JP2019123936A - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気特性と被膜密着性に優れるフォルステライト被膜を有さない方向性電磁鋼板を、仕上焼鈍炉を損傷することなく製造する方法を提案する。【解決手段】Si含有鋼スラブを熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍した後または熱延板焼鈍することなく、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、該冷延板に一次再結晶焼鈍または脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布、乾燥し、仕上焼鈍するフォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法において、上記焼鈍分離剤として、MgOを主成分とし、助剤として融点が1150℃以下の酸化物を0.05〜20mass%の範囲で含有するものを用いることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、フォルステライト被膜を有さない方向性電磁鋼板の製造方法に関し、具体的には、磁気特性と被膜密着性に優れるフォルステライト被膜を有さない方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機等の鉄心材料として広く用いられる軟磁性材料であり、鉄の磁化容易軸である<001>方位が、鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有することで、高磁束密度で低鉄損の優れた磁気特性を有することが特徴である。このような集合組織は、製造工程の仕上焼鈍において二次再結晶を発現させることによって、いわゆるゴス方位と称される(110)<001>方位の結晶粒を優先的に巨大成長させることで得ることができる。
方向性電磁鋼板の鉄損特性は、鋼板表面に引張張力を印加することで、より向上する(鉄損が低減する)ことが知られている。鋼板表面に引張張力を印加する方法としては、鋼板表面に厚さ2μm程度のフォルステライト被膜を形成した後、さらにその上に、厚さ2μm程度の珪リン酸塩を主体とする張力絶縁被膜を形成する方法が一般的である。この方法は、鋼板と比べて低い熱膨張率を有する珪リン酸塩質の被膜を高温で形成し、それを室温まで降温したときの鋼板と被膜との間の熱膨張率差を利用して鋼板に引張張力を付与する方法である。なお、上記珪リン酸塩の被膜は、方向性電磁鋼板に必須の絶縁被膜としても機能し、地鉄中の局部的な渦電流の発生を防止する。
また、方向性電磁鋼板の鉄損特性は、化学研磨や電解研磨によって仕上焼鈍後の鋼板表面からフォルステライト被膜を除去して平滑化(鏡面化)した上で、さらにその平滑化した表面上に張力絶縁被膜を被成し、鋼板表面に引張張力を印加することで、より向上することが知られている。これは、鋼板の地鉄とフォルステライト層との界面の凹凸を無くすことによって、磁壁の移動を容易にしてヒステリシス損を低減することで、鉄損特性を改善しようとする技術である。
ところで、地鉄と珪リン酸塩層の間にあるフォルステライト被膜は、上記地鉄とフォルステライト被膜の界面に形成される凹凸に起因したアンカー効果によって鋼板と密着している。そのため、鋼板表面の平滑化は、被膜の密着性を大きく低下させる。特に、珪リン酸塩や酸化物は密着性が低く、平滑化した鋼板表面に直接、珪リン酸塩や酸化物層の被膜を形成することはできない。
この問題に対して、例えば、特許文献1には、鋼板表面の酸化物を除去して平滑化し、鏡面に仕上げた後、CVDやPVDなどのドライプレーティング法によってTiN等の窒化物や、炭化物、酸化物等の張力付与被膜を成膜し、鋼板表面に大きな引張張力を印加することによって、高い被膜密着性と低鉄損を両立する技術が開示されている。しかし、この特許文献1の技術は、鋼板表面の平滑化法として、酸洗による化学研磨を用いているため、製品歩留まりの大きな低下を招くという問題があった。
そこで、特許文献2には、焼鈍分離剤に塩化物等のハロゲン化物を添加し、フォルステライト被膜の形成を抑止することによって、歩留りの低下を招くことなく、仕上焼鈍において鋼板表面を平滑化する技術が提案されている。
特開平01−176034号公報 特開2004−277765号公報
