〔第1の実施形態〕
(マルチコアファイバの構造)
本発明の第1の実施形態に係るマルチコアファイバの構造について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、端部を熱コア拡大する前のマルチコアファイバ1の構造を示し、図2は、端部を熱コア拡大した後のマルチコアファイバ1の構造を示す。
まず、端部を熱コア拡大する前のマルチコアファイバ1の構造について、図1を参照して説明する。図1の(a)は、端部を熱コア拡大する前のマルチコアファイバ1の側面図である。図1の(b)、(c)、及び(d)は、端部を熱コア拡大する前のマルチコアファイバ1の断面図である。なお、図1の(b)に示すAA’断面は、マルチコアファイバ1の長手軸に直交する断面のうち、図1の(a)に示すAA’線を含む断面である。図1の(c)に示すCC’断面は、マルチコアファイバ1の長手軸に直交する断面のうち、図1の(a)に示すCC’線を含む断面である。図1の(d)に示すBB’断面は、マルチコアファイバ1の長手軸に直交する断面のうち、図1の(a)に示すBB’線を含む断面である。
図1に示すように、マルチコアファイバ1は、コア群11と、クラッド12と、を備えている。コア群11は、m個(mは2以上の自然数)のコア11a1〜11amにより構成されている。クラッド12は、m個の内側クラッド12a1〜12amと、m個の内側クラッド12b1〜12bmと、外側クラッド12cと、により構成されている。これらの構造は、マルチコアファイバ1の基材に各種ドーパントを添加することによって形成されている。本実施形態においては、マルチコアファイバ1の基材として、石英ガラスを用いている。
なお、図1においては、コア数mが2である場合を例としてマルチコアファイバ1の構造を示しているが、これに限定されない。すなわち、コア数mは、3以上であってもよい。なお、コア数mが3以上の場合のコア11a1〜11amの配置については、参照する図面を代えて後述する。
コア11ai(iは1以上m以下の自然数)は、マルチコアファイバ1の長手方向に延在する円柱状の領域である。コア11aiの断面の外周は、半径R1の円によって近似することができる。この半径R1のことを、以下、「コア径」と記載する。コア11a1〜11amの屈折率n1は、マルチコアファイバ1の基材の屈折率n0よりも高い。コア群11には、少なくとも、マルチコアファイバ1の中心軸からの距離の異なる第1コア11a1及び第2コア11a2が含まれる。第1コア11a1は、マルチコアファイバ1の中心軸からの距離が第2コア11a2よりも小さく、第2コア11a2は、マルチコアファイバ1の中心軸からの距離が第1コア11a1よりも大きい。なお、第1コア11a1は、図示したように、マルチコアファイバ1の中心軸を通っていてもよい。
コア11aiは、マルチコアファイバ1の基材に第1ドーパントを添加することによって形成されている。第1ドーパントは、アップドーパントである。ただし、後述する通り、第1ドーパントは、ダウンドーパントであってもよい。ここで、アップドーパントとは、マルチコアファイバ1の基材の屈折率を上昇させる作用を有するドーパントのことを指す。第1ドーパントとして利用可能なアップドーパントとしては、例えば、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、酸化ゲルマニウム(GeO2)、塩素(Cl)、又はこれらの混合物が挙げられる。本実施形態においては、第1ドーパントとして、ゲルマニウムを用いている。また、本実施形態においては、第1コア11a1には、第1ドーパントとして少なくとも1種類の第1ドーパントが添加されているが、2種類以上のドーパントが添加されていてもよい。また、本実施形態においては、第1コア11a1には、少なくともアップドーパントである第1ドーパントが添加されているが、これに限定されない。すなわち、第1コア11a1には、第1ドーパントが添加されていなくてもよく、後述するダウンドーパントである第1ドーパントが添加されていてもよい。なお、この場合、当該第1コア11a1の周囲に存在する後述の内側クラッド12aiまたは内側クラッド12biには、コアに熱拡散するドーパントが少なくとも添加されている。
なお、マルチコアファイバ1は、非結合型のマルチコアファイバである。ここで、マルチコアファイバ1が非結合型であるとは、m個のコア11a1〜11amから任意に選択された2つのコア11ai,11aj(jは1以上m以下のiとは異なる自然数)について、コア11aiの導波モードとコア11ajの導波モードとの間の相互作用が十分に小さいこと(例えば、コア11aiとコア11ajとの間のクロストークが−30dB以下であること)を指す。これは、m個のコア11a1〜11amを用いてm個の光信号を独立に伝送し得ること意味する。
内側クラッド12ai(iは1以上m以下の自然数)は、マルチコアファイバ1の長手方向に延在する円筒状の領域であり、マルチコアファイバ1の一方の端部を含む区間Ia(特許請求の範囲における「第1区間」の一例)において、対応するコア11aiの側面を覆っている。内側クラッド12aiの断面の外周は、半径R2の円によって近似することができる。この半径R2のことを、以下、「内側クラッド径」と記載する。内側クラッド12aiの屈折率n2は、マルチコアファイバ1の基材の屈折率n0と同一又は実質的に同一である。
内側クラッド12bi(iは1以上m以下の自然数)は、マルチコアファイバ1の長手方向に延在する円筒状の領域であり、マルチコアファイバ1の他方の端部を含む区間Ib(特許請求の範囲における「第2区間」の一例)において、対応するコア11aiの側面を覆っている。内側クラッド12biの断面も、内側クラッド12aiの断面と同様、半径R2の円によって近似することができる。内側クラッド12biの屈折率n2は、マルチコアファイバ1の基材の屈折率n0と同一又は実質的に同一である。
第2コア11a2を覆う内側クラッド12a2及び内側クラッド12b2は、マルチコアファイバ1の基材に第2ドーパント及び第3ドーパントを共添加することによって形成されている。第2ドーパントは、熱拡散促進ドーパントである。ここで、熱拡散促進ドーパントとは、コア11aiに添加された第1ドーパントの熱拡散を促進する作用を有するドーパントのことを指す。第2ドーパントは、アップドーパント又はダウンドーパントであり得る。ここで、アップドーパントとは、マルチコアファイバ1の基材の屈折率を上昇させる作用を有するドーパントのことを指し、ダウンドーパントとは、マルチコアファイバ1の基材の屈折率を低下させる作用を有するドーパントのことを指す。第3ドーパントは、アップドーパント又はダウンドーパントである。第2ドーパントが、ダウンドーパントである場合、第3ドーパントとしてアップドーパントが選択される。逆に、第2ドーパントが、アップドーパントである場合、第3ドーパントとして、ダウンドーパントが選択される。内側クラッド12ai及び内側クラッド12biにおける第3ドーパントの添加量は、第3ドーパントによる屈折率上昇量が第2ドーパントによる屈折率低下量を抑制あるいは相殺するように、又は、第3ドーパントによる屈折率低下量が第2ドーパントによる屈折率上昇量を相殺するように設定されている。一例と挙げると、内側クラッド12ai及び内側クラッド12biにおける第3ドーパントの添加量は、内側クラッド12aiと外側クラッド12cとの屈折率差が−0.1%以上+0.1%以下になるように設定されている。内側クラッド12ai及び外側クラッド12cの屈折率n2がマルチコアファイバ1の基材の屈折率n0と同一又は実質的に同一であるのは、このためである。なお、第3ドーパントは、マルチコアファイバ1の基材の屈折率を上昇又は低下させる作用に加えて、コア11aiに添加された第1ドーパントの熱拡散を促進する作用を有していてもよい。この場合、第3ドーパントの作用によって、コア11aiに添加された第1ドーパントの熱拡散が更に促進される。また、本実施形態においては、内側クラッド12a2及び内側クラッド12b2には第2ドーパント及び第3ドーパントが共添加されているが、これに限定されない。すなわち、内側クラッド12a2または内側クラッド12b2には1種類のドーパントのみが添加されていてもよく、例えば、第2ドーパントもしくは第3ドーパントのみが添加されていてもよい。
第2ドーパントとして利用可能な熱拡散促進ドーパントとしては、例えば、アルミニウム(Al)、フッ素(F)、又はこれらの混合物が挙げられる。第2ドーパントがマルチコアファイバ1の基材の屈折率を低下させる作用を有している場合、第3ドーパントとして利用可能なドーパントとしては、例えば、アップドーパントであるゲルマニウム(Ge)、リン(P)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、酸化ゲルマニウム(GeO2)、塩素(Cl)、又はこれらの混合物が挙げられる。逆に、第2ドーパントがマルチコアファイバ1の基材の屈折率を上昇させる作用を有している場合、第3ドーパントとして利用可能なドーパントとしては、例えば、ダウンドーパントであるフッ素(F)、ホウ素(B)、又はこれらの混合物が挙げられる。本実施形態においては、第2ドーパントとして、マルチコアファイバ1の基材の屈折率を低下させる作用を有するフッ素を用いている。また、本実施形態においては、第3ドーパントとして、アップドーパントであるゲルマニウム及びリンの混合物を用いている。
なお、第1コア11a1を覆う内側クラッド12a1及び内側クラッド12b1には、(1)第2ドーパントが添加されていてもよいし、(2)第2ドーパントが添加されていなくてもよい。前者の場合、第1コア11a1を覆う内側クラッド12a1及び内側クラッド12b1における第2ドーパントの濃度は、第2コア11a2を覆う内側クラッド12a2及び内側クラッド12b2における第2ドーパントの濃度よりも低くなる。また、内側クラッド12a1及び内側クラッド12b1には、第2ドーパントに加えて第3ドーパントが添加されていてもよい。ここで、第3ドーパントの濃度についても、第2ドーパントの濃度と同様のことが言える。
