JP2019183133A - 硬化性樹脂組成物およびそれを用いた立体物の製造方法 - Google Patents

硬化性樹脂組成物およびそれを用いた立体物の製造方法 Download PDF

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卓之 平谷
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Abstract

【課題】耐熱性と靱性がともに優れた硬化物を形成可能であり、立体造形に好適な硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】カチオン重合反応性基として1個のオキセタニル基及び少なくとも1個の水酸基を含有するオキセタン化合物(A)と、前記オキセタン化合物(A)以外のカチオン重合性化合物であって、カチオン重合反応性基を2個以上有するカチオン重合性化合物(B)と、ゴム粒子(C)と、硬化剤(D)と、を含有し、前記オキセタン化合物(A)と前記カチオン重合性化合物(B)の総量100質量部に対して、前記オキセタン化合物(A)が30質量部以上60質量部以下であり、前記ゴム粒子(C)の表面に前記オキセタン化合物(A)または前記カチオン重合性化合物(B)と反応し得る基を有する硬化性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化性樹脂組成物及びそれを用いた立体物の製造方法に関する。
光硬化性樹脂組成物に、所定の立体形状を再現するように選択的に光照射して硬化樹脂層を形成する工程を繰り返すことにより、当該硬化樹脂層が一体的に積層されてなる立体造形物を形成する光学的立体造形法が知られている(特許文献1参照)。この光学的立体造形法の代表的な例を以下で、説明する。
まず、容器内に収容された光硬化性樹脂組成物の液面に、紫外線レーザー等の光を用いて、作製する立体造形物の断面パターンを描くように選択的に照射することにより、所定の断面パターンを有する硬化樹脂層を形成させる。次いで、この硬化樹脂層の上に、一層分の光硬化性樹脂組成物を供給し、その液面に次の断面パターンに光を照射することにより、先行して形成された硬化樹脂層上にこれと連続するよう新しい硬化樹脂層を一体的に積層形成する。このように、断面パターンを積層していくことで、上記の工程を所定回数繰り返すことで、所定の立体造形物が得られる。この光学的立体造形法は、目的とする立体造形物の形状が複雑なものであっても、容易にしかも短時間で作製することができる。
このような立体造形物を構成する光硬化性樹脂組成物には、高い熱変形温度を有するという耐熱性とともに、立体造形物が衝撃を受けた時に破壊しないという靱性が求められる。特許文献2には、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物及びゴム粒子を含む光硬化性樹脂組成物を用いることが開示されている。そして、特許文献2には、カチオン重合性化合物として、2個のオキセタニル基と芳香環を有するジオキセタン化合物、1個のオキセタニル基を有する単官能オキセタン化合物、2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を用いることが開示されている。これにより、耐熱性を有し、靱性に優れる立体造形物が得られることが開示されている。
特開昭60−247515号公報 特開2013−23574号公報
しかし、特許文献2は、実用靱性(スナップフィット性)は良好な結果を有しているものの、衝撃時の強度は十分ではなく、耐熱性と靱性の両立という点では不十分であった。
本発明の目的は、その硬化物が高い熱変形温度を有するという耐熱性とともに、立体造形物が衝撃を受けた時に破壊しないという靱性を有する硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の硬化性樹脂組成物は、
カチオン重合性反応基として1個のオキセタニル基及び少なくとも1個の水酸基を含有するオキセタン化合物(A)と、
前記オキセタン化合物(A)以外のカチオン重合性化合物であって、カチオン重合反応性基を2個以上有するカチオン重合性化合物(B)と、
ゴム粒子(C)と、
硬化剤(D)と、を含有し、
前記オキセタン化合物(A)と前記カチオン重合性化合物(B)の総量100質量部に対して、前記オキセタン化合物(A)を30質量部以上60質量部以下で含有し、
前記ゴム粒子(C)の表面に前記オキセタン化合物(A)または前記カチオン重合性化合物(B)と反応し得る基を有することを特徴とする。
本発明によれば、耐熱性と靱性がともに優れた硬化物を形成可能であり、立体造形に好適な硬化性樹脂組成物を提供することができる。
シャルピー衝撃強さと荷重撓み温度の関係を示すグラフである。 オキセタン化合物(A)の含有比率と、シャルピー衝撃強さ及び荷重撓み温度の関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。尚、以下に説明する実施形態は、あくまでも本発明の実施形態の一つであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
本発明の主要な特徴は、本発明の硬化性樹脂組成物において、カチオン重合性反応基として1個のオキセタニル基及び少なくとも1個の水酸基を有するオキセタン化合物(A)((A)成分)を一定量含有することにある。そのため、まずオキセタン化合物(A)について説明し、続いて(A)成分以外のカチオン重合性化合物(B)、ゴム粒子(C)、更に硬化剤(D)について説明する。
<オキセタン化合物(A)>
本発明にかかるオキセタン化合物(A)は、カチオン重合性反応基として1個のオキセタニル基を含有するため、後述する硬化剤(D)の作用によって重合反応する。また、オキセタン化合物(A)は、少なくとも1個の水酸基を含有する。水酸基は、後述する硬化剤(D)によって開始されるカチオン重合性化合物のカチオン開環重合反応において、連鎖移動剤として働くことが知られている。したがって、オキセタン化合物(A)においては、1個のオキセタン環が開環重合に関与するのみならず、一部の水酸基は重合活性末端に連鎖移動することにより重合反応及び架橋化の促進に寄与する。さらに、前記連鎖移動に関与せず残存した水酸基は、硬化物中における水素結合(犠牲結合)形成に寄与し、これが硬化物の耐熱性の向上及び靱性の向上に寄与する。
オキセタン化合物(A)における水酸基の数は、特に限定されないが、1個以上4個以下、好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1個以上2個以下が好ましい。水酸基の数が上記の範囲内であれば、架橋密度の過度な上昇が抑えられ、且つ前記した残存水酸基の犠牲結合形成の効果が発揮されるため、高い耐熱性と靱性を両立することが可能となる。
1個の水酸基を有するオキセタン化合物(A)としては、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2019183133
