本発明のゴム架橋物は、
共役ジエン系ゴムと、無機充填剤とを含有するゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物であって、
該ゴム架橋物に対し、10Hzの正弦波による振動を与えた状態にて、原子間力顕微鏡を用いて損失正接を測定した際における、架橋ゴム成分のうち、前記無機充填剤との界面以外の部分を形成する非界面成分の損失正接値K(m)と、架橋ゴム成分のうち、前記無機充填剤との界面を形成する界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)が0.80以下に制御されたものである。
<ゴム組成物>
まず、本発明で用いるゴム組成物について説明する。
本発明で用いるゴム組成物は、共役ジエン系ゴムと、無機充填剤とを含有する、共役ジエン系ゴムの組成物である。
本発明で用いる共役ジエン系ゴムとしては、共役ジエン単量体単位を主構造単位として含有する重合体であればよく特に限定されないが、1種類の共役ジエン化合物を重合してなる単独重合体、2種類以上の共役ジエン化合物を共重合してなる共重合体、あるいは、1種または2種以上の共役ジエン化合物と、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体との共重合体のいずれであってもよい。
共役ジエン化合物としては、特に限定されず、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、および1,3−シクロヘキサジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、1,3−ブタジエン、イソプレンおよび1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、およびイソプレンが特に好ましい。なお、これらの共役ジエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明で用いる共役ジエン系ゴムとしては、共役ジエン化合物と、芳香族ビニル化合物とを共重合してなる共重合体であってもよい。芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、およびジメチルアミノエチルスチレンなどを挙げることができる。これらのなかでも、スチレン、α−メチルスチレン、および4−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。なお。これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いる共役ジエン系ゴムとしては、共役ジエン単量体単位50〜100重量%を含むものが好ましく、50〜90重量%を含むものがより好ましく、50〜80重量%を含むものが特に好ましく、また、芳香族ビニル単量体単位0〜50重量%を含むものが好ましく、10〜50重量%を含むものがより好ましく、20〜50重量%を含むものが特に好ましい。
また、本発明で用いる共役ジエン系ゴムとしては、共役ジエン化合物に加えて、芳香族ビニル化合物以外の共役ジエン化合物と共重合可能な他の単量体を共重合してなるものであってもよい。他の単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などを挙げることができる。これらの単量体は、共役ジエン系ゴム中に、単量体単位として、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
本発明で用いる共役ジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、好ましくは−40〜−10℃、より好ましくは−35〜−15℃、さらに好ましくは−30〜−17℃である。ガラス転移温度(Tg)が上記範囲にあると、得られるゴム架橋物はウエットグリップ性と低発熱性とのバランスに優れたものとなる。
本発明で用いる共役ジエン系ゴムにおける共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、特に限定されないが、好ましくは0〜80モル%であり、より好ましくは5〜70モル%、さらに好ましくは8〜65モル%、特に好ましくは30〜55モル%である。ビニル結合含有量が上記範囲にあると、得られるゴム架橋物はウエットグリップ性と低発熱性とのバランスに優れたものとなる。
本発明で用いる共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは50,000〜2,000,000、より好ましくは100,000〜1,800,000、さらに好ましくは150,000〜1,500,000、特に好ましくは300,000〜1,200,000である。共役ジエン系ゴムの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCとも言う)測定により、ポリスチレン換算の値として求めることができる。共役ジエン系ゴムの重量平均分子量が上記範囲にあると、得られるゴム架橋物は耐摩耗性により優れたものとなる。
また、本発明で用いる共役ジエン系ゴムの数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、好ましくは1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.4、特に好ましくは1.0〜1.3である。この分子量分布の値(Mw/Mn)が上記範囲にあると、得られるゴム架橋物は低発熱性により優れたものとなる。
本発明で用いる共役ジエン系ゴムは、たとえば、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合することにより得ることができ、このような方法、すなわち、溶液重合法により重合されることが好ましい。
単量体として用いる共役ジエン化合物としては、前述した、共役ジエン系ゴムを構成するために用いうる共役ジエン化合物として例示したものと同じものが挙げられる。また、単量体として、共役ジエン化合物と共に芳香族ビニル化合物を用いてもよい。単量体として用いる芳香族ビニル化合物としては、前述した、共役ジエン系ゴムを構成するために用いうる芳香族ビニル化合物として例示したものと同じものが挙げられる。さらに、単量体として、共役ジエン化合物とともに、芳香族ビニル化合物以外の、共役ジエン化合物と共重合可能な他の単量体を用いてもよい。単量体として用いる芳香族ビニル化合物以外の、共役ジエン化合物と共重合可能な他の単量体としては、前述した、共役ジエン系ゴムを構成するために用いうる、芳香族ビニル化合物以外の、共役ジエン化合物と共重合可能な他の単量体として例示したものと同じものが挙げられる。
重合に用いられる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2−ブテン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;等が挙げられる。これらの不活性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、たとえば、1〜50重量%であり、好ましくは10〜40重量%となる量である。
重合に用いる重合開始剤としては、共役ジエン化合物を含む単量体を重合させて、共役ジエン系ゴムを与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤を挙げることができる。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ−t−ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ−t−ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく用いられ、有機モノリチウム化合物がより好ましく用いられ、n−ブチルリチウムが特に好ましく用いられる。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、目的とする共役ジエン系ゴムの分子量に応じて決定すればよいが、単量体1000g当り、通常1〜50ミリモル、好ましくは1.5〜20ミリモル、より好ましくは2〜15ミリモルの範囲である。
重合温度は、通常−80〜+150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などのいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
また、共役ジエン系ゴムを2種以上の単量体単位から構成する場合、その結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、ランダム状など種々の結合様式とすることができるが、ランダム状の結合様式であることが好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより高めることができる。
また、共役ジエン化合物を含む単量体を重合するにあたり、得られる共役ジエン系ゴムにおける共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、たとえば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.01〜10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
以上のようにして、不活性溶媒中に、共役ジエン系ゴムを得ることができる。また、このようにして得られる共役ジエン系ゴムは、通常、活性末端を有するものとなるため、重合反応終了後、重合停止剤を重合溶液に添加することで、未反応の活性末端を失活させることができるが、本発明の効果をより顕著なものとする観点から、このような活性末端に対し、各種変性剤をさらに反応させることにより、共役ジエン系ゴムを、変性基を有する変性共役ジエン系ゴムとすることが好ましい。
変性剤としては、特に限定されず、重合体の変性剤として使用されている通常の変性剤を用いることができるが、シリカなどの無機充填剤に対する親和性を適切に高めることができ、これにより得られるゴム架橋物をウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性により優れたものとすることができるという点より、ケイ素原子含有変性剤が好ましく、シロキサン化合物、または、窒素含有シラン化合物がより好ましい。
