JP2019119181A - 延伸フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】偏光子との良好な接着性を確保しつつ、高倍率で延伸されても、リワーク時の凝集破壊を抑えることができる延伸フィルムを提供する。【解決手段】延伸フィルムの製造方法は、光学フィルムを延伸する少なくとも1回の延伸工程(S3)と、光学フィルムを面内で収縮させる収縮工程(S1)と、光学フィルムに電子線またはγ線を照射する照射工程(S2)とを有する。収縮工程および照射工程を、少なくとも1回のうちの最終回の延伸工程よりも前に行う。【選択図】図1

Description

本発明は、光学フィルムを延伸して延伸フィルムを製造する延伸フィルムの製造方法に関する。
一般的に、テレビ、ノートパソコンおよびスマートフォン等の画像表示装置には、偏光板が搭載されている。偏光板は、用途に応じて画像表示装置の構成部品に貼り付けられる。例えば画像表示装置の一種である液晶表示装置では、液晶セルの表面側および裏面側に偏光板が貼り付けられる。
上記の偏光板は、偏光子と、偏光子を保護する光学フィルムとを備えて構成される。通常、偏光子の片面または両面に接着剤を用いて光学フィルムを貼合することにより、偏光板が作製される。
偏光板の液晶表示装置への搭載において、偏光板の貼合不良や欠陥などの状況によっては、偏光板を液晶セルから剥がして貼り直す、いわゆるリワークと呼ばれる作業が必要になる場合がある。リワークを可能とするためには、偏光板を液晶セルから剥離する際に、偏光板を構成する偏光子と光学フィルムとの接着性を確保することが必須である(両者の間に剥離が生じると偏光板として使用できなくなるため)。偏光子と光学フィルムとの接着性を向上させる手法として、光学フィルム表面に対して、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ光照射処理等を行う易接着処理が従来から知られている。
一方、光学フィルムの製造において、所望の形態の光学フィルムを得るために、延伸することで光学フィルムの幅や厚みを調整することが従来から行われている。延伸した光学フィルム(以下では「延伸フィルム」とも称する)は脆弱化を伴うため、たとえ上記の易接着処理によって延伸フィルムと偏光子との界面での接着性を確保することはできても、偏光板の液晶セルからの剥離時に、厚み方向への応力が掛かることによって延伸フィルムそのものが破壊される、いわゆる凝集破壊(内部破壊、材料破壊)が往々にして起こる。延伸フィルムの凝集破壊は、延伸フィルムの厚み方向の任意の箇所で起こるため、延伸フィルムの表面に行う易接着処理は、上記の凝集破壊に対して有効な手段とはならない。
ここで、凝集破壊を抑制する方法の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1では、延伸後の光学フィルムに対して電子線またはγ線を照射するようにしている。電子線等の照射により、延伸フィルム内で厚み方向に架橋が形成されることが、凝集破壊の抑制効果が得られる一因であると考えられている。
特開2017−134305号公報(請求項1、段落〔0009〕、〔0108〕等参照)
ところで、昨今、液晶表示装置の大型化(大画面化)または薄型化の要望に伴い、偏光板に用いる光学フィルム(延伸フィルム)に対する広幅化または薄膜化の要望が高まっている。このような要望に応える光学フィルムを作製するためには、従来以上の高倍率で光学フィルムを延伸することが必要となる。
しかし、光学フィルムを高倍率で延伸すると、光学フィルムのポリマー分子(マトリックス分子)の面内方向の配向度が高くなり、これによって、フィルムの厚み方向におけるマトリックス分子間の絡み合いが解離しやすくなるため、凝集破壊が生じやすくなる。上述した特許文献1の方法では、面内方向の延伸によって厚み方向のマトリックス分子間の絡み合いが解離した状態の光学フィルムに対して電子線等を照射するため、厚み方向に架橋を形成して上述した凝集破壊を抑える効果が不十分であり、さらなる改良が必要であると考えられる。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、偏光子との良好な接着性を確保しつつ、高倍率で延伸されても、リワーク時の凝集破壊を抑えることができる延伸フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の製造方法によって達成される。
1.光学フィルムを延伸する少なくとも1回の延伸工程を有する延伸フィルムの製造方法であって、
前記光学フィルムを面内で収縮させる収縮工程と、
前記光学フィルムに電子線またはγ線を照射する照射工程とをさらに有し、
前記収縮工程および前記照射工程を、前記少なくとも1回のうちの最終回の前記延伸工程よりも前に行うことを特徴とする延伸フィルムの製造方法。
2.前記収縮工程および前記照射工程を、最終回の前記延伸工程よりも前にこの順で行うことを特徴とする前記1に記載の延伸フィルムの製造方法。
3.前記光学フィルムは、シクロオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする前記1または2に記載の延伸フィルムの製造方法。
上記の製造方法によれば、収縮工程によって、フィルム厚み方向のマトリックス分子間の絡み合いを促進できる。また、照射工程によって、フィルム厚み方向におけるマトリックス分子間の架橋を高めることができる。これら2つの工程を経た後に、最終の延伸工程が行われるため、高倍率で光学フィルムが面内方向に延伸されても、フィルム厚み方向におけるマトリックス分子間の絡み合いの解離を抑えることができる。これにより、高倍率で延伸された光学フィルム(延伸フィルム)を用いて偏光板を構成し、その偏光板をリワークする場合でも(偏光板を液晶セルから剥がす場合でも)、上記延伸フィルムの凝集破壊を抑えることができる。また、上記延伸フィルムにおいてマトリックス分子間の絡み合いが促進され、架橋が高まることにより、上記延伸フィルムと偏光子とを接着剤で接着して偏光板を作製する場合に、分子間の絡み合いの部分を介して上記接着剤が上記延伸フィルムの内部に浸透しやすくなる。その結果、延伸フィルムの偏光子に対する剥離強度を向上させることでき、偏光子との良好な接着性を確保することできる。
本発明の実施形態に係る延伸フィルムの製造方法による処理の流れを示すフローチャートである。 溶液流延製膜法によって光学フィルムを製造する装置の概略の構成を模式的に示す説明図である。 上記光学フィルムの製造工程の流れを示すフローチャートである。 斜め延伸装置の概略の構成を模式的に示す平面図である。 上記斜め延伸装置の延伸部のレールパターンの一例を模式的に示す平面図である。 上記延伸フィルムが適用される液晶表示装置の概略の構成を示す断面図である。
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をA〜Bと表記した場合、その数値範囲に下限Aおよび上限Bの値は含まれるものとする。また、本明細書において、「延伸フィルム」とは、「光学フィルム」を延伸した後のフィルムを指す。なお、本発明は、以下の内容に限定されるものではない。
〔延伸フィルムの製造方法〕
図1は、本実施形態の延伸フィルムの製造方法による処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態の延伸フィルムの製造方法は、収縮工程(S1)と、照射工程(S2)と、少なくとも1回の延伸工程(S3)とを含む。
収縮工程は、光学フィルムを面内で収縮させる工程である。この収縮工程は、例えば後述する溶液流延製膜法による光学フィルムの製膜において、支持体から剥離後の流延膜(ウェブ、光学フィルム)をMD方向(Machine Direction、搬送方向)に延伸することによって行われる。この場合、光学フィルムは、フィルム面内でMD方向と直交するTD方向(Traverse Direction、幅手方向)に収縮する。
照射工程は、光学フィルムに電子線またはγ線を照射する照射工程である。電子線の照射は、例えば、電子線照射装置などを用いて行うことができる。電子線の照射量は、所望の剥離強度が得られるように適宜調整することができる。具体的には、吸収線量として、好ましくは500kGy以上、より好ましくは6000kGy以上であり、好ましくは1500kGy以下、より好ましくは1200kGy以下である。電子線を照射する際の加速電圧は、好ましくは150kV以上であり、好ましくは250kV以下である。γ線の照射は、例えば、γ線照射装置などを用いて行うことができる。γ線の照射量は、吸収線量として、電子線と同様の照射量とすることができる。
照射工程を行う際の雰囲気は、特に限定されず、空気雰囲気または不活性ガス雰囲気としてもよい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等のガスを用いることができる。特に、酸素濃度が300ppmより小さい雰囲気とすることが、酸素による架橋阻害を抑制できるため好ましい。また、照射工程を行う際の温度は、特に限定されず、例えば10℃以上30℃以下の常温とすることができる。なお、電子線等の照射の条件については、電子線等の照射のタイミング(延伸工程の前か後か)を除いて、前述した特許文献1に開示された条件と同様の条件とすることができ、特に、特許文献1の実施例1の条件を用いることが好ましい。
延伸工程は、光学フィルムをフィルム面内でMD方向にのみ延伸する工程であってもよいし、TD方向にのみ延伸する工程であってもよいし、MD方向およびTD方向の両方に対して斜め方向に延伸する工程であってもよい。このような延伸は、延伸機(斜め延伸装置を含む)を用いて行うことができる。また、延伸工程は、製膜された光学フィルムを巻き取る前に行われてもよいし、光学フィルムを一旦巻き取ってフィルムロールとした後、フィルムロールから再度繰り出した光学フィルムに対して行われてもよい。
光学フィルムの製造において、上記の延伸工程は、本実施形態では少なくとも1回行われる。ただし、上記したS1の収縮工程およびS2の照射工程は、上記少なくとも1回のうちの最終回の延伸工程よりも前に行われる。したがって、例えば、延伸工程が1回の場合、収縮工程、照射工程、延伸工程の順に行われてもよいし、照射工程、収縮工程、延伸工程の順に行われてもよい。また、延伸工程が2回行われる場合、収縮工程、延伸工程(第1延伸工程)、照射工程、延伸工程(第2延伸工程)の順に行われてもよい。なお、延伸工程(例えば第1延伸工程)は、収縮工程を兼ねていてもよい。
本実施形態の延伸フィルムの製造方法によれば、収縮工程によって、フィルム厚み方向におけるポリマー分子(マトリックス分子)間の絡み合いが促進される。また、照射工程によって、光学フィルムの厚み方向におけるマトリックス分子間の架橋が高まる。したがって、その後、最終回の延伸工程にて、光学フィルムを高倍率で延伸しても、上記のマトリックス分子間の絡み合いの解離を効果的に抑えることができる。その結果、高倍率で延伸された光学フィルム(延伸フィルム)を用いて偏光板を構成し、この偏光板を液晶セルに貼り合わせた後に、偏光板を剥がして貼りなおすリワークを行う場合でも、リワーク時の延伸フィルムの凝集破壊を抑えることができる。
しかも、延伸フィルムにおいてマトリックス分子間の絡み合いが促進され、架橋が高まることにより、偏光板作製時に、延伸フィルムを偏光子と接着剤を介して接着する場合でも、上記接着剤がマトリックス分子間の絡み合いの部分(架橋部分)を介してフィルム内部に浸透しやすくなる。その結果、延伸フィルムを接着剤を介して偏光子に強固に固定することができ、偏光子に対する延伸フィルムの剥離強度を向上させることができる。つまり、延伸フィルムと偏光子との良好な接着性を確保することできる。
また、最終回の延伸工程よりも前に、収縮工程および照射工程をこの順で行うことにより、収縮工程によって促進されたマトリックス分子間の絡み合いを、照射工程によってより強固にすることができ、架橋を確実に高めることができる。これにより、その後の高倍率延伸によるマトリックス分子間の絡み合いの解離を確実に抑えることができ、高倍率で延伸された延伸フィルムの凝集破壊を確実に抑えることができる。また、偏光子との接着時に、接着剤が延伸フィルム内にさらに浸透しやすくなるため、延伸フィルムと偏光子との良好な接着性を確実に確保することできる。
なお、収縮工程は、照射工程の後、つまり、電子線等を光学フィルムに照射した後に行われてもよい。ただし、このようにして製造された延伸フィルムを用いて偏光板を形成すると、偏光子と延伸フィルムとの界面の接着性が多少劣化する傾向があることがわかった。これは、電子線等を照射してマトリックス分子間の絡み合いが強くなった状態で収縮させると、過剰に分子の密度が高まり、接着剤がフィルムに浸透しにくくなるためと推測している。したがって、偏光板における上記接着性の劣化を回避する観点では、収縮工程は、照射工程の前に行われることが好ましい。
また、上記の光学フィルムを構成する樹脂としては、シクロオレフィン系樹脂(COP)、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などを用いることができる。ただし、延伸性や結晶化度のコントロールがしやすい点、および、接着剤が浸透しやすく、偏光子とのより良好な接着性を確保できる点では、COPを用いることが望ましい。つまり、上記光学フィルムは、COPを含んで構成されることが望ましい。
ここで、収縮工程において、光学フィルムの収縮率が小さすぎると、マトリックス分子間の絡み合いを促進する効果が不十分となり、大きすぎると、光学フィルム(延伸フィルム)の生産効率が低下することが懸念される。このため、収縮工程における光学フィルムの収縮率は、5%〜50%であることが好ましく、10%〜30%であることがより好ましい。
