JP2018012761A - ポリアミド成形品 - Google Patents

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真次 家田
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Abstract

【課題】低発塵性であるとともに、リフロー耐熱、加熱時や吸水時の寸法安定性、低ソリ性、外観に優れるポリアミド成形品を提供する。【解決手段】ポリアミド成形品を、(a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と(b)炭素数8以上の脂肪族ジアミンを少なくとも50モル%含むジアミン(b)とを含む(A)ポリアミドと、(B)無機充填材を20〜75質量%と、(C)造核剤とを含有し、JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tcが250℃以上であり、成形品の最薄部の厚みを1mm以下とする。【選択図】なし

Description

本発明は、カメラモジュール部品等に好適なポリアミド成形品に関する。
現在、携帯電話やゲーム機、パソコン、医療機器、自動車など情報収集を必要とする多くの機器に、画像を取り込むためのカメラモジュールが搭載されている。このカメラモジュールは通常、撮像素子(イメージセンサー)を組み込んだ基板と、撮像素子を覆うホルダと、1つ以上のレンズからなるレンズユニットと、そのレンズユニットを保持するバレルとで構成される。ホルダは筒状になっておりIR(infrared:赤外線透過)フィルターが嵌め込まれている。筒状のホルダの上部は開いており、この開口上部にバレルが蓋をする形で勘合している。
カメラモジュールの各部品を構成する材料には一般に樹脂が使われている。近年では小型化や低コストの要求によるSMT(Surface mount technology:表面実装)化が進んだ結果、カメラモジュールの各部品を構成する材料は、260℃を超える高温のリフローはんだ付け工程に耐えられる耐熱性が求められている。またカメラモジュールは携帯型の小型機器に組み込まれることが多く、ぶつけたり落としたりしてしまう場合がある。従って、カメラモジュールの各部品を構成する材料は、高い耐衝撃性や薄肉化に伴い高い流動性も求められている。これらの要求を満たす材料として、強化材を充填した液晶性ポリエステル樹脂が使われてきた(例えば、特許文献1参照)。
一方でカメラモジュールは、レンズが取り込んだ光を撮像素子で電気信号に変換するという機能上、ホルダ内部に塵埃が存在すると、画像に黒いしみが発生するという不具合が生じる。この不具合を防ぐため、カメラモジュールを構成する各部品に付着した塵埃は、通常カメラモジュールの組立前に洗浄され取り除かれる。カメラモジュールの組立工程中のホルダ内部への塵埃の混入や、製品となって使用中のホルダ内部への塵埃の混入はあってはならないものである。ところがカメラモジュールは、ホルダとバレルとが通常ねじ式で勘合されているため、カメラモジュールの組立工程中でバレルをホルダにねじ込む際に塵埃が発生し、ホルダ内部に塵埃が混入する可能性がある。
また、最近では前述の情報収集を必要とする機器の中でもオートフォーカス機能を持つ機器が増えている。オートフォーカス機能を持つ機器の場合には、カメラモジュールのホルダ及びバレルがボイスコイルモーターやピエゾモーターなどのモーター機構を備えている。このようなモーター機構を備えている製品は、出荷後にカメラモジュール内部で摺動運動が発生し、塵埃がホルダ内部へ混入する可能性がある。
ところで、液晶性樹脂はその性質上成形品に材料配向が生じるため、衝撃や振動、摺動などの運動により表層が剥離し易いという問題を有する。このため、カメラモジュール部品の材料として液晶性樹脂を用いると、上述したとおり、カメラモジュールの組立工程中や製品としての使用中において塵埃がホルダ内部へ混入する可能性が高い。そこで液晶性樹脂に代わって、低発塵性に加えて寸法安定性や表面平滑性に優れた材料として、1,9−ジアミノノナン単位とテレフタル酸を有するポリアミド樹脂が提案されている(例えば、特許文献2)。
さらに、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンと脂環族ジカルボン酸からなるポリアミドを含むポリアミド樹脂が、カメラモジュール部品の寸法異方性が少なく、摩耗が少なく、成形収縮率が低いことも知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開2007−208793号公報 特開2010−286544号公報 特開2014−10405号公報
しかし、特許文献1に記載の材料は、表面特性が充分でなく、カメラモジュールの部品の構成材料として用いると、カメラモジュールの組立工程中や製品としての使用中に塵埃がホルダ内部へ混入する可能性が高い。一方、特許文献2に記載の材料は、液晶性樹脂に比べて低発塵性に優れてはいるが、成形後の収縮による歪みにより部品のソリが生じやすいという問題がある。また、特許文献3に記載の材料は、成形後の収縮が小さいため部品のソリは改善されてはいるが、吸水性が比較的高いため、吸水時の寸法変化を考慮した製品設計が必要となり、使用される部品に制限が生じる可能性がある。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、摺動運動での塵埃の発生が少ない低発塵性を有しながら、耐熱リフロー性に優れ、成形後の収縮による歪みが小さく、かつ加熱時や吸水時の寸法変化も抑えた外観に優れるポリアミド成形品を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定のジカルボン酸と特定のジアミンとからなるポリアミドを含むポリアミド成形品が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリアミド成形品は、
(a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と、(b)炭素数8以上の脂肪族ジアミンを少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含む(A)ポリアミドと、
(B)無機充填材を20〜75質量%と、
(C)造核剤とを含有し、
JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tcが250℃以上であり、
最薄部の厚みが1mm以下である。
(b)ジアミン単位は分岐ジアミンを1〜49モル%含むことが好ましい。
(B)無機充填材はガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー及びミルドファイバーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
成形品における(A)ポリアミドの数平均分子量Mnは6000〜16000であることが好ましい。
成形品における(A)ポリアミドの重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnは4.0以下であることが好ましい。
成形品における(A)ポリアミドの末端基のカルボキシル末端とアミノ末端の比であるカルボキシル末端/アミノ末端は0.50以上であることが好ましい。
成形品における脂環族ジカルボン酸単量体単位のトランス異性体比率は71〜100モル%であることが好ましい。
ポリアミド成形品はカーボンブラックをさらに0.01〜3.0質量%含むことが好ましい。
ポリアミド成形品は金属水酸化物及び/又は金属酸化物をさらに含むことが好ましい。
ポリアミド成形品は離型剤をさらに含むことが好ましい。
ポリアミド成形品はJIS−K7150に準じた60度グロスが50以上であることが好ましい。
ポリアミド成形品はカメラモジュールに好適である。
本発明のポリアミド成形品は、(a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と(b)炭素数8以上の脂肪族ジアミンを少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含む(A)ポリアミドと、(B)無機充填材を20〜75質量%と、(C)造核剤とを含有し、JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tcが250℃以上であり、最薄部の厚みが1mm以下であるので、低発塵性であるとともに、耐熱リフロー性に優れ、成形後の収縮による歪みが小さく(低ソリ性)、加熱時や吸水時の寸法安定性、外観、異種材料との接着性に優れる。
カメラモジュールの一例を表す概略断面図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書において、重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」といい、「単量体」を省略することもある。
また、重合体を構成する構成単位のことを「〜単位」という。
≪ポリアミド成形品≫
本発明のポリアミド成形品(以下、単に「成形品」ともいう。)は、
(a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と(b)炭素数8以上の脂肪族ジアミンを少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含む(A)ポリアミドと、
(B)無機充填材を20〜75質量%と、
(C)造核剤とを含有し、
JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tcが250℃以上であり、最薄部の厚みが1mm以下である。
<(A)ポリアミド>
「ポリアミド」とは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味し、本発明に用いられる(A)ポリアミドは、(a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と、(b)炭素数8以上の脂肪族ジアミンを少なくとも50モル%含有するジアミン単位とを含む。
(a)ジカルボン酸単位及び(b)ジアミン単位の合計量は、(A)ポリアミドの全構成単位100モル%に対して、20〜100モル%であることが好ましく、90〜100モル%であることがより好ましく、100モル%であることがさらに好ましい。
なお、(A)ポリアミドを構成する所定の単量体単位の割合は、核磁気共鳴分光法(NMR)等により測定することができる。
(A)ポリアミドにおいて、(a)ジカルボン酸単位及び(b)ジアミン単位以外の(A)ポリアミドの構成単位としては、特に限定されないが、例えば、後述する(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位が挙げられる。
((a)ジカルボン酸単位)
(a)ジカルボン酸単位には脂環族ジカルボン酸を含有する。
脂環族ジカルボン酸(以下「脂環式ジカルボン酸」とも記され、本明細書中、(a)成分、(a)と記載する場合がある。)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂環構造の炭素数が3〜10である脂環族ジカルボン酸、好ましくは脂環構造の炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。(a)脂環族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、本発明のポリアミド成形品の耐熱性、低吸水性、機械強度及び剛性等の観点から、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸には、トランス体とシス体の幾何異性体が存在する。原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス体とシス体とのどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体との種々の比率の混合物として用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることやシス体の方がトランス体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、用いる原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス体/シス体比がモル比にして、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、一般に液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができるが、本明細書におけるトランス体/シス体の比(モル比)は、1H−NMRにより求められる比である。
脂環族ジカルボン酸以外に(a)ジカルボン酸単位に含まれていてもよい単位としては、脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸等の炭素数3〜20の直鎖又は分岐脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
種々の置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩等のその塩等が挙げられる。
耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、強度及び剛性等の観点で、脂肪族ジカルボン酸の中でも炭素数6以上の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、耐熱性及び低吸水性等の観点で、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸等が挙げられる。
中でも、耐熱性などの観点で、セバシン酸及び/又はドデカン二酸が好ましい。
