JP2019202457A - ガラス積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】紫外線遮蔽機能と可視光透過機能を両立することができる、車両用のガラス積層体を提供する。【解決手段】本発明のガラス積層体は、自動車に取り付けられるガラス積層体であって、少なくとも1つのガラス板を含み、湾曲したガラス体と、前記ガラス体の少なくとも一方の面に積層され、紫外線を遮蔽可能な遮蔽膜と、を備え、前記ガラス体は、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが、70%以上であり、前記遮蔽膜の膜厚の最大値Tmaxと、前記膜厚の最小値Tminとの関係が、1≦Tmax/Tmin<5を充足する。【選択図】図1

Description

本発明は、自動車に取付けられるガラス積層体及びその製造方法に関する。
車両用に取り付けられウインドシールド、サイドガラスには、可視光を透過させながら、日焼け防止の観点から、紫外線を遮蔽する機能が求められている。このようなガラスとしては、例えば、特許文献1に記載のように、ガラス板に、遮蔽膜を積層し、紫外線の遮蔽機能を高めている。
特許第5396265号公報
しかしながら、ガラス板に遮蔽膜を積層すると、可視光透過率が低下することが知られている。したがって、ガラス板に遮蔽膜を積層する場合には、可視光透過率とのバランスを考慮する必要があり、そのようなガラス積層体が要望されていた。本発明は、紫外線遮蔽機能と可視光透過機能を両立することができる、車両用のガラス積層体を提供することを目的とする。
項1.自動車に取り付けられるガラス積層体であって、
少なくとも1つのガラス板を含み、湾曲したガラス体と、
前記ガラス体の少なくとも一方の面に積層され、紫外線を遮蔽可能な遮蔽膜と、
を備え、
前記ガラス体は、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが、70%以上であり、
前記遮蔽膜の膜厚の最大値Tmaxと、前記膜厚の最小値Tminとの関係が、1≦Tmax/Tmin<5を充足する、ガラス積層体。
項2.前記ガラス体の曲率半径の最大値が、10000mm以下である、項1に記載のガラス積層体。
項3.垂直からの前記自動車への取付角度が30度以下である、項1または2に記載のガラス積層体。
項4.前記ガラス体において、前記Tmaxが測定される位置が、前記自動車への取付時に、前記Tminが測定される位置よりも下側にある、項1から3のいずれかに記載のガラス積層体。
項5.前記ガラス体の厚みが2.5mm以上である、項1から4のいずれかに記載のガラス積層体。
項6.前記Tminが、1.5μm以上である、項1から5のいずれかに記載のガラス積層体。
項7.Tuv400≦2.0%を充足する、項1から6のいずれかに記載のガラス積層体。
項8.波長が420nmの光の透過率が20%以上である、項7に記載のガラス積層体。
項9.前記ガラス体の単位面積あたりに含まれる3価酸化鉄の量が、Fe23に換算して1〜10mg/cm2である、項7または8に記載のガラス積層体。
項10.前記ガラス積層体における、波長が420〜800nmの光の透過率の平均値がTavgとしたとき、
前記ガラス積層体において、透過率がTavg*0.9である光の波長と、
前記ガラス積層体において、透過率がTavg*0.1である光の波長と、
の差が22nm以下である、項7から9のいずれかに記載のガラス積層体。
項11.JIS K7373:2006に基づく黄色度YIが、10以下である、項7から10のいずれかに記載のガラス積層体。
項12.波長が420nmの光の透過率が85%以下である、項7から11のいずれかに記載のガラス積層体。
項13.JIS T7330:2000に基づくブルーライトカット率が35%以上である、項12に記載のガラス積層体。
項14.前記Tminが、2〜2.5μmである、項7から13のいずれかに記載のガラス積層体。
項15.前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の少なくとも1つは、表面圧縮応力が20MPa未満である、項7から14のいずれかに記載のガラス積層体。
項16.前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の少なくとも1つは、表面圧縮応力が80MPa以上である、項7から15のいずれかに記載のガラス積層体。
項17.前記ガラス積層体において、前記遮蔽膜が形成された面に対して、JIS R3221に準拠し、500g荷重で1000回のテーバー摩耗試験を行った後、前記遮蔽膜が剥離せず、且つ前記試験後の前記ガラス積層体のヘイズ率が5%以下である、項7から16のいずれかに記載のガラス積層体。
項18.前記ガラス積層体において、前記遮蔽膜が形成された面とは反対側の面から、波長が295〜450nm、照度76mW/cm2の紫外線を100時間照射した後のTuv400と、前記紫外線の照射前のTuv400との差が、2%以下である、項7から17のいずれかに記載のガラス積層体。
項19.前記遮蔽膜には、赤外線吸収剤が含まれており、
熱暑感透過率が50%以下である、項1から18のいずれかに記載のガラス積層体。
項20.前記ガラス体の上辺に沿って、前記遮蔽膜が積層されていない非積層領域が設けられている、項1から19のいずれかに記載のガラス積層体。
項21.外部に露出する前記ガラス体の表面には、マークが形成されており、
前記マークは、表面粗さRaが1.5μmである粗面部により構成されている、項1から20のいずれかに記載のガラス積層体。
項22.前記遮蔽膜において、前記ガラス体と接触する面とは反対の面に、屈折率が前記遮蔽膜よりも小さい機能膜が積層されている、項1から21のいずれかに記載のガラス積層体。
項23.前記遮蔽膜において、前記ガラス体と接触する面とは反対の面に、第1防曇膜が積層されている、項7から22のいずれかに記載のガラス積層体。
項24.前記ガラス体の他方の面に、第2防曇膜が積層されており、
前記第1及び第2防曇膜は、シースルー膜である、項23に記載のガラス積層体。
項25.前記遮蔽膜が、防曇機能を有する、項7から22のいずれかに記載のガラス積層体。
項26.前記自動車のウインドシールド、または前部ドアのサイドガラスとして、用いられる項7から22のいずれかに記載のガラス積層体。
項27.少なくとも一つのガラス板を含む湾曲したガラス体を略水平に支持する、第1ステップと、
前記ガラス体の一方の面に対し、ノズルから遮蔽膜用液を塗布することで、前記一方の面に遮蔽膜を形成する、第2ステップと、
を備え、
前記第2ステップでは、前記遮蔽膜用液を前記一方の面の中心付近から渦状に塗布するように、前記ノズルを前記ガラス体に対して相対的に移動させる、ガラス積層体の製造方法。
項28.前記遮蔽膜の膜厚の最大値Tmaxと、前記膜厚の最小値Tminとの関係が、1≦Tmax/Tmin<5を充足する、項27に記載のガラス積層体の製造方法。
項29.前記遮蔽膜用液の塗布量は、前記一方の面に対し、20〜50g/m2である、項27または28に記載のガラス積層体の製造方法。
項30.前記遮蔽膜用液を渦状に塗布するための、前記ノズルの隣接する経路間の距離は、3〜30mmである、請求項27から29のいずれかに記載のガラス積層体の製造方法。
本発明に係るガラス積層体によれば、紫外線遮蔽機能と可視光透過機能を両立することができる。
本発明に係るガラス積層体の断面図である。 ガラス積層体の曲率半径を説明する断面図である。 シャープカットを説明する図である。 合わせガラスの断面図である。 膜形成溶液の塗布方法を示す側面図である。 図5の方法で塗布された膜形成溶液の塗布経路を示す平面図である。 遮蔽膜の膜厚の測定方法を説明する図である。 ガラス積層体における光の光路を説明する断面図である。 ガラス積層体における遮蔽膜の塗布範囲を説明する正面図である。 ガラス積層体の取付角度を説明する断面図である。 ガラス積層体を通過する太陽光の光路長を説明する図である。 ガラス積層体を通過する太陽光の光路長を説明する図である。 実施例1における遮蔽膜の膜厚とYAの関係を示すグラフである。 における波長ごとの光の透過率を示すグラフである。
以下、本発明に係る車両に取り付けられるガラス積層体について、図面を参照しつつ説明する。このガラス積層体は、図1に示すように、湾曲したガラス体1と、その凹型の全面に亘って形成された遮蔽膜2と、を備えている。以下では、ガラス体1において遮蔽膜2が形成されている面を内面と称することとする。そして、このガラス積層体は、車両において、例えば、フロントガラス(ウインドシールド)、前部ドアの昇降ガラス、後部ドアの昇降ガラス、リアガラス、固定されたサイドガラスなどに用いられる。このうち、フロントガラス、前部ドアガラス、前部固定サイドガラス等の、運転者が外部を見るためのガラスは、高い透明性が求められる。以下、これらガラス体及び遮蔽膜について、詳細に説明する。
<1.ガラス体>
ガラス体1は、一枚のガラス板で構成されるほか、2枚のガラス板を中間膜を介して貼り合わせた合わせガラスで構成することもできる。なお、以下で、ガラス体1と称する場合、例えば、一枚のガラス板でガラス体1が構成される場合には、一枚のガラス板の物性等が示され、ガラス体1が合わせガラスである場合には、合わせガラスとしての物性等が示される。フロントガラスは、合わせガラスによって形成され、その他のサイドガラス等は一枚のガラス板で形成されることが多い。但し、フロントガラス以外の他のガラスも合わせガラスによって形成することもできる。また、ガラス体1を構成するガラス板は、公知のガラス板を用いることができ、クリアガラス、グリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することができる。以下、ガラス体に用いられるガラス板について説明する。
<1−1.厚み>
ガラス体1を合わせガラスで構成する場合には、外側ガラス板と内側ガラス板の厚みを同じにしてもよいし、相違させてもよい。外側ガラス板は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であるため、その厚みを、1.8mm以上、1.9mm以上、2.0mm以上、2.1mm以上、2.2mm以上の順で好ましい。また、外側ガラス板の厚みの上限は、5.0mm以下、4.0mm以下、3.1mm以下、2.5mm以下、2.4mm以下の順で好ましい。この中で、2.1mmより大きく2.5mm以下、特に、2.2mm以上2.4mm以下が好ましい。
一方、内側ガラス板の厚みは、合わせガラス1の軽量化のため、外側ガラス板11よりも厚みを小さくすることが好ましい。具体的には、内側ガラス板12の厚みは、0.6mm以上、0.8mm以上、1.0mm以上、1.3mm以上の順で好ましい。また、内側ガラス板12の厚みの上限は、1.8mm以下、1.6mm以下、1.4mm以下、1.3mm以下、1.1mm未満の順で好ましい。この中で、例えば、0.6mm以上1.1mm未満が好ましい。
また、ガラス体1を一枚のガラス板で構成する場合、及び合わせガラスの総厚は、例えば、2.5mm以上とすることが好ましい。一方、上限値としては、5.0mm以下にすることができるが、特には限定されない。但し、ガラス体1の厚みが大きくなると、後述するように外部からガラス体1へ入射する光の光路が、入射位置に応じて大きく変化するおそれがあり、後述するように、紫外線吸収性能に差が生じるおそれがある。
ガラス体1の内面の上下方向に沿う線の曲率半径は、10000mm以下とすることができ、5000mm以下、更には2000mm以下とすることが好ましい。ここでいう曲率半径とは、図2に示すように、ガラス体1の内面において、車両に設置されたときの上辺11及び下辺12の左右方向の中心を結ぶ線Lの曲率半径とする。但し、ガラス体1の内面は、曲率半径が一定の面で形成されるほか、曲率半径の異なる複数の曲面が連結されることで形成されることもあるため、複数の曲率半径が存在する場合には、最大の曲率半径を意味こととする。
<1−2.組成>
ガラス板の組成は、特に制限されないが、Fe23の濃度を高め、必要に応じてTiO2、CeO2などその他の紫外線吸収成分を添加した組成を有するソーダ石灰珪酸塩ガラス板を用いることが好ましい。これにより、紫外線遮蔽性能を向上することができる。
フロントガラス(ウインドシールド)や前部ドアなどに用いられるガラス板は、透明性が求められるため、単位面積あたりに含まれる3価酸化鉄の量は、Fe23に換算表示して1〜10g/cm2とすることができる。特に、下限値は、2mg/cm2であることが好ましく、3mg/cm2であることがさらに好ましい。一方、上限値は、8mg/cm2であることが好ましく、6mg/cm2であることがさらに好ましく、5mg/cm2であることが特に好ましい。これは、3価酸化鉄の量が多いと、ガラス体1の透明性が低下し、後述するYAが低くなるおそれがあることによる。一方、3価酸化鉄の量が少ないと、ガラス体の透過率が高くなるが、波長が400nm付近の紫外線の吸収率が低くなるおそれがある。したがって、3価酸化鉄の量は上記の範囲にすることが好ましい。
ガラス板は、公知のフロート法で形成することができる。この方法では、溶融スズなどの溶融金属の上に溶融ガラスを連続的に供給し、供給した溶融ガラスを溶融金属の上で流動させることにより帯板状に成形する。このように成形されたガラスをガラスリボンと称する。そして、ガラスリボンは、下流側に向かうにつれて冷却され、冷却固化された上で溶融金属から引き上げられる。そして、徐冷された後、切断される。こうして、ガラス板が得られる。ここで、フロートガラス板において、溶融金属と接触していた面をボトム面と称し、それとは反対の面をトップ面と称することとする。ボトム面及びトップ面は、未研磨であってよい。そして、ボトム面は、溶融金属と接していたため、溶融金属がスズである場合には、ボトム面に含有される酸化スズの濃度が、トップ面に含有される酸化スズの濃度よりも大きくなる。
<1−3.光学特性>
ガラス体の光学特性は、種々の設定が可能であるが、例えば、以下の通りにすることが好ましい。
(1-3-1)紫外線透過率
ガラス体の紫外線透過率は、以下の通りにすることができる。
Tuv400≦50% (1)
但し、Tuv400はISO13837:2008 convention Aに定める紫外線透過率である。紫外線透過率は、いずれも公知の分光光度計、例えば「UV−3100PC」(島津製作所製)で測定することができる。また、上記式(1)におけるTuv400については、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
(1-3-2)可視光透過率1
ガラス体1は、波長420〜800nmの光に対する透過率の平均をTavgとしたとき、ガラス体1の透過率がTavg*0.9である波長W1と、ガラス体1の透過率がTavg*0.1である波長W2との差が20〜50nmであることが好ましい。なお、Tavgは、波長1nmごとの透過率の算術平均として算出することができる。この点は、後述するガラス積層体のTavgにおいても同じである。
なお、ガラス体1の透過率がTavg*0.9になる波長が2つ以上ある場合、そのうち最も短い波長をW1とする。同様に、Tavg*0.1が2以上ある場合は、最も長い波長をW2とする。
波長420〜800nmの光(可視光)の透過率は概ね高く、例えば、500nmを超えると、ある程度の透過性を保つ。したがって、Tavg*0.9となる波長W1と、Tavg*0.1となる波長W2との差が小さいということは、例えば、図3に示すように、紫外線域から可視光域に入ったときの透過率が急激に上昇することを意味する。この波長の差(以下、シャープカットという)を、20〜50nmのように低くすることで、紫外線域での透過率が低くなり、十分な紫外線遮蔽機能を果たす一方、可視光域に入ると、透過率が急激に上昇するため、ガラス体1において視野を妨げるような着色等が少なくすることができる。
(1-3-3)可視光透過率2
上述したフロントガラス、前部サイドガラスなど、透明性の高いガラスに用いられるガラス体1においては、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが70%以上であることが好ましい。
(1-3-4)近赤外線透過率
ガラス体は、波長が1500nmの光の透過率が35%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、25%以下であることが特に好ましい。
波長が1500nmの光は、近赤外線領域、特に日射光の近赤外線領域の光を示している。このような光の透過率が上記のように35%以下であれば、日射光の近赤外線を適度に遮蔽し、自動車の窓ガラスとして、このガラス体が用いられると、車内の温度が高くなりすぎるのを和らげることができる。
(1-3-5)黄色度
ガラス体1は、CIE標準のC光源における透過光に基づく、JIS K7373:2006で規定された黄色度YIについて、以下の式(2)を充足することが好ましい。これにより、ガラス体1の黄色度が低減でき、視認性を向上することができる。
YI≦5 (2)
<1−4.強度>
ガラス体1を構成するガラス板の強度については、以下のように設定されることが好ましい。例えば、熱強化処理や化学強化処理等の強化が行われていない未強化ガラスとしては、表面圧縮応力が20MPa未満のガラス板を用いることが好ましい。一方、強化が行われている強化ガラスとしては、表面圧縮応力が80MPa以上であるガラス板を用いることが好ましい。なお、複数のガラス板を有する合わせガラスでは、少なくとも一枚のガラス板の表面圧縮応力が80MPa以上であることが好ましいが、すべてのガラス板の表面圧縮応力が80MPa以上とすることができる。また、一枚のガラス板の表面圧縮応力を20MPa未満とし、もう一枚のガラス板の表面圧縮応力が80MPa以上とすることもできる。