また、高位相差確保、広幅確保、および偏光子と接着の際の接着剤浸透促進のためには、延伸工程において光学フィルムを高倍率で延伸することが好ましい。ただし、延伸倍率が高すぎると、延伸応力により、フィルム内にクレーズが発生したり、フィルム強度を保っているマトリックス分子間の絡み合いが解離して、フィルムが脆弱化する。このため、延伸工程における延伸倍率は、1.1倍〜5倍であることが好ましく、1.3倍〜3倍であることがより好ましい。また、延伸方向に限定は無いが、広幅の延伸フィルムを得る観点では、少なくとも幅手方向の延伸を含むことが好ましい。
なお、延伸が複数回行われる場合、複数回の延伸のうちでマトリックス分子の解離のリスクが最も高い最高倍率の延伸は、最終回に行われることが好ましい。つまり、複数回の延伸のうち、最高倍率の延伸は、収縮工程および照射工程を得た後に行われることが好ましい(例えば収縮(低倍率延伸)、照射、高倍率延伸、など)。この場合、最高倍率の延伸までに、収縮工程および照射工程によってマトリックス分子の絡み合いを強固にできるため、その後、最高倍率の延伸を行っても、マトリックス分子の絡み合いの解離を抑えて、凝集破壊を抑えることができる。
〔延伸フィルムの物性〕
本実施形態の製造方法によって得られる延伸フィルムの面内位相差Roは、10nm〜300nmであることが好ましく、30nm〜180nmであることがより好ましい。また、延伸フィルムの厚み方向の位相差Rtは、10nm〜300nmであることが好ましく、50nm〜200nmであることがより好ましい。さらに、延伸フィルムの膜厚は、10μm〜70μmであることが好ましく、30〜50μmであることがより好ましい。
〔光学フィルムの製造方法〕
次に、上記した延伸フィルムの元となる光学フィルムの製造方法について説明する。光学フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば以下に示す溶液流延製膜法または溶融流延製膜法を用いて光学フィルムを製造することができる。
(溶液流延製膜法)
図2は、溶液流延製膜法によって光学フィルムを製造する装置の概略の構成を模式的に示している。また、図3は、光学フィルムの製造工程の流れを示すフローチャートである。溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法は、攪拌調製工程(S11)、流延工程(S12)、剥離工程(S13)、収縮工程(S14)、第1乾燥工程(S15)、照射工程(S16)、延伸工程(S17)、第2乾燥工程(S18)、切断工程(S19)、エンボス加工工程(S20)、および巻取工程(S21)を含む。なお、上記製造方法は、第1乾燥工程(S15)および第2乾燥工程(S18)の両方を含む必要はなく、少なくともいずれか一方の工程を含んでいればよい。
なお、図1で示した収縮工程(S1)および照射工程(S2)は、例えば図3の収縮工程(S14)および照射工程(S16)に対応している。また、図1で示した延伸工程(S3)は、例えば図3の延伸工程(S17)に対応している。S21の巻取工程では、延伸フィルムの巻回体(フィルムロール)が得られる。なお、通常の方法で(例えば収縮工程および照射工程なしで)製膜された光学フィルムの巻回体から光学フィルムを再度繰り出し、繰り出した光学フィルムに対して、図1の収縮工程(S1)、照射工程(S2)および延伸工程(S3)の全てを行うようにしてもよい。
<攪拌調製工程>
S11の攪拌調製工程では、攪拌装置1の攪拌槽1aにて、少なくとも樹脂および溶媒を攪拌し、支持体3(エンドレスベルト)上に流延するドープを調製する。上記樹脂としては、シクロオレフィン系樹脂(COP)、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などを想定することができる。溶媒としては、良溶媒および貧溶媒の混合溶媒を用いる。
<流延工程>
S12の流延工程では、攪拌調製工程で調製されたドープを、加圧型定量ギヤポンプ等を通して、導管によって流延ダイ2に送液し、無限に移送する回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体3上の流延位置に流延ダイ2からドープを流延する。そして、流延したドープを支持体3上で乾燥させて、流延膜5(ウェブ)を形成する。流延ダイ2の傾き、すなわち、流延ダイ2から支持体3へのドープの吐出方向は、支持体3の面(ドープが流延される面)の法線に対する角度で0°〜90°の範囲内となるように適宜設定されればよい。
支持体3は、例えばステンレスベルトで構成され、一対のロール3a・3bおよびこれらの間に位置する複数のロール(不図示)によって保持されている。ロール3a・3bの一方または両方には、支持体3に張力を付与する駆動装置(不図示)が設けられており、これによって支持体3は張力が掛けられて張った状態で使用される。なお、支持体3は、ドラムであってもよい。
流延工程では、支持体3上に流延されたドープにより形成された流延膜5を、支持体3上で加熱し、支持体3から剥離ロール4によって流延膜5が剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法や、支持体3の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があり、適宜、単独であるいは組み合わせて用いればよい。
<剥離工程>
S12の流延工程にて、支持体3上で流延膜5が剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化あるいは冷却凝固させた後、S13の剥離工程では、流延膜5を、自己支持性を持たせたまま剥離ロール4によって剥離する。
なお、剥離時点での支持体3上での流延膜5の残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、支持体3の長さ等により、50〜120質量%の範囲であることが望ましい。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、流延膜5が柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるシワや縦スジが発生しやすいため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。なお、残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/
(ウェブの加熱処理後質量)×100
ここで、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
<収縮工程>
S14の収縮工程では、流延膜5(光学フィルムF)を幅手方向に収縮させる。流延膜5を収縮させる方法としては、例えば、(1)流延膜5を幅手保持しない状態で高温処理して、流延膜5の密度を高める、(2)流延膜5に対して搬送方向(MD方向)に張力をかけて、流延膜5を幅手方向(TD方向)に収縮させる、(3)急峻に流延膜5の残留溶媒量を減少させる、等の方法がある。
<第1乾燥工程>
S15の第1乾燥工程では、支持体3から剥離された流延膜5(光学フィルムF)が、乾燥装置6にて乾燥される。乾燥装置6内では、側面から見て千鳥状に配置された複数の搬送ロールによって流延膜5が搬送され、その間に流延膜5が乾燥される。乾燥装置6での乾燥方法は、特に制限はなく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等を用いて流延膜5を乾燥させる。簡便さの点から、熱風で流延膜5を乾燥させる方法が好ましい。なお、第1乾燥工程は、必要に応じて行われればよい。
<照射工程>
S16の照射工程では、照射装置7によって、光学フィルムFに対して電子線またはγ線が照射される。この照射工程により、光学フィルムFの厚み方向におけるマトリックス分子間の架橋が高められる。なお、照射装置7は、テンター8よりも搬送方向上流側であればどの位置に設けられてもよく、例えば剥離ロール4と乾燥装置6との間に設けられてもよい。
<延伸工程>
S17の延伸工程では、S16にて電子線またはγ線が照射された光学フィルムFを、テンター8によって延伸する。このときの延伸方向としては、MD方向、TD方向、これらの両方向、のいずれかである。延伸工程では、光学フィルムFの両側縁部をクリップ等で固定して延伸するテンター方式が、フィルムの平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。なお、テンター8内では、延伸に加えて乾燥を行ってもよい。
<第2乾燥工程>
S18の第2乾燥工程では、テンター8にて延伸された光学フィルムFが、乾燥装置9にて乾燥される。乾燥装置9内では、側面から見て千鳥状に配置された複数の搬送ロールによって光学フィルムFが搬送され、その間に光学フィルムFが乾燥される。乾燥装置9での乾燥方法は、特に制限はなく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等を用いて光学フィルムFを乾燥させる。簡便さの点から、熱風で光学フィルムFを乾燥させる方法が好ましい。光学フィルムFは、乾燥装置9にて乾燥された後、巻取装置12に向かって搬送される。
<切断工程、エンボス加工工程>
S19の切断工程では、スリッターからなる切断部10が、製膜された光学フィルムFの幅手方向の両端部を切断する。光学フィルムFにおいて、両端部の切断後に残った部分は、フィルム製品となる製品部を構成する。一方、光学フィルムFから切断された部分は、シュータにて回収され、再び原材料の一部としてフィルムの製膜に再利用される。
S19の切断工程の後、S20のエンボス加工工程にて、エンボス加工部11が、光学フィルムFの幅手方向の両端部にエンボス加工(ナーリング加工)を施す。エンボス加工は、加熱されたエンボスローラーを光学フィルムFの両端部に押し当てることにより行われる。エンボスローラーの表面には細かな凹凸が形成されており、エンボスローラーを光学フィルムFの両端部に押し当てることで、上記両端部に凹凸が形成される。このようなエンボス加工により、次の巻取工程での巻きズレやブロッキング(フィルム同士の貼り付き)を極力抑えることができる。
<巻取工程>
最後に、S21の巻取工程にて、エンボス加工が終了した光学フィルムFを、巻取装置12によって巻き取り、フィルムロールを得る。すなわち、巻取工程では、光学フィルムFを搬送しながら巻芯に巻き取ることにより、フィルムロールが製造される。光学フィルムFの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
(溶融流延製膜法)
溶融流延製膜法は、樹脂および可塑剤などの添加剤を含む樹脂組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性を有する溶融物を流延して光学フィルムを製膜する方法である。溶融流延製膜法によって製膜された光学フィルムに対して、図1で示した収縮工程(S1)、照射工程(S2)、および延伸工程(S3)を行うことにより、延伸フィルムを得ることができる。
溶融流延によって形成される方法は、溶融押出(成形)法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度および表面精度などに優れるフィルムが得られる溶融押出法が好ましい。また、溶融押出法で用いる複数の原材料は、通常、予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法で行えばよい。例えば、乾燥樹脂や可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し、1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでペレット化できる。
添加剤は、押出し機に供給する前に樹脂に混合しておいてもよいし、添加剤および樹脂をそれぞれ個別のフィーダーで押出し機に供給してもよい。また、粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に樹脂に混合しておくことが好ましい。
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。勿論、ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過して異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロールと弾性タッチロールとでフィルムをニップし、冷却ロール上で固化させる。
供給ホッパーから押出し機へ上記ペレットを導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
可塑剤や粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
冷却ロールと弾性タッチロールとでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度は、フィルムのTg(ガラス転移温度)以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールを使用できる。
弾性タッチロールは挟圧回転体ともいう。弾性タッチロールとしては、市販されているものを用いることもできる。
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
〔ポリマー樹脂の詳細〕
本実施形態の光学フィルムまたは延伸フィルムに含まれるポリマー樹脂(マトリックス樹脂)は、特に限定されないが、延伸後のフィルムを光学用途に使用する場合には、所望の波長に対して透明な性質を有する樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂としては、シクロオレフィン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、透明性や機械強度などの観点から、シクロオレフィン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂を用いることが好ましい。以下、本実施形態で好ましく用いられるシクロオレフィン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂の詳細について説明する。
