組成物が得られる。さらに、数平均繊維径を3μm以上9μm以下とすることにより、振動疲労特性及び摺動性により優れたポリアミド組成物とすることができる。
(C)無機充填材がガラス繊維又は炭素繊維である場合、その断面が真円状でもよく、扁平状でもよい。かかる扁平状の断面としては、以下に制限されないが、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形及び長手方向の中央部がくびれた繭型が挙げられる。ここで、本明細書における「扁平率」は、当該繊維断面の長径をd2及び該繊維断面の短径をd1とするとき、d2/d1で表される値をいう(真円状は、扁平率が約1となる)。
(C)無機充填材がガラス繊維又は炭素繊維である場合、中でも、優れた機械的強度をポリアミド組成物に付与できる観点から、数平均繊維径(d)が3μm以上30μm以下であり、重量平均繊維長(l)が100μm以上750μm以下であり、且つ、数平均繊維径(d)に対する重量平均繊維長(l)に対する比、すなわち、アスペクト比(l/d)が10以上100以下であるものが好適である。なお、ここでいう「数平均繊維径(d)」は、繊維断面の長径(上記d2)の平均値であり、後述する算出方法を用いて求められる。
また、板状成形品の反りを低減させ、並びに、耐熱性、靭性、低吸水性及び耐熱エージング性を向上させる観点から、扁平率は、1.5以上が好ましく、1.5以上10.0以下がより好ましく、2.5以上10.0以下がさらに好ましく、3.0超6.0以下が特に好ましく、3.1以上6.0以下が最も好ましい。扁平率が上記範囲内であることにより、他の成分との混合、混練や成形等の処理の際に、破砕をより効果的に防止でき、成形品にとって所望の効果がより充分に得られるようになる。
扁平率が1.5以上のガラス繊維や炭素繊維の太さは、以下に制限されないが、該繊維断面の短径d1が0.5μm以上25μm以下及び該繊維断面の長径d2が1.25μm以上250μm以下であることが好ましい。該繊維断面の短径d1が3.0μm以上25μm以下及び該繊維断面の長径d2が1.25μm以上250μm以下であることがより好ましい。短径(d1)及び長径(d2)が上記範囲内あることにより、繊維の紡糸の困難性をより有効に回避でき、且つ、樹脂(ポリアミド)との接触面積を減少させることなく成形品の強度をより向上させることができる。
扁平率が1.5以上のガラス繊維や炭素繊維は、例えば、特公平3−059019号公報(参考資料1)、特公平4−013300号公報(参考資料2)、特公平4−032775号公報(参考資料3)等に記載の方法を用いて製造することができる。特に、底面に多数のオリフィスを有するオリフィスプレートにおいて、複数のオリフィス出口を囲み、該底面より下方に延びる凸状縁を設けたオリフィスプレート、又は、単数若しくは複数のオリフィス孔を有するノズルチップの外周部先端から下方に延びる複数の凸状縁を設けた異形断面ガラス繊維紡糸用ノズルチップのいずれかを使用して製造された、扁平率が1.5以上のガラス繊維が好ましい。これらの繊維状強化材は、繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
また、本明細書における「数平均繊維径(d)」及び「重量平均繊維長(l)」は、以下の方法により求められることができる。まず、ポリアミド組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理する。当該処理後の残渣分から、100本以上のガラス繊維(又は炭素繊維)を任意に選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらのガラス繊維(又は炭素繊維)の繊維径(長径)を測定することにより、数平均繊維径を求めることができる。加えて、倍率1000倍で撮影した、上記100本以上のガラス繊維(又は炭素繊維)についてのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより、重量平均繊維長を求めることができる。
また、ガラス繊維又は炭素繊維は、シランカップリング剤等により表面処理を施してもよい。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミノシラン類、メルカプトシラン類、エポキシシラン類、ビニルシラン類等が挙げられる。
アミノシラン類としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
メルカプトシラン類としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらシランカップリング剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、シランカップリング剤としては、アミノシラン類が好ましい。
また、ガラス繊維又は炭素繊維については、さらに、集束剤を含んでもよい。
集束剤としては、例えば、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びに、これらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。これら集束剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、得られるポリアミド組成物の機械的強度の観点から、集束剤としては、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。また、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
ガラス繊維又は炭素繊維は、公知の当該繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、上記の集束剤を当該繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することにより、連続的に反応させて得られる。
繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維の総質量に対し、固形分率として、0.2質量%以上3質量%以下程度を付与(添加)することが好ましく、0.3質量%以上2質量%以下程度を付与(添加)することがより好ましい。
