JP4466396B2 - 光導波路の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、2種の樹脂溶液を混合してなる硬化性溶液を用いて、コア部およびクラッド部を含む光伝送路(光導波路)を製造する方法が提案されている(特許文献1)。
この方法は、第1の光硬化性樹脂溶液と該第1の光硬化性樹脂溶液より硬化開始波長が短い第2の光硬化性樹脂溶液との混合溶液に対して、第1の光硬化性樹脂溶液のみを硬化させる波長帯で光ビームを入射させて軸状のコア部を作製した後、このコア部の外周に残存する混合溶液に対して、前記第1および第2の光硬化性樹脂溶液を硬化させる波長帯で光を照射させて、コア部の周囲にクラッド部を作製し、コア部の屈折率がクラッド部の屈折率より大である光伝送路を完成させるものである。
また、上述の文献に記載された技術は、光照射のみによって混合溶液を硬化させるものであるため、光ファイバ等の光学部品(特にガラス部品等)との接合面において大きな接着力を得ることができない。
そこで、本発明は、硬化後においても、コア部とクラッド部との屈折率の差を広げることができるとともに、光ファイバ等の光学部品との接合面において優れた接着性を発揮しうる光導波路の製造方法を提供することを目的とする。
[1] (1)(A)300nmより短い波長を有する光の照射によって屈折率が増大する硬化物を形成しうる、芳香環を有するラジカル重合性化合物、(B)300nm以上に感光波長を有する光ラジカル重合開始剤、および(C)成分(A)の硬化物よりも小さな屈折率を有する硬化物を形成しうる、環状エーテル構造を有する熱硬化性化合物、を含む液状の硬化性組成物に対して、300nm以上の波長を有するビーム状の光を照射して、成分(A)を主体とする硬化体であるコア部を形成する工程と、(2)前記コア部の形成後、前記硬化性組成物を加熱して、前記コア部の周囲に、成分(C)を主体とする硬化体であるクラッド部を形成する工程と、(3)前記クラッド部の形成後、前記コア部に、300nmより短い波長を有する光を照射して、前記コア部の屈折率を増大させる工程と、を含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
また、本発明の光導波路の製造方法によれば、クラッド部の形成材料として成分(C)(熱硬化性化合物)を用いているので、特に、自己形成型の光導波路の用途において、光ファイバ等の光学部品との接合面にて優れた接着性を発揮することができる。
以下、成分(A)〜(C)、および任意に配合しうる他の成分について、詳しく説明する。
[成分(A)]
成分(A)は、300nmより短い波長を有する光の照射によって屈折率が増大する硬化物を形成しうるラジカル重合性化合物である。
成分(A)は、光導波路のコア部を形成するための材料であり、後述のクラッド部を形成するための成分(C)の硬化物と比べて、硬化後の屈折率が高くなるように、その化合物の種類が選択される。
成分(A)の硬化物の屈折率を「X」とし、成分(C)の硬化物の屈折率を「Y」とする場合、XとYとの比屈折率差(波長589nmのNa−D線;25℃)、すなわち、(X/Y−1)×100(%)の値は、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、特に好ましくは0.3%以上である。
ラジカル重合性基の例としては、エチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する基の例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
ラジカル重合性基は、分子中に1つ含まれていてもよいし、2つ以上含まれていてもよい。本発明において、ラジカル重合性基を2つ以上含む化合物は、光照射によってコア部を容易かつ効率的に形成させることから、好ましく用いられる。
300nmより短い波長を有する光の照射によって、成分(A)の硬化物の屈折率を増大させる構造部分(以下、屈折率調整用構造部分ともいう。)の例としては、芳香環が挙げられる。
芳香環としては、ベンゼン基、ナフタレン基、フルオレン基、アントラセン基、インデン基、ビフェニル基、ジフェニルアルカン基等の芳香族基もしくはそのハロゲン化物等が挙げられる。
屈折率調整用構造部分による屈折率(波長589nmのNa−D線;25℃)の増大の程度は、成分(A)および成分(B)のみからなる硬化物の屈折率として、好ましくは、0.002以上、より好ましくは0.003以上、特に好ましくは0.004以上であり、成分(A)〜成分(C)を含む光導波路中のコア部の屈折率として、好ましくは、0.0005以上、より好ましくは0.001以上である。
屈折率調整用構造部分は、分子中に1つ含まれていてもよいし、2つ以上含まれていてもよい。
