以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。以下の説明において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向であり、X方向およびY方向は水平方向、Z方向は鉛直方向である。本明細書において、下方とは鉛直方向下方を意味し、上方とは鉛直方向上方を意味する。
図1は、第1実施形態による基板処理装置を示す図であって、図2のI−I線に沿った断面図である。図2は、第1実施形態による基板処理装置の主要部を示す図である。図2において、図1に示す外槽等の図示を省略する。図3は、第1実施形態による基板処理装置の主要部を示す図であって、図2のIII−III線に沿った断面図である。図3において、矢印Aは処理液供給部30から吐出される処理液3の流れを示す。
基板処理装置10は、基板2を処理液3に浸漬することにより、基板2を処理する。基板2は、例えばシリコンウエハ、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜を含む。処理液3は、例えばリン酸水溶液である。リン酸水溶液は、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜のうちシリコン窒化膜を選択的に除去するエッチング液である。基板処理装置10は、複数枚の基板2を同時に処理してよい。基板処理装置10は、二重槽20と、処理液供給部30と、温度調節部40と、温度測定部42と、基板保持部50と、移動機構部55と、制御部90とを備える。
二重槽20は、処理液3を貯留する内槽21と、内槽21からオーバーフローした処理液3を回収する外槽22とを有する。基板2は、内槽21の内部に貯留されている処理液3に浸漬されることにより、処理液3によって処理される。外槽22には、内槽21に処理液3を戻す循環管23が接続されている。循環管23の途中には、外槽22側から内槽側に向けて処理液3を送り出す循環ポンプ24、処理液3に含まれるパーティクルなどを捕集する循環フィルター25、循環管23を開閉する循環バルブ26などが設けられる。
制御部90は、循環バルブ26を開放すると共に循環ポンプ24を作動することにより、循環管23を介して外槽22から内槽21に向けて処理液3を送る。また、制御部90は、循環バルブ26を閉塞すると共に循環ポンプ24を停止することにより、処理液3の循環を停止する。本実施形態では、内槽21が特許請求の範囲に記載の処理槽に対応する。
処理液供給部30は、内槽21の内部に処理液3を供給する。処理液供給部30は、例えば循環管23に接続され、外槽22から抜き出した処理液3を内槽21の内部に供給する。処理液供給部30は、例えば図2に示すように、Y方向に間隔をおいて複数本の処理液供給管31を有する。
各処理液供給管31は、例えば図1および図3に示すように、基板保持部50の下方に水平に設けられる水平部32を有する。水平部32は、図2に示すようにZ方向視で基板保持部50で保持されている基板2と重なるように設けられる。水平部32は、X方向に延びており、その長手方向に間隔をおいて複数の吐出口33を有する。複数の吐出口33は、図2に示すようにZ方向視で基板保持部50と重ならないように設けられる。複数の吐出口33は、本実施形態では同一の開口径を有するが、異なる開口径を有してもよい。
複数の吐出口33は、それぞれ、真上に向けて処理液3を吐出する。これにより、カーテン状の上昇流が、内槽21の内部に形成される。内槽21の内部に層流が形成されるため、基板保持部50で保持されている基板2を均一に処理できる。基板2をより均一に処理する目的で、基板2と水平部32との距離ができるだけ近くなるように、水平部32は内槽21の底壁から上方に離間して配置される(図1および図3参照)。
温度調節部40(図1参照)は、処理液供給部30によって内槽21の内部に供給される処理液3の温度を調節する。温度調節部40は、処理液3を加熱するヒータを含む。温度調節部40は、例えば循環管23の途中に設けられ、循環管23を通過する処理液3を加熱する。尚、温度調節部40は、処理液3を冷却するクーラーをさらに含んでもよい。
温度測定部42は、内槽21の内部に貯留されている処理液3の温度を測定する。温度測定部42は、例えば熱電対などで構成される。温度測定部42は、基板保持部50の移動を妨げない位置に設置される。例えば、温度測定部42は、図2に示すようにZ方向視で基板保持部50の外側に設置される。
