JP3975487B2 - 方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、薄膜で良好なサブスケールを形成させることにより、厚みが薄く、かつ均一で密着性に優れるフォルステライト被膜を得て、占積率、電磁特性を向上できる方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性けい素鋼板には、磁気特性として磁束密度が高いことと、鉄損が低いことが要求される。
とくに近年のエネルギー危機を境として変圧器、発電機等についてはそのエネルギー損失を低減することに努力が払われ、それに伴って方向性けい素鋼板についても鉄損の低い材料がますます要求されるようになってきた。鉄損の低減に関し、最も有力な手法は鋼板の板厚を薄くして電気抵抗を高めることで、このため当初0.30mmの最低板厚のものから、0.28mm、0.23mm、0.20mm、0.18mmといった薄肉の鋼板が製造されるようになった。
【0003】
ところが鋼板の板厚が薄くなるに伴い、方向性けい素鋼板の鉄損は改善されてはきたものの、実際に変圧器を製造した場合には、期待に反してさほど大きなエネルギー損の低減効果が得られないという問題が新たに発生した。
【0004】
この理由は、変圧器を組立てる場合、鋼板を積層して用いるが、鋼板の板厚が低減するに従い、鉄心全体の体積に占める鉄部分の割合(これを占積率と呼ぶ)が低下するためである。占積率の低下は、鋼板表層に存在する非磁性体すわなち、張力コーティング層とその下層のフォルステライト被膜の占める比率が増加することに主に起因している。従って鋼板板厚の減少に伴い、これらの厚みを薄くしてやれば、総体としての占積率に問題はないわけであるが、実際に板厚に応じて被膜厚を減少させることは必ずしも容易ではなかった。というのは張力コーティングに関しては鋼板厚の減少に応じて付与すべき張力も減少するので、比較的容易に低減可能ではあるが、フォルステライト被膜の厚みを減少させると、絶縁性、耐錆性、均一性および密着性など種々の表面被膜特性が劣化するからである。
【0005】
フォルステライト被膜は、脱炭・1次再結晶焼鈍時に鋼板表層に形成されるサブスケール中のシリカ(SiO2)が鋼板表面に塗布された焼鈍分離剤中のマグネシア(MgO) と、最終仕上げ焼鈍中に主として下記式のような固相反応により形成される。
2MgO + SiO2 → Mg2SiO4
【0006】
従って、フォルステライト被膜の厚みを低減するためには、脱炭・1次再結晶焼鈍によって形成されるサブスケール中のシリカを低減することが必要となる。しかしながらサブスケール中のシリカを低減した場合、均一なフォルステライト被膜の形成が損なわれ、特に被膜の密着性と均一性が劣化することが知られている。従って従来から、脱炭・1次再結晶焼鈍時に生成するサブスケール中の酸化物量は、特開昭56-72178号公報(方向性珪素鋼板のフォルステライト絶縁被膜の形成方法)や特公昭62-53577号公報(磁気特性の優れた高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造方法)に示されているように製品板厚に関係なく、ほぼ一定値をとるように管理されていた。例えば特公昭62-53577号公報では、単位面積当たりの酸素量(これを酸素目付量と呼称し、フォルステライト被膜の膜厚にほぼ比例するものである)を計算すると、板厚に関係なく、0.7 〜1.4 g/m2の範囲となり、ほぼ一定値に制御される。このように良好な被膜を形成させるには、製品の板厚に関係なく、脱炭・1次再結晶焼鈍における一定の酸素目付量が必要とされ、ひいては一定の厚みのフォルステライト被膜が形成されていた。
【0007】
このように、板厚の薄い鋼板において、それに応じた薄めのフォルステライト被膜を形成させることは甚だ困難だったのである。
【0008】
また鋼板の板厚を薄くすると、磁気特性が劣化するという別の問題も発生する。
すなわち一般に方向性けい素鋼板の良好な磁気特性は、最終仕上げ焼鈍過程で、(110) 001 方位のゴス方位と呼ばれる方位を有する2次再結晶粒を十分に発達させることが必要である。このゴス方位を有する2次再結晶粒は鋼板の表層近傍において核発生し成長するもので、良好な2次再結晶のためには、他の方位の1次粒の正常粒成長を抑制するインヒビターと呼ばれる析出物による抑制効果が強力であることが必要である。しかし、鋼板表層部のインヒビターは仕上げ焼鈍中の弱酸化性雰囲気によって酸化され易く、従って鋼板表層部の抑制力は仕上げ焼鈍中に必然的に失われていく。