成分(A)は、ビニロキシ基、プロペニル基、エチニル基等の感光性基を有することができる。感光性基を有することによって、光照射による硬化により耐熱性が向上する。
(メタ)アクリロイル基を1つ有する化合物の例としては、ナフチル(メタ)アクリレート、フルオレニル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノフェニルエーテルの(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルの(メタ)アクリレート、ビニロキシフェニル(メタ)アクリレート、プロペニルフェニル(メタ)アクリレート、エチニルフェニル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシラニルフェニルアクリレート、ノナメチルトリシラニルフェニル(メタ)アクリレート、ビニロキシフェノキシエチル(メタ)アクリレート、プロペニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を2つ有する化合物の例としては、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールFエポキシジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールFジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールFエポキシジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビニル基を1つ有する化合物の例としては、スチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、2−トリフルオロメチルノルボルネン、トリブロモスチレン、ビニルナフタレン、N―ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、ビニルアントラセン、ビニルビフェニル等が挙げられる。
ビニル基を2つ有する化合物の例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルピリジン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。
ビニル基を3つ以上有する化合物の例としては、トリビニルベンゼンが挙げられる。
成分(A)の市販品としては、以下のものが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を1つ有する化合物の市販品の例としては、アロニックスM113、M110、M101、M102、M5700、TO−1317(以上、東亞合成(株)製)、ビスコート#192、#193、#220、3BM(以上、大阪有機化学工業(株)製)、NKエステルAMP−10G、AMP−20G(以上、新中村化学工業(株)製)、ライトアクリレートPO−A、P−200A、エポキシエステルM−600A(以上、共栄社化学(株)製)、PHE、CEA、PHE−2、BR−30、BR−31、BR−31M、BR−32(以上、第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を2つ有する化合物の市販品の例としては、ビスコート#700、#540(以上、大阪有機化学工業(株)製)、アロニックスM−208、M−210(以上、東亞合成(株)製)、NKエステルBPE−100、BPE−200、BPE−500、A−BPE−4(以上、新中村化学(株)製)、ライトエステルBP−4EA、BP−4PA、エポキシエステル3002M、3002A、3000M、3000A(以上、共栄社化学(株)製)、KAYARAD R−551、R−712(以上、日本化薬(株)製)、BPE−4、BPE−10、BR−42M(以上、第一工業製薬(株)製)、リポキシVR−77、VR−60、VR−90、SP−1506、SP−1506、SP−1507、SP−1509、SP−1563(以上、昭和高分子工業(株)製)、ネオポールV779、ネオポールV779MA(日本ユピカ(株)製)等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する化合物の市販品の例としては、V#295、V#300、V#360、V#GPT、V#3PA、V#400(以上、大阪有機化学工業(株)製)、ライトアクリレートTMP−A、ライトアクリレートTMP−6EO−3A、ライトアクリレートPE−4A、ライトアクリレートDPE−6A、ライトアクリレートTMP−3EO−A(以上、共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