温度測定部42は、図1に示すように処理液供給管31の水平部32よりも上方の位置で、処理液3の温度を測定してよい。水平部32の上方で、基板2が処理液3によって処理されるためである。温度測定部42は、測定結果を示す信号を制御部90に出力する。
制御部90は、温度測定部42によって測定された温度(以下、単に「測定温度」とも呼ぶ。)が設定温度になるように、温度調節部40を制御する。その結果、内槽21の内部に貯留されている処理液3の温度は、設定温度に維持される。
尚、複数の温度測定部42が異なる位置の温度を測定する場合、測定温度の平均値が設定温度になるように、制御部90は温度調節部40を制御してもよい。平均値は、相加平均、加重平均などのいずれでもよい。また、平均値の代わりに、中央値などが用いられてもよい。
基板保持部50は、基板2を保持する。基板保持部50は、複数枚の基板2を同時に保持してよい。基板保持部50は、例えば図2に示すように、Y方向に間隔をおいて複数本の基板保持棒52を有する。各基板保持棒52にはX方向に間隔をおいて複数の溝が形成されており、各溝に基板2が挿入される。これにより、基板保持部50は、複数枚の基板2を、吐出口33の配列方向(本実施形態ではX方向)に間隔をおいて保持する。
移動機構部55は、基板保持部50を内槽21に対し移動させる。移動機構部55は、例えば、内槽21に対し固定されるガイド56と、ガイド56に沿って移動するスライダ57とを有する。スライダ57には基板保持部50が固定され、基板保持部50はスライダ57と共に移動する。スライダ57を駆動する駆動源としては例えば電動モータが用いられ、電動モータの回転運動はボールねじ等の運動変換機構によってスライダ57の直線運動に変換される。
移動機構部55は、基板保持部50を、図1に実線で示す処理位置と、図1に二点鎖線で示す待機位置との間で移動させる。待機位置は、処理位置の上方に設定される。基板保持部50が処理位置にあるとき、基板保持部50に保持されている複数の基板2のそれぞれの全体が処理液3に浸漬される。一方、基板保持部50が待機位置にあるとき、基板保持部50に保持されている複数の基板2のそれぞれの全体が外気に曝される。基板保持部50は、待機位置で処理前の基板2を外部搬送装置から受け取り、次いで処理位置まで下降され、所定時間経過後に再び待機位置まで上昇され、待機位置で処理後の基板2を外部搬送装置に引き渡す。その後、同じ動作が繰り返される。
尚、基板保持部50の移動方向は、本実施形態ではZ方向であるが、Z方向の他に、Y方向およびX方向のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。また、基板保持部50は、回転移動可能とされてもよい。基板保持部50を回転させる回転軸の軸方向は、Z方向、Y方向、X方向のいずれでもよく、これらの方向の複数の方向であってもよい。
制御部90は、例えばコンピュータで構成され、図1に示すようにCPU(Central Processing Unit)91と、メモリなどの記憶媒体92と、入力インターフェース93と、出力インターフェース94とを有する。制御部90は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御部90は、入力インターフェース93で外部からの信号を受信し、出力インターフェース94で外部に信号を送信する。
制御部90のプログラムは、情報記憶媒体に記憶され、情報記憶媒体からインストールされる。情報記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。尚、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、インストールされてもよい。
図4は、第1実施形態による制御部の構成要素を機能ブロックで示す図である。図4に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
図4に示すように、制御部90は、温度制御部95、基板移動制御部96、撹拌制御部97などを有する。温度制御部95は、温度測定部42による測定温度が設定温度になるように、温度調節部40を制御する。基板移動制御部96は、移動機構部55を制御することにより、基板保持部50を図1に実線で示す処理位置と図1に二点鎖線で示す待機位置との間で移動させる。撹拌制御部97は、後述の撹拌部60を制御することにより、内槽21の内部に貯留されている処理液3を撹拌する。