集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維の総質量に対し、固形分率として上記下限値以上であることにより、当該繊維の集束をより効果的に維持することができる。一方、集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維の総質量に対し、固形分率として上記上限値質量%以下であることにより、得られるポリアミド組成物の熱安定性をより向上させる。
ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよいし、ストランドを乾燥した後に切断してもよい。
ガラス繊維及び炭素繊維以外の無機充填材としては、成形品の強度、剛性や表面外観を向上させる観点から、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維又はクレーが好ましい。ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム又はクレーがより好ましい。ウォラストナイト、カオリン、マイカ又はタルクがさらに好ましい。ウォラストナイト、マイカ又はタルクが特に好ましい。これらの無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ガラス繊維及び炭素繊維以外の無機充填材の平均粒径は、靭性、及び成形品の表面外観を向上させる観点から、0.01μm以上38μm以下が好ましく、0.03μm以上30μm以下がより好ましく、0.05μm以上25μm以下がさらに好ましく、0.10μm以上20μm以下がよりさらに好ましく、0.15μm以上15μm以下が特に好ましい。
上記のガラス繊維及び炭素繊維以外の無機充填材の平均粒径を上記上限値以下とすることにより、靭性、及び成形品の表面外観により優れたポリアミド組成物とすることができる。一方、平均粒径を上記下限値以上とすることにより、コスト面及び粉体のハンドリング面と物性(流動性等)とのバランスにより優れたポリアミド組成物が得られる。
ガラス繊維及び炭素繊維以外の、ウォラストナイト等の針状の無機充填材に関しては、数平均粒子径(以下、単に「平均粒子径」と称する場合がある)を平均粒径とする。また、断面が円でない場合は、その長さの最大値を(数平均)繊維径とする。
針状の無機充填材の数平均粒子長(以下、単に「平均粒子長」と称する場合がある)については、上述の数平均粒子径の好ましい範囲、及び、下記の数平均粒子径(d)に対する数平均粒子長(l)のアスペクト比(l/d)の好ましい範囲から算出される数値範囲が好ましい。
針状の形状を持つものの、数平均粒子径(d)に対する数平均粒子長(l)のアスペクト比(l/d)に関しては、成形品の表面外観を向上させ、且つ、射出成形機等の金属性パーツの磨耗を防止する観点から、1.5以上10以下が好ましく、2.0以上5以下がより好ましく、2.5以上4以下がさらに好ましい。
また、ガラス繊維及び炭素繊維以外の無機充填材は、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤等を用いて表面処理を施してもよい。
シランカップリング剤としては、上記ガラス繊維及び炭素繊維において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、シランカップリング剤としては、アミノシラン類が好ましい。
このような表面処理剤は、予め無機充填材の表面に処理してもよいし、ポリアミドと無機充填材とを混合する際に添加してもよい。また、表面処理剤の添加量は、無機充填材の総質量に対して、0.05質量%以上1.5質量%以下が好ましい。
(C)無機充填材の含有量は、(A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性アミドの合計100質量部に対して、5質量部以上250質量部以下が好ましく、30質量部以上250質量部以下がより好ましく、50質量部以上240質量部以下がさらに好ましく、50質量部以上200質量部以下が特に好ましく、50質量部以上150質量部以下が最も好ましい。
(C)無機充填材の含有量を、(A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性アミドの合計100質量部に対して、上記下限値以上とすることにより、得られるポリアミド組成物の強度及び剛性をより向上させる効果が発現される。一方、(C)無機充填材の含有量を、(A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性アミドの合計100質量部に対して、上記上限値以下とすることにより、押出性及び成形性により優れたポリアミド組成物を得ることができる。
[(D)造核剤]
(D)造核剤とは、添加により以下の(1)〜(3)のうち少なくともいずれか1つの効果が得られる物質のことを意味する。
(1)ポリアミド組成物の結晶化ピーク温度を上昇させる効果。
(2)結晶化ピークの補外開始温度と補外終了温度との差を小さくする効果。
(3)得られる成形品の球晶を微細化又はサイズの均一化させる効果。
(D)造核剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、窒化珪素、カーボンブラック、チタン酸カリウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。
(D)造核剤は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、(D)造核剤としては、造核剤効果の観点で、タルク又は窒化ホウ素が好ましい。
また、造核剤の効果が高いため、(D)造核剤の数平均粒径は0.01μm以上10μm以下が好ましい。
造核剤の数平均粒径は、以下の方法を用いて測定することができる。まず、成形品をギ酸等のポリアミドが可溶な溶媒で溶解する。次いで、得られた不溶成分の中から、例えば、100個以上の造核剤を任意に選択する。次いで、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡等で観察して、粒径を測定することにより求めることができる。
