JP2019118031A - 画像処理方法、画像処理装置および画像処理システム - Google Patents

画像処理方法、画像処理装置および画像処理システム Download PDF

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Abstract

【課題】スキャナやインラインセンサを用いて原稿を読み取った読取画像データを高精度でCMYK画像データに変換可能とする。【解決手段】取得ステップにより、原稿から反射された反射光に基づき、可視域の複数の波長領域、および、非可視域の波長領域の反射吸収特性に対応する第1の画像信号を取得する。第1の色変換ステップにより、取得された第1の画像信号を、デバイス非依存の色空間成分と、墨成分と、を含む第2の画像信号に変換する。【選択図】図11

Description

本発明は、画像処理方法、画像処理装置および画像処理システムに関する。
スキャナやインラインセンサなどにより原稿を読み取った読取画像データは、一般的に、R(赤)色、G(緑)色およびB(青)色からなるRGB画像データである。以下、このスキャナなどによる原稿読み取りにより生成されるRGB画像データを、RGB読取画像データと呼ぶ。このRGB読取画像データを用いて画像形成を行う画像形成システムでは、どのような読取原稿に対しても、読取原稿の色と略同一の色が再現される色再現出力や、読取原稿の色を正確に判定した色判定結果が得られることが望ましい。
そのため、スキャナなどによるRGB読取画像データを高精度に色変換する技術や、読取原稿の色判定を自動的に実行する技術が開発され、既に知られている。例えば、特許文献1には、墨(黒)率が異なるグレー階調パッチを出力し、RGB読取画像データとモノクロ読取画像データとの差分からセンサの読取値に対する色補正パラメータを更新するようにした技術が開示されている。特許文献1の技術によれば、分光反射率が異なる色原稿の、RGB読取画像データとモノクロ読取画像データとの差分に基づき色補正を行うことで、高精度な色補正が可能となる。
しかしながら、RGB読取画像データを取得するスキャナやインラインセンサでは、分光測色計とは異なり、マルチバンドでの読み取りができない。そのため、スキャナやインラインセンサを用いた画像形成システムでは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3色によるCMY色材により形成されるコンポジットグレーと、K(Black)版で形成されるグレー(コンポーネントグレー)との特性差を検出することが困難であるという問題点があった。
そのため、特に、C、M、Y、K各色によるCMYK混色パターンの読み取りあるいは色予測の精度に課題があった。また、スキャナやインラインセンサを用いた画像形成システムにおいて、読取原稿の自動カラー判定を実施する際、K版で形成された原稿であっても、読取側の色ずれが原因でカラー判定されてしまうことがある、など判定精度に問題があった。これらの問題点は、上述した特許文献1においても解消できていない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、スキャナやインラインセンサを用いて原稿を読み取った読取画像データを高精度でCMYK画像データに変換可能とすることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、原稿から反射された光に基づき、可視域の複数の波長領域、および、非可視域の波長領域の反射吸収特性に対応する第1の画像信号を取得する取得ステップと、取得ステップにより取得された第1の画像信号を、デバイス非依存の色空間成分と、墨成分と、を含む第2の画像信号に変換する第1の色変換ステップとを有する。
本発明によれば、スキャナやインラインセンサを用いて原稿を読み取った読取画像データを高精度でCMYK画像データに変換可能となるという効果を奏する。
図1は、実施形態に係る画像処理装置としての画像形成装置の一例の構成を示すブロック図である。 図2は、実施形態に適用可能なスキャナの一例の構成を示すブロック図である。 図3は、実施形態に適用可能な、スキャナにおけるセンサモジュールと光源との配置の例を示す図である。 図4は、実施形態に適用可能なセンサモジュールの構成の例を示す図である。 図5は、実施形態に適用可能な、R用、G用およびB用それぞれのカラーフィルタの特性の例について説明するための図である。 図6は、実施形態に適用可能な、第1画像処理部の構成の例を示すブロック図である。 図7は、実施形態に適用可能な第2画像処理部の一例の構成を示すブロック図である。 図8は、条件等色について概略的に説明するための図である。 図9は、RGB値を検出するセンサによって黒色を読み取った例を模式的に示す模式図である。 図10は、印刷媒体上に、C、M、Y各色による黒色と、K色単色による黒色とを形成した場合の、各色のトナーの反射率の例を示す図である。 図11は、実施形態に係る、画像形成装置における処理の流れを説明するための一例の機能ブロック図を示す。 図12は、実施形態に係る第1色変換部およびγ変換部の構成の例をより詳細に示すブロック図である。 図13は、実施形態に適用可能な、RGB画像データに対する色相の分割を説明するための図である。 図14は、実施形態に適用可能な色相領域の例を示す図である。 図15は、実施形態に適用可能な広域色相情報Huehを説明するための図である。 図16は、印刷媒体にコンポーネントグレー階調パッチと、コンポジットグレー階調パッチとが形成された状態を模式的に示す模式図である。 図17は、実施形態に係るキャリブレーション処理を示す一例のフローチャートである。
以下に添付図面を参照して、画像処理方法、画像処理装置および画像処理システムの実施形態を詳細に説明する。図1は、実施形態に係る画像処理装置としての画像形成装置の一例の構成を示す。図1において、画像形成装置100は、スキャナ1とプロッタ9とを備え、スキャナ1による原稿画像の読み取り機能と、プロッタ9による画像の形成機能と、スキャナ1で読み取った原稿画像に基づき画像形成を行う複写機能とを1台の筐体で実現するMFP(Multi Function Printer)として構成されている。
実施形態に係る画像形成装置100において、スキャナ1は、原稿を読み取った読取画像データとして、既存のR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色の各画像データ(纏めてRGB画像データと呼ぶ)に加えて、IR(近赤外)成分によるIR画像データの出力が可能とされる。画像形成装置100は、スキャナ1から出力されたRGB画像データおよびIR画像データの成分に基づきデバイス非依存の色空間成分に変換している。このデバイス非依存の色空間成分に基づきスキャナ1のカラーキャリブレーションを行うことで、より高精度なカラーキャリブレーションが実現可能となる。
なお、ここでは、実施形態に係る画像処理装置がMFPであるものとして説明するが、これはこの例に限定されない。実施形態に係る画像処理装置は、少なくとも、R、G、BおよびIRの各色成分による読取画像データの出力が可能なスキャナ1と、スキャナ1により読み取ったR、G、BおよびIRの各色成分に基づきデバイス非依存の色空間成分を生成する信号処理部とを含んでいればよい。
図1の画像形成装置100について、より詳細に説明する。図1において、画像形成装置100は、スキャナ1と、第1画像処理部2と、バス制御部3と、第2画像処理部4と、HDD(ハードディスクドライブ)5と、CPU(Central Processing Unit)6と、メモリ7と、プロッタI/F(インタフェース)部8と、プロッタ9と、操作表示部10と、回線I/F部11と、外部I/F部12と、SB(South Bridge)13と、ROM(Read Only Memory)14と、を備えている。
図2は、実施形態に適用可能なスキャナ1の一例の構成を示す。図2において、スキャナ1は、センサモジュール1000と、光源ドライバ1001と、光源1002Wおよび1002IRと、信号処理部1010と、A/D変換部1011と、制御・画像処理部1012と、を含む。スキャナ1は、セットされた原稿をスキャンすることで得られる原稿の濃淡情報から、各8ビットの、複数の波長成分による画像データを生成して出力する。
光源1002Wは、白色の光を発光する白色光源である。光源1002Wは、例えば、青色を発光するLED(Light Emitting Diode)と、青色の光に励起されて黄色の蛍光を発光する蛍光体とを組み合わせて構成され、青色と黄色の蛍光とによる疑似白色光を発光する。この場合、光源1002Wは、波長465nmの付近に強く鋭いピーク、波長560nmの付近に弱くなだらかなピークを持ち、800nmより長波長で強度が略0となる分光特性を持つ。一方、光源1002IRは、例えば800nm付近に強度のピークを持つ近赤外光を発光する光源であって、LEDを用いて構成することができる。光源ドライバ1001は、制御・画像処理部1012の制御に従い、光源1002Wおよび1002IRを駆動する。
センサモジュール1000は、CCD(Charge Coupled Device)などの光電変換素子が主走査方向にアレイ状に連なるラインセンサを含む。センサモジュール1000の各光電変換素子からアナログ方式の信号として出力された各検知信号が、信号処理部1010に供給される。信号処理部1010は、供給された各検知信号に対して、ゲイン調整、ノイズ除去など所定の信号処理を施して出力する。信号処理部1010から出力された、信号処理を施された各検知信号は、A/D変換部1011に供給される。
