本発明に係る農作業機の一例としてのコンバインの実施形態が、図面に基づいて以下に記載されている。この実施形態で、機体1の前後方向を定義するときは、作業状態における機体進行方向に沿って定義する。機体1の左右方向を定義するときは、機体前進方向視で見た状態で左右を定義する。
〔農作業機の一例であるコンバインの基本構成〕
図1に示されるように、普通型のコンバインに、機体1と、操向可能な左右一対のクローラ式の走行装置11と、搭乗部12と、脱穀装置13と、穀粒タンク14と、収穫装置15と、搬送装置16と、穀粒排出装置18と、が備えている。
走行装置11は、コンバインの下部に備えられている。走行装置11は左右一対のクローラ走行機構を有し、コンバインは、走行装置11によって圃場を走行可能である。図示はしないが、走行装置11は、静油圧式無段変速装置の主変速装置と、ギヤ切換式の副変速装置と、を有する。なお、副変速装置は、移動用(非作業用)の変速段数と、移動用よりも低速な作業走行用の変速段数と、変速可能に構成されている。搭乗部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11よりも上側に備えられ、これらは機体1の上部として構成されている。コンバインの搭乗者と、コンバインの作業を監視する監視者と、の少なくとも一人が、搭乗部12に搭乗可能である。通常、搭乗者と監視者とは兼務される。なお、搭乗者と監視者とが別人の場合、監視者は、コンバインの機外からコンバインの作業を監視していても良い。搭乗部12の下方に駆動用のエンジン(不図示)が備えられている。穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の後下部に連結されている。
収穫装置15は圃場の作物を収穫する。そして、コンバインは、収穫装置15によって圃場の作物を収穫しながら走行装置11によって走行する作業走行が可能である。搬送装置16は収穫装置15よりも後側に隣接して設けられている。収穫装置15及び搬送装置16は、収穫装置シリンダ15Aの伸縮動作によって機体1の前部に上下昇降可能に支持されている。脱穀装置13及び収穫装置15は、本発明の『作業装置』である。
収穫装置15によって収穫された作物は、搬送装置16によって脱穀装置13へ搬送され、脱穀装置13によって脱穀処理される。脱穀処理によって得られた収穫物としての穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。穀粒排出装置18は機体後部の縦軸芯回りに揺動可能に構成されている。即ち、穀粒排出装置18の遊端部が機体1よりも機体横外側へ張り出して作物を排出可能な排出状態と、穀粒排出装置18の遊端部が機体1の機体横幅の範囲内に位置する収納状態と、に切換可能なように穀粒排出装置18は構成されている。
搭乗部12の天井部に衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80は、人工衛星GSからのGNSS(グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム。例えばGPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou、等)の信号を受信して、自車位置を取得する。
衛星測位モジュール80の他に、機体1の走行方位を検出する方位検出手段として、例えばIMU(インターナル・メジャメント・ユニット)を有する慣性計測モジュール81(図2参照)が、機体1に備えられている。慣性計測モジュール81は、ジャイロセンサや加速度センサを有する構成であっても良い。慣性計測モジュール81は、機体1の旋回角度の角速度を検出可能である。詳述はしないが、慣性計測モジュール81は、機体1の旋回角度の角速度の他、機体1の左右傾斜角度、機体1の前後傾斜角度の角速度等も計測可能である。なお、衛星測位モジュール80と慣性計測モジュール81とが一体的に構成されても良い。
〔制御ユニットの構成〕
図2に示される制御ユニット30は、コンバインの制御系の中核要素であり、複数のECUの集合体として示されている。制御ユニット30は、自動操向制御が実行される自動操向モードと、自動操向制御が実行されない手動操向モードと、に切換え可能なように構成されている。『自動操向制御』とは、所定の方位に基づいて、後述する直線状の走行目標ラインCを設定し、機体1が走行目標ラインCに沿って走行するように走行装置11を制御することを意味する。制御ユニット30は、当該所定の方位として基準方位Bを算出する。また、制御ユニット30はタッチパネル式画面端末VTと通信可能に構成されている。
基準方位Bは、自動操向制御において機体1が地上を直進するべき方位であって、例えば東西南北の何れかを基準とした角度値で管理される。本実施形態では、基準方位Bに沿って、一方向と、一方向と180°反対方向と、の双方向に機体1の走行が可能である。この場合、基準方位Bは、東西南北の何れかを基準とした180°の範囲の角度値で管理されれば十分であるが、基準方位Bが360°の範囲の角度値で管理される構成であっても良い。あるいは、基準方位Bがベクトル値で管理されても良い。
本発明における『基準方位』は、自動操向制御において機体1が地上を直進するべき方位である。本発明では、基準方位Bに沿って、一方向と、一方向と180°反対方向と、の双方向に機体1の走行が可能であるが、基準方位Bに沿って一方向のみの単方向に機体1が走行する構成も、本発明に含まれる。
制御ユニット30に、機体位置算出部31と、機体方位算出部32と、基準方位算出部33と、記憶部34と、選択部35と、ライン設定部36と、操向制御部37と、条件判定部38と、が備えられている。制御ユニット30に、衛星測位モジュール80、慣性計測モジュール81、始点設定スイッチ21A、終点設定スイッチ21B、の信号が入力される。また、図示はしないが、制御ユニット30に、車速センサ、エンジンのトルクセンサ、障害物検知センサ、等の信号も入力される。
機体位置算出部31は、衛星測位モジュール80によって出力された測位データに基づいて、機体1の位置座標を経時的に算出する。即ち、機体位置算出部31は、衛星測位を用いて機体位置を算出する。算出された機体1の経時的な位置座標は、機体方位算出部32と操向制御部37とへ送られる。
