JP2021192090A - 透明積層体 - Google Patents

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康史 高橋
Yasushi Takahashi
寿雄 今井
Toshio Imai
和晃 大家
Kazuaki Oya
清美 林
Kiyomi Hayashi
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Abstract

【課題】物品の保護以外の用途にも用いることができる、カバー部材を提供する。【解決手段】カバー部材は、第1主面及び第2主面を有する透明の基板1と、前記基板の第1主面に積層された、透明の第1機能層2と、を備えている。あるいはさらに第1機能層は、防曇機能を有する。あるいはさらに第1機能層の表面粗さRaが、1〜1000nmである。あるいはさらに第1機能層は、第1主面及び第2主面を有する基材フィルムと、基材フィルムの第2主面に積層された粘着層と、基材フィルムの第1主面に積層された防曇層と、を備え、基材フィルムが、粘着層を介して、前記基板の第1主面に固定されている。【選択図】図2

Description

本発明は、透明積層体に関する。
ガラス板、樹脂製の板材などの透明の基板は種々の用途に用いられ、例えば、物品を保護するためのカバー部材として用いられることがある(特許文献1)。
特開2017−144575号公報
近年、このようなカバー部材は、単に、物品を保護するだけでなく、他の機能を持つことが要求される。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、物品の保護以外の用途にも用いることができる、カバー部材を提供することを目的とする。
項1.第1主面及び第2主面を有する透明の基板と、
前記基板の第1主面に積層された、透明の第1機能層と、
を備えている、透明積層体。
項2.前記第1機能層は、防曇機能を有する、項1に記載の透明積層体。
項3.前記第1機能層の表面粗さRaが、1〜1000nmである、項1または2に記載の透明積層体。
項4.前記第1機能層は、
第1主面及び第2主面を有する基材フィルムと、
前記基材フィルムの第2主面に積層された粘着層と、
前記基材フィルムの第1主面に積層された防曇層と、
を備え、
前記基材フィルムが、前記粘着層を介して、前記基板の第1主面に固定されている、項1から3のいずれかに記載の透明積層体。
項5.前記第1機能層は、粘着層と、防曇層と、を備え、
前記防曇層が、前記粘着層を介して、前記基板の第1主面に固定されている、項1から3のいずれかに記載の透明積層体。
項6.前記第1機能層は防曇層を備え、
前記防曇層が前記基板の第1主面に積層されている、項1から3のいずれかに記載の透明積層体。
項7.前記防曇層は、吸湿性の樹脂材料を含有している吸湿層を有する、項4から6のいずれかに記載の透明積層体。
項8.前記防曇層は、前記吸湿層と、前記吸湿層上に積層され、親水性を有する親水層と
、を備えている、項7に記載の透明積層体。
項9.前記防曇層の前記親水層は、下記式(A)で示されるポリエーテル変性ジメチルシロキサンを含有する、項8に記載の透明積層体。
Figure 2021192090
但し、mは2以上の整数,n,x,及びyは、独立に1以上の整数であり、
1は、水素原子またはメチル基、R2は、炭素数が1〜3のアルキル基である。
項10.前記式(A)において、
mは1〜3の整数、
nは3〜600の整数、
y/(x+y)が0.01以上1未満、
平均分子量が3,000〜300,000、である、項9に記載の透明積層体。
項11.前記防曇層においては、前記吸湿層中に親水化剤が分散している、項7に記載の透明積層体。
項12.前記防曇層は、沸点が100℃以上300℃以下の溶媒を含有している、項11に記載の透明積層体。
項13.前記溶媒は、アルコール基を有している、項12に記載の透明積層体。
項14.前記防曇層に対し、アルコールが浸漬した布によって所定回数の摩耗を行った後、当該防曇層が防曇性を有している、項11から13のいずれかに記載の透明積層体。
項15.所定の恒温恒湿試験後、前記防曇層が防曇性を有している、項11から14のいずれかに記載の透明積層体。
項16.前記防曇層は、単一層により形成されている、項11から15のいずれかに記載の透明積層体。
項17.前記第1機能層が無機化合物を主成分とする、項1から6のいずれかに記載の透明積層体。
項18.可視光透過率が85%以上であり、
可視光反射率が10%以下である、項17に記載の透明積層体。
項19.可視光波長域における透過率の最小値が、前記基板の透過率から5%以内である、項17または18に記載の透明積層体。
項20.可視光波長域における反射率の最大値が、前記基板の反射率から5%以内である、項17から19のいずれかに記載の透明積層体。
項21.可視光波長域での反射率について、
1≦最大反射率/最小反射率≦1.5を充足する、項17から20のいずれかに記載の透明積層体。
項22.前記第1機能層は、無機微粒子と、無機バインダとを含有する、項17から21のいずれかに記載の透明積層体。
項23.前記第1機能層の膜厚は、前記無機微粒子の粒子径の2倍以下である、項22に記載の透明積層体。
項24.前記無機微粒子は、SiO2により形成されている、項22または23に記載の透明積層体。
項25.前記第1機能層における、前記SiO2の含有率が、28質量%以下である、項24に記載の透明積層体。
項26.前記第1機能層は、光触媒微粒子を含有している、項22から25のいずれかに記載の透明積層体。
項27.前記光触媒粒子は、チタン、タングステン、鉄のいずれかを主成分とする酸化物または酸窒化物により形成されている、項26に記載の透明積層体。
項28.前記光触媒粒子の含有率は、40質量%以下である項26または27に記載の透明積層体。
項29.前記無機バインダの含有率は、30質量%以上である、項26から28のいずれかに記載の透明積層体。
項30.所定時間、水に浸漬した後、前記第1機能層が防曇性を有している、項17から29のいずれかに記載の透明積層体。
項31.前記第1機能層に対し、アルコールが浸漬した布によって所定回数の摩耗を行った後、当該第1機能層が防曇性を有している、項17から30のいずれかに記載の透明積層体。
項32.前記第1機能層に対し、アルコールが浸漬した布によって所定回数の摩耗を行った後、紫外線を照射することで、当該第1機能層が防曇性を有している、項17から31のいずれかに記載の透明積層体。
項33.所定の恒温恒湿試験後に、紫外線を照射すると、前記第1機能層が防曇性を有する、項17から32のいずれかに記載の透明積層体。
項34.屋外に配置される、監視カメラのカバー部材として用いられる、項17から33のいずれかに記載の透明積層体。
項35.前記監視カメラは紫外線照射装置を備えている、項34に記載の透明積層体。
項36.前記第1機能層は、前記監視カメラ側を向くように配置される、項34または35に記載の透明積層体。
項37.前記第1機能層は、前記監視カメラとは反対側を向くように配置される、項34に記載の透明積層体。
項38.前記第1機能層上に積層され、透湿性を有する第2機能層をさらに備えている、項2から10のいずれかに記載の透明積層体。
項39.前記第1機能層は、有機無機複合材料により形成され、
前記第2機能層の屈折率は、前記第1機能層よりも小さい、項38に記載の透明積層体。
項40.前記第2機能層は、単一層である、項38または39に記載の透明積層体。
項41.前記第2機能層の屈折率は、1.10〜1.45である、項40に記載の透明積層体。
項42.前記第1機能層の屈折率をXとしたとき、前記第2機能層の屈折率は、√X±0.1である、項41に記載の透明積層体。
項43.前記第2機能層は、中空粒子と、前記中空粒子を結着するバインダーと、を含有している、項42に記載の透明積層体。
項44.前記中空粒子の屈折率が、1.15〜2.70である、項43に記載の透明積層体。
項45.前記中空粒子の平均粒径が、20〜100nmである、項43または44に記載の透明積層体。
項46.前記中空粒子は、シリカ、フッ化マグネシウム、アルミナ、アルミノシリケート、チタニア、及びジルコニアからなる群から選択される、項43から45のいずれかに記載の透明積層体。
項47.前記第2機能層は、沸点が100℃以上300℃以下の溶媒を含有している、項38から46のいずれかに記載の透明積層体。
項48.前記溶媒は、3―メトキシー3メチルー1−ブタノールを主成分とする、項47に記載の透明積層体。
項49.前記第2機能層は、前記溶媒を1ppb以上、5g/cm3以下含有する、項4
7または48に記載の透明積層体。
項50.前記パインダーは、ポリシルセスキオキサン及びシリカの少なくとも一方を含有している、項43から49のいずれかに記載の透明積層体。
項51.前記第2機能層のボイド率が、0〜70vol%である、項43から50のいずれかに記載の透明積層体。
項52.前記第2機能層は、前記第1機能層上に積層される第1層と、前記第1層上に積層され、前記第1層よりも屈折率の低い第2層と、を備えている、項38または39に記載の透明積層体。
項53.前記第1層の屈折率が、1.35〜1.55であり、
前記第2層の屈折率が、1.10〜1.25である、項52に記載の透明積層体。
項54.前記第2層は、中空粒子と、前記中空粒子を結着するバインダーと、を含有している、項53に記載の透明積層体。
項55.前記中空粒子の屈折率が、1.15〜2.70である、項54に記載の透明積層体。
項56.前記中空粒子の平均粒径が、20〜100nmである、項54または55に記載の透明積層体。
項57.前記中空粒子は、シリカ、フッ化マグネシウム、アルミナ、アルミのシリケート、チタニア、及びジルコニアからなる群から選択される、項54から56のいずれかに記載の透明積層体。
項58.前記パインダーは、ポリシルセスキオキサン及びシリカの少なくとも一方を含有している、項54から57のいずれかに記載の透明積層体。
項59.前記第2層のボイド率が、0〜70vol%である、項54から58のいずれかに記載の透明積層体。
項60.前記第1層は、前記第2層の前記バインダーを含有している、項54から59のいずれかに記載の透明積層体。
項61.前記第2機能層の曲げ弾性率は、1〜10GPaである、項38から60のいずれかに記載の透明積層体。
項62.前記第2機能層の曲げ弾性率は、前記第1機能層の曲げ弾性率と重複している、項38から61のいずれかに記載の透明積層体。
項63.前記第1機能層の線膨張係数と、前記第2機能層の線膨張係数と、の差が、50ppm/℃以下である、項38から62のいずれかに記載の透明積層体。
項64.前記第1機能層は、反射防止機能を有する、項1に記載の透明積層体。
項65.前記第1機能層は、粘着層、基材シート、及び反射防止層がこの順で積層されたフィルムにより形成されている、項64に記載の透明積層体。
項66.前記第1機能層の反射防止層の屈折率は、1.10〜1.45である、項65に記載の透明積層体。
項67.前記第1機能層の反射防止層は、中空粒子と、前記中空粒子を結着するバインダーと、を含有している、項65または66に記載の透明積層体。
項68.前記中空粒子の屈折率が、1.15〜2.70である、項67に記載の透明積層体。
項69.前記中空粒子の平均粒径が、20〜100nmである、項67または68に記載の透明積層体。
項70.前記反射防止層は、沸点が水の沸点よりも大きく、前記基材の耐熱温度以下である第2溶媒を以下含有している、項65から69のいずれかに記載の透明積層体。
項71.前記第2溶媒は、3―メトキシー3メチルー1−ブタノールが主成分である、項70に記載の透明積層体。
項72.前記第1機能層に、前記第2溶媒が、1ppb以上、5g/cm3%以下含有されている、項70または71に記載の透明積層体。
項73.前記基板は、ガラスである、項2から72のいずれかに記載の透明積層体。
項74.前記基板は、フロート法により製造されたフロートガラスであり、前記第1主面における酸化スズの濃度が、前記第2主面における酸化スズの濃度よりも低い、項2から73のいずれかに記載の透明積層体。
項75.前記基板は、フロート法により製造されたフロートガラスであり、前記第1主面における酸化スズの濃度が、前記第2主面における酸化スズの濃度よりも高い、項2から73のいずれかに記載の透明積層体。
項76.前記基板の第2主面に積層される、第3機能層をさらに備えている、項1から75のいずれかに記載の透明積層体。
本発明によれば、基板の表面に透明の機能層が積層されているため、この機能層に機能を持たせることで、物品の保護以外の用途にも用いることができる。
本発明に係るカバー部材の第1実施形態を示す断面図である。 撮像装置のレンズの前方にカバー部材を設けた例を示す概略図である。 ハウジングに収容された撮像装置のレンズの前方にカバー部材を設けた例を示す概略図である。 実施例1〜3及び基材の透過率を示すグラフである。 実施例1〜3及び基材の反射率を示すグラフである。 本発明に係るカバー部材の第2実施形態を示す断面図である。 反射防止層としての第2機能層の概略構成を示す断面図である。 第2実施形態のカバー部材の他の例を示す断面図である。 第2実施形態のカバー部材の他の例を示す断面図である。 第2実施形態のカバー部材の他の例を示す断面図である。 実施例23及び26の片面反射率を示すグラフである。 実施例28〜30の反射防止膜を形成したフィルムの400〜700nmの片面反射率を示すである。
<A.第1実施形態>
以下、本発明に係る透明積層体を、カバー部材に適用した場合の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1はカバー部材の断面図である。
<1.カバー部材の概要>
本実施形態に係るカバー部材は、後述するように、例えば、カメラ等の撮像装置のレンズの前方に配置され、レンズ等を保護するものである。具体的には、図1に示すように、このカバー部材10は、第1主面11及び第2主面12を有する透明の基材1と、この基材1の第1主面11に積層される第1機能層2と、を有している。以下、各部材について、詳細に説明する。
<2.基材>
基材1は、透光性を有する樹脂材料(有機高分子材料)や、ガラス板により形成することができる。なお、基材の形状は特には限定されず、円形状、矩形状、多角形状、異形状など、後述するような各種の用途に応じて適宜決定することができる。以下、具体例を挙げて説明する。
<2−1.樹脂材料>
樹脂材料としては、上記のように透光性を有するものであれば、特には限定されないが、例えば、例えば、ポリカーボネイト(PC)、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、塩化ビニル(PVC)、トリアセチルセルロース(TAC)等、または、これらのうちの複数を含む材料で形成することができる。
<2−2.ガラス板>
ガラス板1は、特には限定されず、公知の透明のガラス板を用いることができる。例えば、フロートガラス、熱線吸収ガラス、クリアガラス、グリーンガラス、UVグリーンガラス、ソーダライムガラスなど種々のガラス板を用いることができる。
以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、ソーダ石灰系ガラス、及びフロートガラスの組成の一例を示す。
<2−2−1.クリアガラス>
SiO2:70〜73質量%
Al23:0.6〜2.4質量%
CaO:7〜12質量%
MgO:1.0〜4.5質量%
2O:13〜15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23):0.08〜0.14質量%
<2−2−2.熱線吸収ガラス>
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23)の比率を0.4〜1.3質量%とし、CeO2の比率を0〜2質量%とし、TiO2の比率を0〜0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl23)をT−Fe23、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
<2−2−3.ソーダ石灰系ガラス>
SiO2:65〜80質量%
Al23:0〜5質量%
CaO:5〜15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10〜18質量%
2O:0〜5質量%
MgO+CaO:5〜15質量%
Na2O+K2O:10〜20質量%
SO3:0.05〜0.3質量%
23:0〜5質量%
Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23):0.02〜0.03質量%
<2−2−4.フロートガラス>
SiO265〜80%
Al230〜5%
MgO 0〜20%
CaO 0〜20%
Na2O 10〜20%
2O 0〜5%
<2−2−4−1.高透過のフロートガラス>
SiO2 66〜72%
Al2O3 2〜4%
MgO 8〜15%
CaO 1〜8%
Na2O 12〜16%
K2O 0〜1%
を含み、
MgO+CaOが12〜17%の範囲にあり、
モル比CaO/(MgO+CaO)が0.1〜0.4
以下、このフロートガラスの組成を構成する各成分について説明する。
(SiO2
SiO2は、ガラス板1を構成する主要成分であり、その含有率が低すぎるとガラスの耐水性などの化学的耐久性および耐熱性が低下する。他方、SiO2の含有率が高すぎると、高温でのガラス板1の粘性が高くなり、溶解および成形が困難になる。したがって、SiO2の含有率は、66〜72mol%の範囲が適切であり、67〜70mol%が好ましい。
(Al23
Al23はガラス板1の耐水性などの化学的耐久性を向上させ、さらにガラス中のアルカリ金属イオンの移動を容易にすることにより化学強化後の表面圧縮応力を高め、かつ、応力層深さを深くするための成分である。他方、Al23の含有率が高すぎると、ガラス融液の粘度を増加させ、T2、T4を増加させると共にガラス融液の清澄性が悪化し高品質なガラス板を製造することが難しくなる。なお、フロート法においては、作業温度は、ガラス粘度が104dPa・sになる温度であり、以下T4という。また、溶融温度は、ガラス粘度が102dPa・sになる温度であり、以下T2という。