強化ガラスは、一般的に、未強化ガラスと比べて、紫外線遮蔽機能が向上する。したがって、強化ガラスにおいては、例えば、後述するように、遮蔽膜2の厚みを薄くするなどして膜により紫外線遮蔽機能を低下することができる。これにより、コストの低減に寄与する。一方、未強化ガラスであれば、特に後述するように、遮蔽膜2が均一になるように膜厚を調整したり、膜厚を厚くするなどの調整を行えば、紫外線遮蔽機能は向上する。
<1−5.マーク>
ガラス体1を構成するガラス板の表面には、製造元、製造番号、製品名、規格などを示すマークを施すことができる。マークは、種々の方法により形成することができるが、例えば、ガラス板の表面、あるいは遮蔽膜の表面に形成された粗面部によりマークを構成することができる。すなわち、ショットブラスト法、ウェットエッチングなどにより、ガラス板あるいは遮蔽膜の表面の一部の表面粗さを大きくすることで、所定の形状の粗面部を形成することができる。このような粗面部の表面粗さRaは、例えば、1.5μm以上とすることができる。なお、表面粗さRaは、JIS B 0601:2001に準拠して求められる算術平均粗さである。
あるいは、不透明材料による薄膜で、マークを形成することができる。不透明材料は、着色セラミックカラー、導電性ペースト、ガラスへの印刷に適した各種市販品を用いることができ、これらをスクリーン印刷などで、ガラス板の表面に薄膜状に印刷し、所定の形状のマークを形成することができる。
<1−6.合わせガラスの中間膜>
ガラス体が、合わせガラスで構成される場合には、図4に示すように、外側ガラス板101と内側ガラス板102との間に、樹脂製の中間膜103を配置したものである。中間膜103の材料は、熱可塑性樹脂であり、合わせガラスとした際のガラス板との接着度の観点より、ポリビニルアセタール系またはエチレン−酢酸ビニル共重合体系の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。中でもポリビニルブチラール系(PVB系)の熱可塑性樹脂が好ましい。上記熱可塑性樹脂と公知の可塑剤とからなる熱可塑性樹脂組成物を、例えば混練して成形することで、中間膜103が得られる。なお、中間膜103は、市販される熱可塑性樹脂フィルムをそのまま使用することもできる。
可塑剤としては、通常中間膜用に使用されているものを用いることができるが、例えば、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−カプリエート等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
中間膜103の膜厚は、特に規定されないが、0.3〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜4.0mmであることがさらに好ましく、0.6〜2.0mmであることが特に好ましい。
また、中間膜103は、複数の層で形成することもできる。例えば、図4に示すように、軟質のコア層1031を、これよりも硬質のアウター層1032で挟持した3層で中間膜103を構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、軟質のコア層1031を有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層1031を含む2層(コア層が1層と、アウター層が1層)、またはコア層1031を中心に配置した5層以上の奇数の層(コア層が1層と、アウター層が4層)、あるいはコア層1031を内側に含む偶数の層(コア層が1層と、他の層がアウター層)で形成することもできる。あるいは、一層で中間膜103を構成することもできる。
コア層1031はアウター層1032よりも軟質であるが、この点については、ヤング率を基準として材料を選択することができる。具体的には、周波数100Hz,温度20度において、1〜20MPaであることが好ましく、1〜16MPaであることがさらに好ましい。更には、1〜10MPaであることが好ましい。測定方法としては、例えば、Metravib社製固体粘弾性測定装置DMA 50を用い、ひずみ量0.05%にて周波数分散測定を行うことができる。以下、本明細書においては、特に断りのない限り、ヤング率は上記方法での測定値とする。但し、周波数が200Hz以下の場合の測定は実測値を用いるが、200Hzより大きい場合には実測値に基づく算出値を用いる。この算出値とは、実測値からWLF法を用いることで算出されるマスターカーブに基づくものである。
一方、アウター層1032のヤング率は、特には限定されず、コア層1031より大きければよい。例えば、周波数100Hz,温度20度において560MPa以上、650MPa以上、1300MPa以上、1764MPa以上の順で好ましい。一方、アウター層1032のヤング率の上限は特には限定されないが、例えば、加工性の観点から設定することができる。例えば、1750MPa以上となると、加工性、特に切断が困難になることが経験的に知られている。また、コア層1031を挟む一対のアウター層1032を設ける場合、外側ガラス板11側のアウター層1032のヤング率を、内側ガラス板102側のアウター層1032のヤング率よりも大きくすることが好ましい。これにより、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能が向上する。
また、各層1031,1032を構成する材料は、特には限定されないが、少なくともヤング率が上記のような範囲とすることができる材料であることが必要である。例えば、アウター層1032は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層1031は、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはアウター層1032を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層1031を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜103と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。
一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、それらの条件から選ばれる少なくとも1つを適切に調整することにより、同じポリビニルブチラール樹脂であっても、アウター層1032に用いる硬質なポリビニルブチラール樹脂と、コア層1031に用いる軟質なポリビニルブチラール樹脂との作り分けが可能である。さらに、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化かによっても、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層1032がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−へプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。なお、所定のヤング率が得られる場合は、上記樹脂等に限定されることはない。
また、中間膜103の総厚は、上述した膜厚と同じである。このうち、コア層1031の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがさらに好ましい。0.1mmよりも小さくなると、軟質なコア層1031の影響が及びにくくなり、また、2.0mmや0.6mmより大きくなると総厚があがりコストアップとなるからである。一方、アウター層1032の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜103の総厚を一定とし、この中でコア層1031の厚みを調整することもできる。
コア層1031の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH−5500)によって合わせガラスの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層1031の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層1031の厚みとする。例えば、合わせガラスの拡大写真を撮影し、このなかでコア層1031を特定して厚みを測定することができる。
なお、中間膜103の厚みは全面に亘って一定である必要はなく、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いられる合わせガラス用に楔形にすることもできる。この場合、中間膜103の厚みは、最も厚みの小さい箇所、つまり合わせガラスの最下辺部を測定する。
図4に示す中間膜103の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作成した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。
<2.遮蔽膜>
遮蔽膜2は、可視光外の光、例えば、紫外線を吸収する成分(紫外線吸収剤)を含む膜である。紫外線吸収剤は、膜を構成するマトリクス成分に溶解して存在していてもよく、紫外線吸収剤が微粒子形状でマトリクス成分中に分散されて存在してもよい。マトリクス成分は、膜としての透明性を保ちつつ、紫外線吸収剤を保持できればよい。したがって、例えば、シリカ、アルミナ、チタンのような無機成分が主成分であってもよく、あるいは、ポリエステル樹脂、ウレタンアクレリート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂など有機成分が主成分であってもよい。この膜の製造方法は、特には限定されないが、紫外線吸収剤とマトリクス成分とを含む膜形成溶液をガラス体1に塗布し、乾燥、あるいは必要に応じて加熱乾燥を経ることで、遮蔽膜を形成することができる。以下、詳細に説明する。
まず、遮蔽膜2を形成するための膜形成溶液を構成する3種類の各構成成分について説明し、その後、膜形成溶液の調製方法について、以下に説明する。
<2−1.膜形成溶液1>
(シリコン化合物A)
シリコン化合物Aは、式(3)で示される化合物である。
SiX1 4(3)
式(3)において、X1は加水分解性官能基又はハロゲン原子である。加水分解性官能基は、加水分解触媒により加水分解される官能基であって、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基及びアルケニルオキシ基から選ばれる少なくとも1種である。例示した加水分解性官能基は、いずれも加水分解によりヒドロキシル基へと変化する。好ましい加水分解性官能基はアルコキシル基である。アルコキシル基としては、炭素数1〜4のアルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基)を例示できる。ハロゲン原子は、例えば塩素及び臭素、好ましくは塩素である。
好ましいシリコン化合物Aとしては、テトラアルコキシシラン、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランを例示できる。シリコン化合物Aに代えて、あるいはこれと共に、予めシリコン化合物Aを少なくとも部分的に加水分解した化合物、又はシリコン化合物を少なくとも部分的に加水分解し、さらに重縮合した化合物を用いることもできる。シリコン化合物Aの加水分解物等は市販品として入手可能である。
(シリコン化合物B)
シリコン化合物Bは、式(4)で示される化合物である。
1 m2 nSiX2 4-m-n(4)
式(4)において、R1は反応性官能基を有する有機基であり、R2は反応性官能基を有しない有機基であり、X2は加水分解性官能基又はハロゲン原子であり、mは0以上2以下の整数であり、nは0以上2以下の整数であり、m+nは1以上2以下である。
反応性官能基は、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基、エポキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種である。エポキシ基は、グリシジル基、特にオキシグリシジル基の一部であってもよい。アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよい。好ましい反応性官能基は、エポキシ基及びアミノ基、特にエポキシ基である。反応性官能基を有する有機基は、例えば有機基自体が反応性官能基(例えばビニル基)であってもよく、また例えば反応性官能基により少なくとも1つの水素原子が置換された脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖アルキル基及び炭素数3〜10の分岐を有するアルキル基を例示できる。芳香族炭化水素基としてはフェニル基を例示できる。
反応性官能基を有しない有機基は、例えば、脂肪族又は芳香族の炭化水素基である。脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖アルキル基及び炭素数3〜10の分岐を有するアルキル基を例示できる。芳香族炭化水素基としてはフェニル基を例示できる。
2は加水分解性官能基又はハロゲン原子であり、X2の具体例はX1の具体例に同じである。
mは1又は2であってもよく、好ましいnは0又は1であってもよく、m+nは1又は2であってもよい。
シリコン化合物Bは、式(4)におけるmが1又は2であってnが0又は1であるシリコン化合物B1を含んでいてもよい。シリコン化合物B1としては、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを例示できる。シリコン化合物B1は、いわゆるシランカップリング剤である。シリコン化合物B1は、R1に含まれる反応性官能基として、エポキシ基を有することが好ましい。
シリコン化合物Bは、式(4)におけるmが0であって(反応性官能基を有する有機基R1を含まない)、nが1又は2であるシリコン化合物B2を含んでいてもよい。好ましいシリコン化合物B2としては、フェニル基を有するシリコンアルコキシド、具体的には、フェニルトリエトキシシランを例示できる。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]、ベンゾフェノン化合物[2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等]、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物[2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−s−トリアジン等]及びシアノアクリレート化合物[エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等]等を使用できる。また、紫外線吸収剤は、ポリメチン化合物、イミダゾリン化合物、クマリン化合物、ナフタルイミド化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物、イソインドリノン化合物、キノフタロン化合物及びキノリン化合物、チオフェン化合物、スチルベンゼン化合物、ナフタレン化合物及びベンズイミダゾール化合物から選ばれる少なくとも1種の有機色素であってもよい。紫外線吸収剤のうち好ましいのは、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物及びシアノアクリレート化合物から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましいのは、ベンゾフェノン化合物である。紫外線吸収剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤は、アミノ基及びヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種、特にヒドロキシル基、を分子内に有することが好ましく、特に2以上のヒドロキシル基を1つの分子内に有していることが好ましい。ここでも、アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよい。紫外線吸収剤は、ヒドロキシル基が2個以上結合したベンゼン骨格を有していてもよい。
紫外線吸収剤は、予めシリコン化合物B1等のシリコン化合物と反応させてシリル化しておく必要はなく、市販されている製品をそのまま使用すればよい。このため、本実施形態では、分子内にケイ素原子を含まない紫外線吸収剤をそのまま膜形成溶液の調製に用いることができる。紫外線吸収剤のシリル化は、紫外線吸収剤のブリードアウトの抑制に有効であるが、そのためだけの予備工程を要する。本実施形態では、紫外線吸収剤は、膜形成溶液において、通常、紫外線吸収剤との反応又は分子間相互作用が可能なその他の成分、具体的にはシリコン化合物A、シリコン化合物B、有機ポリマー等と反応したり、分子間相互作用する。この反応又は分子間相互作用は競争的に生じる。ここで、反応の例としては、共有結合やイオン結合が形成される反応を挙げることができる。分子間相互作用の例としては、水素結合やπ−π相互作用を挙げることができる。したがって、膜形成溶液がシリコン化合物B1(シランカップリング剤)を含んでいたとしても、紫外線吸収剤は、その全量がシリコン化合物B1と反応したり分子間相互作用することはなく、通常、その少なくとも一部がシリコン化合物A、シリコン化合物B(ただしシリコン化合物B1を除く)及び有機ポリマーから選ばれる少なくとも1つと反応したり分子間相互作用する。この反応又は分子間相互作用は、シリコン化合物B1との反応と同様、紫外線吸収剤を膜中に固定することによってブリードアウトの抑制に寄与する。