機体方位算出部32は、慣性計測モジュール81によって検出された角速度を積分することによって、機体1の走行方位変化角を算出できる。また、機体方位算出部32は、経時的に算出した機体1の位置座標を時間微分することによって、機体1の走行速度及び走行方位を算出できる。即ち、機体方位算出部32は、機体位置算出部31によって経時的に算出された機体1の位置座標と、慣性計測モジュール81によって出力された角速度と、の少なくとも一方に基づいて機体1の走行方位を算出する。機体方位算出部32によって算出された機体1の走行方位は、選択部35と操向制御部37とに送られる。なお、機体方位算出部32は、例えば電子コンパス等に基づいて機体1の走行方位を算出しても良い。
基準方位Bを設定するための設定スイッチ21が備えられている。設定スイッチ21は、例えば搭乗部12に設けられたタッチパネル式画面端末VT(例えば液晶の画面、OLEDの画面等のタッチ操作可能な画面)に表示されたアイコンボタンであって、始点位置を設定する始点設定スイッチ21Aと、終点位置を設定する終点設定スイッチ21Bと、を有する。
手動操向モードの状態で始点設定スイッチ21Aの操作が可能であって、この状態で機体1が走行し、始点設定スイッチ21Aが操作されると、このタイミングにおける機体1の位置Aaが基準方位算出部33へ送られる。位置Aaは、始点設定スイッチ21Aが操作されたタイミングで、機体位置算出部31によって算出される。なお、始点設定スイッチ21Aが操作される時点において、終点設定スイッチ21Bの操作は不能である。
搭乗者が始点設定スイッチ21Aを操作した後、機体1が走行を継続して位置Aaから予め設定された距離以上に離れると、終点設定スイッチ21Bの操作が可能となる。なお、搭乗者が始点設定スイッチ21Aを操作した後で機体1が走行している間、始点設定スイッチ21Aは操作可能であっても良いし、始点設定スイッチ21Aは操作不能であっても良い。始点設定スイッチ21Aが操作可能である場合、搭乗者が始点設定スイッチ21Aを改めて操作すると、このタイミングにおける機体1の位置Aaが、再度、基準方位算出部33へ送られても良い。始点設定スイッチ21Aが操作不能である場合、始点設定スイッチ21Aに代わって、位置Aaの記憶を消去して基準方位Bの設定を中止するボタンが表示されても良い。
終点設定スイッチ21Bが操作されると、このタイミングにおける機体1の位置Abが基準方位算出部33へ送られる。位置Abは、終点設定スイッチ21Bが操作されたタイミングで、機体位置算出部31によって算出される。そして、位置Aa,Abに基づいて、作業走行のための基準方位Bが基準方位算出部33によって算出され、算出された基準方位Bが記憶部34に記憶される。即ち、基準方位算出部33は、圃場の走行中に算出された複数の機体位置に基づいて基準方位Bを算出する。また、記憶部34は、作業走行のための複数の基準方位Bを記憶可能に構成されている。なお、記憶部34は、基準方位Bの記憶に限定されず、例えば、位置Aa,Abが記憶される構成であっても良い。
また、制御ユニット30は方位ずれ設定部39と接続され、方位ずれ設定部39は、人為操作に基づいて方位ずれ量ΔBを設定可能に構成されている。方位ずれ設定部39は、例えば搭乗部12に設けられたタッチパネル式画面端末VTに表示されたアイコンボタンであるが、ダイヤル式のスイッチであっても良いし、レバーであっても良い。そして基準方位算出部33は、算出済みの基準方位Bから『所定の方位』だけ方位ずれした別の基準方位Bを算出可能に構成されている。『所定の方位』は、人為操作によって設定される方位ずれ量ΔBである。
選択部35は複数の基準方位Bのうちの一つを選択する。まず、選択部35は、機体方位算出部32から機体1の走行方位を取得する。そして選択部35は、記憶部34に記憶された複数の基準方位Bのうち、機体1の走行方位に最も近い基準方位Bを選択する。
条件判定部38は、例えば、主変速レバー22、副変速スイッチ23、刈取脱穀レバー24、昇降検知部25、脱穀クラッチ26、刈取クラッチ27からの信号を受け取り、これらの信号に基づいて自動操向制御のための『所定の条件』を判定可能に構成されている。条件判定部38の判定結果は、ライン設定部36へ送られる。条件判定部38の処理の詳細に関しては〔開始判定ルーチンについて〕で後述する。主変速レバー22、副変速スイッチ23、刈取脱穀レバー24、昇降検知部25、脱穀クラッチ26、刈取クラッチ27に関しても、〔開始判定ルーチンについて〕で纏めて後述する。
ライン設定部36は、機体位置算出部31によって算出された最新の機体1の位置座標を常時取得する。また、ライン設定部36は、条件判定部38から判定結果を取得する。そして、当該判定結果が自動操向制御を許容するものであれば、ライン設定部36は、当該最新の位置座標に基づいて、収穫装置15の左右中心部から、記憶部34によって選択された基準方位Bに沿って前方に延びる走行目標ラインCを常時算出する。制御ユニット30が自動操向モードに切換えられると、ライン設定部36は、その時点で算出されている走行目標ラインCを、機体1が走行すべき走行目標ラインCとして固定(設定)する。この設定された走行目標ラインCは、自動操向モードが解除されるまで固定される。走行目標ラインCは、機体1から機体前方へ延び、かつ、記憶部34によって選択された基準方位Bと平行である。即ち、ライン設定部36は、選択された基準方位Bに基づいて走行目標ラインCを設定する。自動操向モード中に、搭乗者が、操向レバー(不図示)を操作したり、主変速レバー22を停止位置に操作したりすると、制御ユニット30が自動操向モードから手動操向モードに切換えられる。制御ユニット30が自動操向モードから手動操向モードに切換えられると、ライン設定部36は走行目標ラインCの設定を解除する。なお、ライン設定部36が、制御ユニット30が自動操向モードに切換えられたときに走行目標ラインCを算出・設定するよう構成されてもよい。
操向制御部37は、走行目標ラインCに対する機体1の機体横方向における位置ズレ量を算出できる。また、操向制御部37は、機体1の走行方位と、記憶部34によって選択された基準方位Bと、の角度偏差、即ち方位ズレを算出できる。制御ユニット30が自動操向モードに設定されているとき、操向制御部37は、機体位置算出部31からの機体位置情報と、機体方位算出部32からの方位情報と、に基づいて、機体1が走行目標ラインCに沿って走行するように、走行装置11を制御する。
〔基準方位の算出について〕