[(E)潤滑材]
(E)潤滑材としては、特に限定されないが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
(高級脂肪酸)
高級脂肪酸としては、例えば、炭素数8以上40以下の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の分岐鎖状飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の直鎖状不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、オレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の分岐鎖状不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、イソオレイン酸等が挙げられる。
中でも、高級脂肪酸としては、ステアリン酸又はモンタン酸が好ましい。
(高級脂肪酸金属塩)
高級脂肪酸金属塩とは、高級脂肪酸の金属塩である。
金属塩の金属元素としては、例えば、元素周期律表の第1族元素、第2族元素及び第3族元素、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。
元素周期律表の第1族元素としては、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
元素周期律表の第2族元素としては、例えば、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
元素周期律表の第3族元素としては、例えば、スカンジウム、イットリウム等が挙げられる。
中でも、元素周期律表の第1及び2族元素、又は、アルミニウムが好ましく、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、又は、アルミニウムがより好ましい。
高級脂肪酸金属塩として具体的には、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、およびモンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。
中でも、高級脂肪酸金属塩としては、モンタン酸の金属塩又はステアリン酸の金属塩が好ましい。
(高級脂肪酸エステル)
高級脂肪酸エステルとは、高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素数8以上40以下の脂肪族カルボン酸と炭素数8以上40以下の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。
炭素数8以上40以下の脂肪族アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとして具体的には、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
(高級脂肪酸アミド)
高級脂肪酸アミドとは、高級脂肪酸のアミド化合物である。
高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
これらの高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル及び高級脂肪酸アミドは、それぞれ1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
[(F)熱安定剤]
(F)熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤、元素周期律表の第3族、第4族及び第11〜14族の元素の金属塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
(フェノール系熱安定剤)
フェノール系熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール化合物等が挙げられる。ヒンダードフェノール化合物は、ポリアミド等の樹脂や繊維に優れた耐熱性及び耐光性を付与する性質を有する。
ヒンダードフェノール化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、および1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等が挙げられる。
これらは、ヒンダードフェノール化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、耐熱エージング性向上の観点から、ヒンダードフェノール化合物としては、N,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]が好ましい。
フェノール系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のフェノール系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
フェノール系熱安定剤の含有量が上記の範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させ、さらにガス発生量をより低減させることができる。
(リン系熱安定剤)
リン系熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)−ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)−ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4'−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)−ビス(4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))−1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイト、およびテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイト等が挙げられる。