また、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、強度及び剛性等の観点で、芳香族ジカルボン酸の中でも炭素数8の芳香族ジカルボン酸が好ましく、耐熱性、流動性、表面外観等の観点で、イソフタル酸が好ましい。
さらに、脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸には、本発明の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸を含んでもよい。
多価カルボン酸としては、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸単位中の脂環族ジカルボン酸の割合(モル%)は、特に限定されるものではないが、50〜100モル%が好ましく、より好ましくは60〜100モル%であり、さらに好ましくは70〜100モル%である。
脂環族ジカルボン酸の割合が50〜100モル%であることにより、低吸水性、低ブロッキング性、離型性及び可塑化時間安定性により優れるポリアミドが得られる。また、このポリアミドを含むポリアミド成形品は、機械強度及び表面外観により優れる。
((b)ジアミン単位)
(b)ジアミン単位には、炭素数8以上の脂肪族ジアミンを含有する。
炭素数8以上のジアミン(本明細書において、(b)成分、(b)のジアミン、(b)と記載する場合がある。)としては、炭素数8以上のジアミンであれば特に限定されず、無置換の直鎖脂肪族ジアミンでも、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等の置換基を有する分岐脂肪族ジアミンでも、脂環族ジアミンでも、芳香族ジアミンでもよい。
炭素数8以上のジアミンにおける炭素数は、低吸水性(吸水性を低くする)の観点から8以上とし、高温強度及び融点を高くする観点から、20以下、すなわち8〜20であることが好ましく、8〜15であることがより好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。
炭素数8以上の脂肪族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、オクタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、オルトキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられる。
炭素数8以上の脂肪族ジアミンとしては、耐熱性、低吸水性、強度及び剛性等の観点で、オクタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンが好ましく、より好ましくは、2−メチルオクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンであり、さらに好ましくは、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンであり、さらにより好ましくはデカメチレンジアミンである。
デカメチレンジアミンとしては、結晶性をより高める観点から、1,10−位にアミノ基を有する直鎖デカン骨格を有する1,10−デカメチレンジアミンが好ましい。
また、1,10−デカメチレンジアミンは、バイオマス由来の原料であるという観点からも好ましい。
デカメチレンジアミンとしては、無置換の1,10−デカメチレンジアミンでも、置換基を有する置換1,10−デカメチレンジアミンでもよい。置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
炭素数8以上の脂肪族ジアミンは(b)ジアミン単位全量に対して少なくとも50モル%含み、好ましくは60モル%含み、より好ましくは65モル%含む。炭素数8以上の脂肪族ジアミンは(b)ジアミン単位全量に対して少なくとも50モル%含むことにより、耐熱リフロー性、吸水時の寸法安定性により優れたポリアミド成形品に関することができる。
炭素数8以上の脂肪族ジアミン以外のジアミン単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数8以上の脂肪族ジアミンよりも炭素数の少ない脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミン等が挙げられる。
炭素数8以上の脂肪族ジアミンよりも炭素数の少ない脂肪族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミン等の直鎖脂肪族ジアミンや、2−メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン等の分岐脂肪族ジアミン等が挙げられる。
脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
芳香族ジアミンとは、芳香族を含有するジアミンであり、以下に限定されるものではないが、例えば、メタキシリレンジアミン、オルトキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられる。
炭素数8以上の脂肪族ジアミン以外のジアミン単位としては、本発明のポリアミド成形品の耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、強度及び剛性等の観点から、好ましくは、炭素数8以上の脂肪族ジアミンよりも炭素数の少ない脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンであり、より好ましくは、炭素数4〜7の脂肪族ジアミンであり、さらにより好ましくは、1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミンである。
さらに、炭素数8以上の脂肪族ジアミン以外のジアミン単位は、本発明の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミン等の3価以上の多価脂肪族アミンを含んでもよい。
多価脂肪族アミンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン単位全量に対する脂肪族ジアミン(炭素数8以上の脂肪族ジアミンと炭素数8以上の脂肪族ジアミンよりも炭素数の少ない脂肪族ジアミン)の割合(モル%)は、特に制限はないが、40〜100モル%が好ましく、より好ましくは50〜100モル%であり、さらに好ましくは60〜100モル%である。炭素数8以上の脂肪族ジアミンと炭素数8以上の脂肪族ジアミンよりも炭素数の少ない脂肪族ジアミンが40〜100モル%であることにより、強度、高温強度、低吸水性、低ブロッキング性、離型性及び可塑化時間安定性により優れるポリアミドとすることができる。また、ポリアミドを含むポリアミド成形品は、機械的強度及び表面外観により優れる。
全ジアミン単位に対する分岐ジアミンの割合(モル%)は、特に制限はないが、1〜49モル%が好ましく、より好ましくは1〜40モル%であり、さらに好ましくは1〜35モル%である。分岐ジアミンの割合が1〜45モル%であることにより、低発塵性であるとともに、耐熱リフロー性、加熱時や吸水時の寸法安定性、低ソリ性、外観により優れたポリアミド成形品に関することができる。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸
本発明の(A)ポリアミドは、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した(a)及び(b)の他、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸(本明細書において、(c)成分、(c)のラクタム等または(c)と記載する場合がある。)をさらに含有することができる。
ここで、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、重(縮)合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
(A)ポリアミドが、(a)脂環族ジカルボン酸、(b)炭素数8以上のジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を共重合させて得られる共重合ポリアミドである場合には、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、流動性、靭性の観点から、炭素数が4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸が好ましく、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸であることがより好ましい。
ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)等が挙げられる。
中でも、ラクタムとしては、靭性の観点で、ε−カプロラクタム、ウンデカノラクタム、ラウロラクタム等が好ましく、ε−カプロラクタム、ラウロラクタムがより好ましい。
アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸等が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸等が挙げられ、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸等も挙げられる。
中でも、アミノカルボン酸としては、低吸水、靭性の観点で、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等がより好ましい。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の添加量(モル%)については、特に限定されるものではないが、(a)ジカルボン酸単位、(b)ジアミン単位、並びに(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の各モノマー全体のモル量(100モル%)に対して、好ましくは0.5モル%以上20モル%以下であり、より好ましくは2モル%以上18モル%以下である。(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の添加量が、0.5モル%以上20モル%以下であることにより、耐熱性、低吸水性、強度及び離型性等により優れるポリアミドとすることができる。また、ポリアミドを含むポリアミド成形品は、機械的強度及び表面外観により優れる。
((a)〜(c)成分の含有比率)
(A)ポリアミドにおいて、(a)ジカルボン酸単位と、(b)ジアミン単位との含有割合は、同モル量であることが好ましい。
(a)ジカルボン酸単位の脂肪族ジカルボン酸及び(b)ジアミン単位の脂肪族ジアミンを除く、その他のジカルボン酸単位、ジアミン単位及び(c)成分の含有割合は、ポリアミドの全構成成分量100モル%に対し、好ましくは5.0モル%以上22.5モル%以下であり、より好ましくは7.5モル%以上20.0モル%以下であり、さらに好ましくは10.0モル%以上18.0モル%以下である。上記範囲とすることで、強度、高温強度、低吸水性、低ブロッキング性、離型性及び可塑化時間安定性により優れるポリアミドが得られる。また、ポリアミドを含むポリアミド成形品は、機械的強度及び表面外観により優れる。
(末端封止剤)
(A)ポリアミドは、その分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましい。分子鎖の末端基が末端封止剤により封止されている割合(末端封止率)は、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが最も好ましい。末端封止率が10%以上の(A)ポリアミドを用いると、溶融成形性などの物性がより優れる。
なお、末端封止率は、(A)ポリアミドに存在しているカルボキシル末端及びアミノ末端の数と、末端封止剤によって封止された末端基の数をそれぞれ測定し、下記計算式に従って求めることができる。各末端基の数は例えばH−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値に基づいて求めることができる。
末端封止率(%)=[(Y−Z)/Y]×100
[式中、Yは(A)ポリアミドの分子鎖の末端基の総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい)を表し、Zは封止されずに残ったカルボキシル末端及びアミノ末端の合計数を表す。]
(A)ポリアミドの末端は、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよい。
末端封止剤は、上述したジカルボン酸とジアミンと、必要に応じて用いるラクタム及び/又はアミノカルボン酸とから、(A)ポリアミドを製造する際に、分子量調節剤としても添加することができる。
末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等が挙げられる。
この中でも、モノカルボン酸、及びモノアミンが好ましい。(A)ポリアミドの末端が末端封止剤で封止されていることにより、熱安定性により優れるポリアミド成形品となる傾向にある。
末端封止剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、(A)ポリアミドの末端に存在し得るアミノ基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸;並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
モノカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、(A)ポリアミドの末端に存在し得るカルボキシル基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環族モノアミン;並びにアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン等が挙げられる。