ビニル基を1つ有する化合物の市販品の例としては、スチレン、トリブロモスチレン(和光純薬工業(株)製)、PTBS、PACS、PEES、MAF−TBN(以上、東ソー(株)製)等が挙げられる。
ビニル基を2つ有する化合物の市販品の例としては、ジビニルベンゼン(和光純薬工業(株)製)等が挙げられる。
ビニル基を3つ以上有する化合物の市販品の例としては、トリビニルベンゼン(和光純薬工業(株)製)が挙げられる。
成分(B)は、300nm以上、好ましくは400nm以上に感光波長を有する光ラジカル重合開始剤であり、成分(A)を光重合させるためのものである。
ここで、感光波長とは、規定された波長領域において実質的な光吸収能を有し、かつ光吸収の結果として不飽和ビニル基含有化合物の重合又は架橋に有効な活性ラジカル種を発生する波長のことをいい、規定された波長の光のみを吸収しラジカル種を発生することを意味するものではない。
成分(B)は、300nm以上(好ましくは400nm以上)の波長を有する光の照射によって分解し、活性ラジカル種を生成する。
成分(B)は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類等の有機化合物や、有機金属化合物から選択することができる。
400nm以上に感光波長を有する光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、BTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンその他の色素増感剤との組み合わせ、トリ(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィン、アントラキノン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。
中でも、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、トリ(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンなどが特に好ましい。
成分(B)の配合量は、成分(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。該量が0.1重量部未満の場合または5重量部を超える場合、良好な光導波路が得られ難い。
成分(B)の市販品の例としては、Irgacure819、Irgacure784、Irgacure261(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
成分(C)は、成分(A)の硬化物よりも小さな屈折率を有する硬化物を形成しうる熱硬化性化合物である。
成分(C)は、硬化後に、300nmより短い波長を有する光を照射したときに、少なくとも、成分(A)の硬化物と比べて、屈折率の増大の幅が小さいことが必要である。成分(C)は、好ましくは、300nmより短い波長を有する光を照射しても、屈折率が増大しない化合物である。
成分(C)は、好ましくは、300nmより短い波長を有する光の透過率が10%以上である化合物である。該透過率が10%未満である場合、成分(A)の硬化物であるコア部に対して、300nmより短い波長を有する光を照射する際に、クラッド部の存在が障害になり、十分な照射量を確保できないおそれがある。
成分(C)の例として、環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。
環状エーテル構造を有する化合物としては、オキシラン化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物等の脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
オキシラン化合物の例としては、エポキシノボラック樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、ソルビトールペンタグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールトリグリシジルエーテル;グリセリン、ソルビトール等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキシドやカプロラクトンを付加することにより得られるポリグリシジルエーテルやポリシクロヘキセンオキシド類等が挙げられる。