(有機ポリマー)
有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステルポリオール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリカプロラクトンポリオール、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアルキレングリコール系樹脂等が知られている。本実施形態において好ましい有機ポリマーは、分子内にエポキシ基を有する有機ポリマーである。ただし、この有機ポリマーは、膜形成溶液又は遮蔽膜中において、少なくとも一部の、場合によってはすべてのエポキシ基が開環して生成した有機ポリマーとして存在しうる。別の好ましい有機ポリマーとしては、シラノール基やフェノール性ヒドロキシル基と水素結合が可能な極性基(カルボニル基、ヒドロキシル基、フェノール性ヒドロキシル基等)を含む有機ポリマーが例示できる。この中でも特に好ましい有機ポリマーは、ポリアルキレングリコール系樹脂である。ポリアルキレングリコール系樹脂としては、グリコール類であるポリエーテルや、ポリエーテルの誘導体が例示でき、これらのポリマーの例として、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールジメタクリレートを挙げることができる。ポリアルキレングリコール系樹脂を用いると、遮蔽膜中に異物が発生することを効果的に抑制することができ、また膜形成溶液塗布後の乾燥温度が低い場合にも耐摩耗性の高い膜を得ることができる。さらに別の好ましい有機ポリマーとして、紫外線吸収剤の芳香環とπ−π相互作用することができる有機基(フェニル基、共役二重結合を有するアルケニル基等)を含む有機ポリマーが例示でき、このポリマーの例として、ビスフェノールポリオールを挙げることができる。有機ポリマーは、エタノール及び/又は水に溶解する有機ポリマーが好ましい。なお、エタノール(水)に溶解するか否かは、25℃のエタノール(水)100gに、有機ポリマーが1g以上溶解するか否かによって判断する。有機ポリマーには、紫外線吸収能が要求されないため、有機ポリマーは、紫外線吸収剤に該当しない化合物、具体的には上記に列挙したベンゾトリアゾール化合物からシアノアクリレート化合物までの化合物及び有機色素には該当しないものを用いるとよい。エポキシ基を有する有機ポリマーの分子中平均エポキシ基数は2〜10であってもよい。
エポキシ基を有する有機ポリマーとしては、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエステル化合物、ポリグリシジルアミン化合物等のポリグリシジル化合物を例示できる。エポキシ基を有する有機ポリマーは、脂肪族ポリエポキシド、芳香族ポリエポキシドのいずれであってもよいが、脂肪族ポリエポキシドが好ましい。好ましいエポキシ基を有する有機ポリマーは、ポリグリシジルエーテル化合物、特に脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物である。ポリグリシジルエーテル化合物は、ヒドロキシル基を2個以上有するアルコールのグリシジルエーテルが好ましい。なお、アルコールは、脂肪族アルコール、脂環式アルコール又は糖アルコールが好ましい。
ヒドロキシル基を2個以上有するアルコールのグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルを例示できる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうちでも、遮蔽膜の耐摩耗性の点から、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の3個以上のヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(1分子あたり平均のグリシジル基(エポキシ基)数が2を超えるもの)が好ましい。
有機ポリマーは、同じく有機物である紫外線吸収剤との高い親和性を通じて紫外線吸収剤の分散性の向上に寄与してブリードアウトを抑制する成分であり、膜の柔軟性が向上し、膜厚が厚い場合であっても膜にクラックを生じにくくすると共に、膜の耐摩耗性の向上にも寄与する成分である。また、特にエポキシ基を有する有機ポリマーは、透明基体(ガラス体)の反応性が低い表面に形成された膜の密着性の向上にも寄与する成分である。
(酸)
酸は、酸解離定数が1未満でありかつ沸点が130℃以下であり、無機酸であっても有機酸であってもよい。無機酸としては、塩酸、硝酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、好ましくは塩酸及び硝酸である。これらの揮発性の酸は、硫酸、リン酸に代表される不揮発性の無機酸と比較して、加熱による除去が容易である。
有機酸としては、例えばトリフルオロ酢酸(pKa:0.23、沸点:72.4℃)が挙げられる。沸点が低い有機酸は、揮発性の無機酸と同様、加熱による除去が容易である。無機酸、有機酸のいずれであっても、本実施形態においては、乾燥工程において除去が容易な酸が加水分解触媒として用いられる。膜に残存する加水分解触媒由来の成分は、長期使用後の膜の透明性を損なう要因となりうる。
よく知られているとおり、酸の化学式を[HA]とすると、酸のpKaは、以下の式から算出される。
pKa=−log{[H3+][A-]/[HA]}
式中、[H3+]は酸の水溶液中の水素イオン濃度(mol/L)、[A-]は酸の水溶液中の塩基濃度(mol/L)、[HA]はHAの水溶液中の濃度(mol/L)を表す。なお、HAの酸性基から酸が多段階に解離する場合、pKaは第一段目の酸解離定数を意味する。
pKaが1未満である酸を用いると、pKaが相対的に高い酸を加水分解触媒として用いた場合よりも、より緻密な遮蔽膜を得ることが容易となる。膜の緻密性の向上により膜の耐摩耗性は向上する。
酸の沸点は、好ましくは100℃以下であり、80℃以下であってもよい。
酸は、塩酸、硝酸及びトリフルオロ酢酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
膜形成溶液は、赤外線吸収剤を含んでいてもよい。赤外線吸収剤としては、例えば、ポリメチン化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ナフトキノン化合物、アントラキノン化合物、ジチオール化合物、インモニウム化合物、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ピリリウム化合物、セリリウム化合物、スクワリリウム化合物、ベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収剤;酸化タングステン、酸化錫、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、インジウム錫酸化物、アンチモン錫酸化物、フッ素ドープ酸化錫等の無機系赤外線吸収剤;等が挙げられる。赤外線吸収剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。赤外線吸収剤は、好ましくはインジウム錫酸化物、アンチモン錫酸化物及びフッ素ドープ酸化錫から選ばれる少なくとも1種である。
膜形成溶液は、無機酸化物微粒子を含んでいてもよい。無機酸化物微粒子を構成する無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより膜形成溶液に導入できる。無機酸化物微粒子は、遮蔽膜に加えられた応力を、遮蔽膜を支持する基体に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、無機酸化物微粒子の添加は、遮蔽膜の耐摩耗性を向上させる観点から有利である。
膜形成溶液には、構成成分中の有機物の溶解性を高めるために有機溶媒を加えることが好ましい。有機溶媒としては、水と任意の比率で混合する溶媒が好ましく、特に炭素数が1〜3の低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール)が好適である。
膜形成溶液には、その他の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、遮蔽膜の外観や紫外線吸収剤の分散性を改善する機能を有する界面活性剤が挙げられる。添加剤として、レベリング剤、消泡剤、防腐剤等を加えてもよい。
式(3)により示されるシリコン化合物Aの加水分解物が縮重合することにより生成する成分CAはSiO2である。式(4)により示されるシリコン化合物Bの加水分解物が縮重合することにより生成する成分CBは、[R1 m2 nSiO(4-m-n)/2]により示すことができる。成分CBには、シリコン化合物B1の加水分解物が縮重合することにより生成する成分CB1と、シリコン化合物B2の加水分解物が縮重合することにより生成する成分CB2が含まれる。ここで、R1、R2、m及びnは、上記で述べたとおりである。
成分CAと成分CBとの合計質量rに対する成分CAの合計質量pの比(p/r)は、0.1以上0.8未満が好ましく、0.35以上0.48以下がより好ましく、0.40以上0.48以下であってもよい。成分CAと成分CBとの合計質量rに対する成分CBの合計質量qの比(q/r)は、0.2を超え0.9以下が好ましく、0.52以上0.65以下がより好ましく、0.52以上0.60以下であってもよい。また、成分CAと成分CBとの合計質量rに対する成分CB1の質量cの比(c/r)は、0以上0.9以下であってもよい。また、成分CAと成分CBとの合計質量rに対する成分CB2の質量dの比(d/r)は、0以上0.4以下であってもよい。
また、成分CAと成分CBとの合計質量rに対する有機ポリマーの質量sの比(s/r)は、0.001以上1以下が好ましく、0.001以上0.8以下がより好ましく、0.001以上0.6以下であってもよい。
以上の比(p/r)、(q/r)、(c/r)、(d/r)及び(s/r)がすべて望ましい範囲となるように、膜形成溶液を調製することが好ましい。また、紫外線吸収剤は、形成された遮蔽膜における含有率が0.5〜40質量%となるように、膜形成溶液に含ませることが好ましく、さらに好ましいのは、10〜40質量%である。また、成分CAと成分CBとの合計質量rに対する紫外線吸収剤の質量eの比(e/r)は、0.005以上0.7以下であってもよい。
膜形成溶液中の酸の好ましい含有率は、膜形成溶液の質量に対して、0.001〜1質量%、より好ましくは0.001〜0.6質量%である。
膜形成溶液中の水のモル数は、膜形成溶液に含まれるシリコン原子の総モル数に対して、好ましくは15倍以下、より好ましくは4〜12倍、例えば4〜10倍である。水のモル数を過大とせず上記程度に抑えると、透明な膜を得ることが容易となる。また、水のモル数を過少とせず少なくとも上記程度を確保すると、より緻密で高い耐摩耗性を有する膜を得ることが容易になる。
膜形成溶液を調製する方法は、特に制限はないが、1つの容器、例えば撹拌装置を備えた混合槽に、上述した各構成成分を順序に制限なく順次供給し、撹拌することによって実施するとよい。容器内には、紫外線吸収剤として、シリコン化合物A、シリコン化合物Bのいずれとも反応していない紫外線吸収剤のみが供給される。言い換えると、紫外線吸収剤は、その全量が、シリコン化合物A及びシリコン化合物Bを用いたシリル化処理を受けることなく容器に供給される。また、本実施形態では、好ましくは、容器内に、加水分解触媒として、酸解離定数が1未満でありかつ沸点が130℃以下である酸のみが供給される。
<2−2.膜形成溶液2>
ゾルゲル法に基づく膜形成溶液の好ましい態様について説明する。
ゾルゲル法に用いる有機溶媒は、シリコンアルコキシドや水との相溶性が高く、ゾルゲル反応を進行させることができる溶媒であることが必要であり、炭素数が1〜3の低級アルコールが適している。シリコンアルコキシドとしては、特に制限はないが、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラエトキシド(TEOS)、シリコンテトライソプロポキシドなどを用いればよい。シリコンアルコキシドの加水分解物をシリコン原料として用いてもよい。ゾルゲル法による形成溶液におけるシリコンアルコキシドの濃度は、シリコンアルコキシドをSiO2換算したときのSiO2濃度により表示して、3〜15質量%、特に3〜13質量%が好ましい。この濃度が高すぎると、膜にクラックが発生することがある。
水は、シリコンアルコキシドに対し、モル比により表示して、4倍以上、具体的には4〜40倍、好ましくは4〜35倍が好適である。加水分解触媒としては、酸触媒、特に塩酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などの強酸を用いることが好ましい。酸触媒に由来する有機物は膜硬度を低下させることがあるため、酸触媒としては無機酸が好ましい。塩酸は、揮発性が高く、膜に残存しにくいため、最も好ましい酸触媒である。酸触媒の濃度は、酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度により表示して0.001〜2mol/kgの範囲とすることが好ましい。
上記程度に水を過剰に加え、上記程度の濃度となるように酸触媒を加えると、例えば、国際公開第2005/095101号公報に解説されているように、ゾルゲル法により、有機物の分解を防ぐことができる温度域で比較的厚い膜を容易に形成できる。
上記に挙げた成分を含むゾルゲル法による膜の形成溶液を、紫外線吸収剤の微粒子を分散させた分散液と混合し、さらに必要に応じて有機ポリマーなどを添加すれば、遮蔽膜の形成溶液を準備できる。ただし、遮蔽膜の形成溶液の調製方法がこれに限られるわけではなく、微粒子分散液にゾルゲル法による成膜に必要な成分を順次添加してもよいし、ゾルゲル法以外の方法により膜を形成することとして紫外線吸収剤の微粒子とともにその方法に必要な成分(例えばポリシラザン)を含む形成溶液を調製しても構わない。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、常温で固体であるとともに分子量が5000以下であり、平均粒径が150nm以下となるように粉砕できるものであれば特に制限はなく、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ポリメチン系、イミダゾリン系など従来から公知の紫外線吸収剤を用いることができる。また、紫外線遮蔽能を有する限り、後述するベンゼンチオール銅錯体誘導体のように、従来は他の用途で用いられてきた有機化合物を使用してもよい。
紫外線吸収剤の分子量は、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1500以下がさらに好ましく、場合によっては1300以下、さらに1200以下、特に900以下、とりわけ800以下であってもよい。ただし、紫外線吸収剤の分子量が低すぎると常温で固体を維持することが困難となる。したがって、紫外線吸収剤の分子量は、200以上が好ましく、300以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。
また、紫外線吸収剤は、分子中に、重合可能な炭素−炭素二重結合を含まないことが好ましい。重合可能な炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基などの重合性官能基に含まれる二重結合が挙げられる。紫外線吸収剤は、分子中にこれらの官能基を含まないことが好ましい。
紫外線吸収剤の好ましい一例は、下記式(5)により示される官能基を2つ以上、例えば2〜8個、好ましくは2〜4個を、分子中に有する有機化合物αである。
ここで、A1〜A5は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、直鎖のもしくは分岐を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数7〜13のアルキル基、または下記式(6)により示される官能基である。ただし、A1〜A5の少なくとも1つは、下記式(6)により示される官能基である。
有機化合物αは、分子中に少なくとも2つのベンゾトリアゾール構造(式(6)参照)を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。1分子中に少なくとも2つ存在するベンゾトリアゾール構造は、有機化合物αによる紫外線遮蔽効果に貢献し、有機化合物αが常温で固体状態となる程度に分子量を大きく保つことにも寄与する。周知のとおり、化合物の融点は分子量のみによって定まるわけではないが、分子量は融点を大きく左右する因子である。有機化合物αは、紫外線遮蔽効果の持続性に優れ、ガラス積層体の場合には特に重視される特性であるヘイズ率が低い遮蔽膜の形成に適した化合物である。
式(5)により示される官能基は、例えば、A1〜A5のうち、1つが水酸基であり、1つが上記で規定したアルキル基であり、1つが式(6)により示される官能基であり、残り2つが水素原子であってもよい。具体的には、有機化合物αは、以下の式(7)で示される官能基を2つ以上分子中に有することが好ましい。式(7)において、R1は、直鎖のもしくは分岐を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数7〜13のアルキル基である。