図5は、第1実施形態による基板処理装置の撹拌動作を示す図である。撹拌部60は、内槽21の内部に貯留されている処理液3を撹拌するものである。撹拌部60は、例えば基板保持部50および移動機構部55で構成される。撹拌制御部97は、移動機構部55を制御することにより、図5に矢印で示すように内槽21の内部で基板保持部50を移動させる。これにより、内槽21の内部に貯留されている処理液3が撹拌される。撹拌専用のインペラが内槽21の内部に設置される場合に比べ、部品点数を削減できる。また、インペラの回転軸を挿通させる穴を内槽21の壁にあける必要がなく、内槽21の改造が不要である。
基板保持部50は、図5に示すように基板2を保持していないときに、内槽21の内部に貯留されている処理液3を撹拌する。一方、基板保持部50は、基板2を保持しているときには図1に実線で示す処理位置で停止され、内槽21の内部に貯留されている処理液3を撹拌しない。基板保持部50で基板2を保持しているときに処理液3を撹拌しないのは、内槽21の内部に層流を形成し、基板2を均一に処理するためである。
基板保持部50を構成する各基板保持棒52は、内槽21の内部に貯留されている処理液3を撹拌する間、内槽21の内部に貯留されている処理液3の液面よりも下で移動させられてよい。各基板保持棒52は、外気に触れないため、外気による温度低下を防止できる。各基板保持棒52は、処理液3に触れるため、処理液3と同じ温度に維持される。そのため、処理液3と同じ温度の基板保持棒52で、処理液3を撹拌できる。
次に、上記構成の基板処理装置10を用いた基板処理方法について図6を参照して説明する。図6は、第1実施形態による基板処理方法を示すフローチャートである。図6に示すステップS101以降の処理は、循環管23を介して外槽22から内槽21に処理液3を戻しながら行われる。図6に示すステップS101以降の処理は、制御部90が設定温度Tを変更する指令を受け取ったときに開始される。この指令は、例えばタッチパネルなどの入力装置で受け取る。
図6に示すステップS101では、内槽21の内部に貯留されている処理液3の設定温度Tを変更する。設定温度Tの変更は、例えば基板2の処理を一時停止するときや基板2の処理を再開するときに行われる。
基板2の処理を一時停止するときには、設定温度Tは処理温度T2から待機温度T1(T1<T2)に降温される。処理液3の温度を設定温度に維持するための消費エネルギーを低減できる。一方、基板2の処理を再開するときには、設定温度Tは待機温度T1から処理温度T2に昇温される。
待機温度T1が低いほど、処理液3の温度を設定温度に維持するための消費エネルギーを低減できる。一方で、待機温度T1が高いほど、基板2の処理を再開するときに処理液3の測定温度が待機温度T1から処理温度T2に戻るまでの待ち時間を短縮できる。待機温度T1は、消費エネルギー及び待ち時間に基づき、設定される。
処理液3としてリン酸水溶液が用いられる場合、処理温度T2はリン酸水溶液の沸点に設定される。一方、待機温度T1は、リン酸水溶液の沸点よりも低い温度、例えば内槽21からの処理液3のふきこぼれを抑制する温度に設定される。これにより、基板2の処理を一時停止している間に、内槽21から処理液3がふきこぼれることを抑制できる。
図6に示すステップS101では、図7に示す時刻t1で、設定温度Tを待機温度T1から処理温度T2に変更する。変更後の設定温度Tと測定温度との偏差がゼロになるように、温度調節部40が循環管23を流れる処理液3の温度を調節する。その結果、内槽21の内部に貯留されている処理液3の測定温度は、図7に示す時刻t2で処理温度T2に達し、その後、処理温度T2に維持される。
次いで、図6に示すステップS102では、内槽21の内部に貯留されている処理液3を撹拌する。処理液3の撹拌は、設定温度Tの変更後(時刻t1の後)に行われればよく、変更後の設定温度Tに測定温度が達する前(時刻t2の前)に行われてもよい。また、処理液3の撹拌は、設定温度Tの変更後(時刻t1の後)に行われる限り、設定温度Tの変更前(時刻t1の前)から行われてもよい。処理液3の撹拌は、処理液3に基板2を浸漬する時刻t3の前に終了させられる。