これらの市販品の例としては、UVR−6100、6105、6110、6128、6200、6216(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、2021P、2081、2083、2085、エポリードGT−300、301、302、400、401、403、PB3600、PB4700(以上、ダイセル化学工業(株)製)、KRM−2100、2110、2199、2400、2410、2408、2490、2720、2750(以上、旭電化工業(株)製)、エピコート828、812、1031、872、CT508(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、デナコールEX−611、612、512、521、411、421、313、314、321(以上、ナガセ化成(株)製)、エポライト40E、100E、70P、200P、400P、1500NP、1600、80MF、100MF、4000、3002(以上、共栄社化学(株)製)、OXA、XDO、POX、DOX、EHOX(以上、東亞合成(株)製)、MMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10(以上、大阪有機化学工業(株)製)等が挙げられる。
成分(C)の配合量は、成分(A)/成分(C)の重量比で、好ましくは0.5/100〜20/100、より好ましくは1/100〜15/100、特に好ましくは3/100〜12/100である。
成分(C)に対して、その硬化速度を高める目的で硬化剤を配合することができる。該硬化剤としては、ポリアミン類、カルボン酸、カルボン酸無水物、ポリチオール類が挙げられる。これらの中でも、適度の保存安定性が得られることから、カルボン酸無水物が好ましく用いられる。カルボン酸無水物としては、フタル酸無水物、テレフタル酸無水物、ピロメリット酸無水物などの芳香族酸無水物や、コハク酸無水物、マロン酸無水物、グルタル酸無水物等が挙げられる。該硬化剤の配合量は、成分(C)の重合性基(例えば、環状エーテル)100当量に対して50〜100当量、または成分(C)100重量部に対して、5〜100重量部である。
本発明の硬化性組成物を調製するには、成分(A)〜成分(C)、および他の任意成分を所定の容器に入れた後、ローリングブレンダー、ペイントシェーカー、回転翼を用いた磁気誘導攪拌等の撹拌手段を用いて、均一な混合液になるまで撹拌すればよい。
硬化前の硬化性組成物の粘度は、好ましくは10〜10,000mPa・s(cps)、より好ましくは100〜5000mPa・sである。該粘度が10mPa・s未満の場合、操作性が低下し、該粘度が10,000mPa・sを超えると、塗布性が低下する。
なお、硬化性組成物は、無溶剤で調製される。
光導波路の製造方法は、(1)成分(A)〜成分(C)を含む液状の硬化性組成物に対して、300nm以上の波長を有するビーム状の光を照射して、成分(A)を主体とする硬化体であるコア部を形成する工程(以下、コア部形成工程ともいう。)と、(2)工程(1)を経た硬化性組成物を加熱して、コア部の周囲に、成分(C)を主体とする硬化体であるクラッド部を形成する工程(以下、クラッド部形成工程ともいう。)と、(3)工程(2)を経たコア部に、300nmより短い波長を有する光を照射して、コア部の屈折率を増大させる工程(以下、コア部の屈折率調整工程ともいう。)を含むものである。
以下、各工程について説明する。
[(1)コア部形成工程]
本工程は、成分(A)〜成分(C)を含む液状の硬化性組成物に対して、300nm以上の波長を有するビーム状の光を照射して、成分(A)(ラジカル重合性化合物)を硬化させて、成分(A)を主体とする硬化体であるコア部を形成する工程である。
ビーム状の光の例としては、レーザー光や、レンズを用いて集光した光が挙げられる。
ビーム状の光の波長は、300nm以上、好ましくは350nm以上、より好ましくは400nm以上である。
コア部は、通常、所定の径を有する円柱状に形成される。
本工程の実施形態としては、(a)2本の光ファイバ間に液状の硬化性組成物を介在させて、2本の光ファイバの一方の端部から、ビーム状の光を他の光ファイバの端部に向けて照射して、2本の光ファイバ間にコア部を形成させるもの、(b)光ファイバと光導波路の間に、液状の硬化性組成物を介在させて、光ファイバと、光導波路のコア部のいずれか一方の端部から、ビーム状の光を他方(光導波路のコア部、または光ファイバ)の端部に向けて照射して、光ファイバと光導波路のコア部の間に、コア部を形成させるもの、等が挙げられる。
これら(a)、(b)の実施形態は、自己形成型の光導波路と称されるものであり、接続対象となる2つの光学部品間の隙間を埋めて、光信号の減衰を防止することを目的とする。
本工程後におけるコア部の屈折率(波長589nmのNa−D線;25℃)は、好ましくは1.45〜1.70、より好ましくは1.50〜1.65、特に好ましくは1.55〜1.60である。
