JP2019113488A - 高分子材料の補強剤階層構造評価方法 - Google Patents

高分子材料の補強剤階層構造評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】階層構造を持つ補強剤を含有する高分子材料において当該補強剤の階層構造を評価する。【解決手段】階層構造を持つ補強剤を含有する高分子材料についての補強剤階層構造を評価する方法であって、前記高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施し、得られた散乱強度曲線から補強剤についてのナノメートルオーダーの情報(一次凝集体に関する情報)を取得すること、及び、前記高分子材料にX線を照射してX線CT測定を実施し、得られた断面像を二値化し粒度分布を算出して補強剤についてマイクロメートルオーダーの情報(二次凝集体に関する情報)を取得すること、を含む評価方法である。【選択図】図3

Description

本発明は、階層構造を持つ補強剤を含有する高分子材料についての補強剤階層構造を評価する方法に関する。
ゴム材料などの高分子材料は、各種製品に求められる性能を満足させるために多数の異なる添加剤が混合されており、そのため、種々の相から形成される構造を持った複雑材料である。その様々な挙動や現象は、近年の分析・解析技術の進歩にもかかわらず、材料が不均一かつ3次元の階層構造を有しているため、いまだブラックボックス的な要素が多い。一方で、ゴム製品の環境・安全に対するニーズは高まり、材料の高性能化・高機能化に向けた開発が急務であることから、より精密な分析・解析技術が必要不可欠である。
例えば、特許文献1には、高分子材料の内部構造の応答特性を高精度に評価するために、高分子材料に対して、動的粘弾性測定を実施しながら、X線を照射してX線小角散乱測定を実施することが提案されている。また、特許文献2には、架橋ゴム組成物の伸張時における空隙部の体積を評価するために、X線CT撮影を用いて架橋ゴム組成物の密度分布を評価することが提案されている。
高分子材料に配合される添加剤のうち、カーボンブラックやシリカなどの補強剤は物性に大きな影響を及ぼす因子であることから、高分子材料中の補強剤構造を知ることは有益である。特許文献3には、高分子材料中の補強剤の構造情報を精度よく求めるために、X線小角散乱測定を実施し、補強剤の配向による異方性を利用することにより補強剤の形状情報を取得することが提案されている。
特開2017−003387号公報 特開2017−081554号公報 特開2017−116330号公報
上記のように従来、高分子材料中の補強剤の構造評価をするためにX線小角散乱測定を用いることは提案されており、これによりナノメートルオーダーの構造評価は可能である。しかしながら、補強剤は高分子材料中でナノ〜マイクロメートルオーダーの階層構造を形成しており、従来の方法ではマイクロメートルオーダーでの構造評価が十分にできていなかった。
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、異なる空間分解能を持つX線小角散乱測定とX線CT測定とを組み合わせることにより、高分子材料中における補強剤の階層構造の評価を可能にすることを目的とする。
本発明の実施形態に係る補強剤階層構造評価方法は、階層構造を持つ補強剤を含有する高分子材料についての補強剤階層構造を評価する方法であって、前記高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施し、得られた散乱強度曲線から前記補強剤についてのナノメートルオーダーの情報を取得すること、及び、前記高分子材料にX線を照射してX線CT測定を実施し、得られた断面像を二値化し粒度分布を算出して前記補強剤についてのマイクロメートルオーダーの情報を取得すること、を含むものである。
本発明の実施形態によれば、異なる空間分解能を持つX線小角散乱測定とX線CT測定とを組み合わせることにより、高分子材料中における補強剤の階層構造の評価することができる。
X線小角散乱測定による二次元散乱像の一例を示す図 X線小角散乱測定による散乱強度曲線の一例を示すグラフ 試料1〜4についての散乱強度曲線を示すグラフ 試料1〜4についてのX線CT測定による断面像 試料1〜4についてのX線CT測定による粒度分布を示すグラフ
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