次いで、図6に示すステップS103では、図7に示す時刻t3で、内槽21の内部に貯留されている処理液3に基板2を浸漬する。この浸漬は、測定温度が処理温度T2に達した時刻t2以降に行われる。制御部90は、内槽21の内部に貯留されている処理液3に基板2を浸漬した後、今回の処理を終了する。その後、制御部90は、所定時間の経過後に基板2を処理液3から引き上げ、処理後の基板2を基板保持部50から外部搬送装置に引き渡す。
その後、制御部90は、(1)処理前の基板2を外部搬送装置から基板保持部50で受け取り、(2)受け取った基板2を内槽21の内部に貯留されている処理液3に浸漬し、(3)所定時間の経過後に基板2を処理液3から引き上げ、(4)処理後の基板2を基板保持部50から外部搬送装置に引き渡す。上記(1)〜(4)の一連の処理を、制御部90が繰り返し行う。
制御部90は、上記(1)〜(4)の一連の処理を繰り返す間、内槽21の内部に貯留されている処理液3の測定温度を処理温度T2に維持する。制御部90は、上記(1)〜(4)の一連の処理を一時停止するとき、設定温度Tを処理温度T2から待機温度T1に変更する。その後、制御部90は、上記(1)〜(4)の一連の処理を再開するときに、再び図6に示すステップS101以降の処理を行う。
図7は、第1実施形態による内槽の内部に貯留されている処理液の測定温度の時間変化を示す図である。図7において、実線は、内槽21の内部に貯留されている処理液3の撹拌(以下、単に「処理液3の撹拌」とも呼ぶ。)を時刻t1から時刻t3までの間に行う場合の処理液3の測定温度の時間変化を示す。一方、二点鎖線は、処理液3の撹拌を時刻t1から時刻t3までの間に行わない場合の処理液3の測定温度の時間変化を示す。尚、時刻t3において処理液3に基板2を浸漬すると、処理液3の測定温度が低下するのは、浸漬直前の基板2の温度が処理液3の温度よりも低いためである。
制御部90が時刻t1で設定温度Tを待機温度T1から処理温度T2に変更すると、変更後の設定温度Tと測定温度との偏差がゼロになるように、温度調節部40が循環管23を流れる処理液3の温度を加熱する。その結果、内槽21の内部に貯留されている処理液3の測定温度は、時刻t1から時刻t2にかけて徐々に上昇し、時刻t2で処理温度T2に達し、その後、処理温度T2に維持される。
ところで、時刻t1以降に温度調節部40によって加熱された処理液3は、処理液供給部30によって内槽21の内部に供給される。処理液供給部30は、水平部32に設けられる複数の吐出口33から上向きに処理液3を吐出する。これにより、カーテン状の上昇流が内槽21の内部に形成され、内槽21の内部に層流が形成される。
そのため、仮に撹拌制御部97が時刻t1から時刻t3までの間に処理液3の撹拌を実施しない場合、水平部32よりも下の位置に、処理温度T2よりも低温の処理液3が滞留する。低温の処理液3は、高温の処理液3よりも大きい密度を有するため、水平部32よりも下の位置に滞留し続ける。
本実施形態によれば、撹拌制御部97が時刻t1から時刻t3までの間に処理液3の撹拌を実施するため、時刻t3までに内槽21の内部における処理液3の温度ムラが低減される。そのため、時刻t3で処理液3に基板2を浸漬し、処理液3の温度が一時的に低下しても、処理液3の温度が処理温度T2に直ぐに戻る。予め設定された処理温度T2の処理液3で基板2を処理することができ、基板2の処理品質を向上できる。
撹拌制御部97は、処理液3の撹拌を時刻t3の前に終了させてよい。基板移動制御部96は、時刻t3で内槽21の内部に貯留されている処理液3に基板2を浸漬してから、基板2を処理液3から引き上げるまでの間、基板保持部50を処理位置で停止させる。これにより、内槽21の内部に層流を形成でき、基板2を均一に処理できる。
尚、撹拌制御部97は、内槽21の内部に貯留されている処理液3の温度が均一か否かを確認しながら、処理液3の温度が均一になるまで処理液3の撹拌を行ってよい。また、基板移動制御部96は、内槽21の内部に貯留されている処理液3の温度が均一か否かを確認し、処理液3の温度が均一であることを確認した後で、図1に二点鎖線で示す待機位置から図1に実線で示す処理位置への基板保持部50の移動を行ってよい。
処理液3の温度が均一か否かは、例えば複数の温度測定部42を用いて確認できる。複数の温度測定部42は、異なる位置で、処理液3の温度を測定する。例えば、複数の温度測定部42は、処理液供給管31の水平部32よりも上の位置と、処理液供給管31の水平部32よりも下の位置で、処理液3の温度を測定してよい。異なる位置で測定された測定温度のばらつきに基づき、処理液3の温度の均一性を評価できる。
