以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1Aは、半導体装置100の一例の断面図を示す。半導体装置100は、放熱基板110と、半導体チップ112と、筐体130と、温度検出部132と、熱電部材140と、熱電部材142とを備える。
半導体チップ112は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等の半導体素子を有する。半導体チップ112は、おもて面と裏面にそれぞれ電極を有する、トランジスタやダイオードなどの縦型の半導体素子を含んでよい。半導体チップ112は、スイッチング動作時に発熱する場合がある。一例において、半導体チップ112の温度は、熱電対を用いて測定される。半導体チップ112は、熱電対を接続するための導電性パッド120を有してよい。半導体チップ112は、第1の半導体チップの一例である。
温度検出部132は、半導体チップ112の温度を検出する。本例の温度検出部132は、半導体チップ112と温度検出部132との温度差ΔTjを検出する。温度検出部132は、温度検出部132の温度Tjと温度差ΔTjとに基づいて、半導体チップ112の温度Tj+ΔTjを検出する。温度検出部132は、熱電対を接続するための2つの導電性パッド150を有してよい。本例の温度検出部132は、温度検出用ダイオード等の温度検出素子を用いて温度Tjを検出し、熱電対を用いて温度差ΔTjを検出する。温度検出部132は、熱電対を用いることにより、温度差ΔTjの検出用の増幅回路を有する必要がない。
熱電部材140および熱電部材142は、熱電対として機能する。熱電部材140および熱電部材142は、互いに異なる材料を有する。熱電部材140および熱電部材142は、半導体チップ112と温度検出部132とを電気的に接続する。熱電部材140および熱電部材142は、共通の導電性パッドに接続される。例えば、熱電部材140の一端および熱電部材142の一端は、半導体チップ112の導電性パッド120から引き出される。また、熱電部材140の他端および熱電部材142の他端はそれぞれ、温度検出部132の2つの導電性パッド150から引き出されてよい。
熱電部材140および熱電部材142には、ゼーベック効果により、半導体チップ112と温度検出部132との温度差ΔTjに応じた電位差が生じる。熱電部材140と熱電部材142との間の電位差に基づいて、温度検出部132は、半導体チップ112と温度検出部132との間の温度差ΔTjを算出することができる。
例えば、熱電部材140は、銅、およびニッケル−クロム合金等のうちの少なくとも1つを含む。熱電部材140は、熱電対の+脚として機能する。熱電部材142は、銅−ニッケル合金、およびニッケル合金のうちの少なくとも1つを含んでよい。熱電部材142は、熱電対の−脚として機能する。
筐体130は、半導体チップ112および温度検出部132を収容する。筐体130は、絶縁性の材料を有する。筐体130は、熱伝導性が低く、耐熱性の高い樹脂等の材料を有してよい。例えば、筐体130は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)である。温度検出部132は、筐体130上に設けられる。
放熱基板110は、筐体130の内壁190内に設けられる。放熱基板110は、絶縁層114およびベースプレート116を有する。放熱基板110上には、半導体チップ112が設けられている。放熱基板110の熱伝導率は、筐体130の熱伝導率より高い材料で設けられる。これにより、放熱基板110は、半導体チップ112で発生した熱を半導体装置100の外部に放熱する。
ベースプレート116は、熱伝導性および放熱性を有する。一例において、ベースプレート116は、アルミニウム、銅合金等を含む。ベースプレート116の下面は、半導体装置100の下面に露出し、さらにヒートシンク等の放熱部材に接続される。ベースプレート116に接続されたヒートシンクは、半導体チップ112から伝導した熱を外部に放散する。
絶縁層114は、ベースプレート116の一方の面に設けられる。絶縁層114は、筐体130の熱伝導率より高い熱伝導率の材料を含み、一例として、絶縁層114は、熱伝導性フィラーを含有した有機絶縁材、および、窒化アルミニウムまたは酸化アルミニウム等のセラミックス材料を含む。本例の絶縁層114は、ベースプレート116と半導体チップ112との間に設けられる。
