JP2019193918A - ガス分離用複合膜 - Google Patents
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複合膜の透水量が10L/m2・day以下(測定圧力:0.1MPa、測定温度:25℃)であることを特徴とする、ガス分離用複合膜。
本実施形態のガス分離用複合膜(「複合膜」または「ガス分離膜」とも記載する)は支持体上にビニルアセタール系共重合体がコーティングされている。支持体は微多孔膜であるのが好ましく、この支持体の表面にビニルアセタール系共重合体が付着している。複合膜は任意の形態であってよく、例えば中空糸膜、平膜、管状膜等が挙げられ、有効表面積が広く耐圧性が高いという利点を持つため、中空糸膜であるのが好ましく、内径が約10〜3000μmで外径が約30〜7000μmの非対称中空糸膜であることがより好ましい。複合膜の厚みは、特に限定されないが、20μm〜4000μmであるのが好ましい。
本実施形態の複合膜を構成する支持体(ビニルアセタール系共重合体がコーティングされる前の支持体)は、微多孔(細孔)を有する膜(「微多孔膜」とも記載する)であるのが好ましい。支持体は任意の形態であってよく、例えば中空糸膜、平膜、管状膜等が挙げられ、中空糸膜であるのが好ましい。また、微多孔膜は、膜厚方向に細孔の孔径が変化する非対称な構造を有する中空糸膜が好ましい。具体的には、中空糸膜内の細孔の孔径が、中空糸膜の内側面から外側面に向かって漸次的に小さくまたは大きくなる傾斜構造を有するのが好ましい。支持体の孔径は、例えば、支持体の窒素透過速度(P’N2)が、300×10−5〜3000×10−5cc(STP)/cm2・sec・cmHgとなるように形成されているのが好ましい。
本実施形態の複合膜は、支持体上にビニルアセタール系共重合体がコーティングされているのが好ましい。
本実施形態の一態様として、支持体の製造に用いることができるポリイミド溶液の調製方法について説明する。ポリイミド溶液の調製は、有機極性溶媒中にテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを所定の組成比で加え、室温程度の低温で重合反応させてポリアミド酸を生成し次いで加熱して加熱イミド化するか、又は無水酢酸等の脱水剤およびピリジンなどを加えて化学イミド化する2段法、または、有機極性溶媒中にテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを所定の組成比で加え、好ましくは100〜250℃、より好ましくは130〜200℃程度の高温で重合イミド化反応させる1段法によって好適に行われる。加熱によってイミド化反応を行うときは脱離する水またはアルコールを除去しながら行うことが好適である。有機極性溶媒に対するテトラカルボン酸成分とジアミン成分の使用量は、溶媒中のポリイミドの固形分濃度が5〜50重量%程度好ましくは5〜40重量%になるようにするのが好適である。テトラカルボン酸成分とジアミン成分との混合比は、例えば、略等モル、好ましくはテトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比[ジアミン成分のモル数/テトラカルボン酸成分のモル数]が好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05である。
本実施形態における支持体(微多孔膜)は、一態様として、上述のようなポリイミド溶液を用いて、乾湿式相転換法によって好適に得ることができる。乾湿式相転換法は、ポリイミド溶液を気相中に吐出したのち、凝固液(ポリイミド溶液の溶媒とは相溶し、ポリイミドは不溶な溶剤)と接触させて相転換させながら膜を形成する公知の方法である。
本実施形態のガス分離用複合膜の製造方法の一態様は、ビニルアセタール系共重合体を溶媒に溶解した浸漬液中に、上記支持体を浸漬する工程(以下、「浸漬工程」とも記載する)を含む。浸漬工程により、支持体の表面に該ビニルアセタール系共重合体を付着させる。浸漬液の溶媒としては、アルコール系(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等)、ケトン系(例えば、アセトン等)、芳香属系溶媒、もしくはこれらのうちの2種以上を混合した混合溶媒、またはこれらに水を加えた含水溶媒が挙げられる。これらのうち、エタノールおよび/またはメタノールを含む溶媒が好ましく、エタノールを含む溶媒がより好ましく、30体積%以上のエタノールを含むエタノール水溶液またはエタノール単独の溶媒がさらに好ましい。ビニルアセタール系共重合体の浸漬液中の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜3重量%が好ましい。浸漬工程は、支持体中の微細孔に浸漬液が十分行き渡らせるよう行う。浸漬工程は常温(約10〜30℃程度)で行うのが好ましいが、浸漬液が常温で粘性が高い場合は、適宜加温して浸漬液の粘性を下げて浸漬処理を行ってもよい。浸漬時間は、特に限定されないが、例えば、30秒〜180分が好ましい。浸漬工程における浸漬液の溶媒の組成、ビニルアセタール系共重合体の濃度等を調整することにより、複合膜の透水量を調整することができる。