<シクロオレフィン系樹脂>
シクロオレフィン系樹脂としては、次のような構造を有する(共)重合体が挙げられる。
Figure 2019119181
式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(すなわち、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、またはシリル基)で置換された炭化水素基である。ただし、R〜Rは、2つ以上が互いに結合して、不飽和結合、単環又は多環を形成していてもよく、この単環または多環は、二重結合を有していても、芳香環を形成してもよい。RとRとで、またはRとRとで、アルキリデン基を形成していてもよい。p、mは0以上の整数である。
上記一般式中、RおよびRが、水素原子または炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基であり、RおよびRが、水素原子または1価の有機基であって、RおよびRの少なくとも1つは、水素原子および炭化水素基以外の極性を有する極性基を示し、mは0〜3の整数、pは0〜3の整数であり、より好ましくはm+p=0〜4、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくはm=1、p=0である。m=1、p=0である特定単量体は、得られるシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くかつ機械的強度も優れたものとなる点で好ましい。
上記特定単量体の極性基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基などが挙げられ、これら極性基は、メチレン基などの連結基を介して結合していてもよい。また、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基など、極性を有する2価の有機基が連結基となって結合している炭化水素基なども、極性基として挙げられる。これらの中では、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基が好ましい。
さらに、RおよびRの少なくとも1つが式−(CHCOORで表される極性基である単量体は、得られるシクロオレフィン系樹脂が、高いガラス転移温度、低い吸湿性、各種材料との優れた密着性を有するものとなる点で好ましい。上記の特定の極性基にかかる式において、Rは炭素原子数1〜12、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。
共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。
シクロオレフィンの炭素数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましいのは5〜12である。
本実施形態において、シクロオレフィン系樹脂は、1種単独で、または2種以上を併用して構成することができる。
本実施形態のシクロオレフィン系樹脂は、固有粘度〔η〕inhで0.2〜5dL/g、さらに好ましくは0.3〜3dL/g、特に好ましくは0.4〜1.5dL/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は8000〜100000、さらに好ましくは10000〜80000、特に好ましくは12000〜50000であり、重量平均分子量(Mw)は20000〜300000、さらに好ましくは30000〜250000、特に好ましくは40000〜200000の範囲のものが好適である。
固有粘度〔η〕inh、数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲にあることにより、シクロオレフィン系樹脂の耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性と、シクロオレフィンフィルムとしての成形加工性とが良好となる。
本実施形態のシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、通常、110℃以上、好ましくは110〜350℃、さらに好ましくは120〜250℃、特に好ましくは120〜220℃である。Tgが110℃未満の場合は、高温条件下での使用、またはコーティング、印刷などの二次加工により変形するので好ましくない。一方、Tgが350℃を超えると、成形加工が困難になり、また成形加工時の熱によって樹脂が劣化する可能性が高くなる。
偏光板保護フィルムは、シクロオレフィン系樹脂を主成分とした樹脂層を有する。主成分とは樹脂層中の50質量%以上がシクロオレフィン系樹脂であることを意味し、好ましくは70〜90質量%以上である。
シクロオレフィン系樹脂には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、例えば特開平9−221577号公報、特開平10−287732号公報に記載されている、特定の炭化水素系樹脂、または公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、有機微粒子、無機微粒子などを配合してもよく、特定の波長分散剤、糖エステル化合物(単に糖エステルとも言う)、酸化防止剤、剥離促進剤、ゴム粒子、可塑剤、などの添加剤を含んでもよい。なお、添加剤の詳細については後述する。
以上で説明したシクロオレフィン系樹脂は、市販品を好ましく用いることができる。市販品の例としては、JSR(株)からアートン(ARTON)G、アートンF、アートンR、およびアートンRXという商品名で発売されているものがあり、また、日本ゼオン(株)からゼオノア(ZEONOR)ZF14、ZF16、ゼオネックス(ZEONEX)250またはゼオネックス280という商品名で市販されているものがあり、これらを使用することができる。
<セルロースエステル系樹脂>
好ましいセルロースエステル系樹脂としては、下記式(1)および(2)を満たすセルロースアシレートが挙げられる。
式(1) 2.0≦Z1<3.0
式(2) 0≦X<3.0
(式(1)および(2)において、Z1はセルロースアシレートの総アシル基置換度を表し、Xはセルロースアシレートのプロピオニル基置換度およびブチリル基置換度の総和を表す。)
セルロースエステルの原料のセルロースとしては、例えば綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。また、それらから得られたセルロースエステルを各々任意の割合で混合して使用することができる。
セルロースアシレートは、総アシル基置換度が2.2〜2.8の範囲内のセルロースアシレートであることが、耐水性を向上する観点から好ましく、また、製膜の際の流延性及び延伸性を向上させ、膜厚の均一性が一層向上する観点からは、セルロースアシレートの総アシル基置換度は、2.1〜2.5であることが好ましい。
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM(American Society for Testing and Materials;米国試験材料協会)が策定・発行する規格の一つであるASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
セルロースアシレートとしては、特にセルロースアセテート(セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましいが、これらの中でより好ましいセルロースアシレートは、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートである。
セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは75000以上であり、75000〜300000の範囲であることがより好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースアシレート樹脂の重量平均分子量(Mw)が75000以上であれば、セルロースアシレート層自身の自己成膜性や密着の改善効果が発揮され、好ましい。本実施形態では、2種以上のセルロースアシレート樹脂を混合して用いることもできる。
セルロースアアシレートの平均分子量(Mn、Mw)は、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより以下の測定条件で測定することができる。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜2800000の範囲内の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
<ポリカーボネート系樹脂>
ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定なく種々のものを使用でき、化学的性質および物性の点から芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、特にビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が好ましい。その中でも、ビスフェノールAにベンゼン環、シクロヘキサン環、および脂肪族炭化水素基等を導入したビスフェノールA誘導体を用いたものがより好ましい。さらに、ビスフェノールAの中央の炭素に対して、非対称に上記官能基が導入された誘導体を用いて得られた、単位分子内の異方性を減少させた構造のポリカーボネート系樹脂が特に好ましい。このようなポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAの中央の炭素の2個のメチル基をベンゼン環に置き換えたもの、ビスフェノールAのそれぞれのベンゼン環の一の水素をメチル基やフェニル基などで中央炭素に対し非対称に置換したものを用いて得られるポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
具体的には、4,4′−ジヒドロキシジフェニルアルカンまたはこれらのハロゲン置換体からホスゲン法またはエステル交換法によって得られるものであり、例えば、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルブタン等が挙げられる。また、この他にも例えば、特開2006−215465号公報、特開2006−91836号公報、特開2005−121813号公報、特開2003−167121号公報、特開2009−126128号公報、特開2012−31369号公報、特開2012−67300号公報、国際公開第00/26705号等に記載されているポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂は、ポリスチレン系樹脂、メチルメタクリレート系樹脂、およびセルロースアセテート系樹脂等の透明性樹脂と混合して使用してもよい。また、セルロースアセテート系樹脂を用いて形成した樹脂フィルムの少なくとも一方の面にポリカーボネート系樹脂を含有する樹脂層を積層してもよい。
ポリカーボネート系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が110℃以上であって、吸水率
23℃水中、24時間の条件で測定した値)が0.3%以下のものであることが好ましい。また、Tgが120℃以上であって、吸水率が0.2%以下のものがより好ましい。
〔添加剤〕
本実施形態の光学フィルムまたは延伸フィルムは、用途に応じて添加剤を適宜含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ポリエステル系添加剤、微粒子等が特に好ましく使用される。
シクロオレフィン系樹脂に対する添加量の好ましい範囲は、添加剤により異なる。ベンゾトリアゾール系もしくはトリアジン系の紫外線吸収剤の場合、その添加量は、0.5〜5質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、1〜4質量%の範囲内である。下記一般式(1)で表される構造を有するポリエステル系添加剤の場合、その添加量は1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、3〜8質量%の範囲内である。
(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](分子量659;市販品の例としては株式会社ADEKAのLA31)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(分子量447.6;市販品の例としてはBASFジャパン株式会社のチヌビン234、928)などが挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、〔2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシフェノール〕(チヌビン1577FF、商品名、BASFジャパン社製)、〔2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール〕(CYASORB UV−1164、商品名、サイテックインダストリーズ製)等が挙げられる。
(ポリエステル系添加剤)