外側クラッド12cは、クラッド12から内側クラッド12a1〜12am及び内側クラッド12b1〜12bmを除いた領域であり、マルチコアファイバ1の区間Iaにおいて内側クラッド12a1〜12amを包含するとともにその側面を覆い、マルチコアファイバ1の区間Ibにおいて内側クラッド12b1〜12bmを包含するとともにその区間を覆い、マルチコアファイバ1の区間Ia及び区間Ibを除く区間Ic(特許請求の範囲における「第3区間」の一例)において、コア11a1〜11amの側面を覆っている。外側クラッド12cの断面の外周は、半径R3の円によって近似することができる。この半径R3のことを、以下、「外側クラッド径」又は「クラッド径」と記載する。外側クラッド12cについては、ドーパントの意図的な添加が行われていない。このため、外側クラッド12cの屈折率は、マルチコアファイバ1の基材の屈折率n0と同一又は実質的に同一である。
マルチコアファイバ1の端部を加熱すると、マルチコアファイバ1の端部において熱コア拡大が生じる。ここで、熱コア拡大とは、コア11aiに添加された第1ドーパントの熱拡散により、コア11aiのモードフィールド径が拡大することを指す。なお、コア11aiのモードフィールド径とは、コア11aiを導波される基本モード光のモードフィールド径のことを指す。マルチコアファイバ1の端部において熱コア拡大が生じると、マルチコアファイバ1の端部における各コア11aiのモードフィールド径が、マルチコアファイバ1の端部以外の部分(以下、「中間部」と記載する)におけるコア11aiのモードフィールド径よりも大きくなる。ここで、マルチコアファイバ1の端部、すなわち、モードフィールド径の拡大が生じる区間は、区間Ia,Ibのうち少なくとも一部の区間を指し、(1)上述した区間Ia,Ibに包含される、区間Ia,Ibよりも短い区間であってもよいし、(2)上述した区間Ia,Ibを包含する、区間Ia,Ibよりも長い区間であってもよい。同様に、マルチコアファイバ1の中間部、すなわち、モードフィールド径の拡大が生じない区間は、区間Icのうち少なくとも一部の区間を指し、(1)上述した区間Icに包含される、区間Icよりも短い区間であってもよいし、(2)上述した区間Icを包含する、区間Icよりも長い区間であってもよい。なお、マルチコアファイバ1の端部を加熱する目的としては、例えば、マルチコアファイバ1の端部を他の光ファイバの端部に融着することが挙げられる。ただし、マルチコアファイバ1の端部を加熱する目的は、これに限定されるものではない。
端部を熱コア拡大した後のマルチコアファイバ1の構造を模式的に表せば、図2のようになる。図2の(a)は、端部を熱コア拡大した後のマルチコアファイバ1の側面図である。図2の(b)、(c)、及び(d)は、端部を熱コア拡大した後のマルチコアファイバ1の断面図である。なお、図2の(b)に示すAA’断面は、マルチコアファイバ1の長手軸に直交する断面のうち、図2の(a)に示すAA’線を含む断面である。図2の(c)に示すCC’断面は、マルチコアファイバ1の長手軸に直交する断面のうち、図2の(a)に示すCC’線を含む断面である。図2の(d)に示すBB’断面は、マルチコアファイバ1の長手軸に直交する断面のうち、図2の(a)に示すBB’線を含む断面である。
端部を熱コア拡大した後のマルチコアファイバ1においては、コア11aiに添加された第1ドーパント、並びに、内側クラッド12ai及び内側クラッド12biに添加された第2ドーパント及び第3ドーパントが熱拡散している。それ故、コア11aiと内側クラッド12aiとの境界、コア11aiと内側クラッド12biとの境界、内側クラッド12aiと外側クラッド12cとの境界、及び、内側クラッド12biと外側クラッド12cとの境界を、一義的に定めることは困難である。このため、図2においては、コア11ai、内側クラッド12ai、内側クラッド12bi、及び外側クラッド12cを図示する代わりに、導波される基本モード光のパワーがコア11aiの中心軸を導波される光のパワーの1/e2以上になる領域11ai’を図示している。ここで、eは、自然対数の底である。コア11aiのモードフィールド径とは、領域11ai’の断面の直径のことを指す。また、コア11aiのモードフィールド半径とは、領域11ai’の断面の半径のことを指す。
なお、端部を熱コア拡大した後のマルチコアファイバ1においては、端部と中間部との境界において、各コア11aiのモードフィールド径が該コア11aiの軸方向に対して滑らかに変化する。これに対して、コア径の大きいマルチコアファイバとコア径の小さいマルチコアファイバとを融着接続することにより得られたマルチコアファイバにおいては、融着接続点において、各コアのモードフィールド径が該コアの軸方向に対して不連続に変化する。この点で、端部を熱コア拡大した後のマルチコアファイバ1と、コア径の大きいマルチコアファイバとコア径の小さいマルチコアファイバとを融着接続することにより得られたマルチコアファイバとは、物としての構造が異なる。また、コア径の大きいマルチコアファイバとコア径の小さいマルチコアファイバとを融着接続することにより得られたマルチコアファイバは、内部に融着接続点を含むので、内部の融着接続点において生じ得る損失を免れることが困難である。これに対して、端部を熱コア拡大した後のマルチコアファイバ1は、内部に融着接続点を含む必要がないので、内部の融着接続点において生じ得る損失を免れることが容易である。この点で、端部を熱コア拡大した後のマルチコアファイバ1は、コア径の大きいマルチコアファイバとコア径の小さいマルチコアファイバとを融着接続することにより得られたマルチコアファイバよりも優れている。
なお、図2に示す熱コア拡大後のマルチコアファイバ1を得るために、図1に示す熱コア拡大前のマルチコアファイバ1において、内側クラッド12a1〜12am及び内側クラッド12b1〜12bmに第2ドーパント及び第3ドーパントを添加することは、必須ではない。なぜなら、第2ドーパントまたは第3ドーパントの助けを借りずとも、コア11a1〜11amに添加された第1ドーパントは、加熱により拡散するからである。第2ドーパントの添加を省略する場合、第3ドーパントの添加も不要である。ただし、内側クラッド12a1〜12am及び内側クラッド12b1〜12bmに第2ドーパントを添加することによって、コア11a1〜11amに添加された第1ドーパントの熱拡散速度を大きくすることができる。また、この場合には、内側クラッド12a1〜12am及び内側クラッド12b1〜12bmに第3ドーパントを更に添加することによって、内側クラッド12a1〜12am及び内側クラッド12b1〜12bmの屈折率を外側クラッド12cの屈折率と実質的に同一することができる。したがって、内側クラッド12a1〜12am及び内側クラッド12b1〜12bmに第2ドーパント及び第3ドーパントを添加することによって、コア11a1〜11amのモードフィールド径を所定の大きさまで拡大するために要する加熱時間を短くすることができる。
(コアの配置)
マルチコアファイバ1において取り得るコア11a1〜11amの配置について、図3を参照して説明する。マルチコアファイバ1において取り得るコア11a1〜11amの配置としては、例えば、六方最密配置又は正方格子配置が挙げられる。
図3の(a)は、コア11a1〜11amが六方最密配置されたマルチコアファイバ1の断面図である。コア11a1〜11amが六方最密配置されている場合、各コア11aiに隣接する隣接コア数は6である。図3の(a)においては、コア数mが7である場合を例示している。この場合、1個のコア11a1(特許請求の範囲における「第1コア」の一例)が、マルチコアファイバ1の中心軸を通り、残り6個のコア11a2〜11a7(特許請求の範囲における「第2コア」の一例)が、マルチコアファイバ1の中心軸を取り囲むように等間隔配置される。
図3の(b)は、コア11a1〜11amが正方格子配置されたマルチコアファイバ1の断面図である。コア11a1〜11amが正方格子配置されている場合、各コア11aiに隣接する隣接コア数は4である。図3の(b)においては、コア数mが12である場合を例示している。この場合、内層を構成する4個のコア11a1〜11a4(特許請求の範囲における「第1コア」の一例)と、外層を構成する8個のコア11a5〜11a12(特許請求の範囲における「第2コア」の一例)とが、正方格子の格子点上に配置される。
(コア間クロストークとモードフィールド径との関係)
ここで、マルチコアファイバにおけるコア間クロストークとモードフィールド径との関係について、図4を参照して説明する。ここで、コア間クロストークとは、1つのマルチコアファイバに含まれる複数のコア同士のクロストークのことを指す。図4は、コアの屈折率分布が単峰形であり、コアの理論カットオフ波長が1260nmであり、コア間距離が35μmであるマルチコアファイバにおいて、波長1550nmの光を2km伝送した場合に生じる2コア間のコア間クロストークのモードフィールド径依存性を示すグラフである。なお、図4に示すグラフにおいては、波長1310nmにおけるコアのモードフィールド径を横軸に取っている。
図4によれば、以下のことが分かる。すなわち、コア間クロストークを小さくするためには、コアのモードフィールド径を小さくすればよい。例えば、コアのモードフィールド径をITU−T G.652又はITU−T G.657における規定値8.6μm程度に設定すると、コア間クロストークは−10dB程度の大きな値となる。これに対して、例えば、コアのモードフィールド径を5μm程度に設定すると、コア間クロストークは−70dB程度の小さな値になる。
なお、マルチコアファイバの設計にあたっては、最外層コアを伝搬する光の被覆への吸収も考慮に入れる必要がある。実際、最外層コアから被覆までの距離が近い場合には、最外層コアにおける損失が増大することがある。したがって、最外層コアから被覆までの距離は、最外層コアを伝搬する光の被覆への吸収が十分に小さくなるように設定することが好ましい。
(接続損失とモードフィールド径の関係)
次に、2つの光ファイバのコア同士を接続したときの接続損失とモードフィールド径との関係について、図5及び図6を参照して説明する。
2つの光ファイバのコア同士の接続損失は、下記の式(1)により記述される。ここで、LOSSは、接続損失であり、W1は、光の伝搬方向に対して上流側のコアのモードフィールド半径であり、W2は、光の伝搬方向に対して下流側のコアのモードフィールド半径である。また、dは、2つの光ファイバのコア同士の軸ずれ量である。