圃場の収穫作業を行う場合、まず、搭乗者(監視者であっても良い、以下同じ)は、コンバインを手動で操作し、圃場内の外周領域において、圃場の外周辺、即ち畦際に沿って周囲刈り走行(作業走行の一例)しながら収穫を行う。この周囲刈り走行の領域は、コンバインが後工程で往復走行しながら圃場内側領域(例えば図12及び図13の作業対象領域CA)の作物を収穫する際に、機体1の旋回スペースとなる。このことから、当該旋回スペースは広く確保されることが望ましい。このため、搭乗者は、圃場の外周領域でコンバインを2~3周走行させ、コンバインの収穫幅の2~3倍程度の周囲刈り走行の領域を旋回スペースとして確保する。
基準方位Bの算出は、圃場内の外周領域における周囲刈り走行と一緒に行われる。図3に、基準方位Bの算出の順序がフローチャートで示される。まず、終点設定スイッチ21Bが自動的に操作不能状態に切換えられる(ステップ#01)。
本実施形態では、始点設定スイッチ21A及び終点設定スイッチ21Bがタッチパネル式画面端末VTのアイコンボタンである。終点設定スイッチ21Bの操作不能状態とは、例えば、終点設定スイッチ21Bのアイコンボタンがタッチパネル式画面端末VTに表示されない状態(アイコンボタンのグレーアウトも含まれる)であったり、終点設定スイッチ21Bのアイコンボタンがタッチパネル式画面端末VTに表示されていても搭乗者等の操作が反映されない状態であったりする。
搭乗者が圃場の畦際にコンバインを移動させ、圃場の畦際に沿って直進(または略直進)を開始する際に、搭乗者は始点設定スイッチ21Aを操作する(ステップ#02)。なお、本実施形態で『操作』とは、アイコンボタンである始点設定スイッチ21A及び終点設定スイッチ21Bのアイコン操作も含まれる。
始点設定スイッチ21Aが操作されると(ステップ#02:Yes)、機体1の位置座標として位置Aaが記憶される(ステップ#03)。位置Aaは、始点設定スイッチ21Aが操作されたタイミングで、機体位置算出部31によって算出された機体1の位置座標である。そして、搭乗者が圃場の畦際の一辺に沿ってコンバインを直進(または略直進)させながら作業走行を行う。この間、機体1が位置Aaから予め設定された距離以上に離れたかどうかが、基準方位算出部33によって判定される(ステップ#04)。『予め設定された距離』は、例えば位置Aaから5メートルである。
機体1が位置Aaから予め設定された距離以上に離れていなければ(ステップ#04:No)、ステップ#09の処理が行われる。ステップ#09は、終点設定スイッチ21Bが操作可能状態である場合に、終点設定スイッチ21Bを操作不能状態に切換える処理である。つまり、機体1が位置Aaから予め設定された距離以上に離れていなければ(ステップ#04:No)、終点設定スイッチ21Bの操作不能状態が保持され、搭乗者は終点設定スイッチ21Bを操作できない。
機体1が位置Aaから予め設定された距離以上に離れていれば(ステップ#04:Yes)、終点設定スイッチ21Bが操作可能状態に切換えられる(ステップ#05)、このとき、終点設定スイッチ21Bが既に操作可能状態であれば、終点設定スイッチ21Bの操作可能状態が保持される。そして、終点設定スイッチ21Bが操作されたかどうかが判定される(ステップ#06)。終点設定スイッチ21Bが操作されなければ(ステップ#06:No)、ステップ#04~#05の処理が繰り返される。このとき、例えばコンバインが後進走行する等の要因によって、機体1が位置Aaから予め設定された距離以上に離れなくなると(ステップ#04:No)、終点設定スイッチ21Bが再び操作不能状態に切換えられる(ステップ#09)。
終点設定スイッチ21Bが操作されると(ステップ#06:Yes)、機体1の位置座標として位置Abが記憶される(ステップ#07)。位置Abは、終点設定スイッチ21Bが操作されたタイミングで、機体位置算出部31によって算出された機体1の位置座標である。このように、搭乗者が圃場の畦際の一辺に沿ってコンバインを直進(または略直進)させながら作業走行を行い、始点設定スイッチ21A及び終点設定スイッチ21Bを操作することによって、位置Aa,Abが取得される。
位置Aa,Abが取得されると、基準方位算出部33は位置Aa,Abの二点間を結ぶ直線の方位として基準方位Bを算出する(ステップ#08)。即ち、基準方位算出部33は、機体位置算出部31によって算出された二つの機体位置を結ぶ直線の方位を基準方位Bとして算出する。また、ステップ#08において基準方位算出部33は算出済みの基準方位Bを記憶部34に記憶する。これにより、基準方位Bの算出処理が完了する。
上述のステップ#01からステップ#08までの処理を繰り返し行うことによって、基準方位算出部33は複数の基準方位Bを取得可能に構成されている。例えば、搭乗者が、圃場の別の畦際にコンバインを移動させ、始点設定スイッチ21Aを操作して当該別の畦際の一辺に沿ってコンバインを直進(または略直進)させながら作業走行を行って、その後、終点設定スイッチ21Bを操作する。このとき、基準方位算出部33は、ステップ#01からステップ#08までの処理を再度行い、別の基準方位Bを算出する。
図4に示される例では、圃場の畦際に沿って1周分の周囲刈り走行が行われ、複数の基準方位B1,B2,B3,B4が基準方位算出部33によって算出され、記憶部34に、方位の夫々異なる複数の基準方位B1,B2,B3,B4が記憶されている。位置A1,A2に基づいて基準方位B1が算出され、位置A3,A4に基づいて基準方位B2が算出され、位置A5,A6に基づいて基準方位B3が算出され、位置A7,A8に基づいて基準方位B4が算出されている。位置A1,A3,A5,A7は始点設定スイッチ21Aが操作されたタイミングにおける位置Aa(図2及び図3参照)であって、位置A2,A4,A6,A8は終点設定スイッチ21Bが操作されたタイミングにおける位置Ab(図2及び図3参照)である。即ち、基準方位算出部33は、圃場の外周領域における周回走行中に算出された機体位置に基づいて基準方位Bを算出する。このとき、基準方位算出部33は、圃場の外周辺の延びる方位に沿う複数の基準方位Bを算出する。換言すると、基準方位算出部33は、圃場の外周領域における人為操作での周回走行中に算出された機体位置に基づいて、圃場の外周辺の延びる方位に沿う複数の基準方位Bを算出する。
位置A1は本発明の『第一地点』であって、位置A2は本発明の『第二地点』である。また、基準方位B1は本発明の『第一基準方位』である。即ち、基準方位算出部33は、圃場の外周領域における位置A1と位置A2とに亘る二点間走行で位置A1と位置A2との夫々で算出された機体位置に基づいて複数の基準方位Bの一つとして基準方位B1を算出する。