リードフレーム170は、放熱基板110と半導体チップ112との間に設けられる。半導体チップ112は、接着部材180でリードフレーム170に接続される。リードフレーム170は、導電性ワイヤ176によりリードフレーム174と接続される。
リードフレーム172およびリードフレーム174は、半導体装置100の外部と電気的に接続される。リードフレーム172は、筐体130と温度検出部132との間に設けられる。温度検出部132は、接着部材180でリードフレーム172に接続される。リードフレーム172は、導電性ワイヤ176により温度検出部132と接続され、温度検出部132からの信号を外部に出力する。
一例において、リードフレーム170は、リードフレーム172より熱伝導率の高い部材で製造されてよい。これにより、リードフレーム170は、半導体チップ112の熱を放熱基板110に伝導しやすくなる。一方、リードフレーム172は、筐体130の熱を温度検出部132に伝導しにくくなり、温度検出部132の温度変化を低減することができる。
封止材160は、半導体チップ112および温度検出部132の周囲を覆う。封止材160は、樹脂等の絶縁性の材料を含む。一例において、封止材160は、放熱基板110よりも熱伝導率が低い材料を含む。これにより、半導体チップ112で発生した熱が、放熱基板110に優先的に放熱される。
接着部材180は、はんだ等の導電性の接着部材であってよい。接着部材180は、熱伝導率の高い材料を含むことが好ましい。
本例の筐体130は、放熱基板110よりも熱伝導率が低い材料で設けられる。これにより、半導体チップ112で発生した熱が、放熱基板110に優先して放熱されやすくなる。これにより、半導体チップ112で発生した熱が、温度検出部132側に伝導されにくくなる。
半導体チップ112と温度検出部132との間は、熱伝導率の低い封止材160等の材料で封止される。従って、温度検出部132は、半導体チップ112の発熱の影響を受けにくくなる。本例の封止材160は、リードフレーム170とリードフレーム172との間にも設けられる。これにより、各リードフレームを通じた温度検出部132への熱伝導を低減することができる。
また、半導体チップ112の上面は、温度検出部132の上面と異なる平面上に上面を有する。半導体チップ112および温度検出部132の上面が同一平面上にある場合と比較して、半導体チップ112と温度検出部132との距離を大きくしやすくなる。半導体チップ112の発熱の影響が温度検出部132に伝わりにくくなる。
本例の半導体装置100は、熱電対として機能する熱電部材140および熱電部材142を有するので、半導体チップ112の温度変化を発生する起電力を増幅せずに大きな起電力を発生させることができる。従って、半導体装置100は、半導体チップ112の温度変化を精密に測定することができるので、過熱限界に近い温度において、より正確なタイミングで過熱保護のための警告を発することができる。これにより、半導体チップ112の過熱限界に近い値まで動作可能範囲を広げることができる。
図1Bは、半導体装置100の図1Aとは別の例の断面図を示す。図1Bにおいては、半導体チップ112と、温度検出部132との距離を離間するために好適な実施形態が示される。
本例の半導体チップ112は、図1Aの場合と比較して、温度検出部132が設けられた側と逆側の方向にずらした位置に配置されている。即ち、本例の半導体チップ112は、温度検出部132とは逆側の内壁190に近い位置に配置されている。これにより、温度検出部132は、半導体チップ112の発熱の影響を受けにくくなる。
本例の導電性ワイヤ176は、半導体チップ112の上方にまたがってリードフレーム174に接続される。即ち、導電性ワイヤ176とリードフレーム170との接続点は、半導体チップ112と温度検出部132との間に設けられている。半導体チップ112を温度検出部132の設けられた側と逆側の内壁190に隣接させて配置し、半導体チップ112の上面を温度検出部132の上面と異なる平面上に配置することにより、半導体チップ112と温度検出部132との距離を大きく離間している。従って、半導体チップ112から温度検出部132への熱伝導が低減され、温度検出部132の温度変化が低減される。