図5は、上流側のコアの波長1310nmにおけるモードフィールド径(2×W1)が8.6μmであり、2つの光ファイバのコア同士の軸ずれ量dが0μmである場合に関して、波長1310nmにおける接続損失のモードフィールド径(2×W2)依存性を示すグラフでる。
図5によれば、以下のことが分かる。すなわち、下流側のコアのモードフィールド径(2×W2)を小さくすると、2つの光ファイバのコア同士の接続損失が大きくなる。例えば、下流側のコアのモードフィールド径(2×W2)を5μm程度に設定すると、2つの光ファイバのコア同士の軸ずれ量dが0μmであっても、2つの光ファイバのコア同士の波長1310nmにおける接続損失は0.6dB程度の大きな値になる。したがって、接続損失を小さく抑えるためには、下流側のコアのモードフィールド径を、大きな値にすることが好ましい。例えば、波長1310nmにおける接続損失を0.1dB以下に抑えるためには、下流側のコアの波長1310nmにおけるモードフィールド径を、7.0μm以上にすることが好ましい。換言すると、上流側のコアと下流側のコアとのモードフィールド径差を、1.6μm以下にすることが好ましい。
図6は、以下のケ−スにおける接続損失の軸ずれ量d依存性を示すグラフである。
(a)上流側のコアのモードフィールド径(2×W1)が8.6μmであり、下流側のコアのモードフィールド径(2×W2)が8.6μmである場合、
(b)上流側のコアのモードフィールド径(2×W1)が8.6μmであり、下流側のコアのモードフィールド径(2×W2)が5.0μmである場合、
(c)上流側のコアのモードフィールド径(2×W1)が5.0μmであり、下流側のコアのモードフィールド径(2×W2)が5.0μmである場合。
図5によれば、以下のことが分かる。すなわち、ケ−ス(b)又は(c)のように下流側のコアのモードフィールド径(2×W2)が小さい値(ここでは、5.0μm)を取る場合には、ケ−ス(a)のように下流側のコアのモードフィールド径(2×W2)が大きい値(ここでは、8.6μm)を取る場合と比べて、軸ずれ量dに対する接続損失の傾きが大きくなる。つまり、接続損失に対する軸ずれ量dのトレランスが小さくなる。逆に、ケ−ス(a)のように下流側のコアのモードフィールド径(2×W2)が大きい値(ここでは、8.6μm)を取る場合には、ケ−ス(b)又は(c)のように下流側のコアのモードフィールド径(2×W2)が小さい値(ここでは、5.0μm)を取る場合と比べて、軸ずれ量dに対する接続損失の傾きが小さくなる。つまり、接続損失に対する軸ずれ量dのトレランスが大きくなる。
(マルチコアファイバの効果)
マルチコアファイバのコア間クロストークを小さく抑えるためには、前々節において説明したように、マルチコアファイバの各コアのモードフィールド径を小さくすることが好ましい。一方、マルチコアファイバの各コアと他の光ファイバのコアとの接続損失を小さく抑える、或いは、軸ずれ量のトレランスを大きくするためには、前節において説明したように、マルチコアファイバの各コアのモードフィールド径を大きくすることが好ましい。
この相反するともいえる要求に応えるために、本実施形態に係る熱コア拡大後のマルチコアファイバ1においては、各コア11aiについて、端部におけるモードフィールド径を、中間部におけるモードフィールド径よりも大きくする構成を採用している。これにより、(1)端部における各コア11aiのモードフィールド径を小さくすることなく、中間部における各コア11aiのモードフィールド径を小さくすること、或いは、(2)中間部における各コア11aiのモードフィールド径を大きくすることなく、端部における各コア11aiのモードフィールド径を大きくすること、が可能になる。したがって、(1)接続損失の増加、又は、軸ずれ量のトレランスの縮小を抑制しながら、コア間クロストークの減少を図ること、或いは、(2)コア間クロストークの増加を抑制しながら、接続損失の増加、又は、軸ずれ量のトレランスの縮小を図ることが可能になる。さらに、各コア11aiについて、端部を熱コア拡大した後のマルチコアファイバ1においては、端部と中間部との境界において、各コア11aiのモードフィールド径が該コア11aiの軸方向に対して滑らかに変化している。これにより、マルチコアファイバ1の内部の融着接続点において生じ得る損失を免れることが容易となり得る。
例えば、本実施形態に係る熱コア拡大後のマルチコアファイバ1においては、各コア11aiについて、端部における波長1310nmでのモードフィールド径を8.2μmよりも小さくすることなく、中間部における波長1310nmでのモードフィールド径を8.2μmよりも小さくすることができる。これにより、例えば、ITU−T G.652又はITU−T G.657に従うコアを持つマルチコアファイバやシングルモードファイバなど、波長1310nmでのモードフィールド径が8.2μm以上である光ファイバがマルチコアファイバ1に接続される場合に、接続損失の増加、又は、軸ずれ量のトレランスの縮小を抑制しながら、コア間クロストークの減少を図ることができる。なお、波長1310nmでのモードフィールド径が8.2μmとなるコアは、波長1550nmでのモードフィールド径が9.6μm程度となる。したがって、端部における波長1550nmでのモードフィールド径を9.6μmよりも小さくすることなく、中間部における波長1550nmでのモードフィールド径を9.6μmよりも小さくすることによっても、同様の効果が得られる。この熱コア拡大後のマルチコアファイバ1同士を融着接続する場合においても接続損失の増加、又は、軸ずれ量のトレランスの縮小を抑制しながら、コア間クロストークの減少を図ることができる。
更に、本実施形態に係る熱コア拡大後のマルチコアファイバ1においては、各コア11aiについて、端部における波長1310nmでのモードフィールド径を5.5μm以下にすることなく、中間部における波長1310nmでのモードフィールド径を5.5μm以下にすることができる。これにより、例えば、ITU−T G.652又はITU−T
G.657に従うコアを持つマルチコアファイバやシングルモードファイバなど、波長1310nmでのモードフィールド径が8.2μm以上である光ファイバがマルチコアファイバ1に接続される場合に、接続損失の増加、又は、軸ずれ量のトレランスの縮小を抑制しながら、コア間クロストークを−60dB以下にすることができる(図4参照)。なお、波長1310nmでのモードフィールド径が5.5μmとなるコアは、波長1550nmでのモードフィールド径が6.3μm程度となる。したがって、端部における波長1550nmでのモードフィールド径を6.3μm以下にすることなく、中間部における波長1550nmでのモードフィールド径を6.3μm以下にすることによっても、同様の効果が得られる。
或いは、本実施形態に係る熱コア拡大後のマルチコアファイバ1においては、各コア11aiについて、中間部における波長1310nmでのモードフィールド径を7μm以上にすることなく、端部における波長1310nmでのモードフィールド径を7μm以上にすることができる。これにより、例えば、ITU−T G.652又はITU−T G.657に従うコアを持つマルチコアファイバやシングルモードファイバなど、波長1310nmでのモードフィールド径が8.2μm以上である光ファイバがマルチコアファイバ1に接続される場合に、コア間クロストークの増加を抑制しながら、接続損失を0.1dB以下にすることができる(図5参照)。なお、波長1310nmでのモードフィールド径が7μmとなるコアは、波長1550nmでのモードフィールド径が7.9μm程度となる。したがって、中間部における波長1550nmでのモードフィールド径を7.9μm以上にすることなく、端部における波長1550nmでのモードフィールド径を7.9μm以上にすることによっても、同様の効果が得られる。この熱コア拡大後のマルチコアファイバ1同士を融着接続する場合においても接続損失の増加、又は、軸ずれ量のトレランスの縮小を抑制しながら、コア間クロストークの減少を図ることができる。
更に、本実施形態に係る熱コア拡大後のマルチコアファイバ1においては、各コア11aiについて、中間部における波長1550nmでのモードフィールド径を8.8μmよりも大きくすることなく、端部における波長1550nmでのモードフィールド径を8.8μmよりも大きくすることができる。これにより、例えばITU−T G.654に従うコアを持つマルチコアファイバやシングルモードファイバなど、波長1550nmでのモードフィールド径が8.8m以上である光ファイバがマルチコアファイバ1に接続される場合に、コア間クロストークの増加を抑制しながら、接続損失の減少、又は、軸ずれ量のトレランスの拡大を図ることができる。この熱コア拡大後のマルチコアファイバ1同士を融着接続する場合においても接続損失の増加、又は、軸ずれ量のトレランスの縮小を抑制しながら、コア間クロストークの減少を図ることができる。
特に、本実施形態に係る熱コア拡大前のマルチコアファイバ1においては、(1)マルチコアファイバ1の中心軸に近い第1コア(例えば、コア11a1)の側面を覆う第1内側クラッド(例えば、内側クラッド12a1)に第2ドーパントが添加されていない構成、又は、(2)第1内側クラッドに第2ドーパントが添加されており、第1内側クラッドにおける第2ドーパントの濃度がマルチコアファイバ1の中心軸から遠い第2コア(例えば、コア11a8)の側面を覆う第2内側クラッド(例えば、内側クラッド12a8)の側面を覆う第2内側クラッドにおける第2ドーパントの濃度よりも低い構成が採用されている。これにより、コアの軸ずれに対するトレランスが小さくなることを抑えながら、第2ドーパントの添加量を削減して製造コストを低下させることができる(第2ドーパントの添加量を削減することができれば、言うまでもなく、第2ドーパントに屈折率変化を抑制あるいは相殺する第3ドーパントの添加量も削減することができる)。例えば、各ドーパントが上記のように添加されていない場合、融着接続時の加熱時間が不十分であると、各コアに添加されたドーパントの熱拡散が不十分になり、その結果、各コアの熱拡大が不十分になる。このため、各ドーパントが上記のように添加されていない場合、コアの軸ずれに対して接続損失が上昇し易いという問題を生じる。これに対して、各ドーパントが上記のように添加されている場合、このような問題が生じ難くなる。すなわち、上述した(1)または(2)の構成を満たすことで、第2コアの接続損失が第1コアの接続損失と同程度に抑制される。また、第2コアの接続損失が上述した(1)または(2)の構成を満たさない場合と比べて低減される。したがって、本実施形態に係るマルチコアファイバ1においては、第1の効果として、第1内側クラッドにおける第2ドーパントの節約によって、第2コアの接続損失の値を第1コアの接続損失の値に近づけることができ、第2コアの接続損失の値を低減させることができる。加えて、第2の効果として、第1内側クラッドにおける第2ドーパントの節約によって、マルチコアファイバ1の製造コストを低減することができる。なお、コアの軸ずれには、マルチコアファイバ1の中心軸を回転軸とするマルチコアファイバ1の回転により回転性軸ずれと、マルチコアファイバ1の端面と平行な方向へのマルチコアファイバの平行移動による平行移動性軸ずれと、が存在する。マルチコアファイバ1は、回転性軸ずれ及び平行移動性軸ずれの両方に対するトレランスを抑制することが可能であるが、特に回転性軸ずれに対するトレランスの抑制に関して顕著な効果を奏する。以下、このような効果が得られる理由等について、より具体的な例に即して説明する。