これらリン系熱安定剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、リン系熱安定剤としては、ポリアミド組成物の耐熱エージング性の一層の向上及びガス発生量の低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−フェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−メチル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2−エチルヘキシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−イソデシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ラウリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−イソトリデシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・シクロヘキシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ベンジル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・エチルセロソルブ−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ブチルカルビトール−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−オクチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2,6−ジ−t−ブチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2,4−ジ−t−ブチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2,4−ジ−t−オクチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2−シクロヘキシルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル−フェニル・ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
これらペンタエリスリトール型ホスファイト化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、ポリアミド組成物のガス発生量を低減させる観点から、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及び、ビス(2、6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
リン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のリン系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
リン系熱安定剤の含有量が上記の範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させ、さらにガス発生量をより低減させることができる。
(アミン系熱安定剤)
アミン系熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β',β'−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。
これらアミン系熱安定剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のアミン系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
アミン系熱安定剤の含有量が上記の範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させることができ、さらにガス発生量をより低減させることができる。
(元素周期律表の第3族、第4族及び第11〜14族の元素の金属塩)
元素周期律表の第3族、第4族及び第11〜14族の元素の金属塩としては、これらの族に属する金属の塩であれば何ら制限されることはない。
中でも、ポリアミド組成物の耐熱エージング性を一層向上させる観点から、銅塩が好ましい。かかる銅塩としては、以下に制限されないが、例えば、ハロゲン化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅、ステアリン酸銅、キレート剤に銅の配位した銅錯塩が挙げられる。
ハロゲン化銅としては、例えば、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅等が挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
これら銅塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、銅塩としては、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅及び酢酸銅からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ヨウ化銅及び酢酸銅からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。上記に挙げた好ましい銅塩を用いた場合、耐熱エージング性により優れ、且つ、押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に「金属腐食」とも称する場合がある)をより効果的に抑制できるポリアミド組成物が得られる。