したがって、Al23の含有率は、1〜4mol%の範囲が適切である。Al23の含有率は3mol%以下が好ましく、2mol%以上が好ましい。
(MgO)
MgOはガラスの溶解性を向上させる必須の成分である。この効果を十分に得る観点から、このガラス板1ではMgOの含有率が8mol%以上である。また、MgOの含有率が8mol%を下回ると、化学強化後の表面圧縮応力が低下し、応力層深さが浅くなる傾向にある。一方、適量を越えて含有率を増やすと、化学強化により得られる強化性能が低下し、特に表面圧縮応力層の深さが急激に浅くなる。この悪影響は、アルカリ土類金属酸化物の中でMgOが最も少ないが、このガラス板1においては、MgOの含有率は15mol%以下である。また、MgOの含有率が高いと、T2、T4を増加させると共にガラス融液の清澄性が悪化し高品質なガラス板を製造することが難しくなる。
したがって、このガラス板1においては、MgOの含有率は8〜15mol%の範囲であり、12mol%以下が好ましい。
(CaO)
CaOは、高温での粘性を低下させる効果を有するが、適度な範囲を超えて含有率が高すぎると、ガラス板1が失透しやすくなるとともに、ガラス板1におけるナトリウムイオンの移動が阻害されてしまう。CaOを含有しない場合に化学強化後の表面圧縮応力が低下する傾向にある。一方、8mol%を超えてCaOを含有すると、化学強化後の表面圧縮応力が顕著に低下し、圧縮応力層深さが顕著に浅くなるとともに、ガラス板1が失透しやすくなる。
したがって、CaOの含有率は1〜8mol%の範囲が適切である。CaOの含有率は、7mol%以下が好ましく、3mol%以上が好ましい。
(SrO、BaO)
SrO、BaOは、ガラス板1の粘性を大きく低下させ、少量の含有では液相温度TLを低下させる効果がCaOより顕著である。しかし、SrO、BaOは、ごく少量の添加であっても、ガラス板1におけるナトリウムイオンの移動を顕著に妨げ、表面圧縮応力を大きく低下させ、かつ、圧縮応力層の深さがかなり浅くなる。
したがって、このガラス板1においては、SrO、BaOを実質的に含有しないことが好ましい。
(RO)
本実施形態においてROは、MgOおよびCaOの和を示す。ROの含有率が低すぎると、ガラス板1の粘性を下げる成分が不足して溶解が困難となる。他方、ROの含有率が高すぎると、表面圧縮応力を大きく低下させ、かつ、圧縮応力層の深さがかなり浅くなるとともに、液相温度TLが急上昇する傾向にある。
したがって、ROの含有率は、12〜17mol%の範囲が適切である。ROの含有率は、14mol%以上であることが好ましく、16mol%以下であることが好ましい。
さらに、CaOの含有率のROの含有率に対するモル比CaO/ROが、0.1〜0.4の範囲にある場合、とくに液相温度が低い傾向にある。したがってこのモル比は0.1〜0.4が適切である。さらに、このモル比を低くすると表面圧縮応力・圧縮応力層の深さを向上させることができる一方、T2、T4が高くなり狭義のSLから大きくかけ離れてしまい、ガラス物品の製造が困難になる。したがってこのモル比は0.2以上が好ましく、また0.3以下であることが好ましい。
(Na2O)
Na2Oは、ナトリウムイオンがカリウムイオンと置換されることにより、表面圧縮応力を大きくし、表面圧縮応力層の深さを深くするための成分である。しかし、適量を超えて含有率を増やすと、化学強化処理でのイオン交換による表面圧縮応力の発生を、化学強化処理中の応力緩和が上回るようになり、結果として表面圧縮応力が低下する傾向にある。
また、Na2Oは溶解性を向上させ、T4、T2を低下させるための成分である一方、Na2Oの含有率が高すぎると、ガラスの耐水性が著しく低下する。ガラス板1においては、Na2Oの含有率が12mol%以上であればT4、T2を低下させる効果が充分に得られ、16mol%を超えると応力緩和による表面圧縮応力の低下が顕著になる。
したがって、本実施形態のガラス板1におけるNa2Oの含有率は、12〜16mol%の範囲が適切である。Na2Oの含有率は、13mol%以上が好ましく、15mol%以下がより好ましい。
(K2O)
2Oは、Na2Oと同様、ガラスの溶解性を向上させる成分である。また、K2Oの含有率が低い範囲では、化学強化におけるイオン交換速度が増加し、表面圧縮応力層の深さが深くなる一方で、ガラス板1の液相温度TLを低下させる。したがってK2Oは低い含有率で含有させることが好ましい。
一方、K2Oは、Na2Oと比較して、T4、T2を低下させる効果が小さいが、K2Oの多量の含有はガラス融液の清澄を阻害する。また、K2Oの含有率が高くなるほど化学強化後の表面圧縮応力が低下する。したがって、K2Oの含有率は0〜1mol%の範囲が適切である。
(Li2O)
Li2Oは、少量含有されるだけであっても圧縮応力層の深さを著しく低下させる。また、Li2Oを含むガラス物品を硝酸カリウム単独の溶融塩で化学強化処理する場合、Li2Oを含まないガラス物品の場合と比較して、その溶融塩が劣化する速度が著しく速い。具体的には、同じ溶融塩で繰り返し化学強化処理を行なう場合に、より少ない回数でガラス表面に形成される表面圧縮応力が低下する。したがって、本実施形態のガラス板1においては、1mol%以下のLi2Oを含有してもよいが、実質的にLi2Oを含有しない方が好ましい。
(B23
23は、ガラス板1の粘性を下げ、溶解性を改善する成分である。しかし、B23の含有率が高すぎると、ガラス板1が分相しやすくなり、ガラス板1の耐水性が低下する。また、B23とアルカリ金属酸化物とが形成する化合物が揮発してガラス溶解室の耐火物を損傷するおそれが生じる。さらに、B23の含有は化学強化における圧縮応力層の深さを浅くしてしまう。したがって、B23の含有率は0.5mol%以下が適切である。本発明では、B23を実質的に含有しないガラス板1であることがより好ましい。
(Fe23
通常Feは、Fe2+又はFe3+の状態でガラス中に存在し、着色剤として作用する。Fe3+はガラスの紫外線吸収性能を高める成分であり、Fe2+は熱線吸収性能を高める成分である。ガラス板1をディスプレイのカバーガラスとして用いる場合、着色が目立たないことが求められるため、Feの含有率は少ない方が好ましい。しかし、Feは工業原料により不可避的に混入することが多い。したがって、Fe23に換算した酸化鉄の含有率は、ガラス板1全体を100質量%として示して0.15質量%以下とすることがよく、0.1質量%以下であることがより好ましく、更に好ましくは0.02質量%以下である。特に、上述の高透過のフロートガラスにあっては、Feの含有量が少ないので高い透過率を実現できる。例えば、厚みが0.55mmにおいては、波長が550nmの光の透過率を、91%以上100%以下とすることを実現できる。
(TiO2
TiO2は、ガラス板1の粘性を下げると同時に、化学強化による表面圧縮応力を高める成分であるが、ガラス板1に黄色の着色を与えることがある。したがって、TiO2の含有率は0〜0.2質量%が適切である。また、通常用いられる工業原料により不可避的に混入し、ガラス板1において0.05質量%程度含有されることがある。この程度の含有率であれば、ガラスに着色を与えることはないので、本実施形態のガラス板1に含まれてもよい。
(ZrO2
ZrO2は、とくにフロート法でガラス板を製造する際に、ガラスの溶融窯を構成する耐火レンガからガラス板1に混入することがあり、その含有率は0.01質量%程度であることが知られている。一方、ZrO2はガラスの耐水性を向上させ、また、化学強化による表面圧縮応力を高める成分である。しかし、ZrO2の高い含有率は、作業温度T4の上昇や液相温度TLの急激な上昇を引き起こすことがあり、またフロート法によるガラス板の製造においては、析出したZrを含む結晶が製造されたガラス中に異物として残留しやすい。したがって、ZrO2の含有率は0〜0.1質量%が適切である。
(SO3
フロート法においては、ボウ硝(Na2SO4)など硫酸塩が清澄剤として汎用される。硫酸塩は溶融ガラス中で分解してガス成分を生じ、これによりガラス融液の脱泡が促進されるが、ガス成分の一部はSO3としてガラス板1中に溶解し残留する。本発明のガラス板1においては、SO3は0〜0.3質量%であることが好ましい。
(CeO2
CeO2は清澄剤として使用される。CeO2により溶融ガラス中でO2ガスが生じるので、CeO2は脱泡に寄与する。一方、CeO2が多すぎると、ガラスが黄色に着色してしまう。そのため、CeO2の含有量は、0〜0.5質量%が好ましく、0〜0.3質量%がより好ましく、0〜0.1質量%がさらに好ましい。
(SnO2
フロート法により成形されたガラス板において、成型時にスズ浴に触れた面はスズ浴からスズが拡散し、そのスズがSnO2として存在することが知られている。また、ガラス原料に混合させたSnO2は、脱泡に寄与する。本発明のガラス板1においては、SnO2は0〜0.3質量%であることが好ましい。
(その他の成分)
本実施形態によるガラス板1は、上記に列挙した各成分から実質的に構成されていることが好ましい。ただし、本実施形態によるガラス板1は、上記に列記した成分以外の成分を、好ましくは各成分の含有率が0.1質量%未満となる範囲で含有していてもよい。
含有が許容される成分としては、上述のSO3とSnO2以外に溶融ガラスの脱泡を目的として添加される、As25、Sb25、Cl、Fを例示できる。ただし、As25、Sb25、Cl、Fは、環境に対する悪影響が大きいなどの理由から添加しないことが好ましい。また、含有が許容されるまた別の例は、ZnO、P25、GeO2、Ga23、Y23、La23である。工業的に使用される原料に由来する上記以外の成分であっても0.1質量%を超えない範囲であれば許容される。これらの成分は、必要に応じて適宜添加したり、不可避的に混入したりするものであるから、本実施形態のガラス板1は、これらの成分を実質的に含有しないものであっても構わない。
(密度(比重):d)
上記組成より、本実施形態では、ガラス板1の密度を2.53g・cm-3以下、さらには2.51g・cm-3以下、場合によっては2.50g・cm-3以下にまで減少させることができる。
フロート法などでは、ガラス品種間の密度の相違が大きいと、製造するガラス品種を切り換える際に溶融窯の底部に密度が高い方の溶融ガラスが滞留し、品種の切り換えに支障が生じる場合がある。現在、フロート法で量産されているソーダライムガラスの密度は約2.50g・cm-3である。したがって、フロート法による量産を考慮すると、ガラス板1の密度は、上記の値に近いこと、具体的には、2.45〜2.55g・cm-3、特に2.47〜2.53g・cm-3が好ましく、2.47〜2.50g・cm-3がさらに好ましい。
(弾性率:E)
イオン交換を伴う化学強化を行うと、ガラス基板に反りが生じることがある。この反りを抑制するためには、ガラス板1の弾性率は高いことが好ましい。本発明によれば、ガラス板1の弾性率(ヤング率:E)を70GPa以上、さらには72GPa以上にまで増加させることができる。
(熱膨張率)
特に、上述の高透過のフロートガラスにあっては、例えば、50℃から350℃の間の熱膨張率が50×10-7〜100×10-7/K%以下を実現できる。
<2−2−5.ガラス板の向き>
フロート法で製造されるガラス板においては、溶融金属と接触していた面をボトム面と称し、それとは反対の面をトップ面と称することとする。ボトム面及びトップ面は、未研磨であってよい。ボトム面は、溶融金属と接していたため、溶融金属がスズである場合には、ボトム面に含有される酸化スズの濃度が、トップ面に含有される酸化スズの濃度よりも大きくなる。
このように、ボトム面については、酸化スズ濃度が高いので、ガラス板に含まれるアルカリ成分の溶出を抑制する効果がある。アルカリ溶出による耐久性の低下を抑制したい場合には、上述した第1機能層2をボトム面に積層することができる。一方、トップ面については、酸化スズ濃度が低いので、相対的に表面のSiOH基の濃度が高い。したがって、第1機能層2のOH基と表面SiOH基の化学結合を利用して、密着性を高めたい場合は、第1機能層2をトップ面に積層することができる。また、微量金属(スズ)による影響を避けたい場合は、ボトム面を酸化セリウム等の研磨剤で研磨し、第1機能層2をボトム面、または、トップ面または、ボトム面とトップ面の両方に積層することができる。なお、以上の点は、第1機能層2のみならず、本明細書に記載の他の機能層においても同様である。
<2−2−6.ガラス板の厚み>
ガラス板1の厚みは、特には限定されないが、例えば、0.2mm以上10mm以下とすることが好ましく、0.5mm以上4mm以下とすることがさらに好ましい。ガラス板1の厚みが0.2mm未満であると、剛性が低下するおそれがある一方、ガラス板1の厚みが10mmより大きいと、重量が重くなるおそれがある。また、上述したように、基材1を樹脂材料で形成した場合にも、ガラス板と同様の厚みにすることができる。
<3.第1機能層>
第1機能層2は種々の機能を有する膜で構成することができる。例えば、遮熱フィルム(熱反射フィルム)、防曇層(あるいは防曇シート)を用いることができる。遮熱フィルムは、撮像装置の温度上昇を抑制するため、赤外線を反射したり、あるいは赤外線を吸収するように構成された公知のフィルムである。そして、このようなフィルムを粘着材によって基材1の第1主面11に貼り付けたり、あるいは、遮熱機能を有する膜を第1主面11にコーティングにより積層することもできる。また、以下では、第1機能層2の他の例である。防曇層について詳細に説明する。
<3−1.防曇層>
防曇層は、基材1の防曇効果を奏するものであれば、特には限定されず、公知のものを用いることができる。一般的に、防曇層は、水蒸気から生じる水を水膜として表面に形成する親水タイプ、水蒸気を吸収する吸水タイプ、表面に水滴が凝結しにくい撥水吸水タイプ、及び水蒸気から生じる水滴を撥水する撥水タイプがあるが、いずれのタイプの防曇層も適用可能である。以下では、その一例として、撥水吸水タイプの防曇層の例を説明する。
[有機無機複合防曇層]
有機無機複合防曇層は、いずれかの機能層の表面に形成された単層膜もしくは積層された複層膜である。有機無機複合防曇層は、少なくとも吸水性樹脂と撥水基と金属酸化物成分とを含んでいる。防曇層は、必要に応じ、その他の機能成分をさらに含んでいてもよい。吸水性樹脂は、水を吸収して保持できる樹脂であればその種類を問わない。撥水基は、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)から防曇層に供給することができる。金属酸化物成分は、撥水基含有金属化合物その他の金属化合物、金属酸化物微粒子等から防曇層に供給することができる。以下、各成分について説明する。
(吸水性樹脂)
吸水性樹脂としては特に制限はなく、ポリエチレングリコール、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルポリオール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、より好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、特に好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂である。
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールにアルデヒドを縮合反応させてアセタール化することにより得ることができる。ポリビニルアルコールのアセタール化は、酸触媒の存在下で水媒体を用いる沈澱法、アルコール等の溶媒を用いる溶解法等公知の方法を用いて実施すればよい。アセタール化は、ポリ酢酸ビニルのケン化と並行して実施することもできる。アセタール化度は、2〜40モル%、さらには3〜30モル%、特に5〜20モル%、場合によっては5〜15モル%が好ましい。アセタール化度は、例えば13C核磁気共鳴スペクトル法に基づいて測定することができる。アセタール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂は、吸水性及び耐水性が良好である有機無機複合防曇層の形成に適している。
ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200〜4500であり、より好ましくは500〜4500である。高い平均重合度は、吸水性及び耐水性が良好である有機無機複合防曇層の形成に有利であるが、平均重合度が高すぎると溶液の粘度が高くなり過ぎて膜の形成に支障をきたすことがある。ポリビニルアルコールのケン化度は、75〜99.8モル%が好ましい。
ポリビニルアルコールに縮合反応させるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルカルバルデヒド、オクチルカルバルデヒド、デシルカルバルデヒド等の脂肪族アルデヒドを挙げることができる。また、ベンズアルデヒド;2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、その他のアルキル基置換ベンズアルデヒド;クロロベンズアルデヒド、その他のハロゲン原子置換ベンズアルデヒド;ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等のアルキル基を除く官能基により水素原子が置換された置換ベンズアルデヒド;ナフトアルデヒド、アントラアルデヒド等の縮合芳香環アルデヒド等の芳香族アルデヒドを挙げることができる。疎水性が強い芳香族アルデヒドは、低アセタール化度で耐水性に優れた有機無機複合防曇層を形成する上で有利である。芳香族アルデヒドの使用は、水酸基を多く残存させながら吸水性が高い膜を形成する上でも有利である。ポリビニルアセタール樹脂は、芳香族アルデヒド、特にベンズアルデヒドに由来するアセタール構造を含むことが好ましい。
エポキシ系樹脂としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、環式脂肪族エポキシ樹脂である。