約10本の中空糸膜と、ステンレスパイプと、エポキシ樹脂系接着剤とを使用して有効長が80mmの透過性能評価用のエレメントを作成し、これをステンレス容器に装着してペンシルモジュールとした。このペンシルモジュールの中空糸の内側へ、15℃の飽和水蒸気を含む窒素ガスを5kgfG/cm2の圧力で一定量供給し、膜の出口側から得られる乾燥ガスを、製品ガスとした。膜の透過側を大気圧とし、更に膜の供給側と非透過側に十分な水蒸気の分圧差を稼ぐため、水蒸気濃度の低い製品ガスの20%を更に透過側へ供給した。供給ガス、製品ガスの露点は、鏡面式の露点計で検出し、水蒸気分圧を求めた。測定した水蒸気量(水蒸気分圧)と供給ガス量及び有効膜面積から膜の水蒸気透過速度(P’H2O)を算出した。尚、これらの測定は35℃でおこなった。
約10本の中空糸膜と、ステンレスパイプと、エポキシ樹脂系接着剤とを使用して有効長が80mmの透過性能評価用のエレメントを作成し、これをステンレス容器に装着してペンシルモジュールとした。このペンシルモジュールの中空糸の内側へ5kgfG/cm2の窒素純ガスを供給して透過流量を測定した。測定した透過窒素ガス量と供給圧力及び有効膜面積から窒素ガスの透過速度を算出した。尚、これらの測定は35℃でおこなった。
約10本の中空糸膜と、ステンレスパイプと、エポキシ樹脂系接着剤とを使用して有効長がおよそ80mmの透水性能評価用のエレメントを作製し、これをステンレス容器に装着してペンシルモジュールとした。ペンシルモジュールの中空糸の内側に0.1MPaの圧力で水を供給して膜を透過した水の質量を測定した。膜を透過した水の質と有効膜面積から透水量を算出した。尚、これらの測定は25℃でおこなった。
(ポリイミド溶液の調製)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDA)100mol%と、4,4−ジアミノ−ジフェニルエーテル(44DADE)90mol%と、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)10mol%とを、溶媒のパラクロロフェノール(以下、PCP)と共にセパラブルフラスコ中にて重合温度190℃で12時間重合し、ポリマー濃度が12重量%の、100℃における溶液粘度が1700ポイズのポリイミド溶液を得た。ポリイミド溶液の溶液粘度は、回転粘度計(ローターのずり速度1.75sec−1)を用い温度100℃で測定した。
得られたポリイミド溶液を、400メッシュの金網で濾過したあと、中空糸紡糸ノズル(円形開口部外径1000μm、円形開口部スリット幅200μm、芯部開口部外径600μm)から吐出させ、吐出した中空糸状体を窒素雰囲気中に通した後、0℃の75重量%エタノール水溶液からなる凝固液に浸漬し湿潤糸とした。これを50℃のエタノール中に2時間浸漬し脱溶媒処理を完了し、更に、70℃のイソオクタン中に3時間浸漬洗浄して溶媒を置換後、100℃で30分乾燥し、その後200℃で30分の熱処理を行った。得られた中空糸膜はいずれも、外径寸法370μm、内径寸法260μm、膜厚55μmのものであり、これを支持体とした。
ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート〔商品名:AEA(登録商標)、三菱ケミカルフーズ(株)製、以下、「AEA」と記載する。〕をエタノール中0.1wt%となるように溶解して浸漬液とした。この浸漬液中に、製造した支持体を室温にて60秒間浸漬した。その後、100℃にて風乾により溶剤の除去を行い、AEAがコーティングされた複合膜を得た。
ポリイミドの組成を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド溶液を調製し、これを用いて中空糸膜である支持体を作製した。エタノールを80体積%含むエタノール水中、AEAを0.25wt%となるように溶解して浸漬液を調製し、この浸漬液中に実施例1と同様にして支持体を浸漬した後、乾燥を行い、AEAがコーティングされた複合膜を得た。得られた複合膜の性能について上述の方法により測定を行った。
ポリイミドの組成を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド溶液を調製し、これを用いて中空糸膜である支持体を作製した。エタノールを50体積%含むエタノール水中、AEAを0.25wt%となるように溶解して浸漬液を調製し、この浸漬液中に実施例1と同様にして支持体を浸漬した後、乾燥を行い、AEAがコーティングされた複合膜を得た。得られた複合膜の性能について上述の方法により測定を行った。
ポリイミドの組成を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド溶液を調製し、これを用いて中空糸膜である支持体を作製した。エタノールを80体積%含むエタノール水中、AEAを0.5wt%となるように溶解して浸漬液を調製し、この浸漬液中に実施例1と同様にして支持体を浸漬した後、乾燥を行い、AEAがコーティングされた複合膜を得た。得られた複合膜の性能について上述の方法により測定を行った。