シロキサン化合物としては、シロキサン構造(−Si−O−)を主鎖構造として有するものであればよく、特に限定されないが、側鎖に有機基を有するオルガノシロキサンが好ましく、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンがより好ましい。
上記一般式(1)中、R1〜R8は、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X1およびX4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X2は、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基であり、X2が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。X3は、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、X3が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは0〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数であり、m+n+kは1以上である。
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、上記一般式(1)中のR1〜R8、X1およびX4を構成し得る炭素数1〜6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、たとえば、フェニル基およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましい。
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1、X2およびX4を構成し得る炭素数1〜5のアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
さらに、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1、X2およびX4を構成し得るエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基としては、たとえば、下記一般式(2)で表される基が挙げられる。
−Z1−Z2−E (2)
上記一般式(2)中、Z1は、炭素数1〜10のアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、Z2はメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2〜10の炭化水素基である。
上記一般式(2)で表される基としては、Z2が酸素原子であるものが好ましく、Z2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Z1が炭素数1〜3のアルキレン基であり、Z2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1およびX4としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基、または、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。また、X2としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましい。さらに、X1およびX4が炭素数1〜6のアルキル基であり、X2がエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基であることがより好ましい。
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X
3、すなわち2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(3)で表される基が好ましい。
上記一般式(3)中、aは2〜20の整数であり、X
5は炭素数2〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R
9は水素原子またはメチル基であり、X
6は炭素数1〜10のアルコキシ基またはアリールオキシ基である。これらの中でも、aが2〜8の整数であり、X
5が炭素数3のアルキレン基であり、R
9が水素原子であり、かつ、X
6がメトキシ基であるものが好ましい。
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは0〜200の整数、好ましくは20〜150の整数、より好ましくは30〜120の整数である。mが200以下であると、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造がより容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いもより容易となる。
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0〜200の整数、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜120の整数である。kは0〜200の整数、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜130の整数である。m、nおよびkの合計数は1以上であり、2〜400であることが好ましく、20〜300であることがより好ましく、30〜250であることが特に好ましい。m、nおよびkの合計数が1以上であると、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと、共役ジエン系ゴムの活性末端との反応が進行し易く、さらに、m、nおよびkの合計数が400以下であると、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造が容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いも容易となる。
また、窒素含有シラン化合物としては、一分子中に窒素原子と、ケイ素原子とを含有する化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、下記に挙げる化合物などを用いることができる。
すなわち、まず、窒素含有シラン化合物の第1の具体例として、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
(上記一般式(4)中、R
10は、炭素数1〜12のアルキレン基であり、R
10が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。R
11〜R
19は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基である。bは1〜10の整数である。)
上記一般式(4)で表される化合物において、炭素数1〜6のアルキル基、および炭素数6〜12のアリール基の具体例としては、上記一般式(1)と同様のものを挙げることができる。
上記一般式(4)で表される化合物において、炭素数1〜12のアルキレン基としては、たとえば、メチレン基、エチレン基、およびプロピレン基などが挙げられる。これらの中でも、プロピレン基が好ましい。
上記一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物の具体例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、およびN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
また、窒素含有シラン化合物の第2の具体例として、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(5)中、R20、R21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、または炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、またはベンジル基である。また、X7はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、X7で表される官能基となりうるヒドロカルビルオキシ基としては、特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基などのアルケニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルコキシ基またはアリーロキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。また、X7となりうるハロゲン基としては、特に限定されないが、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられ、これらのなかでも、クロロ基が好ましい。また、X7は水酸基であってもよく、この水酸基は、ヒドロカルビルオキシ基やハロゲン基であったものが加水分解されて水酸基となったものであってもよい。R22は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。cは0〜2の整数であり、dは1〜10の整数であり、好ましくは1〜6の整数である。X7またはR22が複数あるときは、複数あるX7またはR22は互いに同一であっても相違していてもよい。