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートとポリオールとで構成されるポリウレタン樹脂が挙げられる。ポリオールとしては、アクリルポリオール及びポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましい。
セルロース系樹脂としては、表面を改質したTAC(トリアセチルセルロース)でもよい。改質方法としては、物理的改質法、化学的改質法を例示できる。物理的改質法としては、活性線照射法、プラズマ処理法、コロナ放電処理法を例示できる。化学的改質法としては、TAC構造中のアシル基をヒドロキシル基へ変えて、表面を親水化しても良い(例えば、特開2017−57370、特開2017−57242参照)。具体的には、TACをアルコールで膨潤させて、KOH水によるケン化、熱処理、中和洗浄することによりTAC構造中のアシル基をヒドロキシル基へ変えることができる。このようなケン化処理により、TACの厚みとしては、10〜200μm、TACの改質層の厚みとしては、1〜6μmの表面を改質したTACを得ることができる。TACの改質層は防曇層として機能する。TACの改質層(防曇層)の上に、本発明の反射防止層を形成しても良い。TACの厚みについては、日本工業規格(JIS.K7130:1999.プラスチック?フィルム及び.シート?厚さ測定方法)に基づいて評価してもよい。改質層が、ケン化により得られたケン化層の場合には、ケン化層の厚みは、以下の方法で求めてもよい。防曇フィルムからサンプリングした試料を、ジクロロメタンに24時間浸漬する。この浸漬で溶け残った試料を乾燥し、乾燥した試料の厚みを3回測定した。3つの測定値の平均を、ケン化層の厚みとする(例えば、特開2017−57370の[0039]参照)。
有機無機複合防曇層は、吸水性樹脂を主成分とする。本発明において、「主成分」とは、質量基準で含有率が最も高い成分を意味する。有機無機複合防曇層の重量に基づく吸水性樹脂の含有率は、膜硬度、吸水性及び防曇性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは65質量%以上であり、95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
(撥水基)
撥水基による上述の効果を十分に得るためには、撥水性が高い撥水基を用いることが好ましい。好ましい撥水基は、(1)炭素数3〜30の鎖状又は環状のアルキル基、及び(2)水素原子の少なくとも一部をフッ素原子により置換した炭素数1〜30の鎖状又は環状のアルキル基(以下、「フッ素置換アルキル基」ということがある)から選ばれる少なくとも1種である。
(1)及び(2)に関し、鎖状又は環状のアルキル基は、鎖状アルキル基であることが好ましい。鎖状アルキル基は、分岐を有するアルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基が好ましい。炭素数が30を超えるアルキル基は、防曇層を白濁させることがある。膜の防曇性、強度及び外観のバランスの観点から、アルキル基の炭素数は、20以下が好ましく、6〜14がより好ましい。特に好ましいアルキル基は、炭素数6〜14、特に炭素数6〜12の直鎖アルキル基、例えばn−ヘキシル基(炭素数6)、n−デシル基(炭素数10)、n−ドデシル基(炭素数12)である。(2)に関し、フッ素置換アルキル基は、鎖状又は環状のアルキル基の水素原子の一部のみをフッ素原子により置換した基であってもよく、鎖状又は環状のアルキル基の水素原子のすべてをフッ素原子により置換した基、例えば直鎖状のパーフルオロアルキル基、であってもよい。フッ素置換アルキル基は撥水性が高いため、少ない量の添加によって十分な効果を得ることができる。ただし、フッ素置換アルキル基は、その含有量が多くなり過ぎると、膜を形成するための塗工液中でその他の成分から分離することがある。
(撥水基を有する加水分解性金属化合物)
撥水基を防曇層に配合するためには、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)、特に撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)又はその加水分解物を、膜を形成するための塗工液に添加するとよい。言い換えると、撥水基は、撥水基含有加水分解性金属化合物に由来するものであってもよい。撥水基含有加水分解性金属化合物としては、以下の式(I)に示す撥水基含有加水分解性シリコン化合物が好適である。
mSiY4-m(I)
ここで、Rは、撥水基、すなわち水素原子の少なくとも一部がフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜30の鎖状又は環状のアルキル基であり、Yは加水分解可能な官能基又はハロゲン原子であり、mは1〜3の整数である。加水分解可能な官能基は、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはアルコキシ基、特に炭素数1〜4のアルコキシ基である。アルケニルオキシ基は、例えばイソプロペノキシ基である。ハロゲン原子は、好ましくは塩素である。なお、ここに例示した官能基は、以降に述べる「加水分解可能な官能基」としても使用することができる。mは好ましくは1〜2である。
式(I)により示される化合物は、加水分解及び重縮合が完全に進行すると、以下の式(II)により表示される成分を供給する。
mSiO(4-m)/2(II)
ここで、R及びmは、上述したとおりである。加水分解及び重縮合の後、式(II)により示される化合物は、実際には、防曇層中において、シリコン原子が酸素原子を介して互いに結合したネットワーク構造を形成する。
このように、式(I)により示される化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらには少なくとも一部が重縮合して、シリコン原子と酸素原子とが交互に接続し、かつ三次元的に広がるシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造に含まれるシリコン原子には撥水基Rが接続している。言い換えると、撥水基Rは、結合R−Siを介してシロキサン結合のネットワーク構造に固定される。この構造は、撥水基Rを膜に均一に分散させる上で有利である。ネットワーク構造は、式(I)により示される撥水基含有加水分解性シリコン化合物以外のシリコン化合物(例えば、テトラアルコキシシラン、シランカップリング剤)から供給されるシリカ成分を含んでいてもよい。撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有するシリコン化合物(撥水基非含有加水分解性シリコン化合物)を撥水基含有加水分解性シリコン化合物と共に防曇層を形成するための塗工液に配合すると、撥水基と結合したシリコン原子と撥水基と結合していないシリコン原子とを含むシロキサン結合のネットワーク構造を形成できる。このような構造とすれば、防曇層中における撥水基の含有率と金属酸化物成分の含有率とを互いに独立して調整することが容易になる。
撥水基は、吸水性樹脂を含む防曇層の表面における水蒸気の透過性を向上させることにより防曇性能を向上させる効果がある。吸水と撥水という2つの機能は互いに相反するため、吸水性材料と撥水性材料とは、従来、別の層に振り分けて付与されてきたが、撥水基は、防曇層の表面近傍における水の偏在を解消して結露までの時間を引き延ばし、単層構造を有する防曇層の防曇性を向上させる。以下ではその効果を説明する。
吸水性樹脂を含む防曇層へと侵入した水蒸気は、吸水性樹脂等の水酸基と水素結合し、結合水の形態で保持される。量が増加するにつれ、水蒸気は、結合水の形態から半結合水の形態を経て、ついには防曇層中の空隙に保持される自由水の形態で保持されるようになる。防曇層において、撥水基は、水素結合の形成を妨げ、かつ形成した水素結合の解離を容易にする。吸水性樹脂の含有率が同じであれば、膜中における水素結合可能な水酸基の数には差がないが、撥水基は水素結合の形成速度を低下させる。したがって、撥水基を含
有する防曇層において、水分は、最終的には上記のいずれかの形態で膜に保持されることになるが、保持されるまでには膜の底部まで水蒸気のまま拡散することができる。また、一旦保持された水も、比較的容易に解離し、水蒸気の状態で膜の底部まで移動しやすい。結果的に、膜の厚さ方向についての水分の保持量の分布は、表面近傍から膜の底部まで比較的均一になる。つまり、防曇層の厚さ方向の全てを有効に活用し、膜表面に供給された水を吸収することができるため、表面に水滴が凝結しにくく、防曇性が高くなる。さらに、表面に水滴が凝結しにくいことにより、水分を吸収した防曇層は、低温でも凍結しにくいという特徴を有する。
一方、撥水基を含まない防曇層においては、膜中に侵入した水蒸気は極めて容易に結合水、半結合水又は自由水の形態で保持される。したがって、侵入した水蒸気は、膜の表面近傍で保持される傾向にある。結果的に、膜中の水分は、表面近傍が極端に多く、膜の底部へ進むにつれて急速に減少する。つまり、膜の底部では未だ水を吸収できるにも拘わらず、膜の表面近傍では水分により飽和して水滴として凝結するため、防曇性が限られたものとなる。
撥水基含有加水分解性シリコン化合物(式(I)参照)を用いて撥水基を防曇層に導入すると、強固なシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造が形成される。このネットワーク構造の形成は、耐摩耗性のみならず、硬度、耐水性等を向上させる観点からも有利である。
撥水基は、防曇層の表面における水の接触角が70度以上、好ましくは80度以上、より好ましくは90度以上になる程度に添加するとよい。水の接触角は、4mgの水滴を膜の表面に滴下して測定した値を採用することとする。特に撥水性がやや弱いメチル基又はエチル基を撥水基として用いる場合は、水の接触角が上記の範囲となる量の撥水基を防曇層に配合することが好ましい。この水滴の接触角は、その上限が特に制限されるわけではないが、例えば150度以下、また例えば120度以下、さらには100度以下である。撥水基は、防曇層の表面のすべての領域において上記水滴の接触角が上記の範囲となるように、防曇層に均一に含有させることが好ましい。
なお、防曇層の表面を撥水化することもできる。これにより、防曇層へのアルカリ成分の侵入を抑制でき、ガラス板1の表面をアルカリ成分から保護することができる。
防曇層は、吸水性樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上の範囲内となるように、また、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、の範囲内となるように、撥水基を含むことが好ましい。
(無機酸化物)
無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、少なくとも、Siの酸化物(シリカ)を含む。有機無機複合防曇層は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは1重量部以上、最も好ましくは5重量部以上、場合によっては10重量部以上、必要であれば20重量部以上、また、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、さらに好ましくは40重量部以下、特に好ましくは35重量部以下、最も好ましくは33重量部以下、場合によっては30重量部以下となるように、無機酸化物を含むことが好ましい。無機酸化物は、有機無機複合防曇層の強度、特に耐摩耗性を確保するために必要な成分であるが、その含有量が多くなると、有機無機複合防曇層の防曇性が低下する。
(無機酸化物微粒子)
有機無機複合防曇層は、無機酸化物の少なくとも一部として、無機酸化物微粒子をさらに含んでいてもよい。無機酸化物微粒子を構成する無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより有機無機複合防曇層に導入できる。無機酸化物微粒子は、有機無機複合防曇層に加えられた応力を、有機無機複合防曇層を支持する物品に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、無機酸化物微粒子の添加は、有機無機複合防曇層の耐摩耗性を向上させる観点から有利である。また、有機無機複合防曇層に無機酸化物微粒子を添加すると、微粒子が接触又は近接している部位に微細な空隙が形成され、この空隙から膜中に水蒸気が取り込まれやすくなる。このため、無機酸化物微粒子の添加は、防曇性の向上に有利に作用することもある。無機酸化物微粒子は、有機無機複合防曇層を形成するための塗工液に、予め形成した無機酸化物微粒子を添加することにより、有機無機複合防曇層に供給することができる。
無機酸化物微粒子の平均粒径が大きすぎると、有機無機複合防曇層が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、無機酸化物微粒子の平均粒径は、好ましくは1〜20nmであり、より好ましくは5〜20nmである。なお、ここでは、無機酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。また、無機酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。無機酸化物微粒子は、その含有量が多くなると、有機無機複合防曇層全体の吸水量が低下し、有機無機複合防曇層が白濁するおそれがある。無機酸化物微粒子は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0〜50重量部であり、より好ましくは2〜30重量部、さらに好ましくは5〜25重量部、特に好ましくは10〜20重量部となるように添加するとよい。
(撥水基を有しない加水分解性金属化合物)
防曇層は、撥水基を有しない加水分解性金属化合物(撥水基非含有加水分解性化合物)に由来する金属酸化物成分を含んでいてもよい。好ましい撥水基非含有加水分解性金属化合物は、撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物である。撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、例えば、シリコンアルコキシド、クロロシラン、アセトキシシラン、アルケニルオキシシラン及びアミノシランから選ばれる少なくとも1種のシリコン化合物(ただし、撥水基を有しない)であり、撥水基を有しないシリコンアルコキシドが好ましい。なお、アルケニルオキシシランとしては、イソプロペノキシシランを例示できる。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、以下の式(III)に示す化合物であってもよい。
SiY4(III)
上述したとおり、Yは、加水分解可能な官能基であって、好ましくはアルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つである。
撥水基非含有加水分解性金属化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらに、少なくともその一部が重縮合して、金属原子と酸素原子とが結合した金属酸化物成分を供給する。この成分は、金属酸化物微粒子と吸水性樹脂とを強固に接合し、防曇層の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。撥水基を有しない加水分解性金属化合物に由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜40質量部、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部、特に好ましくは3〜10質量部、場合によっては4〜12質量部の範囲とするとよい。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい一例は、テトラアルコキシシラン、より具体的には炭素数が1〜4のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン及びテトラ−tert−ブトキシシランから選ばれる少なくとも1種である。
テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、防曇層の防曇性が低下することがある。防曇層の柔軟性が低下し、水分の吸収及び放出に伴う膜の膨潤及び収縮が制限されることが一因である。テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜30質量部、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜10質量部の範囲で添加するとよい。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい別の一例は、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、互いに異なる反応性官能基を有するシリコン化合物である。反応性官能基は、その一部が加水分解可能な官能基であることが好ましい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシ基及び/又はアミノ基と加水分解可能な官能基とを有するシリコン化合物である。好ましいシランカップリング剤としては、グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びアミノアルキルトリアルコキシシランを例示できる。これらのシランカップリング剤において、シリコン原子に直接結合しているアルキレン基の炭素数は1〜3であることが好ましい。グリシジルオキシアルキル基及びアミノアルキル基は、親水性を示す官能基(エポキシ基、アミノ基)を含むため、アルキレン基を含むものの、全体として撥水性ではない。
