以下、本発明の実施形態について説明する。尚、以下に説明する実施形態は、あくまでも本発明の実施形態の一つであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
<硬化性樹脂(A)(成分(A))>
本発明で用いられる硬化性樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される。
上記一般式(1)において、X1、X2は、独立に、芳香環を含む2価の連結基である。X1、X2は、入手の容易性や溶媒への溶解性の観点から、芳香環を2個以下含むことが好ましい。芳香環が2個以下であれば、結晶性が上がる、溶媒への溶解性が悪い等の合成反応上の問題が生じにくい。X1、X2は、芳香環を構成する炭素原子で隣接基(L1、L2、L3、L4)と連結する連結基でも、芳香環を構成する炭素原子以外の原子で隣接基と連結する連結基でもよいが、芳香環を構成する炭素原子で隣接基と連結する連結基が好ましい。
X1、X2としては、例えば、芳香環を一つのみ有する構造からなる炭化水素基、芳香環が単結合を介して結合した構造からなる炭化水素基、芳香環が脂肪族炭素原子を介して結合した構造からなる炭化水素基、芳香環が脂肪族環状炭化水素基を介して結合した構造からなる炭化水素基、複数のベンゼン環が縮合多環化した構造からなる炭化水素基、芳香環がアラルキル基を介して結合した構造からなる炭化水素基、芳香環が酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を介して結合した構造からなる炭化水素基等を挙げることができる。例えば、具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、フルオレンジイル基、ジフェニルメタンジイル基、ジフェニルエタンジイル基、ジフェニルプロパンジイル基、ジフェニルエーテルジイル基、ジフェニルスルホンジイル基等を挙げることができる。これらは無置換でも、置換基を有していても良い。有していてもよい置換基としては、例えば、炭素原子数1以上6以下の直鎖状または分岐状のアルキル基等が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の柔軟性と強靭性のバランスに優れる点、および、光の透過性の観点から、特に、ジフェニルメタンジイル基(一般式(1-I))、ジフェニルプロパンジイル基(一般式(1-II))、ビフェニレン基(一般式(1-III))、ジフェニルエーテルジイル基((一般式(1-IV)))が好ましく、これらは無置換でも、置換基を有していても良い。有していてもよい置換基としては、例えば、炭素原子数1以上6以下の直鎖状または分岐状のアルキル基等が挙げられる。
[*は、L1、L2、L3、L4との結合手を表す。]
X3は、炭素数4以上18以下、好ましくは炭素数4以上12以下、より好ましくは炭素数4以上10以下のアルキレン基である。炭素数が3以下では、柔軟性が損なわれ、十分な靱性を発揮することができない。また、炭素数が19以上の場合には、硬化物の硬さが低下し、結果として耐熱性が損なわれる。X3の具体的な例としては、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカニレン基、ドデカニレン基、トリデカニレン基、テトラデカニレン基、ペンタデカニレン基、ヘキサデカニレン基、ヘプタデカニレン基、オクタデカニレン基等の直鎖状または分岐構造を有する非環式のアルキレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、二環式、三環式、多環式等の環状構造を有するアルキレン基が挙げられ、これらは無置換でも、置換基を有していても良い。有していてもよい置換基としては、例えば、炭素原子数1以上6以下の直鎖状または分岐状のアルキル基等が挙げられる。これらのうち、入手の容易性の観点から、好ましくは炭素数4以上12以下の直鎖状または分岐構造を有する非環式のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数4以上10以下の直鎖状の非環式アルキレン基である。
X3は、アルキレン基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子に置き換えられていてもよく、例えば、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレンなどの繰り返し構造を持っていても良い。この場合、置き換えられていない炭素数が4以上10以下であることが好ましい。
X3として、下記一般式(1-VII)で表されるアルキレン基は疎水性や靱性と耐熱性の両立の観点から好ましく、一般式(1-VIII)で表されるアルキレン基は靱性向上の観点からより好ましい。
[lは、4以上18以下の整数、好ましくは4以上10以下の整数である。
R1、R2は、水素またはメチル基である。mは、炭素数が4以上18以下、好ましくは4以上10以下となるように選択される整数である。
*は、L1、L2との結合手を表す。]
L1、L2、L3、L4は、独立に、-O-、-C-O-、-S-、-C-S-、エステル結合、ウレタン結合、エーテル結合、チオウレタン結合及びチオエーテル結合からなる群から選ばれる結合を1つ以上含む2価の連結基である。以下、「-O-、-C-O-、-S-、-C-S-、エステル結合、ウレタン結合、エーテル結合、チオウレタン結合及びチオエーテル結合からなる群から選ばれる結合」を「特定の結合」と称する場合がある。L1乃至L4は、特定の結合で隣接基(Y1、Y2、X1、X2、X3)と直接連結する連結基であってもよいし、特定の結合と隣接基の間に一以上の炭素原子を介して連結する連結基であってもよい。特定の結合が-O-、-C-O-、-S-、-C-S-のいずれかの場合、特定の結合の酸素原子または硫黄原子は、特定の結合と隣接基の間に介在する炭素原子または隣接基の炭素原子と結合してエーテル結合またはチオエーテル結合を形成することが好ましい。
L1乃至L4が、-O-、-C-O-、-S-、-C-S-、エーテル結合及びチオエーテル結合からなる群から選ばれる結合を1つまたは2つ含むと、硬化性樹脂(A)の分子鎖の回転運動が容易になり、靱性向上効果が大きくなるため好ましい。-O-、-C-O-、-S-、-C-S-、エーテル結合及びチオエーテル結合からなる群から選ばれる結合が2つ以下であれば、運動性が過度に上昇することなく、硬化物の耐熱性を維持することができる。
また、L1乃至L4が水酸基を有すると、硬化性樹脂(A)の重合反応を促進する効果があるため好ましい。水酸基の数は硬化性樹脂(A)1分子中に6個以下が好ましい。水酸基の数が1分子中に6個以下であれば、硬化性樹脂組成物及びそれを硬化した硬化物の吸水性が増加することがなく、経時での安定性を有する。
L1、L2、L3、L4としては、例えば、具体的には、以下の一般式(1-a)、(1-b)、(1-c)、(1-d)、(1-e)、(1-f)、(1-g)で表される基が好ましい。特に、一般式(1-a)、(1-d)、(1-e)、(1-f)、(1-g)で表される基は、材料の入手および合成の効率の観点からより好ましい。さらに、一般式(1-d)、(1-e)、(1-f)、(1-g)で表される基は、靱性向上効果観点からさらに好ましい。また、一般式(1-g)で表される基は、硬化性樹脂(A)の重合反応促進の観点から好ましい。
[a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、o、p、qは独立に0以上5以下の整数であり、組成物の硬化物の柔軟性及び組成物の粘度の観点から、0以上2以下の整数が好ましく、さらに耐熱性を維持する観点から、0以上1以下の整数がより好ましい。
*は、Y1、Y2、X1、X2、X3との結合手を表す。]