【0009】
単位表面積あたりの2次再結晶粒のもととなる核生成頻度は板厚の減少に応じて低下すると共に、その発生位置が板厚の減少に伴ってより鋼板表面に接近することになる。従ってインヒビターの抑制力が消失する表層近くに核生成領域が接近する結果、2次再結晶が困難となり、良好な2次再結晶を得るための臨界板厚が存在することになる。
【0010】
さらに、鋼板表面に形成させたサブスケールは、仕上げ焼鈍中の弱酸化性雰囲気による鋼板表層部の酸化を抑制する作用、すなわち弱酸化性雰囲気に対する保護作用を一般に有するので表層抑制力の減少を防止することに役立つ。しかし、薄目の被膜とすると、サブスケールの酸素目付量、すなわちサブスケールの厚みを低減する結果、かかるサブスケールの保護作用が弱まり、ますます2次再結晶が困難となる不都合が生じる。
【0011】
かかる不都合を解消し、薄目のサブスケールであっても、鋼板表層部の酸化を抑制し、表層抑制力の減少を防止して良好なフォルステライト被膜と2次再結晶を得るため、出願人会社は脱炭焼鈍における種々のサブスケール形成技術の開発を行ってきた。
【0012】
すなわち、特開平4-218622号公報(磁気特性、被膜密着性の優れた方向性電磁鋼板の製造方法)においては、脱炭焼鈍の加熱時の雰囲気としてN2やArの中性ガスを用いる技術を、特開平4-202713号公報(被膜特性と磁気特性に優れた薄型方向性けい素鋼板の製造方法) においては、脱炭焼鈍雰囲気の酸素ポテンシァルのパターンを変更し、脱炭焼鈍板表面層の酸化物の組成のファイヤライトとシリカとの比を一定範囲内に制御する技術を、また特開平6-336616号公報(方向性けい素鋼板の製造方法) においては、昇温過程における酸素ポテンシァルを均熱過程より低くすることで均一なフォルステライト被膜を形成させる技術をそれぞれ提案開示してきた。
【0013】
しかしながら、これらの脱炭焼鈍技術を工場での連続脱炭焼鈍炉の操業に適用した場合、しばしば所望の効果が得られない場合があり、例えば、2次再結晶不良による磁気特性の劣化やハゲ膜や脆弱な被膜がしばしば発生した。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、かかる工業的規模における連続脱炭焼鈍炉の操業において、しばしば発生する2次再結晶不良による磁気特性の劣化やハゲ膜や脆弱な被膜の発生を抑え、薄膜で良好なサブスケールを形成させることができる方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍方法を提案することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、前記問題を有利に解決し、均一で密着性に優れ、かつ、磁気特性の優れた方向性電磁鋼板を製造するための連続脱炭焼鈍技術について鋭意研究を重ねた結果、これらの特性が脱炭焼鈍の冷却雰囲気にとりわけ強く依存することを新規に知見し、かかる知見に基づいてこの発明を完成させたものである。
すなわち、この発明の要旨は次のとおりである。
【0016】
(1)含けい素鋼スラブを素材として、熱間圧延し、その後1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行って0.23mm 以下の最終板厚としたのち、脱炭焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向性電磁鋼板を製造する際の脱炭焼鈍方法であって、
該脱炭焼鈍における冷却を、中性ガス濃度が40%以上、かつP(H 2 O) / P(H 2 )が 0.011 以上である雰囲気中で行うことを特徴とする方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍方法(第1発明)。
【0017】
(2)第1発明において、前記冷却の雰囲気が、中性ガスと残部が不可避的不純物からなる方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍方法である(第2発明)。
【0018】
【作用】
この発明に至った経緯を実験例にもとづいて具体的に説明するとともに、この発明の作用について述べる。
【0019】
まずこの発明の基礎となった実験例について説明する。
C:0.068 mass% 、Si : 3.2 mass%、Mn : 0.075 mass%、Al : 0.025 mass%、Se : 0.018 mass%を含有する方向性電磁鋼板で、最終板厚を 0.23mm とした冷間圧延鋼帯をa〜jの10個に分割し、それぞれ図1に示す連続焼鈍炉を用いて、850 ℃の温度で2分間の脱炭焼鈍を施した。
