本発明は、自動で作業地を作業走行する作業車のための作業車支援システムに関する。
走行しながら作業を行う作業車を自動走行させる試みが、従来から行われている。そのためには、作業対象となる作業領域がマップデータなどを通じて認識されなければならない。例えば、特許文献1に開示された圃場作業車両の無人作業方法では、まず、作業領域である圃場の外周を手動運転により一周走行する外周ティーチングを行って、当該圃場の地図座標及び基準走行方位が算定される。次いで、圃場内の全領域を作業走行するための、走行作業経路を設定し、その経路上を時々刻々得られる車両の圃場内位置情報と走行方位情報とに基づき自動的に作業走行することで、圃場内の全領域に対する作業走行が自動操縦で行われる。この特許文献1で取り扱われている圃場作業車両は耕耘作業、整地作業、代掻き作業などを行うトラクタであり、圃場内の全領域を作業走行する。
特許文献2には、直線作業走行の繰り返しで苗植付け作業を行う自動走行田植機の目標走行経路を算定する方法が開示されている。この田植機は、車体位置を計測するGPSを備え、ティーチング開始時にティーチングSWを押下した時のGPSアンテナの位置を開始点とし、ティーチング終了時にティーチングSWを押下した時のGPSアンテナの位置を終了点とする。得られた開始点と終了点の情報に基づいて、開始点と終了点を結ぶ基準線が算定され、この基準線(線分)に平行で、植付け幅を考慮した直線を植付け作業走行のための目標経路として生成する。
特開平10−066406号公報
特開2008−67617号公報
特許文献1では、自動での作業走行経路を算定するための作業車の外周ティーチング走行は、圃場区画の位置情報を得るために行われるものであり、そのティーチング走行時には実質的な圃場作業は行われない。外周ティーチング走行の後、外周ティーチング走行で得られた圃場区画全体に対する走行作業経路が算定され、実際の自動作業走行が実施される。このため、作業対象となる圃場が広大になればなるほど、外周ティーチング走行に必要とされる時間や燃料が圃場作業の観点からは無視できない無駄な経費となる。
特許文献2では、直線状のティーチング走行時に作業(苗植付作業)が行われるかどうかは明示されていない。また、作業走行経路の算定の際、直線状のティーチング走行によって得られる直線状の基準線に平行な作業走行経路しか算定できない。さらには、ティーチング走行において圃場全体のマップ情報を得ることができないので、作業走行経路の往復経路数や経路長さを予め算定できない。
このような従来技術の実情から、外形マップが準備されていない作業地での自動作業走行経路を算定するためのさらに効果的な技術が所望されている。
本発明による作業車支援システムは、作業車の自車位置を検出する自車位置検出モジュールと、作業予定領域の外周を周回作業走行する際に前記自車位置検出モジュールによって取得された自車位置データから、前記作業予定領域内の未作業領域の外形マップを算定する未作業領域外形マップ算定部とを備えている。
この構成では、作業予定領域の外形マップ(座標位置)を算定するために作業予定領域の外周を周回する際、作業予定領域に対する作業も同時に行う。つまり、作業予定領域の境界線に沿って初期作業走行(兼ティーチング走行)することで、作業予定領域の最外周領域の作業を実施するとともに、初期作業走行中に自車位置検出モジュールによって取得される自車位置データから作業予定領域の境界線の座標位置を得ることができる。この作業予定領域の境界線の座標位置から、作業予定領域から初期作業走行によって作業完了した領域を除いた未作業領域の外形マップが算定される。作業予定領域の最外周領域の座標位置を取得するためのティーチング走行においても、作業予定領域に対する作業が行われるので、作業効率がよい。
穀物収穫を行うコンバインは、一般的には、最初に圃場外周に沿った回り刈りを行い、それによって作り出された外周の既刈領域を方向転換領域として内領域の収穫作業を行う。この回り刈りを、上述した初期作業走行(兼ティーチング走行)として用いると、良好な作業効率が得られる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記作業車はコンバインであり、前記外周の周回作業走行は穀稈収穫のための回り刈り走行である。
初期作業走行で方向転換領域を作り出す際、1回の周回作業走行では十分な大きさの方向転換領域が得られないことがある。そのような場合、周回作業走行が複数回行われる。複数回の周回作業走行で取得された自車位置データから、周回軌跡の重心位置に近い自車位置群と作業幅とから周回作業走行による既作業領域の内側境界線を算定することができる。この内側境界線の座標位置に基づいて、未作業領域の外形マップ(外形座標データ)を算定することができる。作業車は、コーナ領域での旋回以外では、実質的には直線走行するので、周回作業走行の軌跡はコーナ領域を除いて直線(辺)とみなすと、算定処理の負担が軽減する。このことから、本発明の実施形態の1つでは、前記外周の周回作業走行は複数周回行われ、前記未作業領域外形マップ算定部は、前記自車位置データに対応する軌跡点群の重心位置を基準中心とし、軌跡点群から前記基準中心に近い複数の辺要素を算定し、前記辺要素から実質的に多角形状の前記未作業領域の外形マップを算定する。
未作業領域を自動作業走行するためには、当該未作業領域に適した目標走行経路が必要である。このため、本発明の実施形態では、前記未作業領域外形マップ算定部によって算定された外形マップに基づいて、前記未作業領域を作業走行するための目標走行経路を算定する経路算定部が備えられている。
未作業領域の自動作業走行の適切な経路は、領域形状が類似していても作業対象の状態、例えば麦や米の収穫作業での穀稈の生育状態などによっても異なる。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記経路算定部は、前記目標走行経路を複数通り生成し、所定の走行条件に基づいて最適な目標走行経路を出力するように構成されている。これにより、設定された走行条件(走行速度、作業時間、傾斜の有無など)に最適に適合する目標走行経路が出力されるので、自動作業走行がより理に適ったものとなる。特に、作業の経済性に重きを置く場合には、複数通りの前記目標走行経路毎に所要走行時間が予測演算され、前記所要走行時間が前記走行条件として利用される構成が好ましい。
未作業領域の自動作業走行の経路の決定には、オペレータの経験に基づく判断も重要である。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記経路算定部は、前記目標走行経路を複数通り生成し、複数通りの前記目標走行経路がオペレータによる選択のために報知される。なお、オペレータの判断材料として所要走行時間が重要である。このことから、複数通りの前記目標走行経路毎に所要走行時間が予測され、前記所要走行時間が複数通りの前記目標走行経路に対応付けて報知される構成も利点がある。
目標走行経路に沿った自動作業走行を実行している際に、何らかの理由で、当該目標走行経路を離脱しなければならない事態が生じる。例えば、燃料切れ、あるいは作業車がコンバインとすれば、その穀粒タンクの満杯が生じた場合、燃料補給や穀粒アンロードのために、畦道などの道路に接近しなければならない。その後、再び、目標走行経路の離脱位置に戻って自動作業走行を行うが、離脱位置が遠く離れている場合、最短で達する目標走行経路から自動作業走行を開始した方が効率がよい。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記目標走行経路を用いた前記未作業領域に対する作業走行中に、当該作業車が前記目標走行経路を離脱した場合、それまでの作業走行において前記自車位置検出モジュールによって取得された自車位置データから、新たな未作業領域の外形マップが算定され、この新たに算定された外形マップと離脱した作業車の現在位置とに基づいて、残りの未作業領域を作業走行するための目標走行経路が再算定される。