Y1、Y2は重合性基であり、独立に、エポキシ基、シクロアルケンオキシド基またはオキセタニル基である。シクロアルケンオキシド基としては、シクロプロペンオキシド基、シクロブテンオキシド基、シクロペンテンオキシド基、シクロヘキセンオキシド基、シクロヘプテンオキシド基等が挙げられる。Y1、Y2は、具体的には、それぞれ下記一般式(1-h)、(1-i)、(1-j)で表されるものが、合成や入手の容易性から好ましい。
[R3、R4は、独立に、水素または炭素数1以上4以下のアルキル基であり、重合性および入手の容易性の観点から、水素または炭素数1以上2以下のアルキル基であることが好ましく、水素であることがより好ましい。
*は、L3、L4との結合手である。]
nは繰り返し構造単位の平均値を表し、0.1以上10以下の実数である。組成物の粘度上昇を抑制するため、nは0.2以上5以下の範囲が好ましく、硬化物の靱性や耐熱性のバランスの観点から0.5以上3以下の範囲がより好ましい。
硬化性樹脂(A)としては、例えば、EPICLON EXA-4816(DIC社製)、EPICLON EXA-4850-150(DIC社製)、EPICLON EXA-4850-1000(DIC社製)などの市販品を好適に用いることができる。
硬化性樹脂(A)の具体例としては、下記構造で表される硬化性樹脂が、靱性と耐熱性の両立の観点から好ましく、n=1であるものがより好ましい。また、水酸基を有する場合には、硬化性樹脂(A)の硬化促進効果を有する点がさらに好ましい。
硬化性樹脂(A)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計(成分(D)を含有する場合は成分(A)と成分(B)と成分(D)の合計)100質量部に対して、硬化物の靱性向上の効果が大きいため、50質量部以上97質量部以下が好ましい。また、耐熱性と靱性のバランスが良く、さらに硬化物が好適な硬さを持つためには65質量部以上97質量部以下含有することがより好ましい。
(硬化性樹脂(A)の製造方法)
硬化性樹脂(A)を製造する方法としては、特に限定されることはないが、たとえば、ジグリシジルエーテル化合物(A-1)と芳香族系ジヒドロキシ化合物(A-2)を反応させ、ジヒドロキシ化合物(A-3)を得る。次いで、ハロゲン基を有するカチオン重合性化合物のハロゲン基をジヒドロキシ化合物(A-3)の水酸基と反応させ、硬化性樹脂(A)を得ることができる。
ジグリシジルエーテル化合物(A-1)としては、例えば下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。X3は、一般式(1)のX3に相当し、その詳細は一般式(1)について説明した通りである。ジグリシジルエーテル化合物(A-1)は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7-ヘプタンジオールジグルシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,9-ノナンジオールジグリシジルエーテル、1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、1,11-ウンデカンジオールジグリシジルエーテル、1,12-ドデカンジオールジグリシジルエーテル、1,18-ステアリルジオールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
芳香族系ジヒドロキシ化合物(A-2)としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。X7は、一般式(1)のX1,X2に相当し、その詳細は一般式(1)について説明した通りである。
一般式(3)で表される化合物としては、たとえば、1,4-ジヒドロキシベンゼン、カテコール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’-メチレンビス(4-メチルフェノール)、4,4’-エチリデンビスフェノール、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-(1,3-ジメチルブチリデン)ジフェノール、4,4’-(α-メチルベンジリデン)ビスフェノール、4,4’-(α-メチルベンジリデン)ビスフェノール、4,4’-ジヒドロキシテトラフェニルメタン、2,7-ナフタレンジオール、2,3-ナフタレンジオール、2,6-アントラセンジオール等を挙げることができる。
ハロゲン基を有するカチオン重合性化合物とは、エポキシ基、シクロアルケンオキシド基、またはオキセタニル基を有し、かつ、-I、-Br、-Clなどのハロゲン基を有する化合物のことである。具体的には、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシプロパン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシブタン等をあげることができる。
また、その他の製造法としては、芳香族系ジヒドロキシ化合物である、2官能性のフェノール化合物と、ジビニルエーテルとを反応させる。次いで、得られた2官能性フェノール樹脂にハロゲン基を有するカチオン重合性化合物を反応させ、硬化性樹脂(A)を得ることもできる。
<環式化合物(B)(成分(B))>
環式化合物(B)は、反応性基を3個以上6個以下有し、反応性基当量が100g/eq以上300g/eq以下である。環式化合物(B)は、一または複数の環状構造を分子内に有する化合物である。
反応性基としては、例えば、エポキシ基、シクロアルケンオキシド基、オキセタニル基等を挙げることができ、2種類以上の反応性基を組み合わせて用いてもよい。反応性基としては、入手の容易性からエポキシ基であることが好ましい。反応性基の数は、3個以上6個以下、好ましくは3個以上4個以下、より好ましくは3個である。反応性基の数が2個以下の場合、架橋密度の上昇効果が低く、耐熱性の向上効果も小さい。反応性基の数が7個以上の場合、架橋密度が過度に上昇するため、靱性の著しい劣化を招く。
環式化合物(B)の反応性基当量は、100g/eq以上300g/eq以下、好ましくは125g/eq以上220g/eq以下、より好ましくは125g/eq以上210g/eq以下である。反応性基当量がこの範囲内であれば、本発明の樹脂組成物の硬化物は、架橋密度の上昇が抑えられ、架橋点間分子量が増大することで、衝撃時に架橋点間の分子鎖が運動する余地を持つことができ、耐衝撃性が向上し、靱性が良好となる。結果として、架橋構造による耐熱性の向上と靱性を両立することができる。ここで、反応性基当量とは、反応性基1個あたりの分子量を示す値である。たとえば、エポキシ基が反応性基である場合は、エポキシ当量と呼ばれる。エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方(JISK7236)等の公知の方法を用いて反応性基当量は求めることができる。
また、反応性基当量100g/eq以上300g/eq下、かつ反応性基3個以上6個以下であることで、組成物の硬化物は、硬化後の樹脂の分子量の上昇も大きく、かつ分子鎖の絡まり合い効果も大きいため、耐熱性の向上効果が大きい。
環式化合物(B)が有する環状構造としては、例えば、単環もしくは多環の芳香環、環状脂肪族炭化水素、イソシアヌレート環などの複素環構造等が挙げられるが、芳香環、イソシアヌレート環などの剛直な環状構造を有することが好ましい。このような環状構造は、高温時であっても、運動性が低く、硬化物の耐熱性を向上させる効果が大きい。また、このような環状構造は分子間の相互作用が強く、架橋密度を実質減らした場合であっても、耐熱性の低下を抑えることができる。この効果により、硬化物が高い耐熱性と靱性を発現することができると考えられる。特に環状構造を1個以上6個以下有する場合に、耐熱性の効果が大きく、かつ、靱性を低下させる影響が低くなり、好適である。