モノアミンは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤により末端封止された(A)ポリアミドを含有するポリアミド成形品は、低ソリ性及び表面外観により優れる。
((A)ポリアミドの製造方法)
(A)ポリアミドの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(a)ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸と、(b)ジアミン単位を構成するジアミンと、必要に応じて(c)ラクタム単位及び/又はアミノカルボン酸単位を構成するラクタム及び/又はアミノカルボン酸と、を重合して重合体を得る工程を含むものとし、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。また、必要に応じて、得られた重合体の末端を末端封止剤により封止する封止工程を含んでいてもよい。
(A)ポリアミドの具体的な製造方法としては、例えば、以下に例示するように種々の方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸−ジアミン塩、又はジカルボン酸とジアミンとの混合物の水溶液、あるいはこれらの水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」ともいう。)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」ともいう。)。
3)ジカルボン酸−ジアミン塩、又はジカルボン酸とジアミンとの混合物の水溶液、あるいはこれらの水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」ともいう。)。
4)ジカルボン酸−ジアミン塩、又はジカルボン酸とジアミンとの混合物の水溶液、あるいはこれらの水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」ともいう。)。
5)ジカルボン酸−ジアミン塩、又はジカルボン酸とジアミンとの混合物を固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」ともいう。)。
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いて重合させる方法(以下、「溶液法」ともいう。)。
(A)ポリアミドを製造する際に、(a)ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸の添加量と、(b)ジアミン単位を構成するジアミンの添加量とは、同モル量付近であることが好ましい。
重合反応中の(b)ジアミン単位を構成するジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン単位を構成するジアミン全体のモル量は、0.9〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.1であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
(A)ポリアミドの製造方法においては、ポリアミドの流動性の観点から、ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸単位のトランス異性体比率を85%以下に維持して重合することが好ましく、特に、脂環族ジカルボン酸単位のトランス異性体比率を80%以下に維持して重合することがより好ましい。
特に、ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸単位のトランス異性体比率を80%以下に維持して重合することにより、さらに色調や引張伸度に優れ、高融点のポリアミドが得られる傾向にある。
(A)ポリアミドの製造方法においては、重合度を上昇させてポリアミドの融点を上昇させるために、重合温度を上昇させたり、重合時間を長くしたりすることが好ましい。重合温度を上昇させたり、重合時間を長くしたりする場合、脂環族ジカルボン酸単位のトランス異性体比率を80%以下に維持して重合することが好ましい。これにより加熱による(A)ポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下を抑制することができる傾向にある。また、(A)ポリアミドの分子量の上昇する速度が著しく低下することを抑制できる傾向にある。
(A)ポリアミドを製造する方法としては、ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸単位のトランス異性体比率を85%以下に維持することが容易であり、また、得られるポリアミドの色調に優れる観点から、1)熱溶融重合法、及び2)熱溶融重合・固相重合法が好ましい。
(A)ポリアミドの製造方法において、重合形態としては、特に限定されず、バッチ式でも連続式でもよい。
(A)ポリアミドの製造に用いる重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置を用いることができ、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及びニーダー等の押出機型反応器等が挙げられる。
以下、(A)ポリアミドの製造方法として、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造する方法の具体例を示すが、(A)ポリアミドの製造方法は、これに限定されない。
まず、例えば、ポリアミドの原料成分(ジカルボン酸、ジアミン、及び、必要に応じて、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を、約40〜60質量%含有する水溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。
次いで、得られた濃縮溶液をオートクレーブに移し、オートクレーブにおける圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。
その後、オートクレーブにおいて、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。
オートクレーブ内の圧力を大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。
その後、オートクレーブを窒素等の不活性ガスで加圧し、オートクレーブからポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。押し出されたストランドを、冷却、カッティングすることにより、(A)ポリアミドのペレットを得る。
また、以下に、連続式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造する方法の具体例を示す。
まず、ポリアミドの原料成分(ジカルボン酸、ジアミン、及び、必要に応じて、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を約40〜60質量%含有する水溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱する。次いで、予備加熱した水溶液を濃縮槽/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。
得られた濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出する。
その後、フラッシャー内の圧力を大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。フラッシャー内の圧力を大気圧に降圧後、必要に応じてさらに減圧する。その後、フラッシャーからポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。押し出されたストランドを、冷却、カッティングすることにより、(A)ポリアミドのペレットを得ることができる。
((A)ポリアミドのポリマー末端)
(A)ポリアミドのポリマー末端としては、特に限定されないが、以下のように分類される。
すなわち、1)アミノ末端、2)カルボキシル末端、3)環状アミノ末端、4)封止剤による末端、5)その他の末端である。
1)アミノ末端は、アミノ基(−NH基)を有するポリマー末端であり、原料のジアミンに由来する。
アミノ末端の量は、(A)ポリアミド1gに対して、好ましくは5〜100μ当量/gであり、より好ましくは5〜70μ当量/gであり、さらに好ましくは5〜50μ当量/gであり、さらにより好ましくは5〜30μ当量/gであり、よりさらに好ましくは、5〜20μ当量/gである。
アミノ末端の量が上記の範囲であることにより、ポリアミド組成物の機械強度、成形加工安定性(離型性)、熱滞留安定性、低発塵性及び異種材料との接着性がより優れる傾向にある。その結果、低ソリ性、低発塵性、異種材料との接着性及び外観に優れる成形品を得ることができる。アミノ末端の量は、中和滴定により測定することができる。アミノ末端の量は、中和滴定により測定することができる。
2)カルボキシル末端は、カルボキシル基(−COOH基)を有するポリマー末端であり、原料のジカルボン酸に由来する。
カルボキシル末端の量は、(A)ポリアミド1gに対して、好ましくは5〜100μ当量/gであり、より好ましくは5〜70μ当量/gであり、さらに好ましくは5〜50μ当量/gであり、さらにより好ましくは5〜30μ当量/gであり、よりさらに好ましくは、5〜20μ当量/gである。カルボキシル末端の量が上記の範囲であることにより、ポリアミド組成物の機械強度、成形加工安定性(離型性)、熱滞留安定性、及び異種材料との接着性がより優れる傾向にある。その結果、低ソリ性、低発塵性、異種材料との接着性及び外観に優れる成形品を得ることができる。カルボキシル末端の量は、中和滴定により測定することができる。
アミノ末端の量とカルボキシル末端の量との合計量は、(A)ポリアミド1gに対して、好ましくは10〜200μ当量/gであり、より好ましくは10〜150μ当量/gであり、さらに好ましくは10〜100μ当量/gであり、さらにより好ましくは15〜50μ当量/gであり、よりさらに好ましくは20〜40μ当量/gである。アミノ末端の量とカルボキシル末端の量との合計量が上記の範囲であることにより、ポリアミド組成物の機械強度、成形加工安定性(離型性)、熱滞留安定性、及び異種材料との接着性がより優れる傾向にある。その結果、低ソリ性、低発塵性、異種材料との接着性及び外観に優れる成形品を得ることができる。
3)環状アミノ末端は、環状アミノ基(下記(式1)で表される基)を有するポリマー末端である。
下記(式1)中でRはピペリジン環を構成する炭素に結合する置換基を示す。Rの具体例としては、特に限定されないが、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
また、例えば、原料のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの脱アンモニア反応により環化したピペリジンがポリマー末端に結合してもこの環状アミノ基の末端となる。これらの構造は、モノマーとして、ペンタメチレンジアミン骨格を有するものを含む場合にとることがある。
3)環状アミノ末端の量は、(A)ポリアミド1gに対して、好ましくは30μ当量/g以上65μ当量/g以下であり、より好ましくは30μ当量/g以上60μ当量/g以下であり、さらに好ましくは35μ当量/g以上55μ当量/g以下である。環状アミノ末端の量が上記の範囲であることにより、ポリアミド組成物の成形加工安定性(離型性)、及び熱滞留安定性がより優れる傾向にある。その結果、低ソリ性、低発塵性、異種材料との接着性及び外観に優れる成形品を得ることができる。
環状アミノ末端の量は、H−NMRを用いて測定することができる。例えば、窒素の複素環の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素とポリアミド主鎖のアミド結合の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素との積分比を基に算出する方法が挙げられる。
環状アミノ末端は、環状アミンとカルボン酸末端とが脱水反応することによって生成可能であり、アミノ末端がポリマー分子内で脱アンモニア反応することによっても生成可能であり、環状アミンを末端封止剤として添加することによっても生成可能であり、ポリアミドの原料のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンが脱アンモニア反応して環化することによっても生成可能である。
環状アミノ末端は、原料のジアミンに由来することが好ましい。
環状アミンを末端封止剤として重合初期に添加せずに、原料のジアミンに由来して環状アミノ末端が生成することにより、低分子量のカルボン酸末端を重合初期の段階で封止することが回避され、ポリアミドの重合反応速度が高く維持され、結果として高分子量体が得られやすい傾向にある。このように、反応の途中で環状アミンが生成する場合、重合後期の段階で環状アミンによりカルボン酸末端を封止することになるため、高分子量のポリアミドが得られ易くなる。
環状アミノ末端を生成する環状アミンは、ポリアミドの重合反応の際に副生物として生成しうる。この環状アミンの生成反応において、反応温度が高いほど反応速度も向上する。よって、(A)ポリアミドの環状アミノ末端を一定量にするためには、環状アミンの生成を促すことが好ましい。そのため、ポリアミドの重合の反応温度は300℃以上であることが好ましく、320℃以上であることがさらに好ましい。
これら環状アミノ末端をある一定量に調整する方法としては、重合温度、重合工程中の上記反応温度300℃以上の時間や、環状構造を形成するアミンの添加量等を適宜調整することで制御する方法が挙げられる。
4)封止剤による末端は、重合時に封止剤を添加した場合に形成される末端である。封止剤としては、上述した末端封止剤が挙げられる。