〔マルチコアファイバの第1の設計例〕
デ−タセンタ内又はデ−タセンタ間のCバンド通信への適用を想定した、マルチコアファイバ1の第1の設計例について説明する。
まず、各コア11aiについては、マルチコアファイバ1の中間部において、下記の表1に示す光学特性を満たすように設計する。
上記の表1において、コアΔは、各コア11aiの外側クラッド12cに対する比屈折率差を表す。また、コア半径は、各コア11aiの半径r1を表す。また、MFD@1.31μmは、各コア11aiの波長1310nmにおけるモードフィールド径を表す。また、MFD@1.55μmは、各コア11aiの波長1550nmにおけるモードフィールド径を表す。また、カットオフ波長は、各コア11aiのカットオフ波長を表す。本設計例においては、中間部における各コア11aiの波長1310nmにおけるモードフィールド径を、ITU−T G.652又はITU−T G.657に従うシングルモードファイバのモードフィールド径(8.2μm)よりも小さい、5.5μmとしている点に留意されたい。
各コア11aiが上記の表1を満たすように設計されたマルチコアファイバ1に関して、2コア間クロストークのコア間距離依存性を図7に示し、被覆への吸収損失のクラッド厚依存性を図8に示す。これらは、各コアaiを伝搬する光の波長を1565nm、マルチコアファイバ1の曲げ半径を500mmと仮定した数値計算の結果である。1565nmは、Cバンドで最も長い波長であり、2コア間クロストークと被覆への吸収損失とが最も大きくなる波長と考えられる。
なお、マルチコアファイバ1を光通信伝送路として用いる場合には、全てのコア11a1〜11amを同時に励振する場合が多い。この場合、コア11aiは、コア11aiをのぞくm−1個のコアからクロストークを受けることになる。これを合計クロストークと呼ぶと、合計クロストークは、2コア間クロストークよりも大きくなる。このため、この合計クロストークを用いてマルチコアファイバ1の構造を決める必要がある。
ファイバ長2kmあたりの合計クロストークが−30dB以下になるという条件を満たすコア間距離の下限値、及び、ファイバ長2kmあたりの被覆への吸収損失が0.01dB以下になるという条件を満たすクラッド厚の下限値を、図3に示した各コア配置について求めた結果を下記の表2に示す。
上記の表2によれば、以下のことが分かる。すなわち、コア配置が六方最密配置である場合、コア間距離(各コアの中心からそのコアに最も近いコアの中心までの距離)は30.7μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの合計クロストークを−30dB以下に抑えることができる。また、コア配置が正方格子配置であり、コア数mが8未満である場合、コア間距離は30.1μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの合計クロストークを−30dB以下に抑えることができる。また、コア配置が正方格子配置であり、コア数mが8以上である場合、コア間距離は30.3μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの合計クロストークを−30dB以下に抑えることができる。
また、上記の表2によれば、更に以下のことが分かる。すなわち、コア配置が六方最密配置である場合、クラッド厚は24.5μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの被覆への吸収損失を0.01dB以下に抑えることができる。また、コア配置が正方格子配置である場合、クラッド厚は24.5μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの被覆への吸収損失を0.01dB以下に抑えることができる。なお、コアにゲルマニウムが添加された一般的な光ファイバの伝送損失は、1kmあたり0.18〜0.30dB程度である。したがって、ファイバ長2kmあたりの0.01dB以下の吸収損失は、伝送損失と比べて無視し得る大きさである。
図9は、六方最密配置及び正方格子配置のそれぞれについて、コア間距離及びクラッド厚を上記のように設定したときに、収容可能なコア数mをクラッド径の関数として表したグラフである。
図9によれば、以下のことが分かる。すなわち、コア配置が六方最密配置であり、クラッド径が155.3μmである場合、7コア(m=7)又は12コア(m=12)のマルチコアファイバ1を実現することができる。これらのなかで、12コアのマルチコアファイバ1は、合計クロストークを−30dB以下に抑えると共に、被覆への吸収損失を0.01dB以下に抑えながら、コア数mが最大化されている点で、高密度伝送に適した特に好ましいマルチコアファイバであると言える。また、コア配置が正方格子配置であり、クラッド径が177.5μm未満である場合、4コア(m=4)、6コア(m=6)、8コア(m=8)、又は12コア(m=12)のマルチコアファイバ1を実現することができる。これらのなかで、12コアのマルチコアファイバ1は、合計クロストークを−30dB以下に抑えると共に、被覆への吸収損失を0.01dB以下に抑えながら、コア数mが最大化されている点で、高密度伝送に適した特に好ましいマルチコアファイバであると言える。また、8コアのマルチコアファイバ1は、12コアのマルチコアファイバ1に次いで好ましいマルチコアファイバであると言える。
〔マルチコアファイバの第2の設計例〕
デ−タセンタ内又はデ−タセンタ間のOバンド通信への適用を想定した、マルチコアファイバ1の第2の設計例について説明する。
まず、各コア11aiについては、マルチコアファイバ1の中間部において、下記の表3に示す光学特性を満たすように設計する。
上記表3に記載のコアΔ、コア半径、MFD@1.31μm、MFD@1.55μm、
及びカットオフ波長の各々は、それぞれ、上記表1に記載のコアΔ、コア半径、MFD@1.31μm、MFD@1.55μm、及びカットオフ波長の各々と同じものを表す。本設計例においては、中間部における各コア11aiの波長1310nmにおけるモードフィールド径を、5.4μmとしている。
各コア11aiが上記の表2を満たすように設計されたマルチコアファイバ1に関して、2コア間クロストークのコア間距離依存性を図10に示し、被覆への吸収損失のクラッド厚依存性を図11に示す。これらは、各コアaiを伝搬する光の波長を1360nm、マルチコアファイバ1の曲げ半径を500mmと仮定した数値計算の結果である。1360nmは、Oバンドで最も長い波長であり、2コア間クロストークと被覆への吸収損失とがOバンドにおいて最も大きくなる波長と考えられる。
また、本設計例においても第1の設計例の場合と同様に、合計クロストークを用いてマルチコアファイバ1の構造を決める必要がある。
ファイバ長2kmあたりの合計クロストークが−30dB以下になるという条件を満たすコア間距離の下限値、及び、ファイバ長2kmあたりの被覆への吸収損失が0.01dB以下になるという条件を満たすクラッド厚の下限値を、図3及び図12に示した各コア配置について求めた結果を下記の表4に示す。
上述したように、図3の(a)は、コア11a1〜11amが六方最密配置されたマルチコアファイバ1の断面図であり、図3の(b)は、コア11a1〜11amが正方格子配置されたマルチコアファイバ1の断面図である。
図12は、コア11a1〜11amが単リング配置されたマルチコアファイバ1の断面図である。コア11a1〜11amが単リング配置されている場合、各コア11aiに隣接する隣接コア数は2である。図12においては、コア数mが12である場合を例示している。mが奇数である6個のコア11a1,11a3,11a5,11a7,11a9,11a11(特許請求の範囲における「第1コア」の一例)の各々は、正六角形の各頂点に対応する位置に配置されており、mが偶数である6個のコア11a2,11a4,11a6,11a8,11a10,11a12(特許請求の範囲における「第2コア」の一例)の各々は、正六角形の各辺の中点に対応する位置に配置されている。
上記の表4によれば、以下のことが分かる。すなわち、コア配置が六方最密配置である場合、コア間距離(各コアの中心からそのコアに最も近いコアの中心までの距離)は25.5μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの合計クロストークを−30dB以下に抑えることができる。また、コア配置が正方格子配置であり、コア数mが8未満である場合、コア間距離は25.0μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの合計クロストークを−30dB以下に抑えることができる。また、コア配置が正方格子配置であり、コア数mが8以上である場合、コア間距離は25.5μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの合計クロストークを−30dB以下に抑えることができる。また、コア配置が単リング配置である場合、コア間距離は24.7μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの合計クロストークを−30dB以下に抑えることができる。