なお、有機化合物αに含まれるアルキル基の炭素数は、多いほど分子全体の疎水性が高くなる傾向があるため、分散媒を水とする分散液から作製する膜において、微粒子として存在させることが容易となる。ただし、炭素数が多くなりすぎると、立体障害などの影響によって有機化合物αの融点が下がる傾向がある。
本発明の好ましい一形態において、有機化合物αは、式(7)により示される2つの官能基がアルキレン基により結合されている構造単位を有する。アルキレン基を構成する炭素数は、好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。
有機化合物αは、以下の式(8)で示される化合物であってもよい。
ここで、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖のもしくは分岐を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数7〜13のアルキル基である。
紫外線吸収剤の別の好ましい一例は、下記式(8)により示される構造単位を分子中に有する有機化合物βである。有機化合物βは、ベンゼンチオール銅錯体誘導体である。
ベンゼンジチオール銅錯体は、式(9)に示された構造に由来する共鳴効果により、波長400nm程度の光線の吸収に寄与する。共鳴効果により吸収される波長はCuが他の金属原子に置換すればシフトする(例えば、CuをZnやAlに置換すればより短い波長域において共鳴効果が得られる)。波長400nm程度の光線の吸収能を重視すべき場合は、金属原子としてはCuが最適である。
ガラス板の紫外線遮蔽特性への要求の高まりにより、その遮蔽の程度のみならず、紫外域の光線をより長波長側に至るまで遮蔽することが期待されるようになっている。近年では、紫外域というよりは可視域の短波長域(400nm程度の波長域)の波長を有する光線まで遮蔽することが要求されることもある。式(9)に示す構造を有する有機化合物βの使用は、紫外域のみならず、400nm程度の波長域における光線の遮蔽にも効果がある。
有機化合物βは、以下の式(10)で示される構造を有することが好ましく、式(11)で示される構造を有することがさらに好ましく、例えば式(15)の化合物であってよい。
ここで、LおよびMは、それぞれ独立に、以下の式(12)、(13)、(14)のいずれかにより示される基である。また、Aは第四級アンモニウム塩である。第四級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトライソプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩を例示できる。
ここで、R3、R4は、それぞれ独立に、炭素数が1〜4の直鎖のまたは分岐を有するアルキル基を指す。
ここで、nは3〜5の整数である。
ここで、Buは直鎖のまたは分岐を有するブチル基である。
紫外線吸収剤は常温において固体である。本明細書において、「常温」は25℃を意味する用語として使用する。上述のとおり、従来、溶液から形成される遮蔽膜には常温で液体である紫外線吸収剤が用いられてきた。このような紫外線吸収剤をエマルション化して得た溶液を用いて形成された遮蔽膜には、紫外線吸収剤が微細な液体として分散している。また、従来、膜に均質に分布させるために、常温で固体である有機化合物は、溶媒に溶かしてから膜に導入するのが通常であった。ガラス板上に形成される膜に固形のまま導入された有機化合物は、ガラス積層体の透明性を損なうことが多いためである。これに対し、本発明では、遮蔽膜中に、平均粒径が150nm以下の微粒子として紫外線吸収剤が分散している。平均粒径が150nm以下となる程度にまで紫外線吸収剤を細かく砕いてから膜に導入することにより、その膜は、透明性を損なうことなく紫外線遮蔽能の持続性に優れたものとなり得る。このようにして膜中に導入された紫外線吸収剤は、好ましくは、膜中においても結晶状態を保持している。膜中の紫外線吸収剤が結晶状態を保持していることはX線回折により確認できる。
紫外線吸収剤が粉砕されて所定の平均粒径に到達する時間は、粉砕装置の種類、投入量、さらには回転数などの粉砕条件に依存する。このため、量産に際しては、予め、粉砕装置による粉砕を適宜中断してサンプリングした粉砕物の平均粒径を確認することを繰り返しながら、所定の平均粒径が得られるまでの時間を定めておくとよい。なお、粉砕に際しては、粉砕するべき紫外線吸収剤に、界面活性剤、水溶性樹脂などを適宜添加してもよい。
紫外線吸収剤は、平均粒径が150nm以下、好ましくは10〜150nm、より好ましくは50〜140nm、特に好ましくは70〜140nm、の微粒子として膜に分散させるとよい。微粒子分散液(微粒子分散組成物)の調製においても、この範囲の平均粒径を有するように紫外線吸収剤を粉砕しておくことが好ましい。微粒子の平均粒径は、大きすぎると膜の透明性を低下させるが、小さすぎると紫外線吸収能が劣化したり、その持続性が低下したりおそれがある。なお、上記「平均粒径」は、後述する実施例の欄における測定値も含め、光子相関法の一種である動的光散乱法による測定値に基づく数値であり、具体的には、球相当径の体積基準による分布において累積頻度が50%となる粒子径である。「平均粒径」は、例えば、日機装社製「マイクロトラック超微粒子粒度分布計9340−UPA150」を用いて測定することができる。
紫外線吸収剤は、膜中の酸化ケイ素(SiO2換算)に対しては、質量%により表示して、1〜80%、さらには5〜60%、特に5〜50%、とりわけ7〜30%の範囲で含まれていることが好ましい。これを考慮すると、紫外線吸収剤は、膜の形成溶液の液量に対しては、同じく質量%により表示して、0.5〜25%、より好ましくは0.5〜15%となるように添加することが好ましい。
(有機ポリマー)
有機ポリマーは、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)との相互作用によって、紫外線吸収剤の膜中における分散性の向上に寄与し、この化合物による光線遮蔽能を高め、さらにはこの化合物の劣化を抑制する成分である。遮蔽膜をゾルゲル法などの液相成膜により比較的厚く(例えば300nmを超える厚さ、さらには500nm以上の厚さ)形成する際には、膜の形成溶液に含まれる液体成分の蒸発に伴ってクラックが発生することがある。有機ポリマーは、クラックの発生を抑制しながら厚膜の形成を可能にする成分でもある。
有機ポリマーは、好ましくはポリエーテル化合物、ポリオール化合物、ポリビニルピロリドン類およびポリビニルカプロラクタム類から選ばれる少なくとも1種である。有機ポリマーは、ポリエーテル型の界面活性剤などのポリエーテル化合物であってもよいし、ポリカプロラクトンポリオール、ビスフェノールAポリオールなどのポリオール化合物であってもよい。有機ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどであっても構わない。ポリエーテル化合物は2以上のエーテル結合を含む化合物、ポリオール化合物はジオール、トリオールを含む多価アルコールをそれぞれ意味する。ポリビニルピロリドン類は、具体的には、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体を指し、ポリビニルカプロラクタム類は、具体的には、ポリビニルカプロラクタムおよびその誘導体を指す。
有機ポリマーは、膜中の酸化ケイ素(SiO2換算)に対し、質量%で表示して、0〜75%、さらには0.05〜50%、特に0.1〜40%、とりわけ1〜30%、場合によっては10%以下、必要に応じて7%以下となるように、膜に添加することが好ましい。なお、紫外線吸収剤が多い場合は、その量に応じて有機ポリマーを減らしてもよい。
シランカップリング剤は、その種類が特に制限されるものではないが、RSiX3(Rは、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる少なくとも1種を含む有機官能基であり、Xは、ハロゲン元素またはアルコキシル基である)で示される有機化合物が好ましい。シランカップリング剤は、そのR基が有機物とX基が無機物とそれぞれ反応する。この反応を通じて、シランカップリング剤は、紫外線吸収剤の膜中における分散性の向上に寄与し、クラックの発生を抑制しながら厚膜の形成を可能にする効果を奏する。シランカップリング剤は、膜中の酸化ケイ素(SiO2換算
)に対し、モル%で表示して、0〜40%、好ましくは0.1〜20%、より好ましくは1〜10%となるように、膜に添加することが好ましい。
本発明による遮蔽膜には、紫外線吸収剤、有機ポリマーおよびシランカップリング剤以外の機能性成分を含んでいてもよい。例えば、近赤外線の吸収剤として知られているインジウム錫酸化物(ITO)微粒子は遮蔽膜への添加が好ましい成分の一つである。
ITO微粒子は、平均粒径が200nm以下、好ましくは5〜150nm、の微粒子として膜に分散させるとよい。紫外線吸収剤の微粒子と同様、粒径が大きすぎると膜の透明性を低下させ、小さすぎると添加による効果が十分得られない。ITO微粒子も予め分散液を調製しておいて、これを膜の形成溶液に添加するとよい。
遮蔽膜は、無機成分として酸化ケイ素を含む。ただし、遮蔽膜は、酸化ケイ素以外の無機成分を含んでいてもよい。酸化ケイ素以外の無機成分としては、上記ITO微粒子に加え、ゾルゲル法で用いた酸触媒に由来する成分(例えば、塩素、窒素、硫黄原子)などが挙げられる。遮蔽膜に含まれる酸化ケイ素は、シリコンアルコキシドなどのシリコン含有化合物(シリコン化合物)として膜の形成溶液に添加される。
遮蔽膜中の酸化ケイ素は、膜全体の30質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上(この場合は酸化ケイ素が膜の主成分となる)、場合によっては70質量%以上、を占めるようにするとよい。遮蔽膜は、好ましくは、酸化ケイ素を主成分とし、Si−O結合のネットワーク中に紫外線吸収剤の微粒子やその他の成分が分散している形態を有する。このような形態を有する膜は、窓ガラスなどとしての屋外での使用に適している。
<2−3.膜形成溶液3>
膜形成溶液は、有機物及び無機酸化物を含む。有機物は吸水性樹脂を含み、無機酸化物はシリカを含む。膜形成溶液は、紫外線吸収剤及び/又は赤外線吸収剤を含む。以下、各成分について説明する。
(吸水性樹脂)
吸水性樹脂としては特に制限はなく、ポリエチレングリコール、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルポリオール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、より好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、特に好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂である。
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールにアルデヒドを縮合反応させてアセタール化することにより得ることができる。ポリビニルアルコールのアセタール化は、酸触媒の存在下で水媒体を用いる沈澱法、アルコール等の溶媒を用いる溶解法等公知の方法を用いて実施すればよい。アセタール化は、ポリ酢酸ビニルのケン化と並行して実施することもできる。アセタール化度は、2〜40モル%、さらには3〜30モル%、特に5〜20モル%、場合によっては5〜15モル%が好ましい。アセタール化度は、例えば13C核磁気共鳴スペクトル法に基づいて測定することができる。アセタール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂は、吸水性及び耐水性が良好である膜形成溶液の形成に適している。
ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200〜4500であり、より好ましくは500〜4500である。高い平均重合度は、吸水性及び耐水性が良好である膜形成溶液の形成に有利であるが、平均重合度が高すぎると溶液の粘度が高くなり過ぎて膜の形成に支障をきたすことがある。ポリビニルアルコールのケン化度は、75〜99.8モル%が好ましい。
ポリビニルアルコールに縮合反応させるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルカルバルデヒド、オクチルカルバルデヒド、デシルカルバルデヒド等の脂肪族アルデヒドを挙げることができる。また、ベンズアルデヒド;2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、その他のアルキル基置換ベンズアルデヒド;クロロベンズアルデヒド、その他のハロゲン原子置換ベンズアルデヒド;ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等のアルキル基を除く官能基により水素原子が置換された置換ベンズアルデヒド;ナフトアルデヒド、アントラアルデヒド等の縮合芳香環アルデヒド等の芳香族アルデヒドを挙げることができる。疎水性が強い芳香族アルデヒドは、低アセタール化度で耐水性に優れた膜形成溶液を形成する上で有利である。芳香族アルデヒドの使用は、水酸基を多く残存させながら吸水性が高い膜を形成する上でも有利である。ポリビニルアセタール樹脂は、芳香族アルデヒド、特にベンズアルデヒドに由来するアセタール構造を含むことが好まし
い。
エポキシ系樹脂としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、環式脂肪族エポキシ樹脂である。
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートとポリオールとで構成されるポリウレタン樹脂が挙げられる。ポリオールとしては、アクリルポリオール及びポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましい。
膜形成溶液は、吸水性樹脂を主成分とする。本発明において、「主成分」とは、質量基準で含有率が最も高い成分を意味する。膜形成溶液の重量に基づく吸水性樹脂の含有率は、膜硬度、吸水性及び防曇性の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上であり、95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下である。
(無機酸化物)
無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、少なくとも、Siの酸化物(シリカ)を含む。膜形成溶液は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは1重量部以上、最も好ましくは5重量部以上、場合によっては10重量部以上、必要であれば20重量部以上、また、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、さらに好ましくは40重量部以下、特に好ましくは35重量部以下、最も好ましくは33重量部以下、場合によっては30重量部以下となるように、無機酸化物を含むことが好ましい。無機酸化物は、膜形成溶液の強度、特に耐摩耗性を確保するために必要な成分であるが、その含有量が多くなると、膜形成溶液の防曇性が低下する。
(無機酸化物微粒子)
膜形成溶液は、無機酸化物の少なくとも一部として、無機酸化物微粒子をさらに含んでいてもよい。無機酸化物微粒子を構成する無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより膜形成溶液に導入できる。無機酸化物微粒子は、膜形成溶液に加えられた応力を、膜形成溶液を支持する物品に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、無機酸化物微粒子の添加は、膜形成溶液の耐摩耗性を向上させる観点から有利である。また、膜形成溶液に無機酸化物微粒子を添加すると、微粒子が接触又は近接している部位に微細な空隙が形成され、この空隙から膜中に水蒸気が取り込まれやすくなる。このため、無機酸化物微粒子の添加は、防曇性の向上に有利に作用することもある。無機酸化物微粒子は、膜形成溶液を形成するための塗工液に、予め形成した無機酸化物微粒子を添加することにより、膜形成溶液に供給することができる。
無機酸化物微粒子の平均粒径が大きすぎると、膜形成溶液が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、無機酸化物微粒子の平均粒径は、好ましくは1〜20nmであり、より好ましくは5〜20nmである。なお、ここでは、無機酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。また、無機酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。無機酸化物微粒子は、その含有量が多くなると、膜形成溶液全体の吸水量が低下し、膜形成溶液が白濁するおそれがある。無機酸化物微粒子は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0〜50重量部であり、より好ましくは2〜30重量部、さらに好ましくは5〜25重量部、特に好ましくは10〜20重量部となるように添加するとよい。