5)その他の末端は、上述した1)〜4)に分類されないポリマー末端であり、例えば、アミノ末端が脱アンモニア反応して生成した末端や、カルボン酸末端から脱炭酸反応して生成した末端等が挙げられる。
<(B)無機充填材>
本発明のポリアミド成形品は、(B)無機充填材を含有する。
(B)無機充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、ミルドファイバー、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ワラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、及びアパタイト等が挙げられる。
これらの中でも、(B)無機充填材としては、耐熱リフロー性、加熱時や吸水時の寸法安定性、低ソリ性、外観の観点から、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ワラストナイト、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム及びクレーからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ガラス繊維、ミルドファイバー、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムがより好ましく、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー及びミルドファイバーから選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
(B)無機充填材としては、組成物中のFe濃度を5〜200ppmとするため、Fe含有量の少ない無機充填材が好ましい。Fe含有量の少ない無機充填材としては、Fe含有量の少ない無機充填材を使用することや、不純物として存在するFeを機械的に除去した無機充填材を使用することが挙げられる。
(B)無機充填材の平均粒径は、0.01〜30μmが好ましく、0.5〜20μmがより好ましく、1〜15μmがさらに好ましく、2〜10μmがさらにより好ましく、5〜8μmがさらに好ましい。無機充填材の平均粒径が上記の範囲であることにより、ポリアミド組成物の流動性、成形加工安定性(離型性)、低ソリ性、機械的強度、光遮蔽性、低発塵性により優れる傾向にある。その結果、低ソリ性、機械的強度、光遮蔽性、低発塵性及び外観に優れる成形品を得ることができる。
(B)無機充填材の平均繊維長は、溶融混練前における平均繊維長が10〜300μmが好ましく、20〜100μm以下であることがより好ましく、30〜80μmであることがさらに好ましい。平均繊維長が10〜300μmであると、得られるポリアミド成形品は、低ソリ性、機械的強度、光遮蔽性、低発塵性により優れる。(B)無機充填材の溶融混練前における平均繊維長の下限値に特に制限はないが、例えば、0.1μmを挙げることができる。
また、(B)無機充填材の中でも、ワラストナイトのような、針状の形状を持つ無機充填材に関しては、数平均繊維径を平均粒径とする。さらに、断面が円でない場合はその長さの最大値を繊維径とする。針状の形状を持つ無機充填材の重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)に関しては、低ソリ性、低発塵性及び表面外観の観点から、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、10以下がよりさらに好ましく、5〜9が特に好ましい。アスペクト比が範囲内の無機充填材(B)を得る方法としては、例えば、無機フィラーやガラス繊維を粉砕する方法などが挙げられる。
(B)無機充填材は、繊維の断面の長径をD2、繊維の断面の短径をD1とするとき、成形時のソリやヒケ抑制の観点から、D2/D1で表される扁平率が1.5以上のものを使用してもよい。扁平率(又は長径及び短径)はメーカーによる公称値があればそれをそのまま使用できるが、公称値が無い場合は顕微鏡による測定値から容易に求められる。
成形時のソリやヒケ抑制の観点から、(B)無機充填材の扁平率は、好ましくは1.5〜10であるものとし、より好ましくは2.5〜10.0であり、さらに好ましくは3.1〜6.0である。扁平率を上記範囲内とすることにより、ソリやヒケ発生(成形不良)を抑制することができ、機械強度、低ソリ性、外観性のバランスに優れ、さらにひけの少ない成形品を得ることができる。扁平率が、例えば15〜20程度に大きいと、他の成分との混合の他、混練、成形等の処理の際、破砕されてしまうおそれがあり、所望の効果が得られない場合がある。
(B)無機充填材の形状としては、例えば、断面形状が、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、長手方向の中央部がくびれた繭型等が挙げられる。繭型形状の場合は、中央部がくびれていて、その部分の強度が低く真ん中で割れることがあり、また、くびれた部分の樹脂との密着性が劣る場合もある。従って、無機充填材は、断面形状が、長方形、長方形に近い長円形、又は楕円形のものが好ましい。
具体的な平均粒径の測定方法としては、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製、JSM−6700F)を用いて、(B)無機充填材像を倍率1000倍から50000倍で撮影し、任意に選んだ500個の無機充填材から粒径を測定する。(B)無機充填材が、針状の場合であって、断面が円である場合は、針径を粒径とし、断面が円でない場合は、針状体の長さの最大値を針径とし、これを粒径とみなす。
(B)無機充填材は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせる場合は形状の異なる組み合わせが好ましく、針状の形状を持つ無機充填材と板状の形状をもつ無機充填材との組み合わせがより好ましい。
(表面処理剤による処理)
(B)無機充填材は、シランカップリング剤等により表面処理を施してもよい。
シランカップリング剤としては、下記の例に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。
特に、上記の列挙した成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
表面処理剤は、予め(B)無機充填材の表面に処理することもできるし、(A)ポリアミド、(B)無機充填材を混合する際に添加してもよい。表面処理剤の量は、(B)無機充填材100質量部に対して、0.05質量部〜1.5質量部の範囲であることが好ましい。
ポリアミド成形品中の(B)無機充填材の含有量は、成形品の機械的強度、低ソリ性、光遮蔽性、低発塵性及び表面外観の観点から、20〜75質量%の範囲であり、好ましくは35〜75質量%の範囲であり、より好ましくは40〜70質量の範囲であり、最も好ましくは45〜60質量%の範囲である。
<(C)造核剤>
本発明のポリアミド成形品は、造核効果をもつ(C)造核剤を含有する。
「造核剤」とは、添加により熱示差走査分析(DSC)で測定される結晶化温度を上昇させる効果や、得られる成形品の球晶を微細化又はサイズの均一化に効果が得られる物質のことを意味する。
造核剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、タルク、窒化ホウ素、硫酸バリウム、窒化珪素、及び二硫化モリブデンなどが挙げられる。
造核剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
造核剤の中でも、造核効果の観点で、タルク、窒化ホウ素が好ましくさらに好ましくは窒化ホウ素である。
造核剤は、粒子形状であることが好ましく、造核剤の数平均粒子径は、好ましくは0.01〜10μmであり、より好ましくは0.5〜5μmであり、さらに好ましくは0.5〜3μmである。
造核剤の数平均粒子径が上記範囲内であることにより、造核効果がより向上する傾向にある。
造核剤の数平均粒子径は、ポリアミド成形品をギ酸などのポリアミドが可溶な溶媒で溶解し、得られた不溶成分の中から、例えば100個以上の造核剤を任意に選択し、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで観察し、求めることができる。
造核剤の含有量は、ポリアミド成形品100質量%に対して、0.001〜15質量%であり、好ましくは0.001〜5質量%であり、より好ましくは0.001〜3質量%であり、さらに好ましくは0.5〜2.5質量%である。
造核剤の含有量を成形品100質量%に対して0.001質量%以上とすることにより、組成物の成形加工安定性(離型性)が向上し、低ソリ性や外観により優れるポリアミド成形品を得ることができる。また、造核剤の含有量を15質量%以下とすることにより、機械的強度により優れるポリアミド成形品を得ることができる。
<カーボンブラック>
本発明のポリアミド成形品はカーボンブラックを含むことが好ましい。成形品におけるカーボンブラックの含有率は0.01〜3.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜2.0質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5〜2.0質量%の範囲内であることがさらに好ましい。カーボンブラックを上記の範囲で含むと、光遮蔽性に一層優れたポリアミド成形品を得ることができ、外部の光が成形品を通してカメラモジュールの撮像素子へ漏れ込むのを防ぐことができる。なお、カーボンブラックの含有率があまりに高いと成形品の絶縁性や機械的特性等が低下したりする場合がある。
<金属水酸化物>
本発明のポリアミド成形品は、金属水酸化物及び/又は後述する金属酸化物を含有することが好ましい。
金属水酸化物は、一般式M(OH)x(Mは、金属元素を示し、xは、Mの多価に対応する数を示す。)で表される。
金属元素Mは、1価以上の金属であることが好ましい。1価以上の金属としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ストロンチウム等が挙げられる。金属元素Mとしては、アルカリ土類金属が好ましい。
金属水酸化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化マンガンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリアミド成形品が低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れるという観点から水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが好ましく、水酸化カルシウムがより好ましい。
金属水酸化物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの金属水酸化物は、密着性及び分散性を向上させるために表面処理を施したものを使用してもよい。
表面処理剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、シリコーン等の有機珪素化合物;チタンカップリング剤等の有機チタン化合物;有機酸、ポリオール等の有機物などが挙げられる。
<金属酸化物>
金属酸化物は、一般式MxOy(Mは、金属元素を示し、x及びyは、それぞれ、0<x≦5、0<y≦5であり、Mの多価×x=2×yを満たす数である。)で表される。
金属元素Mは、1価以上の金属であることが好ましい。1価以上の金属としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ストロンチウム等が挙げられる。金属元素としては、アルカリ土類金属が好ましい。
金属酸化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化スズなどが挙げられる。これらの中でも、本実施形態のポリアミド成形品が、低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れるという観点から酸化カルシウム、酸化マグネシウムが好ましく、より好ましくは酸化カルシウムである。
金属酸化物は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上の混合物として用いてもよい。
また、これらの金属酸化物は、密着性及び分散性を向上させるために表面処理を施したものを使用してもよい。
表面処理剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、シリコーン等の有機珪素化合物;チタンカップリング剤等の有機チタン化合物;有機酸、ポリオール等の有機物などが挙げられる。
金属水酸化物及び/又は金属酸化物は、粒子状であることが好ましく、その平均粒子径は、0.05〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmである。金属水酸化物及び/又は金属酸化物の平均粒子径が上記範囲内にあることにより、成形品において、低ソリ性や外観や耐熱リフロー性の効果が得られる。
また、金属水酸化物及び/又は金属酸化物の粒子全体に対する30μm以上の粒子の質量割合は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。
金属水酸化物及び/又は金属酸化物全体に対する30μm以上の粒子の質量割合を上記範囲内とすることにより、成形品において、低ソリ性や外観や耐熱リフロー性の効果が得られる。
成形品中の金属水酸化物及び/又は金属酸化物の純度は好ましくは99%以上であり、より好ましくは99.5%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。金属水酸化物及び/又は金属酸化物の純度が高いことにより、成形品の低ソリ性や外観や耐熱リフロー性は優れたものとなる傾向がある。
上述した金属水酸化物及び/又は金属酸化物の含有量は、成形品100質量%に対して0.1〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.3〜5質量%であり、さらに好ましくは0.3〜2質量%であり、さらにより好ましくは0.5〜1.5質量%であり、よりさらに好ましくは0.5〜1.0質量%である。