上記一般式(5)で表される化合物の具体例としては、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルジエトキシメチルシラン、3−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−フェニル−N−プロピルアミノ)ペンチルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリル−N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−(N−メチル−N−フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ビス[トリメチルシリル]アミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリクロロシランなどが挙げられる。
また、窒素含有シラン化合物の第3の具体例として、下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(6)において、R23は、炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基である。また、X8はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、その具体例としては、上記一般式(5)のX7と同様とすることができる。R24は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。eは0〜1の整数である。X8が複数あるときは、複数あるX8は互いに同一であっても相違していてもよい。
上記一般式(6)で表される化合物の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジプロポキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジプロポキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−トリメチルシリル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジクロロ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタンなどが挙げられる。
また、窒素含有シラン化合物の第4の具体例として、下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(7)中、X9はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、R25は置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R26、R27は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、R26およびR27は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成していてもよく、該環構造を形成する場合には、これらが結合する窒素原子に加えて、これらが結合する窒素原子以外のヘテロ原子とともに環構造を形成していてもよい。fは1〜2の整数である。
上記一般式(7)中、X9はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、その具体例としては、上記一般式(5)のX7と同様とすることができる。
また、上記一般式(7)中、f(すなわち、式(7)においてX9で表される官能基の数)は、1〜2の整数であり、好ましくは2である。一般式(7)におけるfが2である場合において、一般式(7)で表される化合物1分子中に2個含まれるX9で表される基は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
上記一般式(7)中、R25は、置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R25となりうる炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基またはアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。また、R25で表される炭化水素基は、炭化水素基以外の置換基を有していてもよく、その置換基としては、特に限定されないが、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロカルビルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基などのカルボニル基含有基や、エポキシ基、オキシ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン基などを挙げることができる。
上記一般式(7)中、R26およびR27は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、R26およびR27は互いに結合して、一般式(7)において「N」で表される窒素原子とともに環構造を形成していてもよい。R26およびR27が互いに結合していない場合に、R26およびR27なりうる炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基またはアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。また、R26およびR27は互いに結合して環構造を形成する場合に、そのR26およびR27が結合してなる2価の炭化水素基としては、特に限定されないが、n−ブチレン基(一般式(7)において「N」で表される窒素原子とともに1−ピロリジン基を形成する場合)、n−ペンチレン基(1−ピペリジン基を形成する場合)、ブタジエニレン基(1−ピロール基を形成する場合)などが挙げられる。
また、R26およびR27で表される炭化水素基は、環構造形成の有無に関わらず、炭化水素基以外の置換基を有していてもよく、その置換基としては、特に限定されないが、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロカルビルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基などのカルボニル基含有基や、エポキシ基、オキシ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン基などを挙げることができる。さらに、R26およびR27が、互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成する場合には、その環構造を形成する原子として、炭素原子および一般式(7)において「N」で表される窒素原子以外のヘテロ原子が含まれていてもよく、そのようなヘテロ原子の例として、窒素原子や酸素原子を挙げることができる。
本発明においては、上記一般式(7)で表される化合物の中でも、特に好ましいものとして、R
26およびR
27で表される炭化水素基が、互いに結合して、一般式(7)において「N」で表される窒素原子とともに、ピペラジン環構造を形成しているものが挙げられる。より具体的には、下記一般式(8)で表される化合物を用いることが好ましい。
上記一般式(8)中、X9、R25、fは、いずれも上記一般式(7)におけるものと同じものを表し、R28は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
上記一般式(8)中、R28は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R28となりうる炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基またはアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記一般式(7)で表される化合物の具体例としては、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジエトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジメトキシ−8−(N,N−ジエチルアミノ)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2−メトキシ−2−メチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジクロロ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンなどが挙げられる。
また、窒素含有シラン化合物の第5の具体例として、下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(9)中、X10はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、その具体例としては、上記一般式(5)のX7と同様とすることができる。R29は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。また、R30、R31、R32は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基である。gは0〜2の整数であり、hは1〜10の整数であり、jは1〜10の整数である。X10またはR29が複数あるときは、複数あるX10またはR29は互いに同一であっても相違していてもよい。
上記一般式(9)で表される化合物の具体例としては、3−[N−2−{N’,N’−ビス(トリメチルシリル)アミノ}エチル−N−トリメチルシリルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−[N−2−{N’,N’−ビス(トリエチルシリル)アミノ}エチル−N−トリエチルシリルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−[N−2−{N’,N’−ビス(トリエチルシリル)アミノ}エチル−N−トリエチルシリルアミノ]プロピルトリクロロシランなどが挙げられる。