コンバインなどの農作業車は、往復の直線走行とその間の方向転換走行(一般にはUターン)を繰り返しながら、作業対象領域(圃場など)における収穫などの作業を行う。その際、作業は直線走行において行われ、方向転換走行では作業は行われない。作業対象領域が長方形のような矩形であれば、方向転換走行軌跡が直線走行から方向転換走行への走行軌跡と方向転換走行から直線走行への走行軌跡が対称形状となり、操向制御が容易である。しかしながら、作業対象領域が台形のような非矩形であれば、方向転換走行軌跡が直線走行から方向転換走行への走行軌跡と方向転換走行から直線走行への走行軌跡が非対称形状となり、操向制御が複雑となって、方向転換後の位置ずれが生じやすい。この問題を避けるため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記目標走行経路が直線作業走行と方向転換非作業走行とを組み合わせた単位走行ユニットとして算定され、前記方向転換非作業走行は、Uターン進入操向角とUターン離脱操向角とが一致する単純Uターン走行と、前記単純Uターン走行の端点と前記直線作業走行の端点とを接続する補助直線非作業走行とに分割されている。この構成では、方向転換非作業走行が、走行軌跡が対称である単純Uターン走行と調整用の直線走行とから成り立つので、操向制御が簡単となり、方向転換後の位置ずれが生じにくい。
自動走行においては、何らかの外乱要因や内乱要因から実際の走行経路が目標走行経路から外れてしまうことがある。このような場合では、使用している目標走行経路に復帰するように自動制御するよりは、新たに目標走行経路を算定した方が、良好な作業結果を得る場合がある。このため、本発明の好適な実施形態では、実際の走行経路の前記目標走行経路に対する偏差が所定値を超えた場合、それまでの作業走行において前記自車位置検出モジュールによって取得された自車位置データから、新たな未作業領域の外形マップが算定され、新たに算定された外形マップに基づいて、残りの未作業領域を作業走行するための目標走行経路が再算定される機能も与えられている。
往復直線作業走行で作業を行っている場合、作業残しを避けるためには、往復の直線作業走行において作業軌跡のオーバーラップが必要となる。このオーバーラップが大きく変化した場合、使用している目標走行経路で修復することは困難となる。このため、実際の走行で生じたオーバ―ラップ量が、前もって設定されているオーバーラップ量を所定量以上ずれた場合、前記目標走行経路が新たに算定される機能を備えることが好ましい。
本発明による作業車支援システムの基本原理を説明するための説明図である。
本発明による作業車支援システムが搭載された作業車の一例であるコンバインの側面図である。
コンバインの平面図である。
コンバインのキャビンの内部を示す平面断面図である。
作業車支援システムが組み込まれたコンバインの制御系を説明するための機能ブロック図である。
作業車支援システムによる作業走行制御の一例を示すフローチャート図である。
中央作業走行のための目標走行経路の一例を示す走行経路図である。
中央作業走行のための目標走行経路の一例を示す走行経路図である。
中央作業走行のための目標走行経路の一例を示す走行経路図である。
本発明による作業車支援システムの具体的な実施形態を説明する前に、図1を用いて、作業車支援システムの基本原理、特にティーチング走行を通じて作業予定領域の外形マップを算定する基本原理を説明する。図1では、この作業車支援システムを装備した作業車によって作業される作業予定領域は、単純な長方形で示されている。作業車は、操縦レバーなどを含む手動走行操作ユニットによって手動走行を行う手動走行制御ユニットと、自動走行情報に基づいて自動走行を行う自動走行制御ユニットと、作業車の自車位置を検出する自車位置検出モジュールとを備えている。手動走行操作ユニットは、作業車に搭乗している操作員によって手動操作される。自動走行情報には、走行機器情報と作業機器情報とが含まれている。走行機器情報には、自車位置検出モジュールによって検出される自車位置が目標走行経路に一致するように作業車を自動走行制御するための操向制御データや車速制御データが含まれる。作業機器情報には、目標走行経路を走行中に行うべき作業を実行するための作業機器に対する作業制御データが含まれる。
作業予定領域として、ここでは圃場が想定されており、外周囲は柵や畦などによって境界づけられている。この圃場に対する作業走行、例えば稲や麦などの収穫作業走行は、最初に行われる外周囲に沿った環状の回り作業走行と、当該回り作業走行によって残された未作業領域に対する中央作業走行に分けられる。回り作業走行は、多角形(図1では四角形)の外周の一辺に沿った作業走行と、多角形のコーナ領域で行われる切り返し走行(後進を組み込むことで方向転換を行う:αターンとも呼ばれる)とに分けられる。回り作業走行は手動走行制御のもとに行われ、中央作業走行は自動走行制御のもとで行われる。
手動走行による回り作業走行時に、自車位置検出モジュールによって継時的に検出された自車位置を示す自車位置データ群(例えば緯度経度データ群からなる周回走行ログ)が回り作業走行軌跡として記録される。記録された自車位置のデータ群は、図1において、黒点で仮想的に示されている。この回り作業走行軌跡に作業幅を加味することで、回り作業走行を通じて作り出された、作業予定領域における作業済領域のマップデータが算定できる。さらに、この作業済領域の内側に位置する領域(図1では薄く塗られている)が、続いて行われる自動作業走行によって作業されるべき未作業領域となる。この未作業領域の外形マップは、作業済領域のマップデータからが算定できる。なお、図1の回り作業走行軌跡の部分拡大図に示すように、回り作業走行が複数周回された場合は、最内周の回り作業走行の自車位置のデータ群が未作業領域の外形マップの算定に用いられる。もちろん、その際、最内周の回り作業走行以外の周回の自車位置のデータ群も、最内周の回り作業走行での自車位置のデータ群の欠損を補完するためなどに用いられる。
周回走行ログである自車位置のデータ群から未作業領域の外形マップを算定するアルゴリズムの一例を以下に示す。
(1)走行軌跡点群である周回走行ログから、ノイズ的な自車位置データをフィルタリングで取り除き、走行軌跡に属すると見なされるデータ群だけを抽出する。
(2)抽出されたデータ群の重心位置を算定する。
(3)基準点(一般には作業車の回り作業終点)を基点として、抽出データ群の各点の重心に対する方位を算定する。
(4)算定された各点の方位から重心位置を基準中心とする360度分(非作業領域1周分)のデータを処理対象データとして抽出する。
(5)抽出された処理対象データを多角形(図1では四角形)の各辺に属する辺要素として区分けする。
(6)区分けされた各辺の辺要素を線形近似し、各辺を示す近似直線式を算定し、各辺の交点座標を算定する。
(7)車体における自車位置の基準箇所と作業幅とに基づいて未作業領域の外形マップを算定する。
未作業領域の外形マップが算定されると、当該未作業領域の自動作業走行(中央作業走行)のための目標走行経路が算定される。図1の例では、目標走行経路は、未作業領域での往復直線作業走行と、直線作業走行の往路と復路との間をつなぐための作業済領域での方向転回走行とを含む。目標走行経路の始点(中央作業走行開始点)、直線作業走行の方向、隣接する直線作業走行の往路と復路との間隔などに応じて、目標走行経路が算定可能である。その際、往路と復路とを接続する経路間移動は、直進と旋回とを組み合わせることで行われ、さらには後進による切り返しも可能である。経路間移動の開始から終了までにかかる時間は移動距離や前後進切替の有無によって異なる。Uターンのような単純な経路間移動では、移動時間は短いが、旋回に必要な面積が大きくなる。また、切り返し経路間移動では、移動に必要となる面積は小さいが、移動時間が長くなる。基本的には、できるだけ移動時間が短い経路間移動が採用される。しかしながら、各種経路間移動の組み合わせの自在性や作業済領域である外周領域の大きさなどから、種々の目標経路が算定可能である。このため、算定された複数の目標走行経路から実際に用いられる目標走行経路を選択するための手法として、以下のモードが用意されている。
モード1:目標走行経路が複数通り生成され、複数通りの目標走行経路がモニタ画面等に表示され、オペレータによる選択により、実行するべき目標走行経路が決定される。
モード2:生成された目標走行経路を実行した際の所要走行時間が走行条件の1つとして予測され、最も短時間の目標走行経路が自動的に選択される。
モード3:複数通りの目標走行経路がその所要走行時間とともに表示され、オペレータによる選択により、実行するべき目標走行経路が決定される。
目標走行経路の直線走行と方向転換走行とからなる目標走行経路の算定に関して、直線走行から方向転換走行への移行の種類によって目標走行経路算定アルゴリズムが異なる。図1では、方向転換走行として、手動走行における回り作業走行では切り返し走行が採用されており、中央作業走行ではUターン走行が採用されている。どちらの方向転換走行を採用するかは、接続される直線走行の位置と方向に応じて選択すること好ましいが、算定条件として、いずれかの方向転換走行に限定してもよいし、1つの作業領域において混在させてもよい。