位置A3は本発明の『第三地点』であって、位置A4は本発明の『第四地点』である。また、基準方位B2は本発明の『第二基準方位』である。即ち、基準方位算出部33は、位置A1と位置A2とに亘る走行後に、外周領域において位置A1と位置A2との何れとも異なる位置A3と位置A4とに亘る二点間走行で位置A3と位置A4との夫々で算出された機体位置に基づいて複数の基準方位Bの一つとして基準方位B2を算出する。
本実施形態では、図4に示されるように、位置A1,A2に基づいて基準方位B1が算出され、位置A3,A4に基づいて基準方位B2が算出されているが、この実施形態に限定されない。例えば、方位ずれ設定部39の人為操作によって90度の方位ずれ量ΔBが設定され、基準方位算出部33は、算出済みの基準方位B1から90度だけ方位ずれした基準方位B2を算出しても良い。つまり、位置A1,A2に基づいて基準方位B1が算出されると、位置A3,A4に亘る二点間走行を行わなくても、基準方位B1に対して90度だけ方位ずれした基準方位B2が自動的に算出される構成であっても良い。
〔自動操向制御について〕
基準方位Bが記憶部34に記憶された後、自動操向制御の前に、人の操作に応じて図5に示されるような判定処理が行われる。まず、機体位置算出部31によって算出された機体1の位置が位置Paとして記憶される(ステップ#11)。続いて、自動操向制御のための所定の条件が満たされているかどうかが判定される(ステップ#12)。自動操向制御のための所定の条件が満たされているか否かは、図14に示される開始判定ルーチンによって判定される。この開始判定ルーチンは、ステップ#12の処理で呼び出されるサブルーチンであって、条件判定部38によって処理される。開始判定ルーチンは、自動操向制御のための所定の条件が満たされていれば、ステップ#12にYesの戻り値を返す。また、開始判定ルーチンは、自動操向制御のための所定の条件が満たされていなければ、ステップ#12にNoの戻り値を返す。図14に示される開始判定ルーチンに関しては〔開始判定ルーチンについて〕で後述する。
開始判定ルーチンからステップ#12にNoの戻り値が返されると(ステップ#12:No)、ステップ#11~#12の処理が繰り返され、位置Paが更新され続ける。開始判定ルーチンからステップ#12にYesの戻り値が返されると(ステップ#12:Yes)、選択部35が、機体1の走行方位を機体方位算出部32から取得する(ステップ#13)。そして選択部35は、複数の基準方位Bのうち機体1の走行方位に最も近い基準方位Bを選択する(ステップ#14)。図6に示される例では、機体1の走行方位が基準方位B1に沿っていることから、選択部35は、複数の基準方位Bのうちの基準方位B1を選択する。そして、ライン設定部36(または選択部35)は、機体1の走行方位と基準方位Bとの差分Δθを算出し(ステップ#15)、差分Δθが予め設定された閾値以内(例えば5°以内)かどうかを判定する(ステップ#16)。
差分Δθが予め設定された閾値よりも大きければ(ステップ#16:No)、ステップ#11~#15の処理が繰り返され、位置Paが更新され続ける。このとき、ステップ#14において同じ基準方位Bが繰り返し選択される場合が考えられるが、この場合には選択部35の選択が保持される。また、この間に機体1が旋回し、機体1の走行方位に最も近い基準方位Bが他の基準方位Bになってしまうと、選択部35は当該他の基準方位Bを選択する。
差分Δθが予め設定された閾値以内であれば(ステップ#16:Yes)、ライン設定部36は、ステップ#11で記憶された位置Paから予め設定された距離以上に機体位置が離れたかどうかを判定する(ステップ#17)。ステップ#17の判定がNoであれば、ステップ#12~#17の処理が繰り返される。このとき、ステップ#11の処理は行われずに位置Paは更新されない。この状態で機体1が前進すると、機体位置と、ステップ#11で記憶された位置Paと、の離間距離が大きくなる。そして、ステップ#17の判定がYesになると、制御ユニット30が自動操向モードに移行し、操向制御部37による自動操向制御が行われる(ステップ#18)。
以上の説明から理解されるように、操向制御部37は、所定の条件が満たされており、かつ、選択部35によって選択された基準方位Bに沿って機体1が所定距離に亘って直進したと判定した場合、走行装置11を自動的に操向制御可能な状態となる。
制御ユニット30が自動操向モードに移行すると、ライン設定部36は、基準方位Bと平行な直線状の走行目標ラインCを機体1の前方に設定する。自動操向モードの移行後において、機体1の位置情報が機体位置算出部31によって経時的に算出されるとともに、相対的な方位変化角が機体方位算出部32によって経時的に算出される。そして、操向制御部37は、走行目標ラインCに対する機体1の機体横方向の位置ズレ量と、基準方位Bと機体1の走行方位との方位ズレ角度と、を算出し、機体1が走行目標ラインCに沿って走行するように、走行装置11を制御する。
上述したように、周囲刈り走行の領域は後工程でコンバインの旋回スペースとして用いられるため、コンバインの周囲刈り走行は2~3周に亘って行われる。本実施形態では、圃場の外周辺に沿って1周の周囲刈り走行が行われて複数の基準方位Bが算出され(図4参照)、基準方位Bの夫々は記憶部34に記憶されている。このため、これらの基準方位Bの夫々は、2周目以降の周囲刈り走行に利用可能である。
図6では、位置A1,A2に亘る刈跡に隣接して周囲刈り走行が行われる。このとき、選択部35は、機体1の走行方位に最も近い基準方位B1を選択し、ライン設定部36は、機体1の進行方位前方に基準方位B1と平行な直線状の走行目標ラインC1を生成する。そして、コンバインの刈幅に亘る領域D1において、走行目標ラインC1に沿う自動操向制御が行われる。
図7では、位置A3,A4に亘る刈跡に隣接して周囲刈り走行が行われる。このとき、選択部35は、機体1の走行方位に最も近い基準方位B2を選択し、ライン設定部36は、機体1の進行方位前方に基準方位B2と平行な直線状の走行目標ラインC2を生成する。そして、コンバインの刈幅に亘る領域D2において、走行目標ラインC2に沿う自動操向制御が行われる。
図8では、位置A5,A6に亘る刈跡に隣接して周囲刈り走行が行われる。このとき、選択部35は、機体1の走行方位に最も近い基準方位B3を選択し、ライン設定部36は、機体1の進行方位前方に基準方位B3と平行な直線状の走行目標ラインC3を生成する。そして、コンバインの刈幅に亘る領域D3において、走行目標ラインC3に沿う自動操向制御が行われる。