シランカップリング剤は、有機成分である吸水性樹脂と無機成分である金属酸化物微粒子等とを強固に結合し、防曇層の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。しかし、シランカップリング剤に由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、防曇層の防曇性が低下し、場合によっては防曇層が白濁する。シランカップリング剤に由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部の範囲で添加するとよい。
(架橋構造)
防曇層は、架橋剤、好ましくは有機ホウ素化合物、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤、に由来する架橋構造を含んでいてもよい。架橋構造の導入は、防曇層の耐摩耗性、耐擦傷性、耐水性を向上させる。別の観点から述べると、架橋構造の導入は、防曇層の防曇性能を低下させることなくその耐久性を改善することを容易にする。
金属酸化物成分がシリカ成分である防曇層に架橋剤に由来する架橋構造を導入した場合、その防曇層は、金属原子としてシリコンと共にシリコン以外の金属原子、好ましくはホウ素、チタン又はジルコニウム、を含有することがある。
架橋剤は、用いる吸水性樹脂を架橋できるものであれば、その種類は特に限定されない。ここでは、有機チタン化合物についてのみ例を挙げる。有機チタン化合物は、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート系化合物及びチタンアシレートから選ばれる少なくとも1つである。チタンアルコキシドは、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラオクトキシドである。チタンキレ−ト系化合物は、例えば、チタンアセチルアセトナート、チタンアセト酢酸エチル、チタンオクチレングリコール、チタントリエタノールアミン、チタンラクテートである。チタンラクテート
は、アンモニウム塩(チタンラクテートアンモニウム)であってもよい。チタンアシレートは、例えばチタンステアレートである。好ましい有機チタン化合物は、チタンキレート系化合物、特にチタンラクテートである。
吸水性樹脂がポリビニルアセタールである場合の好ましい架橋剤は、有機チタン化合物、特にチタンラクテートである。
(その他の任意成分)
防曇層にはその他の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、防曇性を改善する機能を有するグリセリン、エチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。添加剤は、界面活性剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、防腐剤等であってもよい。
(下地層)
防曇層は、各機能層3,4に直接積層することもできるが、各機能層3,4上に下地層を形成し、その上に、防曇層を積層することもできる。このように下地層を介して、防曇層を各機能層3,4上に積層することで、防曇層を剥がれにくくすることができる。下地層は、例えば、シランカップリング剤等を採用することができる。
[厚み]
有機無機複合防曇層の厚みは、要求される防曇特性その他に応じて適宜調整すればよい。有機無機複合防曇層の厚みは、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは2〜15μmであり、さらに好ましくは2〜12μm、特に好ましくは3〜10μmである。防曇層の厚みが1μm以上であれば、十分な防曇効果を得ることができる。一方、防曇層が厚すぎると、膜厚のムラにより反射像が歪むおそれがある。また、防曇層は、上記のように樹脂材料から形成されており、複屈折率を有するため、厚すぎると像がぼやけるおそれがある。
<3−2.防曇層の成膜方法>
上述した組成を有する防曇層の成膜方法は特には限定されないが、例えば、以下の方法で成膜することができる。
まず、上述した有機無機複合防曇層用の塗工液(防曇層用溶液)を準備する。次に、基材1に対し塗工機により塗工液を塗工した後、第1加熱炉で乾燥する。
塗工液を塗工する際には、雰囲気の相対湿度を60%未満、さらには40%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、有機無機複合防曇層が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、有機無機複合防曇層のマトリックス内に入り込んで残存した水が膜の強度を低下させるおそれがある。
第1加熱炉では、200℃以下、例えば50〜150℃で加熱することが好ましい。加熱時間は、1〜20分であることが好ましく、2〜10分であることがさらに好ましい。また、この加熱を複数回行うこともできる。例えば、3〜5分の加熱を2回以上行うこともできる。こうして、塗工液が焼成され、吸水性樹脂とSiによる架橋構造が形成される。但し、塗工液を完全に焼成した強固な架橋構造ではなく、防曇層を仮生成したものである。
次に、上記のように乾燥させた基材を、水槽に浸す。これにより、基材1上で防曇層が膨潤し、一部の架橋点が切断される。また、吸水性樹脂に含有される不純物、例えば、NaやClが除去される。さらに、未架橋の吸水性樹脂組成物も除去される。水槽に貯留される水は、例えば、10〜80℃とすることができ、20〜60℃であることがさらに好ましく、25〜50℃であることが特に好ましい。水の温度は10℃未満でもよいが、10℃より低いとアルカリ成分を除去できる効果が低くなる可能性がある。一方、80℃より高くなると水槽から蒸発する水蒸気が多くなり、設備・作業環境への負荷が大きくなる可能性がある。以上の観点から、アルカリ成分の除去効果を比較的高く保ちつつ、設備・環境への負荷を小さくするためには、水温は25〜50℃であることが特に好ましい。また、水槽に浸す時間は、例えば、1〜30分とすることができ、3〜20分とすることがさらに好ましく、3〜10分とすることが特に好ましい。上述したような水温が低くアルカリ成分の除去効率が低い場合であっても、浸漬時間を長くすることでアルカリ成分を十分な程度に除去することができるが、浸漬時間が長いと生産効率が低くなるので、浸漬時間は3〜10分とすることが特に好ましい。以上から、例えば、25〜50℃の水に、3〜10分程度浸漬することができる。また、この水処理を複数回行うこともできる。このように、水処理を複数回行うことで、水槽を大型化することなく、小型の水槽であっても後述する効果を得ることができる。
続いて、基材1を第2加熱炉で加熱する。この第2加熱炉では、膨潤した防曇層が焼成され、防曇層内で残存する吸水性樹脂とSiによる架橋構造が強化される。この加熱炉での加熱温度は、上述した第1加熱炉と同様に、200℃以下、例えば50〜150℃とすることが好ましい。また、加熱時間は、第1加熱炉よりも長く、例えば、3〜60分であることが好ましく、5〜30分であることがさらに好ましい。こうして、防曇層が十分に焼成され、防曇層が完成する。
<3−3.親水層を有する防曇層>
上述した防曇層は、主として吸湿機能を有するものであるが、この防曇層(吸湿層)に、さらに親水層を形成することができる。以下、詳細に説明する。
この親水層は、種々の構成が可能であるが、例えば、下記式(A)で示されるポリエーテル変性ジメチルシロキサンを含有したものとすることができる。
Figure 2021192090
但し、m,n,x,及びyは、独立に1以上の整数であり、
1は、水素原子またはメチル基、R2は、炭素数が1〜3のアルキル基である。
また、上記式(A)においては、さらに、以下のように構成することができる。
(1)ポリエーテル変性ジメチルシロキサンの平均分子量を3,000〜300,000とすることができる。
(2)mは2または3の整数とすることができる。つまり、シリコーン主鎖とその側鎖とポリエーテル側鎖との接続部がエチレン基、プロピレン基となる。このようなポリエーテ
ル変性ジメチルシロキサンは、ジメチルポリシロキサン主鎖の一部のメチル基が水素原子に置換されているジメチルポリシロキサンを、末端にビニル基を有するポリエーテルに付加反応させることで得ることができる。
(3)ポリエーテル側鎖の重合度nは3〜600の整数とすることができる。つまり、ポリエチレングリコールとして分子量が200〜20000程度(重合度が4〜400程度)となる。
(4)変性の割合であるy/(x+y)が0.01以上1未満とすることができる。つまり、シロキサンユニット100個うち1個以上が変性であり、(両端を除いた)全てを変性とすることもできる。
以上のような親水層の形成方法は、従来知られている方法を適宜使用することができる。例えば、ポリエーテル変性ジメチルシロキサンをそのまま、またはそれを溶解できる溶媒で希釈して、綿布に染み込ませ、その綿布で防曇層をこするようにして塗り込んでもよい。また、スプレーコート、フローコートなどにより防曇層上に希釈液を塗布し、溶媒を揮発させて乾燥させてもよい。
このような親水層を形成することで、次のような効果を得ることができる。例えば、吸湿性の防曇層の吸湿が進み、飽和状態になった場合、水蒸気は、親水層上に付着するが、その親水機能により、親水層の表面には水膜が形成される。したがって、防曇層が飽和状態になった後には、水膜は形成されるものの、水滴による曇りが生じるのを抑制することができる。
<3−4.親水機能を有する防曇層>
次に、親水機能を有する防曇層について説明する。上記3−3項で説明した防曇層は、親水層が別途設けられているが、本項の防曇層は、親水機能を含有したものであり、単一層で形成されている。
この防曇層は、上述した吸湿機能を有する防曇層の内部に、親水化剤が分散している。これにより、防曇層の表面での親水性が良好になる。すなわち、上述した吸水性樹脂が水で飽和しても、防曇層の表面に水膜を形成して防曇性を維持することができる。また、上述したような防曇層上に別途親水層を形成した場合には、親水層の見かけの屈折率が、防曇層よりも高いので、ギラツキが発生するおそれがある。一方、防曇層の内部に親水化剤が分散されていると、ギラツキを抑制することができる。さらに、防曇層内に親水化剤が分散されていると、例えば、表面の親水化剤が拭き取り等の要因で除去されたとしても、内部の親水化剤が表面に現れることで、親水性能を維持することができる。なお、親水化剤としては、特には限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムを用いることができる。
防曇層には、高沸点の溶媒、例えば、沸点が100℃以上300℃以下の溶媒を含有させることができる。これにより、例えば、防曇層を形成する際に、100℃以上で焼成したとしても、溶媒を防曇層内に分散させることができる。そして、この溶媒中に親水化剤が溶け込むため、防曇層内に親水化剤を分散させることができる。ところで、有機材料を含む樹脂は、黄変や熱分解するため、一般的に、耐熱温度が300℃以下である。そのため、300℃より高い沸点の溶媒を用いた場合、300℃以下で焼成した場合には、防曇層内に溶媒が残り過ぎるおそれがある。したがって、ここで用いる溶媒の沸点は300℃以下であることが好ましい。このような溶媒は、アルコール基を有することが好ましく、これによって、親水化剤を溶媒中に分散しやすくなる。具体的には、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、またはグリセリンを用いることができる。
以上のような防曇層は、例えば、次のように形成することができる。まず、上述した有機無機複合防曇層用の塗工液に、上述した溶媒及び親水化剤を含有させ防曇層用溶液を生成する。そして、この防曇層用溶液を基材1上にスピンコート、ロールコート、スプレイコート等の方法で塗工する。次に、風冷により乾燥した後、加熱炉で焼成を行う。その後、室温により空冷すると、防曇層が完成する。この防曇層は、内部に親水化剤を含有しているため、塗工工程と焼成工程とをそれぞれ1回ずつ行うことで、防曇層を形成することができる。したがって、製造時間を大幅に短縮することができる。なお、上記塗工液中の高沸点溶媒の添加比率は、例えば、0.1〜40質量%であることが好ましく、親水化剤の添加比率は、例えば、0.01〜1.0質量%であることが好ましい。
<3−5.無機化合物を主成分とする防曇層>
<3−5−1.防曇層の組成>
次に、無機化合物を主成分する防曇層について説明する。この防曇層は、表面に凹凸を有することで、高湿条件下において、表面に水膜を形成することで防曇性能を発揮するものである。すなわち、いわゆる親水性の防曇層として機能する。また、このような凹凸が形成されることで、見かけ上、屈折率を小さくすることができ、表面の反射を抑制することができる。
このような防曇層は、例えば、無機微粒子、無機バインダを含有することができる。さらには、光触媒微粒子を含有させることもできる。光触媒微粒子を含有することで、防曇層の表面に堆積したハイドロカーボンや有機汚れを分解し、水膜を形成しやすくなる。例えば、防曇層の表面にハイドロカーボンや有機汚れが堆積すると、接触角が高くなって水滴が付着したときに、光学的な歪が生じるおそれがある。これに対して、光触媒粒子を添加すると、表面の汚れが分解されるため、水の付着によって生じる光学歪を抑制することができる。
無機微粒子は、例えば、SiO2、ZrO2、CeO2、ZnO、Al23、Nb25
23、MgOにより形成することができる。無機微粒子の粒子径は、例えば、1〜500nmであることが好ましく、5〜200nm、10〜150nmであることがさらに好ましい。無機微粒子の粒子径が大きくなると、ヘイズ率が高くなるため、好ましくない。
無機バインダは、加水分解性金属化合物に由来する金属酸化物成分を含んでいてもよい。好ましい加水分解性金属化合物は、撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物である。撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、例えば、シリコンアルコキシド、クロロシラン、アセトキシシラン、アルケニルオキシシラン及びアミノシランから選ばれる少なくとも1種のシリコン化合物(ただし、撥水基を有しない)であり、撥水基を有しないシリコンアルコキシドが好ましい。なお、アルケニルオキシシランとしては、イソプロペノキシシランを例示できる。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、以下の式(III)に示す化合物であってもよい。
SiY4 (III)
上述したとおり、Yは、加水分解可能な官能基であって、好ましくはアルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つである。
撥水基非含有加水分解性金属化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらに、少なくともその一部が重縮合して、金属原子と酸素原子とが結合した金属酸化物成分を供給する。この成分は、無機微粒子や光触媒微粒子を基材又は基材フィルム、無機微粒子と光触媒微粒子とを強固に接合し、防曇層の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい一例は、テトラアルコキシシラン、より具体的には炭素数が1〜4のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン及びテトラ−tert−ブトキシシランから選ばれる少なくとも1種である。
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい別の一例は、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、互いに異なる反応性官能基を有するシリコン化合物である。反応性官能基は、その一部が加水分解可能な官能基であることが好ましい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシ基及び/又はアミノ基と加水分解可能な官能基とを有するシリコン化合物である。好ましいシランカップリング剤としては、グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びアミノアルキルトリアルコキシシランを例示できる。これらのシランカップリング剤において、シリコン原子に直接結合しているアルキレン基の炭素数は1〜3であることが好ましい。グリシジルオキシアルキル基及びアミノアルキル基は、親水性を示す官能基(エポキシ基、アミノ基)を含むため、アルキレン基を含むものの、全体として撥水性ではない。
光触媒微粒子は、例えば、チタン、タングステン、鉄のいずれかを主成分とする酸化物または酸窒化物により形成することができる。光触媒微粒子の粒子径は、例えば、1〜50nmであることが好ましく、2〜20nm、5〜10nmであることがさらに好ましい。
無機微粒子の含有率は、例えば、0質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上28質量%以下であることが特に好ましい。また、無機バインダの含有率は、例えば、20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。さらに、光触媒微粒子の含有率は、例えば、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。なお、無機微粒子を含有せず、無機バインダと光触媒微粒子とを含有した防曇層であってもよい。
この防曇層の膜厚は、例えば、10〜500nmあることが好ましく、20〜250nm、50〜200nmであることがさらに好ましい。特に、防曇層の膜厚は、無機微粒子の粒子径の2倍以下であることが好ましい。防曇層の膜厚が無機微粒子の粒子径の2倍以上になると、無機微粒子が膜厚方向に重なりあい、無機微粒子同志の接着が弱くなるため、耐擦傷性が弱くなるおそれがあることによる。
<3−5−2.透明積層体の光学特性>