(式中、R1及びR3は、水素原子、或いは炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を表す。R2及びR4は、単結合、或いは炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す。R5は、エーテル結合または芳香環を含んでもよい炭素数(芳香環を含む場合は芳香環を構成する炭素以外の炭素数)1以上10以下の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す。)
一般式(1)で表される化合物の例としては、具体的に、3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン等を挙げることができる。
また、一般式(2)で表される化合物の例としては、具体的に、以下のような化合物が挙げられる。
Figure 2019183133
さらに、2個の水酸基を有する化合物としては、一般式(3)、一般式(4)または一般式(5)で表される化合物が好ましく挙げられる。
Figure 2019183133
(式中、R6乃至R9及びR12、R13は、単結合、或いは炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す。R10、R11及びR14は、各々独立に、エーテル結合または芳香環を含んでもよい炭素数(芳香環を含む場合は芳香環を構成する炭素以外の炭素数)1以上10以下の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す。)
これらの中でも、入手の容易性から、1個の水酸基を有するオキセタン化合物(A)である3−メチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンを好適に用いることができる。また、これらのオキセタン化合物は、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
本発明の効果発現のために、オキセタン化合物(A)((A)成分)の含有量は、(A)成分と後述するカチオン重合性化合物(B)((B)成分)を足し合わせた総量100質量部に対して30質量部以上60質量部以下とする。(A)成分の含有量は、好ましくは32質量部以上60質量部以下、より好ましくは35質量部以上60質量部以下である。(A)成分の含有量が前記の範囲内にあることで、得られる硬化物は、高い耐熱性と靱性を両立することが可能となる。(A)成分の含有量が30質量部より少ない場合、得られる硬化物の耐熱性は向上する一方で、後述するゴム粒子(C)による靱性向上効果が得られなくなり、靱性が顕著に低下する。また、(A)成分の含有量が60質量部より多い場合には、耐熱性が著しく低下する一方で、靱性の向上も鈍化する。
オキセタン化合物(A)の分子量は、5000以下であることが好ましい。分子量が前記の範囲内であれば、オキセタン化合物(A)の粘度が低く抑えられ、硬化性樹脂組成物の希釈成分としても有効に働くため、ハンドリング性向上の観点から好ましい。
<カチオン重合性化合物(B)>
カチオン重合性化合物(B)は、(A)成分以外のカチオン重合性化合物であって、カチオン重合反応性基を2個以上有する化合物である。本発明におけるカチオン重合性反応基としては、エポキシ基、シクロアルケンオキシド基、オキセタニル基やその他の環状エーテル基等を挙げることができ、2種類以上の反応性基を組み合わせて用いてもよい。カチオン重合反応性基としては、入手の容易性からエポキシ基またはオキセタニル基であることが好ましい。カチオン重合反応性基の数は、2個以上6個以下、好ましくは2個以上4個以下、より好ましくは2個以上3個以下が好ましい。反応性基の数が2個未満の場合、架橋密度の上昇効果が低く、耐熱性の向上効果も小さくなる傾向にある。反応性基の数が7個以上の場合、架橋密度が上昇して靱性の劣化を招く傾向がある。
カチオン重合性化合物(B)の反応性基当量は、100g/eq以上450g/eq以下、好ましくは125g/eq以上430g/eq以下、より好ましくは150g/eq以上420g/eq以下、さらに好ましくは150g/eq以上300g/eq以下であることが好ましい。反応性基当量がこの範囲内であれば、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、架橋密度の過度な上昇、または過度な低下が抑えられ、良好な耐熱性と靱性を両立することができる。ここで、反応性基当量とは、カチオン反応性基1個あたりの分子量を示す値である。たとえば、カチオン反応性基がエポキシ基である場合は、反応性基当量はエポキシ当量である。エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方(JISK7236)等の公知の方法を用いて反応性基当量は求めることができる。(B)成分が反応性基当量の異なる2種類以上のカチオン重合性化合物の混合物からなる場合には、各化合物について、各反応性基当量と(B)成分中における各化合物の含有比率を乗じた値を算出し、それらを足し合わせた値を反応性基当量とする。例えば、(B)成分が、60質量%の反応性基当量200g/eqの化合物Xと40質量%の反応性基当量400g/eqの化合物Yからなる場合、200×0.6+400×0.4=280g/eqが(B)成分の反応性基当量となる。
エポキシ基を含有する化合物として、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性からビスフェノール型エポキシ樹脂を好適に用いることができる。中でも、光硬化性樹脂組成物が低粘度になる点から、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやビスフェノールFジグリシジルエーテルなどの単量体を好適に用いることができる。
オキセタニル基を含有する化合物の具体的な例としては、例えば、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、4,4’−ビス[3−エチル−(3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、キシリレンビスオキセタン、炭酸ビス[(エチル(3−オキセタニル)]メチル、アジピン酸ビス[エチル(3−オキセタニル)]エチル、テレフタル酸ビス[エチル(3−オキセタニル)]メチル、1,4−シクロヘキサンカルボン酸ビス[エチル(3−オキセタニル)]メチル、ビス{4−[エチル(3−オキセタニル)メトキシカルボニルアミノ]フェニル}メタン、α,ω−ビス−{3−[1−エチル(3−オキセタニル)メトキシ]プロピル(ポリジメチルシロキサン)等のジオキセタン化合物、及びオリゴ(グリシジルオキセタン−co−フェニルグリシジルエーテル)等の多オキセタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シクロアルケンオキシド基を含有する化合物として、具体的には、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル等が挙げられる。
その他の環状エーテル基を含有する化合物として、例えば、テトラヒドロフラン環やテトラヒドロピラン環を有する化合物等が挙げられる。