しかしながら、上記特許文献2の技術は、焼鈍分離剤中に塩化物等を添加しているため、仕上焼鈍中に塩素ガスが発生し、これによって仕上焼鈍炉が損傷するという問題があり、工業的な実施には不適当であった。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気特性と被膜密着性に優れるフォルステライト被膜を有さない方向性電磁鋼板を、仕上焼鈍炉を損傷することなく製造する方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向け、特許文献2の技術において焼鈍分離剤中に添加している塩化物の役割を調査し、この塩化物と同様の特性を有する物質を焼鈍分離剤中に添加することで、仕上焼鈍炉を損傷することなくフォルステライト被膜を有さない方向性電磁鋼板を製造する方法について鋭意検討を重ねた。その結果、焼鈍分離剤中に添加する助剤として特定の酸化物、具体的には、融点が1150℃以下のTl,Bi,CdおよびInの酸化物を用いることで、仕上焼鈍炉を損傷することなく、仕上焼鈍後の鋼板表面の平滑化を達成することができ、ひいては、磁気特性と被膜密着性が共に優れる方向性電磁鋼板を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、Si含有鋼スラブを熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍した後または熱延板焼鈍することなく、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、該冷延板に一次再結晶焼鈍または脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布、乾燥し、仕上焼鈍するフォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法において、上記焼鈍分離剤として、MgOを主成分とし、助剤として融点が1150℃以下の酸化物を0.05〜20mass%の範囲で含有するものを用いることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法に用いる上記助剤は、酸化物中に占めるTl,Bi,CdおよびInの元素の合計モル比率が0.10以上のものであることが好ましい。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記仕上焼鈍後、フォルステライト被膜を有しない鋼板の地鉄表面に、窒化物または炭窒化物からなる被膜を成膜した後、さらに、上記窒化物または炭窒化物からなる被膜の上に張力絶縁被膜を被成することを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法における上記窒化物は、TiCrNおよびAlCrNのいずれかであることを特徴とする。
本発明によれば、磁気特性と被膜密着性に優れるだけでなく、仕上焼鈍炉を損傷することなく、また、仕上焼鈍後の鋼板を研磨することなく、仕上焼鈍においてフォルステライト被膜を有さない地鉄の表面が平滑(鏡面)な方向性電磁鋼板の製造が可能となるので、産業上、奏する効果は極めて大である。
張力絶縁被膜の膜厚と、鋼板表面の引張張力との関係を示すグラフである。 本発明の方向性電磁鋼板の被膜構造を示す被膜断面図である。 従来技術の方向性電磁鋼板の被膜構造を示す被膜断面図である。
まず、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法における基本的技術思想について説明する。
特許文献2に開示の従来技術においては、MgOを主体とする焼鈍分離剤中に塩化物を添加することで、仕上焼鈍時に、鋼板表面を平滑化(鏡面化)していた。その鏡面化のメカニズムについて、発明者らは、数多くの実験を重ねて解明した結果、以下のように考えている。
特許文献2で用いている塩化物は、融点が低く、仕上焼鈍中のフォルステライト形成前に融解して液化する。液化した塩化物は、サブスケールの粒界を通り、サブスケールの下部まで入り込む。また、この液化した塩化物は、MgOの拡散を促進する他、化学反応によりMgイオンと酸素イオンを発生するため、サブスケールの下部が急速にフォルステライト化する。そのため、フォルステライトの下部にはアンカーとなる凹凸が形成されないため、仕上焼鈍中にフォルステライト被膜が剥離する。その結果、サーマルエッチングにより、さらに表面が平滑化する。
次に、発明者らは、塩化物と同様の効果を持つ助剤について検討した。特許文献2で用いている塩化物の融点は、およそ200〜500℃であるが、フォルステライト被膜のアンカーとなる凹凸が形成されるのは、さらに高温である。そこで、塩化物よりも高温の融点を有する様々な化合物を助剤として焼鈍分離剤中に添加し、鏡面化に有効な物質を探索した。その結果、融点が1150℃以下である酸化物を助剤として焼鈍分離剤中に添加することにより、特許文献2で用いている塩化物と同様、仕上焼鈍後の鋼板表面を平滑化できることがわかった。さらに、これらの酸化物は、高温でのみ分解して酸素を放出するため、仕上焼鈍の初期段階における地鉄表面の酸化を引き起こすことがない。そのため、塩化物を用いた場合に比べ、Goss方位への集積度を高めることができ、塩化物を添加するよりも、より高い磁束密度が得られることがわかった。