本実施形態において、測定対象としては、階層構造を持つ補強剤を含有する高分子材料が用いられる。高分子材料の種類は特に限定されないが、好ましい高分子材料は、ゴム材料(即ち、ゴムポリマーに充填剤が配合されたゴム組成物)であり、より好ましくは加硫ゴム材料である。
ゴム材料を構成するゴムポリマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)などが挙げられ、これらのゴムポリマーを単独又は2種類以上ブレンドしたものでもよい。
補強剤は、高分子材料中で階層構造を形成するものであり、詳細には一次凝集体と二次凝集体を形成し得る補強剤である。一次凝集体とは、単位粒子が融着もしくは化学結合により相互に凝集したナノメートルオーダーの集合粒子(凝集塊)であり、アグリゲートとも称される。二次凝集体とは、一次凝集体が物理化学的なより弱い凝集力で更に大きな塊になったマイクロメートルオーダーの凝集塊であり、アグロメレートとも称される。このような補強剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラックなどが挙げられる。
補強剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴムポリマー100質量部に対して10〜200質量部でもよく、20〜150質量部でもよい。
高分子材料は、補強剤の他、様々な配合剤を任意成分として含有してもよい。一実施形態として、上記ゴム材料を構成するゴム組成物には、シランカップリング剤、オイル等の軟化剤、可塑剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤など、通常ゴム工業で使用される各種配合剤を配合することができる。これら各成分の配合量は特に限定されない。なお、かかるゴム組成物は、バンバリーミキサーなどの混合機を用いて各成分を常法に従い混練することにより作製することができ、該ゴム組成物を常法に従い加熱して加硫することにより加硫ゴム材料が得られる。
測定対象としての高分子材料の形状は、X線が透過可能であれば、特に限定されないが、シート状であることが好ましい。一実施形態として、測定対象としては、シート状に加硫成形したゴムシートを用いてもよく、あるいはまた、タイヤ等のゴム製品からシート状に切り出したものを用いてもよい。
本実施形態は、階層構造を持つ補強剤を含有する高分子材料について、その補強剤階層構造を評価・解析する方法に関するものであり、X線小角散乱測定により補強剤についてのナノメートルオーダーの情報を取得する工程と、X線CT測定により補強剤についてのマイクロメートルオーダーの情報を取得する工程を含む。ここで、ナノメートルオーダーとは、1nm以上1000nm未満のことであり、より詳細には数十nm〜数百nm、例えば10〜400nmでもよい。また、マイクロメートルオーダーとは、1μm以上1000μm未満のことであり、より詳細には数μm〜数百μm、例えば3〜100μmでもよい。
X線小角散乱(SAXS: Small-angle X-ray Scattering)測定は、散乱角が数度以下の散乱X線を測定する手法であり、散乱角は通常10°以下である。X線小角散乱測定では、測定試料である高分子材料にX線を照射すると、高分子材料を構成する物質の電子密度を反映してX線は散乱される。その散乱の強度分布を構造解析に応用する方法である。
本実施形態では、高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施し、得られた散乱強度曲線から補強剤についてのナノメートルオーダーの情報を取得する。その具体的な方法は特に限定されず、例えば特許文献3に記載の方法により実施してもよい。
より詳細には、高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施すると、図1に示すような散乱強度の大きさを示した二次元散乱像が得られる。図1では白色に近いほど散乱強度が大きく、黒色に近いほど散乱強度が小さいことを示し、その等高線を白線(点線)で示している。
X線小角散乱測定を行う際に使用するX線としては、例えば1010(photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw)以上の高輝度X線であることが好ましい。このようなX線を放射するシンクロトロンとしては、高輝度光科学研究センターのSPring−8などが挙げられる。検出器としては、CCDカメラ等の一般的なX線検出器を用いることができる。