金属水酸化物及び/又は金属酸化物の含有量が上記の範囲内であることにより、成形品は低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れる。
本発明のポリアミド成形品は、低ソリ性、耐熱リフロー性、表面外観の観点から、上述した金属水酸化物及び金属酸化物以外の金属化合物をさらに含有していてもよい。
金属水酸化物及び金属酸化物以外の金属化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、金属炭酸塩、金属ハロゲン化物等が挙げられる。
金属水酸化物及び金属酸化物以外の金属化合物に含まれる金属元素としては、特に限定されないが、例えば、1価以上の金属元素が好ましい。このような金属元素としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムバリウム、亜鉛、アルミニウム、ストロンチウム等を挙げることができる。金属元素として、アルカリ土類金属が好ましい。
金属水酸化物及び/又は金属酸化物は、(A)ポリアミドの重合時に添加してもよいが、(A)ポリアミドの重合後、(A)ポリアミドと混合するポリアミド組成物の製造時に添加することが好ましい。ポリアミド組成物の製造時に添加することで、熱履歴を少なくすることができ、金属水酸化物及び/又は金属酸化物の分解等を抑制することができ、低ソリ性、耐熱リフロー性、表面外観により優れるポリアミド成形品を得ることができる。
<その他の成分>
本発明のポリアミド成形品は、上記した成分の他に、必要に応じてさらに、その他の成分を添加してもよい。
(リン系化合物)
本発明のポリアミド成形品は、リン系化合物をさらに含有してもよい。
リン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物、2)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物の金属塩類等が挙げられる。
なお、リン系化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
1)のリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸、二亜リン酸などを挙げることができる。
2)のリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物の金属塩類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1)のリン系化合物と周期律表第1族(アルカリ金属)及び第2族(アルカリ土類金属)、マンガン、亜鉛、アルミニウムとの塩を挙げることができる。
より好ましいリン系化合物は、リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、これら金属塩の分子内縮合物、及びこれら金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれる1種以上である。このようなリン系化合物を含有することにより、本発明のポリアミド成形品は、低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れる傾向にある。
さらに好ましいリン系化合物は、リン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選ばれるリン系化合物と、周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛並びにアルミニウムから選ばれる金属と、を含む金属塩、あるいは、これら金属塩の分子内縮合物又はこれら金属塩の分子間縮合物である。
よりさらに好ましいリン系化合物は、リン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選ばれるリン系化合物と、周期律表第1族及び第2族から選ばれる金属と、を含む金属塩である。
このようなリン系化合物としての金属塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カルシウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム等;これらの無水塩;これらの水和物が挙げられる。
これらの中でも、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウムが好ましく、より好ましくはアルカリ土類金属塩である次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウムである。このようなリン系化合物を含有することにより、本発明のポリアミド成形品は、低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れる傾向にある。
上述したリン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、これら金属塩の分子内縮合物、及びこれら金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれるリン系化合物は、次亜リン酸金属塩であることがより好ましい。リン系化合物が次亜リン酸金属塩であることにより、低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れるポリアミド成形品を得ることができる。
リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、これら金属塩の分子内縮合物、及びこれら金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれるリン系化合物の金属種は、金属水酸化物及び/又は金属酸化物の金属種と同一であることが好ましい。
特に、リン系化合物の金属種としては、アルカリ土類金属であることが好ましい。
リン系化合物が金属塩、金属塩の分子内縮合物、及び金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれるものであり、かつリン系化合物の金属種が金属水酸化物及び/又は金属酸化物の金属種が同一であることにより、本実施形態の組成物の成形加工安定性(離型性)が向上し、低ソリ性や外観により優れるポリアミド成形品を得ることができる。さらに、リン系化合物の金属種としてアルカリ土類金属を用いることにより、上記特性において、より一層優れた効果が得られる。
リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、これら金属塩の分子内縮合物、及びこれら金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれるリン系化合物は、無水塩や水和物を含まない金属塩であることが好ましい。
リン系化合物として、無水塩、水和物を含まない金属塩を使用することにより、加工時に発生する水分量を抑えることができ、ポリアミドの分子量低下やガス発生を抑制することができる。また、リン系化合物として、無水塩、水和物を含まない金属塩を用いることにより、低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れるポリアミド成形品を得ることができる。
リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、これら金属塩の分子内縮合物、及びこれら金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれるリン系化合物としては、潮解性の低いものが好ましく、潮解性の無いものがより好ましい。
リン系化合物として潮解性の低い金属塩を用いることにより、ポリアミド組成物の製造時に各原料成分を混合する際に作業性が低下や原料成分中の水分量が高くなることによる、加工時のポリアミドの分子量低下やガス発生を抑制することができる。潮解性の低い金属塩を用いることにより、低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れるポリアミド成形品を得ることができる。
リン系化合物は、有機リン系化合物を含んでもよい。
有機リン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)−ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ,ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)−ビス(4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))・1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイトが挙げられる。
有機リン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の列挙した有機リン系化合物の中でも、ポリアミド組成物の発生ガスの低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物がより好ましい。
ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−フェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−メチル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2−エチルヘキシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−イソデシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ラウリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−イソトリデシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−シクロヘキシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ベンジル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−エチルセロソルブ−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ブチルカルビトール−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−オクチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ノニルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2,6−ジ−t−ブチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2,4−ジ−t−ブチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2,4−ジ−t−オクチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2−シクロヘキシルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル−フェニル−ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記で列挙したペンタエリスリトール型ホスファイト化合物の中でも、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
本発明のポリアミド成形品中のリン系化合物の含有量は、ポリアミド組成物100質量%に対して、好ましくは0.1〜20.0質量%である。より好ましくは0.2〜7.0質量%であり、さらに好ましくは0.5〜3.0質量%であり、さらにより好ましくは0.5〜2.5質量%あり、よりさらに好ましくは0.5〜2.0質量%であり、特に好ましくは0.5〜1.5質量%である。
本発明のポリアミド成形品中のリン系化合物は、金属水酸化物及び/又は金属酸化物よりも多く含有している方が好ましい。
リン系化合物の含有量が上記の範囲内であることにより、本発明のポリアミド成形品は低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れる傾向にある。
本発明のポリアミド成形品において、リン系化合物は、ポリアミド組成物に対して、リン元素濃度が、1,400〜20,000ppmとなる量で含まれることが好ましく、2,000〜20,000ppmとなる量で含まれることがより好ましく、3,000〜20,000ppmとなる量で含まれることがさらに好ましく、3,000〜10,000ppmとなる量で含まれることがさらにより好ましく、4,000〜6,000ppmとなる量で含まれることがよりさらに好ましい。
ポリアミド成形品中に含まれるリン系化合物由来のリン元素濃度が上記範囲であることにより、成形品は低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れる。
なお、ポリアミド成形品中に含まれるリン系化合物由来のリン元素濃度は、後述する実施例に記載されている金属元素濃度の測定方法により測定することができる。
リン系化合物は、(A)ポリアミドの重合時に添加してもよいが、(A)ポリアミドを重合した後、上述した金属水酸化物及び/又は金属酸化物、と混合するポリアミド組成物の製造時に添加することが好ましい。ポリアミド組成物の製造時にリン系化合物を添加することで、リン系化合物の熱履歴を少なくすることができ、リン系化合物の分解等を抑制することができ、低ソリ性や外観や耐熱リフロー性成形品を得ることができる。