図1では、作業対象領域が長方形で示されているが、実際には、図1の部分拡大図に示されているように、やや台形のように辺が傾斜しているケースが少なくない。このようなケースでは、直線作業走行の往路の終端と復路の始端を直接円弧経路で接続するような方向転換走行経路を採用すると、U字状の方向転換走行経路の曲率が連続的に変化するため、自動走行制御が難しくなる。このような実情に対処するためには、図1の部分拡大図に示すように方向転換走行は、Uターン進入操向角とUターン離脱操向角とが一致する単純Uターン走行、つまり実質的には半円弧と、前記単純Uターン走行の端点と前記直線作業走行の端点とを接続する補助直線非作業走行とに分割するアルゴリズムが採用される。
次に、本発明による作業車支援システムの具体的な実施形態の1つを、作業車の一例であるコンバインに搭載された例を用いて説明する。図2は、コンバインの側面図であり、図3は平面図である。このコンバインは自脱型コンバインであり、クローラ式の走行装置1と、走行装置1によって支持される機体フレーム2とを備えている。機体フレーム2の前部には、植立穀稈を刈り取る昇降可能な刈取部3が備えられている。機体フレーム2の後部には、刈取穀稈を脱穀する脱穀装置11と穀粒を貯留する穀粒タンク12とが、左右方向に並べて配置されている。機体フレーム2の前部であって穀粒タンク12の前方には、キャビン13が備えられている。キャビン13は天井パネル14を備えている。キャビン13の下方には、エンジン10が配置されている。穀粒タンク12には、穀粒タンク12内の穀粒を排出するアンローダ15が備えられている。
刈取部3は、左右向きの水平な揺動軸心周りで上下揺動可能に構成されている。刈取部3は、植立穀稈を引き起こす引起装置31と、引起穀稈を刈り取る刈取装置32と、刈取穀稈を脱穀装置11に搬送する搬送装置33とを有している。
図3と図4とに示すように、キャビン13には、運転座席130が設けられている。運転座席130の前方側にはフロントパネル131が、運転座席130の左方にはサイドパネル132が設けられている。フロントパネル131には、例えば、操縦レバー(ステアリングレバー)91などの操作具や、各種情報を表示するメータパネル133が配置されている。メータパネル133には、作業速度やエンジン回転、燃料残量を示すメータ画面などが表示される。さらに、特定の情報をグラフィカルに表示するための液晶パネル等のモニタ134が、例えば、キャビン13内における左側上部に配置されている。モニタ134には、自動作業走行に用いられる目標走行経路の選択画面などが表示される。サイドパネル132には、例えば、主変速レバー92やその他の操作具が配置されている。サイドパネル132には、アンローダ用のリモコン135が載置されている。
このコンバインは、操縦レバー91や主変速レバー92の操作に基づく手動走行だけでなく、設定された目標経路に沿った自動走行も可能である。自動走行に関する操作具として、例えば、サイドパネル132に、自動走行の実行または中止を指令するオートパイロットON・OFFスイッチ90及びティーチング走行ON・OFFスイッチ96が配置されている。なお、これらのスイッチは、モニタ134に表示されるソフトウエアスイッチで代用してもよいし、両方の形態で備えられてもよい。
キャビン13の上方には、図2と図3に示すように、天井パネル14の側端から上方に延びたブラケットに取り付けられた自車位置検出ボックス620が配置されている。この自車位置検出ボックス620には自車位置検出のために用いられるアンテナ及び演算機器等が内蔵されている。この実施形態では、自車位置検出には、衛星航法と慣性航法とが採用されている。
図5には、このコンバインに構築されている制御系が示されている。この制御系は、第1車載ネットワーク5Aと第2車載ネットワーク5Bとを備えている。第1車載ネットワーク5Aと第2車載ネットワーク5Bとは、中継ユニット5Cによってブリッジされている。第1車載ネットワーク5Aには、コンバインの基本的な動作制御を行う機能要素、例えば、入力信号処理ユニット50、手動走行制御ユニット52、機器制御ユニット53、エンジン制御ユニット54、報知ユニット55が構築されている。第2車載ネットワーク5Bには、本発明における作業車支援システムとして機能する自動走行に関する機能要素、例えば、自動走行制御ユニット61、自車位置検出モジュール62、外形マップ算定部63、経路算定部64が構築されている。この作業車支援システムは、図1を用いて説明された基本原理を採用している。
機器制御ユニット53は、走行用の各種動作機器(走行機器)に制御信号を与えて駆動させる走行機器制御部531と、作業用の各種動作機器(作業機器)に制御信号を与えて駆動させる作業機器制御部532とを含む。図5で示すように、走行機器と作業機器とは、動作機器20と総称されている。エンジン制御ユニット54は、エンジン10の始動、停止、回転数調整などのためにエンジン10に制御信号を与える。図5に示されている手動走行操作ユニット9は、コンバインの作業走行において人によって操作される操作具の総称であり、操縦レバー91や主変速レバー92などが含まれる。このコンバインでは、基本的にはバイワイヤ方式が採用されており、手動走行操作ユニット9に対する操作は、操作信号として入力信号処理ユニット50に入力される。作業状態検出機器8は、動作機器20の状態情報、すなわち作業機器情報を検出するものであって、コンバインに装備されている各種センサやスイッチ(例えば、各種作業機構のクラッチの入り切りを検出するスイッチや車速センサ)などが含まれる。作業状態検出機器8からの検出信号も基本的には入力信号処理ユニット50に入力される。
報知ユニット55は、報知信号を報知デバイス73に送信し、オペレータや周囲に与えるべき種々の情報を報知する。報知デバイス73には、モニタ134だけでなく、機体内外の種々のランプ(例えば図2や図3に示される報知灯731)やブザー732が含まれる。
手動走行制御ユニット52は、入力信号処理ユニット50を通じて入力された信号や作業状態検出機器8からの作業機器情報を利用して演算処理や判定処理を施し、手動操作に基づく動作機器20の動作を制御するためのデータを生成する。生成されたデータは機器制御ユニット53に送られ、機器制御ユニット53から動作機器20に制御信号として変換出力される。これにより、手動操作に対応する動作機器20の動作が実現する。例えば、方向転換出力信号に基づいて走行装置1の方向転換駆動が行われ、機体進行方向が変更される。
自車位置検出モジュール62は、GNSS(GPSでもよい)を用いて緯度や経度などの方位を検出する衛星航法用モジュール621を備えており、その構成は、カーナビゲーションシステムなどで用いられている測位ユニットに類似している。この実施形態における自車位置検出モジュール62には、瞬間的な作業車両の動き(方向ベクトルなど)や向きを検出するために、及び衛星航法用モジュール621を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法用モジュール622が備えられている。
外形マップ算定部63は、自動作業走行の対象となる圃場の外形マップを算定する。ティーチング走行ON・OFFスイッチ96をON操作することで、外形マップを算定するティーチングモードを起動させた状態で、稲や麦が実っている圃場の外周を手動走行で周回作業走行が行われると、その際に自車位置検出モジュール62によって取得された自車位置データから、外形マップ算定部63は、自動作業走行すべき未作業領域の外形マップを算定する。外形マップが算定されると、経路算定部64が外形マップに基づいて、未作業領域を作業走行するための目標走行経路を算定する。目標走行経路が複数通り算定される場合には、各目標走行経路を模式的に示すイラストを予測走行時間とともにモニタ134の画面に表示し、その選択を操作員に促す。
自動走行制御ユニット61は、自動走行に必要な自動走行情報に基づいて自動走行を実行する。自動走行情報には、自車位置データに基づく自車位置と目標走行経路とのずれ、自車の進行方向の目標走行経路の延び方向とのずれ、予め設定されている車速、目標走行経路を走行中に行うべき作業装置の動作、作業状態検出機器8からの機体状態情報などが含まれている。自動走行制御ユニット61は、このような自動走行情報に基づいて必要な制御データを機器制御ユニット53に与え、コンバインに搭載されている走行機器や作業機器を制御する。