次いで、二次元散乱像から一次元の散乱強度曲線(散乱プロファイル)を得る。散乱強度曲線は、二次元散乱像の全角度範囲で散乱強度を平均化して求めてもよく、あるいはまた図1において二次元散乱像の散乱中心の左右両側のくびれ部における所定の角度範囲αで散乱強度を平均化して求めてもよい。散乱強度曲線は、散乱ベクトルq(=(4π/λ)sin(θ/2)。ここで、θは散乱角、λはX線の波長)に対する散乱強度I(q)の大きさを示すグラフであり、その一例を図2に示す。
次いで、散乱強度曲線から補強剤についてナノメートルオーダーの情報を取得する。ナノメートルオーダーの情報としては、補強剤の一次凝集体に関する情報が挙げられ、例えば、一次凝集体のサイズ、一次凝集体の個数(高分子材料の単位体積当たりの個数)、一次凝集体の体積(高分子材料の単位体積に占める一次凝集体の体積)が挙げられる。
例えば、散乱強度曲線に対するフィッティング(曲線当てはめ)により補強剤の一次凝集体サイズ、一次凝集体個数、一次凝集体体積を求めることができる。これらの算出は、例えばG. Beaucage, J.Appl.Cryst. 28, 717-728 (1995)やM.Takenaka,et al., Macromolecules 42,308-311(2009)に記載されたUnified functionを利用した解析により行うことができる。
X線CT(ComputedTomography)測定は、物体をさまざまな方向からX線で撮影し、再構成処理を行うことにより、物体の内部構造を得る方法であり、コンピュータ断層撮影法とも称される。X線CT測定としては、ラミノグラフィー法を用いることが好ましい。
本実施形態では、高分子材料にX線を照射してX線CT測定を実施し、得られた断面像を二値化し、粒度分布を算出して補強剤についてのマイクロメートルオーダーの情報を取得する。X線CTの測定自体は公知の方法を用いることができ、例えば鈴木芳生他2名「シンクロトロン放射X線を用いたマイクロCTの現状」、Journal of the Vacuum Society of Japan, 第54巻第1号47−55頁(2011)に記載の方法を利用してもよい。
詳細には、高分子材料にX線を照射してCT撮影を行い、投影データを取得した後、該投影データをコンピュータで再構成して、高分子材料の断面像(断層画像)を取得する。X線CT測定を行う際に使用するX線としては、X線小角散乱測定と同様、例えば1010(photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw)以上の高輝度X線が好ましく、高輝度光科学研究センターのSPring−8などのシンクロトロンを利用することができる。
本実施形態では、得られた断面像を二値化して補強剤の粒度分布を算出する。詳細には、断面像は、例として図4に示すように中央部と外周部とでコントラストが大きく異なるため、同程度のコントラストを持つ部分で断面像の一部を切り出し、切り出した部分について所定の閾値で二値化して、所定以上の大きさのものを補強剤の粒子であると判断して抽出する。各粒子について面積を算出した後、粒子を真円と仮定して粒子面積から粒径(粒子直径)に変換することにより、例として図5に示すような粒度分布が得られる。このような粒度分布解析は、公知の画像処理ソフトウェアを用いて行うことができる。
これにより、補強剤についてのマイクロメートルオーダーの情報を取得することができる。マイクロメートルオーダーの情報としては、補強剤の二次凝集体に関する情報が挙げられ、例えば、二次凝集体の個数(高分子材料の単位面積当たりの個数)が挙げられる。
例えば、所定の粒径以上のものを二次凝集体とし、その個数を粒度分布から算出することにより、二次凝集体の個数を求めてもよい。一例として、補強剤がシリカの場合、粒径7.5μm以上のものを二次凝集体として、粒度分布から二次凝集体の個数を算出してもよい。
本実施形態によれば、X線小角散乱測定により補強剤の一次凝集体に関するナノメーターオーダーの情報を取得し、X線CT測定により補強剤の二次凝集体に関するマイクロメートルオーダーの情報を取得するため、高分子材料中で階層構造を形成している補強剤について、その階層構造を解析することができる。
例えば、複数の高分子材料について、一次凝集体のサイズや個数、及び、二次凝集体の個数を比較することにより、階層構造の比較が可能となり、補強剤の階層構造を含めた分散状態の比較評価が可能となる。そのため、高分子材料のヒステリシスロスやペイン効果との相関性を議論することができる。