環式化合物(B)としては、具体的には、環状構造として芳香環を有する化合物を挙げることができる。例えば、4,4’,4’’-トリヒドロキシトリフェニルメタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタンの水酸基に反応性基を導入した化合物などが挙げられる。市販品としては、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンにエピハロヒドリンを反応して得られるTECHMORE VG3101(プリンテック社製)(反応性基当量210g/eq)などを好適に用いることができる。
また、環式化合物(B)として、具体的には、環状構造としてイソシアヌレート環を有する化合物を挙げることができる。例えば、イソシアヌル酸トリス(2,3-エポキシプロピル)、イソシアヌル酸トリス(3,4-エポキシブチル)、イソシアヌル酸トリス(4,5-エポキシペンチル)、イソシアヌル酸トリス(5,6-エポキシヘキシル)などを挙げることができる。市販品としては、TEPIC(R)-VL(反応性基当量約135g/eq)、TEPIC(R)-UL(反応性基当量約195/eq)、TEPIC(R)-FL(反応性基当量約175g/eq)(日産化学社製)を好適に用いることができる。
また、環式化合物(B)として、オキセタニル基を有する化合物として例えば下記化合物等が挙げられる。
環式化合物(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計(成分(D)を含有する場合は成分(A)と成分(B)と成分(D)の合計)100質量部に対して、硬化物の耐熱性および硬さを向上させるため3質量部以上50質量部以下が好ましい。さらに硬化物の靱性を損なわないため5質量部以上40質量部以下がより好ましい。また、環式化合物(B)を10質量部以上35質量部以下含有する場合、硬化物における架橋密度を好適に調整でき、高い耐熱性と靱性を発現することができる。
<硬化剤(C)(成分(C))>
硬化剤(C)としては、光酸発生剤、光塩基発生剤、熱酸発生剤などのカチオン重合性開始剤を用いることができる。本発明の効果を損なわない範囲で、これらを単独で、もしくは、複数組み合わせて用いてもよい。光硬化にて立体造形物を形成する場合には、本発明の硬化性樹脂組成物の経時での安定性や立体造形方法の制約により、光酸発生剤、光塩基発生剤を用いることが好ましく、光酸発生剤を用いることが特に好ましい。また、硬化剤(C)として、ラジカル重合開始剤、例えば熱潜在性硬化剤等のその他の硬化剤を含有してもよい。
[カチオン重合開始剤]
(光酸発生剤)
光酸発生剤は、例えば紫外線等のエネルギー線の照射によりカチオン重合を開始することのできる酸を発生する光カチオン重合性開始剤である。立体造形用の硬化性樹脂として用いる場合には、光カチオン重合性開始剤を使用することが好ましい。
光カチオン重合性開始剤としては、例えば、カチオン部分が、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Feカチオンであり、アニオン部分が、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、[BX4]-(但し、Xは少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)で構成されるオニウム塩を単独で使用または2種以上を併用することができる。
芳香族スルホニウム塩としては、例えばビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、芳香族ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、芳香族アンモニウム塩としては、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、チアンスレニウム塩としては、5-メチルチアンスレニウムヘキサフルオロホスフェート、5-メチル-10-オキソチアンスレニウムテトラフルオロボレート、5-メチル-10,10-ジオキソチアンスレニウムヘキサフルオロホスフェート等を使用することができる。
また、チオキサントニウム塩としては、S-ビフェニル2-イソプロピルチオキサントニウムヘキサフルオロホスフェート等を使用することができる。
また、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe塩としては、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
光カチオン重合性開始剤としては、例えば、CPI(R)-100P、CPI(R)-110P、CPI(R)-101A、CPI(R)-200K、CPI(R)-210S(以上、サンアプロ社製)、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI-6990、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI-6992、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI-6976(以上、ダウ・ケミカル日本社製)、アデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172、アデカオプトマーSP-300(以上、(株)ADEKA製)、CI-5102、CI-2855(以上、日本曹達(株)製)、サンエイド(R)SI-60L、サンエイド(R)SI-80L、サンエイド(R)SI-100L、サンエイド(R)SI-110L、サンエイド(R)SI-180L、サンエイド(R)SI-110、サンエイド(R)SI-180(以上、三新化学工業社製)、エサキュア(R)1064、エサキュア(R)1187(以上、ランベルティ社製)、オムニキャット550(アイジーエム レジン社製)、イルガキュア(R)250(BASF社製)、ロードシルフォトイニシエーター2074(RHODORSILPHOTOINITIATOR2074(ローディア・ジャパン(株)製)等が市販されている。
本発明では、光カチオン重合開始剤を2種類以上併用してもよいが、単独で用いてもよい。また、造形後の熱処理で重合反応を進めるために、熱カチオン重合開始剤などそのほかの硬化剤を同時に含有していてもよい。
光酸発生剤の添加量としては、成分(A)と成分(B)の合計(成分(D)を含有する場合は成分(A)と成分(B)と成分(D)の合計)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。光酸発生剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。開始剤量が多いと、光の透過性が低下し、重合が不均一になることがある。
(光塩基発生剤)
光塩基発生剤とは、紫外線や可視光などのエネルギー線の照射によって塩基を発生する化合物を言う。特に、光に対する感度が良好であることから、ボレートアニオンを含む塩であることが好ましい。具体的な商品としては、サンアプロ株式会社製のU-CAT 5002などや昭和電工株式会社製のP3B、BP3B、N3B、MN3Bなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
光塩基発生剤の添加量としては、成分(A)と成分(B)の合計(成分(D)を含有する場合は成分(A)と成分(B)と成分(D)の合計)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。光塩基発生剤の量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。
(熱酸発生剤)
熱酸発生剤は熱カチオン重合開始剤とも呼ばれる。加熱によりカチオン種を含む化合物が励起され、熱分解反応が起こり熱硬化を進行させる硬化剤として実質的な機能を発揮するものである。熱カチオン重合開始剤は、硬化剤として一般に使用されている酸無水物類、アミン類、フェノール樹脂などとは異なり、樹脂組成物に含まれていても、樹脂組成物の常温での経時的な粘度上昇やゲル化を引き起こすことない。そのため、ハンドリング性に優れた一液性樹脂組成物を提供することが可能となる。