図9では、位置A6と位置A7とに亘る刈跡に隣接して周囲刈り走行が行われており、機体1の走行方位は基準方位B1と同一または近似する。このため、選択部35は基準方位B1を選択し、ライン設定部36は、機体1の進行方位前方に基準方位B1と平行な直線状の走行目標ラインC4を生成する。そして、コンバインの刈幅に亘る領域D4において、走行目標ラインC4に沿う自動操向制御が行われる。
図10では、位置A6と位置A7とに亘る刈跡に隣接して周囲刈り走行が行われており、機体1の走行方位は基準方位B2と同一または近似する。このため、選択部35は基準方位B2を選択し、ライン設定部36は、機体1の進行方位前方に基準方位B2と平行な直線状の走行目標ラインC5を生成する。そして、コンバインの刈幅に亘る領域D5において、走行目標ラインC5に沿う自動操向制御が行われる。
図11では、位置A7,A8に亘る刈跡に隣接して周囲刈り走行が行われる。このとき、選択部35は、機体1の走行方位に最も近い基準方位B4を選択し、ライン設定部36は、機体1の進行方位前方に基準方位B4と平行な直線状の走行目標ラインC6を生成する。そして、コンバインの刈幅に亘る領域D6において、走行目標ラインC6に沿う自動操向制御が行われる。
コンバインの周囲刈り走行が完了すると、図12及び図13に示されるように、コンバインは、周囲刈り走行による既作業領域よりも内側に残された作業対象領域CAを往復走行しながら作物を刈り取る。作業対象領域CAにおいて、走行目標ラインCに沿って前進しながら作物を刈り取る刈取走行と、作業対象領域CAよりも外側の外周領域における180°(または略180°)の方向転換と、が繰り返される。これにより、コンバインは、作業対象領域CAの全体を網羅するように作物を刈り取る。このとき、機体1の走行方位は基準方位B1と同一または近似する。このため、選択部35は基準方位B1を選択し、ライン設定部36は、機体1の進行方位前方に基準方位B1と平行な直線状の走行目標ラインC7,C8等を生成する。これにより、例えば図12に示される往復走行では、コンバインの刈幅に亘る領域D7において、走行目標ラインC7に沿う自動操向制御が行われる。また、例えば図13に示される中割り走行では、コンバインの刈幅に亘る領域D8において、走行目標ラインC8に沿う自動操向制御が行われる。つまり、ライン設定部36は、外周領域における周回走行中に算出された基準方位Bに基づいて作業対象領域CAに走行目標ラインCを設定する。なお、図12及び図13に示される例では、作業対象領域CAが圃場の形状に沿って不等辺の多角形となるように周囲刈り走行が行われているが、作業対象領域CAが四角形となるように周囲刈り走行が行われても良い。コンバインの周囲刈り走行後の往復走行等で自動操向制御が行われることによって、搭乗者の負担が軽減される。
このように、選択部35は、算出された機体1の走行方位に基づいて複数の基準方位Bのうちの一つを選択し、ライン設定部36は選択された基準方位Bに基づいて走行目標ラインCを設定する。
〔開始判定ルーチンについて〕
以下では、図2及び図14を参照し、条件判定部38によって処理される開始判定ルーチンについて説明する。図14のステップ#12の呼び出しによって開始判定ルーチンが開始されると、まず、ステップ#21の処理が実行される。ステップ#21では、条件判定部38が、図2に示される主変速レバー22の操作位置を示す情報を取得する。
主変速レバー22は、前後方向に揺動操作可能に構成されている。主変速レバー22の可動域は、前進用操作位置FP、中立位置NP、後進用操作位置RPの3つに区画されている。そして、主変速レバー22が操作されることにより、走行装置11の主変速装置の変速状態が変化する。主変速レバー22が中立位置NPに位置しているとき、主変速装置は中立状態であって、走行装置11は走行駆動しない。主変速レバー22が中立位置NPから前進用操作位置FPの位置する側に倒れるほど、走行装置11は高速に前進走行する。主変速レバー22が中立位置NPから後進用操作位置RPの位置する側に倒れるほど、走行装置11は高速に後進走行する。主変速レバー22の揺動角度を検出するセンサからの信号が条件判定部38に入力され、条件判定部38は、主変速レバー22が前進用操作位置FPに位置しているか否かを判定する。
主変速レバー22が前進用操作位置FPに位置していない場合、ステップ#21でNoと判定され、Noの戻り値がステップ#12に返される。また、主変速レバー22が前進用操作位置FPに位置している場合、ステップ#21でYesと判定され、処理はステップ#22へ移行する。
条件判定部38は、図2に示される副変速スイッチ23の操作信号を受け取るように構成されている。副変速スイッチ23は主変速レバー22に設けられている。副変速スイッチ23が操作されるたびに、副変速装置(不図示)の変速状態は、作業走行用(低速状態)と非作業用(高速状態)とに交互に切り替わる。副変速スイッチ23の状態を検出するセンサからの信号が条件判定部38に入力される。条件判定部38は、副変速スイッチ23の変速状態が作業走行用と非作業用との何れであるかを判定可能に構成されている。
ステップ#22では、副変速スイッチ23の状態が作業走行用であるか否かが判定される。より具体的には、副変速装置が低速状態であるか否かが判定される。副変速装置が低速状態でない場合、ステップ#22でNoと判定され、Noの戻り値がステップ#12に返される。また、副変速装置が低速状態である場合、ステップ#22でYesと判定され、処理はステップ#23へ移行する。
ステップ#23では、条件判定部38が、図2に示される機体位置算出部31から、RTK-GPS測位に必要なFIX解(公知技術)が得られているか否かを示す情報を取得する。そして、取得した情報に基づいて、機体位置の測位状態が所定の精度以上であるか否かが判定される。より具体的には、条件判定部38は、衛星測位モジュール80及び機体位置算出部31によるRTK-GPS測位においてFIX解が得られているか否かを判定する。
衛星測位モジュール80及び機体位置算出部31によるRTK-GPS測位においてFIX解が得られていない場合、ステップ#23でNoと判定され、Noの戻り値がステップ#12に返される。また、衛星測位モジュール80及び機体位置算出部31によるRTK-GPS測位においてFIX解が得られている場合、ステップ#23でYesと判定され、処理はステップ#24へ移行する。