詳細には、一般にゴム材料のヒステリシスロスとペイン効果は相関があるとされている。しかし、すべての場合において、ペイン効果でヒステリシスロスを説明できる訳ではない。ゴム物性から構造を判断するのではなく、真に補強剤の分散状態を明らかにすることが、物性改善には有効である。本実施形態によれば、後述する実施例の通り、ヒステリシスとペイン効果の矛盾を説明できるようになり、補強剤の階層構造解析が可能である。
一実施形態において、一次凝集体に関するナノメートルオーダーの情報として一次凝集体の個数を求め、二次凝集体に関するマイクロメートルオーダーの情報として二次凝集体の個数を求め、両者の比から補強剤の階層構造を評価してもよい。例えば、X線小角散乱測定により求めた一次凝集体の個数(1mm当たりの個数)をNrとし、X線CT測定により求めた粒径7.5μm以上の二次凝集体の個数(1mm当たりの個数)をBとして、下記式(1)で表される分散指標パラメータDを算出し、Dの大小により補強剤の分散性を評価してもよく、Dが所定の値(例えば3.0)以上の場合に分散性に優れると判定してもよい。
D=(Nr/109)/B (1)
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(ゴム試料の作製)
密閉式混合機を使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、ゴムポリマーに配合剤を添加し混練して、試料1〜4に係る未加硫ゴム組成物を調製した。
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・SBR1:JSR(株)製「JSR SL563」
・SBR2:JSR(株)製「JSR HPR350」(アルコキシル基及びアミノ基末端変性SBR)
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・シランカップリング剤:エボニック・デグサ社製「Si69」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・硫黄:細井化学工業(株)製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
得られた未加硫ゴム組成物を、金型モールドでプレス加工(160℃、30分)することにより、試料1〜4のそれぞれについて、物性測定用に厚さ2.0mmの加硫ゴムシート、X線小角散乱測定用に厚さ1.0mmの加硫ゴムシート、及びX線CT測定用に厚さ0.5mmの加硫ゴムシートを作製した。
(加硫ゴムシートの物性測定)
試料1〜4の加硫ゴムシートについて、ヒステリシスロスとペイン効果を測定し、その結果を下記表2に示した。測定方法は以下の通りである。
・ヒステリシスロス:東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、静歪み10%、動歪み1%、温度60℃の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で示した。値が小さいほどヒステリシスロスが小さく、転がり抵抗性能が良好であることを意味する。
・ペイン効果:アルファテクノロジーズ(株)製RPA2000を使用し、160℃×30分で加硫した加硫ゴムを温度60℃、周波数1.667Hzの条件で、歪を0.5〜45%まで変化させた時の最大せん断力から最小せん断力を引いた値を測定し比較例1の結果を100とする指数評価を行った。数値が小さいほどフィラーの分散性が良好であることを示す。
一般にタイヤの転がり抵抗はゴム材料のヒステリシスロスとの関係が強く、ヒステリシスロスには補強剤の分散状態が影響を及ぼす。ゴム材料中の補強剤の分散を見積もる方法として、動的弾性率の振幅依存性(ペイン効果)を測定する方法がある。ある範囲での振幅増加により、補強剤の凝集体間の物理結合が切断され弾性率が減少する。この凝集体の崩れによる弾性率の減少幅を比較することでゴム材料中の補強剤の分散性を議論することができる。すなわち、ペイン効果が大きいということは歪領域内の最大弾性率と最小弾性率の差が大きいことを意味するので、物理結合の切断が多く、よって凝集体の割合が多いと言える。逆にペイン効果の小さい場合、分散状態が良好であることを意味し、ヒステリシスロスの少ない材料となる。
表2に示すように、シリカ分散処理であるシランカップリング剤と末端変性ポリマーのいずれも施していない試料1では、ヒステリシスロス及びペイン効果がともに大きく、シリカの分散が悪いと考えられる。シランカップリング剤処理した試料2では、ヒステリシスロス及びペイン効果がともに低減され、効果が確認できる。末端変性ポリマーを使用した試料3、シランカップリング剤と末端変性ポリマーともに使用した試料4においても、ヒステリシスロスとペイン効果の低減を確認した。