図2は、半導体装置100の回路の一例を示したブロック図である。同図は、半導体チップ112および温度検出部132が有する回路をブロック図で示している。本例の半導体チップ112は、RC−IGBT210を含むが、これに限られない。
RC−IGBT210は、トランジスタ部212およびダイオード部214を同一のチップに有する。トランジスタ部212は、IGBTを含んでよい。ダイオード部214は、還流ダイオード(FWD)を含んでよい。
温度検出部132は、温度差検出回路222と、演算回路224と、温度検出回路226と、アラーム出力回路228と、温度警報出力用端子230とを有する。温度差検出回路222は、熱電部材140および熱電部材142により、半導体チップ112と接続されている。温度差検出回路222は、熱電部材140および熱電部材142の電位差に応じた演算により温度差ΔTjを検出する。
半導体チップ112の動作時の温度上昇ΔTjは、125度以下であってよく、150度以下であってよく、200度以下であってもよい。例えば、半導体チップ112の動作時に熱電部材140と熱電部材142との間に生じる電位差は、1V以上、10V以下である。
温度検出回路226は、温度検出部132の温度Tjを検出する。温度検出部132は、半導体チップ112よりも発熱しにくい。温度検出部132は、半導体チップ112の発熱の影響を受けにくいことが好ましい。これにより、半導体装置100の動作時であっても、温度検出部132の温度変化が半導体チップ112の温度変化よりも小さくなる。温度検出部132の温度変化は、1度以下であってよく、5度以下であってもよい。
例えば、温度検出回路226は、温度検出素子240が検出した電圧を増幅し、増幅された電圧に基づいて温度検出部132の温度Tjを検出する。温度検出部132の温度変化が小さいので、温度検出素子240の電圧を増幅しても測定誤差が小さい。温度検出素子240は、一例として温度検出用のダイオードである。
演算回路224は、温度差検出回路222および温度検出回路226と接続されている。演算回路224は、温度Tjに温度差ΔTjを加算することにより、半導体チップ112の温度Tj+ΔTjを算出する。
アラーム出力回路228は、警報信号を出力する。アラーム出力回路228は、温度警報出力用端子230に接続されている。例えば、アラーム出力回路228は、温度Tj+ΔTjが予め定められた閾値を超えた場合に、温度警報出力用端子230から異常値を示す警報信号を出力する。温度警報出力用端子230は、半導体チップ112を駆動する外部回路に接続されていてよい。外部回路は、温度警報出力用端子230からTj+ΔTjが過熱保護温度TjOHを超えたことを示す警報信号を受信した場合、半導体チップ112の動作を停止する。
本例の温度検出部132は、温度検出素子240を用いて温度Tjを検出し、熱電対を用いて温度差ΔTjを検出する。ここで、温度Tjは、半導体チップ112の発熱の影響を受けにくいので変動しにくい。一方、温度差ΔTjは、半導体チップ112の発熱により変動しやすい。温度検出部132は、熱電対を用いて比較的変動の大きな温度差ΔTjを検出することにより、半導体チップ112の発熱の影響を低減することができる。温度検出部132は、温度検出部132の温度を温度検出素子240を用いて検出するものの、半導体チップ112の発熱の影響が小さいので、温度検出誤差を生じにくい。温度検出部132において、温度差検出回路222が設けられた領域は、温度検出回路226および温度検出素子240が設けられた領域と半導体チップ112との間に配置されてよい。
図3は、比較例に係る半導体装置300の断面図である。半導体装置300は、放熱基板110と、放熱基板110の上方に設けられた半導体チップ312および温度検出部332を備える。
半導体チップ312は、導電性パッド320を有する。導電性パッド320から温度検出部332へと接続用ワイヤ330が接続される。温度検出用ダイオード410の正極側から接続用ワイヤ330が引き出されている。
一方、半導体装置100は、導電性パッド120から熱電部材140および熱電部材142の二本のワイヤが引き出されている。熱電部材140および熱電部材142が熱電対として動作するために、半導体チップ112と温度検出部132との間は、異なる熱電部材で接続されている。