また、カチオン重合性化合物(B)は、少なくともカチオン重合反応性基としてエポキシ基を2個以上有し、反応性基当量が150g/eq以上300g/eq以下である化合物を含有することが好ましい。さらに、この化合物の含有量は、(B)成分を100質量%として、20質量%以上100質量%以下が好ましい。この化合物の含有量が上記の範囲内であれば、良好な耐熱性と靱性の両立が可能となる。
<ゴム粒子(C)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、ゴム粒子(C)を含有させることにより、硬化物の靱性を著しく向上させることができる。
本発明において、ゴム粒子の種類は特に限定されるものではない。例えば、ブタジエンゴム粒子、スチレン/ブタジエン共重合ゴム粒子、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム粒子、これらのジエンゴムを水素添加又は部分水素添加した飽和ゴム粒子、架橋ブタジエンゴム粒子、イソプレンゴム粒子、クロロプレンゴム粒子、天然ゴム粒子、シリコンゴム粒子、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー三元共重合ゴム粒子、アクリルゴム粒子、アクリル/シリコーン複合ゴム粒子などが挙げられる。これらのゴム粒子は、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。中でも、柔軟性の観点から、ブタジエンゴム粒子、架橋ブタジエンゴム粒子、スチレン/ブタジエン共重合ゴム粒子、アクリルゴム粒子及びシリコーン/アクリル複合ゴム粒子から選択される少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
また、本発明のゴム粒子は、硬化性樹脂組成物中における分散性の観点から、表面にオキセタン化合物(A)またはカチオン重合性化合物(B)と反応し得る官能基を有する、いわゆるコアシェル構造を有するゴム粒子(コアシェル型ゴム粒子)であることが好ましい。具体的には、前記したゴム粒子をコアとして、その表面の少なくとも一部を、ゴム粒子よりも高いガラス転移温度を有する樹脂、例えば、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルとグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルとグリシジル(メタ)アクリレートとスチレンの共重合体等のシェルで被覆したような構造が好ましい。シェルに用いる樹脂は、コアのゴム粒子との相性や、分散性の観点から適宜選択すればよく、(A)成分または(B)成分と反応し得る基を有する樹脂が好ましい。(A)成分または(B)成分と反応し得る官能基の具体例としては、グリシジル基やオキセタニル基、水酸基、カルボキシル基が挙げられる。コアとシェルの質量比率としては、コア100質量部に対して、シェルとして1質量部以上200質量部以下の樹脂がゴム粒子の表面に設けられていることが好ましく、より好ましくは2質量部以上180質量部以下である。コア(ゴム粒子)とシェル(コアの表面を被覆する樹脂)の質量比率が上記範囲内であれば、本発明のゴム粒子(C)を含有させることによる良好な靱性の向上効果が得られる傾向にある。
本発明のゴム粒子(C)は、その平均粒径が20nm以上750nm以下であることが好ましい。平均粒径が20nm未満の場合、硬化性樹脂組成物中への添加に伴う粘度上昇や、比表面積の増加に伴うゴム粒子間の相互作用が、耐熱性の低下や靱性の低下を引き起こす傾向がある。また、平均粒径が750nmより大きい場合には、硬化性樹脂組成物中における分散性が十分でなく、ゴム粒子を含有させることによる靱性の向上効果を得にくい傾向がある。
本発明のゴム粒子(C)の含有量は、カチオン重合性化合物の総量((A)成分と(B)成分の合計量)100質量部に対して、2質量部以上70質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、5質量部以上60質量部以下である。ゴム粒子(C)の含有量が上記の範囲内であれば、良好な耐熱性と靱性を両立することができる。
<硬化剤(D)>
硬化剤(D)としては、光酸発生剤、熱酸発生剤などのカチオン重合開始剤を用いることができる。本発明の効果を損なわない範囲で、これらを単独で、もしくは、複数組み合わせて用いてもよい。光硬化にて立体造形物を形成する場合には、本発明の硬化性樹脂組成物の経時での安定性や立体造形方法の制約により、光酸発生剤を用いることが好ましい。また、硬化剤(D)として、例えば熱潜在性硬化剤等のその他の硬化剤を含有してもよい。
[カチオン重合開始剤]
(光カチオン重合開始剤)
本発明の硬化性樹脂組成物を立体造形用の硬化性樹脂として用いる場合には、光カチオン重合開始剤を使用することが好ましい。光カチオン重合開始剤は、例えば紫外線等のエネルギー線の照射によりカチオン重合を開始することのできる酸を発生する光酸発生剤であることが好ましい。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、カチオン部分が、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチルベンゼン]−Feカチオンであり、アニオン部分が、BF4 -、PF6 -、SbF6 -、[BX4-(但し、Xは少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)で構成されるオニウム塩を単独で使用または2種以上を併用することができる。
芳香族スルホニウム塩としては、例えばビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、芳香族ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、芳香族アンモニウム塩としては、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、チアンスレニウム塩としては、5−メチルチアンスレニウムヘキサフルオロホスフェート、5−メチル−10−オキソチアンスレニウムテトラフルオロボレート、5−メチル−10,10−ジオキソチアンスレニウムヘキサフルオロホスフェート等を使用することができる。
また、チオキサントニウム塩としては、S−ビフェニル2−イソプロピルチオキサントニウムヘキサフルオロホスフェート等を使用することができる。