【0020】
ここで、図1は、ガス雰囲気をそれぞれ独立して調整できる連続する4ゾーンからなる連続焼鈍炉で、1は鋼帯、2は第1ゾーン、3は第2ゾーン、4は第3ゾーン、5は第4ゾーンを示し、図面上下方向の矢印はガスの流れ方向を示す。
【0021】
これらの脱炭焼鈍は、第1ゾーンを加熱帯とし、N2:50%、H2:50%、dp:57 ℃(P(H2O)/P(H2) = 0.41) のガス雰囲気中にて60秒間で850 ℃の温度まで昇温し、第2ゾーンを均熱帯前部とし、850 ℃の温度で60秒間の均熱をN2:50%、H2:50%、dp:57 ℃(P(H2O)/P(H2) = 0.41) のガス雰囲気中で、第3ゾーンを均熱帯後部とし、850 ℃の温度で60秒間の均熱をN2:50%、H2:50%、dp:60 ℃(P(H2O)/P(H2)= 0.49)のガス雰囲気中で行った。第4ゾーンは冷却帯として、60秒間で室温まで冷却した。
【0022】
その際の冷却ガス(ガス雰囲気)をそれぞれ
鋼帯aは、N2:0% 、H2:100% 、dp: 1 ℃(P(H2O)/P(H2)= 0.007)
鋼帯bは、N2:15%、H2: 85% 、dp: 1 ℃(P(H2O)/P(H2)= 0.008)
鋼帯cは、N2:30%、H2: 70% 、dp: 1 ℃(P(H2O)/P(H2)= 0.009)
鋼帯dは、N2:40%、H2: 60% 、dp: 1 ℃(P(H2O)/P(H2)= 0.011)
鋼帯eは、N2:75%、H2: 25% 、dp: 1 ℃(P(H2O)/P(H2)= 0.026)
鋼帯fは、N2:100% 、H2: 0%、dp: 1 ℃(P(H2O)/P(H2)=∞ )
鋼帯gは、N2:20%、H2: 80% 、dp: 15℃(P(H2O)/P(H2)= 0.021)
鋼帯hは、N2:35%、H2: 65% 、dp: 15℃(P(H2O)/P(H2)= 0.026)
鋼帯iは、N2:50%、H2: 50% 、dp: 15℃(P(H2O)/P(H2)= 0.034)
鋼帯jは、N2:65%、H2: 35% 、dp: 15℃(P(H2O)/P(H2)= 0.049)
として通板した。
【0023】
これらの脱炭焼鈍後の鋼帯は、それぞれTiO2を10%添加したMgO を焼鈍分離剤として塗布したのち、840 ℃の温度で40時間保持後、1200℃の温度まで昇温し10時間保持する最終仕上焼鈍を行った。
【0024】
これらの鋼帯の磁気特性、被膜の曲げ密着性、( 最小曲げ剥離径) および脱炭焼鈍後の鋼帯のサブスケール中の酸化物であるファイヤライトとシリカとの比率(Fay/Silica)と冷却雰囲気ガスのH2濃度との関係のグラフを図2に示す。
【0025】
図2より明らかなように、冷却ガスのH2 濃度は磁気特性および被膜特性に大きな影響を及ぼし、該H2 濃度が60%未満に低減すると、被膜の曲げ密着性が格段に向上し、これにともなって磁気特性の向上効果も得られることが新規に見出された。さらに図2によればH2 濃度が極端に低く実質的にN2 からなる冷却ガスの場合には極めて安定な被膜特性と磁気特性が得られることがわかる。
【0026】
かかる冷却ガスのH2 濃度の規制によって好結果を得た理由を下記のように推定する。
すなわち、図2の脱炭焼鈍後のサブスケール中の酸化物の組成の分析値から見出されるように、冷却ガスのH2 濃度が増加した場合、サブスケールの酸化物としてファイヤライトが減少しシリカが増大している。これは、冷却時に雰囲気中のH2 によってファイヤライトが下記式のように還元され、シリカになったことを示す。
Fe2SiO4+2H2 →2Fe +SiO2+2H2O
この図2の値は、サブスケール全体にわたっての分析値があるから、鋼板最表層ではファイヤライトの還元が甚だしいものと考えられる。
【0027】
ところで、鋼板最表層のファイヤライトは、例えば、前記した特開平4−202713号公報や、「材料とプロセス (CAMP-ISIJ Vol.7(1994)p1819」(方向性珪素鋼板の2次再結晶に及ぼす表面酸化相の影響)に開示されているように、被膜特性、磁気特性に有用な酸化物である。
ファイヤライト(Fe2SiO4) が鋼板表面に存在する場合、
Fe2SiO4+2xMgO → (Mgx Fe1-x )2SiO2+2xFeO
の反応によって極めて低温の段階からオリビン((Mg x Fe1-x )2SiO4)の被膜が形成され、最終仕上焼鈍中の弱酸化性雰囲気による悪影響( 被膜形成の抑制や、表層抑制力の喪失)から鋼板表層を保護することになる。