ポリエステル系添加剤は、ジオールとジカルボン酸とを脱水縮合反応させた後、得られる反応生成物の分子末端の(ジオール由来の)ヒドロキシ基を、環構造を有するヒドロキシ基含有モノカルボン酸のカルボキシ基と脱水縮合反応させて得られる化合物である。
ポリエステル系添加剤は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物である。
一般式(1):B−(G−A)−G−B
式中、Bは、環構造を有するヒドロキシ基含有モノカルボン酸から誘導される基である。環構造とは、脂肪族炭化水素環、脂肪族ヘテロ環、芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を有する構造をいい、好ましくは脂肪族炭化水素環または芳香族炭化水素環を有する構造をいう。環構造を有するヒドロキシ基含有モノカルボン酸は、炭素原子数5〜20の脂環式モノカルボン酸、炭素原子数7〜20の芳香族モノカルボン酸およびそれらの混合物でありうる。
炭素原子数5〜20の脂環式モノカルボン酸は、好ましくは炭素原子数6〜15の脂環式モノカルボン酸でありうる。脂環式モノカルボン酸の例には、4−ヒドロキシシクロヘキシル酢酸、3−ヒドロキシシクロヘキシル酢酸、2−ヒドロキシシクロヘキシル酢酸、4−ヒドロキシシクロヘキシルプロピオン酸、4−ヒドロキシシクロヘキシル酪酸、4−ヒドロキシシクロヘキシルグリコール酸、4−ヒドロキシ−o−メチルシクロヘキシル酢酸、4−ヒドロキシ−m−メチルシクロヘキシル酢酸、4−ヒドロキシ−p−メチルシクロヘキシル酢酸、5−ヒドロキシ−m−メチルシクロヘキシル酢酸、6−ヒドロキシ−o−メチルシクロヘキシル酢酸、2,4−ジヒドロキシシクロヘキシル酢酸、2,5−ジヒドロキシシクロヘキシル酢酸、2−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル酢酸、3−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル酢酸、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル酢酸、2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)シクロヘキシル酢酸、3−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)シクロヘキシル酢酸、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)シクロヘキシル酢酸等が含まれる。
炭素原子数5〜20の芳香族モノカルボン酸は、好ましくは炭素原子数6〜15の芳香族モノカルボン酸でありうる。芳香族モノカルボン酸の例には、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−o−トルイル酸、3−ヒドロキシ−p−トルイル酸、5−ヒドロキシ−m−トルイル酸、6−ヒドロキシ−o−トルイル酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−(ヒドロキシメチル)安息香酸、3−(ヒドロキシメチル)安息香酸、4−(ヒドロキシメチル)安息香酸、2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)安息香酸、3−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)安息香酸、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)安息香酸等が含まれる。
これらの中でも、偏光板保護フィルムに十分な疎水性を付与し、偏光子の水分による劣化を抑制しやすい点から、芳香環を含むヒドロキシ基含有モノカルボン酸(ヒドロキシ基を含む芳香族モノカルボン酸)が好ましい。
式中、Gは、炭素原子数2〜12のアルキレンジオール、炭素原子数6〜12のシクロアルキレンジオール、炭素原子数4〜12のオキシアルキレンジオールおよび炭素原子数6〜12のアリーレンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される基である。
炭素原子数2〜12のアルキレンジオールの例には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等が含まれる。
炭素原子数6〜12のシクロアルキレンジオールの例には、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、水素化ビスフェノールB(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)ブタン等が含まれる。
炭素原子数4〜12のオキシアルキレンジオールの例には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が含まれる。
炭素原子数6〜12のアリーレンジオールの例には、ビスフェノールA、ビスフェノールB等が含まれる。
ジオールは、1種または2種以上の混合物として使用される。中でも、シクロオレフィン系樹脂との相溶性に優れる点で、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールが好ましい。
式中、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸、炭素原子数6〜12のシクロアルキレンジカルボン酸、および炭素原子数8〜16のアリーレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される基である。
炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸の例には、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が含まれる。
炭素原子数6〜16のシクロアルキレンジカルボン酸の例には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸等が含まれる。
炭素原子数8〜16のアリーレンジカルボン酸の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等が含まれる。
ジカルボン酸は、1種または2種以上の混合物として使用される。ジカルボン酸は、アルキレンジカルボン酸とアリーレンジカルボン酸の混合物であることが好ましい。アルキレンジカルボン酸とアリーレンジカルボン酸の含有割合は、アルキレンジカルボン酸:アリーレンジカルボン酸=40:60〜99:1であることが好ましく、50:50〜90:10であることがより好ましい。
式中、nは、0以上の整数である。
ポリエステル系添加剤の数平均分子量は、好ましくは300〜30000、より好ましくは300以上700未満であり、さらに好ましくは300〜600である。数平均分子量が一定以上であると、ブリードアウトを抑制しやすい。数平均分子量が一定以下であると、例えばシクロオレフィン系樹脂との相溶性を損ないにくくヘイズ上昇を抑制しやすい。
ポリエステル系添加剤の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されうる。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(東ソー株式会社製「HLC−8330」)を用いて、下記の測定条件で、エステル化合物の標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を測定することができる。
《測定条件》
カラム:「TSK gel SuperHZM−M」×2本および「TSK gel SuperHZ−2000」×2本
ガードカラム:「TSK SuperH−H」
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
ポリエステル系添加剤の数平均分子量は、縮合または重縮合の反応時間によって調整することができる。
ポリエステル系添加剤の酸価は、好ましくは0.5mgKOH/g以下、より好ましくは0.3mgKOH/g以下である。ポリエステル系添加剤の水酸基価は、好ましくは25mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下である。
ポリエステル系添加剤の合成は、常法によりジカルボン酸、ジオール、および末端封止用モノカルボン酸のエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法、あるいはジカルボン酸および末端封止用モノカルボン酸の酸クロライドとジオールとの界面縮合法のいずれかの方法で行うことができる。ジオールとジカルボン酸の仕込み比は、分子末端がジオールとなるように調整される。
(微粒子)
本実施形態の光学フィルムまたは延伸フィルムは、表面に滑り性等を付与するために、微粒子(マット剤)をさらに含みうる。微粒子は、無機化合物で構成されてもよいし、樹脂で構成されてもよい。
無機化合物の例には、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウム等が挙げられる。
樹脂の例には、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびアクリル樹脂、スチレン樹脂およびアクリル/スチレン重合体樹脂が含まれる。中でもシリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120および同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されているものが挙げられる。
これらの中でも、フィルムの濁度を低くしうる点で、二酸化ケイ素の微粒子が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)が挙げられる。フィルムのヘイズを低く保ちながら摩擦係数を下げる効果が大きいことから、好ましくはアエロジル200V、アエロジルR972Vである。
微粒子の一次粒子の平均粒径は、好ましくは5〜400nm、より好ましくは10〜300nmである。微粒子は、主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されてもよく、平均粒径100〜400nmの粒子であれば、凝集せずに一次粒子として含有されてもよい。
(糖エステル)
本実施形態の光学フィルムまたは延伸フィルムは、有機エステルとして、糖エステルを含むことが好ましい。糖エステルは、耐水系の可塑剤として機能するため、光学フィルム等において、含水によるリタデーションRthの変動を抑える点で有効である。
糖エステルとは、フラノース環又はピラノース環の少なくともいずれかを含む化合物であり、単糖であっても、糖構造が2〜12個連結した多糖であってもよい。そして、糖エステルは、糖構造が有するOH基の少なくとも一つがエステル化された化合物が好ましい。糖エステルにおける平均エステル置換度が、4.0〜8.0の範囲内であることが好ましく、5.0〜7.5の範囲内であることがより好ましい。
糖エステルとしては、特に制限はないが、下記一般式(A)で表される糖エステルを挙げることができる。
一般式(A)
(HO)−G−(O−C(=O)−R
上記一般式(A)において、Gは、単糖類又は二糖類の残基を表し、Rは、脂肪族基又は芳香族基を表し、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、nは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計であり、3≦m+n≦8であり、n≠0である。
一般式(A)で表される構造を有する糖エステルは、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(n)が固定された単一種の化合物として単離することは困難であり、式中のm、nの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。したがって、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(n)が各々変化した混合物としての性能が重要であり、本実施形態の光学フィルムの場合、平均エステル置換度が、5.0〜7.5の範囲内である糖エステルが好ましい。
上記一般式(A)において、Gは単糖類又は二糖類の残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
以下に、一般式(A)で表される糖エステルの単糖類残基を有する化合物の具体例を示すが、これら例示する化合物には限定されない。
Figure 2019119181
また、二糖類残基の具体例としては、例えば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロース等が挙げられる。
以下に、一般式(A)で表される糖エステルの二糖類残基を有する化合物の具体例を示すが、これら例示する化合物には限定されない。
Figure 2019119181
一般式(A)において、Rは、脂肪族基又は芳香族基を表す。ここで、脂肪族基及び芳香族基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。
また、一般式(A)において、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、nは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計である。そして、3≦m+n≦8であることが必要であり、4≦m+n≦8であることが好ましい。また、n≠0である。なお、nが2以上である場合、−(O−C(=O)−R)基は互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