さらに、窒素含有シラン化合物の第6の具体例として、下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(10)中、X11はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、その具体例としては、上記一般式(5)のX7と同様とすることができる。R33は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。また、R34、R35は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、または炭素数6〜18のアリール基である。pは0〜2の整数であり、qは1〜10の整数である。X11またはR33が複数あるときは、複数あるX11またはR33は互いに同一であっても相違していてもよい。
上記一般式(10)で表される化合物の具体例としては、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4−メチルペンタン−2−イミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4−メチルペンタン−2−イミン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)プロパン−2−イミン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ペンタン−3−イミン、N−(3−トリクロロシリルプロピル)−4−メチルペンタン−2−イミンなどが挙げられる。
上記窒素含有シラン化合物の中でも、上記一般式(5)、上記一般式(7)または上記一般式(9)で表される化合物が好ましく、上記一般式(5)、または上記一般式(7)で表される化合物がより好ましく、上記一般式(7)で表される化合物が特に好ましい。
共役ジエン系ゴムの活性末端に対し、上記した変性剤を反応させる際における、変性剤の使用量は、特に限定されないが、活性末端を有する共役ジエン系ゴムの活性末端1モルに対する変性剤の量(重合開始剤として、有機アルカリ金属化合物を使用した場合には、有機アルカリ金属化合物中の金属原子1モルに対する変性剤の量)として、0.01〜10.0モルであることが好ましく、0.02〜5.0モルであることがより好ましく、0.05〜2.0モルであることが特に好ましい。なお、変性剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組合わせて用いてもよい。
また、共役ジエン系ゴムの活性末端に対し、変性剤を反応させる方法としては、特に限定されないが、活性末端を有する共役ジエン系ゴムと、変性剤とを、これらを溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した共役ジエン系ゴムの重合に用いる溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上記にて得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムを、その重合に用いた重合溶液のままの状態とし、ここに変性剤を添加する方法が簡便であり好ましい。なお、この際において、変性剤は、上述した重合に用いる不活性溶媒に溶解して重合系内に添加してもよく、その溶液濃度は、1〜50重量%の範囲とすることが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜120℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、1分〜1時間である。
活性末端を有する共役ジエン系ゴムを含有する溶液に、変性剤を添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系ゴムを含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系ゴムを含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300〜50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液に変性剤を添加することが望ましい。変性剤の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系ゴムと重合系中に含まれる不純物等との副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
なお、活性末端を有する共役ジエン系ゴムに、変性剤を反応させる前に、本発明の効果を阻害しない範囲で、共役ジエン系ゴムの活性末端の一部を、従来から通常使用されているカップリング剤などを重合系内に添加して、不活性化してもよい。
活性末端を有する共役ジエン系ゴムに、変性剤を反応させた後に、未反応の活性末端が残存している場合、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールまたは水等の、重合停止剤を重合溶液に添加して、未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
以上のようにして得られる共役ジエン系ゴム(変性共役ジエン系ゴムである場合も含む。以下、同様。)の溶液には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合して、油展ゴムとしてもよい。伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系及びナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸等が挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、共役ジエン系ゴム100重量部に対して、通常5〜100重量部である。
そして、このようにして得られる共役ジエン系ゴムは、例えば、スチームストリッピングにより、溶媒を除去することにより、反応混合物から分離することで、固形状の共役ジエン系ゴムとして得ることができる。
本発明で用いるゴム組成物は、上述した共役ジエン系ゴムに加えて、無機充填剤を含有する。
無機充填剤としては、特に限定されないが、シリカおよびカーボンブラックから選択される少なくとも1種の無機充填剤が好ましく、得られるゴム架橋物を低発熱性に優れたものとすることができるという点より、シリカがより好ましい。
シリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される)は、好ましくは50〜300m2/g、より好ましくは80〜220m2/g、特に好ましくは100〜170m2/gである。また、シリカのpHは、5〜10であることが好ましい。
カーボンブラックとしては、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられる。カーボンブラックを用いる場合、ファーネスブラックを用いることが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、FEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いるゴム組成物中における無機充填剤の配合量は、ゴム組成物中の共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部であり、より好ましくは30〜150重量部、さらに好ましくは40〜100重量部である。無機充填剤の配合量を上記範囲とすることにより、ゴム組成物の加工性が優れたものとなり、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性および低発熱性により優れたものとすることができる。
本発明で用いるゴム組成物において、無機充填剤としてシリカを用いる場合、低発熱性をさらに改良するという観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピル−トリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロル)テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、およびγ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどを挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
また、本発明で用いるゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、たとえば、硫黄、ハロゲン化硫黄などの含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中の共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
さらに、本発明で用いるゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、有機充填剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中の共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中の共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜20重量部、特に好ましくは0.5〜15重量部である。
また、本発明で用いるゴム組成物においては、共役ジエン系ゴムとして複数種のゴムを組み合わせて用いてもよい。たとえば、共役ジエン系ゴムとして、上述した製造方法により得られる、変性基を有する変性共役ジエン系ゴムを少なくとも含むものを用いる場合には、変性基を有する変性共役ジエン系ゴムとして2種類以上のゴム(たとえば、変性基が互いに異なるゴム等)を組み合わせて用いてもよいし、あるいは、1種または2種以上の変性共役ジエン系ゴムに、他の未変性共役ジエン系ゴムを組み合わせて用いてもよい。このような他の未変性の共役ジエン系ゴムとしては、たとえば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス−BR、低シスBRであってもよい。また、1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい。)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどが挙げられる。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、および溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明で用いるゴム組成物には、共役ジエン系ゴム以外のゴムを配合してもよい。