A/D変換部1011は、信号処理部1010から供給された各検知信号を、制御・画像処理部1012の制御に従い、例えばライン毎のタイミングでサンプリングして、それぞれディジタル方式の信号に変換する。A/D変換部1011でディジタル方式の信号に変換された各検知信号は、制御・画像処理部1012に供給される。制御・画像処理部1012は、供給された各検知信号を、R、GおよびBの各色成分、ならびに、IR成分それぞれについて、各々8ビットの画像データ(RGB画像データおよびIR画像データ)に変換して出力する。なお、制御・画像処理部1012から出力されるRGB画像データおよびIR画像データを、纏めて第1画像信号とする。
図3は、実施形態に適用可能な、スキャナ1におけるセンサモジュール1000と光源1002Wおよび1002IRとの配置の例を示す。なお、図3では、光源1002Wと光源1002IRとを纏めて光源1002として示している。この例では、スキャナ1は、密着センサ方式として示されている。すなわち、光源1002およびセンサモジュール1000とがコンタクトガラス1003一方の面の至近に配置され、コンタクトガラス1003の他方の面に原稿1004が配される。光源1002から射出された白色光および近赤外光がコンタクトガラス1003を介して原稿1004により反射され、反射光がコンタクトガラス1003を介してセンサモジュール1000により受光される。
図4は、実施形態に適用可能なセンサモジュール1000の構成の例を示す。図4(a)は、センサモジュール1000において主走査方向に一列に連なる各光電変換素子に、R用カラーフィルタ、G用カラーフィルタおよびB用カラーフィルタがそれぞれ配される例である。また、図4(b)に示すセンサモジュール1000’は、3本のラインセンサを含み、これら3本のラインセンサそれぞれにR用、G用およびB用のカラーフィルタを設けた例である。
図5は、実施形態に適用可能な、R用、G用およびB用それぞれのカラーフィルタの特性の例について説明する。図5において、横軸は波長を示す。縦軸は、フィルタ特性に対しては透過率を示し、読み取り対象の原稿(読取原稿)に対しては、反射率を示す。また、ここでは、780nm〜1080nmの波長領域を人間の目に感知できない非可視域(NIR:Near InfraRed)とし、780nm〜380nmを人間の目で感知可能な可視域であるとしている。
図5において、特性線210、211および212は、それぞれR用、G用およびB用のカラーフィルタ(以下、それぞれR用フィルタ、G用フィルタおよびB用フィルタと呼ぶ)の分光透過率の例を示す。また、特性線213は、読み取り対象の原稿(読取原稿)の分光反射率の例を示す。各特性線210、211および212が示す各領域の、読取原稿の特性線213が示す領域と重なる領域の積分値が、R、GおよびB各色成分の読み取り値となる。
より詳細には、R用フィルタの透過率は、特性線210に示されるように、630nm付近のピークから非可視域の1080nmに向けてなだらかに減少している。G用フィルタの透過率は、特性線211に示されるように、530nm付近と非可視域の830nm付近とにそれぞれピークを持つ。また、B用フィルタの透過率は、特性線212に示されるように、430nmと非可視域の830nmとにそれぞれピークを持つ。さらに、読取原稿は、特性線213に示されるように、430nm付近〜1080nmの範囲で、70%以上の反射率となっている。
ここで、IR領域の光を発光する光源1002IRの分光特性が、図5において特性線214で示されるように、800nm〜830nmの範囲内に強いピークを持つものとする。この場合、センサモジュール1000は、上述したR用フィルタ、G用フィルタおよびB用フィルタそれぞれの非可視域での特性により、光源1002IRによる光を検知可能である。
例えば、制御・画像処理部1012は、1ラインにおいて光源1002Wおよび1002IRが順次に点灯するように、光源ドライバ1001を制御する。制御・画像処理部1012は、光源ドライバ1001の制御と同期してA/D変換部1011のサンプリングタイミングを制御し、光源1002Wが点灯しているタイミングでサンプリングした検知信号を、R、GおよびB各色成分の検知信号とし、光源1002IRが点灯しているタイミングでサンプリングした検知信号を、IR成分の検知信号とする。
なお、図2〜図4を用いて説明したスキャナ1の構成は一例であって、この例に限定されるものではない。例えば、スキャナ1は、密着センサ方式に限らず、光学縮小方式であってもよい。また、上述では、光源1002Wおよび1002IRを1ラインにおいて順次点灯させ、センサモジュール1000から出力された検知信号を、光源1002Wおよび1002IRの点灯と同期したタイミングでサンプリングしているが、これはこの例に限定されない。例えば、R、G、BおよびIR各波長の光を発光する光源をそれぞれ設け、センサモジュール1000をカラーフィルタを用いない形式とし、各光源をライン毎に順次点灯させる方式でもよい。
さらに、光源1002Wおよび1002IRを用いる例において、図4(c)にセンサモジュール1000”として例示するように、主走査方向に一列に連なる各光電変換素子に、R用、G用およびB用カラーフィルタに加え、IRの波長領域を選択的に透過させるIR用カラーフィルタを設けてもよい。このIR用カラーフィルタを追加する構成は、図4(b)の構成にも同様に適用可能である。
図1の説明に戻り、第1画像処理部2は、スキャナ1の制御・画像処理部1012から出力されたRGB画像データおよびIR画像データに対し、予め定めた特性に統一する処理を実行して出力する。
図6は、実施形態に適用可能な、第1画像処理部2の構成の例を示す。図6に示すように、第1画像処理部2は、スキャナ補正処理部30と、γ変換部31と、フィルタ処理部32と、色変換部33と、変倍処理部34と、像域分離部35と、分離デコード部36と、を備えている。
これらスキャナ補正処理部30、γ変換部31、フィルタ処理部32、色変換部33、変倍処理部34、像域分離部35および分離デコード部36は、互いに協働して動作する1または複数のハードウェアにより構成される。これに限らず、スキャナ補正処理部30、γ変換部31、フィルタ処理部32、色変換部33、変倍処理部34、像域分離部35および分離デコード部36を、CPU上で所定のプログラムが動作することにより構成してもよい。
スキャナ補正処理部30は、スキャナ1から出力された各画像データに対し、シェーディングなど、スキャナ1の機構上(照度歪みなど)発生する読取りムラなどを補正する。また、スキャナ補正処理部30は、スキャナ1の特性を調整するために用いる情報が格納されるキャリブレーションテーブルを含む。キャリブレーションテーブルは、例えば、スキャナ1から出力されるR、G、BおよびIRの各画像データのゲインを調整するためのデータが格納される。
γ変換部31は、例えば、スキャナ1から受け取ったRGB画像データおよびIR画像データのうち、RGB画像データのγ特性を予め定められた特性(例えば、1/2.2乗)になるように変換する。フィルタ処理部32は、RGB画像データに対し、スキャナ1のMTF(Modulation Transfer Function)特性の補正を行う。また、フィルタ処理部32は、モアレを防止するために、読取画像の周波数特性を変えて、画像を明瞭、また滑らかにする。
色変換部33は、フィルタ処理部32から出力されたR、G、BおよびIRの各画像データ値を、デバイス非依存の色空間成分と、墨成分とに変換する。デバイス非依存の色空間成分としては、三刺激値(XYZ色度値)、L***表色系(CIE L***)、L***表色系(CIE LUV)などを適用できる。以下では、特に記載の無い限り、デバイス非依存の色空間成分としてXYZ色度値を用いるものとする。色変換部33は、これらデバイス非依存の色空間成分と、墨成分とを含む画像データを出力する。
ここで出力される墨成分は、RGB画像データおよびIR画像データから予測される成分であり、以降、適宜、予測墨成分と呼ぶ。また、色変換部33から出力されるデバイス非依存の色空間成分を、以降、特に記載の無い限り、統一RGB画像データと呼ぶ。また、色変換部33から出力される、デバイス非依存の色空間成分と予測墨成分とを含む画像データを、第2画像信号とする。
変倍処理部34は、色変換部33から出力された各画像データ、すなわち、統一RGB画像データおよび予測墨成分の画像データのサイズ(解像度)を予め定めた特性に統一する。変倍処理部34は、例えば各画像データのサイズ(解像度)を600dpi(dot per inch)に変換する。変倍処理部34から出力された各画像データは、バス制御部3を介してHDD5に格納される。このとき、変倍処理部34から出力された各画像データをCPU6にて所定の符号化方式で圧縮符号化してHDD5に格納することができる。
第1画像処理部2において、像域分離部35は、原稿の持つ特徴的なエリアの抽出を行う。例えば、像域分離部35は、一般的な印刷によって形成されている網点部の抽出、文字などのエッジ部の抽出、その画像データの有彩/無彩の判定、および、背景画像が白であるかの白背景の判定などを行う。分離デコード部36は、像域分離部35から出力された像域分離信号を、後述する第2画像処理部4での処理に必要な情報量にデコードし、画像データの付帯情報として出力する。像域分離信号は、例えば、文字中/非文字中、文字/非文字、高線数網点/非高線数網点、有彩/無彩、白地/非白地、低線数網点/非低線数網点、などの情報を含む。
バス制御部3は、画像形成装置100内で必要な画像データや制御コマンドなどの各種データのやり取りを行うデータバスの制御部である。バス制御部3は、複数種のバス規格間のブリッジ機能も有している。本実施形態では、バス制御部3は、第1画像処理部2、第2画像処理部4およびCPU6とは、PCI−Express(Peripheral Component Interconnect-express)バスで接続し、HDD5とはATA(Advanced Technology Attachment)バスで接続し、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)化している。