また、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe塩としては、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチルベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチルベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチルベンゼン]−Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチルベンゼン]−Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、CPI(R)−100P、CPI(R)−110P、CPI(R)−101A、CPI(R)−200K、CPI(R)−210S(以上、サンアプロ社製)、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI−6990、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI−6992、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI−6976(以上、ダウ・ケミカル日本社製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172、アデカオプトマーSP−300(以上、(株)ADEKA製)、CI−5102、CI−2855(以上、日本曹達(株)製)、サンエイド(R)SI−60L、サンエイド(R)SI−80L、サンエイド(R)SI−100L、サンエイド(R)SI−110L、サンエイド(R)SI−180L、サンエイド(R)SI−110、サンエイド(R)SI−180(以上、三新化学工業社製)、エサキュア(R)1064、エサキュア(R)1187(以上、ランベルティ社製)、オムニキャット550(アイジーエム レジン社製)、イルガキュア(R)250(BASF社製)、ロードシルフォトイニシエーター2074(RHODORSILPHOTOINITIATOR2074(ローディア・ジャパン(株)製)等が市販されている。
本発明の硬化性樹脂組成物は、光カチオン重合開始剤を2種類以上併用してもよく、単独で用いてもよい。また、造形後の熱処理で重合反応を進めるために、熱カチオン重合開始剤などそのほかの硬化剤を同時に含有していてもよい。
光酸発生剤の添加量としては、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。光酸発生剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。開始剤量が多いと、光の透過性が低下し、重合が不均一になることがある。
(熱カチオン重合開始剤)
熱カチオン重合開始剤は熱酸発生剤とも呼ばれる。加熱によりカチオン種を含む化合物が励起され、熱分解反応が起こり熱硬化を進行させる硬化剤として実質的な機能を発揮する。熱カチオン重合開始剤は、硬化剤として一般に使用されている酸無水物類、アミン類、フェノール樹脂などとは異なり、樹脂組成物に含まれていても、樹脂組成物の常温での経時的な粘度上昇やゲル化を引き起こすことない。そのため、ハンドリング性に優れた一液性樹脂組成物を提供することが可能となる。
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ−p−トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、ジフェニル−p−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファートなどが挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物では、熱カチオン重合開始剤として、例えば、ジアゾニウム塩系化合物であるAMERICUREシリーズ(アメリカン・スキャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、ヨードニウム塩系化合物であるUVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、WPIシリーズ(和光純薬社製)、スルホニウム塩系化合物であるCYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サートマー社製)、オプトマーSPシリーズ、オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)等の市販品を使用できる。
本発明の硬化性樹脂組成物では、熱カチオン重合開始剤を2種類以上併用してもよいが、単独で用いてもよい。また、造形後の熱処理で重合反応を進めるために、高温で分解する熱カチオン重合開始剤を用いてもよい。
熱酸発生剤の添加量としては、(A)成分と(B)成分を足し合わせた総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。熱酸発生剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。
[その他の硬化剤]
硬化剤(D)として、酸無水物類(酸無水物系硬化剤)、フェノール類(フェノール系硬化剤)、ポリカルボン酸類などの熱潜在性硬化剤を用いることができる。熱潜在性硬化剤とは、過熱により熱硬化を進行させる硬化剤を指す。
酸無水物類としては、公知乃至慣用の酸無水物系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸等)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等)、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4−(4−メチル−3−ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、取り扱い性の観点で、25℃で液状の酸無水物[例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等]が好ましい。一方、25℃で固体状の酸無水物については、例えば、25℃で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、本発明の硬化性樹脂組成物における硬化剤(D)としての取り扱い性が向上する傾向がある。酸無水物系硬化剤としては、硬化物の耐熱性、透明性の観点で、飽和単環炭化水素ジカルボン酸の無水物(環にアルキル基等の置換基が結合したものも含む)が好ましい。
フェノール類としては、公知乃至慣用のフェノール系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、パラキシリレン・メタキシリレン変性フェノール樹脂等のアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールプロパン等が挙げられる。
ポリカルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、カルボキシ基含有ポリエステル等が挙げられる。
その他の硬化剤の添加量は、(A)成分と(B)成分を足し合わせた総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上75質量部以下、より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。熱潜在性重合開始剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向があり、多すぎると架橋反応が進行し、靱性の劣化を招く傾向がある。
<その他の成分(添加剤)>