この実施形態では、中継ユニット5Cは、第1車載ネットワーク5Aと第2車載ネットワーク5Bとの間のデータ交換を行うだけでなく、それ自体にも外部機器に対する入出力インターフェースやデータ処理部を備えている。従って、中継ユニット5Cには、報知デバイス73としての報知灯731やブザー732、オートパイロットON・OFFスイッチ90、ティーチング走行ON・OFFスイッチ96が接続され、さらには無線方式で自動走行用リモコン95が接続されている。
報知灯731は、図2と図3とに示すように、穀粒タンク12の天井に立設された円柱状のランプであり、自動走行時に点灯し、コンバインが自動走行中であることを周囲に知らせることができる。同様にブザー732を通じて、コンバインがティーチング作業走行中であることや自動走行中であることを周囲に知らせることもできる。コンバインの自動走行時は、コンバインの外から必要最低限の指令をコンバインに与える必要があるので、自動走行用リモコン95が用意されている。自動走行用リモコン95には、例えば、緊急停止ボタン、エンジン始動ボタン、自動運転ボタンが設けられており、外部から、コンバインの緊急停止、エンジンの始動、自動運転の指令をコンバインの制御系に与えることができる。
次に、コンバインが圃場で自動走行しながら刈取り収穫作業を行う際の一例を、図6のフローチャートを用いて説明する。まず、オペレータは手動運転で、周回作業走行を開始する開始位置へコンバインを移動させる(#10)。ティーチング走行ON・OFFスイッチ96をON操作し(#12)、枕地作業としての周回作業走行と外周ティーチング走行を同時に行う(#14)。十分な枕地を確保できると、周回作業走行を終了するとともに、外周ティーチングを停止させるためにティーチング走行ON・OFFスイッチ96をOFF操作する。ティーチング走行ON・OFFスイッチ96がOFF操作されると(#16YES分岐)、それまでの外周ティーチング走行で取得された自車位置データ群を用いて、枕地以外である圃場の未作業領域の外形マップが算定される(#20)。
未作業領域の刈取り収穫作業は、自動作業走行で行われるので、未作業領域における1つ以上の目標走行経路が算定される(#22)。算定された目標走行経路に対して走行速度を設定し、必要走行時間を予測する(#24)。算定された目標走行経路が複数あれば、操作員による選択のため、算定された目標走行経路が1つであれば、オペレータによる確認のため、目標走行経路のイラストと予測走行時間をモニタ134に表示する(#26)。自動作業走行のための目標走行経路が決定すると(#28)、当該自動作業走行の開始位置までコンバインを移動させる(#30)。コンバインが自動作業走行の開始位置に達すると、オートパイロットON・OFFスイッチ90をON操作して(#32)、自動作業走行を開始する(#34)。
自動作業走行は、緊急避難的には、上述したように操縦レバー91の操作などをトリガーとして停止することが可能であるが、正常には、オートパイロットON・OFFスイッチ90のOFF操作によって終了する。このフローチャートでは、緊急避難的な自動走行から手動走行への移行制御は割愛されている。自動作業走行中において、オートパイロットON・OFFスイッチ90のOFF操作による自動走行の中止が指令されたかどうかチェックされる(#36)。オートパイロットON・OFFスイッチ90のOFF操作が確認されると、さらに未作業領域に割り当てられたすべての目標走行経路での作業走行が完了しているかどうかチェックされる(#38)。作業走行が完了していなければ(#38NO分岐)、作業途中での経路離脱と見なされ、手動走行制御に移行する。この離脱走行の一例は、コンバインでは、満杯になった穀粒タンク12のアンローディングのために畦に待機している搬送車まで車体を移動させる離脱走行であり、通常行われる走行の1つである(#40)。離脱走行の完了は、再度、オートパイロットON・OFFスイッチ90のON操作によって確認される(#42)。オートパイロットON・OFFスイッチ90がON操作されると、つまり離脱走行が完了すれば(#42YES分岐)、その時点でのコンバインの自車位置と、離脱時に残されている未作業領域の外形マップから、自動作業走行の再開位置を含む目標走行経路が再算定される(#44)。自動作業走行の再開位置への移動は、自動走行制御で可能であるが、手動走行制御で行うことも可能である(#46)。いずれにせよ、新たな目標走行経路における自動作業走行の再開位置に達すると、これまで通りの、目標走行経路に沿った自動作業走行が再開される(#48)。
ステップ#38のチェックで、すべての目標走行経路での作業走行が完了しているならば、作業予定領域の作業が完了であるので、この刈取り収穫作業は終結する。
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、作業車の実際の走行軌跡の目標走行経路からの偏差が所定値を超えた場合や、オーバ―ラップ量が前もって設定されているオーバーラップ量を所定量以上ずれた場合、目標走行経路が新たに算定されたが、操作員の判断に基づいて任意のタイミングで目標走行経路を再算定することも可能である。
(2)上述した実施形態では、コンバインの制御系は、中継ユニット5Cでブリッジされた第1車載ネットワーク5Aと第2車載ネットワーク5Bとを備えていたが、3つ以上の車載ネットワークを備えてもよいし、単一の車載ネットワークで構成してもよい。第1車載ネットワーク5Aを従来の手動走行車両の車載ネットワークとすれば、従来の手動走行車両に自動走行機能を付加する場合、中継ユニット5Cでブリッジされ第2車載ネットワーク5Bに自動走行に関する機能ブロックを構築することで、従来の手動走行車両の車載ネットワークを実質的にそのまま流用することができるという利点が得られる。
(3)上述した実施形態では、コンバインに搭乗している操作員によって手動走行操作ユニット9が操作されることで手動走行する構成としたが、自動走行用リモコン95からの信号が入力信号処理ユニット50に入力されるように構成され、車外にいる操作員によって自動走行用リモコン95が操作されることで手動走行するように構成されていてもよい。この場合、モニタ134の代わりとして、スマートフォンやタブレット端末が採用され、車外にいる操作員によってモニタ134の操作等されるように構成すると好適である。
(4)
上述した実施形態では、外形マップが算定された後の自動作業走行(中央作業走行)のための目標走行経路として、図1に示すように、往復の直線作業走行を180度Uターン走行でつないでいくものが取り上げられた。以下に、それ以外の目標走行経路の例を説明する。
(a)図7で示された目標走行経路は、外側から中心に向けて四角形の渦巻き状に走行するものであり、その直線経路を接続する90度角部は、後進を組み合わせた切り返し走行経路となっている。この切り返し走行経路を説明する。この切り返し走行経路は、切り返し走行経路に入る前の入側直線経路L1から、ほぼ直線状に、あるいは渦巻方向に曲がりながら(図面では直線で示されている)前進走行する第1経路r1、逆方向の操舵角で後進走行する第2経路r2、切り返し走行経路から次の出側直線経路L2に向かって前進走行する第3経路r3からなる。なお、第2経路r2は、第3経路r3がほぼ直線となるような位置まで延びると好都合である。図7では、切り返し走行は外周の4つだけしか示されていないが、全ての90度角部で取り入れることができる。
(b)図8で示された目標走行経路は、平行に並んだ直線経路L1〜L6を2つ経路毎に180度Uターン経路でつなぐものである。その際、180度Uターン経路は1つ以上の直線経路を跨ぐ。つまり、Uターン経路でつながれる2つの直線経路の間に1つ以上の直線経路が挟まれるのである。この目標走行経路では、直線経路L1は、2つの直線経路L2,L3を間に挟む180度Uターン経路S1によって直線経路L4につながれる。次に、直線経路L4は、直線経路L3を間に挟む180度Uターン経路S2によって直線経路L2につながれる。さらに、直線経路L2は、2つの直線経路L3,L4を間に挟む180度Uターン経路S3によって直線経路L5につながれる。このように、180度Uターン経路は、1つ以上の直線経路を挟んで次の直線経路につながるため、曲率半径が大きくなって旋回しやすくなり、結果的に高速走行が可能となる利点をもつ。
(c)図9で示された目標走行経路は、図7の目標走行経路と図8の目標走行経路との組み合わせである。つまり、その外側の走行経路には、図7に示された、切り返し走行経路が用いられている。その内側の走行経路には、図8に示された走行経路が用いられており、これは、1つ以上の直線経路を間に挟む180度Uターン経路を用いた走行経路である。
本発明は、自脱型コンバイン、普通型コンバイン、あるいは田植機やトラクタなどの作業車に適用することが可能である。