以上のような防曇層を有するカバー部材の可視光透過率は、85%以上が好ましく、88%以上がさらに好ましい。特に、可視光波長域における透過率の最小値が、基板の透過率から5%以内であることが好ましく、2%以内がさらに好ましい。一方、カバー部材の可視光反射率は、10%以下であることが好ましく、7%以下であることがさらに好ましい。特に、可視光波長域における反射率の最大値が、基板の反射率から5%以内であることが好ましく、2%以内がさらに好ましい。さらには、このカバー部材は、可視光波長域での反射率について、1≦最大反射率/最小反射率≦1.5を充足することが好ましい。反射カーブは透明積層体の色目に作用する。すなわち、ある特定の波長における反射率が大きいと色つきカバー部材になり、用途によっては受け入れらないことがあるが、上述した式を充足することで、色目を抑制することができる。なお、最大反射率/最小反射率は、防曇層の膜厚や組成を変化させることで調整することができる。
また、この透明積層体のヘイズ率は、1.0以下が好ましく、0.5以下がさらに好ましく、0.3以下であることが特に好ましい。これにより、カメラ等のカバー部材に好適に用いることができる。
<3−6.防曇層の他の態様>
上記の例では、基材1に防曇層を直接積層したが、防曇シートを貼り付けることもできる。防曇シートは、シート状の透明の基材フィルムと、基材フィルムの一方の面上に積層された上記防曇層と、基材フィルムの他方の面上に積層された透明の粘着層と、を備えている。そして、粘着層を基材1の第1主面11に固定すれば、防曇シートを固定することができる。
基材フィルムは、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの透明の樹脂シートにより形成することができる。基材フィルムの厚みは、例えば、75〜100μmにすることができる。粘着層は、例えば、アクリル系、シリコーン系の粘着層により形成することができる。
また、基材フィルムを用いないようにすることもできる。まず、離型フィルムを準備し、この離型フィルム上に、防曇層及び粘着層をこの順で積層する。その後、粘着層を基材1の第1主面11に貼り付けた後、離型フィルムを取り外せば、基材1上に、粘着層及び防曇層がこの順で積層される。したがって、この態様の場合には、基材フィルムが不要であり、基材フィルムによる歪みをなくすることができる。なお、粘着層上に保護フィルムを貼り付けておき、使用に際して、この保護フィルムを取り外した後、粘着層を基材に貼り付けることもできる。
<3−7.表面粗さ>
防曇層の表面粗さRaは、例えば、1〜1000nmとすることができ、10〜1000nmとすることがさらに好ましい。表面粗さRaを1nm以上とすることで、反射防止効果を得ることができる。特に、光の波長が400〜800nmの可視光帯域においては反射防止効果が大きい。但し、表面粗さRaが1000nmより大きくなると、光の散乱が生じ得るため、好ましくない。
<4.用途>
上記のようなカバー部材は、種々の用途に使用することができる。例えば、図2に示すように、撮像装置5のレンズ51を覆うカバー部材10として利用することができる。この場合、上述したカバー部材10には、レンズに取り付けるためのブラケット6を適宜取り付けることができる。そして、カバー部材10及びブラケット6により、レンズの前方には閉じた空間が形成される。この場合、カバー部材10の基材1の第1主面11を、この閉じた空間に向ける。したがって、第1主面11に第1機能層2が積層されているため、閉じた空間と外部との温度差、または気圧差によって第1主面11が曇るのを抑制することができる。よって、カバー部材10に曇りが生じることにより、撮影に支障を来すのを防止することができる。
このような撮像装置は、例えば、図3に示すように、監視カメラのバレット型、ドーム型のような、撮像装置5はハウジング7の中に設置され、ハウジング7とカバー部材10で外気と遮断されているものを対象とすることができる。この場合、カバー部材10は、撮像装置5のレンズの前方に配置される。このような監視カメラは、撮像装置5からの発熱と、その周囲の環境変化で、カバー部材10を挟んで温度差が生じる。そのため、カバー部材10は、結露し、曇りが生じやすい環境にある。
また、周囲の環境の気圧変化が著しい、飛行体に搭載される撮像装置でも気圧の変化で結露が生じやすい。以上より、監視カメラや飛行体に搭載される装置のカバー部材として、本実施形態のカバー部材10を好適に利用することができる。
その他、上記のような環境の変化が大きい場所で用いられるものに限られず、例えば、自動車等の移動体に搭載される撮像装置のカバー部材、その他、一般的な撮像装置のカバー部材として用いることができる。
特に、上述した無機化合物を主成分とする防曇層を有する透明積層体は、後述するように、防曇性能のみならず、防曇層の剥がれ、耐候性、及び耐水性に優れているため、例えば、屋外で用いられる監視カメラ等の各種カメラのカバー部材として好適に用いることができる。さらに、防曇層が光触媒微粒子を含有していると、紫外線が照射されたときに、防曇層の表面付着した有機汚れを分解することができ、防曇性能を復活させることができる。このようなカバー部材として、防曇層は、基材のいずれの面に積層してもよい。すなわち、カメラのレンズ側あるいは外部側のいずれであってもよい。カメラのレンズ側に防曇層を積層した場合、監視カメラには、防曇層に向けて紫外線を照射する照射装置を設けることが好ましい。これにより、防曇層に付着した有機汚れを必要なときに強制的に分解することができる。
<5.その他>
上記の例では、撮像装置のカメラのレンズ側に、基材1の第1主面11を向けているため、第2主面12は、外気に曝される事になる。そこで、第2主面12に水滴が付着しないように、第2主面12には、例えば、撥水層や親水層(第3機能層)を形成することができる。撥水層及び親水層は、公知の撥水膜や親水膜をコーティングすることで形成することができる。この点は、後述する第2実施形態においても同じである。
[実施例]
(1.有機無機複合膜からなる防曇層)
以下、第1実施形態に係る実施例であって、第1機能層として有機無機複合膜からなる防曇層を有する実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されない。
実施例1として、以下のカバー部材を作製した。
(1)基材:厚みが1.1mmのフロートガラスを用いた。
(2)第1機能層:以下に示す防曇層を、基材の第1主面に形成した。
(i) 防曇層用塗工液の調製
ポリビニルアセタール樹脂含有溶液(積水化学工業社製「エスレックKX−5」、固形分8質量%、アセタール化度9モル%、ペンズアルデヒドに由来するアセタール構造を含む)62.5質量%、n−ヘキシルトリメトキシシラン(HTMS、信越化学工業社製「KBM−3063」)0.37質量%、テトラエトキシシラン(TEOS、信越化学工業社製[KBEー04])1.04質量%、アルコール溶媒(日本アルコール工業製「ソルミックスAP−7])20.44質量%、精製水15.63質量%、酸触媒として塩酸0.01質量%、レペリング剤(信越化学工業社製「KP−341」)0.01質量%、をガラス製容器に入れ、室温(25℃)で3時間撹持することにより、防曇層形成用塗工液を調製した。
(ii) 防曇層の成膜工程
まず、基材に、上記のように調製した防曇層用塗工液を塗布し、90℃の加熱炉に5分間通した。次に、この基材を50℃の水に10分間浸漬し、110℃の加熱炉で10分間加熱した。こうして、防曇層の吸湿層が形成された。
次に、ポリエーテル変性ジメチルシロキサン(ビックケミージャパン株式会社製BYK-333。)を、アルコール混合溶媒(日本アルコール販売社製「ソルミックスAP−7」)で1wt%になるように希釈して塗布液を作成し、傾けて置いた基材の給水膜全体が濡れるようにフローコート法で塗布し、そのまま乾燥させた。こうして、親水層が形成された。なお、親水層の膜厚は、10nmであった。
(2.無機化合物を主成分とする防曇層)
次に、第1機能層として無機化合物を主成分とする防曇層を有するカバー部材の実施例について説明する。
基材として厚さが1.1mmのフロートガラスを準備し、その一方の面に、以下の組成を有する防曇層を形成した。防曇層は、防曇層用の塗工液をスピンコートにより塗布し(回転数3000rpm)、その後、以下の条件で焼成した。
Figure 2021192090
以上のようにして形成された実施例1〜11に係るカバー部材に対し、以下の試験を行った。
(2-1. 防曇性能試験)
容器に80〜100℃の湯を溜め、この湯の水面から5cmの位置に、防曇層を水面側に向けてカバー部材を配置した。そして、以下のように評価をした。
A:3〜5秒以内に均一な水膜が防曇層上に形成される。
B:3〜5秒以内に水膜が防曇層上に形成されるが、歪みが見られる。
C:3秒以内に防曇層が曇る。
また、60mW/cm2の紫外線を10分間照射した後、防曇性能試験を再度行った。
結果は、以下の通りである。
Figure 2021192090
実施例4〜6は、SiO2微粒子の含有量が少ないため、防曇性能が低いと考えられる。但し、紫外線を照射した後には、表面の汚れが分解されるため、実施例1〜3,7〜11と同様の防曇性能が得られているため、実用には十分に耐えうると考えられる。なお、60mW/cm2の紫外線は、太陽光よりも高い強度であるが、これは加速試験として行ったものである。したがって、太陽光と同等の1mW/cm2の紫外線であっても長時間
に亘って照射されれば、実施例は4〜6は防曇性能が得られると考えられる。この点は、後述する試験においても同様である。
(2-2. 摩耗試験)
布として、アルコール(双葉化学薬品株式会社製A−10)を含浸させた東レ株式会社製のトレシーを準備し、各実施例の防曇層に対して荷重300gにて、この布を押し付け、5cmの距離を10往復させた。そして、上述した防曇性能試験を行うとともに、目視にて防曇層の剥がれが生じているか否かを確認した。また、60mW/cm2の紫外線を
20分間照射した後、防曇性能試験を再度行った。結果は、以下の通りである。
Figure 2021192090
実施例1〜3は、摩耗試験によって防曇層の剥がれが確認された。SiO2微粒子の含有量が多いためと考えられる。但し、実施例7〜9のようにSiO2微粒子の含有量が多くても、高温で焼成された場合には、SiO2微粒子の十分な架橋が行われた強固な防曇層が形成されていると考えられ、剥がれが見られない。したがって、例えば、防曇層の汚れを除去するための拭き取りが行われても、特に、実施例4〜11は、防曇層の剥がれが防止されることが分かった。
防曇性能に関し、実施例1〜6は焼成温度が低いため、SiO2バインダに含有される有機物が防曇層の表面に残存しているため、表面の接触角が高くなり、防曇性能が発揮されていないと考えられる。一方、実施例7〜11は焼成温度が高いため、SiO2バインダに含まれる有機物が熱分解で表面から除去されるため、防曇性が発揮されると考えられる。また、このような耐久性試験では、防曇層の表面へのハイドロカーボンの付着、SiO2バインダからの有機物残差が防曇層の表面に出てきて、防曇層が汚染されることにより防曇性能が劣化すると考えられる。
(2-3. 耐候性試験)
各実施例に係るカバー部材を温度80℃、湿度80%の恒温槽に48時間収容した。その後、上述した防曇性能試験を行った。さらに、その後、1mW/cm2の紫外線を照射し、上記の評価Aの防曇性能が発現するまでの時間を測定した。この時間に関する評価は、以下の通りである。
P:10時間未満
Q:10〜30時間
R:30時間より長い時間
結果は、以下の通りである。
Figure 2021192090
恒温槽からカバー部材を出した後の防曇性能試験では、実施例1〜11のいずれも防曇性能が低かった(評価C)。一方、紫外線を照射した後には、実施例1〜3,7〜11において防曇性能が高くなっているが、実施例4〜6は防曇性能は低いままであった。これは、無機バインダの含有量が多いためであると考えられる。また、本発明者によると、実施例1〜3では、表4には詳細は記載していないが、TiO2微粒子の含有量が多いほど、防曇性能が発現するまでの時間が短くなっていることを見出した。すなわち、実施例1よりも、実施例2,3の方が紫外線照射後に防曇性能が発現するまでの時間が短かった。したがって、例えば、本発明を監視カメラのカバー部材として用いる場合、屋外の高温高湿の環境下でも、紫外線が照射されれば、概ね高い防曇性能を示すことが分かった。
(2-4. 浸漬試験)
各実施例に係るカバー部材を水(20℃±5℃)に180時間浸漬した。その後、上述した防曇性能試験を行った。結果は、以下の通りである。
Figure 2021192090
実施例1〜5の評価である「A,B」は、防曇層の一部にB評価の領域が存在することを意味しているが、いずれも高い防曇性能を有していることが分かった。したがって、本発明に係るカバー部材は、雨水に晒されるような屋外での使用に適していると考えられる。
以上の各試験結果からすると、実施例1〜11は、いずれも屋外での使用に適している。特に、実施例8〜11は、過酷な環境においても、高い防曇性能を有している。
(2-5. 透過率)
実施例1〜3のカバー部材、及び基材について、JIS R3106に基づいて透過率を測定した。結果は、図4に示すとおりである。図4に示すように、可視光の波長域(約380〜780nm)において、実施例1〜3は、約89%以上の透過率を示している。特に、ガラス板である基材の透過率が約91%であることからして、実施例1〜3は、基材の透過率から2%以内に収まっており、高い透過率を示すことが分かった。
(2-6. 反射率)
実施例1〜3のカバー部材、及び基材について、JIS R3106に基づいて反射率を測定した。結果は、図5に示すとおりである。図5に示すように、可視光の波長域(約380〜780nm)において、実施例1〜3は、約6〜8%の反射率を示している。特に、ガラス板である基材の反射率が約8〜9%であることからして、実施例1〜3は、基材の反射率よりも約2%低くなっており、低い反射率を示すことが分かった。
(3.親水機能を有する防曇層)
次に、第1機能層として、上述した親水機能を有する防曇層が形成されたカバー部材の実施例12〜20について説明する。
基材として厚さが1.1mmのフロートガラスを準備し、その一方の面に、防曇層を形成した。防曇層は、次に説明する防曇層用の塗工液をスピンコートにより塗布し、10分間風冷した後、加熱炉で焼成した。加熱炉では、100℃で30分間焼成を行った。その後、室温により空冷することで防曇層を形成した。防曇層の厚みは、約10μmとした。
防曇層用の塗工液は、以下のように調製した。ポリビニルアセタール樹脂含有溶液(積水化学工業社製「エスレックKX−5」、60.24質量%(固形分濃度5.0質量%)、高沸点溶媒(表6に示す)20.0質量%、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS、信越化学工業社製「KBM−403」)0.28質量%(固形分濃度0.2質量%)、テトラエトキシシラン(TEOS、信越化学工業社製「KBE−04」)1.04質量%(固形分濃度0.30質量%)、アルコール溶媒(日本アルコール工業製「ソルミックスAP−7」)6.32質量%、精製水11.87質量%、界面活性剤(日油株式会社製「ラピゾール」)0.10〜0.40質量%(固形分濃度0.10〜0.40質量%、表6参照)、酸触媒として塩酸0.01質量%、レベリング剤(信越化学工業社製「KP−341」)0.01質量%、レベリング剤(信越化学工業社製「KP−112」)0.01質量%、レベリング剤(ダウ・ケミカル日本社製「DOWSIL8526 Additive」)0.01質量%、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製「BKY−349」)0.01質量%、をガラス製容器に入れ、室温(25℃)で3時間撹拌することにより、防曇層用塗工液を調製した。
高沸点溶媒としては、プロピレングリコール(PG)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びトリエチレングリコール(TEG)を用いた。実施例12〜20に係る防曇層用の塗工液は、以下の高沸点溶媒を含有している(単位は、添加比率の質量%)。
Figure 2021192090
上記のように形成された防曇層に対し、以下の試験を行った。
(3-1 防曇性能試験)
容器に80〜100℃の湯を溜め、この湯の水面から5cmの位置に、防曇層を水面側に向けてカバー部材を配置した。そして、10秒以上曇らないか否か(防曇性能)、1秒以内に水膜が形成されたか否か、及び外観に問題がないか否かを検査した。外観検査では、防曇層の表面が平滑であるか、歪みや筋が形成されていないかなどを目視により検査した。結果は、以下の通りであり、OKは問題がなかったことを示している。
Figure 2021192090
以上の結果からすると、実施例12〜20に係る防曇層は、十分な防曇性能を示していることが分かった。
(3-2 摩耗試験)
布として、アルコール(双葉化学薬品株式会社製A−10)を含浸させた東レ株式会社製のトレシーを準備し、各実施例の防曇層に対して荷重300gにて、この布を押し付け、5cmの距離を10往復させた。そして、上述した(3-1)と同様の防曇性能試験を行った。結果は、以下の通りである。
Figure 2021192090
表8の結果からすると、拭き取り後に、実施例15,16,18,20においては、防曇層の表面に歪みが見られたが、その他の実施例では、防曇性能が維持されている。
(3-3. 耐候性試験)
各実施例に係るカバー部材を温度85℃、湿度85%の恒温槽に48時間収容した。その後、上述した(3-1)と同様の防曇性能試験を行った。結果は、以下の通りである。
Figure 2021192090
<B.第2実施形態>
以下、本発明に係る透明積層体を、カバー部材に適用した場合の第2実施形態について、図面を参照しつつ、説明する。図6は、第2実施形態に係るカバー部材の断面図である。
本実施形態に係るカバー部材20が、第1実施形態と相違するのは、上述した第1機能層2上に、さらに第2機能層3が積層されている点であり、その他の構成は第1実施形態で説明したとおりである。以下、第2機能層について説明する。
<1.カバー部材の概要>