第2画像処理部4は、第1画像処理部2から出力されHDD5に格納された画像データおよび付帯情報に対し、ユーザから指定される出力先に適した画像処理を実行する。例えば、第2画像処理部4は、第1画像処理部2から出力された、スキャナ1によるRGB各色の画像データとは異なる色の組み合わせによる画像データを生成する。例えば、第2画像処理部4は、第1画像処理部2から出力された各画像データに基づき、C、M、YおよびKの各色による画像データを生成する。
図7は、実施形態に適用可能な第2画像処理部4の一例の構成を示す。図7に示すように、第2画像処理部4は、フィルタ処理部50と、色変換部51と、パターン発生部52と、変倍処理部53と、プリンタγ補正部54と、階調処理部55と、を備えている。
これらフィルタ処理部50、色変換部51、パターン発生部52、変倍処理部53、プリンタγ補正部54および階調処理部55は、互いに協働して動作する1または複数のハードウェアにより構成される。これに限らず、フィルタ処理部50、色変換部51、パターン発生部52、変倍処理部53、プリンタγ補正部54および階調処理部55を、CPU上で所定のプログラムが動作することにより構成してもよい。
フィルタ処理部50は、統一RGB画像データおよび予測墨成分の画像データの鮮鋭性を、プロッタ9に出力する場合の再現性が良くなるように補正する。具体的には、フィルタ処理部50は、設定された画質モードに応じてデコードされた属性情報(像域分離信号)に従って鮮鋭化処理または平滑化処理を実行する。例えば、フィルタ処理部50は、文字原稿モードでは文字を明瞭とするために鮮鋭化処理を実行する。また、フィルタ処理部50は、写真モードでは滑らかに階調性を表現するため平滑化処理を実行する。
色変換部51は、各8ビットの統一RGB画像データと、予測墨成分の画像データとを受け取ると、受け取った各画像データを、プロッタ9用の色空間であるCMYK各色の、各8ビットの画像データ(纏めてCMYK画像データと呼ぶ)に変換する。詳細は後述するが、色変換部51は、統一RGB画像データをC、MおよびY各色の成分によるCMY画像データに変換する。色変換部51は、このCMY画像データに対して予測墨成分に基づく墨処理を施して、プロッタ9用の色空間成分であるC、M、YおよびK各色の色成分を生成し、生成したC、M、YおよびK各色の色成分による各画像データをCMYK画像データとして出力する。
また、色変換部51は、CMYK画像データに対して、設定された画質モード情報に応じてデコードされた属性情報(像域分離信号)に従って最適な色調整を実行することができる。
変倍処理部53は、CMYK画像データのサイズ(解像度)を、プロッタ9の再現性能に従って変換する。プロッタ9の性能(解像度)によっては変倍処理部53が変換を行わなくてもよい。プリンタγ補正部54は、予めCPU6で生成され、プロッタ出力用に設定されたCMYK用のエッジ用γテーブルおよび非エッジ用γテーブルを用いて、CMYK版毎のテーブル変換を実行してγ補正を実行する。
階調処理部55は、プリンタγ補正部54から出力されたCMYK画像データを受け取ると、プロッタ9の階調処理能力に従った階調数変換処理を行う。階調処理部55は、例えば、CMYK画像データにおけるC、M、YおよびKの各画像データの2ビットに疑似中間調処理の1つである誤差拡散法を用いて階調数変換処理を行う。
パターン発生部52は、スキャナ1のカラーキャリブレーションに用いるグレースケールによるパッチパターンを発生する。詳細は後述するが、実施形態では、パターン発生部52は、C、MおよびYの各色成分を用いて作成したグレーであるコンポジットグレーによるパッチパターンと、K色成分(墨成分)のみを用いて作成したグレー(コンポーネントグレーと呼ぶ)によるパッチパターンとを発生させる。パターン発生部52は、パッチパターンの発生時のみ動作し、それ以外では、入力信号をそのまま出力する。
CPU6は、画像形成装置100の制御全体を司るマイクロプロセッサである。実施形態に係る画像形成装置100では、一例として、CPUコア単体に何らかの機能を追加したインテグレーテッドCPUを使用することができる。ROM14は、CPU6が画像形成装置100の制御を行う際のプログラム(ブートプログラムを含む)を格納する。
SB13は、パーソナルコンピュータに使用されるチップセットの1つとして用いられる汎用の電子デバイスである。SB13は、主にPCI−ExpressとISA(Industry Standard Architecture)ブリッジとを含むCPUシステムを構築する際に使用されるバスのブリッジ機能を汎用回路化したものであり、図1の例ではROM14との間をブリッジしている。
メモリ7は、揮発性のメモリであって、複数種のバス規格間をブリッジする際の速度差や、接続された部品自体の処理速度差を吸収するために、一時的にやりとりするデータを記憶する。また、メモリ7は、CPU6が画像形成装置100を制御する際に、プログラムや中間処理データを一時的に記憶する。CPU6は高速処理を求められるため、通常起動時にROM14に記憶されたブートプログラムによってシステムを起動する。CPU6は、起動後は高速にアクセス可能なメモリ7に展開されたプログラムによって処理を行う。メモリ7は、例えば規格化されパーソナルコンピュータに使用されているDIMM(Dual Inline Memory Module)を使用することができる。
プロッタI/F部8は、CPU6にインテグレートされた汎用規格I/F経由で送られてくるCMYK画像データを受け取ると、プロッタ9の専用I/Fに出力するバスブリッジ処理を行う。汎用規格I/Fは、例えばPCI−Expressバスである。
プロッタ9は、CMYK画像データを受け取ると、受け取ったCMYK画像データに従い、印刷媒体に対する画像形成を実行する。プロッタ9は、印刷媒体に対する画像形成を、レーザビームを用いてトナーにより画像を形成する電子写真プロセスにより行ってもよいし、ノズルから吐出されるインクを用いて画像を形成するインクジェット方式により行ってもよい。以下では、プロッタ9は、電子写真プロセスにより、C、M、Y、K各色のトナーを用いて画像を形成するものとする。
操作表示部10は、画像形成装置100におけるUI(User Interface)を形成する。操作表示部10は、例えば表示デバイスとしてのLCD(Liquid Crystal Display)と、ユーザ入力を受け付ける入力デバイスとしてのキースイッチとを備える。操作表示部10は、画像形成装置100の各種状態や操作方法をLCDに表示し、ユーザによるキースイッチへの入力を検知する。操作表示部10は、例えばPCI−Expressバスを介してCPU6と接続する。
回線I/F部11は、PCI−Expressバスと電話回線とを接続する。回線I/F部11により、画像形成装置100は、電話回線を介して各種データのやり取りを行うことが可能になる。FAX15は通常のファクシミリであり、電話回線を介して画像形成装置100と画像データの授受を行う。
外部I/F部12は、LAN(Local Area Network)といったネットワークと接続するためのインタフェースである。外部I/F部12は、PCI−Expressバスと外部装置、例えばPC(パーソナルコンピュータ)16とを、ネットワークを介して接続する。外部I/F部12により、画像形成装置100は、外部装置と各種データのやり取りを行うことが可能になる。
(実施形態に適用可能な画像形成装置の動作の例)
ここで、上述した画像形成装置100の動作の例として、複写動作について説明する。ユーザは、原稿をスキャナ1にセットし、操作表示部10により、所望する画質モードなどの設定と複写開始の入力を行う。操作表示部10は、ユーザにより入力された情報を、画像形成装置100内部の制御コマンドデータに変換し発行する。発行された制御コマンドデータは、PCI−Expressバスを介してCPU6に通知される。
CPU6は、複写開始の制御コマンドデータに従って、複写動作プロセスのプログラムを実行し、複写動作に必要な設定や動作を順に行っていく。以下に動作プロセスを順に記す。
スキャナ1は、原稿をスキャンして得られたRGB画像データおよびIR画像データを出力する。第1画像処理部2では、設定された画質モードが何れのモードであっても、図6を用いて説明したスキャナ補正処理部30、γ変換部31、フィルタ処理部32、および色変換部33を経て、各8ビットの統一RGB画像データと、予測墨成分の画像データとを生成する。第1画像処理部2で生成されたこれら各画像データは、バス制御部3に送られる。
また、分離デコード部36は、像域分離部35で生成された像域分離信号を、設定された画質モードに応じて、第2画像処理部4での処理に必要な情報にデコードして出力する。
バス制御部3は、第1画像処理部2から出力された統一RGB画像データおよび墨成分の画像データと、設定された画像モードに応じて属性の異なる属性情報(像域分離信号)とを受け取ると、受け取った統一RGB画像データおよび属性情報を、必要に応じてCPU6を介して符号化し、メモリ7およびHDD5に格納する。
メモリ7およびHDD5に格納された統一RGB画像データおよび墨成分の画像データと、画素毎の属性情報とが、必要に応じてCPU6で復号された後、バス制御部3を介して、第2画像処理部4に送られる。第2画像処理部4は、受け取った統一RGB画像データおよび墨成分の画像データを、プロッタ9用のCMYK画像データに変換して出力する。このとき、第2画像処理部4は、出力するCMYK画像データに対して、画素毎の属性情報に基づいた処理を施すことができる。
バス制御部3は、第2画像処理部4から出力されたCMYK画像データを受け取ると、CPU6を介してメモリ7に記憶する。メモリ7に記憶されたCMYK画像データは、CPU6およびプロッタI/F部8を介して、プロッタ9に送られる。プロッタ9は、受け取ったCMYK画像データに従い印刷媒体に対して画像形成を行い、原稿の複写が生成される。