の定義における脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、1〜20のものがより好ましく、2〜15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシル等の各基が挙げられる。
また、Rの定義における芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニル等の各環が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環が特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも一つを含む環が好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等の各環が挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環が特に好ましい。
糖エステルは、一つの分子中に二つ以上の異なった置換基を含有していても良く、芳香族置換基と脂肪族置換基を1分子内に含有、異なる二つ以上の芳香族置換基を1分子内に含有、異なる二つ以上の脂肪族置換基を1分子内に含有することができる。
また、2種類以上の糖エステルを混合して含有することも好ましい。芳香族置換基を含有する糖エステルと、脂肪族置換基を含有する糖エステルを同時に含有することも好ましい。
以下、一般式(A)で表される糖エステルの好ましい例を下記に示すが、これらの例示する化合物には限定されない。
Figure 2019119181
Figure 2019119181
糖エステルの添加量は、光学フィルムを構成する樹脂(例えばセルロースアシレート)に対して0.1〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、1〜15質量%の範囲で添加することがより好ましい。
糖エステルとしては、色相が10〜300であるものが好ましく、10〜40のものが好ましい。
(リタデーション上昇剤)
本実施形態の光学フィルムまたは延伸フィルムは、リタデーション上昇剤を含むことが好ましい。リタデーション上昇剤とは、測定波長590nmにおけるフィルムのリタデーション(特に厚み方向のリタデーションRth)を、リタデーション上昇剤が未添加のものに比べて増大させる機能を有する化合物をいう。
リタデーション上昇剤としては、含窒素複素環化合物を用いることができる。含窒素複素環化合物は、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環を有することが、フィルムの含水によるリタデーションの上昇を抑える効果を確実に得る観点から望ましい。以下にリタデーション上昇剤としての含窒素複素環化合物の一例を示すが、これらに限定されるわけではない。
Figure 2019119181
〔斜め延伸装置〕
次に、図1で示した延伸工程(S3)で用いられる延伸装置の一例である斜め延伸装置について説明する。
図4は、斜め延伸装置21の概略の構成を模式的に示す平面図である。斜め延伸装置21は、フィルム搬送方向の上流側から順に、フィルム繰り出し部22と、搬送方向変更部23と、ガイドロール24と、延伸部25と、ガイドロール26と、搬送方向変更部27と、フィルム巻き取り部28とを備えている。なお、延伸部25の詳細については後述する。
フィルム繰り出し部22は、斜め延伸の対象となる光学フィルムを繰り出して延伸部25に供給する。このフィルム繰り出し部22は、図2で示した装置と別体で構成されていてもよいし、一体的に構成されてもよい。前者の場合、図2の巻取装置12で巻き取って得られる光学フィルム(図2の光学フィルムFに相当)の巻回体がフィルム繰り出し部22に装填され、フィルム繰り出し部22から光学フィルムが繰り出される。一方、後者の場合、フィルム繰り出し部22は、光学フィルムの製膜後、そのフィルムを巻き取ることなく、延伸部25に対して繰り出すことになる。
搬送方向変更部23は、フィルム繰り出し部22から繰り出される光学フィルムの搬送方向を、斜め延伸テンターとしての延伸部25の入口に向かう方向に変更するものである。このような搬送方向変更部23は、例えばフィルムを搬送しながら折り返すことによって搬送方向を変更するターンバーや、そのターンバーをフィルムに平行な面内で回転させる回転テーブルを含んで構成されている。
搬送方向変更部23にて光学フィルムの搬送方向を上記のように変更することにより、斜め延伸装置21全体の幅をより狭くすることが可能となるほか、フィルムの送り出し位置および角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さい延伸フィルムを得ることが可能となる。また、フィルム繰り出し部22および搬送方向変更部23を移動可能(スライド可能、旋回可能)とすれば、延伸部25において光学フィルムの幅手方向の両端部を挟む左右のクリップ(把持具)のフィルムへの噛み込み不良を有効に防止することができる。
なお、上記したフィルム繰り出し部22は、延伸部25の入口に対して所定角度で光学フィルムを送り出せるように、スライドおよび旋回可能となっていてもよい。この場合は、搬送方向変更部23の設置を省略した構成とすることができる。
ガイドロール24は、光学フィルムの走行時の軌道を安定させるために、延伸部25の上流側に少なくとも1本設けられている。なお、ガイドロール24は、フィルムを挟む上下一対のロール対で構成されてもよいし、複数のロール対で構成されてもよい。延伸部25の入口に最も近いガイドロール24は、フィルムの走行を案内する従動ロールであり、不図示の軸受部を介してそれぞれ回転自在に軸支される。ガイドロール24の材質としては、公知のものを用いることが可能である。なお、フィルムの傷つきを防止するために、ガイドロール24の表面にセラミックコートを施したり、アルミニウム等の軽金属にクロームメッキを施す等によってガイドロール24を軽量化することが好ましい。
また、延伸部25の入口に最も近いガイドロール24よりも上流側のロールのうちの1本は、ゴムロールを圧接させてニップすることが好ましい。このようなニップロールにすることで、フィルムの流れ方向における繰出張力の変動を抑えることが可能となる。
延伸部25の入口に最も近いガイドロール24の両端(左右)の一対の軸受部には、当該ロールにおいてフィルムに生じている張力を検出するためのフィルム張力検出装置として、第1張力検出装置、第2張力検出装置がそれぞれ設けられている。フィルム張力検出装置としては、例えばロードセルを用いることができる。ロードセルとしては、引張または圧縮型の公知のものを用いることができる。ロードセルは、着力点に作用する荷重を起歪体に取り付けられた歪ゲージにより電気信号に変換して検出する装置である。
ロードセルは、延伸部25の入口に最も近いガイドロール24の左右の軸受部に設置されることにより、走行中のフィルムがロールに及ぼす力、即ちフィルムの両側縁近傍に生じているフィルム進行方向における張力を左右独立に検出する。なお、ロールの軸受部を構成する支持体に歪ゲージを直接取り付けて、該支持体に生じる歪に基づいて荷重、即ちフィルム張力を検出するようにしてもよい。発生する歪とフィルム張力との関係は、予め計測され、既知であるものとする。
フィルム繰り出し部22または搬送方向変更部23から延伸部25に供給されるフィルムの位置および搬送方向が、延伸部25の入口に向かう位置および搬送方向からズレている場合、このズレ量に応じて、延伸部25の入口に最も近いガイドロール24におけるフィルムの両側縁近傍の張力に差が生じることになる。したがって、上述したようなフィルム張力検出装置を設けて上記の張力差を検出することにより、当該ズレの程度を判別することができる。つまり、フィルムの搬送位置および搬送方向が適正であれば(延伸部25の入口に向かう位置および方向であれば)、上記ガイドロール24に作用する荷重は軸方向の両端で粗均等になるが、適正でなければ、左右でフィルム張力に差が生じる。
したがって、延伸部25の入口に最も近いガイドロール24の左右のフィルム張力差が等しくなるように、例えば上記した搬送方向変更部23によってフィルムの位置および搬送方向(延伸部25の入口に対する角度)を適切に調整すれば、延伸部25の入口部の把持具によるフィルムの把持が安定し、把持具外れ等の障害の発生を少なくできる。更に、延伸部25による斜め延伸後のフィルムの幅方向における物性を安定させることができる。
ガイドロール26は、延伸部25にて斜め延伸されたフィルム(斜め延伸フィルムとも言う)の走行時の軌道を安定させるために、延伸部25の下流側に少なくとも1本設けられている。
搬送方向変更部27は、延伸部25から搬送される斜め延伸フィルムの搬送方向を、フィルム巻き取り部28に向かう方向に変更するものである。搬送方向変更部27は、例えば、斜め延伸フィルムの面内で延伸方向に平行または垂直な方向に沿って、斜め延伸フィルムを少なくとも1回折り返す折り返し機構で構成することができる。
ここで、配向角(フィルムの面内遅相軸の方向)の微調整や製品バリエーションに対応するために、延伸部25の入口でのフィルム進行方向と延伸部25の出口でのフィルム進行方向とがなす角度の調整が必要となる。
また、製膜および斜め延伸を連続して行うことが、生産性や収率の点で好ましい。製膜工程、斜め延伸工程、巻取工程を連続して行う場合、搬送方向変更部23および/または搬送方向変更部27によってフィルムの進行方向を変更し、製膜工程と巻取工程とでフィルムの進行方向を一致させる、つまり、図4に示すように、フィルム繰り出し部22から繰り出されるフィルムの進行方向(繰り出し方向)と、フィルム巻き取り部28にて巻き取られる直前のフィルムの進行方向(巻き取り方向)とを一致させることにより、フィルム進行方向に対する装置全体の幅を小さくすることができる。
なお、製膜工程と巻取工程とでフィルムの進行方向は必ずしも一致させる必要はないが、フィルム繰り出し部22とフィルム巻き取り部28とが干渉しないレイアウトとなるように、搬送方向変更部23および/または搬送方向変更部27によってフィルムの進行方向を変更することが好ましい。
上記のような搬送方向変更部23・7としては、エアーフローロールを用いるなど、公知の手法で実現することができる。
フィルム巻き取り部28は、延伸部25から搬送方向変更部27を介して搬送される斜め延伸フィルムを巻き取るものであり、例えばワインダー装置、アキューム装置、ドライブ装置などで構成される。フィルム巻き取り部28は、斜め延伸フィルムの巻き取り位置を調整すべく、横方向にスライドできる構造であることが好ましい。
フィルム巻き取り部28は、延伸部25の出口に対して所定角度でフィルムを引き取れるように、フィルムの引き取り位置および角度を細かく制御できるようになっている。これにより、膜厚、光学値のバラツキが小さい斜め延伸フィルムを得ることが可能となる。また、フィルムのシワの発生を有効に防止することができるとともに、フィルムの巻き取り性が向上するため、フィルムを長尺で巻き取ることが可能となる。本実施形態において、延伸後のフィルムの引取張力T(N/m)は、100N/m<T<700N/m、好ましくは150N/m<T<250N/mの間で調整することが好ましい。
上記の引取張力が100N/m以下では、フィルムのたるみや皺が発生しやすく、リタデーション、配向角のフィルム幅方向のプロファイルも悪化する。逆に、引取張力が700N/m以上となると、配向角のフィルム幅方向のバラツキが悪化し、幅収率(幅方向の取り効率)を悪化させる場合がある。
また、本実施形態においては、上記引取張力Tの変動を±5%未満、好ましくは±3%未満の精度で制御することが好ましい。上記引取張力Tの変動が±5%以上であると、幅方向および流れ方向(搬送方向)の光学特性のバラツキが大きくなる。上記引取張力Tの変動を上記範囲内に制御する方法としては、延伸部25の出口側の最初のロール(ガイドロール26)にかかる荷重、すなわちフィルムの張力を測定し、その値が一定となるように、一般的なPID制御方式により引取ロール(フィルム巻き取り部28の巻取ロール)の回転速度を制御する方法が挙げられる。上記荷重を測定する方法としては、ガイドロール26の軸受部にロードセルを取り付け、ガイドロール26に加わる荷重、すなわちフィルムの張力を測定する方法が挙げられる。ロードセルとしては、引張型や圧縮型の公知のものを用いることができる。
延伸後のフィルムは、延伸部25の把持具による把持が開放されて、延伸部25の出口から排出され、把持具で把持されていたフィルムの両端(両側)がトリミングされた後に、順次巻芯(巻取ロール)に巻き取られて、長尺状の斜め延伸フィルムの巻回体となる。なお、上記のトリミングは、必要に応じて行われればよい。
また、長尺状の斜め延伸フィルムを巻き取る前に、フィルム同士のブロッキングを防止する目的で、マスキングフィルムを長尺状の斜め延伸フィルムに重ねて同時に巻き取ってもよいし、巻き取りによって重なる長尺状の斜め延伸フィルムの少なくとも一方(好ましくは両方)の端にテープ等を貼り合わせながら巻き取ってもよい。マスキングフィルムとしては、長尺状の斜め延伸フィルムを保護することができるものであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。
(延伸部の詳細)
次に、上述した延伸部25の詳細について説明する。図5は、延伸部25のレールパターンの一例を模式的に示す平面図である。但し、これは一例であって、延伸部25の構成はこれに限定されるものではない。