また、上記の表4によれば、更に以下のことが分かる。すなわち、コア配置が六方最密配置である場合、クラッド厚は20.3μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの被覆への吸収損失を0.01dB以下に抑えることができる。また、コア配置が正方格子配置である場合、クラッド厚は20.3μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの被覆への吸収損失を0.01dB以下に抑えることができる。すなわち、コア配置が六方最密配置である場合、クラッド厚は20.3μm以上であることが好ましい。これにより、ファイバ長2kmあたりの被覆への吸収損失を0.01dB以下に抑えることができる。すなわち、コア配置が単リング配置である場合、クラッド厚は20.3μm以上であることが好ましい。なお、コアにゲルマニウムが添加された一般的な光ファイバの伝送損失は、1kmあたり0.18〜0.30dB程度である。したがって、ファイバ長2kmあたりの0.01dB以下の吸収損失は、伝送損失と比べて無視し得る大きさである。
Oバンド通信への適用を想定したマルチコアファイバ1において、コアの配置が正方格子配置であり、クラッド径が80μmである場合、4コア(m=4)のマルチコアファイバ1を実現することができる(図13の(a)参照)。なお、図13の(a)に示したマルチコアファイバ1において、正方格子の格子点上に配置された4つの11a1〜11a4の重心は、外側クラッド12cの中心に対して、図13の(a)における下方向に偏心した状態で配置されている。したがって、コア11a1,11a2は、特許請求の範囲における「第1コア」の一例であり、コア11a3,11a4は、特許請求の範囲における「第2コア」の一例である。
また、Oバンド通信への適用を想定したマルチコアファイバ1において、コアの配置が正方格子配置であり、クラッド径が125μmである場合、12コア(m=12)のマルチコアファイバ1を実現することができる(図13の(b)参照)。
また、Oバンド通信への適用を想定したマルチコアファイバ1において、コアの配置が六方最密配置であり、クラッド径が125μmである場合、12コア(m=12)のマルチコアファイバ1を実現することができる(図13の(c)参照)。
また、Oバンド通信への適用を想定したマルチコアファイバ1において、コアの配置が正方格子配置であり、クラッド径が150μmである場合、16コア(m=16)のマルチコアファイバ1を実現することができる(図13の(b)参照)。
なお、本願明細書に記載の80μm、125μm、及び150μmといったクラッド径は、いずれもマルチコアファイバ1の設計時に採用した設計値を意味する。実際に製造されたマルチコアファイバ1のクラッド径は、厳密に上記設計値に一致していなくてもよく、マルチコアファイバ1の製造工程(主に線引き工程)において生じ得る製造交差の範囲内に含まれていればよい。マルチコアファイバ1の製造工程(主に線引き工程)において生じ得る製造交差の範囲の一例としては、上記設計値を基準として±1μmが挙げられる。本願発明の各態様においては、クラッド径が上記設計値を基準として製造交差の範囲内に含まれる場合、そのマルチコアファイバ1のクラッド径は、設計値に略一致していると見做す。
〔実施例1〕
実施例1に係るマルチコアファイバ1として、コア数が12、コア配置が正方格子配置、コア間距離が31μm、コア径が2.5μm、内側クラッド径が9μm、クラッド径が150μm、クラッド厚が26.0μmである、ファイバ長2kmのマルチコアファイバAを製造した。内側クラッドは、マルチコアファイバAの全長に亘って設けた。なお、コア数が12、コア配置が正方格子配置となるマルチコアファイバ1の断面構造については、図3の(b)を参照されたい。
この際、コア11a1〜11a12には、ゲルマニウムを添加した。コア11a1〜11a12におけるゲルマニウムの濃度は、10Wt%であった。また、内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4には、フッ素、ゲルマニウム、及びリンを共添加した。ここで、内層のコア11a1〜11a4の側面を覆う内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4においては、フッ素、ゲルマニウム、及びリンの重量パーセント濃度を、それぞれ0.1Wt%、0.5Wt%、及び0.3Wt%とした。一方、外層のコア11a5〜11a12の側面を覆う内側クラッド12a5〜12a12及び内側クラッド12b5〜12b12においては、フッ素、ゲルマニウム、及びリンの重量パーセント濃度を、内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4よりもそれぞれ高くした。具体的には、フッ素、ゲルマニウム、及びリンの重量パーセント濃度を、それぞれ0.3Wt%、1.0Wt%、及び0.6Wt%とした。内側クラッド12a1〜12a4の外側クラッド12cに対する比屈折率差、及び、内側クラッド12b1〜12b4の外側クラッド12cに対する比屈折率差は、それぞれ、−0.1%以上+0.1%以下であった。
マルチコアファイバAの光学特性を測定した結果を下記の表5に示す。
マルチコアファイバAにおいて、波長1565nmにおけるファイバ長2kmあたりの2コア間クロストークは、−39dBとなった。また、マルチコアファイバAにおいて、波長1565nmにおけるファイバ長2kmあたりの合計クロストークは、−35dBとなった。すなわち、クロストークが十分に小さいマルチコアファイバが得られた。
次に、比較例に係るマルチコアファイバとして、内層のコア11a1〜11a4の側面を覆う内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4におけるフッ素、ゲルマニウム、及びリンの濃度を除き、実施例1に係るマルチコアファイバAと同様に構成されたマルチコアファイバA’を製造した。比較例に係るマルチコアファイバA’においては、内層のコア11a1〜11a4の側面を覆う内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4におけるフッ素、ゲルマニウム、及びリンの重量パーセント濃度を、外層のコア11a5〜11a12の側面を覆う内側クラッド12a5〜12a12及び内側クラッド12b5〜12b12と同様、それぞれ0.3Wt%、1.0Wt%、及び0.6Wt%とした。
比較例に係る2つのマルチコアファイバA’を融着接続し、一方のマルチコアファイバA’を、中心軸を回転軸として微小回転させた場合に生じる接続損失、及び、実施例1に係る2つのマルチコアファイバAを融着接続し、一方のマルチコアファイバAを、中心軸を回転軸として微小回転させた場合に生じる接続損失について、図14を参照して検討する。図14において、(a)は、比較例に係る2つのマルチコアファイバA’を融着接続した場合に生じる接続損失の回転角依存性を示すグラフであり、(b)は、実施例1に係る2つのマルチコアファイバAを融着接続した場合に生じる接続損失の回転角依存性を示すグラフである。
図14の(a)によれば、比較例に係るマルチコアファイバA’においては、外層のコア11a5〜11a12の接続損失が内層のコア11a1〜11a4の接続損失と比べて大きくなっていることが分かる。これに対して、図14の(b)によれば、実施例1に係るマルチコアファイバAにおいては、外層のコア11a5〜11a12の接続損失が内層のコア11a1〜11a4の接続損失と同程度に抑制されていることが分かる。また、外層のコア11a5〜11a12の接続損失が比較例と比べて低減されていることが分かる。
このような現象が生じる理由は、以下のとおりである。すなわち、中心軸を回転軸としてマルチコアファイバA,A’を微小回転させたときに生じる各コア11aiの軸ずれ量は、マルチコアファイバA,A’の中心軸からコア11aiまでの距離riとマルチコアファイバA,A’の回転角θとの積ri×θに概ね一致する。したがって、マルチコアファイバA,A’の中心軸に近い内層のコア11a1〜11a4の軸ずれ量は、マルチコアファイバA,A’の中心軸から遠い外層のコア11a5〜11a12の軸ずれ量よりも小さくなる。
このため、比較例に係るマルチコアファイバA’のように、内層のコア11a1〜11a4の側面を覆う内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4における各ドーパントの濃度を、外層のコア11a5〜11a12の側面を覆う内側クラッド12a5〜12a12及び内側クラッド12b5〜12b12におけるドーパントの各ドーパントの濃度と同一にすると、外層のコア11a5〜11a12の接続損失が内層のコア11a1〜11a4の接続損失と比べて大きくなる。これに対して、実施例1に係るマルチコアファイバAのように、内層のコア11a1〜11a4の側面を覆う内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4におけるドーパントの濃度を、外層のコア11a5〜11a12の側面を覆う内側クラッド12a5〜12a12及び内側クラッド12b5〜12b12におけるドーパントの各ドーパントの濃度よりも小さくすると、外層のコア11a5〜11a12の接続損失が内層のコア11a1〜11a4の接続損失と同程度に抑制される。また、外層のコア11a5〜11a12の接続損失が比較例と比べて低減される。
したがって、実施例1に係るマルチコアファイバAにおいては、第1の効果として、第1内側クラッドにおける第2ドーパントの節約によって、外層のコアの接続損失の値を内層のコアの接続損失の値に近づけることができ、外層のコアの接続損失の値を低減させることができる。加えて、第2の効果として、第1内側クラッドにおける第2ドーパントの節約によって、マルチコアファイバAの製造コストを低減することができる。全コアの接続損失が均一化し易いくなるため、全コアの伝送後のOSNRを均一化するという観点からも好ましい。
〔実施例1の変形例〕