図4は、比較例に係る半導体装置300の回路の一例を示したブロック図である。同図は、半導体チップ312と温度検出部332とを有する回路をブロック図で示している。
半導体チップ312は、RC−IGBT210を含む。ただし、半導体チップ312が含む回路は異なる回路であってもよい。
温度検出部332は、温度検出回路420およびアラーム出力回路228を有する。アラーム出力回路228は、OPアンプ等を含む増幅回路422を含む。
半導体チップ312がRC−IGBT210を含む場合、半導体チップ312は、トランジスタ部212およびダイオード部214を同一のチップ内の回路に含む。
半導体チップ312は、図2の実施形態に係る熱電部材140および熱電部材142の代わりに温度検出用ダイオード410を含む。温度検出用ダイオード410の正極側は、接続用ワイヤ330を用いて温度検出部332に接続される。
接続用ワイヤ330は、温度検出部332の増幅回路422に接続される。温度検出用ダイオード410の負極側は、外部に接続されてよく、さらに、負極側は接地されてもよい。
温度検出用ダイオード410の温度特性により、温度検出用ダイオード410の正極と負極との間に、温度検出用ダイオード410の接続された半導体チップ112の温度Tj+ΔTjに応じた起電力が生じる。当該起電力により発生した電圧は、例えば0.7Vから1.0V程度の大きさであり、増幅回路422により増幅される。
温度検出回路420は、増幅回路422により増幅された電圧値から、半導体チップ312のTj+ΔTjに相当する温度の絶対値を読み取ることができる。この構成においては、半導体チップ312と温度検出部332の温度差ΔTjでなく、半導体チップ312の温度Tj+ΔTjに比例する電圧を増幅して読み取る。
図4の実施形態では、温度Tj+ΔTjに比例する電圧を熱電対より低い起電力の温度検出用ダイオード410に生じる電圧を増幅して読み取ることで温度を検出している。従って、温度検出回路420の測定に伴う誤差は、温度検出用ダイオード410の特性により生じる誤差と、増幅回路422の特性により生じる誤差との両方の影響を受け、大きな値となる。
一方、半導体装置100は、ΔTjに比例した電圧を熱電対で検出する。熱電対の起電力は、温度検出用ダイオード410の起電力より大きく、増幅回路を要せず、増幅回路の増幅に伴う誤差を生じない。従って、測定誤差が少ない精密な測定が可能となる。
図5は、半導体チップ112がトランジスタ部212およびダイオード部214を含む例の上面図である。半導体チップ112がRC−IGBT210を含む場合、半導体チップ112上面に長方形の領域を占めるFWDを含むダイオード部214が並び、それ以外の部分にIGBTを含むトランジスタ部212が配置される。
ダイオード部214の上方には、RC−IGBT210の外部へと延伸するダイオード部用ワイヤ510がはんだボール512により接続されてよい。導電性パッド120は、ダイオード部214の上面に配置されている。導電性パッド120から熱電部材140および熱電部材142が引き出されている。
図5においては、ダイオード部214が2つある例を例示しているが、2つに限定されない。導電性パッド120、熱電部材140および熱電部材142は、より発熱し易い位置、または、熱が蓄積し易い位置に存在するダイオード部214に設けられてよいが、導電性パッド120、熱電部材140および熱電部材142の設けられる位置および個数は限定されない。
近年、半導体の集積度向上の要求により、半導体チップ112全体のサイズを小さくする要求が存在する。トランジスタ部212およびダイオード部214を比較した場合、構造上の理由からダイオード部214のサイズが優先的に低減される場合がある。
例えば、ダイオード部214のサイズが小さくなると、ダイオード部214の熱容量が低減する。トランジスタ部212およびダイオード部214はともに動作時に発熱する回路であるが、RC−IGBTにおいて、ダイオード部のサイズをトランジスタ部212に対して相対的に低減した場合には、ダイオード部214の温度変化が大きくなる。