処理液3の温度が均一か否かは、1つの温度測定部42のみを用いて確認することも可能である。処理液3の温度が不均一な場合、低温の処理液3と高温の処理液3とが撹拌によって混じり合うため、撹拌中に測定温度が上下にふらつく。このふらつきに基づき、処理液3の温度の均一性を評価できる。
図8は、第2実施形態による基板処理装置の主要部を示す図である。図9は、第2実施形態による基板処理装置の主要部を示す別の図である。図8および図9において、矢印A1は第1吐出口34から吐出される処理液3の流れを示し、矢印A2は第2吐出口35から吐出される処理液3の流れを示す。以下、主に上記第1実施形態との相違点について図8および図9を参照して説明する。
本実施形態の基板処理装置10Aは撹拌部60Aを有し、撹拌部60Aは吐出方向変更部61を有する。吐出方向変更部61は、処理液供給部30が内槽21の内部に吐出する流体6の吐出方向を変更する。流体6としては、後述するように特に限定されないが、例えば処理液3が用いられてよい。
処理液供給部30は、吐出方向の変更のため、本実施形態では吐出方向が異なる第1吐出口34および第2吐出口35を有する。第1吐出口34は、上記第1実施形態の吐出口33に対応する。第1吐出口34と第2吐出口35とは、本実施形態ではZ方向視で重なるように設けられるが、Z方向視でX方向にずれるように設けられてもよい。
第1吐出口34は、処理液供給管31の水平部32に、水平部32の長手方向に間隔をおいて複数設けられる。複数の第1吐出口34は、それぞれ、真上に処理液3を吐出することによりカーテン状の上昇流を形成する。複数の第1吐出口34は、本実施形態では同一の開口径を有するが、異なる開口径を有してもよい。
一方、第2吐出口35は、処理液供給管31の水平部32に、水平部32の長手方向に間隔をおいて複数設けられる。複数の第2吐出口35は、それぞれ、真下に処理液3を吐出することにより、水平部32の下方に滞留する処理液3を撹拌する。複数の第2吐出口35は、本実施形態では同一の開口径を有するが、異なる開口径を有してもよい。また、複数の第2吐出口35は、本実施形態では全て同じ方向に処理液3を吐出するが、全て同じ方向に処理液3を吐出しなくてもよい。一の第2吐出口35と他の一の第2吐出口35とは、互いに異なる方向に処理液3を吐出してもよい。第2吐出口35は、第1吐出口34と異なる方向に処理液3を吐出すればよい。
処理液供給管31は、単管であってもよいが、本実施形態では二重管である。処理液供給管31は、第1吐出口34および第2吐出口35が形成される外管36と、外管36の内部に設けられる内管37とを有する。
処理液供給部30は、吐出方向の変更のため、処理液供給管31の内部を、第1吐出口34から吐出される処理液3が通る第1流路38と、第2吐出口35から吐出される処理液3が通る第2流路39とに分割する仕切壁62を有してよい。仕切壁62は、例えば、内管37の外側で且つ外管36の内側に形成される空間を、第1流路38と第2流路39とに分割する。
処理液供給管31は、処理液3の供給源(例えば循環管23)に、第1分岐管28と第2分岐管29を介して接続される。第1分岐管28と第2分岐管29とは、分岐点27において循環管23から二股に分岐する。第1分岐管28は第1流路38に処理液3を供給し、第2分岐管29は第2流路39に処理液3を供給する。
吐出方向変更部61は、第1吐出口34および第2吐出口35のそれぞれから吐出される流体6の吐出量を変更する吐出量変更部63を含む。流体6としては、後述するように特に限定されないが、例えば処理液3が用いられてよい。
吐出量変更部63は、例えば、第1分岐管28および第2分岐管29のそれぞれを流れる処理液3の流量を変更する流量変更部64を有する。流量変更部64は、例えば第1分岐管28の途中に設けられる第1流量制御弁65と、第2分岐管29の途中に設けられる第2流量制御弁66とで構成される。
制御部90が第1流量制御弁65を開放すると、処理液3が第1分岐管28の内部を流れ、処理液3が第1吐出口34から上向きに吐出される。一方、制御部90が第1流量制御弁65を閉塞すると、処理液3が第1分岐管28の内部を流れず、処理液3が第1吐出口34から吐出されない。