図6に示すように、本実施形態に係るカバー部材20は、基材1と、基材1の第1主面11に積層される第1機能層2と、この第1機能層2上に積層される第2機能層3と、を備えている。基材1、第1機能層2は、第1実施形態で示したものと同じである。
第2機能層3としては、例えば、反射防止膜、防眩膜、帯電防止膜、抗菌膜等を採用することができる。以下では、第1機能層2として防曇層を採用し、第2機能層3として反射防止層を採用した例について説明する。
第1機能層2の防曇層は、第1実施形態で示した最上面に親水層を有するものではなく、例えば、有機無機複合防曇層で形成された吸湿層である。このような吸湿性の防曇層に反射防止層が積層されると、吸湿効果を阻害するおそれがある。そこで、本実施形態に係る反射防止層は、内部に空隙を有することで、防曇層2までの水蒸気の通路を形成している。以下、詳細に説明する。
<2.第2機能層>
図7は,第2機能層の断面図である。図6に示すように、第2機能層3は、中空粒子31と、バインダー32とを備えている。中空粒子31は、1.15〜2.70の屈折率を有する材料でできている。バインダー32は、少なくともポリシルセスキオキサンによって形成され、中空粒子31を結着する。第2機能層3において、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた全反射測定法(ATR法)によって決定され る、ケイ素原子に直接結合していない炭化水素基に由来する吸光度、ケイ素原子と非反応性官能基との結合に由来する吸光度、及びケイ素原子とヒドロキシ基との結合に由来する吸光度を、それぞれ、Ia、Ib、及びIcと表す。第2機能層3は、Ib/Ia≧0.7及びIb/Ic≧0.3の少なくとも1つの条件を満たす。本明細書において、Ib/Iaを有 機無機パラメータ(D)とも呼び、Ib/Icを疎水パラメータ(H)とも呼ぶ。吸光度 Ia、吸光度Ib、及び吸光度Icは、例えば、ATR法によって得られた吸収スペクトルから実施例に記載の方法に従って決定できる。
有機無機パラメータ(D)は、バインダー32に含まれるケイ素原子に直接結合していない炭化水素基の量が少ないほど大きくなる。バインダー32に含まれるケイ素原子に直接結合していない炭化水素基の量が少ないと、バインダー32におけるSi−O−Siのネットワークが緻密であり、かつ、バインダー32における無機成分の密度が高くなる。これにより、中空粒子31がSi−O−Siのネットワークによって強固に固定される。 このため、第2機能層3においてIb/Ia≧0.7であれば、第2機能層3において中空粒子31が強固に固定され、第2機能層3が低屈折率コーティングに有利な特性を有する。膜において中空粒子の 固定が十分でないと膜の機械的強度が低下する可能性がある。
疎水パラメータ(H)は、バインダー32においてケイ素原子に結合しているヒドロキシ基が少ないほど大きくなる。例えば、バインダー32の原料において、ヒドロキシ基同 士が縮合してSi−O−Siからなるネットワークが発達すると、バインダー32においてケイ素原子に結合しているヒドロキシ基が少なくなる。疎水パラメータ(H)が所定値 以上であれば、バインダー32において、Si−O−Siからなるネットワークが緻密に 発達しており、このネットワークによって中空粒子31を強固に固定できる。このため、第2機能層3においてIb/Ic≧0.3であれば、第2機能層3において中空粒子31が強固に固定され、第2機能層3が低屈折率コーティングに有利な特性を有する。
第2機能層3は、望ましくは、Ib/Ia≧0.7及びIb/Ic≧0.3の条件をさらに満たす。これにより、第2機能層3において中空粒子31がより確実に強固に固定され、第2機能層3が低屈折率コーティングに有利な特性を有する。
バインダー32にシラノール基(Si−OH)が存在する場合、シラノール基は、ガラス板1の表面に存在するシラノール基と水素結合を形成するので親和性が高い。このため、疎水パラメータ(H)が所定値以下である膜はガラス板1にも付着しやすい。親水性の表面を有する基板及び疎水性の表面を有する基板のいずれにも良好な付着性を示すように、第2機能層3は、より望ましくは0.3≦Ib/Ic≦2.0の条件を満たす。
第2機能層3において、ATR法によって決定される、1つの酸素原子と2つのケイ素原子との 結合に由来する、第一吸光度、第二吸光度、及び第三吸光度をそれぞれId、Ie、及び Ifと表す。第一吸光度Idは第一波数に対応している。第二吸光度Ieは、第一波数より大きい第二波数に対応している。第三吸光度Ifは、第二波数より大きい第三波数に対応している。第2機能層3は、望ましくは、Id/Ib≦60、Ie/Ib≦20、及びIf/I b≦174の少なくとも1つの条件を満たす。本明細書において、Id/Ibを第一ネッ トワークパラメータ(N1)とも呼び、Ie/Ibを第二ネットワークパラメータ(N2)とも呼び、If/Ibを第三ネットワークパラメータ(N3)とも呼ぶ。
第一波数は、例えば、455±50cm-1において吸収スペクトルの極大値が出現する波数である。第二波数は、例えば、780±50cm-1において吸収スペクトルの極大値 が出現する波数である。第三波数は、例えば、1065±50cm-1において吸収スペク トルの極大値が出現する波数である。
第一ネットワークパラメータ(N1)、第二ネットワークパラメータ(N2)、及び第三ネットワークパラメータ(N3)は、バインダー32において酸素原子と2個のケイ素 原子との結合(Si−O−Si)が多いほど大きい。バインダー32の原料においてヒド ロキシ基同士が縮合して生成したSi−O−Siのネットワークが発達するほど、第一ネットワークパラメータ(N1)、第二ネットワークパラメータ(N2)、及び第三ネットワークパラメータ(N3)は大きくなる。一方、製膜性を良好に保つためには、中空粒子 の凝集を抑制して塗膜の厚みを均一に保つことが重要である。中空粒子の凝集を抑制する には、Si−O−Siのネットワークの過剰な発達を防止することが望ましい。このよう な観点から、第2機能層3において、N1が60以下であること、N2が20以下であること、及びN3が174以下であることの少なくとも1つが満たされることが望ましい。これによ り、第2機能層3を良好に形成でき、第2機能層3によって良好な反射防止性能を有する反射防止構造を提供できる。
第2機能層3は、より望ましくは、Id/Ib≦60、Ie/Ib≦20、及びIf/Ib≦174の条件をさらに満たす。
典型的には、バインダー32のポリシルセスキオキサンは、ケイ素原子に結合している非反応性官能基を有する。バインダー32のポリシルセスキオキサンが適切な疎水作用を発揮するために、非反応性官能基は、例えば、アルキル基等の疎水性を示す官能基である。望ましくは、バインダー32のポリシルセスキオキサンは、16個以下の炭素原子を含む炭化水素基が非反応性官能基としてケイ素原子に結合しているポリシルセスキオキサン である。この場合、非反応性官能基が嵩高くないので、Si−O−Siのネットワークが 緻密に形成されやすい。
バインダー32は、例えば、さらにシリカによって形成されていてもよい。この場合、バインダー32に含まれるポリシルセスキオキサンによって疎水作用が発揮されやすく、バインダー32に含まれるシリカによって親水作用が発揮されやすい。このため、バインダー32において、シリカの物質量Msに対するポリシルセスキオキサンの物質量Mpの比(Mp/Ms)を調節することにより、第2機能層3の親水性又は疎水性を適切なレベルに調整 できる。これにより、第2機能層3をガラス基板のような親水性の表面を有する基板に対しても適 切に形成でき、樹脂のような疎水性の表面を有する基板に対しても第2機能層3を適切に形成でき る。このような観点から、バインダー32における、シリカの物質量Msに対するポリシルセスキオキサンの物質量Mpの比(Mp/Ms)は、例えば3/7以上であり、望ましくは1〜9であり、より望ましくは3/2〜4である。
中空粒子31は、中空構造を有する限り特に制限されないが、例えば、球状、筒状、シート状の形状を有する。中空粒子31は、例えば、10〜150nmの平均粒子径(一次粒子径)を有する。これにより、第2機能層3において中空粒子31が均一に分散しやすい。中空粒子31の平均粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察された50個以上の中空粒子31の粒子径を算術平均することにより決定できる。なお、各粒子の粒子径は最大径を意味する。
中空粒子31は、望ましくは20〜100nmの平均粒子径を有し、より望ましくは30〜70nmの平均粒子径を有する。なお、中空粒子31における内部空間の最大寸法は、例えば5〜100nmであり、望ましくは10〜70nmであり、より望ましくは20〜50nmである。中空粒子31は、望ましくは、0.1以下の変動係数を有する単分散粒子である。
中空粒子31の材料は、1.15〜2.70の屈折率を有する材料である限り、無機材料又は有機材料であってもよい。中空粒子31の材料は、望ましくは1.20〜2.00の屈折率を有する材料であり、より望ましくは1.30〜1.50の屈折率を有する材料であり、さらに望ましくは1.38〜1.46の屈折率を有する材料である。外力に対する変形のしにくさの観点から、中空粒子31は、望ましくは、無機材料でできている。この場合、中空粒子31は、例えば、シリカ、フッ化マグネシウム、アルミナ、アルミノシ リケート、チタニア、及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1つでできている。
なかでも、第2機能層3を用いた低屈折率コーティングによって高い反射防止性能を有する反射防止構造を提供するために、中空粒子31は、望ましくはシリカ又はフッ化マグネシウムでできている。なお、シリカの屈折率は1.46であり、フッ化マグネシウムの屈折率は1.38である。
中空粒子31の構造及び材料は、中空粒子31が所望の屈折率を有するように定められている。例えば、中空粒子31が所望の屈折率を有するように、中空粒子31の材料及び中空粒子31の全体の体積に対し内部空間が占める割合が定まっている。中空粒子31は、例えば1.10〜1.40の屈折率を有し、望ましくは1.20〜1.35の屈折率を有し、より望ましくは1.25〜1.30の屈折率を有する。例えば、異なる屈折率を有する材料でできた複数種類の中空粒子において、中空粒子の全体の体積に対し内部空間が占める割合が同一である場合、低屈折率の材料でできた中空粒子が高屈折率の材料でできた中空粒子よりも低い屈折率を有する。
中空粒子31の屈折率は、例えば、液浸法(ベッケ線法)によって測定できる。例えば、中空粒子31がシリカでできている場合、以下の手順に従って中空粒子31の屈折率を測定できる。(i)中空粒子31の分散液の分散媒を蒸発及び乾燥させて粉末を得る。(ii)(i)で得た粉末をGARGILL社製のシリーズA及びシリーズAA等の異なる屈折率を 有する様々な標準屈折率液と混合する。(iii)(ii)で得た混合液が透明になったときに用いた標準屈折率液の屈折率を中空粒子31の屈折率と決定する。
中空粒子31は、市販されているものであってもよいし、所定の方法で作製されたものであってもよい。例えば、中空粒子31は、コアの周囲にシェルを形成して、コアを除去して作製してもよい。例えば、数十ナノメートルの粒子径を有するポリマーコアの周囲にシリカでできたシェル又はフッ化マグネシウムでできたシェルを形成する。その後、ポリマーコアを溶媒への溶解又は燃焼により除去して、中空シリカ粒子又は中空フッ化マグネシウム粒子である中空粒子31を得ることができる。また、シリカでできたコアのまわり にフッ化マグネシウムでできたシェルを形成し、シリカでできたコアをアルカリで溶
解することによっても、中空フッ化マグネシウム粒子である中空粒子31を得ることができる 。
第2機能層3において、バインダー32の質量Wbに対する中空粒子31の質量Whの比(Wh/Wb)は、例えば1/5〜20であり、望ましくは1/3〜10であり、より望ましくは1〜5である。これにより、第2機能層3を用いた低屈折率コーティングによって高い反射防止 性能を有する反射防止構造を提供できる。
第2機能層3の厚みは、特に限定されないが、例えば反射を防止すべき光の波長に合わせて定められている。具体的には、第2機能層3の厚みは、反射を防止すべき光の波長の中心の波長をλ(nm)としたとき、光学膜厚(屈折率×物理膜厚)が、λ/4を満たすように設定される 。例えば、可視光線領域(実用的には波長380nm〜780nm)に属する光の反射を 防止するためには、中心波長であるλをλ=550nmとして、用いられる低屈折率膜の屈折率を1.20とした場合、最適な物理膜厚は115nmとなる。可視光線の反射を防止するための実用上有効な第2機能層3の厚みは、50〜300nmであり、望ましくは70〜200nmであり、より望ましくは90〜170nmである。これにより、第2機能層3を用いた低 屈折率コーティングによって高い反射防止性能を有する反射防止構造を提供できる。また、近赤外線領域(例えば波長800nm〜2500nm)のうち可視光線の領域に近い、 λ=850nmを中心波長とした光の反射を防止するためには、用いられる低屈折率膜の 屈折率を1.20とした場合、最適な物理膜厚は177nmとなる。近赤外線の反射を防止するための実用上有効な第2機能層3の厚みは、80〜350nmであり、望ましくは130〜250nmであり、より望ましくは150〜220nmである。これにより、第2機能層3を用いた低屈折率コーティングによって高い反射防止性能を有する反射防止構造を提供できる。反射防止構造として、多層膜を用いた場合には、50nm以下の膜厚の低屈折率層を用いてもよい。また、低屈折率膜の物理膜厚は、これらに限定されないが、その断面をSEMやTEM、またはエリプソメータ等により測定することができる。
第2機能層3は、例えば1.45以下、好ましくは、1.1〜1.35の屈折率を有する。これにより、第2機能層3を用いた低屈折率コーティングによって高い反射防止性能を有する反射防止構造を提供できる。第2機能層3は、望ましくは1.30以下の屈折率を有し、より望ましくは1.25以下の屈折率を有する。第2機能層3の屈折率を低減する観点から、第2機能層3は、中空粒子31同士の間の空間、又は、バインダー32の中に空気層(air space)を含んでいてもよい。第2機能層3の屈折率は、例えば、反射率分光法によって決定できる。この空気層の割合(ボイド率)を増やすことで、第2機能層3の屈折率を低下させることができる。ボイド率は、例えば、0〜70vol%であり、10〜50vol%が好ましく、20〜50vol%がさらに好ましい。この点は、後述する複数層からなる第2機能層においても同じである。
第2機能層3は、例えば、所定の液状組成物を硬化させて得られた硬化物である。この液状組成 物は、中空粒子と、ポリシルセスキオキサンと、溶媒とを含有している。中空粒子は、1.15〜2.70の屈折率を有する材料でできている。液状組成物を基板に塗布し液状組 成物を硬化させて得られた硬化物において、Ib/Ia≧0.7及びIb/Ic≧0.3 の少なくとも1つの条件が満たされる。液状組成物に含まれる溶媒は、例えば、エタノー ル、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール又は水である。
第2機能層用の溶液は、第1機能層である防曇層に対し、スピンコート、ロールコート、スプレイコートなど種々の方法で塗工することができる。但し、ロールコート及びスプレイコートなどの方法は、例えば、塗工から焼成までの間に溶液のレベリングが必要であるため、塗工から焼成まで時間を要する。そのため、この時間の間に溶媒が蒸発し、乾燥が不均一に進行するおそれがある。これにより、例えば、バインダーにおいて、加熱炉でネットワークを形成する前に溶媒が蒸発した領域とネットワークを形成時点で溶媒が残存している領域とで屈折率が異なったり、あるいは、膜厚が異なることが生じるおそれがある。
したがって、このような高温でのコーティングを行う場合には、高沸点溶媒を用いることが好ましい。これにより、第2機能層用の溶液において、溶媒の揮発を抑制することができるので、膜の屈折率や膜厚を均一にすることができる。また、バインダーにおけるネットワークの形成は、脱水縮合反応などで起こるため、100℃前後の焼成温度が好ましい。よって、高沸点溶媒の沸点は100℃以上であることが好ましい。また、第1機能層は、有機系樹脂を含むため、300℃以上では黄変などが生じることがある。したがって、第2機能層の焼成温度は300℃以下であることが望ましい。これに対して、沸点が300℃以上の溶媒を用いると、焼成後に、溶媒が大量に残存してしまうおそれがある。その結果、第2機能層の屈折率が変化してしまい、所望の光学特性が得られなくなるおそれがある。したがって、高沸点溶媒の沸点は、100℃以上300℃以下であることが好ましい。
高沸点溶媒は、特には限定されないが、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを主成分とすることができる。また、このような高沸点溶媒は、溶液中に、例えば、1ppb以上、5g/cm3以下含有することが好ましく、3g/cm3以下であることがさらに好ましく、1g/cm3以下であることがより好ましい。その理由は、以下の通りである。上記第2機能層用の溶液では、焼成温度より高い溶媒が添加されているため、焼成後も第2機能層に溶媒が1ppb以上残存する。ここで、第2機能層に5g/cm3以上の溶媒が含まれると、溶媒が残存することにより
屈折率が変化するので、光学薄膜の機能を果たさなくなるおそれがある。したがって、溶媒は、5g/cm3以下含有されることが好ましい。なお、第2機能層3の体積は、第2機能層3の厚みを10点で測定した平均値、及び第2機能層3の面積から換算する。また、高沸点溶媒の溶媒量はガスクロマトグラフなどで分析し算出する。そして、算出した体積及び溶媒量から、第2機能層3中の高沸点溶媒濃度(g/cm3)を算出する。
ところで、この液状組成物において、フルオロアルキル基を有するオルガノシラン化合物は不要なので、液状組成物において相分離が起こりにくく、液状組成物が均一になりやすい。また、基板及び樹脂基板に対する液状組成物の濡れ性が高く、液状組成物によって均一な構造の反射防止層が得られやすい。