本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤が含有されていてもよい。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリクロロプレン、ポリエステル、ポリシロキサン、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂などの樹脂、あるいはポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのエンジニアリングプラスチック、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー、フッ素含有モノマー、シロキサン構造含有モノマーなど反応性モノマー、金、銀、鉛などの軟質金属、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、窒化ケイ素、セレン化モリブデンなどの層状結晶構造物質、フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などの光増感剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機充填剤、顔料、染料、酸化防止剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤等を挙げることができる。
添加剤として、ラジカル重合性化合物、例えば、(メタ)アクリレート化合物などを含有してもよい。
(メタ)アクリレート化合物とは、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。本発明においては、一般的な方法で重合可能な重合性の(メタ)アクリレート化合物であれば、用いることができる。単官能(メタ)アクリレート化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物は、1種類以上を任意に混合して使用することができる。
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
本発明の効果発現のために、ラジカル重合性化合物の含有量は、成分(A)と成分(B)の総量100質量部に対して0質量部以上80質量部以下が好ましい。ラジカル重合性化合物の量が過剰である場合、本発明の効果が損なわれる恐れがある。
本発明では、特に、ラジカル重合性化合物を含有する場合、ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、または熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤は、主に分子内開裂型と水素引抜き型に分類される。分子内開裂型の光ラジカル重合開始剤では、特定波長の光を吸収することで、特定の部位の結合が切断され、その切断された部位にラジカルが発生し、それが重合開始剤となりラジカル重合性化合物の重合が始まる。一方、水素引き抜き型の場合は、特定波長の光を吸収し励起状態になり、その励起種が周囲にある水素供与体から水素引き抜き反応を起こし、ラジカルが発生し、それが重合開始剤となりラジカル重合性化合物の重合が始まる。
分子内開裂型光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤が知られている。これらはカルボニル基に隣接した結合がα開裂して、ラジカル種を生成するタイプのものである。アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤等がある。具体的な化合物としては、例えば、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤としては、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア(R)651、BASF社製)等があり、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア(R)1173、BASF社製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア(R)184、BASF社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア(R)2959、BASF社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(イルガキュア(R)127、BASF社製)等があり、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア(R)907、BASF社製)あるいは2−ベンジルメチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(イルガキュア(R)369、BASF社製)等があるが、これに限定されることはない。アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ルシリン(R)TPO、BASF社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア(R)819、BASF社製)等があるが、これに限定されることはない。オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤としては、(2E)−2−(ベンゾイルオキシイミノ)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1−オン(イルガキュア(R)OXE−01、BASF社製)等が挙げられるが、これに限定されることはない。
水素引き抜き型光ラジカル重合開始剤としては、2−エチル−9,10−アントラキノン、2−t−ブチル−9,10−アントラキノン等のアントラキノン誘導体、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体が挙げられるが、これに限定されることはない。
本発明では、光ラジカル重合開始剤を2種類以上併用してもよいが、単独で用いてもよい。
光ラジカル重合開始剤の添加量としては、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。光ラジカル重合開始剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。開始剤量が多いと、光の透過性が低下し、重合が不均一になることがある。
また、熱ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生するものであれば特に制限されず従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、アゾ系化合物、過酸化物及び過硫酸塩を好ましいものとして挙げることができる。アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等が挙げられる。過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート及びジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤の添加量としては、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。重合開始剤を過剰に添加すると分子量が伸びず、物性の低下する恐れがある。