また、制御部90が第2流量制御弁66を開放すると、処理液3が第2分岐管29の内部を流れ、処理液3が第2吐出口35から下向きに吐出される。一方、制御部90が第2流量制御弁66を閉塞すると、処理液3が第2分岐管29の内部を流れず、処理液3が第2吐出口35から吐出されない。
尚、流量変更部64は、本実施形態では第1分岐管28の途中に設けられる第1流量制御弁65と第2分岐管29の途中に設けられる第2流量制御弁66とで構成されるが、第1分岐管28と第2分岐管29との分岐点27に設けられる三方弁で構成されてもよい。三方弁は、分岐点27における処理液3の流れ方向を制御する。三方弁は、分岐点27における処理液3の流れ方向のみならず、流量も制御してもよい。
吐出方向変更部61は、第1吐出口34および第2吐出口35のそれぞれから吐出される処理液3の吐出量を変更することにより、処理液供給部30が内槽21の内部に吐出する処理液3の吐出方向を変更する。例えば、処理液3への基板2の浸漬時には、処理液供給部30は処理液3を上方向のみに吐出する。一方、処理液3の撹拌時には、処理液供給部30は処理液3を上下方向に吐出する。尚、処理液3の撹拌時には、処理液供給部30は処理液3を下方向のみに吐出してもよい。
撹拌制御部97(図4参照)は、吐出方向変更部61を制御することにより、設定温度Tの変更後、内槽21の内部に貯留されている処理液3への基板2の浸漬前に、浸漬時とは処理液供給部30からの処理液3の吐出方向を変更することにより、処理液3を撹拌する。
従って、上記第1実施形態と同様に、処理液3の撹拌を図7に示す時刻t1から時刻t3までの間に実施でき、時刻t3までに内槽21の内部における処理液3の温度ムラを低減できる。そのため、時刻t3で処理液3に基板2を浸漬し、処理液3の温度が一時的に低下しても、処理液3の温度が処理温度T2に直ぐに戻る。予め設定された処理温度T2の処理液3で基板2を処理でき、基板2の処理品質を向上できる。
尚、処理液供給部30は、吐出方向の変更のため、本実施形態では吐出方向が異なる第1吐出口34および第2吐出口35を有するが、水平部32の中心線を中心に水平部32を回転自在に支持する機構を有してもよい。この場合、吐出方向変更部61は、水平部32を回転させる回転モータを有する。水平部32を回転させることにより、水平部32に設けられる一の吐出口を上向きと下向きとに変更でき、吐出方向を変更できる。
ところで、処理液供給部30は、処理液3を内槽21の内部に供給するが、処理液3とは異なるものも内槽21の内部に供給してもよい。処理液3とは異なるものが、流体6として内槽21の内部に供給されてもよい。処理液3とは異なるものは、処理液3の撹拌時に内槽21の内部に供給される。
そこで、第1分岐管28は、第1流量制御弁71および第1温度調節器72が途中に設けられる第1配管73を介して、処理液3とは異なる流体を供給する第1供給源74に接続されてよい。処理液3とは異なる流体は、液体でもよいし、気体でもよい。本実施形態では、処理液3とは異なる流体として、窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。
制御部90が第1流量制御弁71を開くと、不活性ガスが第1吐出口34から内槽21の内部に供給される。不活性ガスと処理液3を混ぜた混合流体が第1吐出口34から内槽21の内部に供給されてもよい。いずれにしても、バブリングによる高い撹拌効果が得られる。内槽21の内部に供給される不活性ガスの温度は、第1温度調節器72によって調節されてよい。尚、第1温度調節器72は無くてもよい。
一方、制御部90が第1流量制御弁71を閉じると、不活性ガスは第1吐出口34から内槽21の内部に供給されない。第1流量制御弁71、第1温度調節器72、第1配管73および第1供給源74で、第1吐出口34から吐出する流体6の材料を変更する第1流体変更部110が構成される。なお、第1流体変更部110の構成は特に限定されない。例えば、第1流体変更部110は、第1温度調節器72を有してもよいし、第1温度調節器72を有しなくてもよい。
同様に、第2分岐管29は、第2流量制御弁76および第2温度調節器77が途中に設けられる第2配管78を介して、処理液3とは異なる流体を供給する第2供給源79に接続されてよい。処理液3とは異なる流体は、液体でもよいし、気体でもよい。本実施形態では、処理液3とは異なる流体として、窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。
