JP2018020771A - ウインドシールドおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】情報取得装置により取得される情報の精度の低下を防止することに適したウインドシールドを提供する。【解決手段】ウインドシールドをガラス板(例えば合わせガラス5)の車内側表面50に開口62を有する不透視膜を形成する。情報取得装置2へと入射する光22は開口62内を透過する。運転者が車外を視認するための透視領域11は開口62と分離されている。防曇膜又は低反射膜である機能膜8は、少なくとも開口62内において、開口62に隣接する不透視膜6の側面と接している。不透視膜は、ヒータ線を含む導電膜6、ガラス板の少なくとも周縁領域70を覆う光を遮蔽する遮蔽膜7、又はこれらの膜6、7から構成されている。機能膜8は、不透視膜の後退部内に形成されていてもよい。【選択図】図3

Description

本発明は、車両の車内へと入射する光を受けて車外の情報を取得する情報取得装置と共に使用することに適したウインドシールドに関する。
前方車両との距離等を感知し、異常接近時には自動的にブレーキを作動させる車両衝突回避システムが普及しつつある。このシステムは、前方車両との距離、歩行者の存在等の情報を、カメラ、赤外線レーザを用いるレーダ等の情報取得装置を用いて取得している。通常、カメラ等の情報取得装置は、ウインドシールドの車内側表面に近接して配置され、装置の種類によっては光を前方に向けて照射しながら、車外からの光を受光し、前方の車両との距離を計測したり、歩行者の存在を検知したりする。このようなシステムに適したウインドシールドも各種提案されており、例えば特許文献1には、シェードバンド着色域内に透光域を設けた合わせガラスが開示されている。特許文献2には、この公報ではマスク層と呼ばれている車外からの視界を遮るための遮蔽膜に開口を設け、この開口内を透過する光により情報取得装置が車外の情報を取得する態様が開示されている。
特開2006−96331号公報 特開2016−88493号公報
気温の低い日や寒冷地においては、特に運転の開始時に、情報取得装置により取得される情報の精度が低下することがある。これは、上述の衝突回避システムに限らず、レインセンサ、ライトセンサ、光ビーコン等受光によって車外の情報を取得する情報取得装置に共通して生じる問題である。また、情報取得装置には、車外の情報を良好な感度で取得することも求められている。
本発明は、情報取得装置により車外の情報を取得することに適したウインドシールドを提供することを目的とする。
従来、防曇膜は、ウインドシールドにおいては運転者を始めとする乗員の視界を確保するために用いられてきた。また、低反射膜は、ウインドシールドにおいては車内のダッシュボードが車内側表面に映り込むことを防ぐために使用されてきた。これらの目的から、ウインドシールドにおいて、防曇膜及び低反射膜は、車両の乗員が車外を視認するための透視領域に形成されてきた。しかし、防曇膜及び低反射膜は、情報取得装置との組み合わせにおいてもその効果を発揮できる。
すなわち、本発明は、
車両の車内へと入射する光を受けて車外の情報を取得する情報取得装置の配置に適したウインドシールドであって、
ガラス板と、
前記ガラス板の車内側表面に形成された、防曇膜又は低反射膜である機能膜と、
前記車内側表面に形成された不透視膜と、を備え、
a)運転者が車外を視認するための透視領域と分離された前記不透視膜の開口、及び/又はb)前記ガラス板の周端側から前記透視領域側に張り出した前記不透視膜の2つの突出部により挟まれた前記不透視膜の後退部、を有し、
前記情報取得装置へと入射する光は前記開口又は前記後退部内を透過し、
前記機能膜は、少なくとも前記開口又は前記後退部内に、当該開口又は後退部に隣接する前記不透視膜の側面と接するように形成されている、ウインドシールド、を提供する。
また、本発明は、
車両の車内へと入射する光を受けて車外の情報を取得する情報取得装置の配置に適したウインドシールドの製造方法であって、
不透視膜を、前記情報取得装置へと入射する光が、a)運転者が車外を視認するための透視領域と分離された前記不透視膜の開口、又はb)前記ガラス板の周端側から前記透視領域側に張り出した前記不透視膜の2つの突出部により挟まれた前記不透視膜の後退部、内を透過するように、ガラス板の車内側表面に形成する工程i)と、
防曇膜又は低反射膜である機能膜を形成するための塗布液を前記車内側表面の少なくとも前記開口又は前記後退部内に供給し、少なくとも前記開口又は前記後退部内に、当該開口又は後退部に隣接する前記不透視膜の側面と接するように、前記機能膜を形成する工程ii)と、を具備する、ウインドシールドの製造方法を提供する。
不透視膜の開口内に形成された防曇膜は、水蒸気が凝結して生じた水滴により情報取得装置へと入射する光の直進性が損なわれることを防止して、情報取得装置により取得される情報の精度の低下を抑制する。また、低反射膜は、車内側空間に露出したウインドシールドのガラス面における光の反射を抑制して、情報取得装置による情報取得の感度低下を防止する。不透視膜の開口又は後退部は、防曇膜又は低反射膜である機能膜が形成されるべき領域を区画し、場合によってはその区画内に形成される機能膜の膜厚を制御する。本発明によるウインドシールドは、情報取得装置により車外の情報を取得することに適している。
本発明に係るウインドシールドの一実施形態を示す、ウインドシールドを車内側から見た状態を示す平面図である。 図1の部分拡大図である。 図1の部分断面図である。 図2に示した形態における機能膜の膜厚分布の一例を示す図である。 図2に示した形態における機能膜の膜厚分布の別の例を示す図である。 ヒータ線の配置の一例を示すための図である。 ヒータ線の配置の別の一例を示すための図である。 ヒータ線の配置のまた別の一例を示すための図である。 図8に示した形態における機能膜の膜厚分布の一例を示す図である。 本発明に係るウインドシールドの別の一実施形態を示す、ウインドシールドを車内側から見た状態を示す平面図である。 図10の部分拡大図である。 図10の部分断面図である。 図11に示した形態における機能膜の膜厚分布の一例を示す図である。 ヒータ線の配置の一例を示すための図である。 本発明に係るウインドシールドのまた別の一実施形態を示す、ウインドシールドを車内側から見た状態を示す部分拡大平面図である。 図15に示した形態における機能膜の膜厚分布の一例を示す図である。 ヒータ線の配置の一例を示すための図である。 導電膜に後退部が形成された例を示す平面図である。 水の接触角が相対的に大きい防曇膜の表面に水蒸気が凝結した状態を示す模式図である。 水の接触角が相対的に小さい防曇膜の表面に水蒸気が凝結した状態を示す模式図である。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の詳細を説明するが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
本発明のウインドシールドの一形態において、不透視膜は、通電により発熱するヒータ線を含む導電膜である。この形態において、ヒータ線は機能膜と接していることが好ましい。この形態において、ウインドシールドは、ガラス板の少なくとも周縁領域を覆うように形成された、光を遮蔽するための遮蔽膜をさらに備え、遮蔽膜は、導電膜の少なくとも一部が車外から視認できないように形成されていてもよい。また、この形態において、遮蔽膜は、ガラス板の車内側表面に形成されていてもよいし、車内側表面以外のガラス板の面に形成されていてもよい。例えば、ガラス板が合わせガラスの場合、遮蔽膜は、車外側及び車内側ガラスの合計4つの面のいずれに形成されていてもよい。
本発明のウインドシールドの別の形態において、不透視膜は、ガラス板の少なくとも周縁領域を覆うように形成された、光を遮蔽するための遮蔽膜である。この形態において、機能膜は、遮蔽膜の側面の少なくとも一部において遮蔽膜の側面の高さ方向の全面に接していてもよい。この形態では遮蔽膜の側面が機能膜の高さを規定する機能を奏しうる。この形態において、ウインドシールドは、開口内、又は遮蔽膜上の開口に隣接する領域に配置された、通電により発熱するヒータ線をさらに含んでいてもよい。ここで、開口に隣接する領域は、開口と透視領域とを分離する領域を含んでいてもよい。
本発明のウインドシールドのまた別の形態において、不透視膜は、通電により発熱するヒータ線を含む導電膜と、ガラス板の少なくとも周縁領域を覆うように形成された、光を遮蔽するための遮蔽膜と、を含み、機能膜は、開口又は後退部内において導電膜及び遮蔽膜に接するように形成されている。この形態では、機能膜が形成されている開口又は後退部が導電膜の側面及び遮蔽膜の側面に接している。
本発明のウインドシールドの一形態では、機能膜は、開口又は後退部内に形成され、透視領域には形成されていない。この形態において、機能膜は、開口又は後退部内と共に不透視膜の表面に形成されていてもよく、開口又は後退部内のみに形成されていてもよい。
本発明のウインドシールドの一形態において、機能膜は、不透視膜の側面の少なくとも一部において側面の高さ方向の全面に接している。この形態において、機能膜は、側面の一部のみにおいて側面の高さ方向の全面に接すると共に、当該一部において側面を越えて開口又は後退部内から不透視膜の表面の一部を含むように広がって形成されていてもよい。機能膜は、不透視膜の表面の一部に形成されている一方で、透視領域には形成されていない形態としてもよい。
本発明のウインドシールドの一形態において、ヒータ線の幅は5〜200μmである。また、本発明のウインドシールドの一形態において、不透視膜の高さは5〜50μmである。