(F)熱安定剤として銅塩を用いる場合、ポリアミド組成物中の銅塩の含有量は、ポリアミド((A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミド)の総質量に対して、0.01質量%以上0.60質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.40質量%以下がより好ましい。
銅塩の含有量が上記範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させるとともに、銅の析出や金属腐食をより効果的に抑制することができる。
また、上記の銅塩に由来する銅元素の含有濃度は、ポリアミド組成物の耐熱エージング性を向上させる観点から、ポリアミド((A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性ポリアミド)10質量部(100万質量部)に対して、10質量部以上2000質量部以下が好ましく、30質量部以上1500質量部以下がより好ましく、50質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。
(アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物)
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
これらアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、耐熱エージング性の向上及び金属腐食の抑制という観点から、ヨウ化カリウム及び臭化カリウムからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ヨウ化カリウムがより好ましい。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いる場合、ポリアミド組成物中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量は、ポリアミド((A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性ポリアミド)100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下が好ましく、0.2質量部以上10質量部以下がより好ましい。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量が上記の範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性がより一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食をより効果的に抑制することができる。
上記で説明してきた(F)熱安定剤の成分は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、(F)熱安定剤としては、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させる観点から、銅塩と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との混合物が好ましい。
銅塩と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との含有比は、銅に対するハロゲンのモル比(ハロゲン/銅)として、2/1以上40/1以下が好ましく、5/1以上30/1以下がより好ましい。
銅に対するハロゲンのモル比(ハロゲン/銅)が上記した範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させることができる。
また、銅に対するハロゲンのモル比(ハロゲン/銅)が上記下限値以上である場合、銅の析出及び金属腐食をより効果的に抑制することができる。一方、銅に対するハロゲンのモル比(ハロゲン/銅)が上記上限値以下である場合、機械的物性(靭性等)を殆ど損なうことなく、成形機のスクリュー等の腐食をより効果的に防止できる。
[(G)その他のポリマー]
(G)その他のポリマーとしては、上記(A)ポリアミド樹脂ペレット以外及び上記(B)結晶性ポリアミド以外のものであれば、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
(ポリエステル)
ポリエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
本実施形態のポリアミド組成物中の(G)その他のポリマーの含有量は、ポリアミド組成物中の総樹脂100質量部に対して、1質量部以上200質量部以下が好ましく、5質量部以上100質量部以下がより好ましく、5質量部以上50質量部以下がさらに好ましい。本実施形態のポリアミド組成物中の(G)その他のポリマーの含有量が上記の範囲内であることにより、耐熱性及び離型性により優れるポリアミド組成物とすることができる。
[(H)亜リン酸金属塩及び次亜リン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種]
(H)亜リン酸金属塩及び次亜リン酸金属塩としては、例えば、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸又は二亜リン酸と、周期律表第1族及び第2族の元素、マンガン、亜鉛、アルミニウム、アンモニア、アルキルアミン、シクロアルキルアミン又はジアミンとの塩等が挙げられる。
中でも、亜リン酸金属塩及び次亜リン酸金属塩としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、又は、次亜リン酸マグネシウムが好ましい。
これら亜リン酸金属塩及び次亜リン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことにより、押出加工性及び成形加工安定性により優れるポリアミド組成物を得ることができる。
[(I)亜リン酸エステル化合物]
(I)亜リン酸エステル化合物としては、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチル等が挙げられる。