20 :動作機器
31 :引起装置
32 :刈取装置
33 :搬送装置
5A :第1車載ネットワーク
5B :第2車載ネットワーク
5C :中継ユニット
50 :入力信号処理ユニット
52 :手動走行制御ユニット
53 :機器制御ユニット
531 :走行機器制御部
532 :作業機器制御部
54 :エンジン制御ユニット
55 :報知ユニット
61 :自動走行制御ユニット
62 :自車位置検出モジュール
620 :自車位置検出ボックス
621 :衛星航法用モジュール
622 :慣性航法用モジュール
63 :外形マップ算定部
64 :経路算定部
73 :報知デバイス
731 :報知灯
8 :作業状態検出機器
9 :手動走行操作ユニット
90 :オートパイロットON・OFFスイッチ
91 :操縦レバー
92 :主変速レバー
95 :自動走行用リモコン
96 :ティーチング走行ON・OFFスイッチ
本発明は、自動で作業地を作業走行する作業車のための作業車支援システムに関する。
走行しながら作業を行う作業車を自動走行させる試みが、従来から行われている。そのためには、作業対象となる作業領域がマップデータなどを通じて認識されなければならない。例えば、特許文献1に開示された圃場作業車両の無人作業方法では、まず、作業領域である圃場の外周を手動運転により一周走行する外周ティーチングを行って、当該圃場の地図座標及び基準走行方位が算定される。次いで、圃場内の全領域を作業走行するための、走行作業経路を設定し、その経路上を時々刻々得られる車両の圃場内位置情報と走行方位情報とに基づき自動的に作業走行することで、圃場内の全領域に対する作業走行が自動操縦で行われる。この特許文献1で取り扱われている圃場作業車両は耕耘作業、整地作業、代掻き作業などを行うトラクタであり、圃場内の全領域を作業走行する。
特許文献2には、直線作業走行の繰り返しで苗植付け作業を行う自動走行田植機の目標走行経路を算定する方法が開示されている。この田植機は、車体位置を計測するGPSを備え、ティーチング開始時にティーチングSWを押下した時のGPSアンテナの位置を開始点とし、ティーチング終了時にティーチングSWを押下した時のGPSアンテナの位置を終了点とする。得られた開始点と終了点の情報に基づいて、開始点と終了点を結ぶ基準線が算定され、この基準線(線分)に平行で、植付け幅を考慮した直線を植付け作業走行のための目標経路として生成する。
特開平10−066406号公報
特開2008−67617号公報
特許文献1では、自動での作業走行経路を算定するための作業車の外周ティーチング走行は、圃場区画の位置情報を得るために行われるものであり、そのティーチング走行時には実質的な圃場作業は行われない。外周ティーチング走行の後、外周ティーチング走行で得られた圃場区画全体に対する走行作業経路が算定され、実際の自動作業走行が実施される。このため、作業対象となる圃場が広大になればなるほど、外周ティーチング走行に必要とされる時間や燃料が圃場作業の観点からは無視できない無駄な経費となる。
特許文献2では、直線状のティーチング走行時に作業(苗植付作業)が行われるかどうかは明示されていない。また、作業走行経路の算定の際、直線状のティーチング走行によって得られる直線状の基準線に平行な作業走行経路しか算定できない。さらには、ティーチング走行において圃場全体のマップ情報を得ることができないので、作業走行経路の往復経路数や経路長さを予め算定できない。
このような従来技術の実情から、外形マップが準備されていない作業地での自動作業走行経路を算定するためのさらに効果的な技術が所望されている。
本発明による作業車支援システムは、作業車の自車位置を検出する自車位置検出モジュールと、作業予定領域の外周を周回作業走行する際に前記自車位置検出モジュールによって取得された自車位置データから、前記作業予定領域内の未作業領域の外形マップを算定する未作業領域外形マップ算定部とを備え、前記未作業領域外形マップ算定部は、前記自車位置データに対応する軌跡点群の重心位置を基準中心とし、軌跡点群から前記基準中心に近い複数の辺要素を算定し、前記辺要素から多角形状の前記未作業領域の外形マップを算定する。
この構成では、作業予定領域の外形マップ(座標位置)を算定するために作業予定領域の外周を周回する際、作業予定領域に対する作業も同時に行う。つまり、作業予定領域の境界線に沿って初期作業走行(兼ティーチング走行)することで、作業予定領域の最外周領域の作業を実施するとともに、初期作業走行中に自車位置検出モジュールによって取得される自車位置データから作業予定領域の境界線の座標位置を得ることができる。この作業予定領域の境界線の座標位置から、作業予定領域から初期作業走行によって作業完了した領域を除いた未作業領域の外形マップが算定される。作業予定領域の最外周領域の座標位置を取得するためのティーチング走行においても、作業予定領域に対する作業が行われるので、作業効率がよい。
未作業領域を自動作業走行するためには、当該未作業領域に適した目標走行経路が必要である。このため、本発明の実施形態では、前記未作業領域外形マップ算定部によって算定された外形マップに基づいて、前記未作業領域を作業走行するための目標走行経路を算定する経路算定部が備えられている。
未作業領域の自動作業走行の適切な経路は、領域形状が類似していても作業対象の状態、例えば麦や米の収穫作業での穀稈の生育状態などによっても異なる。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記経路算定部は、前記目標走行経路を複数通り生成し、所定の走行条件に基づいて最適な目標走行経路を出力するように構成されている。これにより、設定された走行条件(走行速度、作業時間、傾斜の有無など)に最適に適合する目標走行経路が出力されるので、自動作業走行がより理に適ったものとなる。特に、作業の経済性に重きを置く場合には、複数通りの前記目標走行経路毎に所要走行時間が予測演算され、前記所要走行時間が前記走行条件として利用される構成が好ましい。
未作業領域の自動作業走行の経路の決定には、オペレータの経験に基づく判断も重要である。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記経路算定部は、前記目標走行経路を複数通り生成し、複数通りの前記目標走行経路がオペレータによる選択のために報知される。なお、オペレータの判断材料として所要走行時間が重要である。このことから、複数通りの前記目標走行経路毎に所要走行時間が予測され、前記所要走行時間が複数通りの前記目標走行経路に対応付けて報知される構成も利点がある。
目標走行経路に沿った自動作業走行を実行している際に、何らかの理由で、当該目標走行経路を離脱しなければならない事態が生じる。例えば、燃料切れ、あるいは作業車がコンバインとすれば、その穀粒タンクの満杯が生じた場合、燃料補給や穀粒アンロードのために、畦道などの道路に接近しなければならない。その後、再び、目標走行経路の離脱位置に戻って自動作業走行を行うが、離脱位置が遠く離れている場合、最短で達する目標走行経路から自動作業走行を開始した方が効率がよい。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記目標走行経路を用いた前記未作業領域に対する作業走行中に、当該作業車が前記目標走行経路を離脱した場合、それまでの作業走行において前記自車位置検出モジュールによって取得された自車位置データから、新たな未作業領域の外形マップが算定され、この新たに算定された外形マップと離脱した作業車の現在位置とに基づいて、残りの未作業領域を作業走行するための目標走行経路が再算定される。
コンバインなどの農作業車は、往復の直線走行とその間の方向転換走行(一般にはUターン)を繰り返しながら、作業対象領域(圃場など)における収穫などの作業を行う。その際、作業は直線走行において行われ、方向転換走行では作業は行われない。作業対象領域が長方形のような矩形であれば、方向転換走行軌跡が直線走行から方向転換走行への走行軌跡と方向転換走行から直線走行への走行軌跡が対称形状となり、操向制御が容易である。しかしながら、作業対象領域が台形のような非矩形であれば、方向転換走行軌跡が直線走行から方向転換走行への走行軌跡と方向転換走行から直線走行への走行軌跡が非対称形状となり、操向制御が複雑となって、方向転換後の位置ずれが生じやすい。この問題を避けるため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記目標走行経路が直線作業走行と方向転換非作業走行とを組み合わせた単位走行ユニットとして算定され、前記方向転換非作業走行は、Uターン進入操向角とUターン離脱操向角とが一致する単純Uターン走行と、前記単純Uターン走行の端点と前記直線作業走行の端点とを接続する補助直線非作業走行とに分割されている。この構成では、方向転換非作業走行が、走行軌跡が対称である単純Uターン走行と調整用の直線走行とから成り立つので、操向制御が簡単となり、方向転換後の位置ずれが生じにくい。