また、本発明のウインドシールドの製造方法の一形態では、工程ii)において、塗布液が開口若しくは後退部内のみに止まるように、又は塗布液が開口若しくは後退部が接する不透視膜を乗り越えて透視領域を通過することなくガラス板外に流れ出るように、塗布液が供給される。
[第1実施形態]
図1〜図3に示すように、本実施形態に係るウインドシールド1は、車体の前方において車内空間と車外とを画する合わせガラス5を備えている。合わせガラス5は、車外側の表面が斜め上方を向くように傾斜した状態で車体に設置されている。ウインドシールド1の部材としてのガラス板としては、周知のとおり、通常、複数のガラス単板を樹脂中間膜により接合したガラス積層板(合わせガラス)が使用される。
合わせガラス5の一部の領域には、その領域が不透視となるように遮蔽膜7が形成されている。遮蔽膜7は、合わせガラス5の少なくとも周縁領域70に形成されている。周縁領域70は合わせガラス5の周端に沿って枠状に配置されている。遮蔽膜7は、周縁領域70においてウインドシールド1と車体との接合部が車外から視認できないように同領域70を不透視とする。周縁領域70は、ウインドシールド1の中央に広がる透視領域11を囲んでいる。透視領域11は、運転者を始めとする乗員が、車内から車外、具体的には車両前方を視認するための領域である。透視領域11の一部、通常は上方周端1uに沿った帯状部、には、直射日光により乗員が感じることがある眩しさを緩和するための透光性の着色部(図示せず)が配置されることがある。着色部は、シェードバンド等と呼ばれ、典型的には合わせガラス5の中間膜52の一部を着色することにより形成される。
遮蔽膜7は、周縁領域70と共に突出領域71にも形成されている。突出領域71は、ガラス板1の中央側へと周縁領域70の一部が張り出した領域である。図示した例では、突出領域71は、周縁領域70との間に開口72が形成されるように、その両端が周縁領域70に接続された略U字状の領域である。ただしこれに限らず、突出領域71は、開口72を囲む枠部と、枠部と周縁領域70とを接続する接続部とから構成されていてもよい。遮蔽膜7の開口72と透視領域11とは、突出領域71により分離されている。開口72は、ウインドシールド1の上方周端1u近傍に形成されている。開口72内には、車外から情報取得装置2へと入射する光が透過する領域(情報取得領域)12が存在する。遮蔽膜7は、合わせガラス5の車外側ガラス51の車内側の面(いわゆる第2面)に形成されている。
合わせガラス5の車内に露出する表面(車内側表面50;いわゆる第4面)には、導電膜6が形成されている。導電膜6は、遮蔽膜7と同じく視界を遮る不透視膜である。導電膜6には開口62が形成され、開口62内には情報取得領域12が存在する。導電膜6の開口62は、遮蔽膜7の開口72と同様、矩形であるが、開口72よりもやや大きく開口72を包含するように形成されている。導電膜6は、遮蔽膜7が形成された領域内においてその車内側に形成されているため、車外から導電膜6を視認することはできない。
導電膜6は、通電により発熱するヒータ線61を含んでいる。導電膜6は、具体的には開口62に接するヒータ線(発熱線)61と、導電膜6を電源に接続するための一対の給電部68と、ヒータ線61の両端と一対の給電部68とを結ぶ一対のバスバー(母線)60と、導電膜6を電源に接続するための一対の給電部68とを備えている。導電膜6は、電源から供給される電流により発生するジュール熱が主としてヒータ線61において発生するように設計されている。すなわち、ヒータ線61は相対的に幅が狭く電気抵抗値が高い導電ストリップであり、バスバー60は相対的に幅が広く電気抵抗値が低い一対の導電ストリップ60a、60bから構成されている。ただし、ヒータ線61の近傍に給電部68を配置すれば、バスバー60は省略することができる。
合わせガラス5の車内側表面50の開口62内には、情報取得領域12を覆うように機能膜8が形成されている。機能膜8は、情報取得領域12を透過する光が情報取得装置2に入射することを妨げない透光性の膜であり、防曇膜又は低反射膜として機能する膜である。機能膜8は、多層膜であってもよいが、好ましくは単層膜である。導電膜6の開口62によって機能膜8を少なくとも形成するべき領域が区画され、導電膜6はその領域を囲む壁面として内周側面を提供している。図示した例では、機能膜8は、開口62の全周において導電膜6の内周側面と接するように開口62内の全域に形成されている。ヒータ線61は、開口62を区画する導電膜6の内周側面の一部を構成している。ただしこれに限らず、機能膜8は導電膜6の内周側面の一部のみと接するように開口62内に形成されていてもよく、ヒータ線61と機能膜8との直接接触も必須ではない。
情報取得装置2は、受光部21を備え、受光部21が合わせガラス5を透過してきた光22を受光できるように合わせガラス5に近接して配置され、場合によっては図示を省略する取り付け部材により合わせガラス5に固定されている。情報取得装置2は、例えば車外の状況を撮影するビデオカメラ等の撮影装置であり、あるいはレーザ光を発射し、車外の物体で反射したレーザ光を受光するレーザレーダである。情報取得装置2は、レインセンサ、ライトセンサ、光ビーコン等であってもよい。情報取得装置2は、取得された情報を処理する情報処理装置3に接続されている。
水蒸気が凝結して生じた水滴により情報取得領域12における光の直進性が損なわれると、情報取得装置2により取得される情報の精度が低下し、場合によっては情報を取得できなくなる。機能膜8が防曇膜である場合、情報取得領域12を含む開口62内には結露が相対的に発生しにくくなる。結露は、機能膜8が低反射膜である場合は膜により防ぐことができず、機能膜8が防曇膜である場合でも膜による吸湿のみでは完全な防止が難しいことがある。しかし、導電膜6への通電により、結露により凝結した水滴は迅速かつ効率的に除去することができる。ヒータ線61は、その内周側面に接している機能膜8に直接熱を伝え、水滴の蒸発を促進する。
機能膜8が防曇膜である場合、開口62内における結露を防止する観点からは、機能膜8を開口62内に形成して透視領域11には敢えて形成しない形態とするとよい。過飽和状態となった水蒸気が透視領域11において凝結して消費されると、防曇膜8による結露防止の負担が軽くなるためである。透視領域11における結露は、運転の直接的な支障となるために運転者により発見されやすい。このため、その除去のためにデフロスタ等を作動させる操作を開始することは運転者にとって困難ではない。導電膜6が提供する開口62によって、必要とされる領域のみ、すなわち開口62内のみに所定の厚みで機能膜8を形成することは容易になっている。
機能膜8は、開口62内において一定の厚みを有するように形成されている(図3)。しかし、機能膜8の膜厚は一定でなくてもよい。例えば、図4に示す例では、下方ヒータ線61l側から上方ヒータ線61u側にかけて徐々に厚くなっていくように機能膜8が形成されている。ウインドシールド1に生じる結露は、多くの場合、周端に近い部位で発生しやすい。これを防ぐ観点からは、ウインドシールド1の下方ヒータ線61lに接する部位(透視領域11側の部位)よりも上方ヒータ線61uに接する部位(周端1u側の部位)が厚くなるように防曇膜である機能膜8を形成することが好ましい。もっとも、図4とは逆に、例えばウインドシールド1の上方ヒータ線61u側から下方ヒータ線61l側に徐々に厚くなっていくように、機能膜8を形成することも可能である。
機能膜8の膜厚及びその分布は、開口62を囲む導電膜6の膜厚、機能膜を形成するための塗布液の供給量、その組成等により調整できる。また、機能膜8の膜厚及びその分布は、塗布液を塗布する際に又は塗布した後に合わせガラス5の姿勢を制御し、必要に応じて塗布後にその姿勢を変化させることによっても調整できる。例えば、上方周端1u側が下方周端1l側よりも低くなる姿勢で合わせガラス5を保持した状態で塗布液を開口62内に供給する塗布工程は、図4に示したような機能膜8の膜厚分布の実現に適している。この場合、余剰の塗布液は、導電膜6、具体的には上方ヒータ線61u、を乗り越えさせて開口62外に流し出してもよい。こうして形成した機能膜の例を図5に示す。図5では、開口内62と共に、上方ヒータ線61u及び周縁領域70に存在するガラス表面上に機能膜9が形成されている。機能膜9は機能膜8と同一組成である。
図2に示した例では、導電膜6の開口62は、遮蔽膜7の開口72を包含するように開口72よりも大きく形成されていた。しかしこれに限らず、開口62は、開口72の一部のみを包含するように形成されていてもよく、開口72に包含されるように形成されていてもよい。前者の例を図6に示し、後者の例を図7に示す。図7から理解できるように、開口62の形状は矩形に限らず、円形その他の形状(例えば、台形、楕円形、多角形)であってもよい。言い換えると、ヒータ線61の形状は直線状ストリップに限らず、湾曲又は屈曲した形状であってもよい。ヒータ線61の非直線状の形状は、ヒータ線61からの発熱量の増加や発熱が得られる面積の拡張をもたらす。しかしいずれの形態においても、車内側表面50に形成される不透視膜である導電膜6の開口62は、情報取得領域12を含むように形成される。図示による例示は省略するが、開口72の形状も台形に限られるわけではない。