制御部90が第2流量制御弁76を開くと、不活性ガスが第2吐出口35から内槽21の内部に供給される。不活性ガスと処理液3を混ぜた混合流体が第2吐出口35から内槽21の内部に供給されてもよい。いずれにしても、バブリングによる高い撹拌効果が得られる。内槽21の内部に供給される不活性ガスの温度は、第2温度調節器77によって調節されてよい。尚、第2温度調節器77は無くてもよい。
一方、制御部90が第2流量制御弁76を閉じると、不活性ガスは第2吐出口35から内槽21の内部に供給されない。第2流量制御弁76、第2温度調節器77、第2配管78および第2供給源79で、第2吐出口35から吐出する流体6の材料を変更する第2流体変更部120が構成される。なお、第2流体変更部120の構成は特に限定されない。例えば、第2流体変更部120は、第2温度調節器77を有してもよいし、第2温度調節器77を有しなくてもよい。
尚、第2吐出口35から吐出される流体6は、本実施形態では処理液3、不活性ガス、および処理液3と不活性ガスを混ぜた混合流体の中から選択されるが、不活性ガスのみであってもよい。この場合、第2分岐管29は無くてよく、第2配管78が第2流路39に不活性ガスを供給してよい。
図10は、第3実施形態による基板処理装置の主要部を示す図である。図11は、第3実施形態による基板処理装置の主要部を示す別の図であって、図10のXI−XI線に沿った断面図である。図11において矢印Aは処理液供給部30から吐出される処理液3の流れを示す。図10および図11において矢印Bは流体供給部80から吐出される流体8の流れを示す。以下、主に上記第1実施形態および上記第2実施形態との相違点について図10および図11を参照して説明する。
本実施形態の基板処理装置10Bは撹拌部60Bを有し、撹拌部60Bは流体供給部80を有する。流体供給部80は、処理液供給部30よりも下方から内槽21の内部に流体8を供給する。流体供給部80の吐出口83は、処理液供給部30の吐出口33よりも下方に設けられる。流体供給部80は、処理液供給部30とは異なり、処理液3の撹拌専用として用いられてよい。
流体供給部80は、例えば図10および図11に示すように、複数本の流体供給管81を有する。流体供給管81は、例えば内槽21のY方向に対向する一対の側壁のそれぞれに設けられ、Y方向に間隔をおいて一対設けられる。一対の流体供給管81は、同時に流体8を供給してもよいし、交互に流体8を供給してもよい。
各流体供給管81は、図11に示すように処理液供給管31よりも下方に水平に設けられる水平部82を有する。水平部82は、図10に示すようにZ方向視で基板保持部50と重ならないように設けられる。例えば水平部82は、内槽21の側壁に設けられる。水平部82は、X方向に延びており、その長手方向に間隔をおいて複数の吐出口83を有する。複数の吐出口83は、図11に示すように内槽21の側壁の下端部に設けられる。各吐出口83は、図11に示すように処理液供給管31よりも下方に設けられればよく、図11に示すように水平に流体8を吐出してもよいし、下向きに流体8を吐出してもよい。
各流体供給管81は、複数の吐出口83から流体8を吐出する。各吐出口83から吐出された流体8は、図11に示すように内槽21の底壁に沿って流れ、内槽21の底壁近傍に滞留する処理液3を撹拌する。
各流体供給管81は、図11に示すように内槽21の底壁に対し平行に流体8を吐出してよい。内槽21の底壁が水平である場合、各吐出口83からの流体8の吐出方向は水平方向とされる。流体8が内槽21の底壁に衝突することを抑制でき、流体8の減速を抑制できる。
尚、内槽21の底壁は、本実施形態では図11に示すようにX方向視で水平であるが、X方向視でV字状であってもよい。この場合、各吐出口83からの流体8の吐出方向は、X方向視で底壁に対し平行とされ、底壁の谷部に向けて斜め下方向とされてよい。底壁の谷部に溜まる処理液3を撹拌できる。
各流体供給管81は、図10に示すように、流量制御弁84が途中に設けられる配管85を介して、処理液3の供給源(例えば循環管23)と接続されてよい。制御部90が流量制御弁84を開くと、処理液3が流体供給管81から内槽21の内部に供給される。一方、制御部90が流量制御弁84を閉じると、処理液3が流体供給管81から内槽21の内部に供給されない。一対の流体供給管81は、同時に処理液3を供給してもよいし、交互に処理液3を供給してもよい。