本実施形態における延伸フィルムの製造は、延伸部25として、斜め延伸可能なテンター(斜め延伸機)を用いて行われる。このテンターは、長尺状の光学フィルムを、延伸可能な任意の温度に加熱し、斜め延伸する装置である。このテンターは、加熱ゾーンZと、左右で一対のレールRi・Roと、レールRi・Roに沿って走行してフィルムを搬送する多数の把持具Ci・Co(図5では、1組の把持具のみを図示)とを備えている。なお、加熱ゾーンZの詳細については後述する。レールRi・Roは、それぞれ、複数のレール部を連結部で連結して構成されている(図5中の白丸は連結部の一例である)。把持具Ci・Coは、フィルムの幅手方向の両端を把持するクリップで構成されている。
図5において、光学フィルムの繰出方向D1は、延伸後のフィルム(長尺状の斜め延伸フィルム)の巻取方向D2と異なっており、巻取方向D2との間で繰出角度θiを成している。繰出角度θiは0°を超え90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができる。
このように、繰出方向D1と巻取方向D2とが異なっているため、テンターのレールパターンは左右で非対称な形状となっており、フィルムの搬送経路が途中で屈曲している。そして、製造すべき延伸フィルムに与える配向角θ、延伸倍率等に応じて、レールパターンを手動または自動で調整できるようになっている。本実施形態の製造方法で用いられる斜め延伸機では、レールRi・Roを構成する各レール部およびレール連結部の位置を自由に設定し、レールパターンを任意に変更できることが好ましい。
本実施形態において、テンターの複数の把持具Ci・Coは、前後の把持具Ci・Coと一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。把持具Ci・Coの走行速度は適宜選択できるが、通常、1〜150m/分である。本実施形態では、フィルムの生産性を考慮して、20〜100m/分であることが好ましい。左右一対の把持具Ci・Coの走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸工程出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸工程出口におけるシワ、寄りが発生するため、左右の把持具Ci・Coの速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。一般的なテンター装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モータの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本実施形態で述べる速度差には該当しない。
本実施形態の製造方法で用いられる斜め延伸機において、特にフィルムの搬送が斜めになる箇所において、把持具の軌跡を規制するレールには、しばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、あるいは局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が曲線を描くようにすることが望ましい。
このように、光学フィルムに斜め方向の配向を付与するために用いられる斜め延伸テンターは、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、さらに、フィルムの配向軸(遅相軸)をフィルム幅方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚みやリタデーションを制御できるテンターであることが好ましい。
次に、延伸部25での延伸動作について説明する。光学フィルムは、その両端を左右の把持具Ci・Coによって把持され、加熱ゾーンZ内を把持具Ci・Coの走行に伴って搬送される。左右の把持具Ci・Coは、延伸部25の入口部(図中Aの位置)において、フィルムの進行方向(繰出方向D1)に対して略垂直な方向に相対しており、左右非対称なレールRi・Ro上をそれぞれ走行し、延伸終了時の出口部(図中Bの位置)で把持したフィルムを開放する。把持具Ci・Coから開放されたフィルムは、前述したフィルム巻き取り部28にて巻芯に巻き取られる。一対のレールRi・Roは、それぞれ無端状の連続軌道を有しており、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具Ci・Coは、外側のレールを走行して順次入口部に戻されるようになっている。
このとき、レールRi・Roは左右非対称であるため、図5の例では、図中Aの位置で相対していた左右の把持具Ci・Coは、レールRi・Ro上を走行するにつれて、レールRi側(インコース側)を走行する把持具CiがレールRo側(アウトコース側)を走行する把持具Coに対して先行する位置関係となる。
すなわち、図中Aの位置でフィルムの繰出方向D1に対して略垂直な方向に相対していた把持具Ci・Coのうち、一方の把持具Ciがフィルムの延伸終了時の位置Bに先に到達したときには、把持具Ci・Coを結んだ直線がフィルムの巻取方向D2に略垂直な方向に対して、角度θLだけ傾斜している。以上の所作をもって、長尺フィルムが幅手方向に対してθLの角度で斜め延伸されることとなる。ここで、略垂直とは、90±1°の範囲にあることを示す。
次に、上記した加熱ゾーンZの詳細について説明する。延伸部25の加熱ゾーンZは、予熱ゾーンZ1、延伸ゾーンZ2および熱固定ゾーンZ3で構成されている。延伸部25では、把持具Ci・Coによって把持されたフィルムは、予熱ゾーンZ1、延伸ゾーンZ2、熱固定ゾーンZ3を順に通過する。
予熱ゾーンZ1とは、加熱ゾーンZの入口部において、フィルムの両端を把持した把持具Ci・Coが、左右で(フィルム幅方向に)一定の間隔を保ったまま走行する区間を指す。
延伸ゾーンZ2とは、上述した斜め延伸工程が行われる区間を指す。このとき、必要に応じて、斜め延伸前後において縦方向あるいは横方向にフィルムを延伸してもよい。
熱固定ゾーンZ3とは、斜め延伸工程の終了後、フィルムの光学軸(遅相軸)を固定する熱固定工程が行われる区間である。
なお、延伸後のフィルムは、熱固定ゾーンZ3を通過した後に、ゾーン内の温度がフィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg(℃)以下に設定される区間(冷却ゾーン)を通過してもよい。このとき、冷却によるフィルムの縮みを考慮して、予め対向する把持具Ci・Coの間隔を狭めるようなレールパターンとしてもよい。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンZ1の温度はTg〜Tg+30℃、延伸ゾーンZ2の温度はTg〜Tg+30℃、熱固定ゾーンZ3の温度はTg−30〜Tg℃に設定することが好ましい。
なお、幅方向のフィルムの厚みムラの制御のために、延伸ゾーンZ2において幅方向に温度差を付けてもよい。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけるには、温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅方向で差を付けるように調整する方法や、ヒーターを幅方向に並べて加熱制御するなどの公知の手法を用いることができる。予熱ゾーンZ1、延伸ゾーンZ2および熱固定ゾーンZ3の長さは適宜選択でき、延伸ゾーンZ2の長さに対して、予熱ゾーンZ1の長さは通常100〜150%、熱固定ゾーンZ3の長さは通常50〜100%である。
また、延伸前のフィルムの幅をWo(mm)とし、延伸後のフィルムの幅をW(mm)とすると、延伸工程における延伸倍率R(W/Wo)は、好ましくは1.3〜3.0、より好ましくは1.5〜2.8である。延伸倍率がこの範囲にあると、フィルムの幅方向の厚みムラが小さくなるので好ましい。斜め延伸テンターの延伸ゾーンZ2において、幅方向で延伸温度に差を付けると、幅方向厚みムラをさらに良好なレベルにすることが可能になる。なお、上記の延伸倍率Rは、テンター入口部で把持したクリップ両端の間隔W1がテンター出口部において間隔W2となったときの倍率(W2/W1)に等しい。
〔液晶表示装置〕
本実施形態の延伸フィルムは、例えば液晶表示装置の偏光板に適用可能である。以下、偏光板も含めて液晶表示装置の構成について説明する。
図6は、本実施形態に係る液晶表示装置31の概略の構成を示す断面図である。液晶表示装置31は、液晶表示パネル32およびバックライト33を備えている。バックライト33は、液晶表示パネル32を照明するための光源である。
液晶表示パネル32は、液晶セル34の視認側に偏光板35を配置し、バックライト33側に偏光板36を配置して構成されている。液晶セル34は、液晶層を一対の透明基板(不図示)で挟持して形成される。液晶セル34としては、カラーフィルタが液晶層に対してバックライト33側の透明基板、つまり、TFT(Thin Film Transistor)形成側の基板に配置された、いわゆるカラーフィルタ・オン・アレイ(COA)構造の液晶セルを用いることができるが、カラーフィルタが液晶層に対して視認側の透明基板に配置された液晶セルであってもよい。また、液晶セル34は、例えばVA(Vertical Alignment)方式で駆動されるが、その他、IPS(In-Plane-Switching)方式、TN(Twisted Nematic)方式など、他の方式で駆動されてもよい。
偏光板35は、偏光子41と、光学フィルム42・43とを備えている。偏光子41は、所定の直線偏光を透過する。光学フィルム42は、偏光子41の視認側に配置される保護フィルムである。光学フィルム43は、偏光子41のバックライト33側(液晶セル34側)に配置される保護フィルム兼位相差フィルムである。光学フィルム42・43は、紫外線硬化型接着剤または水糊を介して偏光子41とそれぞれ接着される。
このような偏光板35は、液晶セル34の視認側に粘着層37を介して貼り付けられている。つまり、偏光板35は、液晶セル34に対して視認側に位置し、かつ、光学フィルム43が偏光子41に対して液晶セル34側となるように、液晶セル34に貼り合わされている。
偏光板36は、偏光子44と、光学フィルム45・46を備える。偏光子44は、所定の直線偏光を透過する。光学フィルム45は、偏光子44の視認側に配置される保護フィルムであり、位相差フィルムとして機能することもできる。光学フィルム46は、偏光子44のバックライト33側に配置される保護フィルムである。光学フィルム45・46は、紫外線硬化型接着剤または水糊を介して偏光子44とそれぞれ接着される。
このような偏光板36は、液晶セル34のバックライト33側に粘着層38を介して貼り付けられている。なお、視認側の光学フィルム45を省略し、偏光子44を粘着層38に直接接触させても良い。偏光子41と偏光子44とは、クロスニコル状態となるように配置される。
本実施形態の延伸フィルム(例えば斜め延伸フィルム)は、例えばVA方式の液晶表示装置31では、偏光板35の光学フィルム43、または偏光板36の光学フィルム45に適用される。
〔実施例〕
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。
<延伸フィルムF−1の作製>
特許文献1の実施例1と同様の方法で延伸フィルムF−1を作製した。より具体的には、以下の通りである。
(ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物の製造)
金属製の耐圧反応器を充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、および1−ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n−ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8750および28100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は、3.21であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2−エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP−HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行った。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素添加物が析出してスラリー溶液となっていた。
前記の反応液に含まれる水素添加物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物28.5部を得た。この水素添加物の水素添加率は99%以上、ガラス転移温度(Tg)は95℃、融点(Tm)は262℃であった。
(樹脂の調製)
以上で得たジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合して、フィルムの材料となる樹脂を得た。
(延伸フィルムの製造)
以上で得た樹脂を、内径3mmのダイ穴を4つ備えた二軸押出機に投入した。そして、二軸押出機によって、樹脂を熱溶融押出成形によりストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターにて細断して、樹脂のペレットを得た。二軸押出機の運転条件を以下に示す。
・バレル設定温度:270℃〜280℃
・ダイ設定温度:250℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダー回転数:50rpm
引き続き、得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機に供給した。Tダイから樹脂を押出し、1m/分の速度でロールに巻き取ることにより、上記の樹脂からなる長尺の原反フィルム(厚み50μm)を製造した。上記フィルム成形機の運転条件を以下に示す。