開口62が開口72に包含されるように形成されている別の例を図8及び図9に示す。この例では、遮蔽膜7が合わせガラス5の車内側表面50に形成されている。また、この例では、導電膜6の開口62内に機能膜8が形成され、導電膜6と遮蔽膜7とに囲まれた透光性の領域(開口)15にも機能膜10が形成されている。領域15は、開口72内であって開口62外に存在する。機能膜10は、開口62に供給された余剰の塗布液が領域15へと流れ出てその領域15で保持されることによって形成された膜である。機能膜10は機能膜8と同一組成であるが、その膜厚は機能膜8の膜厚よりも小さい。領域15は、余剰の塗布液を受け入れる貯液部として機能し、開口62を囲む導電膜6の厚さにより定まる厚さに機能膜8を形成する場合であっても、塗布液の供給量の厳密な制御を不要とする役割を果たしている。
図8及び図9より明らかなように、遮蔽膜7は、合わせガラス5のいずれの面に形成されていてもよく、図示した例以外の面、すなわち車外側ガラス51の車外側の面(合わせガラス5の車外側表面)や車内側ガラス53の車外側の面に形成されていてもよい。
導電膜6の開口62及び遮蔽膜7の開口72の数は2以上であっても構わない。情報取得装置2は、その種類によっては、光入射のための開口とは別に、光照射のための開口を形成することが望ましい場合がある。この場合は、例えば、開口62、72のペアを隣接して配置してもよいし、いずれかの開口を光入射領域と光照射領域とを含む1つの開口として形成してもよい。複数の情報取得装置2を配置する場合も同様である。開口62、72と共に、後述する後退部を設けてもよい。ヒータ線61の数、配置、形状、バスバー60の形状、給電部68の位置等も図示した例に限られるわけではない。
ヒータ線61の幅は、例えば5〜200μm、好ましくは10〜100μmである。バスバー60の幅は、例えば1〜10mmである。ヒータ線61を含む導電膜6の膜厚は、例えば1〜70μm、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。遮蔽膜7の膜厚は、1〜70μm、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。開口と透視領域とを分離する部分における突出領域71の幅は、例えば0.1〜200mm、好ましくは10〜50mmである。
[第2実施形態]
第2実施形態においては、第1実施形態と同一である部材、部位、領域等には図面中同一の符号を付し、重複する説明、あるいは第1実施形態の説明から自明である事項は、記載を省略する。
図10〜図12に示すように、第2実施形態では、遮蔽膜7が合わせガラス5の車内側表面50に形成され、その開口72内に、開口72に隣接する遮蔽膜7の内周側面と接するように機能膜8が形成されている。すなわち、第2実施形態では機能膜8を形成するべき開口72が遮蔽膜7に形成されている。図10〜図12に示した例では、導電膜6は、合わせガラス5の車内側表面50上に配置されているが、車内側表面50に直接形成されているわけではなく、遮蔽膜7上に形成されている。
図示した例では、ヒータ線61は、機能膜8に直接接触せず、遮蔽膜7の開口72に近接して、具体的には開口72との最短距離が例えば50mm以内、好ましくは30mmとなるように配置されている。ヒータ線61は、開口72と透視領域11とを分離する突出領域71を含む領域に形成されている。しかし、図13に示すように、例えば機能膜8を形成するための塗布液の供給量を増量して、開口62を囲む導電膜6の内周側面にも接するように機能膜8を形成すれば、ヒータ線61と機能膜8との直接接触を実現することができる。図13に示した例では、導電膜6及び遮蔽膜7が共に、機能膜8が接触する内周側面を提供する不透視膜として機能していることになる。この形態は、前述の第1実施形態(開口において機能膜8が接する内周側面を導電膜6が提供)及び後述の第3実施形態(開口において機能膜8が接する内周側面を導電膜6及び遮蔽膜7が提供)の一例でもある。図13に示した形態は、導電膜6又は遮蔽膜7の膜厚よりも厚く機能膜8を形成するべき場合に適している。
なお、本実施形態において、導電膜6は、合わせガラス5の車内側表面50に形成されていることが好ましいが、図示した例以外の面、例えば車外側ガラス51の車内側の面や車内側ガラス53の車外側の面に形成されていてもよい。
図14に示す例では、ヒータ線61は、湾曲又は屈曲した形状を有し、相対的に長い全長を有すると共に、車内側表面、より具体的には遮蔽膜7上、において相対的に広い面積を覆う。湾曲又は屈曲したヒータ線61、特に複数の湾曲又は屈曲部を有するジグザグ状のヒータ線61は、抵抗値の増加に伴う発熱量の増加と発熱面積の拡大とをもたらす。
[第3実施形態]
第3実施形態においても、第1及び第2実施形態と同一である部材、部位、領域等には図面中同一の符号を付し、繰り返しになる説明は省略する。
図15〜図16に示すように、第3実施形態では機能膜8を形成するべき開口82が導電膜6及び遮蔽膜7により囲まれている。すなわち、この例では、導電膜6及び遮蔽膜7が合わせガラス5の車内側表面50に形成され、導電膜6と遮蔽膜7とから構成される不透視膜の開口82内に、開口82を囲む不透視膜6、7の内周側面と接するように機能膜8が形成されている。なお、遮蔽膜7は車内側表面50上に直接形成され、導電膜6はその上から形成されている。
図示した例では、導電膜6と遮蔽膜7とから構成される不透視膜は、情報取得領域12を含む開口82と共に、情報取得領域12を含まない開口85を有している。開口82、85は、同じく透光性の領域である透視領域11から、不透視の突出領域71に形成された遮蔽膜7により分離されている。この例では、上述した例(図8、図9参照)と同様、開口85に余剰の塗布液を流し入れて機能膜10を形成することができる。なお、図16には、導電膜6の表面の撥水性が高いために、ヒータ線61に機能膜を形成するための塗布液がほとんど付着しない場合の形態を示している。
図17に示すように、本実施形態においても、複数の湾曲又は屈曲部を有するヒータ線61を用いてもよい。複数の湾曲又は屈曲部を有するヒータ線61は、直線状ストリップであるヒータ線(図14)と比較して、発熱量及び発熱面積の増加に有利である。なお、図17に示した例では、開口82、85の上方、すなわちウインドシールド1の上方周端1uの中央近傍、に一対の給電部68a、68bを配置したため、バスバー60a、60bは相対的に短くなっている。
図8、図9、図15〜図17に示したように、本発明の一形態では、車内側表面50に、不透視膜で囲まれ、情報取得領域12を含む透光性の開口62、82と、不透視膜で囲まれ、開口62、82と不透視膜で分離された透光性の領域15、85とを有し、開口62、82内に機能膜8が形成され、領域15、85内に機能膜8と同一組成の、また好ましくは機能膜8よりも膜厚が小さい、機能膜10が形成されている。この形態において、開口62、82及び領域15、85を囲む不透視膜は、導電膜6又は遮蔽膜7のいずれかであってもよく、導電膜6及び遮蔽膜7の両方から構成されていてもよい。
[第4実施形態]
第4実施形態においても、第1〜第3実施形態と同一である部材、部位、領域等には図面中同一の符号を付し、繰り返しになる説明は省略する。
第1〜第3実施形態では、導電膜6及び/又は遮蔽膜7である不透視膜に、情報透過領域12を含む開口62、72、82が形成されていた。これに対し、本実施形態では、不透視膜に、開口に代えて後退部が形成されている。
図18に示すように、合わせガラスの車内側表面に形成された導電膜6は、後退部63が形成されるように配置されている。導電膜6は、一対の給電部68a、68bと、給電部68a、68bにその両端が直接接続されたヒータ線61とから構成されている。ただし、この例においても、給電部68a、68bの位置によっては、給電部68a、68bとヒータ線61との間にバスバーを配置することは可能である。ヒータ線61は、ウインドシールドの上方周端1uと後退部63との間に位置する底部ヒータ線61cと、底部ヒータ線61cの両端部から透視領域11側に延びる2つの側部ヒータ線61a、61bとを備えている。導電膜6の後退部63は、2つの側部ヒータ線61a、61bに挟まれ、ウインドシールドの上方周端1u側で底部ヒータ線61cに接している。2つの側部ヒータ線61a、61bは、後退部63をその間に挟む導電膜6の突出部である。後退部63は、ウインドシールド1の周端1u側から透視領域11側に張り出して形成されたヒータ線61が、その外周64、65の一部65が周端1u側に後退するように湾曲して形成された部分と見ることもできる。
合わせガラスの車内側表面以外の面、例えば車外側ガラス板の車内側の面、には、遮蔽膜7が形成されている。遮蔽膜7は、導電膜6が形成された領域を覆い、かつ後退部63の一部に重複する開口72を有する。開口72内は、透光性の領域であって情報取得領域12を含んでいる。機能膜8は、側部及び底部ヒータ線61a、61b、61cの側面に接するように後退部63内に形成されている。
ここで、後退部63に最も近いウインドシールドの周端(ここでは上方周端1u)から最も離れた部分において情報取得領域12に接すると共に、その周端に平行な仮想線12hを考える。仮想線12hよりも上方周端1u側において、ヒータ線61a、61bは、仮想線12hと共に後退部63を囲んでいる。透視領域11へと通じる後退部の境界65は、仮想線12hよりも上方周端1uから離れている。このような形態は、上方周端1uが下方周端よりも下方となる姿勢に合わせガラスを保持した状態で機能膜8を形成するための塗布液を合わせガラスの車内側表面の後退部63に供給し、情報取得領域12を覆う状態で後退部63に塗布液を保持することに適している。この状態において塗布液を過剰に供給したとしても、余剰の塗布液は上方周端1u側に排出され、かつ後退部63には底部ヒータ線61cの側面66の高さと合わせガラスの姿勢とにより基本的に定まる量の塗布液が後退部63に保持される。このため、塗布液の量の厳密な制御は不要である。