亜リン酸エステル化合物を添加することによって、押出加工性及び成形加工安定により優れるポリアミド組成物を得ることができる。
亜リン酸エステル化合物として具体的には、例えば、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチル−ジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等が挙げられる。
これら亜リン酸エステル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[(J)その他添加剤]
本実施形態の製造方法で得られるポリアミド組成物は、上記(A)及び上記(B)の各成分に加えて、本実施形態の製造方法で得られるポリアミド組成物の効果を損なわない範囲で、ポリアミド組成物に慣用的に用いられる(J)その他添加剤を含んでもよい。(J)その他添加剤としては、例えば、顔料及び染料等の着色剤(着色マスターバッチを含む)、難燃剤、フィブリル化剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、展着剤、エラストマー等が挙げられる。
本実施形態の製造方法で得られるポリアミド組成物が、(J)その他添加剤を含有する場合、(J)その他添加剤の含有量は、その種類やポリアミド組成物の用途等によって様々であるため、本実施形態の製造方法で得られるポリアミド組成物の効果を損なわない範囲であれば特に制限されることはない。
<ポリアミド組成物の物性>
[ポリアミド組成物の重量平均分子量]
ポリアミド組成物の分子量の指標としては、重量平均分子量Mwを利用できる。ポリアミド組成物の重量平均分子量Mwは加成性が成り立つことが好ましく、ポリアミド樹脂ペレットの重量平均分子量Mw(A)×ポリアミド樹脂中のAの比率(A/(A+B))+結晶性ポリアミドの重量平均分子量Mw(B)×ポリアミド樹脂中のBの比率(B/(A+B))≒Mwとなることがより好ましい。具体的には、Mw(A)×(A/(A+B))+Mw(B)×(B/(A+B))がMw±1500が好ましく、Mw±1000がより好ましく、Mw±500がさらに好ましい。重量平均分子量Mwが上記範囲内であることにより、水分含有率による分子量の低下の影響がより少なく、機械的性質、特に吸水剛性、熱時剛性、流動性等に優れるポリアミドが得られる。また、上記(C)無機充填材に代表される成分を含有させたポリアミド組成物は、表面外観に優れたものとなる。
ポリアミド組成物の重量平均分子量Mwを上記範囲内に制御する方法としては、(A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性ポリアミドの重量平均分子量Mw(A)及びMw(B)を上述した範囲のものを使用すること、重量平均分子量Mwが低下しない水分含有率の(A)ポリアミド樹脂ペレットを使用すること等が挙げられる。
なお、重量平均分子量Mwの測定は、後述する実施例に記載のとおり、GPCを用いて測定することができる。
<使用用途>
本実施形態の製造方法で得られるポリアミド組成物は、機械的性質、特に吸水剛性、熱時剛性、流動性、表面外観性等に優れ、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、並びに、日用及び家庭品用等、各種部品の成形材料として好適に使用することができる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<ポリアミド組成物の原料>
まず、実施例及び比較例に用いた(A)ポリアミド樹脂ペレット、(B)結晶性ポリアミド及び(C)無機充填材を以下に示す。
[(A)ポリアミド樹脂ペレット]
A−1:ポリアミド6I Mw=20000、結晶化エンタルピーが0J/g、水分含有率5000ppm
A−2:ポリアミド6I Mw=20000、結晶化エンタルピーが0J/g、水分含有率3200ppm
A−3:ポリアミド6I Mw=20000、結晶化エンタルピーが0J/g、水分含有率2600ppm
A−4:ポリアミド6I Mw=20000、結晶化エンタルピーが0J/g、水分含有率1000ppm
A−5:ポリアミド6I Mw=20000、結晶化エンタルピーが0J/g、水分含有率9500ppm
[(B)結晶性ポリアミド]
B−1:ポリアミド66 Mw=35000
(C)無機充填材
C−1:ガラス繊維(GF) 日本電気硝子製、商品名「ECS03T275H」、数平均繊維径(平均粒径)10μm(真円状)、カット長3mm
なお、本実施例において、ガラス繊維の平均繊維径は、以下のとおり測定した。
まず、ポリアミド組成物のペレットを電気炉に入れて、ポリアミド組成物のペレット中に含まれる有機物を焼却処理した。当該処理後の残渣分から、任意に選択した100本以上のガラス繊維を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらのガラス繊維の繊維径を測定することにより、数平均繊維径を求めた。
<(A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性ポリアミドの製造>
[(A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性ポリアミドの原料]
本実施例及び比較例に用いた(A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性ポリアミドは、下記(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンを適宜用いて製造した。
((a)ジカルボン酸)
(a−1)アジピン酸(ADA)(和光純薬工業製)
(a−2)イソフタル酸(IPA)(和光純薬工業製)
((b)ジアミン)
(b−1)1,6−ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン)(C6DA)(東京化成工業製)
次に、上記原料を用いた(A)ポリアミド樹脂ペレット(A−1〜A−5)及び(B)結晶性ポリアミド(B−1)の製造方法について説明する。
[実施例1]ポリアミド樹脂ペレット(A−1)(ポリアミド6I)の製造