(加水分解性金属化合物)
無機酸化物を膜形成溶液に配合するためには、加水分解性基を有する金属化合物(加水分解性金属化合物)又はその加水分解物を、膜形成溶液を形成するための塗工液に添加するとよい。加水分解性金属化合物としては、以下の式(I)で表される、加水分解性基を有するシリコン化合物が好ましい。無機酸化物に含まれるシリカは、加水分解性基を有するシリコン化合物又はその加水分解物由来のシリカを含むことが好ましい。式(I)で表される加水分解性基を有するシリコン化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、シロキサン結合で結合したシリコン化合物において、そのシリコンの一部に有機金属が直接結合しているものもシリカに含める。
mSiX4-m(I)
式(I)におけるRは、水素原子が反応性官能基に置換されていてもよい炭素数1〜3の炭化水素基である。炭素数1〜3の炭化水素基としては、炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)及び炭素数2〜3のアルケニル基(ビニル基、アリル基、プロペニル基)等が挙げられる。
反応性官能基は、好ましくはオキシグリシジル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種である。反応性官能基を有する加水分解性金属化合物は、有機物である吸水性樹脂と無機酸化物であるシリカとを強固に結合し、膜形成溶液の耐摩耗性、硬度等の向上に寄与し得る。
式(I)におけるXは、加水分解性基又はハロゲン原子である。加水分解性基としては、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。アルコキシル基としては、炭素数1〜4のアルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)等が挙げられる。加水分解性基のうち好ましいのは、アルコキシル基であり、より好ましいのは、炭素数1〜4のアルコキシル基である。ハロゲン原子としては、例えば塩素である。
式(I)におけるmは、0〜2の整数であり、好ましくは0〜1の整数である。
式(I)で表される加水分解性基を有するシリコン化合物の好ましい具体例は、式(I)におけるXがアルコキシル基であるシリコンアルコキシドである。また、シリコンアルコキシドは、式(I)においてm=0の化合物(SiX4)に相当する4官能シリコンアルコキシドを含むことがより好ましい。4官能シリコンアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。シリコンアルコキシドは、単独で用いても2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合には、シリコンアルコキシドの主成分が4官能シリコンアルコキシドであることがより好ましい。
シリコンアルコキシドは、4官能シリコンアルコキシドと、式(I)においてm=1の化合物(RSiX3)に相当する3官能シリコンアルコキシドとを含むことがより好ましい。反応性官能基を有しない3官能シリコンアルコキシドの具体例としては、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。反応性官能基を有する3官能シリコンアルコキシドの具体例としては、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、アミノアルキルトリアルコキシシラン(3−アミノプロピルトリエトキシシラン等)等が挙げられる。
反応性官能基を有するシリコンアルコキシドは、シランカップリング剤と呼ばれることがある。式(I)においてm=2の化合物(R2SiX2)に相当する2官能シリコンアルコキシドも、Rの少なくとも一方が反応性官能基である場合は、シランカップリング剤である。Rの少なくとも一方が反応性官能基を有する2官能シリコンアルコキシドの具体例としては、グリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシラン(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン[N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等]等が挙げられる。
紫外線吸収剤又は赤外線吸収剤が有機物である場合は、特に、シリコンアルコキシドは、シランカップリング剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤又は赤外線吸収剤による光遮蔽性(例えば紫外線遮蔽性)が向上するためである。シランカップリング剤によって膜形成溶液の光遮蔽性が向上する理由は、シランカップリング剤の添加によって、有機化合物である光吸収剤がシリカを含む吸水性樹脂中により均一に分散した状態になることにあると考えられる(後述する実施例1と3、又は実施例2と4との対比)。
式(I)で表される加水分解性基を有するシリコン化合物は、加水分解及び重縮合が完全に進行すると、以下の式(II)で表される成分を供給する。
mSiO(4-m)/2(II)
式(II)におけるR及びmは、上述したとおりである。加水分解及び重縮合の後、式(II)で表される化合物は、実際には、膜形成溶液中において、シリコン原子と酸素原子とが交互に接続し、かつ三次元的に広がるシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造を形成する。
膜形成溶液中の4官能シリコンアルコキシド又は3官能シリコンアルコキシドに由来するシリカの含有量が多くなると、膜形成溶液の防曇性が低下することがある。これは、膜形成溶液の柔軟性が低下し、水分の吸収及び放出に伴う膜の膨潤及び収縮が制限されることが一因である。4官能シリコンアルコキシドに由来するシリカは、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは3〜10重量部の範囲で添加するとよい。3官能シリコンアルコキシドに由来するシリカは、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0〜30重量部、より好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部の範囲で添加するとよい。
紫外線吸収剤及び赤外線吸収剤としては、上述した膜形成溶液1,2と同じでもよい。
(架橋構造)
膜形成溶液は、有機ホウ素化合物、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤に由来する架橋構造を含んでいてもよい。架橋構造の導入は、膜形成溶液の耐摩耗性、耐水性を向上させる。別の観点から述べると、架橋構造の導入は、膜形成溶液の防曇性能を低下させることなくその耐久性を改善することを容易にする。
架橋剤は、用いる吸水性樹脂を架橋できるものであれば、その種類は特に限定されない。ここでは、有機チタン化合物についてのみ例を挙げる。有機チタン化合物は、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物及びチタンアシレートから選ばれる少なくとも1つである。チタンアルコキシドは、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラオクトキシドである。チタンキレ−ト化合物は、例えば、チタンアセチルアセトナート、チタンアセト酢酸エチル、チタンオクチレングリコール、チタントリエタノールアミン、チタンラクテートである。チタンラクテートは、アンモニウム塩(チタンラクテートアンモニウム)であってもよい。チタンアシレートは、例えばチタンステアレートである。好ましい有機チタン化合物は、チタンキレート化合物、特にチタンラクテートである。
吸水性樹脂がポリビニルアセタール樹脂である場合の好ましい架橋剤は、有機チタン化合物、特にチタンラクテートである。
(その他の任意成分)
膜形成溶液には、その他の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、防曇性を改善する機能を有するグリセリン、エチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。添加剤は、界面活性剤、界面調整剤、スリップ性付与剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤等であってもよい。
<2−4.塗布工程及び乾燥工程>
膜形成溶液の塗布は、従来から知られている方法、例えば、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、メニスカスコート法、ダイコート法等を用いて実施することができるが、後述するように、膜厚が均一になるように塗布することが必要である。
また、膜形成用液を均一に塗布するために、以下のような方法を採用することもできる。この方法について、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5に示すように、まず、ガラス体1をロボットアーム50により概ね水平に支持する。ここでは、概ね水平とは、例えば、ガラス板1の上辺と下辺の中央同士を結ぶ線が、水平から±10度以内の角度になることを意味する。そして、ガラス体1の上方からノズル60によって膜形成溶液を塗布する。このとき、図6に示すように、膜形成用液を、ガラス板1の中央付近から矩形状の渦状に塗布する。そのため、ノズル60を固定した状態で、ロボットアーム50を水平面内で、矩形の渦状に移動させる。あるいは、ガラス体1を固定し、ノズル60を矩形の渦状に移動させながら、膜形成用液を塗布することもできる。
このように、膜形成用液を渦状に塗布すると、その後、膜形成用液が隣接する経路の隙間を埋めるように広がり、ガラス体1全体に均一に膜形成用液が積層される。このとき、膜形成用液の塗布量は、ガラス体1の単位面積あたり、20〜50g/m2とすることができる。また、膜形成用液の経路間の距離Xは、3〜30mmとすることができる。これは、距離Xが短すぎると、塗布量が多くなるおそれがあり、距離Xが長すぎると、経路間の隙間に膜形成用液が広がらないおそれがあることになる。
なお、図5及び図6の方法のほか、上述した各種の方法においては、膜厚が均一になるように、例えば、膜形成溶液を塗布した後、あるいは塗布している最中に、送風機などでガラス体1における塗布面に向かって送風することで調整できる。
膜形成溶液を塗布する工程では、雰囲気の相対湿度(RH)を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、塗布した膜が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、膜のマトリックス内に入り込んで残存した水が、膜の強度を低下させるおそれがある。
膜形成溶液を塗布した後に透明基体を乾燥させる温度は、130℃以上であり、好ましくは160℃以上であり、より好ましくは170℃以上であり、場合によっては180℃以上であってもよい。また、この乾燥温度は、紫外線吸収剤、有機ポリマー等の分解を避ける観点から、300℃以下、特に250℃以下、場合によっては200℃以下が好ましい。
乾燥工程は、風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むことが好ましい。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に膜形成溶液を曝すことにより、実施するとよい。風乾工程は、非加熱工程として室温で実施できる。加熱乾燥工程では、シリコン化合物A、シリコン化合物Bの加水分解物等に含まれるシラノール基と、透明基体上に存在する水酸基とが関与する脱水反応が進行し、シリコン原子と酸素原子とからなるマトリックス構造(Si−O結合のネットワーク)が発達することにより、ガラス体上に遮蔽膜が固定される。
<2−5.膜厚>
遮蔽膜2の膜厚は、特には限定されないが、例えば、1.5〜10μmとすることができ、好ましくは2〜5μmとすることができる。遮蔽膜2の膜厚が10μmを超えると、ガラス積層体が黄色くなり、さらに膜にクラックが生じるおそれがある。また、遮蔽機能を効果的に実現するには、膜厚は均一にすることが好ましい。そのため、本発明においては、遮蔽膜2の膜厚の最大値をTmax、最小値をTminとしたとき、以下の式(16)を充足する。
1≦Tmax/Tmin<5 (16)
但し、Tmax/Tminは、4未満であることが好ましく、3未満であることがさらに好ましい。なお、Tmin,Tmaxは、ガラス積層体の全体の中から、次のように規定することができる。
(i) 図7に示すように、遮蔽膜2が塗布されている領域の周縁から20mm内側を輪郭とする測定領域を決定する。
(ii) ガラス積層体を自動車に取付ける。
(iii) ガラス積層体に対し、水平方向から平行光を照射し、その投影図(図7)を採取する。
(iv) 図7に示すように、測定領域の最前方に位置する点を基準測定点とする。
(v) 基準測定点から水平方向及び垂直方向に20mm間隔で縦線及び横線を規定する。
(vi) 基準測定点に加え、測定領域内における縦線と横線との交差点を測定点とする。
(vii) 上記各測定点において膜厚を測定し、最小値Tmin及び最大値Tmaxを規定する。
なお、上記のような測定が困難な場合には、簡易的に、例えば、ガラス積層体の上辺の中央から下方に向かう直線上において、Tmin,Tmaxを得てもよい。その他、ガラス積層体において上下方向に延びる複数の直線を定義し、各直線上でTmin,Tmaxを測定し、これらを平均することもできる。
また、各測定点における遮蔽膜2の膜厚は、次のように測定する。
(i) ガラス積層体の遮蔽膜2を、カッタを用いて、例えば10×10mm角ではぎ取る。このとき、ガラス体1に傷がつかないよう留意する。ここで、ガラス体1は湾曲しているため、測定点におけるガラス体1の表面の法線に対して略垂直方向からカッタ刃を刺し込み、遮蔽膜2の切断面が法線と垂直になるようにする。
(ii) 遮蔽膜2の切断位置の上部からレーザ顕微鏡の光を照射する。
(iii) 遮蔽膜2からの反射光と、ガラス体1からの反射光から膜厚差を測定し、これを膜厚とする。測定装置としては、例えば、レーザーテック株式会社製OPTELICS HYBRID-L3を用いることができる。
また、Tminは、1.5μm以上であることが好ましく、さらには2〜5μmであることが好ましい。特に、Tminが2μm以上であれば、後述するように、紫外線遮蔽機能が向上する。その一方で、Tminが5μmよりも大きくなると、後述するYAを70%以上にすることが難しくなるおそれがある。
ガラス積層体を、例えば、サイドガラスとして用いる場合には、垂直からの取付角度が小さくなり(例えば、30度以内)、図8に示すように、設置される。この場合、ガラス積層体は、湾曲しているため、朝日、夕日のように低い太陽高度からガラス積層体に入射する光の入射角は、ガラス積層体において下部にいくほど小さくなる。その結果、ガラス積層体を通過する光の光路は、下部に行くほど小さくなる。例えば、図8の例では、光路A1は、それよりも低い位置の光路A2よりも長い。したがって、遮蔽膜2の膜厚は、ガラス体1の下部に行くほど厚くし、ガラス積層体全体に亘って遮蔽率を均一に近づけるようにすることが好ましい。そのため、Tmaxが測定される箇所は、Tminが測定される箇所よりも下側にあることが好ましい。
なお、ガラス積層体を昇降式のサイドガラスとして用いる場合、例えば、図9に示すように、サイドガラスの上辺に沿う部分は、遮蔽膜2を積層しない非積層領域20とすることができる。これは、昇降式のサイドガラスは、最も上昇した位置において、上辺に沿う領域がガラスランに収容され、外部から見えないように隠されるからである。このような非積層領域20は、例えば、ガラス体1の上辺から5〜30mmの領域とすることができる。また、ガラス体1において、ガラスランに収容される側辺においても非積層領域を設けることもできる。
<3.ガラス積層体の光学特性>
次に、ガラス体1と遮蔽膜2とを含むガラス積層体全体の光学特性について説明する。
<3−1.紫外線透過率>
本発明のガラス積層体は、波長が400nmの光の透過率が10%以下であることが好ましく、8%以下であることがさらに好ましい。また、波長が390nmの光の透過率が1.5%未満であることが好ましい。
さらに、本発明のガラス積層体の紫外線透過率は、以下の通りであることが好ましい。
Tuv400≦2.0% (17)
Tuv400は上述したとおりである。また、上記式(17)におけるTuv400については、1.0%以下であることがさらに好ましい。Tuv400がこのような値であれば、特に、上述したように膜厚が均一になったときの紫外線遮蔽効果が大きくなる。
<3−2.可視光透過率1>
本発明に係るガラス積層体においては、波長が420nmの光の透過率が、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これは、上記のように紫外線の透過率を低くする一方、紫外線域を超えると、可視光域の光の透過率を急激に高くするためであり、YAを高くしやすくなるからである。すなわち、ガラス板において視野を妨げるような着色等が少なくするためである。その一方で、波長が420nmの光の透過率は、85%以下であることが好ましい。これは、車内にいる人間への影響や、車内の内装の劣化防止のためであり、特にブルーライトを効果的に遮蔽するためである。
<3−3.可視光透過率2>