(実施形態に係るカラーキャリブレーションの詳細)
次に、実施形態に係るカラーキャリブレーションについて、詳細に説明する。実施形態に係るカラーキャリブレーションの説明に先立って、理解を容易とするために、既存のカラーキャリブレーションについて説明する。
原稿画像を読み取って画像データを出力するスキャナ装置は、一般的に、R色、G色およびB色各色によるRGB画像データとして、読取画像データを出力する。スキャナ装置におけるキャリブレーションは、この読取画像データであるRGB画像データの各色の値が適切となるように調整する処理となる。上述した画像形成装置100のように、スキャナ1とプロッタ9とが同一筐体内に設けられる場合には、キャリブレーション用のパッチ画像をプロッタ9にて印刷媒体上に形成し、印刷媒体に形成されたパッチ画像をスキャナ1により読み取って、キャリブレーションを行うことになる。
一般的に、スキャナ装置は、出力がRGB画像データであるのに対して、プロッタ装置は、CMYK画像データにより画像形成を行う。このように、センサ側(スキャナ装置側)と出力側(プロッタ装置側)とで色の組み合わせが異なる場合、センサ側の出力であるRGB画像データのRGB値を、デバイス非依存の色空間成分、例えばXYZ色度値に変換し、このXYZ色度値をCMYK値によるCMYK画像データに変換する処理が行われる。上述したパッチ画像は、例えば、XYZ色度値に基づき算出したグレースケールをCMYK画像データに変換して作成する。
XYZ色度値と、RGB値あるいはCMYK値との間の変換処理は、行列による1次変換を用いて近似する方法の他、多項式変換による近似を用いた方法、ニューラルネットワークを利用する方法、ルックアップテーブルを利用する方法など、様々な方法により実行される。
ここで、条件等色について、図8を用いて概略的に説明する。図8において、横軸は波長、縦軸は分光強度を示している。2つの色が、特性線220および221のように異なる分光分布特性を有していても、ある観察条件下において、XYZ色度値が同一となる(同一色に見える)場合がある。これを、条件等色と呼ぶ。
ここで、条件等色の関係にある2つの色として、第1色をCMY各色で構成される3次色、第2色を、墨色(K)、墨色(K)を含む混色による3次色(例えばCMK、MYK、CYK)、さらには、CMYKによる4次色とした場合について考える。この場合、第1色と第2色とでは、XYZ色度値が同一でも、例えばスキャナ装置においてRGB値を検知した場合に異なる特性となる可能性がある。したがって、例えば行列による1次変換では、十分な近似を行うことが困難である。
例えば、1次変換を行うための行列を、上述の第1色および第2色の両方に適合するように求めた場合、行列によって近似される特性は、第1色の特性と第2色の特性との平均のような特性となる。図9は、RGB値を検出するセンサによって黒色を読み取った例を模式的に示すもので、横軸は濃度を示し、縦軸は読み取り値をそれぞれ示している。また、図9において、「●(黒丸)」は、CMY各色の組み合わせで生成した黒色(第1色)の例を示し、当該黒色とXYZ色度値が同一となるようにMYK各色の組み合わせで生成した黒色(第2色)の例を、「□(白四角)」として示している。この場合、第1色および第2色に適合するように決定した行列を用いた1次変換による近似では、特性線230で示されるように、第1色および第2色の両方について、十分な近似が困難となっている。
そこで、実施形態では、上述したように、スキャナ1においてRGB値に加えてIR値を取得し、RGB値およびIR値に対して所定の変換式を適用して、XYZ色度値といったデバイス非依存の色空間成分を生成する。
図10は、印刷媒体上に、C、M、Y各色によるコンポジットグレーによる黒色と、K色単色によるコンポーネングレーによる黒色とを形成した場合の、C、M、Y、K各色のトナーの反射率の例を示す。図10において、横軸は波長を示し、縦軸は反射率を示している。上述した図5と同様に、780nm〜1080nmの波長領域を人間の目に感知できない非可視域とし、780nm〜380nmを人間の目で感知可能な可視域であるとしている。また、図10において、特性線200〜203は、それぞれC、M、Y、K各色のトナーの反射率の例を示し、特性線204は、印刷媒体の反射率の例を示している。
コンポジットグレーによる黒色では、特性線200、201および202に示されるように、C色が波長580nm付近〜730nm付近、M色が波長520nm付近〜580nm付近、Y色が波長380nm〜480nm付近で、それぞれ反射率が略5%以下となり、これらの組み合わせにより可視域において黒色が表現されている。一方、非可視域(特に波長800nm以上)では、C色、M色およびY色の何れも一様に反射率80%以上となっている。
一方、K色のトナーは、光を吸収する特性のため、反射率は、可視域において略5%以下、非可視域においても略8%以下となっている。
このように、非可視域において、コンポジットグレーによる黒色と、コンポーネントグレーによる黒色との差異が明確である。したがって、可視域の反射率の測定結果に加えて、非可視域の反射率の測定結果を用いることで、C、M、Yの各色のトナーと、K色のトナーとを用いた画像形成をより高精度に制御できる。
実施形態では、例えば、CMY各色の組み合わせで生成した黒色(グレースケール)による第1色によるパッチパターンと、CMY各色から選択した色と黒色との組み合わせ、あるいは、黒色のみを用いて生成した第2色によるパッチパターンとを、プロッタ9により印刷媒体上に形成する。これら第1色によるパッチパターンと第2色によるパッチパターンとをスキャナ1により読み取り、それぞれRGB値およびIR値を取得する。
第1色によるパッチパターンから読み取ったRGB値およびIR値と、第2色によるパッチパターンから読み取ったRGB値およびIR値と、のそれぞれについて、デバイス非依存の色空間成分を生成する。このとき、第1色によるパッチパターンと第2色によるパッチパターンとに、それぞれ異なる変換式を適用する。これにより、第1色および第2色それぞれに対して十分な近似を行うことができ、スキャナ1に対してより高精度なカラーキャリブレーションを実施することが可能となる。
図11は、実施形態に係る、画像形成装置100における処理の流れを説明するための一例の機能ブロック図を示す。なお、図11において、上述した図1と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
図11において、画像形成装置100は、第1色変換部1100と、γ変換部1101と、第2色変換部1102と、墨処理部1103と、ACS判定部1110と、を含む。これらのうち、第1色変換部1100およびγ変換部1101は、図1の第1画像処理部2の例えば色変換部33に含まれる機能部であり、第2色変換部1102および墨処理部1103は、第2画像処理部4の例えば色変換部51に含まれる機能部である。
スキャナ1から出力されたRGB画像データおよびIR画像データが第1色変換部1100に入力される。第1色変換部1100は、図6を用いて説明した色変換部33に対応し、入力されたRGB画像データおよびIR画像データを、R’G’B’画像データおよびK(黒色)画像データに変換する。第1色変換部1100から出力されたR’G’B’画像データおよびK画像データは、γ変換部1101に供給され、統一RGB画像データおよびK’画像データとされて出力される。
図12は、実施形態に係る第1色変換部1100およびγ変換部1101の構成の例を、より詳細に示す。図12において、第1色変換部1100は、色相判定部1120と、係数記憶部1121と、マスキング演算部1130とを含む。また、γ変換部1101は、γ変換処理部1140と、統一色情報生成部1141とを含む。
スキャナ1から出力されたRGB画像データおよびIR画像データが、スキャナ補正処理部30、γ変換部31およびフィルタ処理部32を介して第1色変換部1100に入力される。第1色変換部1100に入力されたRGB画像データおよびIR画像データは、マスキング演算部1130に供給される。また、入力されたRGB画像データおよびIR画像データのうちRGB画像データが色相判定部1120に供給される。
マスキング演算部1130は、供給されたRGB画像データおよびIR画像データに対して下記の式(1)〜式(4)に示す演算式を用いてマスキング演算を施す。マスキング演算部1130に供給されたRGB画像データおよびIR画像データは、このマスキング演算により、RGB画像データおよびIR画像データに基づくR成分、G成分およびB成分によるR’G’B’画像データと、K画像データとに線形変換される。
out=coef_rr[hue]×Rin+coef_rg[hue]×Gin+coef_rb[hue]×Bin+coef_rk[hue]×IRin+constR …(1)
out=coef_gr[hue]×Rin+coef_gg[hue]×Gin+coef_gb[hue]×Bin+coef_gk[hue]×IRin+constG …(2)
out=coef_br[hue]×Rin+coef_bg[hue]×Gin+coef_bb[hue]×Bin+coef_bk[hue]×IRin+constB …(3)
out=coef_kr[hue]×Rin+coef_kg[hue]×Gin+coef_kb[hue]×Bin+coef_kk[hue]×IRin+constK …(4)
なお、式(1)〜式(4)において、Rin、Gin、BinおよびIRinは、それぞれ、スキャナ1から出力されるRGB画像データおよびIR画像データによるR成分、G成分、B成分およびIR成分である。Rout、Gout、GoutおよびKoutは、それぞれ式(1)〜式(3)により算出されるR成分、G成分およびB成分である。Rout、Gout、Boutは、それぞれ標準R成分、標準G成分および標準B成分である。標準R成分、標準G成分および標準B成分としては、例えばCIE XYZ色空間によるX成分、Y成分およびZ成分を適用できる。Koutは、式(4)により算出されるK成分である。K成分としては、例えばCIE XYZ色空間によるY成分を適用できる。