こうして後退部63に保持された塗布液から形成された機能膜8は、透視領域11側から周縁領域70側に進むにつれて増加する膜厚を有する。
なお、塗布液は、液吐出口が細く、ごく狭い部位に吐出液を塗布することに適したノズルを用い、ノズルを移動させながら後退部内に供給することが好ましい。ノズルから塗布液が供給される部位及びその移動の例を図18に示す。図18に示した例では、ノズルから塗布液が供給される部位は、機能膜8を形成するべき領域67の上周端に沿ってポイント91からポイント92へと移動する。機能膜8を形成するための塗布液は、底部ヒータ線61cの後退部側側面66で堰き止められると共に、側部及び底部ヒータ線61a、61b、61cによって後退部63内に保持される。また、底部ヒータ線61cを乗り越える余剰の塗布液は、上方周端1u側へと流れ出る。こうして、後退部63内の膜を形成するべき領域67にヒータ線61a、61b、61cと接した状態で機能膜8を形成することができる。言うまでもなく、上述したような塗布液の供給方法は、後退部内の機能膜の形成に限らず、別の実施形態において説明した開口内の機能膜の形成にも応用できる。
[各部材]
次に、ウインドシールド1を構成する各部材や膜を説明する。
<合わせガラス>
ウインドシールドを構成するガラス板としては、通常、合わせガラスが使用される。合わせガラス5は、一般に、内側ガラス板51及び外側ガラス板53を備え、ガラス板51、53がその間に配置された樹脂製中間膜52により互いに接合されている。ガラス板51、53は、公知のガラス板、例えばクリアガラス、グリーンガラス、UVグリーンガラス等と呼ばれるガラス板であってよい。ただし、ガラス板51、53の組成は、合わせガラス5の可視光透過率が各国の規格(例えば70%以上、あるいは75%以上)を満たすように選択する必要がある。
合わせガラス5の厚さは、特には限定されないが、外側ガラス板53と内側ガラス板51の厚さの合計は、例えば2.1〜6mmであってよく、軽量化の観点からは2.4〜3.8mm、さらには2.6〜3.4mmm、特に2.7〜3.2mmが好ましい。外側ガラス板53の厚さは、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性を確保するために内側ガラス板51よりも大きくてもよく、例えば1.8〜2.3mm、さらに1.9〜2.1mmが好適である。内側ガラス板51の厚さは、外側ガラス板53と同じであってもよいが、合わせガラス5の軽量化のために外側ガラス板53よりも小さくてもよく、例えば0.6〜2.0mm、さらには0.8〜1.6mm、特に1.0〜1.4mm、とりわけ1.0〜1.3mmであることが好ましい。
中間膜53は、公知の樹脂、例えば、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂により形成することができる。中間膜53は、単層膜であっても多層膜であってもよい。多層膜の一例は、軟質のコア層をコア層よりも硬質のアウター層で両側から挟持した3層構成の膜である。
必要に応じ、中間膜53には、機能性微粒子を分散させてもよい。機能性微粒子としては、各種酸化物、窒化物、金属、有機化合物の微粒子を用いることができる。好ましい機能性微粒子としては、ATO(導電性アンチモン含有錫酸化物)及びITO(導電性錫含有インジウム酸化物)が挙げられる。機能性微粒子の粒径は、特に制限されないが、好ましくは0.2μm以下、例えば0.001〜0.15μmである。
<遮蔽層>
次に、遮蔽膜7について説明する。遮蔽膜7は、しばしばセラミックプリントと呼ばれ、車外からの視線を遮るマスクとして機能する。遮蔽膜7は、セラミックペーストを所定のパターンに印刷し、印刷したセラミックペーストを焼成することにより形成することができる。セラミックペーストは、例えば、黒色顔料と、ガラス板と熱融着して機械的強度を発現するためのガラスフリットと、焼成により除去可能な有機バインダと、スクリーン印刷に適した粘性を持たせるためのパインオイル等の有機溶剤との混合物である。セラミックペーストの焼成は、ガラス板51、53の曲げ成形時の加熱によって同時に進めることができる。
<導電膜>
導電膜6は、例えば、銀粒子、低融点ガラス粉末等を含む固形成分を有機溶媒でペースト状にした導電ペーストを所定のパターンに印刷し、さらに焼成することによって形成することができる。導電ペーストの焼成も、ガラス板51、53の曲げ成形時の加熱によって同時に進めることが可能である。導電膜6は、予め所定のパターンとなるように基材上に形成した導電膜をガラス板に転写することによって形成することもできる。
<低反射膜>
次に、機能膜8としての低反射膜について説明する。低反射膜としては、可視光域の光のガラス表面における反射を抑制できる膜であればその成分に特に制限はなく、例えばシリカ微粒子とバインダとを含む膜を用いることができる。
シリカ微粒子とバインダとを含む低反射膜は、膜の表面にシリカ微粒子が露出して形成された凹凸を有することが好ましい。シリカ微粒子は、複数のシリカ微粒子が鎖状に凝集した鎖状シリカ微粒子を含んでいてもよい。鎖状シリカ微粒子の長さは、例えば60〜300nmである。鎖状シリカ微粒子を構成するシリカ微粒子の平均粒径は、例えば10〜100nmである。鎖状シリカ微粒子の使用は膜内に空隙をもたらし、空隙がない場合よりも膜の屈折率を低下させる。鎖状シリカ微粒子を有する低反射膜の屈折率は、限定されるわけではないが、例えば1.25〜1.40にまで低下させることができる。シリカ微粒子として、鎖状シリカ微粒子に代えて、あるいは鎖状シリカ微粒子と共に、非凝集シリカ微粒子を使用してもよい。非凝集シリカ微粒子の平均粒径は、例えば40〜500nmである。平均粒径は、走査型電子顕微鏡、必要があれば透過型電子顕微鏡、を用いて観察した50個の粒子の粒径の平均値により定めることができる。
バインダは、シリカ微粒子を互いに、またシリカ微粒子とガラス板とを結合する役割を果たす。バインダは、酸化ケイ素を主成分、すなわち50質量%以上の成分、とすることが好ましく、必要に応じ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の酸化ケイ素以外の酸化物を添加してもよい。バインダは、例えば加水分解可能な金属化合物、具体的には金属アルコキシドを原料として膜に導入することができる。
低反射膜におけるシリカ微粒子とバインダとの比率は、質量基準で、例えば60:40〜95:5であり、好ましくは65:35〜85:15である。低反射膜の膜厚は、例えば90〜250nm、好ましくは110〜180nmである。
低反射膜は、例えば、シリカ微粒子、加水分解可能な金属化合物、加水分解触媒、水、有機溶媒、を混合した原料液から成膜することができる。加水分解触媒としては酸が、有機溶媒としては低級アルコールがそれぞれ適している。原料液を構成する各成分の比率は、例えば加水分解可能な金属化合物100質量部に対し、シリカ微粒子150〜1900質量部、水50〜10000質量部、加水分解触媒0.01〜200質量部、有機溶媒1000〜500000質量部である。
原料液は、低反射膜を形成するべき表面に塗布し、加熱される。加熱温度は、例えば200℃以上、特に400℃以上が好適であり、1000℃以下であってもよい。加熱時間は、例えば30秒〜1時間である。
<防曇膜>
次に、機能膜8としての防曇膜について説明する。なお、以下において、用語「撥水基」は、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜30の鎖状又は環状のアルキル基を意味する。用語「金属酸化物成分」は、互いに結合した金属原子及び酸素原子のみからなる成分と共に、金属原子と酸素原子とが直接結合した部分を包含する趣旨である。したがって、例えば、式R−M−O(R:撥水基、M:金属原子)により示される成分におけるMOで示される部分は、金属酸化物成分を構成する。また、用語「金属酸化物成分」、「金属原子」、「金属化合物」等における「金属」は、慣用に従い、ホウ素(B)及びシリコン(Si)を含む意味で使用する。
防曇膜としては、防曇機能を有する膜であればその成分に特に制限はないが、撥水基と金属酸化物成分とを含むことが好ましく、吸水性樹脂をさらに含むことが好ましい。防曇膜は、必要に応じ、その他の機能成分をさらに含んでいてもよい。吸水性樹脂は、水を吸収して保持できる樹脂であればその種類を問わない。撥水基は、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)から防曇膜に供給することができる。金属酸化物成分は、撥水基含有金属化合物その他の金属化合物、金属酸化物微粒子等から防曇膜に供給することができる。以下、各成分について説明する。
(吸水性樹脂)
吸水性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を例示できる。ウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートとポリオールとで構成されるポリウレタン樹脂が挙げられる。ポリオールとしては、アクリルポリオール及びポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましい。エポキシ系樹脂としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。好ましいエポキシ樹脂は、環式脂肪族エポキシ樹脂である。以下、好ましい吸水性樹脂であるポリビニルアセタール樹脂(以下、単に「ポリアセタール」)について説明する。
ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールにアルデヒドを縮合反応させてアセタール化することにより得ることができる。ポリビニルアルコールのアセタール化は、酸触媒の存在下で水媒体を用いる沈澱法、アルコール等の溶媒を用いる溶解法等公知の方法を用いて実施すればよい。アセタール化は、ポリ酢酸ビニルのケン化と並行して実施することもできる。アセタール化度は、2〜40モル%、さらには3〜30モル%、特に5〜20モル%、場合によっては5〜15モル%が好ましい。アセタール化度は、例えば13C核磁気共鳴スペクトル法に基づいて測定することができる。アセタール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタールは、吸水性及び耐水性が良好である防曇膜の形成に適している。
ポリビニルアルコールの平均重合度は、200〜4500、さらに500〜4500が好ましい。高い平均重合度は、吸水性及び耐水性が良好である防曇膜の形成に有利であるが、平均重合度が高すぎると溶液の粘度が高くなり過ぎて膜の形成に支障をきたすことがある。ポリビニルアルコールのケン化度は、75〜99.8モル%が好適である。
ポリビニルアルコールに縮合反応させるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルカルバルデヒド、オクチルカルバルデヒド、デシルカルバルデヒド等の脂肪族アルデヒドを挙げることができる。また、ベンズアルデヒド;2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、その他のアルキル基置換ベンズアルデヒド;クロロベンズアルデヒド、その他のハロゲン原子置換ベンズアルデヒド;ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等のアルキル基を除く官能基により水素原子が置換された置換ベンズアルデヒド;ナフトアルデヒド、アントラアルデヒド等の縮合芳香環アルデヒド等の芳香族アルデヒドを挙げることができる。疎水性が強い芳香族アルデヒドは、低アセタール化度で耐水性に優れた防曇膜を形成する上で有利である。芳香族アルデヒドの使用は、水酸基を多く残存させながら吸水性が高い膜を形成する上でも有利である。ポリビニルアセタールは、芳香族アルデヒド、特にベンズアルデヒドに由来するアセタール構造を含むことが好ましい。
防曇膜における吸水性樹脂の含有量は、膜硬度、吸水性及び防曇性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは65質量%以上であり、95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。
(撥水基)
撥水基は、防曇膜の強度と防曇性との両立を容易にすると共に、膜の表面を疎水性として水滴が形成されたとしても入射する光の直進性を確保することに貢献する。撥水基による効果を十分に得るためには、撥水性が高い撥水基を用いることが好ましい。好ましい撥水基は、(1)炭素数3〜30の鎖状又は環状のアルキル基、及び(2)水素原子の少なくとも一部をフッ素原子により置換した炭素数1〜30の鎖状又は環状のアルキル基(以下、「フッ素置換アルキル基」ということがある)から選ばれる少なくとも1種である。
(1)及び(2)に関し、鎖状又は環状のアルキル基は、鎖状アルキル基であることが好ましい。鎖状アルキル基は、分岐を有するアルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基が好ましい。炭素数が30を超えるアルキル基は、防曇膜を白濁させることがある。膜の防曇性、強度及び外観のバランスの観点から、鎖状アルキル基の炭素数は、20以下が好ましく、例えば1〜8であり、また例えば4〜16であり、好ましくは4〜8である。特に好ましいアルキル基は、炭素数4〜8の直鎖アルキル基、例えばn−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、及びn−オクチル基である。(2)に関し、フッ素置換アルキル基は、鎖状又は環状のアルキル基の水素原子の一部のみをフッ素原子により置換した基であってもよく、鎖状又は環状のアルキル基の水素原子のすべてをフッ素原子により置換した基、例えば直鎖状のパーフルオロアルキル基、であってもよい。フッ素置換アルキル基は撥水性が高いため、少ない量の添加によって十分な効果を得ることができる。ただし、フッ素置換アルキル基は、その含有量が多くなり過ぎると、膜を形成するための塗布液中でその他の成分から分離することがある。
(撥水基を有する加水分解性金属化合物)
撥水基を防曇膜に配合するためには、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)、特に撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)又はその加水分解物を、膜を形成するための塗布液に添加するとよい。言い換えると、撥水基は、撥水基含有加水分解性金属化合物に由来するものであってもよい。撥水基含有加水分解性金属化合物としては、以下の式(I)に示す撥水基含有加水分解性シリコン化合物が好適である。
mSiY4-m (I)
ここで、Rは、撥水基、すなわち水素原子の少なくとも一部がフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜30の鎖状又は環状のアルキル基であり、Yは加水分解可能な官能基又はハロゲン原子であり、mは1〜3の整数である。加水分解可能な官能基は、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはアルコキシ基、特に炭素数1〜4のアルコキシ基である。アルケニルオキシ基は、例えばイソプロペノキシ基である。ハロゲン原子は、好ましくは塩素である。なお、ここに例示した官能基は、以降に述べる「加水分解可能な官能基」としても使用することができる。mは好ましくは1〜2である。
式(I)により示される化合物は、加水分解及び重縮合が完全に進行すると、以下の式(II)により表示される成分を供給する。
mSiO(4-m)/2 (II)
ここで、R及びmは、上述したとおりである。加水分解及び重縮合の後、式(II)により示される化合物は、実際には、防曇膜中において、シリコン原子が酸素原子を介して互いに結合したネットワーク構造を形成する。
このように、式(I)により示される化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらには少なくとも一部が重縮合して、シリコン原子と酸素原子とが交互に接続し、かつ三次元的に広がるシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造に含まれるシリコン原子には撥水基Rが接続している。言い換えると、撥水基Rは、結合R−Siを介してシロキサン結合のネットワーク構造に固定される。この構造は、撥水基Rを膜に均一に分散させる上で有利である。ネットワーク構造は、式(I)により示される撥水基含有加水分解性シリコン化合物以外のシリコン化合物(例えば、テトラアルコキシシラン、シランカップリング剤)から供給されるシリカ成分を含んでいてもよい。撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有するシリコン化合物(撥水基非含有加水分解性シリコン化合物)を撥水基含有加水分解性シリコン化合物と共に防曇膜を形成するための塗布液に配合すると、撥水基と結合したシリコン原子と撥水基と結合していないシリコン原子とを含むシロキサン結合のネットワーク構造を形成できる。このような構造とすれば、防曇膜中における撥水基の含有率と金属酸化物成分の含有率とを互いに独立して調整することが容易になる。
防曇膜が吸水性樹脂を含む場合、撥水基は、吸水性樹脂を含む防曇膜表面における水蒸気の透過性を向上させることにより防曇性能を向上させる。吸水と撥水という2つの機能は互いに相反するため、吸水性材料と撥水性材料とは、従来、別の層に振り分けて付与されてきたが、防曇膜に含まれる撥水基は、防曇層の表面近傍における水の偏在を解消して結露までの時間を引き延ばし、防曇膜の防曇性を向上させる。以下ではその効果を説明する。
吸水性樹脂を含む防曇膜へと侵入した水蒸気は、吸水性樹脂等の水酸基と水素結合し、結合水の形態で保持される。量が増加するにつれ、水蒸気は、結合水の形態から半結合水の形態を経て、ついには防曇膜中の空隙に保持される自由水の形態で保持されるようになる。防曇膜において、撥水基は、水素結合の形成を妨げ、かつ形成した水素結合の解離を容易にする。吸水性樹脂の含有率が同じであれば、膜中における水素結合可能な水酸基の数には差がないが、撥水基は水素結合の形成速度を低下させる。したがって、撥水基を含有する防曇膜において、水分は、最終的には上記のいずれかの形態で膜に保持されることになるが、保持されるまでには膜の底部まで水蒸気のまま拡散することができる。また、一旦保持された水も、比較的容易に解離し、水蒸気の状態で膜の底部まで移動しやすい。結果的に、膜の厚さ方向についての水分の保持量の分布は、表面近傍から膜の底部まで比較的均一になる。つまり、防曇膜の厚さ方向の全てを有効に活用し、膜表面に供給された水を吸収することができるため、表面に水滴が凝結しにくく、防曇性が高くなる。
一方、撥水基を含まない従来の防曇膜においては、膜中に侵入した水蒸気は極めて容易に結合水、半結合水又は自由水の形態で保持される。したがって、侵入した水蒸気は、膜の表面近傍で保持される傾向にある。結果的に、膜中の水分は、表面近傍が極端に多く、膜の底部へ進むにつれて急速に減少する。つまり、膜の底部では未だ水を吸収できるにも拘わらず、膜の表面近傍では水分により飽和して水滴として凝結するため、防曇性が限られたものとなる。