ここで、上記酸化物の融点を1150℃以下としたのは、仕上焼鈍における二次再結晶を発現させるためにインヒビターを利用する技術では、二次再結晶させた後、インヒビター形成成分や不純物を除去するために純化処理を施すのが普通であるが、該純化処理の温度は1150℃超えの温度で行われるのが一般的であり、また、この温度域で、フォルステライトも形成される。そのため、融点が1150℃以下の酸化物であれば、純化処理中に液化し、塩化物と同様の効果が期待できるからである。なお、酸化物の融点は、好ましくは1100℃以下、さらに好ましくは1000℃以下である。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について具体的に説明する。
まず、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材(スラブ)は、基本成分として、C:0.002〜0.10mass%、Si:2.5〜4.0mass%、Mn:0.005〜0.50mass%を含有し、さらに、インヒビター形成成分として、Al:0.010〜0.050mass%およびN:0.003〜0.020mass%を含有し、あるいは、Se:0.003〜0.030mass%および/またはS:0.002〜0.03mass%%を含有し、あるいは、Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%、Se:0.003〜0.030mass%および/またはS:0.002〜0.03mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を用いることが好ましい。
また、本発明に用いる鋼素材は、上記のようにインヒビター形成成分を含有する成分系に限定されるものではなく、インヒビター形成成分を含有していない鋼素材であってもよく、その場合は、基本成分として、C:0.002〜0.10mass%、Si:2.5〜4.0mass%、Mn:0.005〜0.50mass%を含有し、さらに、インヒビター形成成分であるAl,N,SおよびSeをそれぞれAl:0.010mass%以下、N:0.010mass%以下、S:0.005mass%以下およびSe:0.005mass%以下に低減し、さらに、O:0.005mass%以下に低減し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するものであることが好ましい。
また、本発明に用いる鋼素材は、上記成分に加えてさらに、磁気特性を改善する目的で、Ni:0.005〜1.50mass%、Sn:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、Cr:0.01〜l.50mass%、P:0.0050〜0.50mass%、Nb:0.0005〜0.020mass%およびMo:0.01〜0.50mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有していてもよい。
上記鋼素材は、所定の温度に加熱した後、熱間圧延し、必要により熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。上記冷間圧延の回数は、製造コストと磁気特性とのバランスから、2回以下とするのが好ましい。
次いで、上記最終板厚とした冷延板は、一次再結晶焼鈍した後、あるいは、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍して、鋼中のCを磁気時効の起こらない0.050mass%以下に脱炭した後、焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、二次再結晶を発現させるとともに、純化処理を行う仕上焼鈍を施して、二次再結晶粒がGoss方位に高度に揃った鋼板とする。
ここで、仕上焼鈍前に鋼板表面に塗布する上記焼鈍分離剤は、MgOを主成分とし、これに、助剤として融点が1150℃以下の酸化物を添加したものを用いることが必要である。酸化物の融点は、好ましくは1100℃以下、さらに好ましくは1050℃以下である。
融点が1150℃以下の酸化物としては、酸化物全体に占めるTl,Bi,CdおよびInの元素の合計モル比率(原子比率)が0.10以上であるものを用いることが好ましい。上記合計モル比率が0.10より少ないと、助剤内の成分の偏りによって、鋼板表面の一部に平滑度が劣る部分が発生するようになる。より好ましい合計モル比率は0.2以上である。なお、合計モル比率の上限は、純物質となるので特に規定する必要はない。なお、助剤の融点が低過ぎると、仕上焼鈍温度が高温に到達するまでの間に揮発してしまうので、融点の下限は、600℃以上とするのが好ましい。