低減効果は、ヒステリシスロスについては試料2、試料3、試料4の順に良くなり、ペイン効果については試料3、試料2、試料4の順に良くなり、両者は異なる順序となった。すなわち、ヒステリシスロス低減には末端変性ポリマーの寄与が大きく、ペイン効果の低減にはシランカップリング剤処理の寄与が大きい。ペイン効果は補強剤の分散を見積もる方法ではあるが、しばしばヒステリシスロスと相関が取れない場合が見受けられる。この結果から、シリカの分散効果が期待される2つの手法ではあるが、メカニズムの違いによって得られる分散状態が異なるため、ヒステリシスロスとペイン効果の逆転現象が起きていると考えられる。この逆転現象を説明するために以下の測定を行った。
(SAXS測定)
試料1〜4の加硫ゴムシートについて、SAXS測定を行った。測定条件は以下の通りである。
・シンクロトロン:SPring−8のビームラインBL08B2
・X線の波長:1.5Å
・カメラ長:6182mm
・露光時間:1秒
・qレンジ:0.015〜0.3nm−1
・ディテクター:PILATUS
SAXS測定により得られた二次元散乱像から、散乱中心の左右両側のくびれ部における角度範囲α=40゜(図1参照)で散乱強度を平均して一次元データに変換することにより散乱プロファイル(散乱強度曲線)を得た。図3は、試料1〜4についての散乱プロファイルを示したグラフである。
q>0.1nm−1において散乱プロファイルに大きな差は見られない。q<0.1nm−1においてはショルダー位置に違いが見られ、シリカ分散処理していない試料1ではq=0.04nm−1付近にショルダーを示し、分散処理した試料2、試料3ではショルダーが高qレンジ側へとシフトし、試料4においてはさらに高qレンジ側へシフトしており、一次凝集体サイズが低減されたと考えられる。
しかしながら、試料2と試料3とでショルダー位置に大きな違いは見られず、両者の一次凝集体サイズは同程度と考えられる。ただし、q<0.03nm−1において散乱プロファイルに差が見られ、高次構造に差があることが示唆される。構造情報をより定量的に評価するため、Unified functionを利用して解析することにより、シリカの一次凝集体サイズR、一次凝集体個数Nr(1mm当たりの個数)及び一次凝集体体積Vr(1mmに占める一次凝集体の体積nm)を算出した。
詳細には、下記式(2)のフィッティング関数(M.Takenaka,et al., Macromolecules 42,308-311(2009))で最小二乗法により一次凝集体サイズを算出した。
式中、I(q)は散乱強度であり、A、Bは回帰係数、Rは一次凝集体の慣性半径(一次凝集体サイズ)、Dは凝集構造のマスフラクタル次元を表す。qは散乱ベクトルで独立変数である。
Nr,Vrは、式(2)より算出した一次凝集体慣性半径Rと式(3)より算出した。
結果は表3に示す通りである。一次凝集体サイズRは、試料1>試料2≒試料3>試料4であり、分散処理によって一次凝集体サイズは減少した。また、一次凝集体サイズの低減に伴って、一次凝集体数Nrは増加し、一次凝集体が占める体積Vrは減少した。以上の結果より、シリカ分散処理により一次凝集体サイズRが小さくなり、分散性が向上したことが確認できた。ただし、分散処理方法が異なる試料2と試料3に構造差が見られなかったにも関わらず、上記のようにヒステリシスロスとペイン効果に差があり、物性差を説明するには至らなかった。
(X線CT測定)
図3に示されるように、散乱プロファイルの低qレンジ領域にわずかな差があることから高次構造に違いがあるのではないかと考え、X線ラミノグラフィー測定によりマイクロメートルオーダーでのシリカ分散評価を行った。
すなわち、試料1〜4の加硫ゴムシートについて、X線CT測定を行った。測定条件は以下の通りである。
・シンクロトロン:SPring−8のBL24XU−B2ハッチ
・カメラ長:42mm
・照射X線のエネルギー:10keV
・ディテクター:シンチレータ、リレーオプティクス及びデジタルカメラから構成された間接型X線画像検出器
シンチレータ:GAGG;Ce単結晶
リレーオプティクス:対物レンズx20 NA:0.45, 結像レンズ x0.5(ニコン製)
デジタルカメラ:Orca-FLash4.0(浜松ホトニクス製)
X線CT測定に際し、加硫ゴムシートは回転ステージに固定した。また、撮影ピクセルサイズは0.65μmであった。得られた投影データはBackProjection法を用いて再構成を行った。