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、ジフェニル-p-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファートなどが挙げられる。
本発明では、熱カチオン重合開始剤として、例えば、ジアゾニウム塩系化合物であるAMERICUREシリーズ(アメリカン・スキャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、ヨードニウム塩系化合物であるUVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、WPIシリーズ(和光純薬社製)、スルホニウム塩系化合物であるCYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サートマー社製)、オプトマーSPシリーズ、オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)等の市販品を使用できる。
本発明では、熱カチオン重合開始剤を2種類以上併用してもよいが、単独で用いてもよい。また、造形後の熱処理で重合反応を進めるために、高温で分解する熱カチオン重合開始剤を用いてもよい。
熱酸発生剤の添加量としては、成分(A)と成分(B)の合計(成分(D)を含有する場合は成分(A)と成分(B)と成分(D)の合計)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。熱酸発生剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。
[ラジカル重合開始剤]
本発明では、特に、ラジカル重合性化合物(F)を含有する場合、ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。
ラジカル重合開始剤は、主に分子内開裂型と水素引抜き型に分類される。分子内開裂型のラジカル重合開始剤では、特定波長の光を吸収することで、特定の部位の結合が切断され、その切断された部位にラジカルが発生し、それが重合開始剤となりラジカル重合性化合物(F)の重合が始まる。一方、水素引き抜き型の場合は、特定波長の光を吸収し励起状態になり、その励起種が周囲にある水素供与体から水素引き抜き反応を起こし、ラジカルが発生し、それが重合開始剤となりラジカル重合性化合物(F)の重合が始まる。
分子内開裂型光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤が知られている。これらはカルボニル基に隣接した結合がα開裂して、ラジカル種を生成するタイプのものである。アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤等がある。具体的な化合物としては、例えば、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(イルガキュア(R)651、BASF社製)等があり、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(ダロキュア(R)1173、BASF社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア(R)184、BASF社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア(R)2959、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(イルガキュア(R)127、BASF社製)等があり、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(イルガキュア(R)907、BASF社製)あるいは2-ベンジルメチル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(イルガキュア(R)369、BASF社製)等があるが、これに限定されることはない。アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ルシリン(R)TPO、BASF社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア(R)819、BASF社製)等があるが、これに限定されることはない。オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤としては、(2E)-2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1-オン(イルガキュア(R)OXE-01、BASF社製)等が挙げられるが、これに限定されることはない。
水素引き抜き型ラジカル重合開始剤としては、2-エチル-9,10-アントラキノン、2-t-ブチル-9,10-アントラキノン等のアントラキノン誘導体、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体が挙げられるが、これに限定されることはない。
本発明では、光ラジカル重合開始剤を2種類以上併用してもよいが、単独で用いてもよい。また、造形後の熱処理で重合反応を進めるために、熱ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。
光ラジカル重合開始剤の添加量としては、ラジカル重合性化合物(F)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。光ラジカル重合開始剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。開始剤量が多いと、光の透過性が低下し、重合が不均一になることがある。
また、熱ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生するものであれば特に制限されず従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、アゾ系化合物、過酸化物及び過硫酸塩等を好ましいものとして例示することができる。アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレ-ト)、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)等が挙げられる。過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート及びジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤の添加量としては、ラジカル重合性化合物(F)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。重合開始剤を過剰に添加すると分子量が伸びず、物性の低下する恐れがある。
[その他の硬化剤]
硬化剤(C)として、以下の熱潜在性硬化剤を用いることができる。熱潜在性硬化剤とは、過熱により熱硬化を進行させる硬化剤を指す。
酸無水物類(酸無水物系硬化剤)としては、公知乃至慣用の酸無水物系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸等)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等)、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4-(4-メチル-3-ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、取り扱い性の観点で、25℃で液状の酸無水物[例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等]が好ましい。一方、25℃で固体状の酸無水物については、例えば、25℃で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化剤(C)としての取り扱い性が向上する傾向がある。酸無水物系硬化剤としては、硬化物の耐熱性、透明性の観点で、飽和単環炭化水素ジカルボン酸の無水物(環にアルキル基等の置換基が結合したものも含む)が好ましい。