上述した製造方法により得られる、変性基を有する変性共役ジエン系ゴムを少なくとも含むものを用いる場合における、当該変性共役ジエン系ゴムの含有割合は、本発明で用いるゴム組成物中のゴム成分の10〜100重量%を占めることが好ましく、50〜100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、変性共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を得ることができる。
本発明で用いるゴム組成物を得る方法としては、常法に従って各成分を混練する方法を採用すればよく、たとえば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く、無機充填剤などの配合剤と上述した共役ジエン系ゴムを含むゴム成分とを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く配合剤とゴム成分との混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した、共役ジエン系ゴムと、無機充填剤とを含有するゴム組成物を架橋してなるものであり、
該ゴム架橋物に対し、10Hzの正弦波による振動を与えた状態にて、原子間力顕微鏡を用いて損失正接を測定した際における、架橋ゴム成分のうち、前記無機充填剤との界面以外の部分を形成する非界面成分の損失正接値K(m)と、架橋ゴム成分のうち、無機充填剤との界面を形成する界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)が0.80以下に制御されたものである。
本発明によれば、ゴム架橋物を、共役ジエン系ゴムと、無機充填剤とを含有するゴム組成物を架橋してなるものとし、かつ、10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)を0.80以下に制御することにより、ゴム架橋物を、ウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性に優れたものとすることができるものである。特に、本発明者等が、ウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性を向上させるために、ゴム架橋物中における、架橋ゴムと無機充填剤との界面状態に着目し、鋭意検討を行ったところ、10Hzの正弦波による振動を与えた状態における、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物のウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性を向上させることができることを見出したものである。
なお、非界面成分の損失正接値K(m)は、ゴム架橋物を構成する架橋ゴム成分のうち、無機充填剤の影響を実質的に受けていない架橋ゴム部分(架橋ゴム成分のうち、無機充填剤から十分に離れた部分)、すなわち非界面形成架橋ゴム成分部分における損失正接値であり、この損失正接値K(m)が大きいほど、10Hzの正弦波による振動を与えた場合に、10Hzという比較的低い周波数の正弦波に追従して動きやすいと判断できる。また、界面成分の損失正接値K(i)は、ゴム架橋物を構成する架橋ゴム成分のうち、無機充填剤との界面を形成する架橋ゴム成分部分、すなわち界面形成架橋ゴム成分部分における損失正接値であり、この損失正接値K(i)が小さいほど、10Hzの正弦波による振動を与えた場合に動き難く、そのため、無機充填剤に対して強く相互作用していると判断できる。
そして、本発明においては、このような、10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)を0.80以下に制御するものであり、これによりゴム架橋物のウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性を向上させることがものである。なお、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)は、好ましくは0.75以下、より好ましくは0.73以下、さらに好ましくは0.70以下である。また、その下限は特に限定されないが、通常0.1以上である。特に、10Hzという比較的低い周波数の正弦波による振動を与えた場合には、タイヤ転がりに対する挙動に対応した値を示すことから、K(i)/K(m)を上記範囲とすることにより、低発熱性をより適切に改善することができるものである。
10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)とを測定する方法としては、特に限定されず、ゴム架橋物に対して、10Hzの正弦波(好ましくは1〜10nmの振幅)による振動を与えながら、室温(25℃)にて、好ましくは0.1〜300nmの分解能、より好ましくは0.1〜100nmの分解能にて、損失正接(損失正接=損失弾性率/貯蔵弾性率)を測定できるような方法であればよいが、通常は、原子間力顕微鏡が用いられる。原子間力顕微鏡としては、特に限定されず、Bruker社製の原子間力顕微鏡、OXFORD INSTRUMENTS社製の原子間力顕微鏡等を制限なく用いることができる。また、本発明においては、原子間力顕微鏡を用いて損失正接を測定するが、原子間力顕微鏡を用いる方法以外でも、10Hzの正弦波による振動を与えつつ、上記した分解能にて測定が可能な方法であれば、特に制限なく用いることができる。また、本発明においては、10Hzの正弦波による振動を与えて損失正接を測定するが、測定温度を変えることで(たとえば、25℃以外の温度とすることで)、正弦波の周波数を変更することも可能である。具体的には、25℃において、10Hzの正弦波による振動を与えた場合と同様の条件となるように、測定温度および正弦波の周波数を変更して測定を行うことも可能である。
10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)とを測定する具体的な方法としては、たとえば、”Nanorheological Mapping of Rubbers by Atomic Force microscopy”, macromolecules, 46, 1916-1922(2013)や、”Viscoelasticity of Inhomogeneous Polymers Characterized by Loss Tangent Measurements Using Atomic Force Microscopy, macromolecules, 47, 7971-7977(2014)などに記載の方法にしたがって測定することができる。
一例を挙げると、まず、ゴム架橋物をスライスすることで、試験片を得て、得られた試験片の1μm×1μmの範囲について原子間力顕微鏡を用い、25℃にて、フォースボリューム測定を64×64の分解能(15.6nmの分解能)で行うことで、各測定部位における弾性率Xを得る。そして、得られた各測定部位における弾性率Xについて、横軸を弾性率X、縦軸を頻度とするヒストグラムを作成し、作成したヒストグラムをガウス関数により解析することで、架橋ゴム成分の弾性率の平均値Xmおよび標準偏差σを算出する。そして、Xm−2σ≦X≦Xm+2σである測定部位を、ゴム架橋物を構成する架橋ゴム成分のうち、無機充填剤の影響を実質的に受けていない架橋ゴム成分部分(架橋ゴム成分のうち、無機充填剤から十分に離れた部分)、すなわち非界面形成架橋ゴム成分部分として特定し、一方、Xm+3σ≦X≦Xm+9σである測定部位を、ゴム架橋物を構成する架橋ゴム成分のうち、無機充填剤との界面を形成する架橋ゴム成分部分、すなわち界面形成架橋ゴム成分部分として特定する。
次いで、上記方法により各測定部位について特定を行った試験片について、10Hzの正弦波による振動を5nmの振幅にて与えつつ、同じ範囲に対し、原子間力顕微鏡を用い、25℃にて、64×64の分解能(15.6nmの分解能)にて、フォースボリューム測定することで、試験片の変形量と位相遅れを計測し、各測定部位における損失正接値Kを測定する。そして、各測定部位における損失正接値Kについて、上記にて特定した非界面形成架橋ゴム成分部分および界面形成架橋ゴム成分部分ごとに、平均値を算出することで、非界面形成架橋ゴム成分部分の損失正接値、すなわち、無機充填剤との界面以外の部分を形成する非界面成分の損失正接値K(m)と、界面形成架橋ゴム成分部分の損失正接値、すなわち、無機充填剤との界面を形成する界面成分の損失正接値K(i)とを算出することができ、これらの比を計算することで、比K(i)/K(m)を求めることができる。なお、各測定部位についての特定および損失正接値K(m)、K(i)の測定は、それぞれ別々に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
また、上記した原子間力顕微鏡を用いた測定においては、測定に用いるプローブの大きさにより、測定可能な分解能が変化するため、上記分解能での測定を可能とするために、プローブとしては、チップ曲率半径が1〜100nmのプローブ(たとえば、このようなチップ曲率半径を備えるカンチレバー)を使用することが好ましく、チップ曲率半径が1〜30nmのプローブを使用することがより好ましい。また、カンチレバーとしては、バネ定数が0.05〜100N/mのカンチレバーを使用することが好ましく、0.2〜40N/mのカンチレバーを使用することがより好ましく、0.5〜5N/mのカンチレバーを使用することがさらに好ましい。また、カンチレバーとしては、共振周波数が1〜2000kHzのカンチレバーを使用することが好ましく、10〜500kHzのカンチレバーを使用することがより好ましく、40〜100kHzのカンチレバーを使用することがさらに好ましい。