本発明のポリアミド成形品において、(B)無機充填材、金属水酸化物及び/又は金属酸化物、並びに必要に応じてリン系化合物等の任意成分は、これらの成分由来のFe濃度の合算値が5〜200ppmとなる量で含み、10〜180ppmとなる量で含まれることが好ましく、10〜160ppmとなる量で含まれることがより好ましく、10〜140ppmとなる量で含まれることがさらに好ましい。成形品中に含まれるFe濃度が上記範囲であることにより、成形品は、機械的強度により優れる。
本発明のポリアミド成形品において、(B)無機充填材、金属水酸化物及び/又は金属酸化物、並びに必要に応じてリン系化合物等の任意成分は、これらの成分由来のCa濃度の合算値が0〜60000ppmとなる量で含まれることが好ましく、0〜45000ppmとなる量で含まれることがより好ましく、500〜45000ppmとなる量で含まれることがさらに好ましく、20000〜45000ppmとなる量で含まれることが特に好ましい。成形品中に含まれるCa濃度が上記範囲であることにより、成形品は、低ソリ性や外観や耐熱リフロー性により優れる。
(フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤)
本発明のポリアミド成形品は、熱安定性の観点から、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤を含有していてもよい。
フェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール系酸化防止剤、中でもヒンダードフェノール化合物は、ポリアミド等の樹脂や繊維に耐熱性や耐光性を付与する性質を有する。
ヒンダードフェノール化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸が挙げられる。
中でも、発生ガスや変色抑制の低減の観点から、ヒンダードフェノール化合物としては、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]が好ましい。
なお、上述したフェノール系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリアミド成形品中のフェノール系酸化防止剤の含有量は、ポリアミド組成物100質量%に対して、好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
フェノール系酸化防止剤の含有量が上記の範囲内であることにより、本発明のポリアミド成形品は、変色が少ない傾向にある。
アミン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリン、6−エトキシ−1,2−ジハイドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、フェニル−α−ナフチルアミン、4,4−ビス(α,α−ジメチルデンジル)ジフェニルアミン、(p−トルエンスルフォニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどの芳香族アミンが挙げられる。
なお、本発明において、アミン系酸化防止剤とは、芳香族アミン系化合物を含む。アミン系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリアミド成形品中のアミン系酸化防止剤の含有量は、ポリアミド組成物100質量%に対して、好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
アミン系酸化防止剤の含有量が上記の範囲内であることにより、ポリアミド成形品は、変色が少ない傾向にある。
(アミン系光安定剤)
本発明のポリアミド成形品は、光安定性の観点から、アミン系光安定剤をさらに含有していてもよい。
アミン系光安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。
アミン系光安定剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラートが好ましい。
これらの中でも、アミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラートがより好ましく、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミドがさらに好ましい。
本発明のポリアミド成形品中のアミン系光安定剤の含有量は、ポリアミド組成物100質量%に対して、好ましくは0〜2質量%であり、より好ましくは0.01〜2質量%であり、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。アミン系光安定剤の含有量が上記の範囲内であることにより、ポリアミド成形品の光安定性を一層向上させることができ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
(離型剤)
本発明のポリアミド成形品は、離型性の観点から、離型剤、例えば低分子量オレフィン系樹脂を含有していてもよい。低分子量オレフィン系樹脂としては、離型性、耐熱リフロー性の観点から、ポリエチレン、炭素原子数3〜8のα−オレフィンの単独重合体であることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンであることがより好ましい。
ポリエチレンは、未変性の低分子量ポリエチレンであってもよく、極性末端及び/又は側鎖を含んだ変性型低分子量ポリエチレンであってもよく、これらの双方を含むものであってもよい。
変性型低分子量ポリエチレンとは、低分子量ポリエチレンを酸化剤等により部分的に酸化させたものであり、末端にカルボン酸基を有するもの、又は分岐した側鎖を有するもの等が挙げられる。酸化の程度は、反応で制御することが可能である。
変性型低分子量ポリエチレンは、変性量の指標である酸価が好ましくは40mgKOH/g以下であり、より好ましくは30mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは20mgKOH/g以下であり、さらにより好ましくは10mgKOH/g以上20mgKOH/g以下である。
変性型低分子量ポリエチレンの酸価が上記範囲内にあると、機械的強度、低ソリ性、耐熱リフロー性により優れるポリアミド成形品を得ることができる。
変性型低分子量ポリエチレンは、具体的にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量Mnが好ましくは1000〜10000であり、より好ましくは1000〜8000、さらに好ましくは2000〜8000である。
変性型低分子量ポリエチレンのMnが上記範囲内にあると、機械的強度、低ソリ性、耐熱リフロー性により優れるポリアミド成形品を得ることができる。
変性型低分子量ポリエチレンは、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が好ましくは90℃〜130℃、より好ましくは100℃〜120℃、特に好ましくは100℃〜110℃である。
(シリコーン化合物)
本発明のポリアミド成形品は、離型性の観点から、シリコーン化合物を含有していてもよい。
シリコーン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エポキシ変性反応性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイルが挙げられる。
ポリアミド成形品中のシリコーン化合物の含有量は、ポリアミド成形品100質量%に対して、好ましくは0.1〜1質量%であり、より好ましくは0.1〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.2〜0.6質量%である。
上記以外の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、顔料及び染料等の着色剤(着色マスターバッチ含む)、難燃剤、フィブリル化剤、潤滑剤、蛍光増白剤、可塑化剤、銅化合物、ハロゲン化アルカリ金属化合物、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、充填材、補強剤、展着剤、ゴム並びに他のポリマー等が挙げられる。
ここで、上記その他の成分は、それぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
<ポリアミド組成物の製造方法>
ポリアミド組成物の製造方法としては、特に限定されず、(A)ポリアミド、(B)無機充填材、(C)造核剤、さらに必要に応じて、カーボンブラック、金属水酸化物及び/又は金属酸化物、離型剤、リン系化合物、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤、アミン系光安定剤等その他の成分を含む各原料成分を混合する方法を用いることができる。
ポリアミド組成物に、各原料成分を含有させる場合、(A)ポリアミド等と混合して、得られた混合物を溶融混練機に供給して混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミド等に、サイドフィダーから各原料成分を配合する方法等が挙げられる。
例えば、(A)ポリアミドと(B)無機充填材、(C)造核剤とを混合して、得られた混合物を溶融混練機に供給して混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミドに、サイドフィダーから(B)無機充填材及び(C)造核剤を配合する方法等が挙げられる。
カーボンブラック、金属水酸化物及び/又は金属酸化物、離型剤等を配合する場合も同様の方法を用いることができ、(A)ポリアミド等とカーボンブラック、金属水酸化物及び/又は金属酸化物、離型剤とを混合して、得られた混合物を溶融混練機に供給して混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミド等に、サイドフィダーからカーボンブラック、金属水酸化物及び/又は金属酸化物、離型剤を配合する方法等が挙げられる。
カーボンブラック、金属水酸化物及び/又は金属酸化物、離型剤の混合方法としては、サイドフィダーから配合する方法の方が好ましい。サイドフィダーから配合する方法によりポリアミド組成物を製造することにより、ポリアミド組成物の耐熱リフロー性、及び成形加工安定性(離型性)が優れたものとなる傾向にある。
ポリアミド組成物の各構成成分を溶融混練機に供給する方法としては、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給する方法でもよいし、各構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給する方法でもよい。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃であることが好ましい。また、溶融混練時間は、0.25〜5分であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロール等の溶融混練機を用いることができる。
<成形品>
本発明のポリアミド成形品は、例えば、上述のポリアミド組成物を公知の成形方法で成形することにより得ることができる。
成形方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸等、一般に知られているプラスチック成形方法を挙げることができる。
(ポリアミド成形品の物性)
本発明のポリアミド成形品における(A)ポリアミドの100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tc(℃)は、250以上であり、好ましくは260℃以上であり、より好ましくは270℃以上であり、さらに好ましくは275℃以上である。また、ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの結晶化ピーク温度Tc(℃)は、より好ましくは290℃以下であることが好ましく、より好ましくは280℃以下である。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの結晶化ピーク温度Tc(℃)が250℃以上であることにより、成形時の離型性により優れるポリアミド組成物を得ることができる。また、ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの結晶化ピーク温度Tc(℃)が290℃以下であることにより、成形時のゲートシールが速すぎることがなく、薄肉成形品等の微細部品を充填不足等が無く良好に成形できるポリアミド組成物を得ることができる。その結果、組成物の成形加工安定性が向上し、低ソリ性や外観により優れる成形品を得ることができる。
本発明のポリアミド成形品における(A)ポリアミドの融点Tm2は、好ましくは270℃以上であり、より好ましくは275℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上である。
また、本発明のポリアミド成形品における(A)ポリアミドの融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。
本発明のポリアミド成形品における(A)ポリアミドの融点Tm2が270℃以上であることにより、耐熱性により優れるポリアミド成形品を得ることができる傾向にある。
また、本発明のポリアミド成形品における(A)ポリアミドの融点Tm2が350℃以下であることにより、押出、成形等の溶融加工における本実施形態のポリアミド成形品の熱分解等をより抑制することができる傾向にある。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの融点Tm2、結晶化ピーク温度Tcを上記範囲内に制御する方法としては、例えば、上記(a)〜(c)成分を用い、配合比率を上述した範囲に制御する方法等が挙げられる。