<硬化性樹脂組成物>
本発明の組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分、並びに、必要に応じてその他の任意成分の適量を攪拌容器に仕込み、通常、30℃以上120℃以下、好ましくは50℃以上100℃以下で攪拌することにより製造することができる。その際の攪拌時間は、通常1分以上6時間以下、好ましくは10分以上2時間以下である。
本発明の硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、好ましくは50Pa・s以上10,000mPa・s以下であり、より好ましくは70mPa・s以上5,000mPa・s以下である。
以上のようにして得られる本発明の硬化性樹脂組成物は、光学的立体造形法における光硬化性樹脂組成物として好適に使用される。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物に対して、紫外線、電子線、X線、放射線などの活性エネルギー線を選択的に照射して硬化に必要なエネルギーを供給する光学的立体造形法により、所望の形状の立体造形物を製造することができる。
<硬化物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、オキセタン化合物(A)、カチオン重合性化合物(B)、ゴム粒子(C)及び硬化剤(D)が必須成分であり、これらを硬化せしめることで硬化物を得ることができる。硬化方法は含有する硬化剤に合わせ、活性エネルギー線硬化、熱硬化などの任意の公知の方法を用いて、硬化することができる。硬化方法は複数種類を組み合わせてもよい。
<立体造形物の製造方法>
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤(D)として光酸発生剤を含有することで、光学的立体造形方法に好適に用いることができる。硬化性樹脂組成物の硬化物は、従来既知の光学的立体造形方法及び装置のいずれを使用して作製してもよい。好ましい光学的立体造形法の代表例としては、立体モデルのスライスデータに基づいて本発明の硬化性樹脂組成物を層毎に光硬化させて立体物を製造する方法である。具体的には、液状をなす本発明の硬化性樹脂組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように、スライスデータに基づいて活性エネルギー線を選択的に照射して硬化層を形成する。次いでこの硬化層に未硬化の本発明の硬化性樹脂組成物を供給し、同様にスライスデータに基づいて活性エネルギー線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する。この積層操作を繰り返すことによって最終的に目的とする立体造形物を得る方法を挙げることができる。
その際の活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線などを挙げることができる。そのうちでも、300nm以上450nm以下の波長を含む紫外線が経済的な観点から好ましく用いられる。その際の光源としては、紫外線レーザー(例えばArレーザー、He−Cdレーザーなど)、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯などを使用することができる。そのうちでも、レーザー光源が、エネルギーレベルを高めて造形時間を短縮でき、しかも集光性に優れていて高い造形精度を得ることができる点から、好ましく採用される。
硬化性樹脂組成物よりなる造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する各硬化樹脂層を形成するに当たっては、レーザー光等の様な点状に絞られた活性エネルギー線を走査して点描または線描方式で硬化樹脂層を形成してもよい。また、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターなどのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して造形面に活性エネルギー線を面状に照射して硬化樹脂層を形成させる造形方式を採用してもよい。
光学的立体造形法の代表的な一例を説明すると、次のとおりである。まず、収容容器内において昇降自在に設けられた支持ステージを樹脂組成物の液面から微小量降下(沈降)させることにより、支持ステージ上に樹脂組成物を供給して、その樹脂組成物層(1)を形成する。次いで、この樹脂組成物層(1)に対して選択的に光を照射することにより、固体状の硬化樹脂層(1)を形成する。次いで、この硬化樹脂層(1)上に硬化性樹脂組成物を供給して樹脂組成物層(2)を形成し、この樹脂組成物層(2)に対して選択的に光照射することにより、硬化樹脂層(1)上にこれと連続して一体的に積層されるように新しい硬化樹脂層(2)を形成する。そして、光照射されるパターンを変化させながら或いは変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化樹脂層(1,2,・・・n)が一体的に積層されてなる立体造形物が造形される。
このようにして得られる立体造形物を収容容器から取り出し、その表面に残存する未反応の硬化性樹脂組成物を除去した後、必要に応じて洗浄する。ここで、洗浄剤としては、イソプロピルアルコール、エタノール等のアルコール類に代表されるアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等に代表されるケトン系有機溶剤;酢酸エチル等に代表されるエステル系有機溶剤;テルペン類に代表される脂肪族系有機溶剤を挙げることができる。なお、洗浄剤で洗浄した後には必要に応じて、光照射又は熱照射によるポストキュアーを行っても良い。ポストキュアーは、立体造形物の表面及び内部に残存することのある未反応の硬化性樹脂組成物を硬化させることができ、造形物の表面のべたつきを抑えることができる他、造形物の初期強度を向上させることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<材料>
以下、実施例及び比較例にて使用した材料を列記する。
[オキセタン化合物(A)]
A1:下記化合物(「OXT−101」、東亞合成社製)
Figure 2019183133
A2:3−(ヒドロキシメチル)−3−メチルオキセタン(東京化成工業社製)
[カチオン重合性化合物(B)]
B1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「JER828」、三菱化学社製、反応性基当量:184g/eq以上194g/eq以下)
B2:エポキシ化ポリブタジエン(「JP−100」、日本曹達社製、反応性基当量:210g/eq)
[カチオン重合性化合物(B)+ゴム粒子(C)]