実施例1に係るマルチコアファイバAと同様、コア数が12、コア配置が正方格子配置、コア間距離が31μm、コア径が2.5μm、内側クラッド径が9μm、クラッド径が150μm、クラッド厚が26.0μmである、全長2kmのマルチコアファイバXを製造した。ただし、マルチコアファイバXにおいては、内側クラッドを設けなかった。なお、内部クラッドを設けたうえで、内部クラッドに対するドーパントの添加を省略してもよい。
次に、実施例1に係るマルチコアファイバAから、長さ5cmのマルチコアファイバA1、及び、長さ5cmのマルチコアファイバA2を切り出した。そして、マルチコアファイバXの一端にマルチコアファイバA1を融着接続する共に、マルチコアファイバXの他端にマルチコアファイバA2を融着接続することによって、マルチコアファイバYを製造した。マルチコアファイバYは、本実施形態に係る加熱前のマルチコアファイバ1(図1参照)の一実施例である。
マルチコアファイバYは、マルチコアファイバA1により構成される5cmの区間I1、マルチコアファイバA2により構成される5cmの区間I2、及び、マルチコアファイバXにより構成される2kmの区間I3により構成される。マルチコアファイバYでは、マルチコアファイバXの内側クラッドが設けられておらず、マルチコアファイバXの少なくとも一部においてドーパントが添加されていないため、製造コストを更に抑えることができる。また、マルチコアファイバXの全体にわたってドーパントが添加されていない場合は、製造コストをより一層抑えることができるのでさらに好ましい。また、さらなる効果として、接続損失およびコア間クロストーク低減の両方の効果も得られる。
〔実施例2〕
実施例2に係るマルチコアファイバ1として、コア数が7、コア配置が六方最密配置、コア間距離が31μm、クラッド径が125μm、クラッド厚が36.5μmである、ファイバ長2kmのマルチコアファイバBを製造した。内側クラッドは、マルチコアファイバBの全長に亘って設けた。なお、コア数が7、コア配置が六方最密配置となるマルチコアファイバ1の断面構造については、図3の(a)を参照されたい。
この際、コア11a1〜11a12には、ゲルマニウムを添加した。コア11a1〜11a12におけるゲルマニウムの濃度は、10Wt%であった。マルチコアファイバ1の中心軸を通る内側クラッド12a1及び内側クラッド12b1には、ドーパントを添加しなかった。それ以外の内側クラッド12a2〜12a7及び内側クラッド12b2〜12b7には、フッ素、ゲルマニウム、及びリンを共添加した。内側クラッド12a2〜12a7及び内側クラッド12b2〜12b7におけるフッ素、ゲルマニウム、及びリンの重量パーセント濃度は、それぞれ0.3Wt%、1.0Wt%、及び0.6Wt%であった。なお、内側クラッド12a1〜12a7の外側クラッド12cに対する比屈折率差、及び、内側クラッド12b1〜12b7の外側クラッド12cに対する比屈折率差は、それぞれ、−0.1%以上+0.1%以下であった。
実施例2に係るマルチコアファイバBの光学特性を測定したところ、実施例1に係るマルチコアファイバAと同様の結果が得られた。また、実施例2に係るマルチコアファイバBの2コア間クロストーク及び合計クロストークを測定したところ、実施例1に係るマルチコアファイバAと同様の結果が得られた。
実施例1に係る2つのマルチコアファイバBを融着接続し、一方のマルチコアファイバBを、中心軸を回転軸として微小回転させた場合に生じる接続損失について、図15を参照して説明する。図15において、(a)は、短時間(具体的には、2秒間)の加熱(具体的には、アーク放電)により実施例1に係る2つのマルチコアファイバBを融着接続した場合に生じる接続損失の回転角依存性を示すグラフであり、(b)は、長時間(具体的には、100秒間)の加熱(具体的には、アーク放電)により実施例1に係る2つのマルチコアファイバBを融着接続した場合に生じる接続損失の回転角依存性を示すグラフである。
図15の(a)に示したグラフと図15の(b)に示したグラフとを比較すると、以下のことが分かる。すなわち、マルチコアファイバBの中心を通るコア11a1の接続損失は、回転角に依らず概ね一定の値を取る。このため、コア11a1の側面を覆う内側クラッド12a1及び内側クラッド12b1に熱拡散促進ドーパントが添加されていなくても、加熱時間の不足により回転性軸ずれに対するトレランスが小さくなるという問題を生じ難い。一方、その他のコア11a2〜11a7の接続損失は、回転角に応じた値を取る。このため、その他のコア11a2〜11a7の側面を覆う内側クラッド12a2〜12a7及び内側クラッド12b2〜12b7に熱拡散促進ドーパントが添加されていないと、加熱時間の不足により回転性軸ずれに対するトレランスが小さくなるという問題を生じ易い。
次に、実施例1に係るマルチコアファイバBを、モードフィード径が8.6μmであるITU−T.G657A1に準拠したシングルモードファイバと同様のコアを有するマルチコアファイバCに融着接続し、マルチコアファイバB又はマルチコアファイバCを、中心軸を回転軸として微小回転させた場合に生じる接続損失について、図16を参照して説明する。図16において、(a)は、短時間(具体的には、2秒間)の加熱(具体的には、アーク放電)によりマルチコアファイバB,Cを融着接続した場合に生じる接続損失の回転角依存性を示すグラフであり、(b)は、長時間(具体的には、100秒間)の加熱(具体的には、アーク放電)によりマルチコアファイバB,Cを融着接続した場合に生じる接続損失の回転角依存性を示すグラフである。
図16の(a)に示したグラフと図16の(b)に示したグラフとを比較すると、以下のことが分かる。すなわち、マルチコアファイバBの中心を通るコア11a1の接続損失は、回転角に依らず概ね一定の値を取る。このため、コア11a1の側面を覆う内側クラッド12a1及び内側クラッド12b1に熱拡散促進ドーパントが添加されていなくても、加熱時間の不足により回転性軸ずれに対するトレランスが小さくなるという問題を生じ難い。一方、その他のコア11a2〜11a7の接続損失は、回転角に応じた値を取る。このため、その他のコア11a2〜11a7の側面を覆う内側クラッド12a2〜12a7及び内側クラッド12b2〜12b7に熱拡散促進ドーパントが添加されていないと、加熱時間の不足により回転性軸ずれに対するトレランスが小さくなるという問題を生じ易い。
以上のことから、実施例1に係るマルチコアファイバBにおいては、マルチコアファイバBの中心軸を通るコア11a1の側面を覆う内側クラッド12a1及び内側クラッド12b1には、熱拡散促進ドーパントを添加せず、その他のコア11a2〜11a7の側面を覆う内側クラッド12a2〜12a7及び内側クラッド12b2〜12b7には、熱拡散促進ドーパントを添加する構成を採用している。これにより、加熱時間の不足により回転性軸ずれに対するトレランスが小さくなることを抑えながら、添加するドーパントを節約してマルチコアファイバBの製造コストを抑えるという効果が得られている。
〔実施例2の変形例〕
実施例2に係るマルチコアファイバBと同様、コア数が7、コア配置が六方最密配置、コア間距離が31μm、クラッド径が125μm、クラッド厚が36.5μmである、ファイバ長2kmのマルチコアファイバZを製造した。ただし、マルチコアファイバZにおいては、内側クラッドを設けなかった。なお、内部クラッドを設けたうえで、内部クラッドに対するドーパントの添加を省略してもよい。
次に、実施例2に係るマルチコアファイバBから、長さ5cmのマルチコアファイバB1、及び、長さ5cmのマルチコアファイバB2を切り出した。そして、マルチコアファイバZの一端にマルチコアファイバB1を融着接続する共に、マルチコアファイバZの他端にマルチコアファイバB2を融着接続することによって、マルチコアファイバVを製造した。マルチコアファイバVは、本実施形態に係る加熱前のマルチコアファイバ1(図1参照)の一実施例である。
マルチコアファイバVは、マルチコアファイバB1により構成される5cmの区間I1、マルチコアファイバB2により構成される5cmの区間I2、及び、マルチコアファイバZにより構成される2kmの区間I3により構成される。マルチコアファイバVでは、マルチコアファイバZの内側クラッドが設けられておらず、ドーパントが添加されていないため、製造コストを更に抑えることができる。また、さらなる効果として、接続損失およびコア間クロストーク低減の両方の効果も得られる。
〔実施例3〕
実施例3に係るマルチコアファイバ1として、コア数が12、コア配置が正方格子配置、コア間距離が26.0μm、コア径が2.5μm、内側クラッド径が8.8μm、クラッド径が125μm、クラッド厚が21.5μmである、ファイバ長2kmのマルチコアファイバAを製造した。内側クラッドは、マルチコアファイバDの全長に亘って設けた。なお、コア数が12、コア配置が正方格子配置となるマルチコアファイバ1の断面構造については、図3の(b)を参照されたい。
この際、コア11a1〜11a12には、ゲルマニウムを添加した。コア11a1〜11a12におけるゲルマニウムの濃度は、10Wt%であった。また、内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4には、フッ素、ゲルマニウム、及びリンを共添加した。ここで、内層のコア11a1〜11a4の側面を覆う内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4においては、フッ素、ゲルマニウム、及びリンの重量パーセント濃度を、それぞれ0.3Wt%、1.0Wt%、及び0.6Wt%とした。一方、外層のコア11a5〜11a12の側面を覆う内側クラッド12a5〜12a12及び内側クラッド12b5〜12b12においては、フッ素、ゲルマニウム、及びリンの重量パーセント濃度を、内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4よりもそれぞれ高くした。具体的には、フッ素、ゲルマニウム、及びリンの重量パーセント濃度を、それぞれ1.2Wt%、2.8Wt%、及び1.0Wt%とした。内側クラッド12a1〜12a4の外側クラッド12cに対する比屈折率差、及び、内側クラッド12b1〜12b4の外側クラッド12cに対する比屈折率差は、それぞれ、−0.1%以上+0.1%以下であった。このように構成された実施例3に係るマルチコアファイバ1の屈折率分布を図17に示す。なお、図17においては、コア11a1、内側クラッド12a1を用いてマルチコアファイバ1の屈折率分布を示している。