また、MgOを主成分とする焼鈍分離剤中へのこれらの酸化物の添加量は、仕上焼鈍後の鋼板の地鉄表面を均一に平滑化する観点から、焼鈍分離剤全体に対して、0.05〜20mass%の範囲で添加するのが好ましい。0.05mass%より少ないと、仕上焼鈍時に発生する酸化物の液量が十分でなく、鋼板表面の平滑化が劣化した部分が発生するようになる。一方、20mass%より多くなると、MgOの比率が低下するため、反応速度が低下し、一部にアンカーとなる凹凸が形成され、逆に、鋼板表面の平滑度が劣化する。より好ましくは1.0〜15mass%の範囲である。
なお、MgOを主体とする焼鈍分離剤中に添加されるその他の助剤については、特に規定しないが、例えば、被膜反応の促進や、鋼中からの不純物の排除(純化)を促進する観点から、TiOや、アルカリ土類金属の酸化物、硫化物、アルカリ金属のホウ酸塩等を、焼鈍分離剤全体に対して合計20mass%以下であれば添加することができる。なお、上記その他の助剤の効果は、上記酸化物の添加量が上記した範囲内であれば、酸化物の添加により損なわれることはない。
上記の酸化物を添加した焼鈍分離剤を用いることで、仕上焼鈍後の鋼板表面をフォルステライト被膜を有しない、平滑な表面とすることができる。しかし、上記の方法で平滑化した鋼板の表面には、さらに、歩留り低下に大きな影響がない範囲の軽度の研磨を施してもよい。勿論、本発明の焼鈍分離剤のみでも、良好な磁気特性を発現するが、研磨することで表面の平滑度が向上し、磁気特性をさらに改善することができる。また、地鉄表面の平滑度が向上することは、応力集中部が少なくなるため、CVD法やPVD法で生成した被膜の密着性を高めることにも繋がる。CVD法やPVD法では、被膜は地鉄から成長していくが、地鉄表面が粗い場合、成長していく方向が異なってしまい、欠陥の多い構造をとる。これにより、後に塗布される絶縁張力被膜が地鉄側に侵入しやすくなり、被膜密着性が劣化する。なお、地鉄表面を研磨する方法としては、従来公知の電解研磨法や化学研磨法を用いることができる。
次いで、上記仕上焼鈍後で平滑化した鋼板、あるいは、さらに上記鋼板に研磨を施した鋼板の地鉄表面上に、地鉄とその後被成する張力絶縁被膜とを強固に繋ぐバインダーとして機能する被膜を存在させるのが好ましい。この被膜としては、地鉄の体心立方格子に整合し易い岩塩型構造をとる窒化物あるいは炭窒化物であることが、地鉄と窒化物層の密着性を向上させる上で好ましい。
上記窒化物や炭窒化物としては、耐酸化性に優れるものであることが望ましい。この点について、Panjanら(P.Panjan et al.,Thin Solid Films,281-282(1996)298.)により作成されたアーレニウスプロットによれば、Crを含有する窒化物にTiやAlなどを加えることで、耐酸化性を高めることができるとされている。したがって、本発明において用いる窒化物としては、例えば、TiCrNやAlCrN等、3種以上の元素からなる窒化物が好適であると考えられる。
なお、上記窒化物や炭窒化物の膜厚は、0.01〜1μmの範囲であることが好ましい。0.01μm未満では、薄過ぎて、その上に被成する張力絶縁被膜を繋ぎとめるバインダーとしての機能が小さく、被膜密着性が低下する。一方、1μmを超えると、バインダーとしての効果が飽和するだけでなく、成膜コストの上昇を招く。より好ましくは0.015〜0.50μmの範囲である。
また、上記窒化物や炭窒化物層の成膜法として、CVDやPVD等のドライプレーティング法であることが好ましい。
CVD法は、熱CVD法であることが好ましく、成膜温度は900〜1100℃の範囲とするのが好ましい。また、成膜時の圧力は、大気圧でも成膜可能であるが、一様な被膜を成膜するためには減圧する、具体的には、10〜1000Paの範囲で成膜するのが好ましい。
一方、PVD法は、イオンプレーティング法であることが好ましく、成膜温度は300〜600℃の範囲とするのが好ましい。また、成膜時の圧力は、減圧するのが好ましく、具体的には、0.1〜100Paの範囲とするのが好ましい。また、被処理材である鋼板は陰極とし、−10〜−100Vのバイアス電圧を印加するのが好ましい。また、成膜材料のイオン化には、成膜速度を高めることができるプラズマを用いることが好ましい。
なお、地鉄表面に成膜する被膜として、TiAlNやTiCrN等の3種以上の元素からなる窒化物を用いるときは、成膜法として、PVD法、中でもイオンプレーティング法を採用することが望ましい。PVD法は、合金材料をイオン化させて整合析出させるため、容易に3種類以上の原子を含む窒化物を成膜できるのに対して、熱力学的な反応を用いて成膜するCVD法は、3種類以上の原子を含む窒化物を狙い通りの組成で生成させることが難しいためである。