B3+C1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B3)中にコアシェル型ゴム粒子(C1;平均粒径100nm、コア成分:架橋ポリブタジエン、シェル:PMMA/グリシジルメタクリレート/スチレン共重合物)が単一粒子分散された液状マスターバッチ(「KANEACE MX−153」、カネカ社製、C1含有量33wt%、B3の反応性基当量270g/eq))
[ゴム粒子(C)]
(コアシェル型ゴム粒子C1のアセトン分散液の製造)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(B3)中にコアシェル型ゴム粒子(C1)が単一粒子分散された液状マスターバッチ「KANEACE MX−153」(カネカ社製)にアセトンを加え、遠心分離を行った後に上澄みを除去してB3を除去する操作を繰り返すことにより、C1のアセトン分散液を得た。
(コアシェル型ゴム粒子C2のアセトン分散液の製造)
0.3Lガラス容器に、ポリブタジエンラテックス(Nipol LX111A2:日本ゼオン社製)46質量部(ポリブタジエンゴム粒子25質量部相当)および脱イオン水79質量部を仕込み、窒素置換を行いながら60℃で撹拌した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.0012質量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.0003質量部、及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.06質量部を加えた後、シェル層を形成するラジカル重合性化合物8.8質量部(メチルメタクリレート;MMA 4.4質量部、3−メチル−3−オキセタニル−メチルメタクリレート;OXMA:宇部興産社製 4.4質量部)、およびクメンヒドロパーオキサイド0.0015質量部の混合物を2時間かけて連続的に添加することにより、ポリブタジエンゴムの粒子の表面にラジカル重合性化合物をグラフト重合した。添加終了後、更に2時間撹拌して反応を終了させ、ポリブタジエンゴムをコア、ラジカル重合性化合物の重合体をシェルとして有するコアシェル型ゴム粒子C2の水分散液を得た。
上記のようにして得られたコアシェル型ゴム粒子の水分散液をアセトン150質量部中に投入し、均一に混合した。遠心分離機を用い、回転数12000rpm、温度10℃にて30分間遠心した後、上澄み液を除去した。沈降したコアシェル型ゴム粒子にアセトンを加えて再分散し、上記と同条件で遠心分離、上澄み液の除去を2回繰り返し行うことにより、コアシェル型ゴム粒子(C2)のアセトン分散液を得た。粒度分布計(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用い、粒度分布曲線(粒子径−散乱強度)の極大値から求めたコアシェル型ゴム粒子(C2)の平均粒径(25℃)は0.30μmであった。
(コアシェル型ゴム粒子C3のアセトン分散液の製造)
シェル層を形成するラジカル重合性化合物の量を4.4質量部(MMA 3.5質量部、OXMA 0.9質量部)に変えた以外は、「(コアシェル型ゴム粒子C2のアセトン分散液の製造)」と同様にしてコアシェル型ゴム粒子(C3)のアセトン分散液を得た。粒度分布計を用い、粒度分布曲線の極大値から求めたコアシェル型ゴム粒子(C3)の平均粒径(25℃)は0.34μmであった。
[硬化剤(D)]
D1:光酸発生剤(「CPI(R)−210S」、サンアプロ社製)
[その他の化合物(E)]
E1:下記化合物(「OXT−212」、東亜合成社製)
Figure 2019183133
<硬化性樹脂組成物の製造>
[実施例1、2、4乃至6、比較例2乃至4]
B3とC1の配合に上記「B3+C1」76質量部を用い、表1に示す配合比にて各成分を配合し、自転公転ミキサー(「あわ取り練太郎 AR−100」、シンキー社製)を用いて混合することにより、均一な硬化性樹脂組成物を得た。(B)成分の反応性基当量を表1に示す。
[実施例3]
B3とC1の配合に、上記「B3+C1」85質量部と、C1のアセトン分散液(C1含有量:5質量部)とを用い、表1に示す配合比にて各成分を配合し、75℃に加熱してかくはん装置で2時間かくはんし、余分な溶媒(アセトン)を完全に除去した後に硬化性樹脂組成物を得た。(B)成分の反応性基当量を表1に示す。
[実施例7]
C2の配合にC2のアセトン分散液を用い、表1に示す配合比にて各成分を配合し、75℃に加熱してかくはん装置で2時間かくはんし、余分な溶媒(アセトン)を完全に除去した後に硬化性樹脂組成物を得た。(B)成分の反応性基当量を表1に示す。
[実施例8]
C3の配合にC3のアセトン分散液を用い、表1に示す配合比にて各成分を配合し、実施例7と同様にして硬化性樹脂組成物を得た。(B)成分の反応性基当量を表1に示す。
[比較例1]
B3とC1の配合に、上記「B3+C1」52質量部と、C1のアセトン分散液(C1含有量:8質量部)とを用い、表1に示す配合比にて各成分を配合し、実施例3と同様にして硬化性樹脂組成物を得た。(B)成分の反応性基当量を表1に示す。
<試験片の作成>
調製した硬化性樹脂組成物から、下記の方法で硬化物を作成した。まず、二枚の石英ガラスの間に長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの金型を挟み、ここに硬化性樹脂組成物を流し込んだ。流し込んだ硬化性樹脂組成物に対して紫外線照射機(HOYA CANDEO OPTRONICS社製、商品名「LIGHT SOURCE EXECURE 3000」)で5mW/cm2の紫外線を金型の両面から120秒間ずつ照射し、仮硬化を行った。その後、再度両面から600秒ずつ紫外線を照射することで本硬化を行い、硬化物を得た(総エネルギーとして7200mJ/cm2)。得られた硬化物を50℃の加熱オーブン内に入れて1時間、100℃の加熱オーブン内に入れて2時間熱処理を行うことで、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を得た。
<評価>
[荷重たわみ温度]
試験片について、JIS K 7191−2に準じて、荷重たわみ温度試験機(東洋精機製作所製、商品名「No.533 HDT 試験装置 3M−2」)を用い、曲げ応力1.80MPaで、室温から2℃毎分で昇温した。試験片のたわみ量が0.34mmに達した温度を荷重たわみ温度とし、耐熱性の指標とした。得られた結果を表1に示す。表1中の数値は荷重撓み温度を示し、耐熱性の評価は、荷重撓み温度が80℃以上のものをA(非常に良好)、60℃以上80℃未満のものをB(良好)、60℃未満のものをC(不良)とした。
[シャルピー衝撃強さ]
JIS K 7111に準じて、切欠き形成機(東洋精機製作所製、商品名「ノッチングツール A−4」)にて試験片中央部に深さ2mm、45°の切欠き(ノッチ)を入れた。衝撃試験機(東洋精機製作所製、商品名「IMPACT TESTER IT」)を用い、試験片の切欠きの背面から2Jのエネルギーで破壊する。150°まで振り上げたハンマーが試験片破壊後に振りあがる角度から破壊に要したエネルギーを算出し、それをシャルピー衝撃強さとし、靱性の指標とした。得られた結果を表1に示す。表1中の数値はシャルピー衝撃強さを示し、靱性の評価は、シャルピー衝撃強さが8kJ/m2以上のものをA(非常に良好)、5kJ/m2以上8kJ/m2未満のものをB(良好)、5kJ/m2未満のものをC(不良)とした。