【0028】
したがって、冷却雰囲気中のH2 濃度の高い従来法では、かかる有用なファイヤライトが冷却雰囲気ガス中のH2 によって還元され、失われていたことになる。
【0029】
つぎに、この発明が適用して好適な、鋼の成分組成ならびに製造工程条件について述べる。
鋼の成分組成は、一般に公知のもでよい。すなわち、C:0.02〜0.10mass%、Si;5.0 mass%以下、Mn;0.05〜2.5 mass%を含有し、インビヒター成分として、S, Se, Al, N, Cu, Sb, Sn, Bi, Te, B等を1種または2種以上が含まれるものである。
【0030】
製造工程条件としては、上記成分組成になる鋼スラブを素材とし、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚とする。
【0031】
ついで行なう脱炭焼鈍は、公知の温度範囲、酸素ポテンシァルの範囲もしくは温度パターン、雰囲気パターンが適用される。
そして、この発明の特徴とする、脱炭焼鈍での加熱後の冷却においては、雰囲気ガス中のH2 濃度を60%未満に規制することが必要である。H2 濃度が60%以上の場合は、鋼板表面のファイヤライトが還元され、最終仕上焼鈍の低温域での鋼板表面のフォルステライト被膜形成が抑制され、その後の被膜形成が阻害され被膜特性の劣化と、さらに鋼板表層部のインヒビターの消失が促進される結果、磁気特性の劣化がもたらされる。
【0032】
したがって、脱炭焼鈍の冷却ガスのH2 濃度は60%未満、すなわち、中性ガスの濃度を40%以上とすることが必要であるが、特に本質的には 100%の中性ガス雰囲気とすることが上述の理由から望ましい。かかる場合において、連続焼鈍炉で均熱帯後部のガスが、冷却帯に一部、流れ込み、不純物として、H2 や水蒸気が存在することはやむを得ないが、このような場合においてもH2 濃度は厳しく規制し、60%以上とならないようにすることが肝要である。
【0033】
脱炭焼鈍ののちは、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を鋼板に塗布し、次いで最終仕上焼鈍を施す。これにより、鋼板表層部のファイヤライトとMgO が反応し、最終仕上焼鈍の初期において有用なオリビン(Mg x Fe1-x )2SiO4が形成される。
【0034】
かくして、最終仕上焼鈍後の鋼帯は未反応分離剤を除去した後、必要に応じて絶縁コーティング剤を塗布し、平坦化焼鈍後製品とされる。
【0035】
【実施例】
実施例1
C:0.075 mass%、Si;3.25mass%、Mn;0.075 mass%、Al;0.026 mass%、Cu;0.08mass%、Sb;0.025 mass%、N;0.008 mass%、Se;0.018 mass%を含有する鋼スラブを、公知の方法により熱間圧延し、中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により板厚0.20mmの鋼帯とした。
【0036】
この鋼帯を3分割し前掲図1に示した連続焼鈍炉を用い、840℃の昇温過程までN2;40%、H2;60%,dp;60℃(P(H2O)/P(H2)=0.41)のガス雰囲気で、また840℃の温度で2分間の均熱は、N2;40%、H2;60%、dp;62℃(P(H2O)/P(H2)=0.46)のガス雰囲気で焼鈍したが、冷却ガス雰囲気としては、ひとつはN2;100%、dp;−15℃のガス(P ( H 2 O )/ P ( H 2 ) =∞)で行い(適合例I)、他のひとつはN2;75%、H2;25%、dp;5℃(P(H2O)/P(H2)=0.035)のガスで行い(適合例II)、残るひとつはN2;25%、H2;75%、dp;5℃(P(H2O)/P(H2)=0.014)のガスで行った(比較例)。
【0037】
これらの脱炭焼鈍後の鋼帯に、それぞれ10%のTiO2と2%のSr(OH)2 ・8H2Oを含むMgO を焼鈍分離剤として塗布し、コイル状に巻き取ったのち、最終仕上焼鈍を施した。最終仕上焼鈍条件は、850 ℃の温度で25時間の保持までをN2 ガス雰囲気中で行い、続いてN2 ;25%、H2 ;75%のガス雰囲気中で15℃/hr の昇温速度で1200℃まで昇温し、H2 ガス雰囲気中にて1200℃の温度で10時間保持したのち降温した。
【0038】
その後、各鋼帯は未反応分離剤を除去し、張力コーティング剤を塗布し800 ℃の温度で1分間の平坦化焼鈍を施し製品とした。
【0039】