「熱溶融重合法」により、ポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
まず、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500g、全等モル塩成分に対して0.3モル%過剰のアジピン酸、及び、全等モル塩成分に対して1.0モル%過剰の酢酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。次いで、110℃以上150℃以下の温度下で撹拌しながら、溶液濃度が70質量%になるまで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。次に、30分かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、最終内部温度は265℃であった。
その後、窒素で加圧し、下部紡口(ノズル)から重合反応物をストランドとして押し出し、5秒間の水冷、カッティング、及び、30秒間脱水を行い、(A−1)ポリアミド樹脂ペレット(ポリアミド6I)を排出した。得られたペレットにおいて、重量平均分子量Mw(A)は20000、結晶化エンタルピーが0J/g、水分含有率は5000ppmであった。物性を下記表1に示す。
[実施例2]ポリアミド樹脂ペレット(A−2)(ポリアミド6I)の製造
上記「ポリアミド樹脂ペレット(A−1)(ポリアミド6I)」と同様の方法を用いて得られたペレットを、80℃、窒素雰囲気下で2時間乾燥することで、ポリアミド樹脂ペレット(A−2)(ポリアミド6I)を得た。得られたペレットにおいて、重量平均分子量Mw(A)は20000、結晶化エンタルピーが0J/g、水分含有率は3200ppmであった。物性を下記表1に示す。
[実施例3]ポリアミド樹脂ペレット(A−3)(ポリアミド6I)の製造
上記「ポリアミド樹脂ペレット(A−1)(ポリアミド6I)」と同様の方法を用いて得られたペレットを、80℃、窒素雰囲気下で3時間乾燥することで、ポリアミド樹脂ペレット(A−3)(ポリアミド6I)を得た。得られたペレットにおいて、重量平均分子量Mw(A)は20000、結晶化エンタルピーが0J/g、水分含有率は2600ppmであった。物性を下記表1に示す。
[比較例1]ポリアミド樹脂ペレット(A−4)(ポリアミド6I)の製造
上記「ポリアミド樹脂ペレット(A−1)(ポリアミド6I)」と同様の方法を用いて得られたペレットを、80℃、窒素雰囲気下で7時間乾燥することで、ポリアミド樹脂ペレット(A−4)(ポリアミド6I)を得た。得られたペレットにおいて、重量平均分子量Mw(A)は20000、結晶化エンタルピーが0J/g、水分含有率は1000ppmであった。物性を下記表1に示す。
[比較例2]ポリアミド樹脂ペレット(A−5)(ポリアミド6I)の製造
上記「ポリアミド樹脂ペレット(A−1)(ポリアミド6I)」と同様の方法を用いて得られたペレットを、水に浸漬することで、ポリアミド樹脂ペレット(A−5)(ポリアミド6I)を得た。得られたペレットにおいて、重量平均分子量Mw(A)は20000、結晶化エンタルピーが0J/g、水分含有率は9500ppmであった。物性を下記表1に示す。
[製造例1]結晶性ポリアミド(B−1)(ポリアミド66)の製造
「熱溶融重合法」により、ポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
まず、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500gを蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。次いで、110℃以上150℃以下の温度下で撹拌しながら、溶液濃度が70質量%になるまで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。次に、1時間かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、最終内部温度は265℃であった。その後、窒素で加圧し、下部紡口(ノズル)から重合反応物をストランドとして押し出し、5秒間の水冷、カッティング、及び、30秒間脱水を行い、ペレットを排出した後、さらに、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥して、結晶性ポリアミド(B−1)(ポリアミド66)のペレットを得た。得られたペレットにおいて、重量平均分子量Mw(B)は35000であった。
<(A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性ポリアミドの物性の測定方法>
[物性1]重量平均分子量Mw
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。具体的な測定条件は、以下に示すとおりである。また、重量平均分子量Mwは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)標準サンプル換算で算出した。
(測定条件)
測定装置:東ソー株式会社製、HLC−8020
溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール
標準サンプル:PMMA(ポリマーラボラトリー社製)
[物性2]水分含有率
水分含有率は、ISO15512に準拠した方法により、カールフィッシャー水分計(三菱化学アナリテック社製、電量滴定方式微量水分測定装置CA−200型)を用いて、測定した。
Figure 2019203063
<ポリアミド組成物の評価>
[評価1]b値による着色の評価
実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物のペレットについて、日本電色社製色差計ZE−2000を用いて、反射法により、b値を測定した。具体的には、ポリアミド組成物のペレット試料を、専用治具を用いて13mmの厚さに敷き詰め、10mmΦの開口部から投光する方法により、測定した。得られたb値に基づいて、以下の評価基準に従い、各ペレットの着色を評価した。
(評価基準)
b値が17.50未満:着色がほとんどなく、より好ましい。