・バレル温度設定:280℃〜290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
その後、原反フィルムを100mm×100mmのサイズに裁断し、小型二軸延伸機(東洋精機製作所社製)を用いて、フィルムの4辺の端部をクリップで把持して、延伸温度110℃、延伸倍率2倍で連続的に固定端一軸延伸を実施し、延伸フィルムを得た。このときの延伸フィルムにおける重合体の結晶化度は4%であった。
(電子線照射)
最後に、電子線照射装置(アイ・エレクトロンビーム社製)を用い、以上で得た延伸フィルムに対して、電子線照射雰囲気酸素濃度300ppm以下、加速電圧150kVの条件で吸収線量1200kGyになるように電子線を照射した。これにより、延伸フィルムF−1を得た。
<延伸フィルムF−2の作製>
延伸フィルムF−1の製造において、原反フィルムを100mm×100mmのサイズに裁断した後、原反フィルム搬送方向の2辺の端部を小型二軸延伸機のクリップで把持して、延伸温度110℃、延伸倍率1.1倍で自由端一軸延伸を行って、幅手方向に5%収縮させた。
そして、収縮後のフィルムに対して、延伸フィルムF−1の作製時と同様の条件で電子線を照射した。その後、再度小型二軸延伸機にフィルムの4辺の端部をクリップで把持し、延伸温度110℃で原反フィルムを幅手方向に2倍、固定端一軸延伸を行った。これにより、延伸フィルムF−2を得た。
<延伸フィルムF−3の作製>
(微粒子添加液の調製)
微粒子(アエロジルR812:日本アエロジル社製、一次平均粒子径:7nm、見掛け比重50g/L)
4質量部
ジクロロメタン 48質量部
エタノール 48質量部
以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
(ドープの調製)
下記組成のドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにジクロロメタンとエタノールを添加した。ジクロロメタンとエタノールの混合溶液の入った加圧溶解タンクにシクロオレフィン系樹脂(ARTON G7810、JSR(株)製)を撹拌しながら投入した。さらに、溶媒投入開始後15分後に、上記で調製した微粒子添加液を投入して、これを80℃に加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。このとき、室温から5℃/minの昇温し、30分間で溶解した後、3℃/minで降温した。得られた溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。
《ドープの組成》
シクロオレフィン系樹脂(ARTON G7810、JSR(株)製) 100質量部
ジクロロメタン 200質量部
エタノール 10質量部
微粒子添加液 1質量部
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度31℃、1800mm幅でステンレスベルト上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。そして、ステンレスベルト上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が30質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスベルト上から流延膜を剥離した。
剥離した流延膜を、乾燥ゾーンの中で多数のローラーで搬送しながら乾燥させて残留溶媒量が0.1質量%未満の光学フィルムとし、その上で、170℃の条件下でテンターによって幅手方向に1.5倍延伸した。
続いて、テンタークリップで挟んだ端部をレーザーカッターでスリットし、その後、電子線照射装置を用い、上記光学フィルムに対して、電子線照射雰囲気酸素濃度300ppm以下、加速電圧150kVの条件で吸収線量1200kGyになるように電子線を照射して巻き取り、厚さ40μm、幅2000mmの延伸フィルムF−3を得た。
<延伸フィルムF−4の作製>
以下の2工程を変更した以外は、延伸フィルムF−3の作製と同様にして、厚さ40μm、幅2000mmの延伸フィルムF−4を作製した。
(1)流延膜(光学フィルム)をステンレスベルト上から剥離する際に、搬送方向に1.2倍延伸することで、光学フィルムを幅手方向に15%収縮させた。
(2)乾燥終了後、幅手方向に延伸する前に、電子線照射を行った。
<延伸フィルムF−5の作製>
幅手方向の延伸を、180℃の条件下で、延伸倍率3.0倍で行った以外は、延伸フィルムF−4の作製と同様にして、厚さ40μm、幅2500mmの延伸フィルムF−5を作製した。
<延伸フィルムF−6の作製>
電子線照射を、流延膜(光学フィルム)をステンレスベルト上から剥離する直前に行った以外は、延伸フィルムF−4の作製と同様にして、厚さ40μm、幅2000mmの延伸フィルムF−6を作製した。
<延伸フィルムF−7の作製>
流延膜(光学フィルム)をステンレスベルト上から剥離する際に、搬送方向に1.2倍延伸することによって幅手方向に15%収縮させるまでは、延伸フィルムF−4の作製と同様の工程を行った。その後は、以下のようにして、厚さ40μm、幅2000mmの延伸フィルムF−7を作製した。
光学フィルムを幅手方向に収縮させた後、145℃の条件下で、電子線照射装置を用い、上記光学フィルムに対して、電子線照射雰囲気酸素濃度300ppm以下、加速電圧150kVの条件で吸収線量1200kGyになるように電子線を照射した上で、幅手方向に1.5倍延伸した。延伸開始時の残留溶媒量は、5質量%であった。
次いで、上記光学フィルムを、乾燥ゾーンの中で多数のローラーで搬送しながら乾燥させ、その後、テンタークリップで挟んだ端部をレーザーカッターでスリットし、巻き取った。
<延伸フィルムF−8の作製>
95℃の条件下で、電子線照射と幅手延伸を行い、延伸開始時の残留溶媒量を15質量%とした以外は、延伸フィルムF−7の作製と同様にして、厚さ40μm、幅2000mmの延伸フィルムF−8を作製した。
<延伸フィルムF−9の作製>
ドープの組成を以下のように変更した以外は、延伸フィルムF−7の作製と同様にして、厚さ40μm、幅2000mmの延伸フィルムF−9を作製した。
《ドープの組成》
セルロースアシレート(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度0.9)
100質量部
ジクロロメタン 340質量部
エタノール 60質量部
糖エステル 10質量部
リタデーション上昇剤 2質量部
微粒子添加液 1質量部
なお、上記糖エステルとしては、BzSc(ベンジルサッカロース:糖残基がB−2である化合物a1〜a4の混合物(化3、化4参照)、平均エステル置換度=5.5)を用いた。また、上記リタデーション上昇剤としては、化7で示す含窒素複素環化合物(ピラゾール系化合物)を用いた。
<延伸フィルムF−10の作製>
まず、ドープの組成を以下のように変更した以外は、延伸フィルムF−3の作製と同様にして、ドープを調製した。
(主ドープ)
シクロオレフィン系樹脂(ARTON G7810、JSR(株)製) 100質量部
ジクロロメタン 200質量部
エタノール 10質量部
チヌビン928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
微粒子添加液 1質量部
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度31℃、1800mm幅でステンレスベルト上に均一に流延した。このとき、ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。
続いて、ステンレスベルト上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が30質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスベルト上から流延膜(光学フィルム)を剥離した。そして、剥離した光学フィルムを、乾燥ゾーンの中で多数のローラーで搬送しながら乾燥させて残留溶媒量を0.1質量%未満とした上で、光学フィルムのテンタークリップで挟んだ端部をレーザーカッターでスリットした。その後、電子線照射装置を用い、上記光学フィルムに対して、電子線照射雰囲気酸素濃度300ppm以下、加速電圧150kVの条件で吸収線量1200kGyになるように電子線を照射し、その後に巻き取って、厚さ36μm、幅1500mmの原反フィルムを作製した。
次に、上記で作製した原反フィルムを、図4等で示した斜め延伸装置21を用いて斜め延伸した。すなわち、上記原反フィルムを、斜め延伸装置21のフィルム繰り出し部2にセットし、フィルム繰り出し部2から原反フィルムを繰り出して、延伸部25に供給して斜め延伸を行い、延伸フィルムF−10(長尺状の斜め延伸フィルム)を得た。このとき、延伸部25では、フィルムの配向角φ(遅相軸と幅手方向とのなす角度)が略45°となるように斜め延伸を行った。また、延伸部25の延伸ゾーンZ2では、まず、原反フィルムを幅手方向に1.5倍延伸した上で、屈曲時に20%収縮させた。そして、フィルムの搬送速度を15m/分とし、フィルム切断装置(図示せず)で幅手方向の両端部を切断することにより、厚さ30μm、幅1300mmの延伸フィルムF−10を得た。
<延伸フィルムF−11の作製>
(ポリカーボネート系樹脂の作製)
3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下SPGと略す)76.6部、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)51.4部、1,6−ヘキサンジオール(以下HDと略す)1.4部、ジフェニルカーボネート87.8部、および触媒として炭酸水素ナトリウム1.6×10−4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、60℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Paまで減圧した。合計5時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。
(原反フィルムの作製)
次に、得られたペレット(ポリカーボネート系樹脂)を押出機に供給し、押出機内で溶融させ、ポリマーパイプおよびポリマーフィルターを経て、Tダイからキャスティングドラム上にフィルム状に押出した。押し出した樹脂を、キャスティングドラムで冷却して巻取り、厚み90μm、幅1500mmの原反フィルムを作製した。
(延伸フィルムの作製)
上記で作製した原反フィルムを、図4等で示した斜め延伸装置21を用いて斜め延伸した。このとき、延伸ゾーンZ2では、原反フィルムを幅手方向に2.5倍延伸した上で屈曲時に25%収縮させた以外は、延伸フィルムF−10の作製と同様にして、厚さ50μm、幅1300mmの長尺状の延伸フィルム(斜め延伸フィルム)F−11を作製した。
<延伸フィルムF−12の作製>
≪微粒子分散液の調製≫
微粒子(アエロジルR972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行い、微粒子分散液を調製した。
≪微粒子添加液の調製≫
以下の組成に基づいて、メチレンクロライドを入れた溶解タンクに充分攪拌しながら、上記微粒子分散液をゆっくりと添加した。さらに二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
≪ドープの調製≫
下記組成のドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。そして、溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。その後、下記の比率となるように、主ドープ液と各材料とを密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープを調製した。なお、糖エステル化合物およびエステル化合物は、以下の合成例により合成した化合物を用いた。
(ドープの組成)
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.50、プロピオニル基置
換度0.90、総置換度2.40) 100質量部
糖エステル化合物 5.0質量部
エステル化合物(ポリエステル系添加剤) 5.0質量部
紫外線吸収剤(チヌビン928(BASFジャパン(株)製)) 1.5質量部
微粒子添加液 1質量部
《糖エステル化合物の合成》
以下の工程により、糖エステル化合物を合成した。
Figure 2019119181
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖を34.2g(0.1モル)、無水安息香酸を180.8g(0.8モル)、ピリジンを379.7g(4.8モル)、それぞれ仕込み、撹拌下で窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。
次に、コルベン内を4×10Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエンを1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液を300g添加し、50℃で30分間撹拌した後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水を100g添加し、常温で30分間水洗した後、トルエン層を分取し、減圧下(4×10Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4およびA−5の混合物を得た。
得られた混合物をHPLCおよびLC−MASSで解析したところ、A−1が1.3質量%、A−2が13.4質量%、A−3が13.1質量%、A−4が31.7質量%、A−5が40.5質量%であった。平均置換度は5.5であった。