アミン類(アミン系硬化剤)としては、公知乃至慣用のアミン系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-3,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、トリレン-2,4-ジアミン、トリレン-2,6-ジアミン、メシチレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,6-ジアミン等の単核ポリアミン、ビフェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、2,5-ナフチレンジアミン、2,6-ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
フェノール類(フェノール系硬化剤)としては、公知乃至慣用のフェノール系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、パラキシリレン・メタキシリレン変性フェノール樹脂等のアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールプロパン等が挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、例えば、分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のいずれか一方又は両方を有するポリアミド樹脂等が挙げられる。
イミダゾール類(イミダゾール系硬化剤)としては、公知乃至慣用のイミダゾール系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2-フェニルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-エチル-4-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-s-トリアジン等が挙げられる。
ポリメルカプタン類(ポリメルカプタン系硬化剤)としては、例えば、液状のポリメルカプタン、ポリスルフィド樹脂等が挙げられる。
ポリカルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、カルボキシ基含有ポリエステル等が挙げられる。
その他の硬化剤の添加量は、成分(A)と成分(B)の合計(成分(D)を含有する場合は成分(A)と成分(B)と成分(D)の合計)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上75質量部以下、より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。熱潜在性重合開始剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向があり、多すぎると架橋反応が進行し、靱性の劣化を招く傾向がある。
<オキセタン化合物(D)(成分(D))>
本発明の硬化性樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)以外のオキセタン化合物を含有することが好ましい。
オキセタン化合物(D)は一種類のオキセタン化合物のみから構成されていてもよく、複数のオキセタン化合物で構成されていてもよい。オキセタニル基を有する化合物であれば特に限定されない。オキセタン化合物(D)のオキセタニル基の数は特に限定はされない。例えば、分子中にオキセタニル基を1つ有する単官能オキセタン化合物、分子中にオキセタニル基を2つ有する二官能オキセタン化合物、分子中にオキセタニル基を3個有する三官能オキセタン化合物、分子中にオキセタニル基を4個以上有する四官能以上のオキセタン化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、オキセタン化合物(D)は分子中に芳香環やエーテル結合をもつオキセタン化合物を用いてもよい。これらのうちでも、特に、芳香環を有さない二官能オキセタン化合物や単官能オキセタン化合物が好ましい。
オキセタン化合物(D)の具体的な例としては、例えば、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヘキシルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-アリルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ベンジルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-メタクリルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-カルボキシオキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン等のモノオキセタン化合物;ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、4,4’-ビス[3-エチル-(3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、キシリレンビスオキセタン、炭酸ビス[(エチル(3-オキセタニル)]メチル、アジピン酸ビス[エチル(3-オキセタニル)]エチル、テレフタル酸ビス[エチル(3-オキセタニル)]メチル、1,4-シクロヘキサンカルボン酸ビス[エチル(3-オキセタニル)]メチル、ビス{4-[エチル(3-オキセタニル)メトキシカルボニルアミノ]フェニル}メタン、α,ω-ビス-{3-[1-エチル(3-オキセタニル)メトキシ]プロピル(ポリジメチルシロキサン)等のジオキセタン化合物;及びオリゴ(グリシジルオキセタン-co-フェニルグリシジルエーテル)等の多オキセタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、粘度が低くて取扱いやすく、且つ、高い反応性を示すことから、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、4,4’-ビス[3-エチル-(3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、キシリレンビスオキセタンが好ましく、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、4,4’-ビス[3-エチル-(3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルがより好ましい。
オキセタン化合物(D)としては、カチオン重合性モノマーを主成分とする市販品のものを用いることができ、例えば、アロンオキセタン(R)OXT-121、OXT-221、EXOH、POX、OXA、OXT-101、OXT-211、OXT-212(東亞合成社製)、ETERNACOLL(R)OXBP、OXTP(宇部興産社製)等が挙げられる。
また、オキセタン化合物(D)は、耐熱性を向上するため、下記一般式(4)で示される化合物が好ましい。
一般式(4)において、X8は、2価のアルコールの残基、または、-O-、-C-O-、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合からなる群から選ばれる結合を1つ以上含む2価の連結基を表し、芳香環を含んでもよい。一般式(4)で示される2価の化合物は、硬化性樹脂(A)の弾性率を上げるのに好適である。