マルチコアファイバDの光学特性を測定した結果を下記の表6に示す。
マルチコアファイバDにおいて、波長1360nmにおけるファイバ長2kmあたりの2コア間クロストークは、−41dBとなった。また、マルチコアファイバDにおいて、波長1360nmにおけるファイバ長2kmあたりの合計クロストークは、−35dBとなった。すなわち、クロストークが十分に小さいマルチコアファイバが得られた。
実施例3に係る2つのマルチコアファイバDを融着接続し、一方のマルチコアファイバDを、中心軸を回転軸として微小回転させた場合に生じる接続損失について、図18を参照して説明する。図18において、(a)は、短時間(具体的には、2秒間)の加熱(具体的には、アーク放電)により実施例1に係る2つのマルチコアファイバDを融着接続した場合に生じる接続損失の回転角依存性を示すグラフであり、(b)は、長時間(具体的には、80秒間)の加熱(具体的には、アーク放電)により実施例3に係る2つのマルチコアファイバDを融着接続した場合に生じる接続損失の回転角依存性を示すグラフである。
図18の(a)に示したグラフと図18の(b)に示したグラフとを比較すると、以下のことが分かる。すなわち、短時間の加熱により融着接続された2つのマルチコアファイバDにおいては、マルチコアファイバDの外側コアであるコア11a6の接続損失が、マルチコアファイバDの内側コアであるコア11a1の接続損失を大きく上回った(図18の(a)参照)。一方、長時間の加熱に融着接続された2つのマルチコアファイバDにおいては、マルチコアファイバDの外側コアであるコア11a6の接続損失が、マルチコアファイバDの内側コアであるコア11a1の接続損失を上回ってはいるものの、コア11a1及びコア11a6の接続損失が抑制されることが分かった(図18の(b)参照)。
この結合損失の抑制は、長時間の加熱により内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4に添加されていたドーパントがより広範囲に拡散し、その結果として、融着接続された2つのマルチコアファイバDのコア11a1〜11a12のモードフィールド径が拡大しているためと考えられる。
〔実施例3の第1の変形例〕
図17に示すように、実施例3に係るマルチコアファイバ1においては、例えば、内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4の、外側クラッド12cに対する比屈折率差は、それぞれ、−0.1%以上+0.1%以下であった。しかし、本発明の一態様において、特許請求の範囲に記載の第1内側クラッドの一例である内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4の、外側クラッド12cに対する比屈折率差は、それぞれ、−0.1%未満であってもよい。ここで、内側クラッド12a1の、外側クラッド12cに対する比屈折率差が−0.1%未満とは、(1)外側クラッド12cの屈折率が、内側クラッド12a1の屈折率より大きく、かつ、(2)内側クラッド12a1と外側クラッド12cと比屈折率差の絶対値が0.1%よりも大きいことを意味する。なお、本願明細書においては、「AのBに対する比屈折率差が−0.1%未満」と記載した場合、(1)Bの屈折率がAの屈折率より大きく、かつ、(2)AとBと比屈折率差の絶対値が0.1%よりも大きいことを意味する。
また、本発明の一態様において、特許請求の範囲に記載の第2内側クラッドの一例である内側クラッド12a5〜12a12及び内側クラッド12b5〜12b12の、外側クラッド12cに対する比屈折率差は、それぞれ、−0.1%未満であってもよいし、特許請求の範囲に記載の第1内側クラッド及び第2内側クラッドの一例である内側クラッド12a1〜12a12及び内側クラッド12b1〜12b12の、外側クラッド12cに対する比屈折率差は、それぞれ、−0.1%未満であってもよい。
図19には、実施例3の第1の変形例に係るマルチコアファイバ1であって、内側クラッド12a1の、外側クラッド12cに対する比屈折率差(Δt)は、−0.1%未満(例えば−0.3%)であるマルチコアファイバ1の屈折率分布を示す。なお、図19においては、コア11a1、内側クラッド12a1を用いてマルチコアファイバ1の屈折率分布を示している。
なお、例えば、内側クラッド12a1の屈折率は、第2ドーパントと、第2ドーパントを添加することにより生じる屈折率の変化を抑制あるいは相殺するように屈折率を変化させる第3ドーパントとを共添加し、第2ドーパント及び第3ドーパントの各々のドーパント濃度を調整することによって、所望の値にすることができる。
本変形例のマルチコアファイバ1によれば、隣接するコア間(例えばコア11a1とコア11a2との間)におけるクロストークを抑制することができる。したがって、本変形例のマルチコアファイバ1は、(1)実施例3に係るマルチコアファイバ1と同じコア間距離を採用するのであれば、実施例3に係るマルチコアファイバ1と比較してクロストークを抑制することができるし、(2)実施例3に係るマルチコアファイバ1と同じクロストークを実現すればよいのであれば、コア間距離を縮小することにより外側クラッド12cのクラッド径を変化させることなくコア11amの数を増やすことができる。
本変形例のマルチコアファイバ1においては、2つのマルチコアファイバ1同士を加熱による内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4に添加されていたドーパントの熱拡散の効果が共添加により促進される。したがって、本変形例のマルチコアファイバ1は、より効果的にモードフィールド径の拡大することができ、更に、外側クラッド12cよりも屈折率が低い内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4によってクロストークを抑制する、又は、コア11amの密度を高めることができる。
本変形例のマルチコアファイバ1であって、波長1.31μmでのモードフィールド径が5.4μmであり、且つ、カットオフ波長が1.26μm以下となるマルチコアファイバ1の屈折分布の一例を表7に示す。
〔実施例3の第2の変形例〕
また、本発明の一態様において、特許請求の範囲に記載の第1内側クラッドの一例である内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4の外側には、内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4の側面を覆い、且つ、側面が外側クラッド12cにより覆われ、且つ、屈折率が内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4並びに外側クラッド12cより低い第1低屈折率層が設けられていてもよい。なお、この場合にも、内側クラッド12a1〜12a4及び内側クラッド12b1〜12b4の各々には、第2ドーパントと、第3ドーパントとが共添加されている。
また、本発明の一態様において、特許請求の範囲に記載の第2内側クラッドの一例である内側クラッド12a5〜12a12及び内側クラッド12b5〜12b12の外側には、内側クラッド12a5〜12a12及び内側クラッド12b5〜12b12の側面を覆い、且つ、側面が外側クラッド12cにより覆われ、且つ、屈折率が内側クラッド12a5〜12a12及び内側クラッド12b5〜12b12より低い第2低屈折率層が設けられていてもよい。また、本発明の一態様は、上述した第1低屈折率層及び第2低屈折率層を備えていてもよい。
図20には、実施例3の第2の変形例に係るマルチコアファイバ1であって、内側クラッド12a1と外側クラッド12cとの間に第1低屈折率層13a1が設けられているマルチコアファイバ1の屈折率分布を示す。なお、図20においては、コア11a1、内側クラッド12a1、及び第1低屈折率層13a1を用いてマルチコアファイバ1の屈折率分布を示している。
図20に示すように、内側クラッド12a1の外側且つ外側クラッド12cの内側に第1低屈折率層13a1を設けることにより、隣接するコア間(例えばコア11a1とコア11a2との間)におけるクロストークを抑制することができる。内側クラッド12a1の屈折率は、上述したように第2ドーパントと第3ドーパントとを共添加し、第2ドーパント及び第3ドーパントの各々のドーパント濃度を調整することによって、所望の値にすることができる。本変形例では、内側クラッド12a1の外側クラッド12cに対する比屈折率差が−0.1%以上0.1%以下となるように内側クラッド12a1の屈折率を調整する。
第1低屈折率層13a1は、ダウンドーパント(例えば、フッ素)を添加することによって、内側クラッド12a1及び外側クラッド12cの各々に対する比屈折率差(Δt)が−0.1%未満(例えば−0.3%)になるように構成されている。また、第1低屈折率層13a1は、ダウンドーパントを添加する代わりに空孔により構成されていてもよい。
本変形例のマルチコアファイバ1は、実施例3の第1の変形例に係るマルチコアファイバ1と同様に、(1)実施例3に係るマルチコアファイバ1と同じコア間距離を採用するのであれば、実施例3に係るマルチコアファイバ1と比較してクロストークを抑制することができるし、(2)実施例3に係るマルチコアファイバ1と同じクロストークを実現すればよいのであれば、コア間距離を縮小することにより外側クラッド12cのクラッド径を変化させることなくコア11amの数を増やすことができる。
なお、本変形例のマルチコアファイバ1は、実施例3の第1の変形例に係るマルチコアファイバ1と比較して第1低屈折率層13a1を備えているため、内側クラッド径(半径R2)が小さくなる傾向を有する。例えば、実施例3の第1の変形例に係るマルチコアファイバ1の例では、半径R2がコア半径(半径R1)の3倍以上4倍以下であるのに対し、本変形例のマルチコアファイバ1の例では、半径R2が半径R1の1.5倍以上2倍以下である。そのため、本変形例のマルチコアファイバ1においては、内側クラッド12a1に添加する第2ドーパントの濃度を高めることによって、熱拡散効果を大きくすることが好ましい。