本発明のポリアミド成形品における(A)ポリアミドのガラス転移温度Tgは、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは110℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上であり、さらにより好ましくは130℃以上であり、よりさらに好ましくは135℃以上である。
また、本発明のポリアミド成形品における(A)ポリアミドのガラス転移温度は、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは165℃以下であり、さらに好ましくは160℃以下である。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドのガラス転移温度が90℃以上であることにより、熱時寸法変化により優れる成形品を得ることができる傾向にある。また、ポリアミド成形品における(A)ポリアミドのガラス転移温度が170℃以下であることにより、外観のより優れる成形品を得ることができる傾向にある。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドは、100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tc(℃)とガラス転移温度Tgとの差(Tc−Tg)が90℃以上であることが好ましく、より好ましくは95℃以上であり、さらに好ましくは100℃以上であり、さらにより好ましくは105℃以上であり、よりさらに好ましくは110℃以上である。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tc(℃)とガラス転移温度Tgとの差(Tc−Tg)が大きいほど、結晶化できる温度範囲が広く、金型内で充分に結晶化しやすいことを意味する。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tc(℃)と、ガラス転移温度Tgとの差(Tc−Tg)が90℃以上であるポリアミド組成物は、成形加工安定性(離型性)が向上し、低ソリ性や外観により優れる成形品を得ることができる。本発明のポリアミド成形品における(A)ポリアミドの100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tc(℃)と、ガラス転移温度Tgとの差(Tc−Tg)の上限は、特に限定されないが、300℃以下であることが好ましい。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの融点Tm2、ガラス転移温度、及び融解熱量ΔHは、後述の実施例に記載の方法により、JIS−K7121に準じて測定することができる。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの融点Tm2、ガラス転移温度、及び融解熱量ΔHの測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの数平均分子量Mnは、好ましくは6000〜16000であり、より好ましくは8000〜15000以上であり、さらに好ましくは10000〜14000である。
(A)ポリアミドの数平均分子量Mnが6000〜16000であることにより、薄肉成形品等の微細部品を充填不足等が無く良好に成形できるポリアミド組成物を得ることができる。その結果、組成物の成形加工安定性が向上し、低ソリ性や外観により優れる成形品を得ることができる。
(A)ポリアミドの数平均分子量Mnを上記範囲内に制御する方法としては、例えば、ポリアミドの熱溶融重合時の添加物としてリン酸や次亜リン酸ナトリウムのような公知の重縮合触媒を加える方法、ポリアミドの熱溶融重合時の添加物としてのジアミンの添加量を調整する方法、及び末端封止剤の添加量を低減化する方法、並びに及び加熱条件や減圧条件のような重合条件を制御し脱水を促進する方法等が挙げられる。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの分子量分布は、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnを指標とする。
ポリアミド成形品における(A)ポリアミドの重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnは、ポリアミド成形品の機械強度及び表面外観の観点から、好ましくは1.5〜4.0であり、より好ましくは1.5〜3.3であり、さらに好ましくは1.5〜3.0であり、よりさらに好ましくは1.5〜2.5である。分子量分布の下限は1.0である。
本発明において、(A)ポリアミドの重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの測定は、下記実施例に記載するように、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて得られた重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnを使用して計算することができる。
本発明のポリアミド成形品におけるポリアミド(A)の末端基のカルボキシル末端とアミノ末端の比(カルボキシル末端/アミノ末端)は、ポリアミド成形品の機械強度、リフロー耐熱及び加熱時や吸水時の寸法安定性の観点から好ましくは0.50以上であり、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.7以上である。
カルボキシル末端とアミノ末端の比(カルボキシル末端/アミノ末端)は、下記実施例に記載する方法で求めることができる。
本発明のポリアミド成形品における脂環族ジカルボン酸単量体単位のトランス異性体比率は機械強度、リフロー耐熱及び加熱時や吸水時の寸法安定性の観点から好ましくは71以上であり、より好ましくは75以上であり、さらに好ましくは80以上である。
ポリアミド成形品における脂環族ジカルボン酸単量体単位のトランス異性体比率は、後述する実施例に記載のとおり、H−NMRで測定することができる。
本発明のポリアミド成形品のJIS−K7150に準じた60度グロスは、好ましくは50以上であり、より好ましくは55以上であり、さらに好ましくは60以上である。この測定値が大きいほど表面外観により優れる。
本発明のポリアミド成形品は、低発塵性であるとともに、リフロー耐熱、加熱時や吸水時の寸法安定性、低ソリ性、外観により優れるものとなる。従って、上述のポリアミド成形品は、電気及び電子部品として好適に用いることができる。中でも、カメラモジュール、タクトスイッチ、カードコネクタ等に好適に用いることができる。
(カメラモジュール)
カメラモジュールとしては、例えば、図1に示すような、撮像素子1(イメージセンサー)を組み込んだ基材2と、撮像素子1を覆うホルダ3と、1つ以上のレンズ4からなるレンズユニット5と、そのレンズユニット5を保持するバレル6とで構成されるカメラモジュールが挙げられる。ホルダ3は筒状になっておりIRフィルター7が嵌め込まれている。筒状のホルダ3の上部は開いており、この口の開いた上部にバレル6が蓋をする形で勘合している。
本発明のポリアミド成形品は、ホルダ3やバレル6として好適に用いることができる。本発明のポリアミド成形品は、低発塵性により優れるため、ホルダ3やバレル6として用いても摺動運動等による塵埃の発生を抑制でき、高品質のカメラモジュールを提供することができる。
電気、電子部品以外にも、産業資材用、及び日用及び家庭品用等の各種部品材料として好適に用いることができ、また、押出用途等に好適に用いることができる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
なお、本実施例において、1kg/cmは、0.098MPaを意味する。
〔原材料〕
<(A)ポリアミド)>
本実施例、比較例において用いる(A)ポリアミドは、下記(a)及び(b)等を適宜用いて製造した。
<(a)ジカルボン酸>
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)(イーストマンケミカル社製、商品名:1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体=25/75))
(2)テレフタル酸(和光純薬工業株式会社製)
<(b)ジアミン>
(1)1,10−ジアミノデカン(デカメチレンジアミン)(C10DA)
商品名:1,10−デカンジアミン(小倉合成工業社製)
(2)1,12−ジアミノドデカン(ドデカメチレンジアミン)(C12DA)(東京化成工業株式会社製)
(3)1,6−ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン)(C6DA)(東京化成工業株式会社製)
(4)1,9−ノナメチレンジアミン(C9DA)(アルドリッチ社製)
(5)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MC5DA)(東京化成工業株式会社製)
(6)2−メチルオクタメチレンジアミン(MODA) 特開平05−17413号公報に記載されている製法を参考にして製造した。
<(c)モノカルボン酸>
(1)酢酸(和光純薬工業株式会社製)
(2)安息香酸(和光純薬工業株式会社製)
<(B)無機充填材)>
(B−1)ガラス繊維(GF)
日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H 数平均繊維径(数平均粒径)10μm(真円状)、カット長3mm
(B−2)ワラストナイト
NYCO製 商品名 Nyglos8 数平均繊維径(数平均粒径)8.0μm、重量平均繊維長136μm、アスペクト比17
(B−3)扁平ガラス繊維
商品名:CSG 3PA−820S(日東紡績社製)
扁平率=4(D2=28μm、D1=7μm)、カット長3mm
<(C)造核剤>
窒化ホウ素:電気化学工業製 商品名 デンカボロンナイトライド(登録商標) SP−2 平均粒子径 4μmφ
<カーボンブラック>
カーボンブラック:三菱化学株式会社製 商品名「#980B」
<金属酸化物>
酸化カルシウム 純度99.9% (和光純薬工業株式会社製)
<離型剤>
三井化学株式会社製 商品名 HI−WAX200P
〔ポリアミドにおけるジカルボン酸単位の特定方法〕
[脂環族ジカルボン酸単位(a)のモル%の計算]
脂環族ジカルボン酸単位(a)のモル%は、下記式を用いて計算により求めた。
式:脂環族ジカルボン酸単位(a)のモル%=(原料モノマーとして加えた脂環族ジカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた全てのジカルボン酸のモル数)×100
〔物性の測定方法〕
(1)ポリアミドの融点Tm2(℃)、融解熱量ΔH(J/g)、結晶化ピーク温度Tc(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて、ポリアミドの融点Tm2(℃)、及び融解熱量ΔH(J/g)を測定した。
具体的には、以下のとおり測定した。
まず、窒素雰囲気下、サンプル約10mgを、室温からサンプルの融点に応じて300〜350℃まで、昇温速度20℃/minで昇温した。このときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とした。次に、昇温の最高温度で温度を2分間保った。この最高温度ではポリアミドは溶融状態であった。その後、降温速度100℃/minで30℃まで降温した。このときに現れる発熱ピークを結晶化ピークとし、結晶化ピーク温度をTcとした。その後、30℃で2分間保持した後、30℃からサンプルの融点に応じて300〜350℃まで、昇温速度20℃/minで昇温した。このときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最高ピーク温度を融点Tm2(℃)とし、その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。なお、ピークが複数ある場合には、ΔHが1J/g以上のものをピークとみなし、最大のΔHを有する吸熱ピ−ク温度を融点Tm2(℃)とした。例えば、吸熱ピーク温度295℃(ΔH=20J/g)と、吸熱ピーク温度325℃(ΔH=25J/g)との二つのピークが存在する場合、融点Tm2は325℃とし、ΔH=25J/gとした。なお、無機充填材等を含んでいても測定範囲内に無機充填材等の融点はないことから、ポリアミド成形品の融解ピーク温度と結晶化ピーク温度は、ポリアミド樹脂の融解ピーク温度と結晶化ピーク温度とみなすことができる。
(2)ポリアミド中の(a)脂環族ジカルボン酸に由来する部分のトランス異性体比率
(A)ポリアミド中の(a)脂環族ジカルボン酸に由来する部分のトランス異性体比率を以下のとおり測定した。
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、得られた溶液を用いてH−NMRでトランス異性体比率を測定した。
(a)脂環族ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積と、シス異性体に由来する1.77ppm及び1.86ppmのピーク面積と、の比率からトランス異性体比率を求めた。なお、ポリアミドのトランス異性体比率は、ポリアミド成形品のトランス異性体比率とみなることができる。
(3)ポリアミドのガラス転移温度Tg(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いてガラス転移温度Tg(℃)を測定した。具体的には以下のとおり測定した。サンプルをホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させて、得られた溶融状態のサンプルを、液体窒素を用いて急冷し、固化させ、測定用サンプルとした。その測定用サンプル10mgを、DSCにより、昇温スピード20℃/minの条件下、30〜350℃の範囲で昇温して、昇温の際に観測されるガラス転移温度Tg(℃)を測定した。
(4)ポリアミドの分子量(Mn、Mw/Mn)