一般式(4)で示される化合物としては、上記ジオキセタン化合物として例示した化合物等が挙げられる。市販品としてはアロンオキセタン(R)OXT-121、OXT-221(東亜合成社製)、ETERNACOLL(R)OXBP(宇部興産社製)などが挙げられる。これらの中でも、特に、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルは、エーテル結合を有し、柔軟性を有することで靱性を担保し、かつ、X8の分子量が小さく架橋密度を向上できる点で、本発明の効果を得るために好適である。また、4,4’-ビス[3-エチル-(3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルについては、芳香環を有し、本発明の成分(A)が有する芳香環、成分(B)が有する環状構造との相互作用が強固であり、耐熱性を向上させる点で好適である。
また、オキセタン化合物(D)は、下記一般式(5)で示される化合物が好ましい。
一般式(5)で示される化合物が有するオキセタニル基の数は特に限定はされない。例えば、分子中にオキセタニル基を2つ有する2官能オキセタン化合物、分子中にオキセタニル基を3つ有する3官能オキセタン化合物、分子中にオキセタニル基を4つ以上有する4官能以上のオキセタン化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、好ましくは、分子中にオキセタニル基を2つ有する2官能オキセタン化合物である。
上記一般式(5)において、X4は、芳香環を構成する炭素原子で連結する2価の連結基である。X4としては、例えば、芳香環を一つのみ有する構造からなる炭化水素基、芳香環が単結合を介して結合した構造からなる炭化水素基、芳香環が脂肪族炭素原子を介して結合した構造からなる炭化水素基、芳香環が脂肪族環状炭化水素基を介して結合した構造からなる炭化水素基、複数のベンゼン環が縮合多環化した構造からなる炭化水素基、芳香環がアラルキル基を介して結合した構造からなる炭化水素基、芳香環が酸素原子または硫黄原子を介して結合した構造からなる炭化水素基等を挙げることができる。具体的な例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、フルオレンジイル基、ジフェニルメタンジイル基、ジフェニルエタンジイル基、ジフェニルプロパンジイル基、ジフェニルエーテルジイル基、ジフェニルスルホンジイル基、トリフェニルエタンジイル基、テトラフェニルメタンジイル基等が挙げられ、これらは無置換でも、置換基を有していても良い。有していてもよい置換基としては、例えば、炭素原子数1以上6以下の直鎖状または分岐状のアルキル基等が挙げられる。これらのうち好ましくは、置換基を有していても良い、フェニレン基、ビフェニレン基またはジフェニルメタンジイル基である。
X5、X6は、独立に、水素原子あるいは炭素数1以上6以下のアルキル基である。X5、X6で表される炭素数1以上6以下のアルキル基の具体的な例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の非環式アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環式アルキル基等が挙げられる。これらのうち好ましくは、メチル基、エチル基である。
L5、L6は、独立に、-O-、-C-O-、エステル結合及びエーテル結合からなる群から選ばれる結合を含む2価の連結基である。以下、「-O-、-C-O-、エステル結合及びエーテル結合からなる群から選ばれる結合」を「第二の特定の結合」と称する場合がある。L5、L6は、第二の特定の結合で隣接基(メチレン基、X4)と直接連結する連結基であってもよいし、第二の特定の結合と隣接基の間に一以上の炭素原子を介して連結する連結基であってもよい。第二の特定の結合が-O-、-C-O-のいずれかの場合、第二の特定の結合の酸素原子は、第二の特定の結合と隣接基の間に介在する炭素原子または隣接基の炭素原子と結合してエーテル結合を形成することが好ましい。L5、L6の具体例としては、例えば、前記一般式(1-a)(1-d)等が挙げられる。
sで表される繰り返し構造単位の平均値は、0.1以上10以下の実数であり、硬化物の靱性の観点から0.2以上5以下が好ましく、オキセタン化合物の粘度の観点から、0.5以上3以下がより好ましい。
一般式(5)で示される化合物としては、ETERNACOLL(R) OXBP(宇部興産社製)、ETERNACOLL(R) OXIPA(宇部興産社製)、アロンオキセタン OXT-121(東亞合成社製)などの市販品を好適に用いることができる。
一般式(5)で示される化合物の具体例としては、下記構造で表される化合物が、靱性と耐熱性の両立の観点から好ましい。
オキセタン化合物(D)の含有量は、成分(A)と成分(B)と成分(D)の合計100質量部に対して、硬化性樹脂(A)の反応促進効果の点から0質量部以上90質量部以下が好ましい。オキセタン化合物を添加することで、本発明の樹脂組成物の粘度を低下させ、ハンドリング性を高める効果がある。また、より好ましくは、5質量部以上30質量部以下含有していることであり、その硬化物は分子量の成長および適度な架橋密度を有することで、優れた靱性と耐熱性を発現することができる。
<カチオン重合性化合物(E)(成分(E))>
本発明の硬化性樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(D)以外のカチオン重合性化合物として、例えば、エポキシ樹脂等を含有してもよい。
本発明で用いる成分(A)、成分(B)以外のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらエポキシ樹脂は多量体としてオリゴマー化したものでもよいが、本発明を好適に用いることができる光硬化樹脂の場合、結晶性が低く固形化しづらいが、硬化物は硬くなる傾向にあるため、特にビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも、光硬化樹脂組成物が低粘度になる点から、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやビスフェノールFジグリシジルエーテルなどの単量体が望ましい。
本発明のエポキシ樹脂としては、硬化物の硬さを向上させるために、芳香環を有していることが好ましい。
本発明の効果発現のために、カチオン重合性化合物(E)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計(成分(D)を含有する場合は成分(A)と成分(B)と成分(D)の合計)100質量部に対して0質量部以上75質量部以下が好ましい。カチオン重合性化合物(E)の量が過剰である場合、本発明の効果が損なわれる恐れがある。
<ラジカル重合性化合物(F)(成分(F))>
本発明の硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物(F)として、例えば、(メタ)アクリレート化合物などを含有してもよい。
(メタ)アクリレート化合物とは、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。本発明においては、一般的な方法で重合可能な重合性の(メタ)アクリル化合物であれば、用いることができる。単官能(メタ)アクリレート化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物は、1種類以上を任意に混合して使用することができる。
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサメチレンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