例えば、内側クラッド12a1に共添加するフッ素、ゲルマニウム、及びリンの重量パーセント濃度を、それぞれ1.2Wt%、2.8Wt%、及び1.0Wt%とすることによって、内側クラッド12a1の外側クラッド12cに対する比屈折率差を−0.1%以上0.1%以下の範囲内に納めることができる。
本変形例のマルチコアファイバ1であって、波長1.31μmでのモードフィールド径が5.4μmであり、且つ、カットオフ波長が1.26μm以下となるマルチコアファイバ1の屈折分布の一例を表8に示す。
〔適用例1〕
本実施形態に係るマルチコアファイバ1は、例えば、光コネクタに適用することができる。マルチコアファイバ1を含む光コネクタについて、図21を参照して説明する。図21は、マルチコアファイバ1を含む光コネクタ100の構成を示す模式図である。なお、図21には、光コネクタ100の接続相手となる光コネクタ200の構成も併せて示している。
光コネクタ100は、コネクタ筐体101と、端部を熱コア拡大した後にコネクタ筐体101の内部に引き込まれたマルチコアファイバ1と、コネクタ筐体101の外部においてマルチコアファイバ1の側面を覆うシース102と、を備えている。光コネクタ200は、コネクタ筐体201と、コネクタ筐体201の内部に引き込まれたマルチコアファイバ2と、コネクタ筐体201の外部においてマルチコアファイバ2の側面を覆うシース202と、を備えている。なお、マルチコアファイバ2は、例えば、ITU−T.G657A1に準拠したシングルモードファイバと同一のコア構造を有するマルチコアファイバ(以下、「標準マルチコアファイバ」と記載する)である。コネクタ筐体101とコネクタ筐体201とを機械的に接続すると、マルチコアファイバ1の端面とマルチコアファイバ2の端面とが突き合せられ、その結果、マルチコアファイバ1の各コアとマルチコアファイバ2の各コアとが光学的に接続される。
マルチコアファイバ1の中間部における各コアのモードフィールド径は、マルチコアファイバ1の端部における各コアのモードフィールド径よりも小さくなっている。これにより、マルチコアファイバ1の中間部において生じ得る各種クロストークを小さく抑えることができる。また、マルチコアファイバ1の端部における各コアのモードフィールド径は、マルチコアファイバ2における各コアのモードフィールド径と同程度まで拡大されている。これにより、マルチコアファイバ1とマルチコアファイバ2との接続損失を小さく抑えることができる。
〔適用例2〕
本実施形態に係るマルチコアファイバ1は、例えば、ファンイン/ファンアウトデバイスに適用することができる。マルチコアファイバ1を含むファンイン/ファンアウトデバイスについて、図22を参照して説明する。図22の(a)は、マルチコアファイバ1を含む、ファイババンドル型のファンイン/ファンアウトデバイス300Aの構成を示す模式図である。図22の(b)は、マルチコアファイバ1を含む、平面光導波路型のファンイン/ファンアウトデバイス300Bを示す模式図である。
ファイババンドル型のファンイン/ファンアウトデバイス300Aは、図22の(a)に示すように、マルチコアファイバ1と、複数のシングルコアファイバ21〜22と、屈折率整合樹脂体301(又はキャピラリ)とを備えている。シングルコアファイバ21〜22の個数は、マルチコアファイバ1のコア数と同数、又は、それ以下である。シングルコアファイバ21〜22は、それぞれ、マルチコアファイバ1のコアに接続されている。屈折率整合樹脂体301は、マルチコアファイバ1の端部及びシングルコアファイバ21〜22の端部を包み込み、マルチコアファイバ1とシングルコアファイバ21〜22とを一体化している。なお、シングルコアファイバ21〜22は、例えば、ITU−T.G657A1に準拠したシングルモードファイバである。
ファンイン/ファンアウトデバイス300Aにおいては、マルチコアファイバ1の中間部における各コアのモードフィールド径が、各シングルコアファイバ21〜22におけるコアのモードフィールド径よりも小さくなっている。これにより、マルチコアファイバ1の中間部において生じ得る各種クロストークを小さく抑えることができる。
また、ファンイン/ファンアウトデバイス300Aにおいては、マルチコアファイバ1の端部における各コアのモードフィールド径が、各シングルコアファイバ21〜22におけるコアのモードフィールド径と同程度まで拡大されている。これにより、マルチコアファイバ1とシングルコアファイバ21〜22との接続損失を小さく抑えることができる。
平面光導波路型のファンイン/ファンアウトデバイス300Bは、図22の(b)に示すように、マルチコアファイバ1と、複数のシングルコアファイバ21〜22と、平面光導波路302と、を備えている。シングルコアファイバ21〜22の個数は、マルチコアファイバ1のコア数と同数、又は、それ以下である。マルチコアファイバ1は、平面光導波路302の一方の端面に接続されている。シングルコアファイバ21〜22は、それぞれ、平面光導波路302の他方の端面に接続されている。平面光導波路3には、マルチコアファイバ1の各コアと各シングルコアファイバ21〜22のコアと繋ぐコアが形成されている。なお、マルチコアファイバ21〜22は、例えば、ITU−T.G657A1に準拠したシングルモードファイバである。平面光導波路302は、筐体に収容されることなく、外部に露出している。
ファンイン/ファンアウトデバイス300Bにおいては、マルチコアファイバ1の中間部における各コアのモードフィールド径が、平面光導波路3における各コアのモードフィールド径、及び、各シングルコアファイバ21〜22におけるコアのモードフィールド径よりも小さくなっている。これにより、マルチコアファイバ1の中間部において生じ得る各種クロストークを小さく抑えることができる。
また、ファンイン/ファンアウトデバイス300Bにおいては、マルチコアファイバ1の端部における各コアのモードフィールド径が、平面光導波路3における各コアのモードフィールド径、及び、各シングルコアファイバ21〜22におけるコアのモードフィールド径と同程度まで拡大されている。これにより、平面光導波路3を介したマルチコアファイバ1とシングルコアファイバ21〜22との接続損失を小さく抑えることができる。
〔変形例〕
本実施形態に係る熱コア拡大前のマルチコアファイバ1においては、一方の端部を含む区間I1及び他方の端部を含む区間I2の両方に内側クラッド12a1〜12am,12b1〜12bmを設ける構成を採用しているが、これに限定されない。すなわち、一方の端部を含む区間I1にのみ内側クラッド12a1〜12amを設ける構成を採用してもよいし、他方の端部を含む区間I2にのみ内側クラッド12a1〜12amを設ける構成を採用してもよい。
また、本実施形態に係る熱コア拡大前のマルチコアファイバ1においては、全てのコア11a1〜11amに対して内側クラッド12a1〜12am,12b1〜12bmを設ける構成を採用しているが、これに限定されない。すなわち、コア11a1〜11amのうち、一部のコアに対してのみ内側クラッド12a1〜12am,12b1〜12bmを設ける構成を採用してもよい。
同様に、本実施形態に係る熱コア拡大後のマルチコアファイバ1においては、両方の端部において各コアaiのモードフィールド径を拡大する構成を採用しているが、これに限定されない。すなわち、一方の端部のみにおいて各コアaiのモードフィールド径を拡大する構成を採用してもよいし、他方の端部のみにおいて各コアaiのモードフィールド径を拡大する構成を採用してもよい。
また、本実施形態に係る熱コア拡大前のマルチコアファイバ1においては、全てのコア11a1〜11amの端部において熱コア拡大を図る構成を採用しているが、これに限定されない。すなわち、コア11a1〜11amのうち、一部のコアの端部においてのみ熱コア拡大を図る構成を採用してもよい。
〔更なる変形例〕
本実施形態においては、コアにアップドーパントを添加することによって、コアの屈折率をクラッドの屈折率よりも高くした光ファイバについて説明したが、本発明の適用範囲は、これに限定されない。すなわち、本発明は、クラッドにダウンドーパント(例えば、フッ素)を添加することによって、クラッドの屈折率をコアの屈折率よりも低くしたマルチコアファイバ(以下、「純石英マルチコアファイバ」と記載する)に対しても適用することが可能である。
例えば、純石英マルチコアファイバの端部を加熱すると、クラッドに添加されたダウンドーパントがコアに熱拡散する。これにより、コアとクラッドとの屈折率差が小さくなり、その結果、端部におけるモードフィールド径が拡大する。したがって、本実施形態に係る熱コア拡大後のマルチコアファイバ1は、純石英マルチコアファイバの端部を加熱することによっても実現することができる。
また、熱コア拡大前の純石英マルチコアファイバに対して、以下のようにドーパントを添加すれば、クラッドに添加されたダウンドーパントのコアへの拡散速度を上げることができる。したがって、端部において所定のモードフィールド径を有する純石英マルチコアファイバを、短時間の加熱で得ることができる。
コア:ドーパントを添加しない。
内側クラッド:ダウンドーパント(第1ドーパント)、熱拡散促進ドーパント(第2ドーパント)、及び屈折率調整用ドーパント(第3ドーパント)を添加する。
外側クラッド:ダウンドーパント(第1ドーパント)を添加する。
ここで、熱拡散促進ドーパントとは、クラッド(内側クラッド及び外側クラッド)に添加されたダウンドーパントである第1ドーパントのコアへの拡散を促進するドーパントである。また、屈折率調整用ドーパントとは、内側クラッドに添加された熱拡散促進ドーパントである第2ドーパントによる屈折率変化を抑制あるいは相殺するためのドーパントである。第2ドーパントがアップドーパントである場合、ダウンドーパントが屈折率調整用ドーパントとして選択される。逆に、第2ドーパントがダウンドーパントである場合、アップドーパントが屈折率調整用ドーパントして選択される。熱拡散促進ドーパント、アップドーパント、及びダウンドーパントの例については、上述したとおりである。
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態、変形例、又は実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態、変形例、又は実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。