本工程は、コア部形成工程(1)の後、硬化性組成物を加熱することによって、コア部の周囲に残存する液状の硬化性組成物に含まれている成分(C)(熱硬化性化合物)を硬化させて、コア部の周囲に、成分(C)を主体とする硬化体であるクラッド部を形成する工程である。
本工程における加熱温度は、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上、特に好ましくは60℃以上である。該加熱温度が25℃未満では、成分(C)(熱硬化性化合物)の硬化が遅く、生産性が低くなる。
本工程における加熱温度の上限値は、特に限定されないが、コスト等の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、特に好ましくは110℃以下である。
硬化性組成物の加熱時間は、成分(C)(熱硬化性化合物)の種類によっても異なるが、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5〜6時間である。
本工程後におけるクラッド部の屈折率(波長589nmのNa−D線;25℃)は、好ましくは1.40〜1.60、より好ましくは1.45〜1.55、特に好ましくは1.47〜1.52である。
なお、本工程後におけるコア部とクラッド部との比屈折率差(波長589nmのNa−D線;25℃)は、上述のとおり、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、特に好ましくは0.3%以上である。
本工程は、硬化体であるコア部に、300nmより短い波長を有する光を照射して、コア部の屈折率を増大させる工程である。
本工程によって、コア部とクラッド部との屈折率の差が増大し、光導波路の光伝送の効率を高めることができる。
光を照射するための光源としては、水銀ランプ、ハロゲンランプ、ナトリウムランプ、カーボン放電管、ガス及び半導体レーザー光源等が挙げられる。
光は、少なくともコア部に照射されるものであればよく、例えば、光導波路の周囲に配設した光源から、コア部およびクラッド部の全体に照射してもよいし、あるいは、前記のコア部形成工程(1)と同様に、光ファイバの端部から、コア部のみに照射してもよい。
また、この光は、コア部の全体に照射してもよいし、あるいは、コア部の一部のみに照射してもよい。なお、コア部の一部のみに光を照射した場合、コア部の特定の部分のみに、屈折率が特に高い領域が形成されることになる。
また、本工程で照射する光は、干渉光として規則的に照射してもよい。
本工程の前後におけるコア部の屈折率の増大の程度は、上述のとおり、好ましくは、0.0005以上、より好ましくは0.001以上である。
本工程による光の照射が完了すると、光導波路が完成する。
次に、図1を参照しつつ、コア部およびクラッド部の形成例を説明する。図1は、本発明の硬化性組成物を用いたコア部およびクラッド部の形成例を示すフロー図である。
まず、図1中の(a)に示すように、上部が開口した透明のガラス容器1に、液状の硬化性組成物2を収容する。次いで、液状の硬化性組成物2の上方から光ファイバ3の下端を浸漬する。この状態で、光ファイバ3の下端から下方に向けて、300nm以上の波長λ1を有するレーザー光を照射すると、液状の硬化性組成物に含まれている成分(A)(ラジカル重合性化合物)のみが重合して硬化し、光ファイバの軸線の延長線上に、光ファイバ3の端部から下方に徐々に延びるようにして、所定の径を有する円柱状の硬化体であるコア部4が形成される(図1中の(b)〜(d))。
次に、ガラス容器1を所定の温度で加熱すると、コア部4の周囲に残存している液状の硬化性組成物が硬化し、クラッド部5が形成される(図1中の(e))。
その後、ガラス容器1の周囲に配設した水銀ランプ6を用いて、ガラス容器1内のクラッド部5およびコア部4に、300nmより短い波長λ2を有する紫外線7を照射すると、コア部4の屈折率が増大する(図1中の(f))。こうして、コア部4とクラッド部5との屈折率の差が大きな光伝送体8が完成する(図1中の(g))。
実施例1〜2、比較例1
[1.使用成分]
下記の成分を用いた。表1に、実施例1〜2および比較例1の成分組成を示す。
「VR77」:リポキシVR−77
(昭和高分子工業(株)製)
(化合物名:ビスフェノールAエポキシジアクリレート)
(硬化物の屈折率:1.57)
「IRG819」:Irgacure819
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
(化合物名:トリ(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィン)
「2021P」:セロキサイド2021P