このため、半導体チップ112がRC−IGBT210を有する場合には、導電性パッド120は、ダイオード部214に設けられてよい。これにより、トランジスタ部212より温度変化し易いダイオード部214の温度変化を測定することが可能となり、精密な過熱保護が実現できる。
図6は、半導体装置100が半導体チップ112の他に半導体チップ610を有する実施形態を示す。半導体装置100は、半導体チップ112の他に半導体チップ610を有してよい。
一例として、半導体チップ112はトランジスタ部212を含み、半導体チップ610はダイオード部214を含む。トランジスタ部212およびダイオード部214が異なるチップに設けられる場合、半導体チップ112および半導体チップ610のそれぞれにおいてチップサイズの低減および集積度の向上が図られる。
トランジスタ部212およびダイオード部214が異なるチップに設けられる場合、導電性パッド120は、トランジスタ部212に設けられてよい。トランジスタ部212は、熱に対してダイオード部214より過熱に弱い部品であることが多い。トランジスタ部212の過熱を監視することで、回路により十分な過熱保護を与えることが可能となる。
導電性パッド120をトランジスタ部212に設けた上で、ダイオード部214にも導電性パッド120に相当する導電性パッドが設けられてもよい。これにより、回路全体に対し、さらに過熱保護を与えることができる。製造コストおよび回路配置上のスペースとのバランスを考慮の上で、設けられる導電性パッドの数は増減されてよい。
図7は、図5のA−A'断面に沿って得られるA−A'断面図である。半導体チップ112は半導体基板700を有する。
半導体基板700は、ダイオード部214においてn−型のドリフト領域710を有する。それぞれのp型ボディ領域720は、ドリフト領域710内に金属層770の下面に接するように設けられる。
さらに、トランジスタ部212において、半導体基板700の上面に接する部分に、p型ボディ領域720一つ毎に2箇所のn+型のエミッタ領域730が設けられる。ゲート電極740を覆う層間絶縁膜742は、エミッタ領域730の上面に、異なるp型ボディ領域720内のエミッタ領域730にわたって設けられる。
ダイオード部214において、それぞれのp型ボディ領域720の間にまたがってダイオード部絶縁膜744が設けられる。金属層770は、半導体基板700の上面、層間絶縁膜742、ダイオード部絶縁膜744の上面を覆って設けられる。
金属層770は、エミッタ電極として動作する。ダイオード部用ワイヤ510は、はんだボール512によって金属層770に接続される。
ドリフト領域の下部の半導体基板700の下面と接する領域には、トランジスタ部212においては、p+型のコレクタ領域750が設けられる。一方、ダイオード部214においては、n+型のカソード領域760が設けられる。
図8は、図5のB−B'断面の一実施形態を示す。図8において、ダイオード部214の上面に、導電性パッド120が形成されている。
ダイオード部214において複数のp型ボディ領域720上面に絶縁膜810が設けられている。導電性パッド120は、金属層770の一部を分離することにより設けられる。即ち、半導体基板700上面に金属層770を提供する工程は、ダイオード部214の上方に導電性パッド120を提供する工程を含む。
熱電部材140および熱電部材142が、導電性パッド120の上方に接続されている。図8における導電性パッド120は金属層770と同一の材料によって設けられ、導電性パッド120の形成に別個のプロセスを有しないため、プロセス全体を簡略化することができて、コストを低減できる。
図8に係る実施形態において、トランジスタ部212は、トランジスタ部212における半導体基板700の上面に設けられた金属層770を含む。金属層770は、トランジスタ部212のエミッタ電極として機能する。
ダイオード部214は、半導体基板700の上面に金属層770を含む。金属層770は、半導体基板700の上面において、絶縁膜810が設けられている領域以外の領域に設けられている。半導体基板700内のキャリアの受け渡しは、絶縁膜810の下部においても他の部分同様に行われる。従って、絶縁膜810を設けてもダイオード部214の機能は影響を受けない。