本発明のガラス積層体は、波長450〜800nmの光に対する透過率の平均をTavgとしたとき、ガラス積層体の透過率がTavg*0.9である波長W1と、ガラス板の透過率がTavg*0.1である波長W2との差(以下、シャープカットという)が22nm以下であることが好ましい。これは、上記のように、ガラス板において説明したとおりである。また、可視光域に入ると、透過率が急激に上昇するため、後述するように、YAを70%以上にしやすくなる。
<3−4.近赤外線透過率>
本発明のガラス積層体は、波長が1500nmの光の透過率が35%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、25%以下であることが特に好ましい。
波長が1500nmの光は、近赤外線領域、特に日射光の近赤外線領域の光を示している。このような光の透過率が上記のように35%以下であれば、日射光の近赤外線を適度に遮蔽し、自動車の窓ガラスとして、このガラス積層体が用いられると、車内の温度が高くなりすぎるのを和らげることができる。
<3−5.黄色度>
本発明のガラス積層体は、CIE標準のC光源における透過光に基づく、JIS K7373:2006で規定された黄色度YIについて、以下の式(18)を充足することが好ましい。
YI≦10 (18)
但し、YI≦5であることがさらに好ましい。これに対して、ガラス体の黄色度が大きいと、ガラス積層体の黄色度も大きくなり、車内にいる者が車外を見ていてイライラするなど、心理的な不快感を感じるおそれがある。特に、上記のように、400nmを超える波長では透過率が急激に上昇するため、ガラス積層体が黄色く見えるのを紡糸することができる。
<3−6.ブルーライトカット効果>
本発明のガラス積層体においては、JIS T7330:2000の付属書Aの青色光障害関数に関する実効放射強度が、ガラス積層体を通過する際の実効放射強度の低減率として算出されるブルーライトカット率が35%以上であることが好ましい。
より詳細には、以下の通りである。ここでいうブルーライトカット率とは、太陽光の青色光による網膜損傷に関する実効放射強度(以下、太陽光の実効放射強度)に対する、ガラス積層体を透過させることにより減少した当該実効放射強度の比、を百分率で表示した値として定義する。具体的には、以下の方法で求める。
JIS T7330:2000の付属書Aの青色光障害関数に関する重み関数を用いる。この重み関数について波長380〜550nmまでの和を算出し、太陽光の実効放射強度を求める。次に、上記波長域の各波長におけるガラス積層体の分光透過率と重み関数の積の和を算出し、当該ガラス積層体を透過した光の当該実効放射強度(以下、透過光の実効放射強度)を求める。そして、透過光の実効放射強度の、太陽光の実効放射強度に対する比を算出し、その値を1から減算し、百分率に換算する。こうして算出された百分率をガラス積層体のブルーライトカット率とした。
このブルーライトカット率が高いと、ガラス積層体を通して外部を見たときに、ギラギラせず、まぶしくなるのを防止することができる。なお、上述した黄色度が高いと、ブルーライトカット率も大きくなる。
<3−7.熱暑感透過率>
ガラス積層体を透過した太陽光によって人間が皮膚で感じる熱暑感を低減させることは、ガラス積層体が求められる性能の1つである。光学特性と熱暑感との関係を記述するには、波長1100〜2200nmの透過率による評価が妥当であるが、より詳細に評価するため、以下のとおり、熱暑感透過率を定義した。
(皮膚温度の上昇と熱暑感の関係)
まず、入射する太陽光による人の皮膚温度の上昇幅と、人の皮膚で感じる熱暑感との関係を評価した。その手順は以下のとおりである。キセノンランプ(セリック社XC−500E)から発する光束にフィルターを取り付け、太陽光のエネルギー分布と同等の光源を得た。その光源から416mmの地点に、直径50mmの穴を開けたパネルを設けた。その穴の光源の反対側に被験者の手の甲を配置し、被験者の手の甲の温度を3秒ごとにサーモビュアーで測定した。被験者は熱暑感を、(1)少し暖かい,(2)暖かい,(3)少し暑い,(4)暑い,(5)かなり暑い、の5段階で申告した。人の感じる熱暑感は、81名の被験者に対して行なった実験の結果を総合した。その結果、皮膚温度上昇と熱暑感は比例関係にあり、皮膚温度上昇0.5℃で熱暑感が約1段階上昇した。また、皮膚温度の上昇幅を、3.2℃以下とした場合、人は「かなり暑い」と感じないことが確認された。
(皮膚感度)
皮膚温度の上昇の程度は太陽光の波長に依存する。波長に依存する皮膚温度の上昇の程度は、その波長における係数(皮膚感度;sensitivity ratio for thermal feeling;以下「SRTF」ということがある)として数値化できる。波長域300〜840nmおよび840〜1350nmのSRTFは、840〜1350nmにおける値を1として、1.43、1であることが報告されている。しかし、1350〜2500nmの波長域については、熱暑感に大きな影響を与えるにもかかわらず、SRTFが明らかにされていなかった。そこで、この波長域におけるSRTFを、上述の光源から、フィルターを取り替えて取り出して行った波長域1350〜2500nmの光についての実験により定めた。この実験も被験者の手の甲の温度の上昇を測定することにより行った。波長域1350〜2500nmにおけるSRTFは3.34となった。300nm未満の波長域、2500nmを超える波長域についてのSRTFは、実質的に0とみなしてよい。各波長域における皮膚感度を表1にまとめて示す。
(熱暑感透過率)
表1に示した皮膚感度を用いてガラス板の分光透過率と太陽光のスペクトルとの積を重み付けすることにより、実際に人が感じる熱暑感を、ガラス積層体の光学特性を用いてより正確に記述することができる。ここでは、「熱暑感透過率(Ttf,Transmittance for thermal feeling)」を次式により定義することとした。
ここで、Isun(λ)はISO9845−1に定めるAir mass 1.5における太陽光のスペクトル,Tglass(λ)はガラス積層体の分光透過率、SR(λ)は表1に示す皮膚感度である。Tair(λ)は、大気の分光透過率であり、ここでは波長にかかわらず1とした。
ガラス積層体を透過した太陽光による皮膚温度の上昇幅と、上記式で定義した熱暑感透過率との関係を、以下のようにして評価して確認した。上述の評価装置において、光源と被験者の手の甲のほぼ中間に、ガラス積層体を、ガラス面の法線と、光源と被験者の手の甲を結ぶ線が30度の角度をなすように設置し、皮膚温度の上昇幅を測定した。皮膚温度の上昇幅は、111名の被験者に対して行なった実験の結果を総合した。その結果、皮膚温度の上昇と熱暑感透過率との間には良い相関関係があることが確認された。
また、上述の研究の結果、人がかなり暑いと感じないようにするためには、皮膚温度の上昇が3.5℃以下になるようなガラス積層体を用いる、換言すればガラス積層体の熱暑感透過率(Ttf)を50%程度以下、好ましくは42%以下、より好ましくは40%以下、にすべきである、ことがわかった。そして、このような熱暑感透過率を達成するには、遮蔽膜2に、上述したような赤外線吸収剤を含有させればよい。
<4.ガラス積層体の耐久性能>
本発明のガラス積層体の耐久性能として、以下の耐摩耗性と耐光性(耐紫外線特性)を有することが好ましい。
<4−1.耐摩耗性>
本発明のガラス積層体の耐摩耗性として、JIS R3221に準拠した摩耗試験により評価することができる。すなわち、テーバー摩耗試験機(例えば、TABER INDUSTRIES社製5050 ABRA)により、遮蔽膜の表面に、500g荷重で1000回摩耗を行ったときに、遮蔽膜がガラス体から剥離せず、且つこの摩耗試験後のヘイズ率が5%以下であることが好ましい。なお、ヘイズ率の測定には、例えば、スガ試験機社製HZ−1Sを用いることができる。
<4−2.耐光性(耐紫外線特性)>
耐光性(耐紫外線特性)は、次のような試験により評価できる。すなわち、岩崎電気社製の紫外線照射装置(EYE SUPER UV TESTER SUV−W13)を用い、波長295〜450nm、照度76mW/cm2、ブラックパネル温度83℃、湿度50%RHの条件を適用し、100時間、紫外線を、ガラス積層体の遮蔽膜が形成されていない面に照射した。そして、照射前後のガラス積層体のTuv400の差が2%以下であることが好ましい。
<5.ガラス積層体の取り付け角度>
ガラス積層体を自動車に取り付ける際、取り付け位置によって垂直からの取付角度が異なる。例えば、ガラス積層体をサイドガラスとして用いる場合には、取付角度は、30度以下とすることが好ましく、ウインドシールド、あるいはリアガラスとして用いる場合には、30度より大きいことが好ましい。取付角度は、図10に示すように、ガラス積層体の上辺及び下辺の中心同士を結んだ直線Kと、自動車が水平面に設置されたときの水平面からの垂線Nとのなす角度θと定義することができる。
<6.特徴>
本実施形態に係るガラス積層体は、次の効果を得ることができる。まず、本実施形態に係るガラス体1は湾曲しているため、平行光である太陽光の入射角によっては、ガラス体1を通過する太陽光の光路長が相違する。すなわち、図11に示すように太陽光の入射が水平に近いと、ガラス体1の上部に入射する光線1の光路長L1が、ガラス体1の下部に入射する光線2の光路長L2よりも長くなる。一方、図12に示すように太陽光の入射が上方からであると、ガラス体1の上部に入射する光線3の光路長L3が、ガラス体1の下部に入射する光線4の光路長L4よりも短くなる。このようにガラス体1が湾曲していると、太陽光の入射角によってガラス体1を通過する光の光路長L1〜L4が変化する。
ところで、可視光域の光は、ガラス体1によって多少は吸収されるため、太陽光の入射角によって光路長が変化する場合、つまり光路長にバラツキが生じる場合には、これを考慮して可視光透過率YAをガラス体1の全体に亘って所定値以上にする必要がある。
一方、図11及び図12に示すように、ガラス体1のみならず、遮蔽膜2を通過する光の光路長S1〜S4も太陽光の入射角によって変化する。したがって、遮蔽膜2を通過する光の光路長にもバラツキが生じるため、YAを所定値以上にするのは容易ではない。これは、次の理由による。すなわち、遮蔽膜2は紫外線を吸収するために積層されているが、紫外線域と可視光域とは隣接しているため、遮蔽膜2による紫外線の吸収性能が大きくなると、つまり、遮蔽膜2の膜厚が大きくなると、可視光の透過率にも少なからず影響し、可視光の透過率を低下させるおそれがある。そのため、ガラス積層体全体でのYAを所定値以上にしがたくなる。
そこで、本実施形態においては、式(16)を充足することで、遮蔽膜2の膜厚を均一に近づけ、これによって、YAのパラツキも抑制することができる。その結果、ガラス積層体の全体に亘ってYAを70%以上にすることを担保できる。したがって、このガラス積層体をフロントガラス(ウインドシールド)や前部ドアのサイドガラスに用いられると好適である。
さらに、ガラス体1の曲率半径が10000mm以下の場合や、ガラス積層体の取付角度が30度以下の場合は、上述した光路長L1〜L4およびS1〜S4の差が小さく抑えられるため、YAを70%以上にしやすくなる。
また、Tminの測定点がTmaxの測定点よりも上側にある場合は、遮蔽膜2の光路長S3とS4の差が大きくなりやすい。また、ガラス体1の厚みや遮蔽膜2の厚みの最小値Tminが大きくなっても、同様である(例えば、ガラス体1の厚みが2.5mm以上であったり、最初値Tminが1.5μmである場合)。したがって、このような場合に、ガラス積層体を本実施形態のように構成すると有利である。
さらに、遮蔽膜2による紫外線吸収性能が高い場合(例えば、Tuv400が2.0%以下など)、YAへの影響が問題になるが、このような場合に、本実施形態のガラス積層体は有利である。
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。そして、以下に示す複数の変形例は適宜組合わせることが可能である。
<7−1>
上記実施形態では、膜形成溶液をガラス体1に塗布することで、遮蔽膜2を形成しているが、次のようにすることもできる。例えば、膜形成溶液を基材シートに塗布などして遮蔽膜2を形成する。そして、その基材シートの反対面に粘着剤を塗布し、これをガラス体1の表面に貼り付けることもできる。
具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの透明の樹脂製のシート材に上述した膜形成溶液を塗布し、遮蔽膜を形成する。そして、このシート材を例えば、アクリル系、シリコーン系の接着剤によりガラス体の表面に貼り付ける。これによっても、本発明のガラス積層体を形成することができる。
<7−2>
遮蔽膜2は、ガラス体の全面に塗布しなくてもよく、必要な一部に塗布することもできる。
<7−3>
遮蔽膜2には、防曇性能を持たせることもできる。これにより、紫外線遮蔽機能とともに、防曇性能を持たせることができる。したがって、雨天などの窓ガラスが曇りやすい状況下でも、結露などを防止することができ、窓ガラスを通した視界を確保することができる。
このような防曇性能は、遮蔽膜2に吸水性能を持たせることで実現できる。これにより、水蒸気や水分を、吸収することができる。具体的には、例えば、遮蔽膜2に吸水性樹脂を含有させることができる。吸水性樹脂としては特に制限はなく、ポリエチレングリコール、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルポリオール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、より好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、特に好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂である。
遮蔽膜2の重量に基づく吸水性樹脂の含有率は、膜硬度、吸水性及び防曇性の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上であり、95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下である。
また、遮蔽膜2の表面を親水処理した親水性とすることができる。これにより、遮蔽膜2の表面で凝結して生じた水が、膜表面を覆う連続した膜状になり、視界が妨げられるのを防止することができる。
<7−4>
上記のように、遮蔽膜に防曇機能を持たせる以外に、遮蔽膜においてガラス体とは反対側の面に防曇膜を積層することもできる。以下、この防曇膜について説明する。防曇膜は、ガラス体1の防曇効果を奏するものであれば、特には限定されず、公知のものを用いることができる。一般的に、防曇膜は、水蒸気から生じる水を水膜として表面に形成する親水タイプ、水蒸気を吸収する吸水タイプ、及び水蒸気から生じる水滴を撥水する撥水タイプがあるが、いずれのタイプの防曇膜も適用可能である。以下では、その一例として、吸水タイプの防曇膜の例を説明する。
[有機無機複合防曇膜]
有機無機複合防曇膜は、ガラス板の表面に形成された単層膜もしくは積層された複層膜である。有機無機複合防曇膜は、有機物及び無機酸化物を含む。有機物は吸水性樹脂を含み、無機酸化物はシリカ成分を含む。有機無機複合防曇膜は、紫外線吸収剤及び/又は赤外線吸収剤を含んでいてもよい。以下、各成分について説明する。
(吸水性樹脂)
吸水性樹脂は上述したとおりである。
(無機酸化物)
無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、少なくとも、Siの酸化物(シリカ)を含む。有機無機複合防曇膜は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは1重量部以上、最も好ましくは5重量部以上、場合によっては10重量部以上、必要であれば20重量部以上、また、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、さらに好ましくは40重量部以下、特に好ましくは35重量部以下、最も好ましくは33重量部以下、場合によっては30重量部以下となるように、無機酸化物を含むことが好ましい。無機酸化物は、有機無機複合防曇膜の強度、特に耐摩耗性を確保するために必要な成分であるが、その含有量が多くなると、有機無機複合防曇膜の防曇性が低下する。
(無機酸化物微粒子)
有機無機複合防曇膜は、無機酸化物の少なくとも一部として、無機酸化物微粒子をさらに含んでいてもよい。無機酸化物微粒子を構成する無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより有機無機複合防曇膜に導入できる。無機酸化物微粒子は、有機無機複合防曇膜に加えられた応力を、有機無機複合防曇膜を支持する物品に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、無機酸化物微粒子の添加は、有機無機複合防曇膜の耐摩耗性を向上させる観点から有利である。また、有機無機複合防曇膜に無機酸化物微粒子を添加すると、微粒子が接触又は近接している部位に微細な空隙が形成され、この空隙から膜中に水蒸気が取り込まれやすくなる。このため、無機酸化物微粒子の添加は、防曇性の向上に有利に作用することもある。無機酸化物微粒子は、有機無機複合防曇膜を形成するための塗工液に、予め形成した無機酸化物微粒子を添加することにより、有機無機複合防曇膜に供給することができる。