また、本発明のゴム架橋物においては、10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)が0.80以下であることに加えて、10kHzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値L(m)と、界面成分の損失正接値L(i)との比L(i)/L(m)が、K(i)/K(m)との関係で、[L(i)/L(m)]×[K(i)/K(m)]≦0.68を満たすことが好ましく、[L(i)/L(m)]×[K(i)/K(m)]≦0.60を満たすことがより好ましく、[L(i)/L(m)]×[K(i)/K(m)]≦0.55を満たすことがさらに好ましく、[L(i)/L(m)]×[K(i)/K(m)]≦0.50を満たすことが特に好ましい。また、その下限は特に限定されないが、通常0.1以上である。
なお、10kHzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値L(m)、および、界面成分の損失正接値L(i)は、10kHzの正弦波による振動を与えた状態にて、原子間力顕微鏡を用いて損失正接を測定した際における、架橋ゴム成分のうち、無機充填剤との界面以外の部分を形成する非界面成分の損失正接値、および、架橋ゴム成分のうち、無機充填剤との界面を形成する界面成分の損失正接値に、それぞれ対応し、10Hzの正弦波による振動に代えて、10kHzの正弦波による振動を与えること以外は、上述した、10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)、および界面成分の損失正接値K(i)と同様に測定することができる。あるいは、10kHzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値L(m)、および、界面成分の損失正接値L(i)は、10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)、および界面成分の損失正接値K(i)と同時に測定してもよく、この場合には、各測定部位に対し、10Hzの正弦波による振動、および10kHzの正弦波による振動をそれぞれ独立に与えながら、全測定範囲に対し測定を行うような態様とすればよい。この際に、10Hzの正弦波による振動、および10kHzの正弦波による振動を与える順番は特に限定されず、いずれが先でもよい。
なお、非界面成分の損失正接値L(m)は、ゴム架橋物を構成する架橋ゴム成分のうち、無機充填剤の影響を実質的に受けていない架橋ゴム部分(架橋ゴム成分のうち、無機充填剤から十分に離れた部分)、すなわち非界面形成架橋ゴム成分部分における損失正接値であり、この損失正接値L(m)が大きいほど、10kHzの正弦波による振動を与えた場合に、10kHzという比較的高い周波数の正弦波に追従して動きやすいと判断できる。また、界面成分の損失正接値L(i)は、ゴム架橋物を構成する架橋ゴム成分のうち、無機充填剤との界面を形成する架橋ゴム成分部分、すなわち界面形成架橋ゴム成分部分における損失正接値であり、この損失正接値L(i)が小さいほど、10kHzの正弦波による振動を与えた場合に動き難く、そのため、無機充填剤に対して強く相互作用していると判断できる。そして、10kHzという比較的高い周波数の正弦波による振動を与えた場合には、ウエットグリップ性能に対応した値を示すことから、K(i)/K(m)を上記範囲とすることに加え、これとL(i)/L(m)との積である、[L(i)/L(m)]×[K(i)/K(m)]を上記範囲とすることにより、ウエットグリップ性をより向上させることができるものである。
10kHzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値L(m)と、界面成分の損失正接値L(i)との比L(i)/L(m)は、特に限定されないが、ウエットグリップ性をより向上させることができるという点より、好ましくは0.85以下であり、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.75以下、特に好ましくは0.65以下である。また、その下限は特に限定されないが、通常0.1以上である。
本発明において、10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)、さらには、[L(i)/L(m)]×[K(i)/K(m)]を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、ゴム架橋物を形成するためのゴム組成物を調製する際に用いる、共役ジエン系ゴムの分子量、芳香族ビニル単位の含有割合、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量、導入する変性基の種類および導入率を調整する方法や、ゴム組成物を調製する際に用いる無機充填剤の配合量および粒子径を調整する方法、さらには、ゴム組成物を調製する際における混練条件を調整する方法などが挙げられ、これらを適宜組み合わせることが望ましい。
本発明のゴム架橋物を製造する方法としては特に限定されないが、上述したゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
本発明のゴム架橋物は、10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)が0.80以下に制御されたものであり、これにより、ウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性に優れたものである。そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、ウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性に優れることから、タイヤの材料、特に低燃費タイヤの材料として好適に用いることができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
〔共役ジエン系ゴムの分子量〕
共役ジエン系ゴムの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定器:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC−8320」)
カラム:東ソー社製、商品名「GMH−HR−H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折計(東ソー社製、商品名「RI−8320」)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
〔共役ジエン系ゴムのミクロ構造〕
1H−NMRにより測定した。
測定器:(JEOL社製、商品名「JNM−ECA−400WB」
測定溶媒:重クロロホルム
〔共役ジエン系ゴムのガラス転移温度〕
共役ジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)にて、以下の条件で測定した。
測定器:Pyris1 DSC(パーキンエルマー社製)
昇温速度:10℃/分
〔非界面成分の損失正接値K(m)、L(m)、界面成分の損失正接値K(i)、L(i)、K(i)/K(m)、[L(i)/L(m)]×[K(i)/K(m)]〕
ゴム架橋物をJIS K6229に準じて、抽出処理をした後、抽出処理後のゴム架橋物について、ウルトラミクロトーム(ライカ マイクロシステムズ株式会社製、ライカ EM UC7)を使用し、−100℃の雰囲気でガラスナイフを用いて、スライスすることで試験片を作製した。
得られた試験片を試料ステージの上に置き、試験片の任意の5ヶ所について1μm×1μmの範囲について、原子間力顕微鏡(Bruker社製、製品名「Dimension Icon AFM」)を用い、25℃にて、1Hzの走査速度で、フォースボリューム測定を64×64の分解能(15.6nmの分解能)にて行うことで、測定用プローブとしてのカンチレバーを通して弾性率の測定を行い、1μm×1μmの視野範囲における弾性率像を得た。なお、測定に際しては、測定用プローブとして、カンチレバー(オリンパス社製、製品名「OMCL AC240−TS」、バネ定数2N/m、共振周波数70kHz、チップ曲率半径7nm)を使用した。そして、得られた試験片の弾性率像に基づいて、横軸を弾性率X、縦軸を頻度とするヒストグラムを作成し、作成したヒストグラムをガウス関数により解析することで、架橋ゴム成分の弾性率の平均値Xmおよび標準偏差σを算出した。そして、測定された弾性率Xが、Xm−2σ≦X≦+Xm+2σである測定部位を、シリカとの界面以外の部分を形成する非界面形成架橋ゴム成分部分として特定し、また、測定された弾性率Xが、Xm+3σ≦X≦Xm+9σである測定部位を、シリカとの界面を形成する界面形成架橋ゴム成分部分として特定した。
次いで、上記試験片の同じ視野範囲について、圧電スキャナーと独立して試料ステージ上に設置された高周波帯域のピエゾアクチュエータ(noliac社製、製品名「NAC2011−A01」)を、ロックインアンプ(シグナルリカバリー社製 7280型)を用いて駆動させることで、10Hzの正弦波による振動、および10kHzの正弦波による振動を5nmの振幅にて、それぞれ独立に発生させながら、試料ステージ上の試験片に対して、原子間力顕微鏡(Bruker社製、製品名「Dimension Icon AFM」)により、25℃にて、1Hzの走査速度で、フォースボリューム測定を64×64の分解能(15.6nmの分解能)にて行うことで、試験片の変形量と位相遅れを、測定用プローブとしてのカンチレバーを通して測定し、これにより、1μm×1μmの視野範囲における、10Hzの正弦波による損失正接像、および10kHzの正弦波による損失正接像を得た。なお、測定に際しては、測定用プローブとして、カンチレバー(オリンパス社製、製品名「OMCL AC240−TS」、バネ定数2N/m、共振周波数70kHz、チップ曲率半径7nm)を使用し、フォースボリューム測定中のカンチレバーと試験片が接している間に静止時間を導入することにより、10Hzの正弦波による振動、および、10kHzの正弦波による振動が、それぞれ独立に与えられた状態での測定を行った。