本発明の効果発現のために、ラジカル重合性化合物(F)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計(成分(D)を含有する場合は成分(A)と成分(B)と成分(D)の合計)100質量部に対して0質量部以上75質量部以下が好ましい。ラジカル重合性化合物(F)の量が過剰である場合、本発明の効果が損なわれる恐れがある。
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤が含有されていてもよい。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエステル、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、ポリシロキサン、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂などの樹脂、あるいはポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのエンジニアリングプラスチック、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー、フッ素含有モノマー、シロキサン構造含有モノマーなど反応性モノマー、金、銀、鉛などの軟質金属、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、窒化ケイ素、セレン化モリブデンなどの層状結晶構造物質、フェノチアジン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等の重合禁止剤、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などの光増感剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機充填剤、顔料、染料、酸化防止剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤等を挙げることができる。
<硬化性樹脂組成物>
本発明の組成物は、必須成分(A)、(B)及び(C)、並びに、必要に応じて成分(D)及びその他の任意成分の適量を攪拌容器に仕込み、通常、30℃以上120℃以下、好ましくは50℃以上100℃以下で攪拌することにより製造することができる。その際の攪拌時間は、通常1分以上6時間以下、好ましくは10分以上2時間以下である。成分(A)と成分(B)の合計(成分(D)を含有する場合は成分(A)と成分(B)と成分(D)の合計)の含有量は、成分(C)を除いた硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下、より好ましくは25質量部以上100質量部以下、さらに好ましくは75質量部以上100質量部以下であることで、本発明の効果を十分に得ることができる。
本発明の組成物の25℃における粘度は、好ましくは50Pa・s以上10,000mPa・s以下であり、より好ましくは70mPa・s以上5,000mPa・s以下である。
以上のようにして得られる本発明の組成物は、光学的立体造形法における光硬化性樹脂組成物として好適に使用される。すなわち、本発明の光硬化性樹脂組成物に対して、紫外線、電子線、X線、放射線などの活性エネルギー線を選択的に照射して硬化に必要なエネルギーを供給する光学的立体造形法により、所望の形状の立体造形物を製造することができる。
<硬化物>
本発明の組成物は、硬化性樹脂(A)、環式化合物(B)、硬化剤(C)が必須成分であり、これらを硬化せしめることで硬化物を得ることができる。硬化方法は含有する硬化剤に合わせ、活性エネルギー線硬化、熱硬化などの任意の公知の方法を用いて、硬化することができる。硬化方法は複数種類を組み合わせてもよい。
得られた本発明の硬化物では、硬化性樹脂(A)は芳香環を有するため分子間の相互作用が強く、環式化合物(B)は環状構造により強い分子間相互作用を発揮する。また、硬化性樹脂(A)のX3が柔軟な骨格であることで、その骨格は折れ曲がった状態で硬化することが可能であり、剛直なX1やX2は硬化物中で比較的自由な配置を取ることができる。そのため、硬化後において、硬化性樹脂(A)の剛直な構造と環式化合物(B)の環状構造との相互作用がきわめて効果的に発生する。この様な分子間の相互作用を効果的に発生させうる構造を有することで、硬化性樹脂(A)と環式化合物(B)を含む本発明の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物は、通常相反する物性である耐熱性と靱性を両立させるという特徴的な効果を発揮すると考えられる。また、硬化性樹脂(A)が一般式(1-d)乃至(1-g)のように、-O-、-C-O-、-S-、-C-S-、エーテル結合及びチオエーテル結合からなる群から選ばれる結合を有すると、剛直なX1やX2は硬化物中でさらに自由な配置を取りやすくなる。そのため、耐熱性と靱性を両立させるという効果を向上することができる。
また、2官能性の硬化性樹脂(A)と多官能性の環式化合物(B)を組み合わせることで、硬化物の架橋密度を好適に制御しながら網目構造を取らせ、成分(A)と成分(B)の相互作用を強化でき、耐熱性と靱性の両立に寄与している。
オキセタン化合物(D)を含有すると、オキセタン化合物(D)と硬化性樹脂(A)及び環式化合物(B)の共重合で硬化物の分子量上昇が起り、重合時に発生するマイクロドメイン界面での接着力が高まり、マイクロドメイン起因の機械物性低下を抑制できる。この効果は、特に一般式(5)で示す2官能のオキセンタ化合物の際に顕著となる。
<立体物造形物の製造方法>
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤(C)として光酸発生剤または光塩基発生剤を含有することで、光学的立体造形方法に好適に用いることができる。硬化性樹脂組成物の硬化物は、従来既知の光学的立体造形方法および装置のいずれを使用して作製してもよい。好ましい光学的立体造形法の代表例としては、スライスデータに基づいて硬化性樹脂組成物を層毎に光硬化させて造形物を造形する工程を有する方法である。具体的には、液状をなす硬化性樹脂組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように、スライスデータに基づいて活性エネルギー線を選択的に照射して硬化層を形成する。次いでこの硬化層に未硬化の硬化性樹脂組成物を供給し、同様にスライスデータに基づいて活性エネルギー光線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する。この積層操作を繰り返すことによって最終的に目的とする立体的造形物を得る方法を挙げることができる。
その際の活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線などを挙げることができる。そのうちでも、300nm以上450nm以下の波長を有する紫外線が経済的な観点から好ましく用いられる。その際の光源としては、紫外線レーザー(例えばArレーザー、He-Cdレーザーなど)、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯などを使用することができる。そのうちでも、レーザー光源が、エネルギーレベルを高めて造形時間を短縮でき、しかも集光性に優れていて高い造形精度を得ることができる点から、好ましく採用される。
硬化性樹脂組成物よりなる造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する各硬化樹脂層を形成するに当たっては、レーザー光などのような点状に絞られた活性エネルギー線を使用して点描または線描方式で硬化樹脂層を形成してもよい。また、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターなどのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して造形面に活性エネルギー線を面状に照射して硬化樹脂層を形成させる造形方式を採用してもよい。
