JP5077257B2 - ポリイミドガス分離膜およびガス分離方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、ここで示された芳香族ポリイミドからなるポリイミド中空糸膜は、最高の水蒸気透過速度(P’H2O )が、1.47×10-3cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHgであり、そのエタノール蒸気に対する水蒸気の分離度(透過速度:P’H2O /P’EtOH)は22に過ぎなかった。また、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸から誘導されるテトラカルボン酸骨格、および3,4’−ジアミノジフェニルエーテル60モル%および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル40モル%から誘導されるジアミン骨格を含む芳香族ポリイミドからなるポリイミド中空糸膜は、水蒸気透過速度(P’H2O )が、1.24×10-3cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHgであった。
また、本発明のガス分離方法は、上記の優れた本発明のガス分離膜を使用しているので、有機蒸気分離を、容易に、効率的に長期間行うことが可能である。
本発明のガス分離膜を形成する前記一般式(1)で示される反復単位からなる芳香族ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸類を含むテトラカルボン酸成分と、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(34DADE)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(44DADE)およびその他の芳香族ジアミンからなるジアミン成分とを、フェノール系化合物などの有機溶媒中、重合、イミド化して製造することができる芳香族ポリイミドである。なお、その他の芳香族ジアミンは、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとは異なる芳香族ジアミンである。
2価の基B1および2価の基B2が合計で90モル%を超えると、高温耐久性が不十分になりがちであるため好ましくなく、また10モル%未満であると、透過分離性能が低くなりがちであるため好ましくない。
B1/B2が10/1より大きい、もしくは、1/10より小さいと、透過分離性能が低くなりがちであるため好ましくない。
芳香族ポリイミドの製造に用いられるテトラカルボン酸成分としては、前記のビフェニルテトラカルボン酸類のほかに、ピロメリット酸類、ベンゾフェノンテトラカルボン酸類、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸類、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸類、2,2−ビス(ジカルボキシフェニル)プロパン類、2,2−ビス(ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン類、2,2−ビス〔(ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン類、2,2−ビス〔(ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン類、および、それらの酸二水物や酸エステル化物などを、少ない割合(好ましくは、テトラカルボン酸成分中20モル%以下、特に10モル%以下の割合)で使用することができる。
有機物水溶液から連続的に水蒸気を除去するには、水蒸気の透過速度が大きいことが望ましい。水蒸気の透過速度が前記の値を下回る場合には、水蒸気除去に要する時間を長くしたり、水蒸気除去に用いる膜面積を大きくする必要があるため、工業的な実施に著しく不利となる。
耐溶剤指標が高いことは、高温の有機蒸気および水蒸気が存在する環境においても、ガス分離膜が変化しないことを示している。
ガス分離膜を形成する芳香族ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との略等モルを、有機溶媒中で重合・イミド化反応させて、ポリイミド溶液として得ることができる。
本発明の非対称膜(緻密層と多孔質層とを有する非対称性構造をもつガス分離膜)は、ポリイミド溶液を用いて、相転換法によって得ることができる。相転換法は、ポリマー溶液を凝固液と接触させて相転換させながら膜を形成する公知の方法である。本発明ではいわゆる乾湿式法が好適に採用される。乾湿式法は、膜形状にしたポリマー溶液の表面の溶媒を蒸発させて薄い緻密層を形成し、次いで凝固液(ポリマー溶液の溶媒とは相溶し、ポリマーは不溶な溶剤)に浸漬し、その際生じる相分離現象を利用して微細孔を形成して多孔質層を形成させる相転換法であり、Loebらが提案(例えば、米国特許第3133132号明細書を参照)したものである。
本発明の非対称膜は、乾湿式紡糸法を採用することによって、中空糸膜として好適に得ることができる。乾湿式紡糸法は、紡糸ノズルから吐出して中空糸状の目的形状としたポリマー溶液に乾湿式法を適用して非対称中空糸膜を製造する方法である。より詳しくは、ポリマー溶液をノズルから中空糸状の目的形状に吐出させ、吐出直後に空気または窒素ガス雰囲気中を通した後、ポリマー成分を実質的には溶解せず且つポリマー溶液の溶媒とは相溶性を有する凝固液に浸漬して非対称構造を形成し、その後乾燥し、さらに必要に応じて加熱処理して分離膜を製造する方法である。紡糸ノズルは、ポリイミド溶液を中空糸状体として押し出すものであればよく、チューブ・イン・オリフィス型ノズルなどが好適である。通常、押し出す際のポリイミド溶液の温度範囲は約20℃〜150℃、特に30℃〜120℃が好適である。また、ノズルから押し出される中空糸状体の内部へ気体または液体を供給しながら紡糸が行われる。