穀物収穫を行うコンバインは、一般的には、最初に圃場外周に沿った回り刈りを行い、それによって作り出された外周の既刈領域を方向転換領域として内領域の収穫作業を行う。この回り刈りを、上述した初期作業走行(兼ティーチング走行)として用いると、良好な作業効率が得られる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記作業車はコンバインであり、前記外周の周回作業走行は穀稈収穫のための回り刈り走行である。
本発明による作業車支援システムの基本原理を説明するための説明図である。
本発明による作業車支援システムが搭載された作業車の一例であるコンバインの側面図である。
コンバインの平面図である。
コンバインのキャビンの内部を示す平面断面図である。
作業車支援システムが組み込まれたコンバインの制御系を説明するための機能ブロック図である。
作業車支援システムによる作業走行制御の一例を示すフローチャート図である。
中央作業走行のための目標走行経路の一例を示す走行経路図である。
中央作業走行のための目標走行経路の一例を示す走行経路図である。
中央作業走行のための目標走行経路の一例を示す走行経路図である。
本発明による作業車支援システムの具体的な実施形態を説明する前に、図1を用いて、作業車支援システムの基本原理、特にティーチング走行を通じて作業予定領域の外形マップを算定する基本原理を説明する。図1では、この作業車支援システムを装備した作業車によって作業される作業予定領域は、単純な長方形で示されている。作業車は、操縦レバーなどを含む手動走行操作ユニットによって手動走行を行う手動走行制御ユニットと、自動走行情報に基づいて自動走行を行う自動走行制御ユニットと、作業車の自車位置を検出する自車位置検出モジュールとを備えている。手動走行操作ユニットは、作業車に搭乗している操作員によって手動操作される。自動走行情報には、走行機器情報と作業機器情報とが含まれている。走行機器情報には、自車位置検出モジュールによって検出される自車位置が目標走行経路に一致するように作業車を自動走行制御するための操向制御データや車速制御データが含まれる。作業機器情報には、目標走行経路を走行中に行うべき作業を実行するための作業機器に対する作業制御データが含まれる。
作業予定領域として、ここでは圃場が想定されており、外周囲は柵や畦などによって境界づけられている。この圃場に対する作業走行、例えば稲や麦などの収穫作業走行は、最初に行われる外周囲に沿った環状の回り作業走行と、当該回り作業走行によって残された未作業領域に対する中央作業走行に分けられる。回り作業走行は、多角形(図1では四角形)の外周の一辺に沿った作業走行と、多角形のコーナ領域で行われる切り返し走行(後進を組み込むことで方向転換を行う:αターンとも呼ばれる)とに分けられる。回り作業走行は手動走行制御のもとに行われ、中央作業走行は自動走行制御のもとで行われる。
手動走行による回り作業走行時に、自車位置検出モジュールによって継時的に検出された自車位置を示す自車位置データ群(例えば緯度経度データ群からなる周回走行ログ)が回り作業走行軌跡として記録される。記録された自車位置のデータ群は、図1において、黒点で仮想的に示されている。この回り作業走行軌跡に作業幅を加味することで、回り作業走行を通じて作り出された、作業予定領域における作業済領域のマップデータが算定できる。さらに、この作業済領域の内側に位置する領域(図1では薄く塗られている)が、続いて行われる自動作業走行によって作業されるべき未作業領域となる。この未作業領域の外形マップは、作業済領域のマップデータからが算定できる。なお、図1の回り作業走行軌跡の部分拡大図に示すように、回り作業走行が複数周回された場合は、最内周の回り作業走行の自車位置のデータ群が未作業領域の外形マップの算定に用いられる。もちろん、その際、最内周の回り作業走行以外の周回の自車位置のデータ群も、最内周の回り作業走行での自車位置のデータ群の欠損を補完するためなどに用いられる。
周回走行ログである自車位置のデータ群から未作業領域の外形マップを算定するアルゴリズムの一例を以下に示す。
(1)走行軌跡点群である周回走行ログから、ノイズ的な自車位置データをフィルタリングで取り除き、走行軌跡に属すると見なされるデータ群だけを抽出する。
(2)抽出されたデータ群の重心位置を算定する。
(3)基準点(一般には作業車の回り作業終点)を基点として、抽出データ群の各点の重心に対する方位を算定する。
(4)算定された各点の方位から重心位置を基準中心とする360度分(非作業領域1周分)のデータを処理対象データとして抽出する。
(5)抽出された処理対象データを多角形(図1では四角形)の各辺に属する辺要素として区分けする。
(6)区分けされた各辺の辺要素を線形近似し、各辺を示す近似直線式を算定し、各辺の交点座標を算定する。
(7)車体における自車位置の基準箇所と作業幅とに基づいて未作業領域の外形マップを算定する。
未作業領域の外形マップが算定されると、当該未作業領域の自動作業走行(中央作業走行)のための目標走行経路が算定される。図1の例では、目標走行経路は、未作業領域での往復直線作業走行と、直線作業走行の往路と復路との間をつなぐための作業済領域での方向転回走行とを含む。目標走行経路の始点(中央作業走行開始点)、直線作業走行の方向、隣接する直線作業走行の往路と復路との間隔などに応じて、目標走行経路が算定可能である。その際、往路と復路とを接続する経路間移動は、直進と旋回とを組み合わせることで行われ、さらには後進による切り返しも可能である。経路間移動の開始から終了までにかかる時間は移動距離や前後進切替の有無によって異なる。Uターンのような単純な経路間移動では、移動時間は短いが、旋回に必要な面積が大きくなる。また、切り返し経路間移動では、移動に必要となる面積は小さいが、移動時間が長くなる。基本的には、できるだけ移動時間が短い経路間移動が採用される。しかしながら、各種経路間移動の組み合わせの自在性や作業済領域である外周領域の大きさなどから、種々の目標経路が算定可能である。このため、算定された複数の目標走行経路から実際に用いられる目標走行経路を選択するための手法として、以下のモードが用意されている。
モード1:目標走行経路が複数通り生成され、複数通りの目標走行経路がモニタ画面等に表示され、オペレータによる選択により、実行するべき目標走行経路が決定される。
モード2:生成された目標走行経路を実行した際の所要走行時間が走行条件の1つとして予測され、最も短時間の目標走行経路が自動的に選択される。
モード3:複数通りの目標走行経路がその所要走行時間とともに表示され、オペレータによる選択により、実行するべき目標走行経路が決定される。
目標走行経路の直線走行と方向転換走行とからなる目標走行経路の算定に関して、直線走行から方向転換走行への移行の種類によって目標走行経路算定アルゴリズムが異なる。図1では、方向転換走行として、手動走行における回り作業走行では切り返し走行が採用されており、中央作業走行ではUターン走行が採用されている。どちらの方向転換走行を採用するかは、接続される直線走行の位置と方向に応じて選択すること好ましいが、算定条件として、いずれかの方向転換走行に限定してもよいし、1つの作業領域において混在させてもよい。
図1では、作業対象領域が長方形で示されているが、実際には、図1の部分拡大図に示されているように、やや台形のように辺が傾斜しているケースが少なくない。このようなケースでは、直線作業走行の往路の終端と復路の始端を直接円弧経路で接続するような方向転換走行経路を採用すると、U字状の方向転換走行経路の曲率が連続的に変化するため、自動走行制御が難しくなる。このような実情に対処するためには、図1の部分拡大図に示すように方向転換走行は、Uターン進入操向角とUターン離脱操向角とが一致する単純Uターン走行、つまり実質的には半円弧と、前記単純Uターン走行の端点と前記直線作業走行の端点とを接続する補助直線非作業走行とに分割するアルゴリズムが採用される。