上記の硬化物において、望ましくは、Ib/Ia≧0.7及びIb/Ic≧0.3の条件がさらに満たされる。
上記の硬化物において、望ましくは、Id/Ib≦60、Ie/Ib≦20、及びIf/Ib≦174の少なくとも1つの条件が満たされる。
上記の硬化物において、より望ましくは、Id/Ib≦60、Ie/Ib≦20、及びIf/Ib≦174の条件がさらに満たされる。
液状組成物におけるポリシルセスキオキサンは、例えば、16個以下の炭素原子を含む炭化水素基が非反応性官能基としてケイ素原子に結合しているポリシルセスキオキサンである。
第2機能層3における中空粒子31の特徴は、典型的には、液状組成物における中空粒子にも当てはまる。このため、液状組成物における中空粒子は、例えば、10〜150nmの平均粒子径(一次粒子径)を有する。また、液状組成物における中空粒子は、望ましくは、シリカ、フッ化マグネシウム、アルミナ、アルミノシリケート、チタニア、及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1つでできている。
液状組成物は、例えば、中空粒子以外にシリカを含有していてもよい。
第2機能層3は、例えば、第1機能層2に液状組成物を塗布して液状組成物を硬化させることによって、形成される。これにより、第2機能層3を用いて低屈折率層が形成される。液状組成物を用いることにより、フルオロアルキル基を有するオルガノシラン化合物を必要とせず、低屈折率コーティングを簡素になし得る。
液状組成物のポリシルセスキオキサンは、例えば、液状組成物の原料に含有される三官能性アルコキシシランが加水分解及び脱水縮合することにより形成される。また、液状組成物において中空粒子以外にシリカが含まれる場合、このシリカは、例えば、液状組成物の原料に含有される四官能性アルコキシシランが加水分解及び脱水縮合することにより形成される。例えば、四官能性アルコキシシランは、下記の(式1)及び(式2)の反応によりシリカ(SiO2)を形成する。Raはアルキル基を示す。三官能性アルコキシシラン は、下記の(式3)及び(式4)の反応によりポリシルセスキオキサン(RbSiO3/2) を形成する。Rbは非反応性官能基を示し、Rcはアルキル基を示す。
Si(ORa4+4H2O→Si(OH)4+4RaOH (式1)
Si(OH)4→SiO2+2H2O (式2)
bSi(ORc3+3H2O→RbSi(OH)3+3RcOH (式3)
bSi(OH)3→RbSiO3/2+3/2H2O (式4)
液状組成物の原料に含まれる加水分解触媒は、例えば、ギ酸及び酢酸などのカルボン酸である。
<3.屈折率の調整>
第2機能層3が反射防止層として適切に機能するためには、第1機能層2である防曇層の屈折率を考慮して、第2機能層3の屈折率を決定する必要がある。防曇層の屈折率は、材料にもよるが、概ね1.5〜1.6である。そして、第1機能層2と第2機能層3との全体で屈折率を低下させるには、第2機能層3の屈折率を第1機能層1の屈折率の1/2乗にすることが知られている。例えば、防曇層の屈折率が1.55である場合、第2機能層3の屈折率は1.24にすることが好ましい。
上記のように、第2機能層3は、中空粒子31、バインダー32、及び空気層により構成されているが、空気を含む中空粒子を含有しているため、屈折率を低くすることができる。さらに、空気層も含有されているため、その割合(ボイド率)を高めると、屈折率をさらに低下することができる。したがって、中空粒子の割合や、ボイド率を調整することで、第2機能層3の屈折率を、例えば、第1機能層2の屈折率の1/2乗±0.1程度にすることができる。
<4.複数層からなる第2機能層>
上述した例では、第2機能層3を単層で形成しているが、2層で形成することもできる。例えば、図8に示すように、第2機能層3を、第1機能層2上に積層される第1層301と、この第1層301上に積層される第2層302とで構成することができる。ここで、機能層2,3全体としての屈折率を低下させるには、第1層301の屈折率を防曇層2よりも小さくし、さらに第2層302の屈折率を第1層301よりも小さくする。第1層301の屈折率は、例えば、1.35〜1.55とすることができ、第2層302の屈折率は、例えば、1.10〜1.25とすることができる。
そのような例として、第2層302は、上述した単層の第2機能層3で形成する。そして、第1層301は、第2層302から中空粒子31を除いた層であり、バインダーを構成するポリシルセスキオキサン及びシリカの少なくとも1つからなる層である。この第2層302は、例えば30〜300nmとすることができる。なお、第1層301は中空粒子を含まず、また空気層も含まれていないが、バインダー32が多孔質であるため、水蒸気は通過する。したがって、このような第1層301を形成しても、第1層301及び第2層302を介して、水蒸気が防曇層2に到達する。但し、第2層302と比べると水蒸気は通過しがたいため、第1層301の膜厚は第2層302よりも薄いことが好ましい。
このように、第2機能層3を複数の層で形成する場合、第1機能層2から最外層に向かうにつれて、各層の屈折率を段階的に低下させればよい。したがって、第2機能層3を3層以上で形成することができる。
<5.第2機能層の物性>
第1機能層2が防曇層である場合には、吸湿により体積が変化することがある。そして、第2機能層3は、第1機能層2上に積層されるため、第2機能層3は、第1機能層2の体積の変化に追従することが好ましい。追従が不十分であれば、第2機能層3にクラックが生じる可能性がある。そこで、例えば、防曇層2の曲げ弾性率が2〜3GPaであれば、第2機能層3の曲げ弾性率は、防曇層2の曲げ弾性率と重複するような範囲、例えば、1〜10GPaであることが好ましく、1〜4GPaであることがさらに好ましい。すなわち、防曇層2と同様の曲げ弾性率を示すポリシルセスキオキサン(曲げ弾性率2〜3GPa)を、第2機能層3のバインダーとして好適に用いることができる。
また、温度変化により、第1機能層及び第2機能層が伸縮することがあるため、第1機能層2及び第2機能層3の線膨張係数の差が30ppm/℃であることが好ましい。例えば、防曇層の線熱膨張係数は60〜84ppm/℃であるのに対し、ポリシルセスキオキサンの線熱膨張係数は40〜70ppm/℃であるため、第2機能層3のバインダーとして用いることができる。つまり、防曇層の吸水量により膜体積が増減したが場合であっても、第1機能層2や第2機能層3のクラックを抑制することができる。
<6.その他の態様>
本実施形態に係る第1機能層2及び第2機能層3は、種々の態様にすることができる。例えば、第2機能層3を単層にする場合、図9に示すように、基材フィルム81上に防曇層2、及び反射防止層3をこの順で積層した後、基材フィルム81を粘着層(図示省略)を介して基材1上に貼り付けることができる。同様に、第2機能層3を複層にする場合、図10に示すように、基材フィルム81上に防曇層2、反射防止層の第1層301、及び第2層302をこの順で積層した後、基材フィルム81を、粘着層82を介して基材1上に貼り付けることができる。なお、基材フィルム81及び粘着層82は第1実施形態で示したものと同じである。
本発明の透明積層体は、紫外線吸収剤および/または赤外線吸収剤を含有していても良い。上述した第1機能層、第2機能層、第3機能層の少なくとも1つの層が紫外線吸収剤および/または赤外線吸収剤を含有していても良い。
あるいは、上述した基材フィルム、粘着層、及び防曇層の少なくとも1つのフィルムまたは層が、紫外線吸収剤および/または赤外線吸収剤を含有していても良い。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’―ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]、ベンゾフェノン化合物[2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等]、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物[2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−s−トリアジン等]及びシアノアクリレート化合物[エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等]等の有機物が挙げられる。紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、紫外線吸収剤は、ポリメチン化合物、イミダゾリン化合物、クマリン化合物、ナフタルイミド化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物、イソインドリノン化合物、キノフタロン化合物及びキノリン化合物から選ばれる少なくとも1種の有機色素であってもよい。紫外線吸収剤のうち好ましいのは、有機物である紫外線吸収剤であり、より好ましいのは、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物及びシアノアクリレート化合物から選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましいのは、ベンゾフェノン化合物である。ベンゾフェノン化合物は、有機無機複合防曇膜を形成するための塗工液に含まれるアルコール系溶媒への溶解性が良く、ポリビニルアセタール樹脂により均一に分散するため好ましい。
紫外線吸収剤は、ヒドロキシル基を有することが好ましく、紫外線吸収剤が有する1つのベンゼン骨格に、水酸基が2個以上結合したものがより好ましい。紫外線吸収剤は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは1.0〜40重量部、さらに好ましくは2〜35重量部の範囲で添加するとよい。
赤外線吸収剤としては、例えば、ポリメチン化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ナフトキノン化合物、アントラキノン化合物、ジチオール化合物、インモニウム化合物、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ピリリウム化合物、セリリウム化合物、スクワリリウム化合物、ベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収剤;酸化タングステン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、インジウム錫酸化物、アンチモン錫酸化物等の無機系赤外線吸収剤;等が挙げられる。赤外線吸収剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。赤外線吸収剤のうち好ましいのは、無機系赤外線吸収剤であり、より好ましいのは、インジウム錫酸化物及び/又はアンチモン錫酸化物である。
インジウム錫酸化物及び/又はアンチモン錫酸化物は、有機無機複合防曇膜を形成するための塗工液中での安定性が良く、ポリビニルアセタール樹脂により均一に分散するため好ましい。赤外線吸収剤は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1〜50重量、より好ましくは1.0〜40重量部、さらに好ましくは2〜35重量部の範囲で添加するとよい。
第1機能層2と第2機能層3とは隣接していなくてもよい。例えば、第1機能層2と第2機能層3の間にプライマー層や特定の波長を吸収する吸収層や変更層を設けてもよい。
<7.用途>
本実施形態に係るカバー部材も、上記第1実施形態と同様に、ドローン等の飛行体に設けられる撮像装置用のカバー部材や、監視カメラのカバー部材として用いることができる。特に、第2機能層3として、反射防止層が形成されていると、環境が変化する屋外での撮影が多い、飛行体の撮像装置用のカバー部材として好適に用いることができる。特に、飛行体が急上昇した場合には圧力が急激に変化する。ボイルシャルルの法則でも理解できるように圧力が低下すると温度は低くなる。そこで、本発明に係る防曇機能を持った透明積層体は好適に利用することができる。
[実施例]
以下、第2実施形態に係る実施例21〜27について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されない。
(実施例21)
実施例21として、以下のカバー部材を作製した。
(1)基材:厚みが2.8mmのフロートガラスを用いた。
(2)第1機能層:第1実施形態の実施例1で示した防曇層を、基材の第1主面に形成した。但し、この防曇層では、親水層は形成しなかった。膜厚は、8μm、屈折率は1.55であった。
(3)第2機能層:以下に示す単層の反射防止層を形成した。
防曇層を形成した後、以下のように反射防止層用の塗工液を調製した。まず、テトラエトキシシラン(TEOS)(東京化成工業社製)0.6g、メチルトリエトキ シシラン(MTES)(東京化成工業社製)1.18g、0.3質量%ギ酸(キシダ化学 社製)0.82g、中空シリカ粒子のゾル(日揮触媒化成社製、製品名:スルーリア4110、シリカ固形分:約25質量%)3g、及びエタノール(キシダ化学社製)22.4gを混ぜ、35℃で3時間反応させた。このようにして、実施例22に係る第2機能層用の塗工液を得た。中空シリカ粒子のゾルにおいて、中空シリカ粒子の平均粒子径は約50nmであり、シリカでできたシェルの厚みは10〜20nmであり、中空シリカ粒子の内部空間の最大寸法は約10〜30nmであり、中空シリカ粒子の屈折率は1.25であった。この塗工液における固形分は、TEOSに由来するシリカを0.6質量%含み、MTESに由来するポリメチルシルセスキオキサンを1.6質量%含み、中空シリカ粒子を2.6質量%含んでいた。実施例1に係る液状組成物の作製において加えられたTEOSの物質量に対するMTESの物質量の比は、7/3であった。TEOSに由来するシリカ及びMTESに由来するポリメチルシルセスキオキサンの固形分の合計の重量に対する中空シリカ粒子の重量の比は、1.3/1.1であった。
続いて、防曇層に対し、上記塗工液物をスピンコート法により塗布した。塗布直後の外観は良好で均一な塗膜が得られた。その後、オーブンで塗膜を200℃及び10分間の条件で乾燥させ、実施例22に係るカバー部材を得た。
この反射防止膜の膜厚は、100nm、屈折率は1.24±0.5であった。また、この反射防止膜を構成する材料の体積比は、次の通りである。つまり、中空シリカ粒子50vol%、バインダ23vol%、ボイド率23vol%であった。
(実施例22)
実施例22として、以下のカバー部材を作製した。
(1)基材:厚みが2.8mmのフロートガラスを用いた。
(2)第1機能層:第1実施形態の実施例1で示した防曇層を、基材の第1主面に形成した。但し、この防曇層では、親水層は形成しなかった。膜厚は、8μm、屈折率は1.55であった。
(3)第2機能層:以下に示す2層の反射防止層を形成した。
防曇層を形成した後、以下のように反射防止層用の塗工液を調製した。すなわち、中空シリカ粒子のゾルを加えなかったこと以外は、実施例21に係る塗工液と同様にして、第1層の塗工液を調製した。そして、この塗工液をスピンコート法により、防曇層上に塗布した。次に、オーブンで塗膜を200℃及び10分間の条件で乾燥させ、第1層を形成した。この第1層の屈折率は1.46であり、厚みは90nmであった。
そして、この第1層の上に、実施例21に係る塗工液と同様の塗工液をスピンコート法により塗布した。但し、実施例21に係る塗工液と比べ、中空シリカ粒子の割合、及びボイド率を増やしたものを用いた。次に、オーブンでこの塗膜を200℃及び10分間の条件で乾燥 させて第2層を形成した。この第2層の屈折率は1.16であり、厚みは95nmであった。
(実施例23〜27)
実施例23〜27として、以下のカバー部材を作製した。
(1)基材:厚みが1.1mmのGlanova(日本板硝子株式会社製)を用いた。
(2)第1機能層:第1実施形態の実施例1で示した防曇層を、基材の第1主面に形成した。但し、この防曇層では、親水層は形成しなかった。膜厚は、8μm、屈折率は1.55であった。
(3)第2機能層:以下に示す単層の反射防止層を形成した。
防曇層を形成した後、表10に示す組成(単位は質量%)の反射防止層用の塗工液を調製した。まず、テトラエトキシシラン(TEOS)(東京化成工業社製)、メチルトリエトキシシラン(MTES)(東京化成工業社製)、0.3質量%ギ酸(キシダ化学 社製)、中空シリカ粒子のゾル(日揮触媒化成社製、製品名:スルーリア4110、シリカ固形分:約25質量%)、溶媒、及びレベリング剤等を混ぜ、35℃で3時間反応させた。このようにして、実施例23〜27に係る第2機能層用の塗工液を得た。中空シリカ粒子のゾルにおいて、中空シリカ粒子の平均粒子径は約50nmであり、シリカでできたシェルの厚みは10〜20nmであり、中空シリカ粒子の内部空間の最大寸法は約10〜30nmであり、中空シリカ粒子の屈折率は1.25であった。
Figure 2021192090
表10に示す溶媒、レベリング剤等は、以下の通りである。このうち、E〜Hは、沸点が100℃以上の高沸点溶媒である。
A:メタノール
B:エタノール
C:2−プロパノール
D:1−プロパノール
E:1-ブタノール
F:1−メトキシ−2−プロパノール
G:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール
H:3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート
MIBK:メチルイソブチルケトン
KP−341:レベリング剤(信越化学工業社製)
BYK−378_10%:レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
続いて、防曇層に対し、実施例23に係る塗工液をスピンコート法により塗布し、実施例24〜27に係る塗工液をロールコート法により塗布した。塗布直後の外観は良好で均一な塗膜が得られた。その後、加熱炉で塗膜を120℃及び10分間の条件で乾燥させ、実施例24〜27に係るカバー部材を得た。