無機酸化物微粒子の平均粒径が大きすぎると、有機無機複合防曇膜が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、無機酸化物微粒子の平均粒径は、好ましくは1〜20nmであり、より好ましくは5〜20nmである。なお、ここでは、無機酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。また、無機酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。無機酸化物微粒子は、その含有量が多くなると、有機無機複合防曇膜全体の吸水量が低下し、有機無機複合防曇膜が白濁するおそれがある。無機酸化物微粒子は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0〜50重量部であり、より好ましくは2〜30重量部、さらに好ましくは5〜25重量部、特に好ましくは10〜20重量部となるように添加するとよい。
(加水分解性金属化合物)
無機酸化物を有機無機複合防曇膜に配合するためには、加水分解性基を有する金属化合物(加水分解性金属化合物)又はその加水分解物を、有機無機複合防曇膜を形成するための塗工液に添加するとよい。加水分解性金属化合物としては、以下の式(I)で表される、加水分解性基を有するシリコン化合物が好ましい。無機酸化物に含まれるシリカは、加水分解性基を有するシリコン化合物又はその加水分解物由来のシリカを含むことが好ましい。式(I)で表される加水分解性基を有するシリコン化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、シロキサン結合で結合したシリコン化合物において、そのシリコンの一部に有機金属が直接結合しているものもシリカに含める。
mSiX4-m (I)
式(I)におけるRは、水素原子が反応性官能基に置換されていてもよい炭素数1〜3の炭化水素基である。炭素数1〜3の炭化水素基としては、炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)及び炭素数2〜3のアルケニル基(ビニル基、アリル基、プロペニル基)等が挙げられる。
反応性官能基は、好ましくはオキシグリシジル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種である。反応性官能基を有する加水分解性金属化合物は、有機物である吸水性樹脂と無機酸化物であるシリカとを強固に結合し、有機無機複合防曇膜の耐摩耗性、硬度等の向上に寄与し得る。
式(I)におけるXは、加水分解性基又はハロゲン原子である。加水分解性基としては、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。アルコキシル基としては、炭素数1〜4のアルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)等が挙げられる。加水分解性基のうち好ましいのは、アルコキシル基であり、より好ましいのは、炭素数1〜4のアルコキシル基である。ハロゲン原子としては、例えば塩素である。
式(I)におけるmは、0〜2の整数であり、好ましくは0〜1の整数である。
式(I)で表される加水分解性基を有するシリコン化合物の好ましい具体例は、式(I)におけるXがアルコキシル基であるシリコンアルコキシドである。また、シリコンアルコキシドは、式(I)においてm=0の化合物(SiX4)に相当する4官能シリコンアルコキシドを含むことがより好ましい。4官能シリコンアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。シリコンアルコキシドは、単独で用いても2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合には、シリコンアルコキシドの主成分が4官能シリコンアルコキシドであることがより好ましい。
シリコンアルコキシドは、4官能シリコンアルコキシドと、式(I)においてm=1の化合物(RSiX3)に相当する3官能シリコンアルコキシドとを含むことがより好ましい。反応性官能基を有しない3官能シリコンアルコキシドの具体例としては、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。反応性官能基を有する3官能シリコンアルコキシドの具体例としては、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、アミノアルキルトリアルコキシシラン(3−アミノプロピルトリエトキシシラン等)等が挙げられる。
反応性官能基を有するシリコンアルコキシドは、シランカップリング剤と呼ばれることがある。式(I)においてm=2の化合物(R2SiX2)に相当する2官能シリコンアルコキシドも、Rの少なくとも一方が反応性官能基である場合は、シランカップリング剤である。Rの少なくとも一方が反応性官能基を有する2官能シリコンアルコキシドの具体例としては、グリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシラン(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン[N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等]等が挙げられる。
(架橋構造)
有機無機複合防曇膜は、有機ホウ素化合物、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤に由来する架橋構造を含んでいてもよい。架橋構造の導入は、有機無機複合防曇膜の耐摩耗性、耐水性を向上させる。別の観点から述べると、架橋構造の導入は、有機無機複合防曇膜の防曇性能を低下させることなくその耐久性を改善することを容易にする。
架橋剤は、用いる吸水性樹脂を架橋できるものであれば、その種類は特に限定されない。ここでは、有機チタン化合物についてのみ例を挙げる。有機チタン化合物は、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物及びチタンアシレートから選ばれる少なくとも1つである。チタンアルコキシドは、例えば、テトラテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラオクトキシドである。チタンキレ−ト化合物は、例えば、チタンアセチルアセトナート、チタンアセト酢酸エチル、チタンオクチレングリコール、チタントリエタノールアミン、チタンラクテートである。チタンラクテートは、アンモニウム塩(チタンラクテートアンモニウム)であってもよい。チタンアシレートは、例えばチタンステアレートである。好ましい有機チタン化合物は、チタンキレート化合物、特にチタンラクテートである。
吸水性樹脂がポリビニルアセタール樹脂である場合の好ましい架橋剤は、有機チタン化合物、特にチタンラクテートである。
(その他の任意成分)
有機無機複合防曇膜には、その他の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、防曇性を改善する機能を有するグリセリン、エチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。添加剤は、界面活性剤、界面調整剤、スリップ性付与剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤等であってもよい。
(親水性タイプ)
上述した防曇膜は、吸水性樹脂を主成分とした吸水タイプであるが、親水性タイプも採用することができる。親水性タイプは、親水性樹脂を主成分としたものであり、公知のもの、例えば、特開2011−213555号公報に記載の防曇膜を用いることができる。具体的には、以下の通りである。
防曇膜の内部には、複数の閉じた孔が形成されることが好ましい。また、防曇膜が、酸化ケイ素を主成分とするとともに、それぞれの炭素数が6以上である2本の炭素鎖を親水基から見て分岐した位置に有する2本鎖型の陰イオン性界面活性剤と、ポリオール化合物とを含むことが好ましく、前記酸化ケイ素が、酸化ケイ素微粒子と、シリコンアルコキシドの加水分解反応および縮重合反応により生成した酸化ケイ素成分とを含むことが好ましい。なお、「閉じた孔」とは、膜表面に開口していない孔である。「主成分」とは、慣用のとおり、最も多い成分を意味し、具体的には、50質量%以上を占める成分を指す。「ポリオール化合物」は、ジオール、トリオールなど多価のアルコールである。
また、このような親水性タイプの防曇膜は、シリコンアルコキシドと酸化ケイ素微粒子とを含む防曇膜の形成溶液を塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥させて防曇膜とすることにより、得ることができる。防曇膜の形成溶液は、少なくとも、1)2本鎖型の陰イオン性界面活性剤、2)ポリオール化合物、3)酸化ケイ素微粒子(シリカ微粒子)、4)少なくともそのー部がシリコンテトラアルコキシドであるシリコンアルコキシド、5)水、6)有機溶媒、7)加水分解触媒、を混合して調製することができる。但し、親水性タイプの防曇膜はこれに限定されない。
[膜厚]
有機無機複合防曇膜の膜厚は、要求される防曇特性その他に応じて適宜調整すればよい。有機無機複合防曇膜の膜厚は、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは2〜15μm、さらに好ましくは3〜10μmである。
なお、上述した防曇膜は、一例であり、紫外線吸収剤又は赤外線吸収剤は必須ではない。また、その他の公知の防曇膜を用いることができ、例えば、特開2014−14802号公報、特開2001−146585号公報に記載の防曇膜など、種々のものを用いることができる。
<7−5>
遮蔽膜2において、ガラス体1と接している面とは反対側の面に屈折率が、遮蔽膜2よりも小さい機能膜を積層することができる。これより、光の反射量が小さくなり、映り込みを押さえることができる。このような機能膜としては、例えば、上述した防曇膜を採用することができる。
<7−6>
ガラス積層体に、視認性確保性能を持たせる別の手段は、例えば、遮蔽膜2上にさらに視認性確保膜(シースルー膜)を形成することである。あるいは、この視認性確保膜は、ガラス体1において遮蔽膜2が形成されている面とは反対側に積層することもできる。例えば、ガラス体1が合わせガラスである場合には、いずれかのガラス板において、遮蔽膜2が積層されている面とは反対側に視認性確保膜を形成することができる。
以下に説明するように、視認線確保膜が、吸水性のない撥水膜の場合、結露後しても視認性が担保されるという効果がある。
視認性確保膜の具体例は、以下の通りである。視認性確保膜は、撥水基と金属酸化物成分とを含んでいる。視認性確保膜は、必要に応じ、その他の機能成分をさらに含んでいてもよく、例えば、樹脂をさらに含んでいてもよい。樹脂は、膜に柔軟性を与え、疎水性の均一性の向上に寄与する。ただし、樹脂は、その含有率が高すぎると、膜の強度を低下させることがある。したがって、視認性確保膜は、樹脂を含んでいないほうがよい場合がある。視認性確保膜は、特に、窓ガラスの開閉に伴って他の部材と摺動しうるガラス板の表面に形成する場合には樹脂を含まないことが好ましい。他の部材と摺動する代表的な窓ガラスとしては車両のドアガラスが挙げられる。
(撥水基)
撥水基は、視認性確保膜の表面を疎水性として、その表面を水蒸気が凝結しにくい表面とする。これに止まらず、撥水基は、その種類によっては、視認性確保膜の表面に水滴が形成されたとしても入射する光の直進性を確保することに貢献する。光の直進性の確保に適した撥水基は、炭素数が3〜9、好ましくは4〜8、特に5〜8、とりわけ5〜7の直鎖アルキル基である。
膜の表面に同量の水蒸気が凝結して形成された水滴が膜を覆う面積は、その表面の水の接触角が大きいほど小さくなる傾向を有する。水滴により覆われる面積が小さいほど、膜に入射する光が散乱する程度は小さくなる。撥水基の存在により水の接触角が大きくなった視認性確保膜は、その表面に水滴が形成されにくく、かつ水滴が形成された状態においても水滴により覆われる面積が相対的に小さいため、透過光の直進性を保持するうえで有利である。
しかし、透過光の直進性には、水の接触角で示される疎水性の強さと共に、疎水性の均一性も影響を及ぼす。膜の表面の疎水性が均一でなく、親水性のスポットが散在する表面では、親水性のスポットに吸着した水蒸気を起点として水滴が形成されることになるためである。したがって、膜の表面が均一な疎水性となるように、撥水基は膜表面に配向して存在していることが好ましい。同一方向に配列した配向性が高い状態で膜表面に存在することに適した撥水基は、炭素数が一定以上の直鎖アルキル基である。しかし、炭素数が多すぎる長い直鎖アルキル基は、直鎖アルキル基が途中で屈曲しやすいために高い配向性を実現しにくい。
パーフルオロアルキル基を用いれば、より強い疎水性を実現できる。しかし、パーフルオロアルキル基は、特に炭素数が多い場合には結晶性が顕著に増大する剛直な官能基であるために、膜表面では多結晶的に配向して存在する傾向がある。このため、疎水性が局所的に低い部分が膜表面に生じやすい。疎水性の均一性を確保する観点からは、パーフルオロアルキル基よりも上述した炭素数を有する直鎖アルキル基が適している。
(撥水基を有する加水分解性金属化合物)
撥水基を視認性確保膜に配合するためには、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)、特に撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)又はその加水分解物を、膜を形成するための塗工液に添加するとよい。言い換えると、撥水基は、撥水基含有加水分解性金属化合物に由来するものであってもよい。撥水基含有加水分解性金属化合物としては、以下の式(I)に示す撥水基含有加水分解性シリコン化合物が好適である。
mSiY4-m (I)
ここで、Rは、撥水基、具体的には炭素数が3〜9の直鎖アルキル基であり、Yは加水分解可能な官能基又はハロゲン原子であり、mは1〜3の整数である。加水分解可能な官能基は、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはアルコキシ基、特に炭素数1〜4のアルコキシ基である。アルケニルオキシ基は、例えばイソプロペノキシ基である。ハロゲン原子は、好ましくは塩素である。なお、ここに例示した官能基は、以降に述べる「加水分解可能な官能基」としても使用することができる。mは好ましくは1又は2である。
式(I)により示される化合物は、加水分解及び重縮合が完全に進行すると、以下の式(II)により表示される成分を供給する。
mSiO(4-m)/2 (II)
ここで、R及びmは、上述したとおりである。加水分解及び重縮合の後、式(II)により示される化合物は、実際には、視認性確保膜中において、シリコン原子が酸素原子を介して互いに結合したネットワーク構造を形成する。
このように、式(I)により示される化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらには少なくとも一部が重縮合して、シリコン原子と酸素原子とが交互に接続し、かつ三次元的に広がるシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造に含まれるシリコン原子には撥水基Rが接続している。言い換えると、撥水基Rは、結合R−Siを介してシロキサン結合のネットワーク構造に固定される。この構造は、撥水基Rを膜に均一に分散させる上で有利である。ネットワーク構造は、式(I)により示される撥水基含有加水分解性シリコン化合物以外のシリコン化合物(例えば、テトラアルコキシシラン、シランカップリング剤)から供給されるシリカ成分を含んでいてもよい。撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有するシリコン化合物(撥水基非含有加水分解性シリコン化合物)を撥水基含有加水分解性シリコン化合物と共に視認性確保膜を形成するための塗工液に配合すると、撥水基と結合したシリコン原子と撥水基と結合していないシリコン原子とを含むシロキサン結合のネットワーク構造を形成できる。このような構造とすれば、視認性確保膜中における撥水基の含有率と金属酸化物成分の含有率とを互いに独立して調整することが容易になる。
撥水基含有加水分解性シリコン化合物(式(I)参照)を用いて撥水基を視認性確保膜に導入すると、強固なシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造が形成される。このネットワーク構造の形成は、耐摩耗性のみならず、硬度、耐水性等を向上させる観点からも有利である。
撥水基は、視認性確保膜の表面における水の接触角が85度以上、好ましくは90度以上、より好ましくは95度以上になる程度に添加するとよい。水の接触角は、4mgの水滴を膜の表面に滴下して測定した値を採用することとする。水の接触角は、その上限が特に制限されるわけではないが、例えば105度以下、さらには103度以下である。撥水基は、視認性確保膜の表面のすべての領域において上記水の接触角が上記の範囲となるように、視認性確保膜に均一に含有させることが好ましい。
視認性確保膜は、金属酸化物成分100質量部に対し、1質量部以上、好ましくは3質量部以上、より好ましくは4質量部以上の範囲内となるように、また、50質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、場合によっては15質量部以下、の範囲内となるように、撥水基を含むことが好ましい。
(金属酸化物成分)
視認性確保膜は、金属酸化物成分を含んでいる。金属酸化物成分は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物成分であり、好ましくはSiの酸化物成分(シリカ成分)である。