b値が17.50以上18.00未満:着色がややあるが、好ましい。
b値が18.00以上18.50未満:着色があるが、実用上使用可能である。
b値が18.50以上:着色があり、使用不可能である。
[評価2]ストランドの評価
実施例及び比較例のポリアミド組成物のペレット製造時において、ストランドの状態を以下の評価基準に従い、評価した。
(評価基準)
〇:ストランドが引けてカッティング可能である。
×:ストランドが切れる。
<ポリアミド組成物の製造>
[実施例4〜6及び比較例3〜4]ポリアミド組成物のペレットの製造
上記(A)ポリアミド樹脂ペレット、上記(B)結晶性ポリアミド及び上記(C)無機充填材を下記表1に記載の種類及び割合で用いて、各ポリアミド組成物のペレットを以下のとおり製造した。
ポリアミド組成物の製造装置としては、二軸押出機(ZSK−26MC、コペリオン社製(ドイツ))を用いた。
二軸押出機は、押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口を有し、9番目のバレルに下流側第2供給口を有していた。また、二軸押出機において、アスペクト比(l/d)は48であり、バレル数は12であった。
二軸押出機において、上流側供給口からダイまでの温度を結晶性ポリアミド(B−1)の融点Tm2+20℃に設定し、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hに設定した。
下記表1に記載の種類及び割合となるように、(A)ポリアミド樹脂ペレット及び(B)結晶性ポリアミドを、ドライブレンドした後に二軸押出機の上流側供給口より供給し、二軸押出機の下流側第1供給口より、(C)無機充填材としてガラス繊維(GF)を供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランドとして押し出し、冷却及びカッティングして、各ポリアミド組成物のペレット(ガラス繊維を含む)を得た。得られたペレットについて、上記方法を用いて評価を行い、その結果を以下の表1に示す。
Figure 2019203063
表1に示すように、水分含有率2600ppm以上5000ppm以下の(A)ポリアミド樹脂ペレットと(B)結晶性ポリアミドとを含むポリアミド組成物のペレット(実施例1〜3)では、着色が抑制され、且つ、ストランド切れが発生することはなかった。
また、(A)ポリアミド樹脂ペレットにおける水分含有率の上昇に伴い、b値が減少する傾向が見られ、着色がより効果的に抑制されることが示唆された。
本実施形態のポリアミド樹脂ペレット及びその製造方法によれば、非晶性半芳香族ポリアミド及び結晶性ポリアミドを含むポリアミド組成物のペレット製造時におけるペレットの着色及びストランド切れを抑制することができる。得られたポリアミド組成物のペレットは、機械的性質、特に吸水剛性、熱時剛性、流動性、表面外観性等に優れ、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、並びに、日用及び家庭品用等、各種部品の成形材料として好適に使用することができる。

Claims (8)

  1. ジカルボン酸単位とジアミン単位とからなるポリアミドを含むポリアミド樹脂ペレットであって、
    前記ジカルボン酸単位の総モル量に対してイソフタル酸単位を60モル%以上含み、
    前記ジアミン単位の総モル量に対して炭素数4以上10以下の鎖状脂肪族ジアミン単位を50モル%以上含み、
    前記ポリアミド樹脂ペレットの総質量に対して前記ポリアミドを90質量%以上含み、
    前記ポリアミド樹脂ペレットの総質量に対する水分含有率が2500ppm以上7500ppm以下であるポリアミド樹脂ペレット。
  2. 前記ポリアミドの結晶化エンタルピーが4J/g未満である請求項1に記載のポリアミド樹脂ペレット。
  3. 前記ジカルボン酸単位の総モル量に対して前記イソフタル酸を75モル%以上含む請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂ペレット。
  4. 前記ジカルボン酸単位の総モル量に対して前記イソフタル酸を100モル%含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂ペレット。
  5. 前記ポリアミドがポリアミド6Iである請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂ペレット。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂ペレットの製造方法であって、
    ジカルボン酸とジアミンとを重合して、前記ポリアミドを得る重合工程と、
    前記ポリアミドの溶融物をストランドとして押し出し、押し出されたストランドを、冷却及びカッティングすることにより、ポリアミドのペレットを得るペレット形成工程と、
    前記ペレットを乾燥する乾燥工程と、を含み、
    前記乾燥工程において、温度又は時間を調整することで、前記ペレットの水分含有率を2500ppm以上7500ppm以下に調整する製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂ペレットの製造方法であって、
    ジカルボン酸とジアミンとを重合して、前記ポリアミドを得る重合工程と、
    前記ポリアミドの溶融物をストランドとして押し出し、押し出されたストランドを、冷却及びカッティングすることにより、ポリアミドのペレットを得るペレット形成工程と、を含み、
    前記ペレット形成工程の後、前記ペレットを乾燥させる乾燥工程を実質的に含まない製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂ペレットと、結晶性ポリアミドとを含む原料成分を溶融混練する溶融混練工程と、
    前記溶融混練工程で得た溶融混練物をストランドとして押し出し、押し出されたストランドを、冷却及びカッティングすることにより、ポリアミド組成物のペレットを得るペレット形成工程と、を含むポリアミド組成物の製造方法。
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