次に、本発明による作業車支援システムの具体的な実施形態の1つを、作業車の一例であるコンバインに搭載された例を用いて説明する。図2は、コンバインの側面図であり、図3は平面図である。このコンバインは自脱型コンバインであり、クローラ式の走行装置1と、走行装置1によって支持される機体フレーム2とを備えている。機体フレーム2の前部には、植立穀稈を刈り取る昇降可能な刈取部3が備えられている。機体フレーム2の後部には、刈取穀稈を脱穀する脱穀装置11と穀粒を貯留する穀粒タンク12とが、左右方向に並べて配置されている。機体フレーム2の前部であって穀粒タンク12の前方には、キャビン13が備えられている。キャビン13は天井パネル14を備えている。キャビン13の下方には、エンジン10が配置されている。穀粒タンク12には、穀粒タンク12内の穀粒を排出するアンローダ15が備えられている。
刈取部3は、左右向きの水平な揺動軸心周りで上下揺動可能に構成されている。刈取部3は、植立穀稈を引き起こす引起装置31と、引起穀稈を刈り取る刈取装置32と、刈取穀稈を脱穀装置11に搬送する搬送装置33とを有している。
図3と図4とに示すように、キャビン13には、運転座席130が設けられている。運転座席130の前方側にはフロントパネル131が、運転座席130の左方にはサイドパネル132が設けられている。フロントパネル131には、例えば、操縦レバー(ステアリングレバー)91などの操作具や、各種情報を表示するメータパネル133が配置されている。メータパネル133には、作業速度やエンジン回転、燃料残量を示すメータ画面などが表示される。さらに、特定の情報をグラフィカルに表示するための液晶パネル等のモニタ134が、例えば、キャビン13内における左側上部に配置されている。モニタ134には、自動作業走行に用いられる目標走行経路の選択画面などが表示される。サイドパネル132には、例えば、主変速レバー92やその他の操作具が配置されている。サイドパネル132には、アンローダ用のリモコン135が載置されている。
このコンバインは、操縦レバー91や主変速レバー92の操作に基づく手動走行だけでなく、設定された目標経路に沿った自動走行も可能である。自動走行に関する操作具として、例えば、サイドパネル132に、自動走行の実行または中止を指令するオートパイロットON・OFFスイッチ90及びティーチング走行ON・OFFスイッチ96が配置されている。なお、これらのスイッチは、モニタ134に表示されるソフトウエアスイッチで代用してもよいし、両方の形態で備えられてもよい。
キャビン13の上方には、図2と図3に示すように、天井パネル14の側端から上方に延びたブラケットに取り付けられた自車位置検出ボックス620が配置されている。この自車位置検出ボックス620には自車位置検出のために用いられるアンテナ及び演算機器等が内蔵されている。この実施形態では、自車位置検出には、衛星航法と慣性航法とが採用されている。
図5には、このコンバインに構築されている制御系が示されている。この制御系は、第1車載ネットワーク5Aと第2車載ネットワーク5Bとを備えている。第1車載ネットワーク5Aと第2車載ネットワーク5Bとは、中継ユニット5Cによってブリッジされている。第1車載ネットワーク5Aには、コンバインの基本的な動作制御を行う機能要素、例えば、入力信号処理ユニット50、手動走行制御ユニット52、機器制御ユニット53、エンジン制御ユニット54、報知ユニット55が構築されている。第2車載ネットワーク5Bには、本発明における作業車支援システムとして機能する自動走行に関する機能要素、例えば、自動走行制御ユニット61、自車位置検出モジュール62、外形マップ算定部63、経路算定部64が構築されている。この作業車支援システムは、図1を用いて説明された基本原理を採用している。
機器制御ユニット53は、走行用の各種動作機器(走行機器)に制御信号を与えて駆動させる走行機器制御部531と、作業用の各種動作機器(作業機器)に制御信号を与えて駆動させる作業機器制御部532とを含む。図5で示すように、走行機器と作業機器とは、動作機器20と総称されている。エンジン制御ユニット54は、エンジン10の始動、停止、回転数調整などのためにエンジン10に制御信号を与える。図5に示されている手動走行操作ユニット9は、コンバインの作業走行において人によって操作される操作具の総称であり、操縦レバー91や主変速レバー92などが含まれる。このコンバインでは、基本的にはバイワイヤ方式が採用されており、手動走行操作ユニット9に対する操作は、操作信号として入力信号処理ユニット50に入力される。作業状態検出機器8は、動作機器20の状態情報、すなわち作業機器情報を検出するものであって、コンバインに装備されている各種センサやスイッチ(例えば、各種作業機構のクラッチの入り切りを検出するスイッチや車速センサ)などが含まれる。作業状態検出機器8からの検出信号も基本的には入力信号処理ユニット50に入力される。
報知ユニット55は、報知信号を報知デバイス73に送信し、オペレータや周囲に与えるべき種々の情報を報知する。報知デバイス73には、モニタ134だけでなく、機体内外の種々のランプ(例えば図2や図3に示される報知灯731)やブザー732が含まれる。
手動走行制御ユニット52は、入力信号処理ユニット50を通じて入力された信号や作業状態検出機器8からの作業機器情報を利用して演算処理や判定処理を施し、手動操作に基づく動作機器20の動作を制御するためのデータを生成する。生成されたデータは機器制御ユニット53に送られ、機器制御ユニット53から動作機器20に制御信号として変換出力される。これにより、手動操作に対応する動作機器20の動作が実現する。例えば、方向転換出力信号に基づいて走行装置1の方向転換駆動が行われ、機体進行方向が変更される。
自車位置検出モジュール62は、GNSS(GPSでもよい)を用いて緯度や経度などの方位を検出する衛星航法用モジュール621を備えており、その構成は、カーナビゲーションシステムなどで用いられている測位ユニットに類似している。この実施形態における自車位置検出モジュール62には、瞬間的な作業車両の動き(方向ベクトルなど)や向きを検出するために、及び衛星航法用モジュール621を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法用モジュール622が備えられている。
外形マップ算定部63は、自動作業走行の対象となる圃場の外形マップを算定する。ティーチング走行ON・OFFスイッチ96をON操作することで、外形マップを算定するティーチングモードを起動させた状態で、稲や麦が実っている圃場の外周を手動走行で周回作業走行が行われると、その際に自車位置検出モジュール62によって取得された自車位置データから、外形マップ算定部63は、自動作業走行すべき未作業領域の外形マップを算定する。外形マップが算定されると、経路算定部64が外形マップに基づいて、未作業領域を作業走行するための目標走行経路を算定する。目標走行経路が複数通り算定される場合には、各目標走行経路を模式的に示すイラストを予測走行時間とともにモニタ134の画面に表示し、その選択を操作員に促す。
自動走行制御ユニット61は、自動走行に必要な自動走行情報に基づいて自動走行を実行する。自動走行情報には、自車位置データに基づく自車位置と目標走行経路とのずれ、自車の進行方向の目標走行経路の延び方向とのずれ、予め設定されている車速、目標走行経路を走行中に行うべき作業装置の動作、作業状態検出機器8からの機体状態情報などが含まれている。自動走行制御ユニット61は、このような自動走行情報に基づいて必要な制御データを機器制御ユニット53に与え、コンバインに搭載されている走行機器や作業機器を制御する。
この実施形態では、中継ユニット5Cは、第1車載ネットワーク5Aと第2車載ネットワーク5Bとの間のデータ交換を行うだけでなく、それ自体にも外部機器に対する入出力インターフェースやデータ処理部を備えている。従って、中継ユニット5Cには、報知デバイス73としての報知灯731やブザー732、オートパイロットON・OFFスイッチ90、ティーチング走行ON・OFFスイッチ96が接続され、さらには無線方式で自動走行用リモコン95が接続されている。
報知灯731は、図2と図3とに示すように、穀粒タンク12の天井に立設された円柱状のランプであり、自動走行時に点灯し、コンバインが自動走行中であることを周囲に知らせることができる。同様にブザー732を通じて、コンバインがティーチング作業走行中であることや自動走行中であることを周囲に知らせることもできる。コンバインの自動走行時は、コンバインの外から必要最低限の指令をコンバインに与える必要があるので、自動走行用リモコン95が用意されている。自動走行用リモコン95には、例えば、緊急停止ボタン、エンジン始動ボタン、自動運転ボタンが設けられており、外部から、コンバインの緊急停止、エンジンの始動、自動運転の指令をコンバインの制御系に与えることができる。