こうして形成された実施例24〜27のカバー部材の第2機能層に対し、呼気を吹き付け、防曇性能を評価したところ、いずれも曇りは生じなかった。
次に、実施例23及び26の片面反射率を測定した。結果は、図11に示すとおりである。実施例23及び26の可視光平均反射率は、それぞれ0.71%、0.31%であった。また、図示を省略するが、第2機能層を設けず、防曇層のみのカバー部材における反射率は、4〜5%であった。したがって、実施例23及び26のカバー部材では、反射率を大きく低減できることが分かった。
(実施例28〜30)
実施例28〜30として、以下のカバー部材を作製した。まず、防曇フィルム(富士フィルム社製、型番:MF−600)を準備した。このフィルムは、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムの表面を改質したことで防曇性を示す改質層(防曇層)を有するTACフィルムと、PETフィルムとを粘着層を介して貼り合わせることで一体化させたものである。具体的には、以下の構成を有するフィルムを準備した。保護フィルム(PE:60μm)/TAC改質層(5μm)/TAC(120μm)/粘着層(15μm)/PET(50μm)/粘着層(25μm)/保護フィルム(PET:38μm)。
次に、TAC改質層側の保護フィルム(PE:60μm)を剥離し、TAC改質層表面をコロナ放電処理した(信光電気計装社製、型番:コロナマスターPS−1M、14.5kW)。コロナ放電処理面に実施例21の塗布液をスピンコート法(5000rpm、20秒、室温)で、塗布した(実施例28)。120℃の焼成温度で10分間処理した。反射防止層を形成した面の片面反射率は、反射率測定装置(オリンパス社製、型番:USPM−RU III)を用いて測定した。本装置を用いると裏面反射光の影響を受けずに高精度な分光反射率測定が可能である。反射率測定器で得られた反射率から計算した屈折率は、1.2382、膜厚は107nmであった(表11)。さらに、スピンコートの回転数を変えて膜厚の異なる反射防止層をフィルム上に形成した(実施例29、実施例30)。
上記のように、TAC改質層(防曇層)の上に反射防止膜を形成した後、粘着層側の保護フィルム(PET:38μm)を剥離して、粘着層面をガラス基板(日本板硝子社製、製品名:Glanova、厚み:2.1mm)に貼付けた。こうして、実施例28〜30に係るカバー部材が完成した。続いて、以下のように評価した。
Figure 2021192090
実施例28〜30の反射防止膜を形成したフィルムの400〜700nmの片面反射率を図12に示す。反射防止膜を形成していない片面反射率を反射防止層無しフィルムとして示す。図12から明らかなように、本発明の反射防止膜を形成しない場合、すなわち、防曇層(TAC改質層)の片面反射率は、4%以上あるのに対し、実施例28〜30のように反射防止膜を防曇層(TAC改質層)上に形成した場合については、400〜700nmの範囲で、片面反射率は1%未満となり、著しい反射防止効果が認められた。
更に、実施例28〜30の反射防止膜を形成した防曇層に呼気を吹き付け、防曇性能を評価したところ、いずれも曇りは生じなかった。
<C.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
<1>
基材1は、樹脂材料とガラス板の複合材料であってもよく、あるいは、2枚のガラス板で中間膜を挟んだ合わせガラスでもよい。
<2>
基材1は、例えば、アンチグレア層(または、アンチグレア処理がなされた面)を有する鏡でもよい。
鏡は、使用者が手に触れる箇所で膜の剥がれが生じたり、長期間使用される場合が多く、表面の膜の剥がれに対する耐久性が求められる。そこで、上記のように、防曇層を、直接、基材である鏡に塗布すると、基材(ガラス板)と防曇層とがシロキサン結合により強固に結合するため、長期間の利用においても高い耐久性が期待できる。
また、鏡は、浴室や洗面台に用いた場合、特に高湿の環境であるため、高い防曇性が求められる。その一方で、防曇層が吸水性能だけを有するものであれば、飽和量を超えると防曇層の表面に水滴が発生し曇りの原因となる。そこで、防曇層の表面に、上記のような親水層が形成されていると、吸湿層が飽和した場合、表面に水膜が発生するので、例え、高湿の環境であっても、曇りによって像が見えなくなるのを避けることができる。なお、水膜が発生するとは、水の接触角が20度以下となる。また、親水層のみならず、撥水層を有していてもよい。ここでいう撥水層とは、水の接触角が90度以下となる層をいう。
基材として鏡を用いると、上述したPET等の基材フィルムを有さない防曇層を積層することが好ましい。基材フィルムがなければ、基材フィルムに起因する歪みを防止することができる。特に鏡の場合、像の明確性や高い低歪性が求められる。また、鏡では、入射光と反射光が防曇層を通過する。すなわち、光が防曇層を2回通過することになるので、特に基材フィルムを有さない防曇層は、歪みに対して有利である。なお、防曇層の厚みが、1〜20μmといった一定の厚みであると、曲げ剛性が1〜4GPaであるので、PET等の基材フィルムがなくても取扱いが可能となる。また、引張強度が高い防曇層の方が好適に用いることができる。
<3>
上記第2実施形態においては、第1機能層上に、反射防止層である第2機能層を積層した例を示したが、このような反射防止層を第1機能層として、基材1上に直接積層することもできる。この場合、第1機能層を基材上に直接積層するほか、粘着層、基材シート、及び第1機能層をこの順で積層したシート材を準備し、粘着層を基材に貼り付けることもできる。この場合、基材シートは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネートや、アクリル系樹脂で形成することができる。また、粘着層は、基材シートを基材1に十分な強度で固定できるものであればよい。具体的には、常温でタック性を有するアクリル系、ゴム系、及びメタクリル系とアクリル系のモノマーを共重合し、所望のガラス転移温度に設定した樹脂などの粘着層を使用できる。なお、反射防止層は、沸点が水の沸点よりも大きく、基材シートの耐熱温度以下である第2溶媒を以下含有することができる。
なお、この反射防止層である第1機能層は、2層で形成することもできる。すなわち、図8を用いて説明した第2機能層3と同じ構成にすることができる。
1 基板
11 第1主面
12 第2主面
2 第1機能層
3 第2機能層

Claims (76)

  1. 第1主面及び第2主面を有する透明の基板と、
    前記基板の第1主面に積層された、透明の第1機能層と、
    を備えている、透明積層体。
  2. 前記第1機能層は、防曇機能を有する、請求項1に記載の透明積層体。
  3. 前記第1機能層の表面粗さRaが、1〜1000nmである、請求項1または2に記載の透明積層体。
  4. 前記第1機能層は、
    第1主面及び第2主面を有する基材フィルムと、
    前記基材フィルムの第2主面に積層された粘着層と、
    前記基材フィルムの第1主面に積層された防曇層と、
    を備え、
    前記基材フィルムが、前記粘着層を介して、前記基板の第1主面に固定されている、請求項1から3のいずれかに記載の透明積層体。
  5. 前記第1機能層は、粘着層と、防曇層と、を備え、
    前記防曇層が、前記粘着層を介して、前記基板の第1主面に固定されている、請求項1から3のいずれかに記載の透明積層体。
  6. 前記第1機能層は防曇層を備え、
    前記防曇層が前記基板の第1主面に積層されている、請求項1から3のいずれかに記載の透明積層体。
  7. 前記防曇層は、吸湿性の樹脂材料を含有している吸湿層を有する、請求項4から6のいずれかに記載の透明積層体。
  8. 前記防曇層は、前記吸湿層と、前記吸湿層上に積層され、親水性を有する親水層と、を備えている、請求項7に記載の透明積層体。
  9. 前記防曇層の前記親水層は、下記式(A)で示されるポリエーテル変性ジメチルシロキサンを含有する、請求項8に記載の透明積層体。
    Figure 2021192090
    但し、mは2以上の整数,n,x,及びyは、独立に1以上の整数であり、
    1は、水素原子またはメチル基、R2は、炭素数が1〜3のアルキル基である。
  10. 前記式(A)において、
    mは1〜3の整数、
    nは3〜600の整数、
    y/(x+y)が0.01以上1未満、
    平均分子量が3,000〜300,000、である、請求項9に記載の透明積層体。
  11. 前記防曇層においては、前記吸湿層中に親水化剤が分散している、請求項7に記載の透明積層体。
  12. 前記防曇層は、沸点が100℃以上300℃以下の溶媒を含有している、請求項11に記載の透明積層体。
  13. 前記溶媒は、アルコール基を有している、請求項12に記載の透明積層体。
  14. 前記防曇層に対し、アルコールが浸漬した布によって所定回数の摩耗を行った後、当該防曇層が防曇性を有している、請求項11から13のいずれかに記載の透明積層体。
  15. 所定の恒温恒湿試験後、前記防曇層が防曇性を有している、請求項11から14のいずれかに記載の透明積層体。
  16. 前記防曇層は、単一層により形成されている、請求項11から15のいずれかに記載の透明積層体。
  17. 前記第1機能層が無機化合物を主成分とする、請求項1から6のいずれかに記載の透明積層体。
  18. 可視光透過率が85%以上であり、
    可視光反射率が10%以下である、請求項17に記載の透明積層体。
  19. 可視光波長域における透過率の最小値が、前記基板の透過率から5%以内である、請求項17または18に記載の透明積層体。
  20. 可視光波長域における反射率の最大値が、前記基板の反射率から5%以内である、請求項17から19のいずれかに記載の透明積層体。
  21. 可視光波長域での反射率について、
    1≦最大反射率/最小反射率≦1.5を充足する、請求項17から20のいずれかに記載の透明積層体。
  22. 前記第1機能層は、無機微粒子と、無機バインダとを含有する、請求項17から21のいずれかに記載の透明積層体。
  23. 前記第1機能層の膜厚は、前記無機微粒子の粒子径の2倍以下である、請求項22に記載の透明積層体。
  24. 前記無機微粒子は、SiO2により形成されている、請求項22または23に記載の透明積層体。
  25. 前記第1機能層における、前記SiO2の含有率が、28質量%以下である、請求項24に記載の透明積層体。
  26. 前記第1機能層は、光触媒微粒子を含有している、請求項22から25のいずれかに記載の透明積層体。
  27. 前記光触媒粒子は、チタン、タングステン、鉄のいずれかを主成分とする酸化物または酸窒化物により形成されている、請求項26に記載の透明積層体。
  28. 前記光触媒粒子の含有率は、40質量%以下である、請求項26または27に記載の透明積層体。
  29. 前記無機バインダの含有率は、30質量%以上である、請求項26から28のいずれかに記載の透明積層体。
  30. 所定時間、水に浸漬した後、前記第1機能層が防曇性を有している、請求項17から29のいずれかに記載の透明積層体。
  31. 前記第1機能層に対し、アルコールが浸漬した布によって所定回数の摩耗を行った後、当該第1機能層が防曇性を有している、請求項17から30のいずれかに記載の透明積層体。
  32. 前記第1機能層に対し、アルコールが浸漬した布によって所定回数の摩耗を行った後、紫外線を照射することで、当該第1機能層が防曇性を有している、請求項17から31のいずれかに記載の透明積層体。
  33. 所定の恒温恒湿試験後に、紫外線を照射すると、前記第1機能層が防曇性を有する、請求項17から32のいずれかに記載の透明積層体。
  34. 屋外に配置される、監視カメラのカバー部材として用いられる、請求項17から33のいずれかに記載の透明積層体。
  35. 前記監視カメラは紫外線照射装置を備えている、請求項34に記載の透明積層体。
  36. 前記第1機能層は、前記監視カメラ側を向くように配置される、請求項34または35に記載の透明積層体。
  37. 前記第1機能層は、前記監視カメラとは反対側を向くように配置される、請求項34に記載の透明積層体。
  38. 前記第1機能層上に積層され、透湿性を有する第2機能層をさらに備えている、請求項2から10のいずれかに記載の透明積層体。
  39. 前記第1機能層は、有機無機複合材料により形成され、
    前記第2機能層の屈折率は、前記第1機能層よりも小さい、請求項38に記載の透明積層体。
  40. 前記第2機能層は、単一層である、請求項38または39に記載の透明積層体。
  41. 前記第2機能層の屈折率は、1.10〜1.45である、請求項40に記載の透明積層体。
  42. 前記第1機能層の屈折率をXとしたとき、前記第2機能層の屈折率は、√X±0.1である、請求項41に記載の透明積層体。
  43. 前記第2機能層は、中空粒子と、前記中空粒子を結着するバインダーと、を含有している、請求項42に記載の透明積層体。
  44. 前記中空粒子の屈折率が、1.15〜2.70である、請求項43に記載の透明積層体。
  45. 前記中空粒子の平均粒径が、20〜100nmである、請求項43または44に記載の透明積層体。
  46. 前記中空粒子は、シリカ、フッ化マグネシウム、アルミナ、アルミノシリケート、チタニア、及びジルコニアからなる群から選択される、請求項43から45のいずれかに記載の透明積層体。
  47. 前記第2機能層は、沸点が100℃以上300℃以下の溶媒を含有している、請求項38から46のいずれかに記載の透明積層体。
  48. 前記溶媒は、3―メトキシー3メチルー1−ブタノールを主成分とする、請求項47に記載の透明積層体。
  49. 前記第2機能層は、前記溶媒を1ppb以上、5g/cm3以下含有する、請求項47または48に記載の透明積層体。
  50. 前記パインダーは、ポリシルセスキオキサン及びシリカの少なくとも一方を含有している、請求項43から49のいずれかに記載の透明積層体。
  51. 前記第2機能層のボイド率が、0〜70vol%である、請求項43から50のいずれかに記載の透明積層体。
  52. 前記第2機能層は、前記第1機能層上に積層される第1層と、前記第1層上に積層され、前記第1層よりも屈折率の低い第2層と、を備えている、請求項38または39に記載の透明積層体。
  53. 前記第1層の屈折率が、1.35〜1.55であり、
    前記第2層の屈折率が、1.10〜1.25である、請求項52に記載の透明積層体。
  54. 前記第2層は、中空粒子と、前記中空粒子を結着するバインダーと、を含有している、請求項53に記載の透明積層体。
  55. 前記中空粒子の屈折率が、1.15〜2.70である、請求項54に記載の透明積層体。
  56. 前記中空粒子の平均粒径が、20〜100nmである、請求項54または55に記載の透明積層体。
  57. 前記中空粒子は、シリカ、フッ化マグネシウム、アルミナ、アルミのシリケート、チタニア、及びジルコニアからなる群から選択される、請求項54から56のいずれかに記載の透明積層体。
  58. 前記パインダーは、ポリシルセスキオキサン及びシリカの少なくとも一方を含有している、請求項54から57のいずれかに記載の透明積層体。
  59. 前記第2層のボイド率が、0〜70vol%である、請求項54から58のいずれかに記載の透明積層体。
  60. 前記第1層は、前記第2層の前記バインダーを含有している、請求項54から59のいずれかに記載の透明積層体。
  61. 前記第2機能層の曲げ弾性率は、1〜10GPaである、請求項38から60のいずれかに記載の透明積層体。
  62. 前記第2機能層の曲げ弾性率は、前記第1機能層の曲げ弾性率と重複している、請求項38から61のいずれかに記載の透明積層体。
  63. 前記第1機能層の線膨張係数と、前記第2機能層の線膨張係数と、の差が、50ppm/℃以下である、請求項38から62のいずれかに記載の透明積層体。
  64. 前記第1機能層は、反射防止機能を有する、請求項1に記載の透明積層体。
  65. 前記第1機能層は、粘着層、基材シート、及び反射防止層がこの順で積層されたフィルムにより形成されている、請求項64に記載の透明積層体。
  66. 前記第1機能層の反射防止層の屈折率は、1.10〜1.45である、請求項65に記載の透明積層体。
  67. 前記第1機能層の反射防止層は、中空粒子と、前記中空粒子を結着するバインダーと、を含有している、請求項65または66に記載の透明積層体。
  68. 前記中空粒子の屈折率が、1.15〜2.70である、請求項67に記載の透明積層体。
  69. 前記中空粒子の平均粒径が、20〜100nmである、請求項67または68に記載の透明積層体。
  70. 前記反射防止層は、沸点が水の沸点よりも大きく、前記基材の耐熱温度以下である第2溶媒を以下含有している、請求項65から69のいずれかに記載の透明積層体。
  71. 前記第2溶媒は、3―メトキシー3メチルー1−ブタノールが主成分である、請求項70に記載の透明積層体。
  72. 前記第1機能層に、前記第2溶媒が、1ppb以上、5g/cm3%以下含有されている、請求項70または71に記載の透明積層体。
  73. 前記基板は、ガラスである、請求項2から72のいずれかに記載の透明積層体。
  74. 前記基板は、フロート法により製造されたフロートガラスであり、前記第1主面における酸化スズの濃度が、前記第2主面における酸化スズの濃度よりも低い、請求項2から73のいずれかに記載の透明積層体。
  75. 前記基板は、フロート法により製造されたフロートガラスであり、前記第1主面における酸化スズの濃度が、前記第2主面における酸化スズの濃度よりも高い、請求項2から73のいずれかに記載の透明積層体。
  76. 前記基板の第2主面に積層される、第3機能層をさらに備えている、請求項1から75のいずれかに記載の透明積層体。
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