まず、本発明に係る改修作業方法を適用するダブルデッキエレベーターの構造を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る改修作業方法を適用するダブルデッキエレベーターの全体構成を示す概略図である。
図1において、ダブルデッキエレベーターは、ビル等の建屋(図示せず)にその鉛直方向(垂直方向)に沿って形成された昇降路1と、昇降路1内を昇降する外かご2と、昇降路1内を昇降するつり合いおもり4と、一端が外かご2に連結され、他端がつり合いおもり4に連結される主索3と、昇降路1の上部に設置された機械室5とを備えている。
外かご2とつり合いおもり4は、主索3の両端に連結(吊持)され、主索3の移動に応じて昇降路1内を互いに反対方向に昇降する。機械室5には、駆動装置6と、そらせ車7と、制御装置8とが設置される。
駆動装置6は、外かご2の上方に配置されて、主索3の一部が巻き掛けられ、主索3を駆動して外かご2とつり合いおもり4とを釣瓶式に昇降させる。そらせ車7は、つり合いおもり4上方の、駆動装置6の近傍に配置され、主索3が巻き掛けられる。なお、外かご2は、昇降路1内に設けられた一対の外かご用ガイドレール(図示せず)にガイドされて昇降路1内を昇降する。また、つり合いおもり4は、昇降路1内に設けられたつり合いおもり用ガイドレール(図示せず)にガイドされて昇降路1内を昇降する。
制御装置8は、ダブルデッキエレベーターの運転を統括制御する装置であって、駆動装置6を制御するために、駆動装置6とケーブル36aを介して接続される。また、制御装置8は、ケーブル36bを介して、制御装置18に接続される。制御装置18は、外かご2の上部に配置されて、制御装置8とケーブル36bを介して情報の送受信を行い、外かご2内の上かご(乗りかご)12と下かご(乗りかご)13の昇降を制御する。なお、制御装置8は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、入力装置、出力装置、通信装置および記憶装置を備えたコンピュータ装置で構成される。また、制御装置18は、例えば、CPU、メモリ、入出力インタフェース等を備えたコンピュータ装置で構成される。
上かご12は、外かご2内部の上方の領域に配置される内かごであり、下かご13は、外かご2内部の下方の領域に配置される内かごである。上かご12と下かご13は、外かご2内部の領域を上下方向(鉛直方向)に変位可能に配置されている。
なお、本実施例では、上方階f1、f2の乗り場階の間隔は、下方階f3、f4の乗り場階の間隔よりも大きく設定されている。例えば、上方階f1、f2の乗り場階の間隔をH1、下方階f3、f4の乗り場階の間隔をH2とすると、H1>H2である。
図2は、本実施例によるダブルデッキエレベーターの外かご2の構成を示す概略図である。図2において、外かご2は、上部に設けられた上梁2a、中間部に設けられた中間梁2d、下部に設けられた下梁2e、及び上梁2aと中間梁2dと下梁2eとを接続する一対の縦枠2bを備え、略直方体形状の枠体として構成される。
上梁2aの上部には、かご位置調整用巻上機11が載置される。かご位置調整用巻上機11は、かご位置調整駆動シーブ11aを備え、かご位置調整駆動シーブ11aを正回転又は逆回転させることで、上かご12と下かご13を外かご2の内部で上下に変位させる。
中間梁2dには、上かご12が外かご2内で下降しすぎた非常時に、上かご12を下から支えて、上かご12と中間梁2dとの衝突を緩和するための緩衝器(バッファ)24aが備えられている。
下梁2eには、下かご13が外かご2内で下降しすぎた非常時に、下かご13を下から支えて、下かご13と下梁2eとの衝突を緩和するための緩衝器(バッファ)24bが備えられている。これら緩衝器24a、24bとしては、ばねや油圧ダンパー等を用いることができる。
上かご12の下部には、2つの上かごプーリー9a、9bが取り付けられる。下かご13の下部には、2つの下かごプーリー10a、10bが取り付けられる。上かご12と下かご13との間隔は、索状体である、複数本のかご位置調整ロープ17により変えることができる。
かご位置調整ロープ17は、その両端部が外かご2に固定され、その中間部が、上かご下の上かごプーリー9a、9bを介してかご位置調整駆動シーブ11aに巻き掛けられた後、下かご下の下かごプーリー10a、10bに巻き掛けられている。具体的には、かご位置調整ロープ17は、一方の端部が、弾性体19を介して上梁2aに取り付けられ、中間部が、上かごプーリー9a、9bとかご位置調整駆動シーブ11aに巻き掛けられている。すなわち、かご位置調整ロープ17は、その一部が、上かご12を下方から支持(吊持)するように配置されている。