(ダイセル化学工業(株)製)
(化合物名:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)
(硬化物の屈折率:1.51)
「1500NP」:エポライト1500NP
(共栄社化学(株)製)
(化合物名:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル)
(硬化物の屈折率:1.46)
「DEGA」:2,4−ジエチルグルタル酸無水物
(協和発酵工業(株)製)
表1に示す各成分(実施例1〜2、比較例1)をガラス容器に収容した後、ローリングブレダーを用いて、均一な混合液になるまで撹拌し、硬化性組成物を調製した。調製後、ガラス容器内の硬化性組成物をガラス製バイアル瓶に移し、この硬化性組成物にシングルモード石英製光ファイバの下端部分を浸漬した。その後、光ファイバの下端から、波長405nmのレーザー光を下方に向けて1分間照射した。照射後、光ファイバを静かに抜き取り、硬化性組成物をアセトンで注意深く洗浄したところ、実施例1、2では、光ファイバのコア径と同じ直径を有するコア部が形成されていることが確認された。比較例1では、コア部は形成されなかった。
[3.コア部の材料の屈折率の測定]
コア部を形成する材料の屈折率を、次のようにして測定した。
まず、表1に示す実施例1の成分のうち、成分(A)「VR77」5重量部と、成分(B)「IRG819」0.05重量部とを含む混合物を、シリコンウエハ上に厚さ5μmでコートした後、このコートされた混合物(コート膜)に対して、硬質ガラスをフィルターとする波長365nmで照度30mW/cm2の高圧水銀ランプの光を、1分間照射した。光の照射によって、コート膜は、タックが消失して硬化したことが確認された。この硬化膜の屈折率(波長589nmのNa−D線;25℃)は、Abbe屈折率計((株)アタゴ製)によると、1.570であった。
さらに、この硬化膜に対して、窒素雰囲気下にて、波長254nmで10mW/cm2の低圧水銀ランプの紫外線を1分間照射したところ、硬化膜の屈折率は、1.575に増大した。
前記の「2.コア部の形成」と同様にして、表1に示す実施例1〜2の成分を用いて、コア部を形成した後、さらに、石英ガラス製バイアル瓶を80℃で1時間加熱した。その結果、石英ガラス製バイアル瓶内の硬化性組成物の全体が硬化し、コア部の周囲にクラッド部が形成されたことが確認された。
[5.クラッド部の材料の屈折率の測定]
クラッド部を形成する材料の屈折率を、前記の「3.コア部の材料の屈折率の測定」と同様にして測定したところ、1.48であった。
[6.コア部の屈折率の調整]
前記の「4.クラッド部の形成」と同様にして、表1に示す実施例1の成分を用いて、コア部およびクラッド部を形成した後、石英ガラス製バイアル瓶に対して、波長254nmで10mW/cm2の低圧水銀ランプの紫外線を5分間照射した。照射後、コア部の屈折率を測定したところ、紫外線の照射前と比べて、屈折率が1.570から1.571へと0.001増大していた。
なお、照射前の値(1.570)は、前記「3.コア部の材料の屈折率の測定」の測定値(コア部の材料単独での基準値)である。照射後の値(1.571)は、この実験の測定値である。この増大値が0.001であり、前記「3.コア部の材料の屈折率の測定」の増大値の0.005よりも小さい理由は、コア部およびクラッド部の材料を含む調製液からコア部が硬化(自己形成)したときに、この硬化物が、完全にコア部の材料のみからなるのでなく、クラッド部の材料が混入するからである。
2 硬化性組成物
3 光ファイバ
4 コア部
5 クラッド部
6 水銀ランプ
7 紫外線
8 光伝送体
Claims (1)
- (1)(A)300nmより短い波長を有する光の照射によって屈折率が増大する硬化物を形成しうる、芳香環を有するラジカル重合性化合物、(B)300nm以上に感光波長を有する光ラジカル重合開始剤、および(C)成分(A)の硬化物よりも小さな屈折率を有する硬化物を形成しうる、環状エーテル構造を有する熱硬化性化合物を含む液状の硬化性組成物に対して、300nm以上の波長を有するビーム状の光を照射して、成分(A)を主体とする硬化体であるコア部を形成する工程と、
(2)前記コア部の形成後、前記硬化性組成物を加熱して、前記コア部の周囲に、成分(C)を主体とする硬化体であるクラッド部を形成する工程と、
(3)前記クラッド部の形成後、前記コア部に、300nmより短い波長を有する光を照射して、前記コア部の屈折率を増大させる工程と、
を含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
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