ステップ#24では、条件判定部38が、図2に示される刈取脱穀レバー24の操作位置を示す情報を取得する。刈取脱穀レバー24は、搭乗部12に設けられている。刈取脱穀レバー24は、前後方向に揺動操作可能に構成されている。そして、刈取脱穀レバー24は、第一操作位置M1、第二操作位置M2、第三操作位置M3の間で、操作位置を択一的に切り替えることができるように構成されている。刈取脱穀レバー24が操作されることにより、脱穀クラッチ26及び刈取クラッチ27の入切状態が変化する。刈取脱穀レバー24の揺動角度を検出するセンサからの信号が条件判定部38に入力される。条件判定部38は、刈取脱穀レバー24の操作位置が第一操作位置M1、第二操作位置M2、第三操作位置M3の何れであるかを判定可能に構成されている。
刈取脱穀レバー24の操作位置が第一操作位置M1であるとき、脱穀クラッチ26及び刈取クラッチ27は、何れも入状態である。この状態で、エンジンからの動力は、脱穀装置13へ伝達され、刈取クラッチ27を介して収穫装置15へ伝達される。これにより、脱穀装置13及び収穫装置15は動作する。
刈取脱穀レバー24の操作位置が第二操作位置M2であるとき、脱穀クラッチ26は入状態であり、刈取クラッチ27は切状態である。この状態で、エンジンからの動力は、脱穀装置13へ伝達され、刈取クラッチ27へ伝達されない。これにより、脱穀装置13は動作し、収穫装置15は動作しない。
刈取脱穀レバー24の操作位置が第三操作位置M3であるとき、脱穀クラッチ26及び刈取クラッチ27は、何れも切状態である。この状態で、エンジンからの動力は、脱穀装置13及び刈取クラッチ27の何れにも伝達されない。このとき、脱穀装置13及び収穫装置15は動作しない。
そして条件判定部38は、取得した情報に基づいて、脱穀クラッチ26が入状態であるか否かを判定する。刈取脱穀レバー24の操作位置が第三操作位置M3である場合、ステップ#24でNoと判定され、Noの戻り値がステップ#12に返される。また、刈取脱穀レバー24の操作位置が第一操作位置M1または第二操作位置M2である場合、ステップ#24でYesと判定され、処理はステップ#25へ移行する。
更に条件判定部38は、取得した情報に基づいて、刈取クラッチ27が入状態であるか否かを判定する(ステップ#25)。刈取脱穀レバー24の操作位置が第二操作位置M2または第三操作位置M3である場合、ステップ#25でNoと判定され、Noの戻り値がステップ#12に返される。また、刈取脱穀レバー24の操作位置が第一操作位置M1である場合、ステップ#25でYesと判定され、処理はステップ#26へ移行する。
ステップ#26では、図1に示される収穫装置15が作業位置に位置しているか否かが判定される。なお、本実施形態においては、収穫装置15の最上昇位置からの下降量が所定値以上であることが、収穫装置15が作業位置に位置していることに相当する。ここで、図2に示されるように、コンバインの機体1は、昇降検知部25を備えている。昇降検知部25は、収穫装置シリンダ15Aの伸縮状態を検知する。昇降検知部25による検知結果は、条件判定部38へ送られる。そして、条件判定部38は、昇降検知部25による検知結果に基づいて、収穫装置15が作業位置に位置しているか否かを判定する。
収穫装置15が作業位置に位置していない場合、ステップ#26でNoと判定され、Noの戻り値がステップ#12に返される。また、収穫装置15が作業位置に位置している場合、ステップ#26でYesと判定される。ステップ#26でYesと判定されると、自動操向制御のための所定の条件が満たされていると判定され、Yesの戻り値がステップ#12に返される。
以上の説明から理解されるように、本実施形態において、上述の自動操向制御のための『所定の条件』には、ステップ#21からステップ#26の全てにおいてYesと判定されることが含まれている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ステップ#21からステップ#26のうちの一部が設けられていなくても良い。
即ち、上述の自動操向制御のための『所定の条件』には、主変速レバー22が前進用操作位置FPに位置していること、副変速装置が作業用の変速状態であること、機体位置の測位状態が所定の精度以上であること、脱穀装置13への動力伝達のためのクラッチが入状態となっていること、収穫装置15への動力伝達のためのクラッチが入状態となっていること、収穫装置15が作業位置に位置していること、のうちの少なくとも一つが含まれている。
〔基準方位及び走行目標ラインの画面表示について〕
図5におけるステップ#11~#17の処理が行われる間、搭乗部12に設けられたタッチパネル式画面端末VTに、選択された基準方位Bと、コンバイン(農作業機)と、が表示される(図16及び図17参照)。差分Δθ(図5、図16及び図17参照)に応じてコンバインが傾斜するように、基準方位Bの方位指標RL1,RL2とコンバインとの夫々がタッチパネル式画面端末VTに表示される。方位指標RL1,RL2は、選択部35によって選択された基準方位Bを示す線である。このため、搭乗者は、自動操向制御の開始前にタッチパネル式画面端末VTを確認しながら機体1の走行方位を基準方位Bに合わせ易くなる。
図15~図18に示される例では、基準方位B1に沿って周囲刈り走行が行われ、続いて基準方位B2に沿って周囲刈り走行が行われる。図15及び図18に示される方位指標GL1,GL2は、ライン設定部36によって設定された走行目標ラインCを示す線である。本実施形態において、タッチパネル式画面端末VTは、方位指標GL1,GL2,RL1,RL2を表示可能な『方位表示部』である。なお、図15~図18に示される例では、タッチパネル式画面端末VTの画面上で方位指標GL1,GL2,RL1,RL2は回転せずにコンバインが回転するように表示されるが、コンバインが回転せずに方位指標GL1,GL2,RL1,RL2が回転する構成であっても良い。つまり、差分Δθに応じて基準方位Bの方位指標GL1,GL2,RL1,RL2とコンバインとの一方が傾斜するように、基準方位Bの方位指標GL1,GL2,RL1,RL2とコンバインとの夫々がタッチパネル式画面端末VTに表示されてもよい。
図15~図18に示される例では、基準方位B1と、基準方位B1に対して90度だけ方位ずれした基準方位B2と、が設定されている。このため、基準方位B1と機体1の方位との差分Δθが45度(90度の半分の角度)以内であれば、選択部35が基準方位B1を選択する。また、基準方位B1と機体1の方位との差分Δθが45度よりも大きければ、選択部35が基準方位B2を選択する。つまり、選択部35は、機体方位算出部32によって算出された機体1の方位に基づいて、複数の基準方位Bのうちから最も機体1の方位に近い基準方位Bを選択する。