本発明のガス分離方法においては、本発明のガス分離膜の一方の側に、有機化合物を含む液体混合物を加熱蒸発させて生成した有機蒸気混合物(原料ガス)を、好ましくは70℃以上、より好ましくは80〜200℃、特に好ましくは100〜160℃の温度で接触させて、高透過成分を選択的に透過させ、ガス分離膜の透過側から『高透過成分に富んだ有機蒸気』を得、一方ガス分離膜の非透過側(原料ガスの供給側)から『高透過成分が実質的に除去された有機蒸気』を得て、前記有機蒸気混合物のガス分離を行うものである。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
6FDA:2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物
DSDA:3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
34DADE:3,4’−ジアミノジフェニルエーテル
44DADE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
TPEQ:1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
HFBAPP:2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン
BAPP:2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン
APN:1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタリン
(芳香族ポリイミド溶液の調製)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)100モル%からなるテトラカルボン酸成分28.9gと、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(34DADE)20モル%、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(44DADE)20モル%および1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)60モル%からなるジアミン成分25.5gとを、パラクロロフェノール(PCP)248gとともに、加熱装置と攪拌機と窒素ガス導入管および排出管とが付設されたセパラブルフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気中で攪拌しながら、190℃の温度で10時間重合することにより、PCP中のポリイミドの固形分濃度(ドープ濃度)が17重量%である芳香族ポリイミドのPCP溶液を調製した。この芳香族ポリイミド溶液の100℃での粘度は2000poiseであった。なお、この溶液粘度は、回転粘度計(ローターのずり速度1.75sec-1)を用いて温度100℃で測定した値である。
前記芳香族ポリイミドのPCP溶液を400メッシュのステンレス製金網でろ過して、紡糸用ドープとした。このドープを中空糸紡糸ノズルを備えた紡糸装置に仕込み、中空糸紡糸ノズルから窒素雰囲気中に中空糸状に吐出させ、次いで中空糸状成形物を75重量%エタノール水溶液からなる一次凝固浴に浸漬し、更に一対の案内ロールを備えた二次凝固浴(凝固液:75重量%エタノール水溶液)中の案内ロール間を往復させて凝固を完了させ、湿潤状態の非対称構造をもつ中空糸膜をボビンに巻き取った。この非対称中空糸膜をエタノール中で十分洗浄し、次いでイソオクタンでエタノールを置換した後、100℃でイソオクタンを蒸発乾燥した。さらに220℃〜270℃で加熱処理を行い、芳香族ポリイミドによって構成された非対称中空糸膜(外径:約500μm、内径:約300μm)を得た。
引張試験機を用いて中空糸の破断伸度を調べた。有効長20mm、引張速度10mm/分で測定した。測定は23℃で行った。
中空糸膜を、密閉容器を用い、150℃の60重量%のエタノール水溶液中に20時間浸漬処理し、その処理前後の中空糸膜の破断伸度の変化を調べ、処理後の破断伸度の処理前の破断伸度に対する割合を、中空糸膜の耐溶剤指標とした。その結果を下記表1に示す。
前述のようにして製造した中空糸膜6本を束ね裁断して中空糸膜の糸束を形成し、その糸束の一方の端を中空糸端部が開口するようにエポキシ樹脂で固着し、他方の端を中空糸端部が閉塞されるようにエポキシ樹脂で固着して中空糸膜エレメントを製造した。次いで、『原料の混合ガス供給口、透過ガス排出口、および非透過ガス排出口を有する容器』に前記糸束エレメントを内設して、『中空糸膜の有効長さ:約8.0cm、および、有効面積約7.5cm2 である糸束エレメント』を内蔵するガス分離膜モジュールを製造した。
60重量%濃度のエタノール水溶液を大気圧下において蒸発器で気化させて『エタノール蒸気と水蒸気とを含む有機蒸気混合物』を製造し、さらに、ヒーターで加熱することにより100℃とした前記有機蒸気混合物を、前記のガス分離膜モジュールに供給し、前記糸束エレメントを構成している中空糸膜の外側の表面(中空糸膜の供給側)に接触させ、中空糸膜の内側(中空糸膜の透過側)を3mmHgの減圧に維持して、有機蒸気分離を行った。
下記表1に示す種類と組成とを有するジアミン成分およびテトラカルボン酸成分を使用し、実施例1と同様にして、芳香族ポリイミドのPCP溶液をそれぞれ調製した。これらの各芳香族ポリイミド溶液の固形分濃度(ドープ濃度)および100℃での粘度を下記表1に示す。
これらの各芳香族ポリイミド溶液を使用し、実施例1と同様にして、非対称中空糸膜を作製し、該中空糸膜からガス分離膜モジュールをそれぞれ製造した。
これらの各ガス分離膜モジュールについて、実施例1と同様にして、蒸気透過性能〔水蒸気の透過速度P’H2O と、エタノール蒸気に対する水蒸気の分離度(α:P’H2O /P’EtOH〕を評価した。さらに、中空糸の破断伸度および耐溶剤指標を評価した。その結果を下記表1に示す。