また、PVD法やCVD法で被膜を成膜するときは、その事前処理として、クリーニングを行い、地鉄表面の不純物を除去しておくことが好ましい。クリーニングの方法は、金属イオンを照射する方法と、不活性ガスイオンを照射する方法の2種類がある。いずれの方法も、クリーニングイオンは地鉄にかかる電圧により加速される。この印加電圧は、絶対値で300V以上とするのが好ましい。300V未満の電圧では、クリーニングイオンの運動エネルギーが低いため、地鉄表面への金属の付着量が多くなり過ぎる。クリーニング時の印加電圧は、より好ましい印加電圧は、絶対値で500〜1000Vの範囲である。この範囲であれば、クリーニングイオンが適度な運動エネルギーを有するため、地鉄表面の不純物を十分に取り除きつつ、地鉄表面の粗さの過度な増大を防ぐことができるので、被膜密着性と鉄損特性をともに改善することができる。
上記のようにして地鉄の表面に窒化物層または炭窒化物層を形成した鋼板は、さらにその窒化物層または炭窒化物層の上に、引張張力を付与する絶縁被膜のコーティング薬液を塗布し、乾燥させた後、窒素雰囲気中で焼鈍して焼付け、張力絶縁被膜を被成することが好ましい。
上記張力絶縁被膜としては、リン酸塩とコロイダルシリカを主成分とするものが好ましい。また、上記リン酸塩としては、リン酸マグネシウムやリン酸アルミニウム等、熱膨張率の低いリン酸塩を用いることが望ましい。
地鉄表面へのコーティング薬液の塗布方法としては、製造コストの観点から、ロール塗布が好ましい。張力絶縁被膜を焼き付ける温度および時間については、700〜900℃×10〜30秒の範囲とするのが好ましい。焼付温度が700℃未満および/または焼付時間が10秒未満では、コーティング薬液中の水分の除去が不十分のまま焼付けることになるため、被膜が地鉄に印加する引張張力を低下させてしまう他、ユーザーで行われる歪取焼鈍中に、被膜中の水分によって窒化物層の酸化が起こり、磁気特性や被膜特性の低下を招く。一方、焼付温度が900℃より高いと、鋼板が軟化し、冷却時に歪みが入るおそれがある。また、窒化物層や炭窒化物層と張力絶縁被膜との反応が進行し、被膜密着性が劣化するおそれもある。また、焼付時間を30秒より長くすると、焼付ラインを長くしたり、通板速度を低下したりすることが必要となるため、製造コストの上昇や生産性の低下を招く。なお、被成膜焼付け時の雰囲気は、窒素ガスとするのが好ましい。大気中では、大気中に含まれる水分や酸素によって窒化物や炭窒化物が酸化し、被膜密着性が劣化してしまうからである。
また、上記張力絶縁被膜の厚さは、焼付後の厚さで1〜10μmの範囲とするのが好ましい。図1に示したように、張力絶縁被膜の膜厚(焼付後)と鋼板表面に印加される鋼板圧延方向の引張張力との間には比例関係があり、膜厚を厚くするほど張力は増大し、鉄損が低下する。しかし、被膜の厚さが1μm未満では、上記効果が小さい。一方、被膜の厚さが10μmを超えると、引張張力による鉄損低減効果も飽和してくる他、製品板を変圧器に使用するときの実効鋼板体積の減少に繋がるため、変圧器としての特性はむしろ低下する。より好ましくは1.5〜5.0μmの範囲である。
上記のようにして得た本発明の方向性電磁鋼板(製品板)の被膜は、図2に示したような断面構造を有するものとなる。鋼板の表面は、焼鈍分離剤中に添加した低融点の酸化物によって平滑化されており、その地鉄表面上には、CVD法やPVD法で成膜された窒化物層や炭窒化物層が存在し、さらに、その窒化物層や炭窒化物層の上には、ロール塗布等で被成された張力絶縁被膜層が存在している。なお、図3には、比較として、従来の方向性電磁鋼板(製品板)の被膜断面を示したが、フォルステライト被膜と地鉄の界面にはアンカーとなる凹凸が形成されている。
また、上記のようにして得た本発明の方向性電磁鋼板は、優れた鉄損特性を有するが、さらに鉄損特性を向上するためには、磁区細分化処理を施すことが好ましい。磁区細分化の方法としては、最終冷間圧延以降のいずれかの工程で鋼板表面の板幅方向に溝を形成したり、あるいは、張力絶縁被膜を被成後の鋼板表面の板幅方向にレーザーや電子ビームを照射して、線状または点列状の熱ひずみを導入したりする公知の方法を用いることができる。
C:0.05mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.05mass%、Al:0.03mass%、N:0.005mass%およびSe:0.01mass%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する鋼素材を、1420℃の温度に加熱した後、熱間圧延し、1000℃×60sの熱延板焼鈍を施した後、中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により最終板厚0.23mmの冷延板とした。