さらに、かご位置調整ロープ17は、かご位置調整駆動シーブ11aに巻き掛けられた後、下かご13下方に位置する中間部が、下かごプーリー10a、10bに巻き掛けられ、他方の端部が、中間梁2dに弾性体19を介して固定されている。すなわち、かご位置調整ロープ17は、その一部が、下かご13を下方から支持(吊持)するように配置されている。
弾性体19には、ばね、ゴムまたは弾性樹脂を用いることができ、本実施例では、ばねを用いる。
また、緩衝器24a、24bと対向する上かご12と下かご13の底面には、所定以上の強度を有する緩衝器当接部241a、241bがそれぞれ設けられており、非常時に緩衝器24aと上かご12とが接触したり、緩衝器24bと下かご13とが接触したりしても、互いに損傷することは無い。
制御装置18は、制御装置8の指示に従い、かご位置調整用巻上機11を回転駆動する。かご位置調整駆動シーブ11aは、かご位置調整用巻上機11の回転駆動に応じて回転する。例えば、かご位置調整駆動シーブ11aは、かご位置調整用巻上機11が正回転駆動した場合、正回転し、かご位置調整用巻上機11が逆回転駆動した場合、逆回転する。かご位置調整ロープ17は、かご位置調整駆動シーブ11aの回転状態に応じて移動する。このため、例えば、かご位置調整駆動シーブ11aが正回転した場合、外かご2の内部で上かご12と下かご13が互いに離れる方向に移動し、かご位置調整駆動シーブ11aが逆回転した場合、外かご2の内部で上かご12と下かご13が互いに近づく方向に移動する。すなわち、かご位置調整駆動シーブ11aの回転状態に応じてかご位置調整ロープ17が移動すると、外かご2の内部で上かご12と下かご13が互いに反対方向に移動する。
なお、建屋の中ほどには、昇降路1を間にして、一対の建屋梁1c、1dが相対向して配置されており、各建屋梁1c、1dは、建屋に固定されている。
次に、本実施例におけるダブルデッキエレベーターの改修作業方法であって、例えば、かご位置調整ロープの交換方法を含む改修作業方法を、図13のフローチャートを基に図3〜図12を参照しながら説明する。
作業者(図示せず)は、図13に示す作業の補助を行う。まず、内かごOPENの作業として、作業者の操作を基にかご位置調整用巻上機11が駆動すると、上かご12と下かご13が互いに離れる方向に移動する(S1)。その後、上かご12と下かご13の移動により、上かご12底部側と下かご13底部側に作業スペースが確保された場合、図3に示すように、作業者が、下かご下のバッファ台(下梁2e)からバッファ(緩衝器24b)を取外す(S2)。
次に、図3に示す通り、作業者が、下かご13の底面の緩衝器当接部241bと下梁2eとの間に支持材25を配置し、下かご下のバッファ台(下梁2e)に支持材25を固定する(S3)。その後、緩衝器当接部241bと支持材25の先端とが接触した場合、作業者が、かご位置調整用巻上機11の駆動を停止する。
次に、図4、図5に示す通り、上かご下の空間部であって、上かご12の底部側と中間梁2dとの間に、建屋梁1cと建屋梁1dとを連結する長さを有する、一対の仮受け梁100を作業者が設置し、各仮受け梁100の両端側を建屋梁1c、1dにそれぞれ固定する(S4)。なお、外かご用ガイドレール50a、50bは、レールブラケット51a、51bを介して建屋に固定される。
次に、図6に示す通り、主索3が外かご2を下方に変位させる方向に、駆動装置6を駆動し、ロープテンションを緩める(かご位置調整ロープ17の張力を下げる)(S5)。駆動装置6の駆動により、外かご2が下方に変位すると、上かご12の自重(荷重)を仮受け梁100で支持し、下かご13の自重(荷重)を支持材25で支持することになり、上かご12と下かご13からかご位置調整ロープ17に作用していた張力が除去される。かご位置調整ロープ17に作用する張力が除去された後、作業者が、駆動装置6の駆動を停止する。
次に、新旧ロープ(かご位置調整ロープ)を1本つなぎ合わせ、ロープの送り出し、巻き取りでロープ交換を作業者が行う(S6)。具体的には、図7に示すように、かご位置調整ロープ17のうち、下かご13側に位置するかご位置調整ロープ17のロープ端部(1本)を弾性体19から取外し、取外されたかご位置調整ロープ(旧かご位置調整ロープ)17のロープ端部と、送り出しドラム29に巻かれている新かご位置調整ロープ27の端部とを連結するとともに、上かご側に位置するかご位置調整ロープ17のロープ端部(1本)を弾性体19から取外し、取外されたかご位置調整ロープ(旧かご位置調整ロープ)17のロープ端部を巻き取りドラム28に取り付ける。