そして、10Hzの正弦波による、各測定部位における損失正接値Kについて、上記にて特定した非界面形成架橋ゴム成分部分および界面形成架橋ゴム成分部分ごとに、平均値を算出することで、非界面形成架橋ゴム成分部分の損失正接値、すなわち、シリカとの界面以外の部分を形成する非界面成分の損失正接値K(m)と、界面形成架橋ゴム成分部分の損失正接値、すなわち、シリカとの界面を形成する界面成分の損失正接値K(i)とを算出した後、これらの比を計算することで、比K(i)/K(m)を求めた。
また、10kHzの正弦波による、各測定部位における損失正接値Lについて、上記にて特定した非界面形成架橋ゴム成分部分および界面形成架橋ゴム成分部分ごとに、平均値を算出することで、非界面形成架橋ゴム成分部分の損失正接値、すなわち、ゴム相のシリカとの界面以外の部分を形成する非界面成分の損失正接値L(m)と、界面形成架橋ゴム成分部分の損失正接値、すなわち、シリカとの界面を形成する界面成分の損失正接値L(i)とを算出した後、これらの比L(i)/L(m)を計算し、これを用いて、[L(i)/L(m)]×[K(i)/K(m)]を算出した。
〔ウエットグリップ性〕
長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmに成形したゴム架橋物の試験片について、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、製品名「ARES」)を用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδを測定した。このtanδの値については、比較例1の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、ウエットグリップ性に優れる。
〔低発熱性〕
長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmに成形したゴム架橋物の試験片について、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、製品名「ARES」)を用い、動的歪み2.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。このtanδの値については、比較例1の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、低発熱性に優れる。
〔耐摩耗性〕
外径50mm、内径15mm、厚さ10mmに成形したゴム架橋物の試験片について、FPS摩耗試験機(上島製作所社製)を用い、荷重1kgf、スリップ率3%にて測定を行った。この特性については、比較例1の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、耐摩耗性に優れる。
〔実施例1〕
〔変性共役ジエン系ゴム1の製造〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800g、1,3−ブタジエン71g、スチレン29g、およびテトラメチルエチレンジアミン0.055gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.86ミリモルを添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、下記式(11)で表される変性剤を、n−ブチルリチウムの使用量に対して、0.05倍モルとなるように、20%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた後、重合停止剤としてメタノール0.064gを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。そして、得られた重合体成分100gに対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1520」)0.15gを溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴム1を得た。得られた変性共役ジエン系ゴム1の重量平均分子量(Mw)は520,000であった。また、この変性共役ジエンゴム1のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.9℃であった。
〔ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、上記にて得られた変性共役ジエン系ゴム1 100部を30秒素練りし、次いでシリカ(ソルベイ社製、商品名「Zeosil1165MP」)23部、およびシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(エボニック社製、商品名「Si69」)6.4部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ソルベイ社製、商品名「Zeosil1165MP」)27部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。そして、得られた混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物に、硫黄1.5部、架橋促進剤:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーCZ−G」、大内新興化学工業社製)1.8部、および架橋促進剤:1,3−ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.5部を加えてこれらを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。
次いで、得られたゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋して、ゴム架橋物の試験片を作製し、この試験片について、10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)および界面成分の損失正接値K(i)、10kHzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値L(m)および界面成分の損失正接値L(i)、比K(i)/K(m)、比L(i)/L(m)、ならびに、[L(i)/L(m)]×[K(i)/K(m)]の測定、ならびに、ウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性の評価を行なった。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
〔変性共役ジエン系ゴム2、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
テトラメチルエチレンジアミンの使用量を0.027gに変更するとともに、n−ブチルリチウムの使用量を0.52ミリモルに変更し、実施例1と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴム2を得た。得られた変性共役ジエン系ゴム2の重量平均分子量(Mw)は1,020,000であった。また、この変性共役ジエンゴム2のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.8℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム1に代えて、上記にて得られた変性共役ジエン系ゴム2を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
〔変性共役ジエン系ゴム3、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
上記式(11)で表される変性剤に代えて、下記式(12)で表される変性剤0.23g(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.5倍モル)をキシレンで希釈せずに使用した以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴム3を得た。得られた変性共役ジエン系ゴム3の重量平均分子量(Mw)は510,000であった。また、この変性共役ジエンゴム3のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.7℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム1に代えて、上記にて得られた変性共役ジエン系ゴム3を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
〔変性共役ジエン系ゴム4、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
テトラメチルエチレンジアミンの使用量を0.0027gに変更するとともに、n−ブチルリチウムの使用量を0.52ミリモルに変更し、上記式(12)で表される変性剤0.118g(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.5倍モル)をキシレンで希釈せずに使用した以外は、実施例3と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴム4を得た。得られた変性共役ジエン系ゴム4の重量平均分子量(Mw)は1,020,000であった。また、この変性共役ジエンゴム4のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.8℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム1に代えて、上記にて得られた変性共役ジエン系ゴム4を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例5〕
〔変性共役ジエン系ゴム5、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