次いで、上記冷延板に脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施して、Cを0.002mass%以下まで低減した後、表1に示す成分組成のMgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥し、その後、二次再結晶させた後、1200℃×20hrの純化処理する仕上焼鈍を施した。なお、実験に先立ち、表1に示した焼鈍分離剤に添加した酸化物(助剤)は、In(融点:1910℃)を除き、すべての酸化物が、1150℃未満の融点であることを確認している。
次いで、上記のようにして得た仕上焼鈍後の鋼板表面から焼鈍分離剤を水洗ブラシで除去した後、鋼板表面(地鉄表面)をX線回折してフォルステライトの形成有無を判定し、フォルステライトの形成無しと認められたものについては、レーザー顕微鏡を用いて、鋼板表面のJIS B 0601−2001に規定された算術平均粗さRaを測定した。
その後、フォルステライトの形成無しと認められた鋼板表面の地鉄上に、PVD法を用いて厚さ0.2μmのTiN被膜を成膜した。なお、上記PVD法としては、イオンプレーティング法を用い、温度:450℃、圧力:3Pa、バイアス電圧:−20Vで成膜を行った。
その後、上記TiN被膜上に、リン酸塩とコロイダルシリカを主成分とするコーティング薬液をロール塗布し、乾燥した後、窒素雰囲気中で、850℃×15秒の焼鈍を施し、厚さ2μmの珪リン酸ガラスからなる張力絶縁被膜を被成した。
さらに、その後、窒素雰囲気中で、800℃×3hrの歪取焼鈍を行った。
上記のようにして得た歪取焼鈍後の鋼板について、磁束密度Bおよび鉄損W17/50ならびに被膜密着性を評価した。
ここで、上記磁束密度Bおよび鉄損W17/50は、JIS C2550に準拠して測定した。また、被膜密着性は、丸棒に鋼板を巻き付けたときの被膜剥離が生じない最小径(剥離径)を測定し、剥離径が30mmφ未満であれば、被膜密着性が良好であると評価した。
上記測定の結果を表1に併記した。
この結果から、仕上焼鈍時の焼鈍分離剤として、酸化物中に占めるTl,Bi,CdおよびInの元素の合計モル比率が0.10以上の酸化物を助剤として0.05〜20mass%の範囲で含有する焼鈍分離剤を使用した鋼板は、いずれも仕上焼鈍後の鋼板表面へのフォルステライトの形成がなく、地鉄表面が平滑化(鏡面化)していた。
また、上記平滑化した鋼板の地鉄表面に窒化物TiNを成膜し、さらにその上に張力絶縁被膜を被成した鋼板は、いずれも歪取焼鈍後の磁束密度Bが1.91T以上で、鉄損W17/50が0.80W/kg未満の優れた磁気特性を有するとともに、歪取焼鈍後の剥離径も20mm以下の良好な被膜密着性を有している。したがって、本発明の方向性電磁鋼板は、磁気特性と被膜密着性とを両立していることがわかる。
本発明の技術は、金属の表面処理、特に薄鋼板の表面処理にも適用することができる。

Claims (4)

  1. Si含有鋼スラブを熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍した後または熱延板焼鈍することなく、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、該冷延板に一次再結晶焼鈍または脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布、乾燥し、仕上焼鈍するフォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法において、上記焼鈍分離剤として、MgOを主成分とし、助剤として融点が1150℃以下の酸化物を0.05〜20mass%の範囲で含有するものを用いることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 上記助剤は、酸化物中に占めるTl,Bi,CdおよびInの元素の合計モル比率が0.10以上のものであることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 上記仕上焼鈍後、フォルステライト被膜を有しない鋼板の地鉄表面に、窒化物または炭窒化物からなる被膜を成膜した後、さらに、上記窒化物または炭窒化物からなる被膜の上に張力絶縁被膜を被成することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 上記窒化物は、TiCrNおよびAlCrNのいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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