次に、コンバインが圃場で自動走行しながら刈取り収穫作業を行う際の一例を、図6のフローチャートを用いて説明する。まず、オペレータは手動運転で、周回作業走行を開始する開始位置へコンバインを移動させる(#10)。ティーチング走行ON・OFFスイッチ96をON操作し(#12)、枕地作業としての周回作業走行と外周ティーチング走行を同時に行う(#14)。十分な枕地を確保できると、周回作業走行を終了するとともに、外周ティーチングを停止させるためにティーチング走行ON・OFFスイッチ96をOFF操作する。ティーチング走行ON・OFFスイッチ96がOFF操作されると(#16YES分岐)、それまでの外周ティーチング走行で取得された自車位置データ群を用いて、枕地以外である圃場の未作業領域の外形マップが算定される(#20)。
未作業領域の刈取り収穫作業は、自動作業走行で行われるので、未作業領域における1つ以上の目標走行経路が算定される(#22)。算定された目標走行経路に対して走行速度を設定し、必要走行時間を予測する(#24)。算定された目標走行経路が複数あれば、操作員による選択のため、算定された目標走行経路が1つであれば、オペレータによる確認のため、目標走行経路のイラストと予測走行時間をモニタ134に表示する(#26)。自動作業走行のための目標走行経路が決定すると(#28)、当該自動作業走行の開始位置までコンバインを移動させる(#30)。コンバインが自動作業走行の開始位置に達すると、オートパイロットON・OFFスイッチ90をON操作して(#32)、自動作業走行を開始する(#34)。
自動作業走行は、緊急避難的には、上述したように操縦レバー91の操作などをトリガーとして停止することが可能であるが、正常には、オートパイロットON・OFFスイッチ90のOFF操作によって終了する。このフローチャートでは、緊急避難的な自動走行から手動走行への移行制御は割愛されている。自動作業走行中において、オートパイロットON・OFFスイッチ90のOFF操作による自動走行の中止が指令されたかどうかチェックされる(#36)。オートパイロットON・OFFスイッチ90のOFF操作が確認されると、さらに未作業領域に割り当てられたすべての目標走行経路での作業走行が完了しているかどうかチェックされる(#38)。作業走行が完了していなければ(#38NO分岐)、作業途中での経路離脱と見なされ、手動走行制御に移行する。この離脱走行の一例は、コンバインでは、満杯になった穀粒タンク12のアンローディングのために畦に待機している搬送車まで車体を移動させる離脱走行であり、通常行われる走行の1つである(#40)。離脱走行の完了は、再度、オートパイロットON・OFFスイッチ90のON操作によって確認される(#42)。オートパイロットON・OFFスイッチ90がON操作されると、つまり離脱走行が完了すれば(#42YES分岐)、その時点でのコンバインの自車位置と、離脱時に残されている未作業領域の外形マップから、自動作業走行の再開位置を含む目標走行経路が再算定される(#44)。自動作業走行の再開位置への移動は、自動走行制御で可能であるが、手動走行制御で行うことも可能である(#46)。いずれにせよ、新たな目標走行経路における自動作業走行の再開位置に達すると、これまで通りの、目標走行経路に沿った自動作業走行が再開される(#48)。
ステップ#38のチェックで、すべての目標走行経路での作業走行が完了しているならば、作業予定領域の作業が完了であるので、この刈取り収穫作業は終結する。
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、作業車の実際の走行軌跡の目標走行経路からの偏差が所定値を超えた場合や、オーバ―ラップ量が前もって設定されているオーバーラップ量を所定量以上ずれた場合、目標走行経路が新たに算定されたが、操作員の判断に基づいて任意のタイミングで目標走行経路を再算定することも可能である。
(2)上述した実施形態では、コンバインの制御系は、中継ユニット5Cでブリッジされた第1車載ネットワーク5Aと第2車載ネットワーク5Bとを備えていたが、3つ以上の車載ネットワークを備えてもよいし、単一の車載ネットワークで構成してもよい。第1車載ネットワーク5Aを従来の手動走行車両の車載ネットワークとすれば、従来の手動走行車両に自動走行機能を付加する場合、中継ユニット5Cでブリッジされ第2車載ネットワーク5Bに自動走行に関する機能ブロックを構築することで、従来の手動走行車両の車載ネットワークを実質的にそのまま流用することができるという利点が得られる。
(3)上述した実施形態では、コンバインに搭乗している操作員によって手動走行操作ユニット9が操作されることで手動走行する構成としたが、自動走行用リモコン95からの信号が入力信号処理ユニット50に入力されるように構成され、車外にいる操作員によって自動走行用リモコン95が操作されることで手動走行するように構成されていてもよい。この場合、モニタ134の代わりとして、スマートフォンやタブレット端末が採用され、車外にいる操作員によってモニタ134の操作等されるように構成すると好適である。
(4)
上述した実施形態では、外形マップが算定された後の自動作業走行(中央作業走行)のための目標走行経路として、図1に示すように、往復の直線作業走行を180度Uターン走行でつないでいくものが取り上げられた。以下に、それ以外の目標走行経路の例を説明する。
(a)図7で示された目標走行経路は、外側から中心に向けて四角形の渦巻き状に走行するものであり、その直線経路を接続する90度角部は、後進を組み合わせた切り返し走行経路となっている。この切り返し走行経路を説明する。この切り返し走行経路は、切り返し走行経路に入る前の入側直線経路L1から、ほぼ直線状に、あるいは渦巻方向に曲がりながら(図面では直線で示されている)前進走行する第1経路r1、逆方向の操舵角で後進走行する第2経路r2、切り返し走行経路から次の出側直線経路L2に向かって前進走行する第3経路r3からなる。なお、第2経路r2は、第3経路r3がほぼ直線となるような位置まで延びると好都合である。図7では、切り返し走行は外周の4つだけしか示されていないが、全ての90度角部で取り入れることができる。
(b)図8で示された目標走行経路は、平行に並んだ直線経路L1〜L6を2つ経路毎に180度Uターン経路でつなぐものである。その際、180度Uターン経路は1つ以上の直線経路を跨ぐ。つまり、Uターン経路でつながれる2つの直線経路の間に1つ以上の直線経路が挟まれるのである。この目標走行経路では、直線経路L1は、2つの直線経路L2,L3を間に挟む180度Uターン経路S1によって直線経路L4につながれる。次に、直線経路L4は、直線経路L3を間に挟む180度Uターン経路S2によって直線経路L2につながれる。さらに、直線経路L2は、2つの直線経路L3,L4を間に挟む180度Uターン経路S3によって直線経路L5につながれる。このように、180度Uターン経路は、1つ以上の直線経路を挟んで次の直線経路につながるため、曲率半径が大きくなって旋回しやすくなり、結果的に高速走行が可能となる利点をもつ。
(c)図9で示された目標走行経路は、図7の目標走行経路と図8の目標走行経路との組み合わせである。つまり、その外側の走行経路には、図7に示された、切り返し走行経路が用いられている。その内側の走行経路には、図8に示された走行経路が用いられており、これは、1つ以上の直線経路を間に挟む180度Uターン経路を用いた走行経路である。
本発明は、自脱型コンバイン、普通型コンバイン、あるいは田植機やトラクタなどの作業車に適用することが可能である。
20 :動作機器
31 :引起装置
32 :刈取装置
33 :搬送装置
5A :第1車載ネットワーク
5B :第2車載ネットワーク
5C :中継ユニット
50 :入力信号処理ユニット
52 :手動走行制御ユニット
53 :機器制御ユニット
531 :走行機器制御部
532 :作業機器制御部
54 :エンジン制御ユニット
55 :報知ユニット
61 :自動走行制御ユニット
62 :自車位置検出モジュール
620 :自車位置検出ボックス
621 :衛星航法用モジュール
622 :慣性航法用モジュール
63 :外形マップ算定部
64 :経路算定部
73 :報知デバイス
731 :報知灯
8 :作業状態検出機器
9 :手動走行操作ユニット
90 :オートパイロットON・OFFスイッチ
91 :操縦レバー
92 :主変速レバー
95 :自動走行用リモコン
96 :ティーチング走行ON・OFFスイッチ