上記式(11)で表される変性剤に代えて、下記式(13)で表される変性剤0.304g(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.5倍モル)をキシレンで希釈せずに使用した以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴム5を得た。得られた変性共役ジエン系ゴム5の重量平均分子量(Mw)は530,000であった。また、この変性共役ジエンゴム5のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.9℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム1に代えて、上記にて得られた変性共役ジエン系ゴム5を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例6〕
〔変性共役ジエン系ゴム6、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
テトラメチルエチレンジアミンの使用量を0.0027gに変更するとともに、n−ブチルリチウムの使用量を0.52ミリモルに変更し、上記式(13)で表される変性剤0.152g(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.5倍モル)をキシレンで希釈せずに使用した以外は、実施例5と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴム6を得た。得られた変性共役ジエン系ゴム6の重量平均分子量(Mw)は1,000,000であった。また、この変性共役ジエンゴム6のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.9℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム1に代えて、上記にて得られた変性共役ジエン系ゴム6を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例7〕
〔変性共役ジエン系ゴム7、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
上記式(11)で表される変性剤に代えて、下記式(14)で表される変性剤0.48g(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.5倍モル)をキシレンで希釈せずに使用した以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴム7を得た。得られた変性共役ジエン系ゴム7の重量平均分子量(Mw)は530,000であった。また、この変性共役ジエンゴム7のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.7℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム1に代えて、上記にて得られた変性共役ジエン系ゴム7を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例8〕
〔変性共役ジエン系ゴム8、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
テトラメチルエチレンジアミンの使用量を0.0027gに変更するとともに、n−ブチルリチウムの使用量を0.52ミリモルに変更し、上記式(14)で表される変性剤0.024g(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.5倍モル)をキシレンで希釈せずに使用した以外は、実施例7と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴム8を得た。得られた変性共役ジエン系ゴム8の重量平均分子量(Mw)は1,020,000であった。また、この変性共役ジエンゴム8のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.8℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム1に代えて、上記にて得られた変性共役ジエン系ゴム8を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
〔未変性共役ジエン系ゴム9、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
上記式(11)で表される変性剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の未変性共役ジエン系ゴム9を得た。得られた未変性共役ジエン系ゴム9の重量平均分子量(Mw)は520,000であった。また、この未変性共役ジエン系ゴム9のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.9℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム1に代えて、上記にて得られた未変性共役ジエン系ゴム9を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例2〕
〔未変性共役ジエン系ゴム10、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
1,3−ブタジエンの使用量を60gに、スチレンの使用量を40gに変更した以外は、比較例1と同様に操作して、固形状の未変性共役ジエン系ゴム10を得た。得られた未変性共役ジエン系ゴム10の重量平均分子量(Mw)は530,000であった。また、この未変性共役ジエン系ゴム10のスチレン単位の含有量は40重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は51モル%、ガラス転移温度は−0.5℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム9に代えて、上記にて得られた未変性共役ジエン系ゴム10を使用した以外は、比較例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例3〕
〔未変性共役ジエン系ゴム11、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
テトラメチルエチレンジアミンの使用量を0.027gに変更するとともに、n−ブチルリチウムの使用量を0.52ミリモルに変更した以外は、比較例1と同様に操作して、固形状の未変性共役ジエン系ゴム11を得た。得られた未変性共役ジエン系ゴム11の重量平均分子量(Mw)は1,010,000であった。また、この未変性共役ジエン系ゴム11のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.7℃であった。
そして、未変性共役ジエン系ゴム9に代えて、上記にて得られた未変性共役ジエン系ゴム11を使用した以外は、比較例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例4〕
〔変性共役ジエン系ゴム12、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
上記式(11)で表される変性剤に代えて、変性剤としてのテトラメトキシシラン0.15g(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.5倍モル)をキシレンで希釈せずに使用し、かつ、1,3−ブタジエンの使用量を60gに、スチレンの使用量を40gに変更するとともに、テトラメチルエチレンジアミンの使用量を0.152gに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴム12を得た。得られた変性共役ジエン系ゴム12の重量平均分子量(Mw)は520,000であった。また、この変性共役ジエンゴム12のスチレン単位の含有量は40重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は51モル%、ガラス転移温度は−0.6℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム1に代えて、上記にて得られた変性共役ジエン系ゴム12を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例5〕
〔変性共役ジエン系ゴム13、ゴム組成物およびゴム架橋物の製造〕
上記式(11)で表される変性剤に代えて、変性剤としてのテトラメトキシシラン0.076g(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.5倍モル)をキシレンで希釈せずに使用し、かつ、テトラメチルエチレンジアミンの使用量を0.027gに変更するとともに、n−ブチルリチウムの使用量を0.52ミリモルに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴム13を得た。得られた変性共役ジエン系ゴム13の重量平均分子量(Mw)は1,050,000であった。また、この変性共役ジエン系ゴム13のスチレン単位の含有量は29重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は44モル%、ガラス転移温度は−21.6℃であった。
そして、変性共役ジエン系ゴム1に代えて、上記にて得られた変性共役ジエン系ゴム13を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
表1、表2より、10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)が0.80以下であるゴム架橋物は、いずれも、ウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性に優れるものであった(実施例1〜8)。
一方、10Hzの正弦波による振動を与えた際における、非界面成分の損失正接値K(m)と、界面成分の損失正接値K(i)との比K(i)/K(m)が0.80より大きい場合には、ウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性のいずれかに劣るものであった(比較例1〜5)。