尚、流体供給管81は、本実施形態では内槽21のY方向に対向する一対の側壁のそれぞれに設けられるが、内槽21のX方向に対向する一対の側壁のそれぞれに設けられてもよい。この場合、流体供給管81の水平部82の長手方向はY方向とされる。
尚、流体供給管81の本数は、2本には限定されず、3本以上でもよいし、1本でもよい。例えば、流体供給管81は、内槽21の4つの側壁のそれぞれに設けられてもよい。また、流体供給管81は、内槽21の4つの側壁のうち1つのみに設けられてもよい。
少なくとも1本の流体供給管81が、内槽21の互いに対向する一対の側壁の一方から他方に向けて流体8を吐出する。内槽21の底壁全体に亘って、内槽21の底壁近傍の処理液3を撹拌でき、処理液3の温度ムラをより低減できる。
各流体供給管81は、図10に示すように、流量制御弁86および温度調節器87が途中に設けられる配管88を介して、処理液3とは異なる流体の供給源89に接続されてよい。処理液3とは異なる流体は、液体でもよいし、気体でもよい。本実施形態では、処理液3とは異なる流体として、窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。
制御部90が流量制御弁86を開くと、不活性ガスが流体供給管81から内槽21の内部に供給される。内槽21の内部に供給される不活性ガスの温度は、温度調節器87によって調節されてよい。尚、温度調節器87は無くてもよい。一方、制御部90が流量制御弁86を閉じると、不活性ガスが流体供給管81から内槽21の内部に供給されない。一対の流体供給管81は、同時に不活性ガスを供給してもよいし、交互に不活性ガスを供給してもよい。
各流体供給管81が内槽21の内部に供給する流体8としては、処理液3、不活性ガス、および処理液3と不活性ガスの混合流体のうち、いずれか1つのみが用いられてもよいし、複数が適宜切り替えて用いられてもよい。
流量制御弁84、流量制御弁86および2本の配管85、88の合流する合流部131で、流体8の材料を切り替える切替部130が構成される。尚、切替部130の構成は特に限定されない。例えば開閉弁の代わりに、3方切替弁などを用いることにより、流量制御弁の数は低減できる。
撹拌制御部97(図4参照)は、流体供給部80を制御することにより、設定温度Tの変更後、内槽21の内部に貯留されている処理液3への基板2の浸漬前に、流体供給部80によって内槽21の底壁に溜まる処理液3を撹拌する。
従って、上記第1実施形態と同様に、処理液3の撹拌を図7に示す時刻t1から時刻t3までの間に実施でき、時刻t3までに内槽21の内部における処理液3の温度ムラを低減できる。そのため、時刻t3で処理液3に基板2を浸漬し、処理液3の温度が一時的に低下しても、処理液3の温度が処理温度T2に直ぐに戻る。予め設定された処理温度T2の処理液3で基板2を処理でき、基板2の処理品質を向上できる。
尚、処理液3に基板2が浸漬される間、流体供給部80による処理液3の撹拌は行われず、処理液供給部30による処理液3の供給が行われる。これにより、内槽21の内部に層流が形成されるため、基板保持部50で保持されている基板2を均一に処理できる。
以上、基板処理装置および基板処理方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
上記実施形態の基板2はシリコンウエハ、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜を含むが、基板2の構成は特に限定されない。例えば、基板2は、シリコンウエハの代わりに、炭化珪素基板、サファイア基板、ガラス基板などを含んでもよい。
上記実施形態の処理液3はリン酸水溶液であるが、処理液3の種類は特に限定されない。処理液は、例えばフッ酸や硝酸等のエッチング液でもよいし、エッチング後の基板2を洗浄するリンス液等であってもよい。エッチング液は、複数種類の薬液の混合液でもよい。
上記実施形態では内槽21が特許請求の範囲に記載の処理槽に対応するが、処理槽は二重槽20の一部ではなくてもよく、単槽であってもよい。
上記実施形態の待機温度T1は処理温度T2よりも低いが、待機温度T1は処理温度T2よりも高くてもよい。この場合、処理液3の撹拌は、処理液3の設定温度Tの降温後、処理液3への基板2の浸漬前に行われる。
上記第1実施形態の撹拌部60、上記第2実施形態の撹拌部60A、および上記第3実施形態の撹拌部60Bは、単独で用いられてもよいし、組合わせて用いられてもよい。組合せの数は2つ以上であればよい。