また、式(1)の各マスキング係数coef_rr[hue]、coef_rg[hue]、coef_rb[hue]およびcoef_rk[hue]と、式(2)の各マスキング係数coef_gr[hue]、coef_gg[hue]、coef_gb[hue]およびcoef_gk[hue]と、式(3)の各マスキング係数coef_br[hue]、coef_bg[hue]、coef_bb[hue]およびcoef_bk[hue]と、式(4)の各マスキング係数coef_kr[hue]、coef_kg[hue]、coef_kb[hue]およびcoef_kk[hue]は(以下、適宜、纏めてマスキング係数coef()と記載する)、それぞれ引数[hue]により指定されて係数記憶部1121により読み出されて、式(1)〜式(4)それぞれに適用される。
各マスキング係数coef()の算出方法および引数[hue]の決定方法については、後述する。
式(1)〜式(4)において、値constR、constG、constBおよびconstKは、予め求められた定数である。これらの定数は、例えば予め実験的に求めることができる。
上述した引数[hue]は、スキャナ1から供給されたRGB画像データに基づき、色相判定部1120により決定される。色相判定部1120による引数[hue]の決定処理について説明する。
第1色変換部1100において、色相判定部1120は、供給されたRGB画像データの色相成分を算出し、色相毎に分割した領域毎にマスキング係数coef()を設定するための引数[hue]を決定する。色相判定部1120は、RGB画像データに対する色相の分割を、図13に示すように、IR成分を除いた3次元の色空間全体に対し、無彩色軸(Dr=Dg=Db)を中心として放射状に拡がる平面により、色空間を分割することで行う。
なお、図13において、互いに直交する軸Dr、DgおよびDbは、それぞれR色成分、G色成分およびB色成分を示し、軸Dr、DgおよびDbが交差する点が黒色(色#1)、各色成分の正規化された最大値を結ぶ点が白色(色#2)となる。図13に示す色#3および色#4については、後述する。
具体的な色相判定は、RGB画像データを色相データHUEに変換して、予め定めた色相境界値Hue00〜Hue11と比較し、その結果により、色相データHUEが色相を12分割した色相領域の何れに属するかを判定することで行う。色相データHUEが属する色相領域に従い、引数[hue]を決定する。
図14は、実施形態に適用可能な色相領域の例を示すもので、図13の色空間を、無彩色軸の例えば色#2から色#1に向けた方向に見た場合に相当する。図14に示すように、色空間の分割点を1次色(C、M、Y)と2次色(R、G、B)に対し、それぞれ2点の、合計で12点で分割を行っている。この12点の分割点を、図14に、色Rm、Ry、Yr、Yg、…、Mb、Mrとして示し、これらの分割点が色相境界となる。例えば、色Rmから左回り(反時計回り)に、各色Rm、Ry、Yr、…、Mb、Mrが、それぞれ色相境界値Hue00、Hue01、Hue02、…、Hue10、Hue11に対応するものとする。
表1は、この各色相境界の色と、スキャナ1の読み取り値に基づく色を示すスキャナベクタと、プロッタ9の出力値(印字色)に対応する色を示すプリンタベクタとの関係の例を示す。
表1において、色W(白色)および色K(黒色)は、無彩色軸上の色であって無彩色であり、図14の色相境界にそれぞれ対応する他の色Rm、Ry、Yr、Yg、…、Mb、Mrは、有彩色である。色名において、大文字は、例えば主色を示し、小文字は、主色に対する色味をCMYの各色にて示している。また、各スキャナベクタにおける3つの値は、それぞれ対応する主色(例えばRm)を表現するためのRGB各色の値(例えばRmr、RmgおよびRmb)を示している。プリンタベクタについても同様に、各プリンタベクタにおける4つの値は、それぞれ対応する主色を形成するためのCMYK各色の値を示している。
実施形態に適用可能な色相判定処理について、より詳細に説明する。先ず、色相判定部1120は、色差生成処理によリ、RGB画像データに基づき色差データ(X,Y)を求める。ここでは、色差データXおよびYを、RGB画像データの各画像データ(R画像データ、G画像データおよびB画像データ)の値をそれぞれR、GおよびBとすると、X=G−R、Y=B−Gとして求めるものとする。
次に、色相判定部1120は、色差生成処理によリ求めた色差データ(X,Y)から、広域色相検出処理により、広域色相情報Huehを生成する。広域色相情報Huehは、図15に示されるように、色差データ(X,Y)によるX−Y平面を8分割した場合の位置を示す。図15において、8分割した各領域に対して、広域色相情報Hueh=0〜7が、X軸の正方向から左回り(反時計回り)に順に割り当てられている。
広域色相情報Huehの生成方法について説明する。先ず、条件要素HT0〜HT7を下記のように定義する。
HT0=(Y≧0)
HT1=(Y≧X)
HT2=(X≦0)
HT3=(Y≦−X)
HT4=(Y≦0)
HT5=(Y≦X)
HT6=(X≧0)
HT7=(Y≧−X)
条件要素HT0〜HT7に基づき、下記の各条件式に従い、広域色相情報Huehを検出する。なお、各条件式において、記号「!」は、その要素の論理否定を示し、記号「:」は、当該記号の左側の条件において、当該記号の右側の式が成り立つことを示す。また、記号「∧」は、論理積を示す。
!HT1∧HT0:Hueh=0
!HT2∧HT1:Hueh=1
!HT3∧HT2:Hueh=2
!HT4∧HT3:Hueh=3
!HT5∧HT4:Hueh=4
!HT6∧HT5:Hueh=5
!HT7∧HT6:Hueh=6
!HT0∧HT7:Hueh=7
次に、色相判定部1120は、広域色相情報Huehに応じて色差情報(XA,YA)を生成する。色差情報(XA,YA)は、色差平面(X,Y)を回転して、図15においてHueh=0が割り当てられた領域に移動させた場合の座標である。記号の意味は、上述と同様である。
Hueh=0:XA=X,YA=Y
Hueh=1:XA=X+Y,YA=−X+Y
Hueh=2:XA=Y,YA=−X
Hueh=3:XA=−X+Y,YA=−X−Y
Hueh=4:XA=−X,YA=−Y
Hueh=5:XA=−X−Y,YA=X−Y
Hueh=6:XA=−Y,YA=X
Hueh=7:XA=X−Y,YA=X+Y
次に、色相判定部1120は、色差情報(XA,YA)から狭域色相情報Huelを生成する。狭域色相情報Huelは、色差平面座標の傾き(Huel/32=YA/XA)である。狭域色相情報Huelは、色差XAが0の場合には、Huel=0x1Fとなり、それ以外の場合にHuel=(YA<<5)/XAとなる。なお、「0x」は、後続する文字が16進数の値であることを示し、「<<」は、ビット左シフト演算を示す。
次に、色相判定部1120は、それぞれ例えば8ビットの色相境界値Hue00〜Hue11と色相情報Huehlとの大小関係を比較する色相領域判定処理を行い、判定結果に従い色相領域Hueを生成する。色相情報Huehlは、広域色相情報Huehと狭域色相情報Huelとを含むもので、Huehl(Hueh,Huel)である。色相領域Hueは、色相情報Huehlと色相境界値Hue00〜Hue11とに基づき、下記のように生成される。
Hue00<Huehl≦Hue01:Hue=1
Hue01<Huehl≦Hue02:Hue=2
Hue02<Huehl≦Hue03:Hue=3
Hue03<Huehl≦Hue04:Hue=4
Hue04<Huehl≦Hue05:Hue=5
Hue05<Huehl≦Hue06:Hue=6
Hue06<Huehl≦Hue07:Hue=7
Hue07<Huehl≦Hue08:Hue=8
Hue08<Huehl≦Hue09:Hue=9
Hue09<Huehl≦Hue10:Hue=10
Hue10<Huehl≦Hue11:Hue=11
(Hue11<Huehl)∧(Huehl≦Hue00):Hue=0
このようにして求めた色相領域Hueの値0〜11が、マスキング係数を決定する引数[hue]として用いられる。
次に、上述したマスキング係数coef()を算出する方法について説明する。図13を再び参照し、各色相(各引数[hue])におけるマスキング係数coef()は、無彩色軸上の2点(例えば色#1および色#2)、および、色相領域Hueを構成する2つの色相境界上の2点(例えば色#3および色#4)の合計4点について、マスキング演算前後における色成分の対応関係が判れば決定できる。
ここで、マスキング演算前のR、G、BおよびIRの色成分をそれぞれDxr、Dxg、DxbおよびDxirとし、マスキング演算の結果として得られるR’、G’、B’、Kの色成分をそれぞれDxr'、Dxg'、Dxb'およびDxkとする。なお、「x」は、色#1、#2、#3および#4における「1」、「2」、「3」および「4」をそれぞれ示している。
図13において、上述の色#1〜色#4による4点の色成分の対応関係が、下記の行列式(5)で表されるとする。
行列式(5)において、色#1〜色#4それぞれの対応を示す行列式の左辺および右辺を纏めて、下記の行列式(6)とする。
行列式(6)の左辺および右辺を、マスキング係数を示す行列|X|を用いて、下記の行列式(7)のように対応付けられる。
行列|X|は、行列式(7)の右辺の逆行列を用いて、行列式(8)のように求められる。