実施例及び比較例で得られたポリアミドの重量平均分子量Mw/数平均分子量MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、東ソー株式会社製、HLC−8020、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒、PMMA(ポリメチルメタクリレート)標準サンプル(ポリマーラボラトリー社製)換算)で測定したMwとMnを用いて計算した。なお、GPCカラムはTSK−GEL GMHHR−MとG1000HHRを使用した。(ポリアミドの分子量は成形品におけるポリアミドの分子量とみなすことができる。)
(5)アミノ末端量([NH])
実施例及び比較例で得られたポリアミドにおいて、ポリマー末端に結合するアミノ末端量を、中和滴定により以下のとおり測定した。
ポリアミド3.0gを90質量%フェノール水溶液100mLに溶解し、得られた溶液を用い、0.025Nの塩酸で滴定を行い、アミノ末端量(μ当量/g)を求めた。終点はpH計の指示値から決定した。
(6)カルボキシル末端量([COOH])
実施例及び比較例で得られたポリアミドにおいて、ポリマー末端に結合するカルボキシル末端量を、中和滴定により以下のとおり測定した。
ポリアミド4.0gをベンジルアルコール50mLに溶解し、得られた溶液を用い、0.1NのNaOHで滴定を行い、カルボキシル末端量(μ当量/g)を求めた。終点はフェノールフタレイン指示薬の変色から決定した。
(5)及び(6)により測定したアミノ末端量([NH])とカルボキシル末端量([COOH])により、カルボキシル末端とアミノ末端の比であるカルボキシル末端/アミノ末端を算出した。(ポリアミドの[COOH]/[NH]は、成形品におけるポリアミドの[COOH]/[NH]とみなすことができる。)
(7)成形時ソリ
後述する実施例及び比較例で製造したポリアミド組成物のペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて成形することにより、長さ60mm×幅60mm×厚さ1.0mmの平板の成形品を作製した。成形の際、射出+保圧時間2秒、冷却時間6秒、金型温度をTg+20℃、溶融樹脂温度を(A)ポリアミドの融点Tm2+20℃に設定した。恒温恒湿室で3日間保管した後に、平板の3頂点を平面上に固定し、残りの1頂点の平面からのずれた値を測定し、成形時のソリの値とした。
(8)吸水寸法変化
上記(7)と同様の平板の成形品を作製し、平板の流動方向(MD)と流動の直角方向(TD)について成形直後に成形時寸法を測定した。平板を50RH%で30日間保管した後に、MDとTDについて寸法を測定し、吸水時の寸法とした。吸水処理時と成形直後のMDとTDの変化率の平均値を吸水寸法変化の値とした。寸法変化率が0.1%未満であれば、寸法安定性が良好であると判断した。
(9)熱時寸法変化
上記(7)と同様の平板の成形品を作製し、平板の流動方向(MD)と流動の直角方向(TD)について成形直後に成形時寸法を測定した。平板を50RH%で3日間保管した後に、120℃で1時間加熱した。MDとTDについて寸法を測定し、加熱処理時の寸法とした。加熱処理時と成形直後のMDとTDの変化率の平均値を熱時寸法変化の値とした。寸法変化率が0.1%未満であれば、寸法安定性が良好であると判断した。
(10)表面外観(60°グロス)
上記(7)と同様の平板の成形品を作製した。平板の中央部を、光沢計(HORIBA製IG320)を用いてJIS−K7150に準じて60度グロスを測定した。
測定値が大きいほど表面外観に優れると判断した。
〔(A)ポリアミドの製造〕
(製造例1)
CHDA800g(4.65モル)、及びC10DA520g(3.02モル)、及びC6DA189g(1.63モル)、酢酸3g(0.05モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%の水混合液を作製した。得られた水混合液を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込んだ。次に、オートクレーブ内の液温(内温)が50℃になるまで加温した。
その後、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内(以下、単に「槽内」ともいう。)の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記した。)、約2.5kg/cmになるまで加熱を続けた。このとき液温は約145℃であった。槽内の圧力を約2.5kg/cmに保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、槽内の水溶液の濃度が約75質量%になるまで濃縮した。水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cmになるまで加熱を続けた。槽内の圧力を約30kg/cmに保つため水を系外に除去しながら、最終温度(約330℃)より60℃低い温度(約270℃)になるまで加熱を続けた。さらに加熱を続けながら、槽内の圧力を30分間かけて大気圧(ゲージ圧は0kg/cm)になるまで降圧した。
その後、槽内の樹脂温度(液温)の最終温度が約330℃になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度は約335℃のまま、槽内を真空装置で約13.3kPa(約100torr)の減圧下に10分維持し、重合体を得た。その後、得られた重合体を、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミドのペレットを得た。
溶融重合を用いて得られたポリアミドペレット10kgを円錐型リボン真空乾燥機(株式会社大川原製作所製、商品名リボコーンRM−10V)に入れ、真空乾燥機内を充分に窒素置換した。真空乾燥機内に1L/分で窒素を流したまま、ポリアミドペレットを攪拌しながら240℃で10時間、加熱した。その後、窒素を流通したまま真空乾燥機内の温度を約50℃まで下げて、ポリアミドペレットを、ペレット状のまま真空乾燥機から取り出し、ポリアミド(以下、「PA−1」ともいう。)を得た。得られたポリアミドを、窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%未満に調整してから、ポリアミドの各特性を上記測定方法に基づいて測定した。
(製造例2〜4)
(a)脂環族ジカルボン酸、(b)炭素数8以上のジアミン、(b)炭素数8以上のジアミンよりも炭素数の少ないジアミンを、表1に記載の化合物及び量を用いたこと、並びに樹脂温度の最終温度を表1に記載の温度にしたこと以外は、製造例1に記載した方法と同様の方法でポリアミドの重合反応を行ってポリアミドのペレットを得た。
(製造例5)
ポリアミド9T(以下、「PA−5」とも略記する)を、特開平7−228689号公報の実施例1に記載された方法に従って製造した。その際、原料のジカルボン酸として、テレフタル酸を用い、原料ジアミンとして、1,9−ノナメチレンジアミン及び2−メチルオクタメチレンジアミン[1,9−ノナメチレンジアミン:2−メチルオクタメチレンジアミン=80:20(モル比)]を用いた。
具体的には、上記の各原料及び蒸留水等を20L容のオートクレーブに入れて水混合液を得た。次に、このオートクレーブ内を窒素で置換した。その後、オートクレーブ内の水混合液を、100℃で30分間撹拌した。
次に、2時間かけてオートクレーブの内部温度を210℃まで昇温した。その際、オートクレーブは22kg/cmまで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後、オートクレーブの内部温度を230℃に昇温した。その後2時間、オートクレーブの内部温度を230℃で恒温し、水蒸気を徐々に抜いてオートクレーブの内の圧力を22kg/cmに保ちながら反応させた。次に、30分かけてオートクレーブの内の圧力を10kg/cmまで下げ、さらに1時間反応させて、プレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。粉砕したプレポリマーを、230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合し、ポリアミド(PA−5)を得た。ポリアミド(PA−5)の各特性を上記測定方法に基づいて測定した。
〔ポリアミド組成物の製造〕
上記製造例1〜5で得られたポリアミド(PA−1)〜(PA−5)と、上記各原料とを、下記表2に記載の種類及び割合で用いて、ポリアミド組成物を以下のとおり製造した。
ポリアミド組成物の製造装置としては、二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。
二軸押出機は、押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口を有し、9番目のバレルに下流側第2供給口を有していた。また、二軸押出機において、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)は48であり、バレル数は12であった。
二軸押出機において、上流側供給口からダイまでの温度を上記製造例にて製造した各(A)ポリアミドの融点Tm2+20℃に設定し、スクリュー回転数250rpm、吐出量15kg/hに設定した。
表2に記載の種類及び割合となるように、(A)ポリアミド、(C)造核剤、カーボンブラック、金属酸化物、離型剤、を、ドライブレンドした後に二軸押出機の上流側供給口より供給した。
次に、表2に示すポリアミド組成物を製造する場合には、二軸押出機の下流側第2供給口より、下記表2に記載の種類及び割合で(B)無機充填材を供給した。
上記のとおり供給した原料を二軸押出機で溶融混練してポリアミド組成物のペレットを作製した。
得られたポリアミド組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、ポリアミド組成物中の水分量を500ppm以下にした。
〔ポリアミド成形品の製造〕
(実施例1〜7及び比較例1)
水分量を調整した後のポリアミド組成物を用いて、成形片に成形した。得られたポリアミド成形品の諸物性を上記方法に基づいて測定した。
表2に示すように、実施例1〜7の成形品は、低ソリ性、吸水寸法変化、熱時寸法変化、外観が優れることがわかった。また実施例7の成形品は機械強度、低ソリ性、外観性のバランスに優れ、さらにひけが少なかった。
本発明のポリアミド成形品は、高温のリフローはんだ付け工程に耐え得る耐熱性を有し、加熱時や吸水時に膨張や収縮しにくいという寸法安定性、組み込み時にソリが小さいという低ソリ性、外観に優れ、かつ摺動運動による塵埃の発生が少ないため、携帯電話、ゲーム機、パソコン、医療機器及び自動車などの部品として好適に利用することができる。
1:撮像素子
2:基板
3:ホルダ
4:レンズ
5:レンズユニット
6:バレル
7:IRフィルター

Claims (13)

  1. (a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と、(b)炭素数8以上の脂肪族ジアミンを少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含む(A)ポリアミドと、
    (B)無機充填材を20〜75質量%と、
    (C)造核剤とを含有し、
    JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tcが250℃以上であり、
    最薄部の厚みが1mm以下であるポリアミド成形品。
  2. 前記(b)ジアミン単位が分岐ジアミンを1〜49モル%含む請求項1に記載のポリアミド成形品。
  3. 前記(b)ジアミン単位が、前記脂肪族ジアミンよりも炭素数の少ない脂肪族ジアミンをさらに含む請求項1または2に記載のポリアミド成形品。
  4. 前記(B)無機充填材がガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー及びミルドファイバーから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド成形品。
  5. 成形品における前記(A)ポリアミドの数平均分子量Mnが6000〜16000である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド成形品。
  6. 成形品における前記(A)ポリアミドの重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnが4.0以下である請求項5に記載のポリアミド成形品。
  7. 成形品における前記(A)ポリアミドの末端基のカルボキシル末端とアミノ末端の比であるカルボキシル末端/アミノ末端が0.50以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミド成形品。
  8. 成形品における前記脂環族ジカルボン酸単量体単位のトランス異性体比率が71〜100モル%である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリアミド成形品。
  9. カーボンブラックをさらに0.01〜3.0質量%含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリアミド成形品。
  10. 金属水酸化物及び/又は金属酸化物をさらに含む請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリアミド成形品。
  11. 離型剤をさらに含む請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリアミド成形品。
  12. JIS−K7150に準じた60度グロスが50以上である請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリアミド成形品。
  13. カメラモジュールである請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリアミド成形品。
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