s−BPDA 100モル%からなるテトラカルボン酸成分28.95gと、TPEQ100モル%からなるジアミン成分29.23gとを、PCP 210gとともに、加熱装置と攪拌機と窒素ガス導入管および排出管とが付設されたセパラブルフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気中で攪拌しながら、190℃の温度で10時間重合したが、固形分が析出し、均一な芳香族ポリイミド溶液を得ることができなかったため、中空糸を紡糸することができなかった。
s−BPDA 100モル%からなるテトラカルボン酸成分28.95gと、34DADE 100モル%からなるジアミン成分20.02gとを、PCP 210gとともに、加熱装置と攪拌機と窒素ガス導入管および排出管とが付設されたセパラブルフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気中で攪拌しながら、190℃の温度で10時間重合したが、重合が十分に進行せず、芳香族ポリイミド溶液の粘度が十分に上がらなかったため、中空糸を紡糸することができなかった。
s−BPDA 100モル%からなるテトラカルボン酸成分28.95gと、44DADE 100モル%からなるジアミン成分20.02gとを、PCP 210gとともに、加熱装置と攪拌機と窒素ガス導入管および排出管とが付設されたセパラブルフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気中で攪拌しながら、190℃の温度で10時間重合することにより、PCP中のポリイミドの固形分濃度が17重量%である芳香族ポリイミドのPCP溶液を調製した。この芳香族ポリイミド溶液の100℃での粘度は1800poiseであった。この芳香族ポリイミド溶液を紡糸したが、乾燥処理時に中空糸が著しく収縮した。この中空糸を使用し、実施例1と同様にして、ガス分離膜モジュールを製造し、水蒸気の透過速度P’H2O の測定を行ったところ、水蒸気は殆ど透過しなかった。
実施例1で作製した中空糸膜を用い、メタノールと水の分離透過性能を評価した。分離ターゲットをメタノールと水蒸気とを含む混合蒸気とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜の分離透過性能を調べたところ、水蒸気の透過速度P’H2O は1.38×10-3cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHg、メタノール蒸気に対する水蒸気の分離度は24であった。
実施例1で作製した中空糸膜を用い、イソプロピルアルコールと水の分離透過性能を評価した。分離ターゲットをイソプロピルアルコールと水蒸気とを含む混合蒸気とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜の分離透過性能を調べたところ、水蒸気の透過速度P’H2O は2.45×10-3cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHg、イソプロピルアルコール蒸気に対する水蒸気の分離度は2000以上であった。
実施例1で作製した中空糸膜を用い、酢酸エチルと水の分離透過性能を評価した。分離ターゲットを酢酸エチルと水蒸気とを含む混合蒸気とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜の分離透過性能を調べたところ、水蒸気の透過速度P’H2O は3.35×10-3cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHg、酢酸エチル蒸気に対する水蒸気の分離度は2000以上であった。
Claims (10)
- 下記一般式(1)で示される反復単位からなる芳香族ポリイミドで形成されたガス分離膜。
- 緻密層と多孔質層とを有する非対称性構造をもつ分離膜である、請求項1または2記載のガス分離膜。
- 形状が中空糸膜である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス分離膜。
- 水蒸気の透過速度P’H2O が、1.0×10-3cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHg〜10.0×10-3cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHgであり、かつ水蒸気の透過速度P’H2O とエタノール蒸気の透過速度P’EtOHとの比(P’H2O /P’EtOH)が100以上である、請求項1〜4項のいずれか一項に記載のガス分離膜。
- 下記の測定方法により測定した耐溶剤性指標が50%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス分離膜。
耐溶剤性指標の測定方法
ガス分離膜を150℃の60重量%のエタノール水溶液中に20時間浸漬処理し、その処理前後のガス分離膜の破断伸度の変化を調べ、処理後の破断伸度の処理前の破断伸度に対する割合を算出し、耐溶剤性指標とする。 - 有機化合物を含む液体混合物を加熱蒸発させて生成した有機蒸気混合物を、ガス分離膜の供給側に接触させた状態で、高透過成分を選択的に透過させ、ガス分離膜の透過側から高透過成分に富んだ透過蒸気を得、ガス分離膜の供給側から高透過成分が実質的に除去された非透過蒸気を得るガス分離方法において、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガス分離膜を用いることを特徴とするガス分離方法。
- 前記有機化合物が、沸点が0℃以上200℃以下である、請求項7記載のガス分離方法。
- 前記有機化合物が、炭素数1〜6の低級脂肪族アルコール、炭素数3〜6の脂肪族ケトン類または、炭素数2〜7のエステル類である、請求項7または8記載のガス分離方法。
- 前記高透過成分が水蒸気である、請求項7〜9のいずれか一項に記載のガス分離方法。
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