<HPLC−MSの測定条件>
1)LC部
装置:日本分光(株)製カラムオーブン(JASCO CO−965)、ディテクター(JASCO UV−970−240nm)、ポンプ(JASCO PU−980)、デガッサー(JASCO DG−980−50)
カラム:Inertsil ODS−3 粒子径5μm 4.6×250mm(ジーエルサイエンス(株)製)
カラム温度:40℃
流速:1ml/min
移動相:THF(1%酢酸):HO(50:50)
注入量:3μl
2)MS部
装置:LCQ DECA(Thermo Quest(株)製)
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化(ESI)法
Spray Voltage:5kV
Capillary温度:180℃
Vaporizer温度:450℃
《エステル化合物の合成》
以下の工程により、エステル化合物を合成した。
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、攪拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、攪拌しながら徐々に昇温した。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物を得た。エステル化合物は、1,2−プロピレングリコール、無水フタル酸およびアジピン酸が縮合して形成されたポリエステル鎖の末端に安息香酸のエステルを有する。エステル化合物の酸価は0.10、数平均分子量は450であった。
≪原反フィルムの作製≫
ベルト流延装置を用い、温度35℃、1800mm幅でステンレスベルト上に均一にドープを流延した。ステンレスベルト上で、残留溶媒量が100質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスベルト上から流延膜(光学フィルム)を剥離した。剥離した光学フィルムを50℃で乾燥しながら搬送させ、両端をスリットし、その後、テンターで幅手方向に160℃の温度条件下、20%の倍率で延伸した。延伸を始めたときの残留溶媒量は、15質量%であった。
その後、光学フィルムを、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送しながら乾燥させ、残留溶媒量を0.1質量%未満した上で、テンタークリップで挟んだ端部をレーザーカッターでスリットした。その後、電子線照射装置を用い、上記光学フィルムに対して、電子線照射雰囲気酸素濃度300ppm以下、加速電圧150kVの条件で吸収線量1200kGyになるように電子線を照射した。そして、光学フィルムを巻き取り、厚さ36μm、幅1500mmの原反フィルムとした。
≪延伸フィルムの作製≫
作製した原反フィルムを、延伸フィルムF−10の作製と同様の手法で延伸し、厚さ30μm、幅1300mmの長尺状の延伸フィルム(斜め延伸フィルム)F−12を作製した。
<延伸フィルムF−13の作製>
脂環式構造含有重合体の一種であるノルボルネン重合体を含む熱可塑性樹脂のペレット(日本ゼオン社製「ZEONOR1420」、ガラス転移点137℃)を、100℃で5時間乾燥した。そして、上記のペレットを押出機に供給し、押出機内で溶融させ、ポリマーパイプおよびポリマーフィルターを経て、Tダイからキャスティングドラム上にフィルム状に押出した。押し出された樹脂は、キャスティングドラムで冷却され、これによって厚み55μm、幅1500mmの長尺の未延伸フィルムを得た。こうして得た未延伸フィルムを、長手方向に、延伸温度145℃、延伸倍率1.5倍で延伸(縦延伸)して、厚み45μm、幅1000mmの長尺状の縦延伸フィルムを得た。なお、上記の縦延伸により、幅手方向に19%の収縮が確認されている。
その後、電子線照射装置を用い、上記縦延伸フィルムに対して、電子線照射雰囲気酸素濃度300ppm以下、加速電圧150kVの条件で吸収線量1200kGyになるように電子線を照射した上で、延伸フィルムF−10の作製と同様の手法で斜め延伸を行った。このときの延伸条件は、延伸倍率2.0倍(図5のW/Woに相当)、延伸温度142℃である。これにより、厚さ22μm、幅1330mmの長尺状の延伸フィルム(斜め延伸フィルム)F−13を作製した。
<偏光板の作製>
以下に示すいずれかの接着方法(UV接着または水系接着)を用い、偏光子の一方の面側に、上記で作製した延伸フィルムを貼り合わせ、偏光子の他方の面側に保護フィルム(コニカミノルタタックKC6UA、厚さ58μm、コニカミノルタ(株)製)を貼り合わせて、偏光板P−1〜P−13を作製した。このとき、延伸フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が90°となるように、延伸フィルムと偏光子とを貼り合わせた。
(1.UV接着)
《接着剤の調製》
下記の各成分を混合した後、脱泡して、紫外線硬化型接着剤を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50質量%プロピレンカーボネート溶液として使用し、下記の構成では、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートを固形分量として表示した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂) 40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン 0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン 2.0質量部
《接着方法》
延伸フィルムの表面に、コロナ放電処理を施した。なお、コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、延伸フィルムのコロナ放電処理面に、上記で調製した紫外線硬化型接着剤を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗布して紫外線硬化型接着剤層を形成した。そして、得られた紫外線硬化型接着剤層に、上記作製した偏光子を貼合した。
また、保護フィルム(KC6UA)にも上記延伸フィルムと同様の処理を行って、紫外線硬化型接着剤層を形成した。そして、この保護フィルムの紫外線硬化型接着剤層に、延伸フィルムが片面に貼合された偏光子を貼合し、積層体(延伸フィルム/紫外線硬化型接着剤層/偏光子/紫外線硬化型接着剤層/保護フィルムの層構成)を得た。
この積層体の両面側から、ベルトコンベヤー付き紫外線照射装置を用いて(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを使用)、積算光量が750mJ/cmとなるように紫外線を照射し、それぞれの紫外線硬化型接着剤層を硬化させて、偏光板を作製した。
(2.水系(水糊)接着)
下記工程を順に経ることにより、延伸フィルム、偏光子、保護フィルム(コニカミノルタタックKC6UA、厚さ58μm、コニカミノルタ(株)製)を貼り合わせて、偏光板を作製した。
工程1:延伸フィルムおよび保護フィルム(KC6UA)を、それぞれ60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、各フィルムの偏光子と貼合する側に鹸化処理を施した。
工程2:偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、この一方の面に、工程1で処理した延伸フィルムを、他方の面に保護フィルムを載せて配置した。
工程4:工程3で積層した延伸フィルム、偏光子、保護フィルムを、圧力20〜30N/cm、搬送スピード約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に、工程4で貼合した積層体を2分間乾燥し、偏光板を作製した。
<評価>
(凝集破壊)
上記で作製した偏光板を、23℃で相対湿度55%の環境下で24時間放置した。その後、偏光子と延伸フィルムとの接着面を手で引き剥がし、延伸フィルムにおける凝集破壊の発生の有無および程度を目視観察して、以下の基準で評価した。なお、○以上であれば、実用上問題ないレベルと判断した。
《評価基準》
◎:剥がれない。
○:延伸フィルムを剥がした後、偏光子側の面を顕微鏡で確認しても、延伸フィルムの破片が確認されなかった。
×:延伸フィルムを剥がした後、偏光子側の面を顕微鏡で確認すると、延伸フィルムの破片が確認された。
(接着性)
上記で作製した偏光板の偏光子と延伸フィルムとの(界面)接着性を、剥離強度を測定することで評価した。すなわち、上記で作製した偏光板を、23℃で相対湿度55%の環境下で24時間放置した後、延伸方向と平行に25mm、その直交方向に15mmの大きさに切り出した。そして、延伸フィルムと偏光子との間にカッターナイフで切り込みを入れ、偏光板をガラス板に貼り合わせた。その後、テンシロンにより、90度方向(フィルム面に垂直な方向)に延伸フィルムと偏光子とを剥離速度300mm/minで剥離し、その剥離強度を測定した。剥離強度が大きいほど、偏光子と延伸フィルムとの接着性が良好と言え、○以上であれば良好であり、△は実用上問題ないレベルと判断した。なお、上記の接着性は、凝集破壊が改良されて良好になる場合と、凝集破壊の程度が同じでも、樹脂または延伸条件の違いによる接着剤(糊)の浸透性の変化によって良好になる場合とがある。ここでは、これらの双方を含めて接着性を評価した。
《評価基準》
◎:剥離強度が4.0N以上である。
○:剥離強度が3.0N以上4.0N未満である。
△:剥離強度が2.0N以上3.0N未満である。
×:剥離強度が2.0N未満である。
偏光板P−1〜P−13についての評価の結果を表1に示す。なお、表中、COPは、シクロオレフィン系樹脂を示し、CEは、セルロースエステル系樹脂(セルロースアシレート樹脂)を示し、PCは、ポリカーボネート系樹脂を示す。
Figure 2019119181
偏光板P−1およびP−3では、凝集破壊および接着性が両方とも不良である。偏光板P−1(P−3)に用いられている延伸フィルムF−1(F−3)の作製において、面内方向の延伸によって厚み方向のマトリックス分子間の絡み合いが解離した状態でフィルムに電子線を照射しているため、電子線の照射による効果(マトリックス分子間の架橋を高める効果)が得られにくく、その結果、凝集破壊が生じやすくなっていると考えられる。
これに対して、偏光板P−2およびP−4−1〜P−13では、凝集破壊および接着性が両方とも良好である。偏光板P−2等に用いられている延伸フィルムF−2等の作製において、延伸前に、フィルムを収縮させることで、厚み方向のマトリックス分子間の絡み合いを促進し、フィルムに電子線を照射することで、マトリックス分子間の架橋を高めているため、その後の延伸によるマトリックス分子間の絡み合いの解離を効果的に抑えることができ、その結果、延伸フィルムの凝集破壊が抑えられていると考えられる。また、マトリックス分子間の架橋部分を介して接着剤がフィルム内部に浸透するため、偏光子に対する延伸フィルムの接着性も良好であると考えられる。
また、偏光板P−4−1およびP−6の結果より、延伸前に、収縮工程および照射工程をこの順で行うほうが、照射工程および収縮工程をこの順で行う場合よりも、凝集破壊の抑制および接着性向上の効果は高い。これは、収縮工程によって促進されたマトリックス分子間の絡み合いを、照射工程によってより強固にすることができ、架橋を確実に高めることができるためと考えられる。
また、偏光板P−10〜P−12の結果より、延伸フィルム(光学フィルム)に用いる樹脂として、PCおよびCEを用いる場合よりもCOPを用いる場合のほうが、接着性が良好である。COPは、UV接着剤に一般に使用される溶媒の浸透性が高く、その結果、接着剤の浸透性も高くなり、PCおよびCEに比べて界面での接着性が良好になると考えられる。
なお、偏光板P−8の延伸フィルムF−8では、偏光板P−7の延伸フィルムF−7よりも、凝集破壊の評価が低い。延伸フィルムF−8の作製時は、延伸フィルムF−7の作製時よりも、幅手延伸開始時の残留溶媒量が多いため、表面にクレーズ(ひび割れ)が発生しやすく、これによってフィルムが脆弱化し、凝集破壊が起こりやすくなると考えられる。しかし、延伸前の収縮および電子線照射により、フィルム内でのマトリックス分子間の架橋が高まり、これによって接着剤の浸透性が向上するため、クレーズ起因の凝集破壊はある程度低減され、結果として実用上問題のないレベルとなっている。接着性については、接着剤の浸透性向上により、延伸フィルムF−7と同等の評価が得られている。
なお、以上の実施例では、延伸フィルムの作製時の照射工程において、光学フィルムに電子線を照射する例について説明したが、電子線の代わりにγ線を照射した場合でも、電子線を照射した場合と同様の結果が得られることが確認された。
本発明の延伸フィルムは、例えば液晶表示装置の偏光板に利用可能である。
F 光学フィルム

Claims (3)

  1. 光学フィルムを延伸する少なくとも1回の延伸工程を有する延伸フィルムの製造方法であって、
    前記光学フィルムを面内で収縮させる収縮工程と、
    前記光学フィルムに電子線またはγ線を照射する照射工程とをさらに有し、
    前記収縮工程および前記照射工程を、前記少なくとも1回のうちの最終回の前記延伸工程よりも前に行うことを特徴とする延伸フィルムの製造方法。
  2. 前記収縮工程および前記照射工程を、最終回の前記延伸工程よりも前にこの順で行うことを特徴とする請求項1に記載の延伸フィルムの製造方法。
  3. 前記光学フィルムは、シクロオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の延伸フィルムの製造方法。
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