Figure 2019183133
表1に示すシャルピー衝撃強さと荷重撓み温度の結果を、実施例は●、比較例は▲でプロットしたものを図1に示す。図1に示すように、本発明の樹脂組成物から得た硬化物(実施例1乃至6)は、(A)成分を本発明の範囲内で含有しない組成物から得た硬化物(比較例1乃至4)に比べ、靱性と耐熱のバランスが優れており、本発明の効果を得るために好適である。例えば、実施例1、実施例2で示す本発明の樹脂組成物から得られた硬化物は、本発明におけるオキセタン化合物(A)を含有しない比較例4で示す樹脂組成物の硬化物と比較して、同等の靱性を有するにも関わらず、はるかに優れた耐熱性を示している。
また、(A)成分と(B)成分の総量に対する(A)成分の含有比率と、シャルピー衝撃強さ又は荷重撓み温度の結果を、実施例1、実施例5、比較例1乃至3について、それぞれ実施例は●及び○、比較例は▲及び△でプロットしたものを図2に示す。ここで、荷重撓み温度(○及び△)に関しては、(A)成分の含有比率の増加に伴って直線的に低下する傾向がみられる。しかし、シャルピー衝撃強さ(●及び▲)に関しては、本発明の硬化性樹脂組成物において(A)成分と(B)成分の総量に対する(A)成分の比率が30質量%に相当する付近で、非線形的な著しい増大がみられることがわかる。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物から得られた硬化物は、通常予測しうる範囲を超え、優れたシャルピー衝撃強さをもつことがわかる。結果として、本発明の硬化性樹脂組成物は、予想に反し、優れた耐熱性と優れた靱性を両立させうる効果を有することが明らかとなった。
以上の結果から、本発明の硬化性樹脂組成物は、靱性と耐熱性を両立する優れた効果を有し、光学的立体造形に好適に使用できることが明らかとなった。

Claims (16)

  1. カチオン重合性反応基として1個のオキセタニル基及び少なくとも1個の水酸基を含有するオキセタン化合物(A)と、
    前記オキセタン化合物(A)以外のカチオン重合性化合物であって、カチオン重合反応性基を2個以上有するカチオン重合性化合物(B)と、
    ゴム粒子(C)と、
    硬化剤(D)と、を含有し、
    前記オキセタン化合物(A)と前記カチオン重合性化合物(B)の総量100質量部に対して、前記オキセタン化合物(A)が30質量部以上60質量部以下であり、
    前記ゴム粒子(C)の表面に前記オキセタン化合物(A)または前記カチオン重合性化合物(B)と反応し得る基を有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
  2. 前記オキセタン化合物(A)または前記カチオン重合性化合物(B)と反応し得る基が、グリシジル基、オキセタニル基、水酸基、カルボキシル基の中から選択される少なくとも1つの基であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 前記ゴム粒子(C)の表面の少なくとも一部に、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、(メタ)アクリル酸エステルとグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体、(メタ)アクリル酸エステルとグリシジル(メタ)アクリレートとスチレンの共重合体のいずれかの樹脂が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 前記カチオン重合性化合物(B)は、少なくともカチオン重合反応性基としてエポキシ基を2個以上有し、反応性基当量が150g/eq以上300g/eq以下である化合物を、20質量%以上100質量%以下で含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
  5. 前記カチオン重合性化合物(B)は、2個以上6個以下のカチオン重合反応性基を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
  6. 前記ゴム粒子(C)を、前記オキセタン化合物(A)と前記カチオン重合性化合物(B)の総量100質量部に対して、2質量部以上70質量部以下で含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
  7. 前記硬化剤(D)が光カチオン重合開始剤であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
  8. 前記光カチオン重合開始剤を、前記オキセタン化合物(A)と前記カチオン重合性化合物(B)の総量100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下で含有することを特徴とする請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
  9. 前記光カチオン重合開始剤が、光酸発生剤であることを特徴とする請求項7または8に記載の硬化性樹脂組成物。
  10. さらに、前記オキセタン化合物(A)と前記カチオン重合性化合物(B)の総量100質量部に対して0質量部以上80質量部以下のラジカル重合性化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
  11. 前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする請求項10に記載の硬化性樹脂組成物。
  12. ラジカル重合開始剤を、前記ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下で含有することを特徴とする請求項10または11に記載の硬化性樹脂組成物。
  13. 立体モデルのスライスデータに基づいて硬化性樹脂組成物を光硬化させて立体物を製造する方法であって、
    請求項1乃至12のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物からなる層を形成する工程と、
    前記硬化性樹脂組成物からなる層に、前記スライスデータに基づいて活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化する工程と、
    を含むことを特徴とする立体物の製造方法。
  14. 前記活性エネルギー線が、300nm以上450nm以下の波長を含む紫外線であることを特徴とする請求項13に記載の立体物の製造方法。
  15. 前記活性エネルギー線を点状に絞り、前記活性エネルギー線を走査することで前記硬化性樹脂組成物からなる層に照射し、前記硬化性樹脂組成物からなる層を硬化させることを特徴とする請求項13または14に記載の立体物の製造方法。
  16. 面状描画マスクを通して前記活性エネルギー線を面状に照射して前記硬化性樹脂組成物からなる層を硬化させることを特徴とする請求項13または14に記載の立体物の製造方法。
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