撥水基含有加水分解性シリコン化合物(式(I)参照)を用いて撥水基を防曇膜に導入すると、強固なシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造が形成される。このネットワーク構造の形成は、耐摩耗性のみならず、硬度、耐水性等を向上させる観点からも有利である。
撥水基は、防曇膜の表面における水の接触角が70度以上、好ましくは80度以上、より好ましくは90度以上になる程度に添加するとよい。水の接触角は、4mgの水滴を膜の表面に滴下して測定した値を採用することとする。特に撥水性がやや弱いメチル基又はエチル基を撥水基として用いる場合は、水の接触角が上記の範囲となる量の撥水基を防曇膜に配合することが好ましい。この水の接触角は、その上限が特に制限されるわけではないが、例えば150度以下、また例えば120度以下、さらには105度以下である。撥水基は、防曇膜の表面のすべての領域において上記水の接触角が上記の範囲となるように、防曇膜に均一に含有させることが好ましい。
図19及び図20に示すように、防曇膜8の表面に同量の水蒸気が凝結して形成された水滴80、81が防曇膜8を覆う面積は、その表面の水の接触角が大きいほど小さくなる傾向を有する。水滴80、81により覆われる面積が小さいほど、防曇膜8に入射する光が散乱する面積の比率も小さくなる。したがって、撥水基の存在により水の接触角が大きくなった防曇膜8は、その表面に水滴が形成された状態において透過光の直進性を保持するうえで有利である。
防曇膜は、水の接触角が上述の好ましい範囲となるように、撥水基を含むことが好ましい。吸水性樹脂を含む場合、防曇膜は、吸水性樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上の範囲内となるように、また、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、の範囲内となるように、撥水基を含むことが好ましい。
(金属酸化物成分)
防曇膜は、金属酸化物成分を含んでいる。金属酸化物成分は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物成分であり、好ましくはSiの酸化物成分(シリカ成分)である。吸水性樹脂を含む場合、防曇膜は、吸水性樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、特に好ましくは5質量部以上、場合によっては7質量部以上、必要であれば10質量部以上、また、60質量部以下、特に50質量部以下、好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下、場合によっては18質量部以下となるように、金属酸化物成分を含むことが好ましい。金属酸化物成分は、膜の強度、特に耐擦傷性を確保するために必要な成分であるが、その含有量が過多となると膜の防曇性が低下する。
金属酸化物成分の少なくとも一部は、防曇膜を形成するための塗布液に添加された、加水分解性金属化合物又その加水分解物に由来する金属酸化物成分であってもよい。ここで、加水分解性金属化合物は、a)撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)及びb)撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有する金属化合物(撥水基非含有加水分解性金属化合物)から選ばれる少なくとも1つである。a)及び/又はb)に由来する金属酸化物成分は、加水分解性金属化合物を構成する金属原子の酸化物である。金属酸化物成分は、防曇膜を形成するための塗布液に添加された金属酸化物微粒子に由来する金属酸化物成分と、その塗布液に添加された、加水分解性金属化合物又その加水分解物に由来する金属酸化物成分とを含んでいてもよい。ここでも、加水分解性金属化合物は、上記a)及びb)から選ばれる少なくとも1つである。上記b)、すなわち撥水基を有しない加水分解性金属化合物は、テトラアルコキシシラン及びシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。以下、既に説明した上記a)を除き、金属酸化物微粒子と上記b)とについて説明する。
(金属酸化物微粒子)
防曇膜は、金属酸化物成分の少なくとも一部として金属酸化物微粒子をさらに含んでいてもよい。金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより膜に導入できる。金属酸化物微粒子は、防曇膜に加えられた応力を膜を支持する透明物品に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、金属酸化物微粒子の添加は、防曇膜の耐摩耗性及び耐擦傷性を向上させる観点から有利である。また、防曇膜に金属酸化物微粒子を添加すると、微粒子が接触又は近接している部位に微細な空隙が形成され、この空隙から膜中に水蒸気が取り込まれやすくなる。このため、金属酸化物微粒子の添加は、防曇性の向上に有利に作用することもある。金属酸化物微粒子は、防曇膜を形成するための塗布液に予め形成した金属酸化物微粒子を添加することにより、防曇膜に供給することができる。
金属酸化物微粒子の平均粒径は、大きすぎると膜が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、金属酸化物微粒子の好ましい平均粒径は、1〜20nm、特に5〜20nmである。なお、ここでは、金属酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。また、金属酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。金属酸化物微粒子は、その含有量が過大となると、膜全体の吸水量が低下し、膜が白濁するおそれがある。防曇膜が吸水性樹脂を含む場合、金属酸化物微粒子は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜50質量部、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜30質量部、特に好ましくは5〜25質量部、場合によっては10〜20質量部となるように添加するとよい。
(撥水基を有しない加水分解性金属化合物)
防曇膜は、撥水基を有しない加水分解性金属化合物(撥水基非含有加水分解性化合物)に由来する金属酸化物成分を含んでいてもよい。好ましい撥水基非含有加水分解性金属化合物は、撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物である。撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、例えば、シリコンアルコキシド、クロロシラン、アセトキシシラン、アルケニルオキシシラン及びアミノシランから選ばれる少なくとも1種のシリコン化合物(ただし、撥水基を有しない)であり、撥水基を有しないシリコンアルコキシドが好ましい。なお、アルケニルオキシシランとしては、イソプロペノキシシランを例示できる。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、以下の式(III)に示す化合物であっ
てもよい。
SiY4 (III)
上述したとおり、Yは、加水分解可能な官能基であって、好ましくはアルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つである。
撥水基非含有加水分解性金属化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらに、少なくともその一部が重縮合して、金属原子と酸素原子とが結合した金属酸化物成分を供給する。この成分は、金属酸化物微粒子と吸水性樹脂とを強固に接合し、防曇膜の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。防曇膜が吸水性樹脂を含む場合、撥水基を有しない加水分解性金属化合物に由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜40質量部、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部、特に好ましくは3〜10質量部、場合によっては4〜12質量部の範囲とするとよい。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい一例は、テトラアルコキシシラン、より具体的には炭素数が1〜4のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン及びテトラ−tert−ブトキシシランから選ばれる少なくとも1種である。
テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、防曇膜の防曇性が低下することがある。防曇膜の柔軟性が低下し、水分の吸収及び放出に伴う膜の膨潤及び収縮が制限されることが一因である。防曇膜が吸水性樹脂を含む場合、テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜30質量部、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜10質量部の範囲で添加するとよい。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい別の一例は、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、互いに異なる反応性官能基を有するシリコン化合物である。反応性官能基は、その一部が加水分解可能な官能基であることが好ましい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシ基及び/又はアミノ基と加水分解可能な官能基とを有するシリコン化合物である。好ましいシランカップリング剤としては、グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びアミノアルキルトリアルコキシシランを例示できる。これらのシランカップリング剤において、シリコン原子に直接結合しているアルキレン基の炭素数は1〜3であることが好ましい。グリシジルオキシアルキル基及びアミノアルキル基は、親水性を示す官能基(エポキシ基、アミノ基)を含むため、アルキレン基を含むものの、全体として撥水性ではない。
シランカップリング剤は、有機成分である吸水性樹脂と無機成分である金属酸化物微粒子等とを強固に結合し、防曇膜の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。しかし、シランカップリング剤に由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、防曇膜の防曇性が低下し、場合によっては防曇膜が白濁する。防曇膜が吸水性樹脂を含む場合、シランカップリング剤に由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部の範囲で添加するとよい。
(架橋構造)
防曇膜は、架橋剤、好ましくは有機ホウ素化合物、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤、に由来する架橋構造を含んでいてもよい。架橋構造の導入は、防曇膜の耐摩耗性、耐擦傷性、耐水性を向上させる。別の観点から述べると、架橋構造の導入は、防曇膜の防曇性能を低下させることなくその耐久性を改善することを容易にする。
金属酸化物成分がシリカ成分である防曇膜に架橋剤に由来する架橋構造を導入した場合、その防曇膜は、金属原子としてシリコンと共にシリコン以外の金属原子、好ましくはホウ素、チタン又はジルコニウム、を含有することがある。
架橋剤は、用いる吸水性樹脂を架橋できるものであれば、その種類は特に限定されない。ここでは、有機チタン化合物についてのみ例を挙げる。有機チタン化合物は、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート系化合物及びチタンアシレートから選ばれる少なくとも1つである。チタンアルコキシドは、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラオクトキシドである。チタンキレ−ト系化合物は、例えば、チタンアセチルアセトナート、チタンアセト酢酸エチル、チタンオクチレングリコール、チタントリエタノールアミン、チタンラクテートである。チタンラクテートは、アンモニウム塩(チタンラクテートアンモニウム)であってもよい。チタンアシレートは、例えばチタンステアレートである。好ましい有機チタン化合物は、チタンキレート系化合物、特にチタンラクテートである。
吸水性樹脂がポリビニルアセタールである場合の好ましい架橋剤は、有機チタン化合物、特にチタンラクテートである。
(その他の任意成分)
防曇膜にはその他の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、防曇性を改善する機能を有するグリセリン、エチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。添加剤は、界面活性剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、防腐剤等であってもよい。
(膜厚)
防曇膜8の膜厚は、要求される防曇特性その他に応じて適宜調整すればよい。防曇膜8の好ましい膜厚は、1〜20μm、好ましくは2〜15μm、特に3〜10μmである。
[製造方法]
不透視膜を形成する工程i)は、不透視膜の例である導電膜及び遮蔽膜の説明と共に上述した。機能膜を形成する工程ii)についても、従来から知られていた方法に従って機能膜である防曇膜又は低反射膜を成膜すればよいが、以下、防曇膜を例にとって成膜の具体例を説明する。
(防曇膜の成膜例)
防曇膜8は、防曇膜8を形成するための塗布液をガラス板(合わせガラス)上に塗布し、塗布した塗布液を乾燥させ、必要に応じてさらに高温高湿処理等を実施することにより、成膜することができる。塗布液の調製に用いる溶媒、塗布液の塗布方法は、従来から公知の材料及び方法を用いればよい。塗布液の塗布に際しては、防曇膜8の膜厚及びその分布の調整のために、合わせガラスの姿勢を適切に制御し、必要に応じて、塗布しながら、あるいは塗布した後に、その姿勢を変更してもよい。
塗布液の塗布工程では、雰囲気の相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、膜が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、膜のマトリックス内に入り込んで残存した水が膜の強度を低下させるおそれがある。
塗布液の乾燥工程は、風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むことが好ましい。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に塗布液を曝すことにより、実施するとよい。風乾工程は、非加熱工程として、言い換えると室温で実施できる。塗布液に加水分解性シリコン化合物が含まれている場合、加熱乾燥工程では、シリコン化合物の加水分解物等に含まれるシラノール基及び透明物品上に存在する水酸基が関与する脱水反応が進行し、シリコン原子と酸素原子とからなるマトリックス構造(Si−O結合のネットワーク)が発達する。
吸水性樹脂等の有機物の分解を避けるべく、加熱乾燥工程において適用する温度は過度に高くしないほうがよい。この場合の適切な加熱温度は、300℃以下、例えば100〜200℃であり、加熱時間は、1分〜1時間である。
防曇膜8の成膜に際しては、適宜、高温高湿処理工程を実施してもよい。高温高湿処理工程の実施により、防曇性と膜の強度との両立がより容易になりうる。高温高湿処理工程は、例えば50〜100℃、相対湿度60〜95%の雰囲気に5分〜1時間保持することにより、実施することができる。高温高湿処理工程は、塗布工程及び乾燥工程の後に実施してもよく、塗布工程及び風乾工程の後であって加熱乾燥工程の前に実施してもよい。特に前者の場合には、高温高湿処理工程の後に、さらに熱処理工程を実施してもよい。この追加の熱処理工程は、例えば、80〜180℃の雰囲気に5分〜1時間保持することにより、実施することができる。
また、塗布液から形成した防曇膜8は、必要に応じ、洗浄及び/又は湿布拭きを行ってもよい。具体的には、防曇膜8の表面を、水流に曝したり、水を含ませた布で拭いたりすることにより実施できる。これらで用いる水は純水が適している。洗浄のために洗剤を含む溶液を用いることは避けたほうがよい。この工程により、防曇膜8の表面に付着した埃、汚れ等を除去して、清浄な塗膜面を得ることができる。
以上の説明から明らかなように、防曇膜の好ましい形態としては、以下が挙げられる。
a)吸水性樹脂100質量部に対し、金属酸化物成分を0.1〜60質量部、撥水基を0.05〜10質量部含む、防曇膜。
b)撥水基は、炭素数1〜8の鎖状アルキル基であり、撥水基は、金属酸化物成分を構成する金属原子に直接結合しており、金属原子がシリコンである、防曇膜。
c)金属酸化物成分の少なくとも一部が、防曇膜を形成するための塗布液に添加された、加水分解性金属化合物又は加水分解性金属化合物の加水分解物に由来する金属酸化物成分であって、加水分解性金属化合物は、撥水基を有する加水分解性金属化合物、及び撥水基を有しない加水分解性金属化合物から選ばれる少なくとも1種である、防曇膜。
d)撥水基を有しない加水分解性金属化合物が、テトラアルコキシシラン及びシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を含む、c)の防曇膜。
以下は、ガラス板上に形成した防曇膜の諸特性を確認した例である。まず、作製したサンプルの特性を評価した方法を説明する。
(1)外観
サンプルの透明性及びクラックの有無を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:良好
△:僅かに白濁が認められる。
×:膜中にムラ、白濁、クラック等が認められ、実用上問題がある。
(2)膜厚
サンプルを、室温20℃、相対湿度50%の環境下に1時間放置した後、KLA Tencor社製の表面形状測定器α-Step500を用いて防曇膜の膜厚を測定した。
(3)接触角
サンプルを、室温20℃、相対湿度50%の環境下に1時間放置した後、協和界面科学社製の接触角計(CA-A)を用いて約4μL(=4mg)の水滴を防曇膜の表面に滴下し、防曇膜の表面におけるその水滴の接触角を測定した。
(4)防曇性
サンプルを、室温20℃、相対湿度30%の環境下に1時間放置した。一方で、恒温水槽に水温を40℃に保持した温水を収容し、その温水の上方にサンプルを防曇膜が水蒸気に晒されるように配置し、防曇膜に曇りが認められるまでの時間を測定した。なお、防曇膜を設けていないガラス板(ソーダライムガラス板)では、10秒以下で曇りが確認された。曇りが形成されるまでの時間を下記の基準で評価した。