こうして求めた行列|X|において、第1行目の各値が式(1)の各マスキング係数coef_rr[hue]、coef_rg[hue]、coef_rb[hue]およびcoef_rk[hue]に対応し、第2行の各値が式(2)の各マスキング係数coef_gr[hue]、coef_gg[hue]、coef_gb[hue]およびcoef_gk[hue]の各値に対応する。同様に、行列|X|の第3行目の各値が式(3)の各マスキング係数coef_br[hue]、coef_bg[hue]、coef_bb[hue]およびcoef_bk[hue]の各値に対応し、第4行目の各値が式(4)の各マスキング係数coef_kr[hue]、coef_kg[hue]、coef_kb[hue]およびcoef_kk[hue]に対応する。
上述の行列式(5)〜行列式(8)の演算を、各色相領域Hue=0〜11について、それぞれ実行し、各色相領域Hueのマスキング係数coef()を予め作成しておく。
なお、行列式(5)に用いる色#1〜色#4によるRGB画像データおよびIR画像データは、例えば印刷媒体上に所定に形成したパッチパターンを、分光計などにより測定した値に基づき取得することが考えられる。作成された各色相領域Hueのマスキング係数coef()は、それぞれ引数[hue](引数[0]〜[11])と関連付けて、係数記憶部1121に記憶させておく。
マスキング演算部1130は、入力されたRGB画像データおよびIR画像データを上述した式(1)〜式(4)を用いて変換したR’G’B’画像データおよびK画像データをγ変換部1101に入力する。γ変換部1101において、これらR’G’B’画像データおよびK画像データは、γ変換処理部1140において所定のγ変換処理を施される。γ変換処理部1140においてK画像データがγ変換処理されたK’画像データは、K色の予測成分として、γ変換部1101からそのまま出力される。
一方、γ変換処理部1140においてγ変換処理されたR’G’B’画像データは、統一色情報生成部1141に供給される。統一色情報生成部1141は、供給されたR’G’B’画像データを、既知の変換方法により、デバイス非依存の色空間成分による画像データに変換する。このデバイス非依存の色空間成分による画像データを、統一RGB画像データと呼ぶ。
統一RGB画像データは、三刺激値によるXYZ表色系による画像データや、国際電気標準会議(IEC)が定めた国際標準規格であるsRGBによる画像データを適用できる。これに限らず、統一RGB画像データとして、CIE(国際照明委員会)により定められるL***表色系やL***表色系による画像データを適用してもよい。ここでは、統一RGB画像データとして、XYZ表色系による画像データを用いるものとする。統一RGB画像データは、上述のK’画像データと共に、γ変換部1101から出力される。
図11の説明に戻り、γ変換部1101から出力された統一RGB画像データおよびK’画像データのうち、統一RGB画像データが第2色変換部1102に供給され、K’画像データが墨処理部1103に供給される。第2色変換部1102は、統一RGB画像データを、プロッタ9に対応するCMY画像データに変換する。第2色変換部1102は、統一RGB画像データからCMY画像データへの変換を、例えばメモリマップ補間法など既知の変換方法により実行する。第2色変換部1102は、統一RGB画像データを変換したCMY画像データを、墨処理部1103に供給する。
墨処理部1103は、第2色変換部1102から供給されたCMY画像データと、γ変換部1101から直接的に供給されたK’画像データとに対して下記の式(9)〜式(12)に示す演算式を用いてマスキング演算を施す。墨処理部1103に供給されたCMY画像データおよびK’画像データは、このマスキング演算により、プロッタ9による画像形成に適したCMYK画像データに線形変換される。
out=coef_cc×Cin+coef_cm×Min+coef_cy×Yin+coef_ck×Kin+constC …(9)
out=coef_mc×Cin+coef_mm×Min+coef_my×Yin+coef_mk×Kin+constM …(10)
out=coef_yc×Cin+coef_ym×Min+coef_yy×Yin+coef_yk×Kin+constY …(11)
out=coef_kc×Cin+coef_km×Min+coef_ky×Yin+coef_kk×Kin+constK' …(12)
なお、式(9)〜式(12)において、Cin、MinおよびYinは、それぞれ第2色変換部1102から出力されるCMY画像データによるC成分、M成分およびY成分である。例えば、Cin、MinおよびYinは、プロッタ9においてK成分を用いずにフルカラー画像を形成するために用いる、CMY各色の予測成分である。
墨処理部1103は、Cin、MinおよびYinに対して、γ変換部1101から出力されるK’画像データによるK色の予測成分であるKinを加えて、式(9)〜式(12)によるマスキング演算を実行する。これにより、プロッタ9に適用されるC成分、M成分、Y成分およびK成分(図11においてはC’成分、M’成分、Y’成分およびK”成分として示す)としてのCout、Mout、YoutおよびKoutが算出される。
なお、式(9)の各マスキング係数coef_cc、coef_cm、coef_cyおよびcoef_ckと、式(10)の各マスキング係数coef_mc、coef_mm、coef_myおよびcoef_mkと、式(11)の各マスキング係数coef_yc、coef_ym、coef_yyおよびcoef_ykと、式(12)の各マスキング係数coef_kc、coef_km、coef_kyおよびcoef_kkは(以下、適宜、纏めてマスキング係数coef'()と記載する)、予め計算などにより求められて、式(9)〜式(12)それぞれに適用される。例えば、理想的なC、M、Y、K各色の成分と、プロッタ9において用いられる色材などのC、M、Y、K各色の成分(特性)とに基づき、これら各マスキング係数coef'()を計算することが考えられる。
なお、γ変換部1101から出力された統一RGB画像データと、K’画像データは、ACS(Auto Color Selection)判定部1110に供給される。ACS判定部1110は、統一RGB画像データおよびK’画像データに基づき、スキャナ1で読み取った原稿画像の色判定(カラー/モノクロ、カラーの場合は写真画像か否かなど)を行い、判定結果を出力する。判定結果は、例えばプロッタ9に供給される。
(実施形態に係るキャリブレーション処理)
次に、実施形態に係るスキャナ1のキャリブレーション処理について説明する。実施形態に係るキャリブレーション処理では、第2画像処理部4のパターン発生部52によりパッチパターンを発生させ、このパッチパターンによる画像をプロッタ9により印刷媒体に形成する。この印刷媒体に形成されたパッチパターンを、スキャナ1によりIR成分を含めて読み取り、このIR画像データを含んだスキャナ1の出力に対して、上述した式(1)〜式(4)に従いマスキング演算を施し、マスキング演算の結果に基づき統一RGB画像データと、K’画像データとを取得する。例えば、取得したこれら統一RGB画像データと、K’画像データとを、例えば予め定めた標準値と比較し、比較結果に基づき、第1画像処理部2内のスキャナ補正処理部30が含むキャリブレーションテーブルを補正する。
キャリブレーション処理を、R、G、B各色成分による可視域の情報に加え、IR成分による非可視域の情報を用いて実行するため、より高精度なキャリブレーションが可能となる。
実施形態では、パターン発生部52により、グレーによる階調のパッチパターンを発生させる。ここで、パターン発生部52は、C、M、Y各色の混色によるグレーであるコンポジットグレーの階調を表現した第1色のパッチパターン(コンポジットグレー階調パッチと呼ぶ)と、K色のみを用いたグレーであるコンポーネントグレーの階調を表現した第2色のパッチパターン(コンポーネントグレー階調パッチと呼ぶ)とを発生させる。コンポーネントグレー階調パッチは、例えばCIEが定める分光反射率より求めるXYZ色度値に従った計算に基づき発生させることができる。
パターン発生部52は、例えばこれらコンポーネントグレー階調パッチおよびコンポジットグレー階調パッチを、1枚の印刷媒体上の所定位置にそれぞれ配置して発生させる。
パターン発生部52で発生されたコンポーネントグレー階調パッチおよびコンポジットグレー階調パッチは、変倍処理部53、プリンタγ補正部54および階調処理部55を介して第2画像処理部4から出力される。なお、このとき、変倍処理部53、プリンタγ補正部54および階調処理部55は、コンポーネントグレー階調パッチおよびコンポジットグレー階調パッチに対して何の処理も行わない。
第2画像処理部4から出力されたコンポーネントグレー階調パッチおよびコンポジットグレー階調パッチは、バス制御部3、CPU6、プロッタI/F部8を介してプロッタ9に供給される。プロッタ9は、CPU6の指示に従い、1の印刷媒体に対し、K色のみを用いてコンポーネントグレー階調パッチの画像を形成し、C、M、Y各色の混色によりコンポジットグレー階調パッチの画像を形成する。
図16は、印刷媒体1200にコンポーネントグレー階調パッチによる第1パッチ画像1210と、コンポジットグレー階調パッチによる第2パッチ画像1211とが形成された状態を模式的に示す。図16の例では、第1パッチ画像1210および第2パッチ画像1211は、それぞれ、下側から上側に向けて段階的に濃度が高く(濃く)なるように形成されている。また、第1パッチ画像1210および第2パッチ画像1211は、図の垂直方向の同位置では同じ濃度となるように形成される。図16の例では、コンポーネントグレー画像パッチとコンポジットグレー階調パッチとが条件等色により同じ色に見えることを示すため、第1パッチ画像1210と第2パッチ画像1211とを若干異ならせて示している。