図9は、図8とは別の実施形態に係る図5のB−B'断面図を示す。図9の実施形態においては、B−B'断面において、金属層770は、トランジスタ部212およびダイオード部214にわたる。ダイオード部214の上面に設けられた金属層770の上面に、さらに絶縁パッド910が設けられている。導電性パッド120は、絶縁パッド910の上面に設けられる。
図10は、半導体チップ112の持つ過熱保護機能の動作シーケンスを示す図である。半導体チップ112に対して、入力信号Vinは常に一定のパルス間隔で入力される。
半導体チップ112は、トランジスタ部212およびダイオード部214等の発熱するスイッチング素子を有している。時刻t1において、半導体チップ112のチップ温度Tj+ΔTjが予め定められた警報レベルに達した場合、アラーム出力回路228は警報信号の値を変化させ、信号を受け取った外部回路が警報を発する。
時刻t2において、半導体チップ112のチップ温度Tj+ΔTjが予め定められた過熱保護温度TjOHに達すると、アラーム出力回路228の送出する保護アラーム信号の値が変化し、異常を示す値となり、半導体チップ112の電流が切断される。半導体チップ112の電流が切断されると、半導体チップ112は発熱しなくなり、半導体チップ112の温度Tj+ΔTjが下がり始める。
時刻t3において、半導体チップ温度Tj+ΔTjが予め定められた過熱保護リセットレベルまで下がると、保護アラーム信号の値が正常値に戻る。時刻t3においては、安全のために、半導体チップ112に電流は導通されない。
時刻t4において、半導体チップ温度Tj+ΔTjが予め定められた警報リセットレベルにまで下がった場合において、警報信号の値が変化し、警報の送信が停止される。t4を経過すると、半導体チップ112の導通電流は、再びスイッチング素子に流れ始める。以上のように、半導体チップ温度Tj+ΔTjが過熱状態になることが防がれる。
図11は、半導体チップ112の過熱保護の概念図である。半導体チップ112は、温度Tj+ΔTjが動作温度Tjopの範囲で過熱の危険性なく動作することができる。
Tjopの下限は、半導体チップ112に含まれる半導体チップ112の動作時接合温度下限Tjop(min)である。Tjopの上限は、半導体チップ112の動作時接合温度Tjop(max)である。
Tjop(max)は、図10の警報レベルと同一の温度であってよい。この場合、半導体チップ112がTjop(max)まで温度上昇すると、アラーム出力回路228は、警報信号を送信する。
半導体チップ112の最大接合温度Tj(max)は、半導体チップ112上の回路に損傷を与えることがなく動作可能な最大温度である。回路全体がTj(max)まで温度上昇しないよう、温度が監視されている。
半導体チップ112の温度Tj+ΔTjが過熱保護温度TjOHに達した場合、半導体チップ112の電流が切断される。この場合、TjOp(max)からTjOHまでの温度範囲が警報範囲996となる。TjOHは、温度ばらつきによる動作可能温度領域のマージン990の分、Tj(max)から低い値に設定される。
マージン990は、熱電部材140および熱電部材142の特性ばらつき992および温度検出部132の測定ばらつき994を含む。測定ばらつき994は、増幅回路422の特性により生じる誤差を含む。
マージン990は、特性ばらつき992および測定ばらつき994の和以上の幅を有する。マージン990を特性ばらつき992および測定ばらつき994の和未満に設定すると、温度検出部132により、半導体チップ温度Tj+ΔTjがTjOHに達したと判断された時点で、実際には半導体チップ112の温度がTj(max)を超えている可能性を生じるためである。
熱電部材140および熱電部材142を用いる実施形態においては、特性ばらつき992および測定ばらつき994の両方が、温度検出用ダイオード410を用いる比較例に比べて小さくできる。熱電対は比較例の温度検出用ダイオード410より温度に対して精度のよい反応特性を有するので、特性ばらつき992が小さくなる。比較例では、半導体装置300が増幅回路422含むために測定ばらつき994も大きくなるが、熱電対を用いた場合には、増幅回路422を要しないため、測定ばらつき994も小さくできる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。