光学的立体造形法の代表的な一例を説明すると、次のとおりである。まず、収容容器内において昇降自在に設けられた支持ステージを樹脂組成物の液面から微小量降下(沈降)させることにより、支持ステージ上に樹脂組成物を供給して、その薄層(1)を形成する。次いで、この薄層(1)に対して選択的に光を照射することにより、固体状の硬化樹脂層(1)を形成する。次いで、この硬化樹脂層(1)上に硬化性樹脂組成物を供給してその薄層(2)を形成し、この薄層(2)に対して選択的に光照射することにより、硬化樹脂層(1)上にこれと連続して一体的に積層されるように新しい硬化樹脂層(2)を形成する。そして、光照射されるパターンを変化させながら或いは変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化樹脂層(1,2,・・・n)が一体的に積層されてなる立体造形物が造形される。
このようにして得られる立体造形物を収容容器から取り出し、その表面に残存する未反応の硬化性樹脂組成物を除去した後、必要に応じて洗浄する。ここで、洗浄剤としては、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類に代表されるアルコール系有機溶剤;アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等に代表されるケトン系有機溶剤;テルペン類に代表される脂肪族系有機溶剤を挙げることができる。なお、洗浄剤で洗浄した後には必要に応じて、光照射又は熱照射によるポストキュアーを行っても良い。ポストキュアーは、立体造形物の表面及び内部に残存することのある未反応の硬化性樹脂組成物を硬化させることができ、造形物の表面のべたつきを抑えることができる他、造形物の初期強度を向上させることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[材料]
以下、実施例および比較例にて使用した材料を列記する。
<硬化性樹脂(A)>
A1:EPICLON EXA-4816(DIC株式会社製、前記式(A-i)で示されn=1である化合物を99%含有)
<環式化合物(B)>
B1:TECHMORE VG3101(プリンテック社製、反応性基当量210g/eq、下記一般式(6)の化合物を95%以上含有)
B2:TEPIC(R)-VL(日産化学社製、下記一般式(7)の化合物を98%含有、反応性基当量約135g/eq)
B3:TEPIC(R)-UL(日産化学社製、反応性基当量約195/eq、下記一般式(8))
<硬化剤(C)>
C1:CPI(R)-210S(サンアプロ社製)
<オキセタン化合物(D)>
D1:ETERNACOLL(R) OXBP(宇部興産社製、下記一般式(9))
D2:OXT-221(東亞合成社製、下記一般式(10))
D3:OXT-101(東亞合成社製、下記一般式(11))
<カチオン重合性化合物(E)>
E1:エポキシ樹脂である2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン(東京化成工業社、下記一般式(12))
E2:エポキシ樹脂であるjER(R)806(三菱ケミカル社製、下記一般式(13))
[硬化性樹脂組成物の製造]
表1,2に示す配合比にて各成分を配合し、75℃に加熱して2時間かくはん装置でかくはんし、硬化性樹脂組成物を得た。表1,2の配合比は質量部で示している。
[試験片の作成]
調製した硬化性樹脂組成物から、下記の方法で硬化物を作成した。まず、二枚の石英ガラスの間に長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの金型を挟み、ここに硬化性樹脂組成物を流し込んだ。流し込んだ硬化性樹脂組成物に対して紫外線照射機(HOYA CANDEO OPTRONICS社製、商品名「LIGHT SOURCE EXECURE 3000」)で5mW/cm2の紫外線を金型の両面から120秒間ずつ照射し、仮硬化を行った。その後、再度両面から600秒ずつ紫外線を照射することで本硬化を行い、硬化物を得た(総エネルギーとして7200mJ/cm2)。得られた硬化物を50℃の加熱オーブン内に入れて1時間、100℃の加熱オーブン内に入れて2時間熱処理を行うことで、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を得た。
[評価]
(シャルピー衝撃強さ)
試験片についてJIS K 7111に準じて、切欠き形成機(東洋精機製作所製、商品名「ノッチングツール A-4」)にて試験片中央部に深さ2mm、45°の切欠き(ノッチ)を入れた。衝撃試験機(東洋精機製作所製、商品名「IMPACT TESTER IT」)用い、試験片の切欠きの背面から2Jのエネルギーで破壊する。150°まで振り上げたハンマーが試験片破壊後に振りあがる角度から破壊に要したエネルギーを算出し、それをシャルピー衝撃強さとし、靱性の指標とした。得られた結果を表1,2に示す。
(荷重たわみ温度)
試験片についてJIS K 7191-2に準じて、に荷重たわみ温度試験機(東洋精機製作所製、商品名「No.533 HDT 試験装置 3M-2」)用い、曲げ応力1.80MPaで、室温から2℃毎分で昇温した。試験片のたわみ量が0.34mmに達した温度を荷重たわみ温度とし、耐熱性の指標とした。得られた結果を表1,2に示す。
(架橋密度)
各成分の分子量と反応性基の数から、各成分の密度を1g/cm3として、配合比に基づく計算によって架橋密度を求めた。架橋密度算出方法は、エポキシ基、オキセタニル基、シクロアルケンオキシド基も、重合した際、その反応性基から2個の分子鎖が重合で分岐することになる。よって、その数の分子鎖がこの1分子を架橋としており、1つの分子鎖が別の1分子(架橋点)と共有しているので、反応性基x2の半分に換算して架橋密度を算出する。1分子から生じる分岐鎖の数は、反応性基数x2本となる。よって、架橋密度を計算する場合、(反応性基数x2)/2/(分子量)の式から算出した。配合されている各材料について前記方法で算出した架橋密度に配合比率をかけた値を全材料について積算し、最終的な硬化物の架橋密度とした。なお、反応性基を1個しか有さない分子は、分岐を発生しないため、反応性基を0として計算した。
実施例1~実施例12(実施例5は参考例)に示す本発明の樹脂組成物から得られた硬化物は、比較例1~比較例8で示す成分(B)を含有しない組成物から得られた硬化物に比べ、靱性と耐熱のバランスが優れており本発明の効果を得るために好適である。また、実施例5に示す本発明の樹脂組成物から得られた硬化物は、比較例9~比較例10で示すエポキシ樹脂(E)の硬化物に比べ、はるかに優れた靱性と耐熱性を示している。
架橋密度とシャルピー衝撃強さの結果を、実施例は●、比較例は▲でプロットしたものを図1に示す。図1に示すように、架橋密度とシャルピー衝撃強さについては相関がみられ、この架橋密度が定まれば、ほぼ予想通りのシャルピー衝撃強さとなることがわかる。一方、架橋密度と荷重たわみ温度の結果を、実施例は●、比較例は▲でプロットしたものを図2に示す。通常、エポキシ樹脂の硬化物において、架橋密度の計算値から荷重たわみ温度を予測すると比較例の結果(▲)の範囲に入ると予測される。しかし、本発明の硬化性樹脂組成物から得られた硬化物は実施例(●)の荷重たわみ温度となり、通常予測しうる範囲を超え、優れた荷重たわみ温度の硬化物が得られることがわかる。結果、本発明の硬化性樹脂組成物は、予想に反し、優れた耐熱性と優れた靱性を両立させうる効果を有することが明らかとなった。
以上の結果から、本発明の硬化性樹脂組成物は、靱性と耐熱性を両立する優れた効果を有し、光学的立体造形に好適に使用できることが明らかとなった。