この状態とした後、図中矢印の方向に、作業者が、送り出しドラム29と巻き取りドラム28を駆動し、新かご位置調整ロープ27を送り出しドラム29から送り出しながら、かご位置調整ロープ17を巻き取りドラム28に巻き付けて回収することで、新旧ロープ(かご位置調整ロープ)の交換作業が実行される。
そして、作業者が、送り出しドラム29から送り出された新かご位置調整ロープ27の後端部を下かご側の弾性体19に取り付け、送り出しドラム29から送り出された新かご位置調整ロープ27の先端部(送り出し初め部位)を上かご側の弾性体19に取り付ける。これにより、1本目のかご位置調整ロープの新旧交換が完了する。
その後、新かご位置調整ロープ27の本数分、上記と同様の交換作業が実行される。
次に、図8に示すように、主索3が外かご2を上方に変位させる方向に、作業者が、駆動装置6を駆動し、ロープテンション(新かご位置調整ロープ27の張力)を掛ける(S7)。これにより、上かご12と下かご13は、その底部側が新かご位置調整ロープ27によって支持される。その後、作業者が、駆動装置6の駆動を停止する。
次に、図9に示すように、作業者が、上かご下の仮受け梁100を建屋梁1c、1dから取外す(S8)。
次に、内かごCLOSEの作業として、作業者が、かご位置調整用巻上機11を駆動し、上かご12と下かご13を互いに近づく方向に移動させる(S9)。その後、図10に示すように、下かご底部側に作業スペースが確保され、下かご13の底面と支持材25との間に空間部が形成された場合、作業者が、かご位置調整用巻上機11の駆動を停止し、下かご下の支持材25を下梁2eから取外す(S10)。その後、作業者が、下かご下のバッファ台(下梁2e)にバッファ(緩衝器24b)を取り付ける(S11)。これにより、かご位置調整ロープの交換作業は完了する。
また、ロープの交換作業(かご位置調整ロープ17を新かご位置調整ロープ27に交換する交換作業)をする場合、上かご12を仮受け梁100で支持し、下かご13を支持材25で支持する代わりに、下かご13を仮受け梁100で支持し、上かご12を支持材25で支持する方法を採用しても同様の効果が得られる。
なお、上記実施例では、図5に示したように、仮受け梁100の両端側を、建屋梁1c、1dに固定したが、仮受け梁100の両端側を建屋梁1c、1dに固定するのが難しい場合は、図11に示すように、建屋に固定されて、外かご用ガイドレール50a、50bを支持するレールブラケット51a、51bに、中間梁2dと交差する方向であって、建屋梁1c、1dに平行な支持材101a、101bを固定し、仮受け梁100の両端側を支持材101a、101bに固定し、上かご12を仮受け梁100を介して支持材101a、101bで支持することができる。
また、上記実施例では、図6に示したように、下かご13を支持する緩衝器24bを取外して、代わりに支持材25を設ける構成としているが、図12に示すように、外かご2の一対の縦枠2bのうち、下かご13の底部側に対向する部位に形成された突起やヒンジ等(図示せず)に、仮受け梁100の両端側を固定し、下かご13を、下かご下に配置された仮受け梁100で支持することもできる。この場合、緩衝器24bを取外すことなく、下かご13を、下かご下に配置された仮受け梁100で支持することが可能となる。
また、図12の例とは逆に、外かご2の一対の縦枠2bのうち、上かご12の底部側に対向する部位に形成された突起やヒンジ等(図示せず)に、仮受け梁100の両端側を固定し、上かご12を、上かご下に配置された仮受け梁100で支持し、下かご13を、建屋梁1c、1dに固定した仮受け梁100で支持する構成でも、同様の効果が得られる。
本実施例によれば、かご位置調整ロープ17を新かご位置調整ロープ27に交換する、ロープの交換時に、上かご12と下かご13のうち少なくとも一方のかごを仮受け梁100を介して建屋で支持することができる。このため、ロープの交換時に、ジャッキ装置を設けることなく、かご位置調整ロープ17に作用していた張力を除去することができ、円滑なロープ交換作業を行うことが可能になる。また、かご位置調整ロープ17を交換する前後の作業手順は、各かごの底面から緩衝器24a、24bまでのクリアランスに左右されない為、作業手順の統一化を図ることが可能である。さらに、クリアランス毎に嵩上げ台を準備することが不要となり、コスト低減も可能である。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、CPUがプログラムに従って処理を実行することで、駆動装置6やかご位置調整用巻上機11aの駆動を制御することも可能である。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記録して置くことができる。