◎:85秒超で曇りが確認された。
○:60秒超85秒以下で曇りが確認された。
△:30秒超60秒以下で曇りが確認された。
×:30秒以下で曇りが確認された。
(実施例1)
ポリビニルアセタール樹脂含有溶液(積水化学工業社製「エスレックKX−5」、固形分8質量%、アセタール化度9モル%、ベンズアルデヒドに由来するアセタール構造を含む)62.5質量%、n−ヘキシルトリメトキシシラン(HTMS、信越シリコーン社製「KBM−3063」)0.376質量%、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS、信越シリコーン社製「KBM−403」)0.141質量%、テトラエトキシシラン(TEOS、信越シリコーン社製「KBE−04」)1.734質量%、アルコール溶媒(日本アルコール工業製「ソルミックスAP−7」)19.606質量%、精製水15.625質量%、酸触媒として塩酸0.01質量%、レベリング剤(信越シリコーン社製「KP−341」)0.008質量%をガラス製容器に入れ、室温(25℃)で3時間撹拌することにより、防曇膜形成用塗布液を調製した。
次いで、洗浄したフロート板ガラス(ソーダライムシリケートガラス、厚さ3.1mm、サイズ100×100mm)上に、室温20℃、相対湿度30%の環境下で、塗布液をフローコート法により塗布した。同環境下で10分間乾燥させた後、120℃の(予備)加熱処理を実施した。その後、上述の雰囲気及び時間を適用して高温高湿処理を実施し、さらに、同じく上述の雰囲気及び時間を適用して追加の熱処理を実施し、サンプルを作製した。
(実施例2)
テトラエトキシシランの添加量を1.387質量%、アルコール溶媒の添加量を19.953質量%としたことを除いては実施例1と同様にして、サンプルを作製した。
(実施例3)
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加せず、n−ヘキシルトリメトキシシランの添加量を0.37質量%、テトラエトキシシランの添加量を1.04質量%、アルコール溶媒の添加量を20.44質量%、精製水の添加量を15.63質量%、レベリング剤の添加量を0.01質量%としたことを除いては実施例1と同様にして、防曇性物品を作製した。
(実施例4)
n−ヘキシルトリメトキシシラン0.376質量%に代えてメチルトリエトキシシラン(MTES、信越シリコーン社製「KBE−13」)0.27質量%を用い、塩酸0.01質量%に代えて硝酸0.05質量%を用い、テトラエトキシシランの添加量を0.69質量%、アルコール溶媒の添加量を18.85質量%、精製水の添加量を17.63質量%、レベリング剤の添加量を0.01質量%としたことを除いては実施例1と同様にして、サンプルを作製した。
(実施例5)
アルコール溶媒の添加量を20.88質量%、精製水の添加量を15.63質量%、硝酸の添加量を0.01質量%とし、表面調整剤(ビックケミー・ジャパン社製「BYK−307」)0.01質量%をさらに添加したことを除いては実施例4と同様にして、サンプルを作製した。
(実施例6)
ポリビニルアセタール樹脂含有溶液の添加量を87.5質量%、n−ヘキシルトリメトキシシラン(HTMS)の添加量を0.526質量%、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)の添加量を0.198質量%、テトラエトキシシラン(TEOS)2.774質量%、アルコール溶媒の添加量を6.107質量%、精製水の添加量を2.875質量%、レベリング剤の添加量を0.010質量%としたことを除いては実施例1と同様にして、サンプルを作製した。
(参照例1)
メチルトリエトキシシラン0.27質量%に代えて3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.21質量%を用い、テトラエトキシシランの添加量を1.04質量%、アルコール溶媒の添加量を20.59質量%としたことを除いては実施例5と同様にして、サンプルを作製した。
防曇膜の成分及びサンプルの評価結果を表1、2に示す。表1では、吸水性樹脂の質量部を100として各成分の質量部を示している。
Figure 2018020771
Figure 2018020771
1 ウインドシールド
1u 上周端
1l 下周端
2 情報取得装置
3 情報処理装置
5 合わせガラス
50 車内側表面
6 導電膜(不透視膜)
60 バスバー
61 ヒータ線
61a、61b 側部ヒータ線(突出部)
61c 底部ヒータ線
61u 上方ヒータ線
61l 下方ヒータ線
68 給電部
7 遮蔽膜(不透視膜)
8、9、10 機能膜(防曇膜又は低反射膜)
11 透視領域
12 情報取得領域
21 受光部
22 (情報取得装置に入射する)光
62、72 開口
63、73 後退部
70 周縁領域
71 突出領域

Claims (16)

  1. 車両の車内へと入射する光を受けて車外の情報を取得する情報取得装置の配置に適したウインドシールドであって、
    ガラス板と、
    前記ガラス板の車内側表面に形成された、防曇膜又は低反射膜である機能膜と、
    前記車内側表面に形成された不透視膜と、を備え、
    a)運転者が車外を視認するための透視領域と分離された前記不透視膜の開口、及び/又はb)前記ガラス板の周端側から前記透視領域側に張り出した前記不透視膜の2つの突出部により挟まれた前記不透視膜の後退部、を有し、
    前記情報取得装置へと入射する光は前記開口又は前記後退部内を透過し、
    前記機能膜は、少なくとも前記開口又は前記後退部内に、当該開口又は後退部に隣接する前記不透視膜の側面と接するように形成されている、ウインドシールド。
  2. 前記不透視膜は、通電により発熱するヒータ線を含む導電膜である、請求項1に記載のウインドシールド。
  3. 前記ガラス板の少なくとも周縁領域を覆うように形成された、光を遮蔽するための遮蔽膜をさらに備え、
    前記遮蔽膜は、前記導電膜の少なくとも一部が車外から視認できないように形成されている、請求項2に記載のウインドシールド。
  4. 前記遮蔽膜は、前記車内側表面以外の前記ガラス板の面に形成されている、請求項2又は3に記載のウインドシールド。
  5. 前記不透視膜は、前記ガラス板の少なくとも周縁領域を覆うように形成された、光を遮蔽するための遮蔽膜である、請求項1に記載のウインドシールド。
  6. 前記開口内、又は前記遮蔽膜上の前記開口に隣接する領域に配置された、通電により発熱するヒータ線をさらに含む、請求項5に記載のウインドシールド。
  7. 前記不透視膜は、通電により発熱するヒータ線を含む導電膜と、前記ガラス板の少なくとも周縁領域を覆うように形成された、光を遮蔽するための遮蔽膜と、を含み、
    前記機能膜は、前記開口又は前記後退部内において前記導電膜及び前記遮蔽膜に接するように形成されている、請求項1に記載のウインドシールド。
  8. 前記機能膜は、前記開口又は前記後退部内に形成され、前記透視領域には形成されていない、請求項1〜7のいずれか1項に記載のウインドシールド。
  9. 前記機能膜は、前記開口又は前記後退部内のみに形成された、請求項8に記載のウインドシールド。
  10. 前記機能膜は、前記不透視膜の前記側面の少なくとも一部において前記側面の高さ方向の全面に接している、請求項1〜9のいずれか1項に記載のウインドシールド。
  11. 前記機能膜は、前記側面の一部のみにおいて前記側面の高さ方向の全面に接すると共に、当該一部において前記側面を越えて前記開口又は前記後退部内から前記不透視膜の表面の一部を含むように広がって形成されている、請求項10に記載のウインドシールド。
  12. 前記機能膜は、少なくとも前記情報取得領域を含む前記後退部内に形成され、
    前記機能膜は、前記後退部内において、前記透視領域側よりも前記ガラス板の周端側において厚くなるように形成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載のウインドシールド。
  13. 前記ヒータ線の幅は5〜200μmである、請求項2、6又は7に記載のウインドシールド。
  14. 前記不透視膜の高さは5〜50μmである、請求項1〜13のいずれか1項に記載のウインドシールド。
  15. 車両の車内へと入射する光を受けて車外の情報を取得する情報取得装置の配置に適したウインドシールドの製造方法であって、
    不透視膜を、前記情報取得装置へと入射する光が、a)運転者が車外を視認するための透視領域と分離された前記不透視膜の開口、又はb)前記ガラス板の周端側から前記透視領域側に張り出した前記不透視膜の2つの突出部により挟まれた前記不透視膜の後退部、内を透過するように、ガラス板の車内側表面に形成する工程i)と、
    防曇膜又は低反射膜である機能膜を形成するための塗布液を前記車内側表面の少なくとも前記開口又は前記後退部内に供給し、少なくとも前記開口又は前記後退部内に、当該開口又は後退部に隣接する前記不透視膜の側面と接するように、前記機能膜を形成する工程ii)と、を具備する、ウインドシールドの製造方法。
  16. 前記工程ii)において、
    前記塗布液が前記開口若しくは前記後退部内のみに止まるように、又は
    前記塗布液が前記開口若しくは前記後退部が接する前記不透視膜を乗り越えて前記透視領域を通過することなく前記ガラス板外に流れ出るように、
    前記塗布液が供給される、請求項15に記載の製造方法。
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