(ポリイミド溶液の調製)
s−BPDAを100mol%と、44DADEを80mol%と、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(34DADE)を20mol%とを、溶媒のパラクロロフェノール(以下、PCP)と共にセパラブルフラスコ中にて重合温度190℃で12時間重合し、ポリマー濃度が13重量%のポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液にグリセリンを4wt%となるように添加し、190℃で1時間攪拌することにより、最終的に100℃における溶液粘度が1200ポイズ、ポリマー濃度が12.5重量%のポリイミド溶液を得た。ポリイミド溶液の溶液粘度は、回転粘度計(ローターのずり速度1.75sec−1)を用い温度100℃で測定した。
実施例5と同様にしてポリイミド溶液を調製し、これを用いて中空糸膜である支持体を作製した。エタノール中、AEAを1wt%となるように溶解して浸漬液を調製し、この浸漬液中に実施例1と同様にして支持体を浸漬した後、乾燥を行い、AEAがコーティングされた複合膜を得た。得られた複合膜の性能について上述の方法により測定を行った。
AEAのコーティングを行わなかった以外は実施例1と同様に支持体を作製し、この中空糸膜である支持体の性能について、上述の方法により測定を行った。比較例1の中空糸膜は窒素の透過速度が大きすぎて水蒸気透過速度が測定できなかった。
支持体として、ポリプロピレン(PP)からなる多孔膜を用いた。エタノール中、AEAを1wt%となるように溶解して浸漬液を調製し、この浸漬液中に実施例1と同様にして支持体を浸漬した後、乾燥を行い、AEAがコーティングされた複合膜を得た。得られた複合膜の性能について上述の方法により測定を行った。比較例2の複合膜は、窒素の透過速度は測定器の測定限界以上であり、窒素の透過速度が大きすぎて水蒸気透過速度測定ができなかった。
実施例5と同様にしてポリイミド溶液を調製し、これを用いて中空糸膜である支持体を作製した。水中、重量平均分子量が2,000のポリエチレングリコール(「PEG」と記載)を1wt%となるように溶解して浸漬液を調製し、この浸漬液中に実施例1と同様にして支持体を浸漬した後、乾燥を行い、PEGがコーティングされた複合膜を得た。得られた複合膜の性能について上述の方法により測定を行った。
実施例5と同様にしてポリイミド溶液を調製し、これを用いて中空糸膜である支持体を作製した。水中、重量平均分子量が1,000,000のポリアクリル酸(「PAA」と記載)を1wt%となるように溶解して浸漬液を調製し、この浸漬液中に実施例1と同様にして支持体を浸漬した後、乾燥を行い、PAAがコーティングされた複合膜を得た。得られた複合膜の性能について上述の方法により測定を行った。
実施例5と同様にしてポリイミド溶液を調製し、これを用いて中空糸膜である支持体を作製した。水中、ポリビニルピロリドン(PVP K25、和光純薬製、以下「PVP」と記載)を1wt%となるように溶解して浸漬液を調製し、この浸漬液中に実施例1と同様にして支持体を浸漬した後、乾燥を行い、PVPがコーティングされた複合膜を得た。得られた複合膜の性能について上述の方法により測定を行った。
支持体としてポリスルホン(PSF)からなる多孔膜を用いた。メタノール中、AEAを1wt%となるように溶解して浸漬液を調製し、この浸漬液中に実施例1と同様にして支持体を浸漬した後、室温(約23℃)で乾燥を行い、AEAがコーティングされた複合膜を得た。得られた複合膜の性能について上述の方法により測定を行った。比較例6の複合膜は、窒素の透過速度は測定器の測定限界以上であり、窒素の透過速度が大きすぎて水蒸気透過速度が測定できなかった。
Claims (5)
- 支持体上にビニルアセタール系共重合体がコーティングされた複合膜であって、
複合膜の透水量が10L/m2・day以下(測定圧力:0.1MPa、測定温度:25℃)であることを特徴とする、ガス分離用複合膜。 - 前記支持体がポリイミドで構成されることを特徴とする、請求項1に記載のガス分離用複合膜。
- 除湿膜または加湿膜であることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス分離用複合膜。
- 水蒸気透過速度(P’H2O)が300×10−5cc(STP)/cm2・sec・cmHg以上であり、且つ窒素透過速度(P’N2)が1.0×10−5cc(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス分離用複合膜。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス分離用複合膜を用いて、複数のガスを含む混合ガスから特定のガスを選択的に分離回収する方法。
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