これらの製品の被膜特性と磁気特性とを表1にまとめて示す。
【表1】
【0040】
なお、表1での被膜特性における密着性は丸棒に鋼板を巻きつけ被膜剥離の認められない最小の丸棒径で評価した。
【0041】
実施例2
C:0.080 mass%、Si;3.35mass%、Mn;0.070 mass%、Al;0.024 mass%、Cu;0.13mass%、Sn;0.13mass%、N;0.006 mass%、S;0.015 mass%を含有する鋼スラブを公知の方法により熱間圧延し、中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により板厚0.23mmの鋼帯とした。
【0042】
この鋼帯を3分割し前掲図1に示した連続焼鈍炉を用い、それぞれ850℃の温度で100秒間の脱炭焼鈍を行った。この時加熱帯、均熱帯の雰囲気としては、N2;25%、H2;75%、dp;68℃(P(H2O)/P(H2)=0.52)のガス雰囲気中で焼鈍を行ったが、冷却帯については、第1の鋼帯は乾燥N2ガス雰囲気中(P ( H 2 O )/ P ( H 2 ) =∞)で行い(適合例1)、第2の鋼帯は850℃から800℃の温度までN2;45%、H2;55%、dp;58℃(P(H2O)/P(H2)=0.40)のガス雰囲気中で行い、さらに800℃以下の温度を乾燥N2ガス雰囲気中(P ( H 2 O )/ P ( H 2 ) =∞)で行い(適合例2)、第3の鋼帯はN2;25%、H2;75%の乾燥N2、H2ガス雰囲気で行った(比較例)。
【0043】
脱炭焼鈍後のこれらの鋼帯はそれぞれ8%のTiO2と2%のSrSO4 を含むMgO を焼鈍分離剤を塗布してコイル状に巻き取ったのち、最終仕上焼鈍を施した。最終仕上焼鈍の条件は850 ℃の温度まで35℃/hr の昇温速度でN2 ガス雰囲気中にて昇温し、850 ℃から1200℃までの温度をN2 ;25%、H2 ;75%のガス雰囲気中で15℃/hr の昇温速度で昇温し、1200℃の温度で20時間H2 ガス雰囲気中で保持したのち降温した。
その後、各鋼帯は未反応分離剤を除去し張力コーティング剤を塗布し、800 ℃の温度で1分間の平坦化焼鈍を施し製品とした。
【0044】
これらの製品の被膜特性と磁気特性とを表2にまとめて示す。
【表2】
【0045】
なお、表2での被膜特性における密着性は実施例1と同様の方法で測定した。
【0046】
以上実施例1および2から明らかなように、この発明の適合例は、比較例に比し磁気特性および被膜特性に優れていることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
この発明は、方向性電磁鋼板を製造する際の脱炭焼鈍での加熱均熱後の冷却雰囲気を特定するものであり、
この発明によれば、薄膜で良好なサブスケールを形成できることから被膜特性に優れ磁気特性に優れる方向性電磁鋼板が得られ、特に薄肉方向性電磁鋼板の製造に極めて有利に適合できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガス雰囲気をそれぞれ独立して調整できる連続する4ゾーンからなる連続焼鈍炉の説明図である。
【図2】磁気特性、被膜の密着性および脱炭焼鈍後の鋼帯のサブスケール中の酸化物であるファイヤライトとシリカとの比率と冷却雰囲気ガスのH2 濃度との関係のグラフである。
【符号の説明】
1 鋼帯
2 第1ゾーン
3 第2ゾーン
4 第3ゾーン
5 第4ゾーン
Claims (2)
- 含けい素鋼スラブを素材として、熱間圧延し、その後1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行って0.23mm 以下の最終板厚としたのち、脱炭焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向性電磁鋼板を製造する際の脱炭焼鈍方法であって、
該脱炭焼鈍における冷却を、中性ガス濃度が40%以上、かつP(H 2 O) / P(H 2 )が 0.011 以上である雰囲気中で行うことを特徴とする方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍方法。 - 前記冷却の雰囲気が、中性ガスと残部が不可避的不純物からなる請求項1に記載の方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍方法。
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