図4に、試料1〜4についてX線CT測定で得られた断面像を示す。それぞれ円形の内側部分が断面像であり、黒く写っている部分がゴム層、白い粒がシリカ凝集体である。試料1、試料2及び試料3にはところどころに大きな粒が見られるが、試料4には大きな粒は見られず、分散状態が良好だと考えられる。シランカップリング剤と末端変性ポリマーを併用することで、マイクロオーダーの粒子低減に大きな効果があり、ヒステリシスロスとペイン効果の双方に好影響している。分散処理していない試料1と、分散処理している試料2及び試料3とでは,見た目には明確な差は確認できなった。
そこで、画像処理ソフトウェア(フリーソフト)である「ImageJ」を用いて、粒度分布解析を行った。手順としては、断面像のうち同程度のコントラストを持つ部分でその一部を切り出し、切り出した部分を大津の二値化法(判別分析法)により二値化した後に、analyze particle機能を利用して粒子の面積を算出した。そして、粒子を真円と仮定して、粒子面積を粒径へ変換した。なお、撮影ピクセルサイズと、二値化した際のノイズに鑑みて、直径3.5μm以上を粒子とみなして抽出した。また、粒径の算出には、複数枚の断面像を解析し、平均値を算出した。粒径を横軸に、粒子数(1mm当たりの粒子数)を縦軸としてプロットした粒度分布を図5に示す。また、該粒度分布の各数値と、粒径7.5μm以上の粒子数の合計を、下記表4に示す。
分散処理していない試料1に対して,分散処理した試料2〜4では、すべての直径で粒子数が減少している。これは分散処理によって、シリカ凝集塊が小さくなり、撮影ピクセルサイズ以下の凝集体が増加したためだと考えられる。
分散処理したサンプル内で比較すると、4μm以下の粒子に大きな差が見られ、粒子数は試料2>試料3>試料4となり、末端変性ポリマーの効果が大きいことがわかった。測定分解能の関係から3.5μm以下の粒子は評価できないが、粒度分布の傾向から予測すると、数百nm〜数μmの粒子数減少には、シランカップリング剤よりも末端変性ポリマーの方が、効果が大きいことが示唆される。7.5μm以上の粒子数を見ると、試料3>試料2>試料4となり、シランカップリング剤による効果が大きいことがわかった。
よって,分散処理方法によらず数百nm〜数十μmのスケールで粒子数の減少が見られるが、分散処理方法によって効果がある粒子径には差があり、シランカップリング剤処理は、7.5μm以上の粒子に効果が大きく、末端変性ポリマーは数百nm〜数μmの粒子に効果が大きいと考えられる。また、ゴム物性と照らし合わせて考えると、7.5μm以上の粒子を減少させるとペイン効果が低減され、数百nm〜数μmの粒子を減少させることはヒステリシスロスの低減につながることが示唆される。
(分散指標パラメータ)
試料1〜4について、上記式(1)により分散指標パラメータDを算出した。結果を下記表5に示す。試料1〜4のうち、試料4は分散指標パラメータDが3.0以上であり、シリカの分散性に優れることでヒステリシスロス及びペイン効果の双方に優れることから、該分散指標パラメータDにより補強剤の分散性を評価することができ、タイヤ性能に優れるゴム材料を抽出することができる。
以上のように、SAXS測定とX線CT測定とを組み合わせることにより、補強剤の分散処理方法による階層構造の違いを明らかにすることができ、物性と相関した階層構造の解析を行うことができる。そのため、タイヤをはじめとする各種高分子材料の開発に利用することができる。

Claims (3)

  1. 階層構造を持つ補強剤を含有する高分子材料についての補強剤階層構造を評価する方法であって、
    前記高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施し、得られた散乱強度曲線から前記補強剤についてのナノメートルオーダーの情報を取得すること、及び、
    前記高分子材料にX線を照射してX線CT測定を実施し、得られた断面像を二値化し粒度分布を算出して前記補強剤についてのマイクロメートルオーダーの情報を取得すること、
    を含む補強剤階層構造評価方法。
  2. 前記ナノメートルオーダーの情報として前記補強剤の一次凝集体の個数を求め、前記マイクロメートルオーダーの情報として前記補強剤の二次凝集体の個数を求め、両者の比から補強剤の階層構造を評価する、
    請求項1に記載の補強剤階層構造評価方法。
  3. 前記補強剤がシリカであり、前記粒度分布から粒径7.5μm以上のものを二次凝集体として前記二次凝集体の個数を算出する、
    請求項2に記載の補強剤階層構造解析方法。
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