なお、ここでは、コンポーネントグレー画像パッチによる第1パッチ画像1210とコンポジットグレー階調パッチによる第2パッチ画像1211とを1の印刷媒体に形成するように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、第1パッチ画像1210と第2パッチ画像1211とを異なる印刷媒体にそれぞれ形成してもよい。また、第1パッチ画像1210および第2パッチ画像1211の形状および配置は、この例に限定されない。
このように第1パッチ画像1210と第2パッチ画像1211とが形成された印刷媒体1200を、スキャナ1により読み取り、読み取った結果に基づき、第1画像処理部2のスキャナ補正処理部30が含むキャリブレーションテーブルを補正し、スキャナ1のキャリブレーションを行う。
図17は、実施形態に係るキャリブレーション処理を示す一例のフローチャートである。図17のフローチャートにおける各処理は、画像形成装置100において、CPU6の指示に従い第1画像処理部2にて実行される。
図17において、ステップS100で、画像形成装置100は、例えば操作表示部10に対するユーザ操作に応じて、第1パッチ画像1210および第2パッチ画像1211が形成された印刷媒体1200の画像をスキャナ1により読み取る。CPU6は、読み取った画像の画像データから第1パッチ画像1210および第2パッチ画像1211を抽出する。抽出された第1パッチ画像1210および第2パッチ画像1211の読み取りデータは、例えば第1画像処理部2が有するバッファメモリに記憶される(ステップS101)。
次のステップS102で、第1画像処理部2において、スキャナ補正処理部30は、ステップS101で記憶された第1パッチ画像1210および第2パッチ画像1211の読み取りデータに対するスキャナ補正処理を実行する。このとき、スキャナ補正処理部30は、キャリブレーションテーブルに格納されるデータに従い、読み取りデータに含まれるR、G、BおよびIRの各画像データのゲインが調整される。
スキャナ補正処理部30で補正処理された読み取りデータ(R、G、BおよびIRの各画像データ)は、第1画像処理部2において、γ変換部31およびフィルタ処理部32を介して色変換部33に供給される。
次のステップS103で、色変換部33は、色相判定部1120により、スキャナ補正処理部30より供給された読み取りデータに含まれる各パッチパターンの画像、すなわち、第1パッチ画像1210および第2パッチ画像1211に対して、それぞれ、上述した手順に従い色相領域判定処理を行い、判定結果に対応する引数[hue]を取得する。ここで、色変換部33は、第1パッチ画像1210に対応する引数[hue]と、第2パッチ画像1211に対応する引数[hue]とをそれぞれ取得する。
次のステップS104で、色変換部33は、色相判定部1120により、ステップS103で取得した引数[hue]に従い係数記憶部1121からマスキング係数coef()を読み出し、読み出したマスキング係数coef()を、マスキング演算部1130における上述した式(1)〜式(4)の各マスキング演算式に設定する。
ここで、色変換部33は、式(1)〜式(4)の各マスキング演算式を、第1パッチ画像1210および第2パッチ画像1211それぞれに対して用意する。色変換部33は、第1パッチ画像1210に対応する引数[hue]に対応するマスキング係数coef()を係数記憶部1121から読み出して、第1パッチ画像1210に対応する各マスキング演算式に適用する。同様に、色変換部33は、第2パッチ画像1211に対応する引数[hue]に対応するマスキング係数coef()を係数記憶部1121から読み出して、第2パッチ画像1211に対応する各マスキング演算式に適用する。
次のステップS105で、色変換部33は、マスキング演算部1130により、ステップS104でマスキング係数coef()が設定されたマスキング演算式(式(1)〜式(4))に従い、スキャナ1から出力されたRGB画像データおよびIR画像データに対してマスキング演算を施し、当該RGB画像データおよびIR画像データを、R’G’B’画像データと、K画像データとに変換する。
このとき、マスキング演算部1130は、第1パッチ画像1210および第2パッチ画像1211それぞれに対して、各々対応するマスキング係数coef()が適用されたマスキング演算式に従いマスキング演算を施す。したがって、マスキング演算部1130は、第1パッチ画像1210に基づくR’G’B’画像データおよびK画像データと、第2パッチ画像1211に基づくR’G’B’画像データおよびK画像データとを出力する。
色変換部33は、これら第1パッチ画像1210に基づくR’G’B’画像データおよびK画像データと、第2パッチ画像1211に基づくR’G’B’画像データおよびK画像データとを、例えばγ変換処理部1140にて所定にγ変換処理を施し、統一色情報生成部1141により、各R’G’B’画像データをそれぞれ統一RGB画像データに変換する。
次のステップS106で、色変換部33は、第1パッチ画像1210に基づくK画像データおよびR’G’B’画像データが変換された統一RGB画像データと、第2パッチ画像1211に基づくK画像データおよびR’G’B’画像データが変換された統一RGB画像データとを比較する。次のステップS107で、色変換部33は、比較の結果、両者の差分が閾値未満であるか否かを判定する。若し、差分が閾値未満であると判定した場合、図17のフローチャートによる一連の処理が終了される。
一方、色変換部33は、ステップS106での比較の結果、両者の差分が閾値以上であると判定した場合、処理をステップS108に移行させる。ステップS108で、色変換部33は、スキャナ補正処理部30が含むキャリブレーションテーブルを、差分が小さくなる方向に補正する。より具体的には、色変換部33は、第2パッチ画像1211に対応する統一RGB画像データが、第1パッチ画像1210に対応する統一RGB画像データに近付くように、キャリブレーションテーブルを補正する。
色変換部33は、ステップS108でのキャリブレーションテーブルの補正が終了すると、処理をステップS102に戻し、ステップS102からの処理を再度、実行する。
このように、実施形態では、コンポーネントグレー階調パッチと、コンポジットグレー階調パッチとを、スキャナ1においてIR成分を含めて読み取り、読み取った各画像データを統一RGB画像データとK画像データとに変換して比較している。そのため、条件等色の関係にあるコンポジットグレーとコンポーネントグレーとの差分をより明確に取得できる。また、この差分をキャリブレーションテーブルにフィードバックさせることで、スキャナ1のキャリブレーションをより高精度に実現できる。
なお、上述では、コンポーネントグレー階調パッチおよびコンポジットグレー階調パッチからそれぞれ読み取ったR、G、B、IR各成分に対して、式(1)〜式(4)に示すマスキング演算に従い線形変換しているが、これはこの例に限定されない。すなわち、スキャナ1が出力するRGB各成分およびIR成分の分光感度と、CIEが定めるXYZ色度とは、完全に線形な関係にはならない。そこで、この影響を低減するため、コンポジットグレーについては、線形変換を行うマスキング演算の代わりに、スキャナ1が出力するRGB各成分およびIR成分の3次の項まで用いる式を使用すると好ましい。
センサモジュール1000のRGB各色成分およびIR成分を変換して求めたXYZ色度値と、CIEが定める分光反射率より求めるXYZ色度値およびK予測値(予測墨成分)との間に生じた色度値の差の平均値を求める。この差の平均値を、両方のXYZ色度値をCIEが定める定義通りにL***表色系に変換した後に、色差(ΔE)として算出した。
この算出結果として、測定したパッチがコンポーネントグレー階調パッチおよびコンポジットグレー階調パッチの何れであるかという、各パッチの画像の形成に使用している色材の種類を含むパッチの属性に応じて、マスキング演算に用いる各マスキング係数coef()を求める行列|X|(行列式(8)参照)を変えることで、スキャナ1のRGB出力を変換して求めたXYZ色度値と、CIEが定める分光反射率より求めるXYZ色度値との間に生じた色差(ΔE)をより小さくできることを示す結果を得ている。
これは、スキャナ1のRGB各色の成分およびIR成分の分光感度と、CIEが定めるXYZ色度値との等色関数における非線形性の影響度を、パッチの属性毎に行列|X|を変えることにより低減できたことによる。
したがって、行列|X|を、パッチの属性毎に設定する、実施形態に係る色変換方法を採用することで、スキャナ1のRGB各色成分およびIR成分の出力を変換して求めるXYZ色度値と、CIEが定める分光反射率より求めるXYZ色度値との間に生じる色差を低減できることが分かる。
なお、実施形態に係るキャリブレーション方法は、コンポジットグレー階調パッチにおけるC、M、Y各色成分の混合比率がパッチ検知時に判定できることが前提となる。図1に示すスキャナ1を搭載した画像形成装置100においては、印刷媒体の予め指定された位置に各パッチが形成されるため、スキャナ1により読み取ったパッチ画像の属性を取得でき、実施形態に係るキャリブレーション方法が適用可能である。
また、上述では、スキャナ1から出力されたRGB画像データおよびIR画像データを、XYZ色度値およびK予測値に変換する場合について説明したが、これはこの例に限定されない。すなわち、実施形態に係るキャリブレーション方法は、2つの異なる表色系の等色関数に非線形性がある場合に有効である。
さらに、上述では、パッチの属性を、K色のみを用いたコンポーネントグレー階調パッチと、C、M、Y各色を混色したコンポジットグレー階調パッチの2種類とした。これはこの例に限らず、各色材の他の組み合わせを属性とするパッチを用いてもよい。
さらに、上述では、スキャナ1から出力されるRGB画像データおよびK画像データを、行列を利用した線形変換により、例えばXYZ色度値といった統一RGB画像データに変換しているが、これはこの例に限定されない。例えば、スキャナ1から出力されるRGB画像データおよびK画像データの統一RGB画像データへの変換を、多項式変換や、ニューラルネットワークを使用する方法、ルックアップテーブルを使用する方法により実行してもよい。