金属酸化物成分の少なくとも一部は、視認性確保膜を形成するための塗工液に添加された、加水分解性金属化合物又その加水分解物に由来する金属酸化物成分であってもよい。ここで、加水分解性金属化合物は、a)撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)及びb)撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有する金属化合物(撥水基非含有加水分解性金属化合物)から選ばれる少なくとも1つである。a)及び/又はb)に由来する金属酸化物成分は、加水分解性金属化合物を構成する金属原子の酸化物である。金属酸化物成分は、視認性確保膜を形成するための塗工液に添加された金属酸化物微粒子に由来する金属酸化物成分と、その塗工液に添加された、加水分解性金属化合物又その加水分解物に由来する金属酸化物成分とを含んでいてもよい。ここでも、加水分解性金属化合物は、上記a)及びb)から選ばれる少なくとも1つである。上記b)、すなわち撥水基を有しない加水分解性金属化合物は、テトラアルコキシシラン及びシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。以下、既に説明した上記a)を除き、金属酸化物微粒子と上記b)とについて説明する。
(金属酸化物微粒子)
視認性確保膜は、金属酸化物成分の少なくとも一部として金属酸化物微粒子をさらに含んでいてもよい。金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより膜に導入できる。金属酸化物微粒子は、視認性確保膜に加えられた応力を膜を支持する透明物品(ガラス積層体)に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、金属酸化物微粒子の添加は、視認性確保膜の耐摩耗性及び耐擦傷性を向上させる観点から有利である。金属酸化物微粒子は、視認性確保膜を形成するための塗工液に予め形成した金属酸化物微粒子を添加することにより、視認性確保膜に供給することができる。ただし、金属酸化物微粒子は、膜の表面に親水性のスポットを形成する要因になり得るため、耐摩耗性等を改善するべき事情がない限り、膜に添加しないことが望ましい。すなわち、視認性確保膜は、耐摩耗性等を特に重視するべき事情がない限り、金属酸化物微粒子を含まない形態で用いることが好ましい。
金属酸化物微粒子の平均粒径は、大きすぎると膜が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、金属酸化物微粒子の好ましい平均粒径は、1〜20nm、特に5〜20nmである。なお、ここでは、金属酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。また、金属酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。金属酸化物微粒子は、その含有量が過大となると、膜が白濁するおそれがある。
(撥水基を有しない加水分解性金属化合物)
視認性確保膜は、撥水基を有しない加水分解性金属化合物(撥水基非含有加水分解性化合物)に由来する金属酸化物成分を含んでいてもよい。好ましい撥水基非含有加水分解性金属化合物は、撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物である。撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、例えば、シリコンアルコキシド、クロロシラン、アセトキシシラン、アルケニルオキシシラン及びアミノシランから選ばれる少なくとも1種のシリコン化合物(ただし、撥水基を有しない)であり、撥水基を有しないシリコンアルコキシドが好ましい。なお、アルケニルオキシシランとしては、イソプロペノキシシランを例示できる。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、以下の式(III)に示す化合物であってもよい。
SiY4 (III)
上述したとおり、Yは、加水分解可能な官能基であって、好ましくはアルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つである。
撥水基非含有加水分解性金属化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらに、少なくともその一部が重縮合して、金属原子と酸素原子とが結合した金属酸化物成分を供給する。この成分は、金属酸化物微粒子と樹脂とを強固に接合し、視認性確保膜の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい一例は、テトラアルコキシシラン、より具体的には炭素数が1〜4のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン及びテトラ−tert−ブトキシシランから選ばれる少なくとも1種である。
テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、視認性確保膜の疎水性が低下することがある。
(樹脂)
視認性確保膜において樹脂は任意の成分であるが、添加する場合は、膜の耐摩耗性等が低下しないように、金属酸化物成分100質量部に対し、0質量部を超え50質量部以下の範囲で添加することが好ましい。樹脂の好ましい配合量は、金属酸化物成分100質量部に対し、例えば1質量部以上、さらに5質量部以上、特に10質量部以上であり、40質量部以下、さらに35質量部以下、特に30質量部以下である。樹脂の多量の添加は、膜の表面に親水性のスポットが形成される要因となるため、避けることが望ましい。樹脂の種類は特に限定されないが、親水性のスポットの形成を防ぐために、吸水性が高い樹脂は避けることが好ましい。例えば、樹脂としてポリビニルブチラール樹脂を用いる場合、そのブチラール化度(アセタール化度)は、50モル%以上、特に55モル%以上、さらには60モル%以上が好ましい。ブチラール化度の上限は、特に制限されないが、85モル%以下であってもよい。
(その他の任意成分)
視認性確保膜にはその他の添加剤を配合してもよい。添加剤は、グリコール類、界面活性剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、防腐剤等であってもよい。
(膜厚)
視認性確保膜の好ましい膜厚は、3〜70nm、好ましくは5〜50nm、より好ましくは7〜45m、特に10〜40nmである。
(成膜)
視認性確保膜は、塗工液を透明基板等のガラス積層体上に塗布し、塗布した塗工液を乾燥させることにより、成膜することができる。途工液の乾燥は加熱を伴ってもよい。塗工液の調製に用いる溶媒、塗工液の塗布方法は、従来から公知の材料及び方法を用いればよい。
塗工液の塗布工程では、雰囲気の相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、膜が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、膜のマトリックス内に入り込んで残存した水が膜の強度を低下させるおそれがある。
塗工液の乾燥工程は、風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むことが好ましい。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に塗工液を曝すことにより、実施するとよい。風乾工程は、非加熱工程として、言い換えると室温で実施できる。塗工液に加水分解性シリコン化合物が含まれている場合、加熱乾燥工程では、シリコン化合物の加水分解物等に含まれるシラノール基及びガラス積層体上に存在する水酸基が関与する脱水反応が進行し、シリコン原子と酸素原子とからなるマトリックス構造(Si−O結合のネットワーク)が発達する。
加熱乾燥工程における適切な加熱温度は、300℃以下、例えば100〜200℃であり、加熱時間は、1分〜1時間である。
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
実施例1に係るガラス積層体を、以下の通り準備した。
紫外線吸収剤として、
2,2',4,4'-テ卜ラヒド口キシベンゾフェノン(BASF社製、UVINUL 3050)6.000質量部、
テトラエトキシシラン(多摩化学工業製)17.622質量部、
3-グリシドキシプロピル卜リメトキシラン(信越化学工業製、KBM-403)13.312質量部、
インジウム錫酸化物からなる微粒子を40質量%含むITO微粒子分散液(三菱マテリアル電子化成製、) 2.5質量部と、
ポリプロピレングルコール(キシダ化学製、PPG700)0.218質量部、
濃硝酸(双葉化学製、濃度60質量%)0.025質量部、
溶媒として
エタノール 42.028質量部、および
水 28.125質量部(ただしエタノールおよび水は微粒子分散液の分散媒や濃硝酸に含まれる水を含む)
を混合・撹拌し、遮蔽膜の形成溶液を得た。
次いで、ガラス体として、600×600mm、曲率半径が2000mmのUVカットグリーンガラス(日本板硝子製、厚さ3.4mm)を準備した。そして、これを洗浄し、このガラス体全体に20℃、30%RHの環境下で、膜形成溶液をフローコート法により塗布した。フローコート法では、ノズルから噴射される膜形成溶液を右辺、上辺、左辺に,この順で沿うように塗布した。このとき、上辺を沿うように塗布された膜形成溶液は下方に流れながら、ガラス体全体に積層された。そして、同環境下で5分間乾燥させた後、膜形成溶液を塗布したガラス体の温度が180℃になるようにして乾燥を実施し、遮蔽膜が積層されたガラス積層体を作製した。ここでは、膜厚の相違する実施例1,2及び比較例を準備した。実施例1,2については、遮蔽膜の膜厚が上記式(16)を充足するように、送風などを施し、調整を行った。
<2.評価>
上記のように準備した実施例1,2及び比較例について、ガラス積層体の上辺の中央から20mm,40mm,100mm,200mm,300mm,400mm,500mmの位置において、遮蔽膜の膜厚、YA,Tuv400を測定した。測定方法は上記実施形態で示したとおりである。結果は、以下の通りである。
表2に示すとおり、実施例1のガラス積層体では、いずれの位置においてもYAが70%以上であり、透明性が高いことが分かる。また、Tuv400が、いずれの位置でも2.0%以下であり、高い紫外線遮蔽機能を有することが分かる。また、膜厚については、表2からすると、Tmin=2.9μm、Tmax=4.5mmであり、Tmax/Tmin=1.55であった。したがって、上記式(16)を充足しており、いずれの測定点でもYAも70%以上となっている。
なお、図13に膜厚とYAとの関係を示すが、膜厚が大きい箇所ほど、YAが低下していることが分かる。
実施例2の結果は、以下の通りである。
実施例2は、全体的に実施例1よりも遮蔽膜の膜厚が大きいため、Tuv400は実施例1よりも低いが、YAはやや低くなっている。しかしながら、Tmin=4.2μm、Tmax=7.3mmであり、Tmax/Tmin=1.73であった。したがって、上記式(16)を充足しており、いずれの測定点でもYAも70%以上となっている。
比較例の結果は、以下の通りである。
比較例は、TminとTmaxの差が大きく、Tmax/Tmin=5.2であった。したがって、上記式(16)を充足しておらず、Tmaxの測定点ではYAが70%未満となっている。
1 :ガラス体
2 :遮蔽膜

Claims (30)

  1. 自動車に取り付けられるガラス積層体であって、
    少なくとも1つのガラス板を含み、湾曲したガラス体と、
    前記ガラス体の少なくとも一方の面に積層され、紫外線を遮蔽可能な遮蔽膜と、
    を備え、
    前記ガラス体は、CIE標準のA光源を用いて測定する可視光透過率YAが、70%以上であり、
    前記遮蔽膜の膜厚の最大値Tmaxと、前記膜厚の最小値Tminとの関係が、1≦Tmax/Tmin<5を充足する、ガラス積層体。
  2. 前記ガラス体の曲率半径の最大値が、10000mm以下である、請求項1に記載のガラス積層体。
  3. 垂直からの前記自動車への取付角度が30度以下である、請求項1または2に記載のガラス積層体。
  4. 前記ガラス体において、前記Tmaxが測定される位置が、前記自動車への取付時に、前記Tminが測定される位置よりも下側にある、請求項1から3のいずれかに記載のガラス積層体。
  5. 前記ガラス体の厚みが2.5mm以上である、請求項1から4のいずれかに記載のガラス積層体。
  6. 前記Tminが、1.5μm以上である、請求項1から5のいずれかに記載のガラス積層体。
  7. Tuv400≦2.0%を充足する、請求項1から6のいずれかに記載のガラス積層体。
  8. 波長が420nmの光の透過率が20%以上である、請求項7に記載のガラス積層体。
  9. 前記ガラス体の単位面積あたりに含まれる3価酸化鉄の量が、Fe23に換算して1〜10mg/cm2である、請求項7または8に記載のガラス積層体。
  10. 前記ガラス積層体における、波長が420〜800nmの光の透過率の平均値がTavgとしたとき、
    前記ガラス積層体において、透過率がTavg*0.9である光の波長と、
    前記ガラス積層体において、透過率がTavg*0.1である光の波長と、
    の差が22nm以下である、請求項7から9のいずれかに記載のガラス積層体。
  11. JIS K7373:2006に基づく黄色度YIが、10以下である、請求項7から10のいずれかに記載のガラス積層体。
  12. 波長が420nmの光の透過率が85%以下である、請求項7から11のいずれかに記載のガラス積層体。
  13. JIS T7330:2000に基づくブルーライトカット率が35%以上である、請求項12に記載のガラス積層体。
  14. 前記Tminが、2〜2.5μmである、請求項7から13のいずれかに記載のガラス積層体。
  15. 前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の少なくとも1つは、表面圧縮応力が20MPa未満である、請求項7から14のいずれかに記載のガラス積層体。
  16. 前記ガラス体に含まれる前記ガラス板の少なくとも1つは、表面圧縮応力が80MPa以上である、請求項7から15のいずれかに記載のガラス積層体。
  17. 前記ガラス積層体において、前記遮蔽膜が形成された面に対して、JIS R3221に準拠し、500g荷重で1000回のテーバー摩耗試験を行った後、前記遮蔽膜が剥離せず、且つ前記試験後の前記ガラス積層体のヘイズ率が5%以下である、請求項7から16のいずれかに記載のガラス積層体。
  18. 前記ガラス積層体において、前記遮蔽膜が形成された面とは反対側の面から、波長が295〜450nm、照度76mW/cm2の紫外線を100時間照射した後のTuv400と、前記紫外線の照射前のTuv400との差が、2%以下である、請求項7から17のいずれかに記載のガラス積層体。
  19. 前記遮蔽膜には、赤外線吸収剤が含まれており、
    熱暑感透過率が50%以下である、請求項1から18のいずれかに記載のガラス積層体。
  20. 前記ガラス体の上辺に沿って、前記遮蔽膜が積層されていない非積層領域が設けられている、請求項1から19のいずれかに記載のガラス積層体。
  21. 外部に露出する前記ガラス体の表面には、マークが形成されており、
    前記マークは、表面粗さRaが1.5μmである粗面部により構成されている、請求項1から20のいずれかに記載のガラス積層体。
  22. 前記遮蔽膜において、前記ガラス体と接触する面とは反対の面に、屈折率が前記遮蔽膜よりも小さい機能膜が積層されている、請求項1から21のいずれかに記載のガラス積層体。
  23. 前記遮蔽膜において、前記ガラス体と接触する面とは反対の面に、第1防曇膜が積層されている、請求項7から22のいずれかに記載のガラス積層体。
  24. 前記ガラス体の他方の面に、第2防曇膜が積層されており、
    前記第1及び第2防曇膜は、シースルー膜である、請求項23に記載のガラス積層体。
  25. 前記遮蔽膜が、防曇機能を有する、請求項7から22のいずれかに記載のガラス積層体。
  26. 前記自動車のウインドシールド、または前部ドアのサイドガラスとして、用いられる請求項7から22のいずれかに記載のガラス積層体。
  27. 少なくとも一つのガラス板を含む湾曲したガラス体を略水平に支持する、第1ステップと、
    前記ガラス体の一方の面に対し、ノズルから遮蔽膜用液を塗布することで、前記一方の面に遮蔽膜を形成する、第2ステップと、
    を備え、
    前記第2ステップでは、前記遮蔽膜用液を前記一方の面の中心付近から渦状に塗布するように、前記ノズルを前記ガラス体に対して相対的に移動させる、ガラス積層体の製造方法。
  28. 前記遮蔽膜の膜厚の最大値Tmaxと、前記膜厚の最小値Tminとの関係が、1≦Tmax/Tmin<5を充足する、請求項27に記載のガラス積層体の製造方法。
  29. 前記遮蔽膜用液の塗布量は、前記一方の面に対し、20〜50g/m2である、請求項27または28に記載のガラス積層体の製造方法。
  30. 前記遮蔽膜用液を渦状に塗布するための、前記ノズルの隣接する経路間の距離は、3〜30mmである、請求項27から29のいずれかに記載のガラス積層体の製造方法。
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