図15では、基準方位B1に沿って自動操向制御が行われながら、未刈領域(圃場の作物が刈り取られていない領域)の作物が収穫装置15によって刈り取られる状態が示される。タッチパネル式画面端末VTに、走行目標ラインCの方位指標GL1が表示され、機体1が走行目標ラインCに沿うように自動操向制御が行われる。自動操向制御を伴って作物が刈り取られた領域として、コンバインの作業幅に亘る幅で作業領域Dがタッチパネル式画面端末VTに表示される。作業領域Dは、自動操向制御によるコンバインの走行軌跡としてタッチパネル式画面端末VTに表示される。
図16では、コンバインが未刈領域を刈り抜けた後に制御ユニット30が自動操向モードから手動操向モードへ移行し、既刈領域で機体左方向に90度の旋回を行う状態が示されている。図16では、基準方位B1と機体1の方位との差分Δθが45度以内である。換言すると、基準方位B1と機体1の方位との差分Δθが、基準方位B2と機体1の方位との差分(90度-Δθ)よりも小さい。このため、図5におけるステップ#13及びステップ#14の処理で基準方位B1が選択され、図16に示されるように、タッチパネル式画面端末VTに基準方位B1の方位指標RL1が表示される。
図17では、機体1が図16に示される場合よりも更に機体左方向に旋回している状態が示されている。図17では、基準方位B1と機体1の方位との差分Δθが45度よりも大きい。換言すると、基準方位B1と機体1の方位との差分Δθが、基準方位B2と機体1の方位との差分(90-Δθ)よりも大きい。このため、図5におけるステップ#13及びステップ#14の処理で基準方位B2が選択され、図17に示されるように、タッチパネル式画面端末VTに基準方位B2の方位指標RL2が表示される。
なお、基準方位Bに平行な方位線、即ち方位指標RL1または方位指標RL2と平行な方位線が、コンバインの作業幅の間隔でタッチパネル式画面端末VTに複数表示されても良く、複数の方位線とコンバインとの位置関係がタッチパネル式画面端末VTに表示されても良い。この場合、搭乗者は、例えば中割り走行を行う際の基準として機体横方向の位置調整を行い易くなる。なお、機体1の走行方位が基準方位Bに合わない場合、機体1の走行方位が基準方位Bに沿うように、機体1の走行方位が自動的に修正される構成であっても良い。
図18では、機体1の90度の旋回が完了し、基準方位B2に沿って自動操向制御が行われながら、未刈領域の作物が収穫装置15によって刈り取られる状態が示される。図5のステップ#18で制御ユニット30が自動操向モードに移行すると、搭乗部12に設けられたタッチパネル式画面端末VTに走行目標ラインCの方位指標GL2が表示され、方位指標GL2は、コンバインの前方に延びるように表示される。また、走行目標ラインCに沿って自動操向制御を伴う作業走行が行われると、コンバインの作業幅に亘る幅で作業領域Dがタッチパネル式画面端末VTに表示される。
図15~図18に示される例では、制御ユニット30が自動操向モードである場合に方位指標GL1,GL2が表示され、制御ユニット30が手動操向モードである場合に方位指標RL1,RL2が表示される。図15~図18に示される例では、方位指標GL1,GL2は実線で表示され、方位指標RL1,RL2は破線で示されている。方位指標GL1,GL2と、方位指標RL1,RL2と、の夫々が異なる色で表示されても良い。即ち、『方位表示部』としてのタッチパネル式画面端末VTは、走行装置11が人為的に操向制御されている場合と、走行装置11が自動的に操向制御されている場合と、で方位指標GL1,GL2,RL1,RL2の表示態様を変更する。
作業領域Dは、コンバインの作業幅に亘る幅としてタッチパネル式画面端末VTに表示される。作業幅は、搭乗者が入力するものであっても良いし、外部のネットワーク経由で取得するものであっても良い。また、この作業幅に、横方向に隣接する既刈領域または未刈領域とオーバーラップする余分な幅、いわゆるオーバーラップしろが考慮されても良い。このとき、当該オーバーラップしろは、搭乗者が入力するものであっても良いし、外部のネットワーク経由で取得するものであっても良い。コンバインの作業幅に亘る幅で走行目標ラインCに沿う作業領域Dがタッチパネル式画面端末VTに表示されるとともに、走行目標ラインCに対するコンバインの横ズレ及び方位ズレがタッチパネル式画面端末VTに表示される。また、図12及び図13に示される往復走行においても、例えば領域D7,D8が、コンバインの作業幅に亘る幅で作業領域Dとしてタッチパネル式画面端末VTに表示される構成であっても良い。
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
(1)上述の実施形態において、操向制御部37は、機体位置算出部31からの機体位置情報と、機体方位算出部32からの方位情報と、に基づいて走行装置11を制御するが、この実施形態に限定されない。操向制御部37は、機体位置算出部31からの機体位置情報に基づいて走行装置11を制御しても良いし、機体方位算出部32からの方位情報に基づいて走行装置11を制御しても良い。操向制御部37は、基準方位Bに沿うように、機体位置に基づいて走行装置11を自動的に操向制御しても良い。また、操向制御部37は、基準方位Bに基づいて設定された走行目標ラインCに沿うように、機体位置に基づいて走行装置11を自動的に操向制御しても良い。操向制御部37が基準方位Bに沿うように走行装置11を自動的に操向制御する場合、ライン設定部36が備えられない構成であっても良い。あるいは、ライン設定部36と操向制御部37とが一体的に構成されても良い。
(2)上述の実施形態では、図4に示されるように、位置A1,A2に基づいて基準方位B1が算出され、位置A3,A4に基づいて基準方位B2が算出されているが、この実施形態に限定されない。図4に示される例では、位置A1,A2に基づいて基準方位B1が算出されると、所定の方位だけ方位ずれした基準方位B2,B3が自動的に算出される構成であっても良い。このとき、方位ずれの量が手動で設定されても良いし、自動的に設定されても良い。