何れの方法においても、パッチの属性を取得することができれば、パッチの属性に応じてニューラルネットワークで使用するニューロン間の接続の重みを変える、使用するルックアップテーブルを変える、などにより、スキャナ1から出力されるRGB画像データおよびK画像データを変換して求めるXYZ色度値と、CIEが定める分光反射率より求めるXYZ色度値との間に生じる差を低減することができる。
以上説明したように、実施形態では、スキャナ1から出力されるRGB画像データおよびK画像データをXYZ色度値に変換する際に使用する各種パラメータを、パッチの属性に応じて変えている。これにより、スキャナ1から出力されるRGB画像データおよびK画像データを変換して求めるXYZ色度値と、CIEが定める分光反射率より求めるXYZ色度値との間に生じる差を低減することができ、そのXYZ色度値を使用する色安定化制御の精度を向上させることが可能となる。
(実施形態の第1の変形例)
次に、実施形態の第1の変形例について説明する。上述では、カラーキャリブレーションをグレー階調のパッチパターンを用いて行った例について説明した。実施形態の第1の変形例は、カラーキャリブレーションをグレー以外の色を含めたパッチパターンを用いて行う例である。
例えば、図7に示す第2画像処理部4におけるパターン発生部52は、パッチパターンを発生させ、発生させたパッチパターンを構成するC、M、Y、K各色の画像データを出力する。このパターン発生部52により出力されたC、M、Y、K各色の画像データを示す情報は、例えば色変換部33に渡される。
色変換部33は、パターン発生部52から渡されたC、M、Y、K各色の画像データを示す情報に応じて、発生されたパッチパターンを下記の6つの色カテゴリに分割する。
色カテゴリ#1(1次色):C単色、M単色、Y単色、K単色
色カテゴリ#2(2次色):CM混色、MY混色、YC混色
色カテゴリ#3(2次色):CK混色、MK混色、YK混色
色カテゴリ#4(3次色):CMY混色
色カテゴリ#5(3次色):CMK混色、MYK混色、YCK混色
色カテゴリ#6(4次色):CMYK
色変換部33は、さらに、スキャナ1から出力されたRGB画像データおよびK画像データに対して、分割した色カテゴリ毎に、上述した行列|X|(行列式(8)参照)に基づくマスキング係数coef()を切り替えて、式(1)〜式(4)によるマスキング演算を行う。これにより、色変換部33は、スキャナ1から出力されたRGB画像データおよびK画像データを、統一RGB画像データに変換する。
ここで、上述した色カテゴリ#6の4次色については、以下のようにC、M、Y、K各色の混色の混合比に応じてさらに色カテゴリを分割することができる(詳細色カテゴリと呼ぶ)。色変換部33は、分割された各詳細色カテゴリ毎に、上述した行列|X|に基づくマスキング係数coef()を切り替えて、マスキング演算を行う。なお、下記の各式において、「MIN()」は、括弧「()」内に列挙する各色の値のうち最小の値を示す。
詳細色カテゴリ#6−1:MIN(CMY)/K>1.0
詳細色カテゴリ#6−2:1.0≧MIN(CMY)/K>0.75
詳細色カテゴリ#6−3:0.75≧MIN(CMY)/K>0.5
詳細色カテゴリ#6−4:0.5≧MIN(CMY)/K>0.25
詳細色カテゴリ#6−5:MIN(CMY)/K≦0.25
なお、混色によるキャリブレーションで用いるプロセスカラー(C、M、Y、K各色によるカラー)の、CMYK画像データに応じた上述の色カテゴリ分割を行う際、プロッタ9に対するγ特性補正後の出力レベルで混合比の演算を実施するとよい。
(実施形態の第2の変形例)
次に、実施形態の第2の変形例について説明する。上述した実施形態では、実施形態に係る画像処理装置が画像形成装置100であるとして説明したが、これはこの例に限定されない。実施形態の第2の変形例に係る画像処理装置は、スキャナ1と第1画像処理部2とを含み、第2画像処理部4とプロッタ9を含まずに構成される。
第1画像処理部2からは、スキャナ1により原稿が読み取られた読取画像データとして出力されるRGB画像データおよびIR画像データに基づき、デバイス非依存の画像データである統一RGB画像データが出力される。この統一RGB画像データは、例えば、当該原稿の画像を評価する情報として用いることが可能である。また、画像データの受け入れ側としての例えばプリンタ装置が当該統一RGB画像データに対応しており、且つ、当該プリンタ装置が画像形成に用いる色材の特性が既知である場合を考える。この場合、実施形態の第2の変形例に係る画像処理装置により読み取られた原稿の画像を、当該プリンタ装置により、高精度に再現することが可能である。
なお、上述の各実施形態は、本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形による実施が可能である。
1 スキャナ
2 第1画像処理部
4 第2画像処理部
9 プロッタ
30 スキャナ補正処理部
33,51 色変換部
52 パターン発生部
1000,1000’,1000” センサモジュール
1012 制御・画像処理部
1002IR,1002W 光源
1100 第1色変換部
1101 γ変換部
1102 第2色変換部
1103 墨処理部
1120 色相判定部
1121 係数記憶部
1130 マスキング演算部
1140 γ変換処理部
1141 統一色情報生成部
1210 第1パッチ画像
1211 第2パッチ画像
特許第5440141号公報

Claims (10)

  1. 原稿から反射された光に基づき、可視域の複数の波長領域、および、非可視域の波長領域の反射吸収特性に対応する第1の画像信号を取得する取得ステップと、
    前記取得ステップにより取得された前記第1の画像信号を、デバイス非依存の色空間成分と、墨成分と、を含む第2の画像信号に変換する第1の色変換ステップと
    を有する画像処理方法。
  2. 前記可視域の複数の波長領域は、R色、G色およびB色それぞれの波長領域を含み、前記非可視域の波長領域は、近赤外の波長領域である
    請求項1に記載の画像処理方法。
  3. 前記第2の画像信号に含まれる前記色空間成分を、出力装置の各色成分から前記墨成分を除いた場合の色成分に変換する第2の色変換ステップと、
    前記第2の色変換ステップで変換された前記色成分と、前記第2の画像信号に含まれる前記墨成分とに基づき、前記出力装置の前記各色成分を生成する生成ステップと
    をさらに有する
    請求項1または請求項2に記載の画像処理方法。
  4. 前記第1の色変換ステップは、
    前記色空間成分への変換を、前記可視域の複数の波長領域それぞれの色成分の比率に応じて決定される色相毎に行う
    請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の画像処理方法。
  5. 補正情報に基づき前記第1の画像信号を補正する第1の補正ステップと、
    前記取得ステップによりそれぞれ取得された、前記墨成分のみを用いて所定濃度に生成したコンポーネントグレーによる第1のパッチに基づく前記第1の画像信号である第3の画像信号と、前記デバイス非依存の色空間成分に基づき、前記可視域の複数の波長領域の組み合わせにより前記所定濃度となるように生成したコンポジットグレーによる第2のパッチに基づく前記第1の画像信号である第4の画像信号と、に基づき前記補正情報を補正する第2の補正ステップと、
    をさらに有する
    請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の画像処理方法。
  6. 前記第2の補正ステップは、
    前記第4の画像信号が前記第3の画像信号に近付くように前記補正情報を補正する
    請求項5に記載の画像処理方法。
  7. 前記第1の色変換ステップは、
    前記取得ステップが前記第1の画像信号を取得するために前記原稿から読み取るパッチの属性に応じて、前記変換に用いる係数を切り替える
    請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の画像処理方法。
  8. 前記属性は、前記原稿に前記パッチを形成する際に用いる色材の種類を含む
    請求項7に記載の画像処理方法。
  9. 原稿から読み取った、可視域の複数の波長領域、および、非可視域の波長領域の反射吸収特性に対応する第1の画像信号を取得する取得部と、
    前記取得部により取得された前記第1の画像信号を、デバイス非依存の色空間成分と、墨成分と、を含む第2の画像信号に変換する色変換部と
    を備える画像処理装置。
  10. 原稿から反射された、可視域の複数の波長領域それぞれの光と、非可視域の波長領域の光と、を受光し、受光した光に基づき該可視域の複数の波長領域それぞれの光を光電変換した各信号と、該非可視域の波長領域の光を光電変換した信号と、を含む第1の画像信号を出力する読取部と、
    複数の色を組み合わせて画像形成を行う画像形成部と、
    前記第1の画像信号を取得する取得部と、
    前記取得部により取得された前記第1の画像信号を、デバイス非依存の色空間成分と、墨成分と、を含む第2の画像信号に変換する第1の色変換部と、
    前記第2の画像信号に含まれる前記色空間成分を、前記複数の色の各色成分から前記墨成分を除いた場合の色成分に変換する第2の色変換部と、
    前記第2の色変換部で変化された前記色成分と、前記第2の画像信号に含まれる前記墨成分とに基づき、前記画像形成部が用いる前記複数の色の各色成分を生成する生成部と
    を備える画像処理システム。
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