(3)上述の実施形態では、始点設定スイッチ21Aが操作されると位置Aaが記憶され、終点設定スイッチ21Bが操作されると位置Abが記憶され、基準方位算出部33は位置Aa,Abに基づいて基準方位Bを算出するが、この実施形態に限定されない。例えば、機体1が圃場の外周辺に沿って直進(または略直進、以下同じ)したら、その直進区間に基づいて基準方位Bが自動的に算出される構成であっても良い。例えば図4では、機体1が位置A1,A2に亘って直進することによって基準方位B1が自動的に算出され、機体1が位置A3,A4に亘って直進することによって基準方位B2が算出されても良い。また、機体1が位置A5,A6に亘って直進することによって基準方位B3が自動的に算出され、機体1が位置A7,A8に亘って直進することによって基準方位B4が算出されても良い。また、圃場の外周辺に沿う直進区間の全てに基づいて基準方位Bが自動的に算出される必要はなく、圃場の外周辺のうち少なくとも一辺に沿う直進区間に基づいて基準方位Bが自動的に算出される構成であっても良い。即ち、基準方位算出部33は、圃場の外周領域における人為操作での周回走行中に算出された機体位置に基づいて、圃場の外周辺のうち少なくとも一辺の延びる方位に沿う複数の基準方位Bを算出しても良い。
(4)上述した実施形態では、図4において、位置A1は本発明の『第一地点』であって、位置A2は本発明の『第二地点』であって、基準方位B1は本発明の『第一基準方位』であるが、この実施形態に限定されない。また、位置A3は本発明の『第三地点』であって、位置A4は本発明の『第四地点』であって、基準方位B2は本発明の『第二基準方位』であるが、この実施形態に限定されない。例えば、位置A3が本発明の『第一地点』であって、位置A4が本発明の『第二地点』であっても良い。この場合、基準方位B2が本発明の『第一基準方位』である。また、位置A5が本発明の『第三地点』であって、位置A6が本発明の『第四地点』であっても良い。この場合、基準方位B3が本発明の『第二基準方位』である。更に、位置A7が本発明の『第三地点』であって、位置A8が本発明の『第四地点』であっても良い。この場合、基準方位B4が本発明の『第二基準方位』である。
(5)上述の実施形態では、機体1の走行方位を算出する機体方位算出部32が備えられ、選択部35は、算出された機体1の走行方位に基づいて複数の基準方位Bのうちの一つを選択するが、この実施形態に限定されない。必要な場合には、選択部35は、人為操作に基づいて基準方位Bを選択しても良いし、外部のネットワークからの受信に基づいて基準方位Bを選択しても良い。
(6)上述の実施形態では、圃場の走行中に算出された複数の機体位置に基づいて基準方位Bを算出する基準方位算出部33が備えられているが、この実施形態に限定されない。例えば、基準方位算出部33が備えられない構成であっても良い。この場合、複数の基準方位Bが外部のネットワークから受信され、記憶部34に記憶される構成であっても良い。
(7)本発明の『機体位置算出部』は、機体位置算出部31と衛星測位モジュール80とが一体的に構成されたものであっても良い。また、機体方位算出部32が、機体位置算出部31と衛星測位モジュール80との少なくとも一方の位置情報に基づいて機体1の走行方位を算出する構成であっても良い。
(8)上述の実施形態では、基準方位Bに沿って、一方向と、一方向と180°反対方向と、の双方向に機体1の走行が可能であるが、基準方位Bに沿って一方向にのみ機体1の走行が可能な単方向の構成であっても良い。この場合、当該一方向と反対方向に自動走行制御を行う場合、当該一方向と180°反対方向の情報を有する別の基準方位Bが記憶部34に記憶されても良い。そして、当該一方向と180°反対方向へ直進する自動操向制御が行われる際に、選択部35が当該別の基準方位Bを選択する構成であっても良い。
(9)上述の実施形態において、図5に示されるように、操向制御部37は、機体1が位置Paから所定の距離以上に離れた場合に、自動操向制御を開始するが、この実施形態に限定されない。例えば、差分Δθが予め設定された閾値以内である状態が所定時間に亘って継続すると、操向制御部37が自動操向制御を開始する構成であっても良い。つまり、操向制御部37は、所定の条件が満たされており、かつ、選択部35によって選択された基準方位Bに沿って機体1が所定距離または所定時間に亘って直進したと判定した場合、走行装置11を自動的に操向制御可能な状態となる構成であっても良い。
(10)本発明の『作業装置』は、脱穀装置13と収穫装置15との一方であっても良い。
(11)上述の実施形態において、ライン設定部36は、条件判定部38から判定結果を取得するが、この実施形態に限定されない。例えば、条件判定部38が備えられない構成であっても良く、ライン設定部36は、条件判定部38から判定結果を取得しない構成であっても良い。また、ライン設定部36と条件判定部38とが一体的に構成されても良い。
(12)上述の実施形態で示された方位ずれ設定部39が備えられない構成であっても良い。この場合、基準方位算出部33は、算出済みの基準方位Bから90度(設定変更不能な固定値)だけ方位ずれした基準方位Bを算出するように構成されても良い。つまり、基準方位算出部33は、算出済みの基準方位Bから予め設定された値だけ方位ずれした基準方位Bを算出するように構成されても良い。
(13)図14に示される開始判定ルーチンでは示されていないが、自動操向制御のための所定の条件が満たされているかどうかの判定に、例えば押しボタンスイッチの人為操作が含まれても良い。また、図5のステップ#18で自動操向モードに移行する前に、押しボタンスイッチの人為操作が行われたかどうかの判定処理が行われ、押しボタンスイッチの人為操作が行われた場合に、ステップ#18で自動操向モードに移行する構成であっても良い。
(14)図5のステップ#12では、図14に示される開始判定ルーチンに基づいて、自動操向制御のための所定の条件が満たされているかどうかが判定されるが、この実施形態に限定されない。図5のステップ#11で機体1の位置が位置Paとして記憶された後、ステップ#12の処理が行われずにステップ#13で機体1の走行方位が取得される構成であっても良い。
(15)上述の制御ユニット30は、例えばASICやFPGA等によって構成されたハードウェア回路であっても良いし、コンピュータによって実行されるソフトウェアプログラムであっても良い。また、制御ユニット30は、このようなハードウェアとソフトウェアとの複合によって構成されても良い。
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。