JP6613637B2 - 高分子材料の内部構造の応答特性を評価する方法 - Google Patents

高分子材料の内部構造の応答特性を評価する方法 Download PDF

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Description

本発明は、高分子材料の内部構造の応答特性を評価する方法に関する。
ゴム材料などの高分子材料において、内部構造の応答特性は、エネルギーロスといった製品の様々な物性に影響を及ぼす重要な物理量であり、例えば、ゴム製品であるタイヤにおいて、内部構造の応答特性は、エネルギーロスと密接に関係し、さらにエネルギーロスは、燃費性能やグリップ性能に密接に関係している。
高分子材料の内部構造自体は、これまで、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの電子顕微鏡を用いて観察することが可能であった。しかしながら、電子顕微鏡による観察では、内部構造の応答特性を評価することはできなかった。
また、高分子材料のエネルギーロスを測定する方法として、動的粘弾性測定から得られる損失正接(tanδ)の値を評価する手法が広く用いられている(特許文献1参照)。しかしながら、この手法は、誤差が大きく、tanδの値が同程度であっても、タイヤ転がり性能が相違する場合があり、測定精度が充分満足できるものではなかった。
近年では、X線散乱測定や中性子散乱測定から高分子材料のエネルギーロスを評価する手法も提案されている(特許文献2,3参照)。しかしながら、この手法は、静的な状態の応答特性を評価するものであり、動的な状態の応答特性を評価するものではなかった。
特開2009−46088号公報 国際公開第2013/065405号 特開2014−102210号公報
本発明は、前記課題を解決し、高分子材料の内部構造の応答特性を高精度に評価する方法を提供することを目的とする。
本発明は、高分子材料に対して、動的粘弾性測定を実施しながら、X線又は中性子線を照射してX線散乱測定又は中性子散乱測定を実施することにより、高分子材料の内部構造の応答特性を評価する方法に関する。
本発明では、粘弾性試験機から発信されたパルス信号に対し、X線検出装置又は中性子検出装置の露光を同期させることにより、パルス信号が最初に発信された時刻を基準として、上記動的粘弾性測定の1周期を任意の回数に分割し、上記X線散乱測定又は上記中性子散乱測定を実施することが好ましい。
上記X線散乱測定は小角X線散乱測定、上記中性子散乱測定は小角中性子散乱測定であることが好ましい。
上記高分子材料は、1種類以上の共役ジエン系化合物と1種類以上の充填剤とを含む複合材料であることが好ましい。
本発明では、上記X線又は上記中性子線を用いて、下記(式1)で表されるqが10nm−1以下の領域で測定することが好ましい。
Figure 0006613637
本発明では、上記X線散乱測定又は上記中性子散乱測定により得られた散乱強度曲線I(q)に対し、下記(式2)及び(式3)でカーブフィッティングして得られる1nm〜100μmの慣性半径Rを用いて応答特性を評価することが好ましい。
Figure 0006613637
本発明では、上記(式2)及び上記(式3)を用いて、上記動的粘弾性測定の延伸方向に対して水平な方向の散乱強度曲線I(horizontal)(q)から、上記動的粘弾性測定の延伸方向に対して水平な方向の慣性半径Rg(horizontal)を算出するとともに、上記動的粘弾性測定の延伸方向に対して垂直な方向の散乱強度曲線I(vertical)(q)から、上記動的粘弾性測定の延伸方向に対して垂直な方向の慣性半径Rg(vertical)を算出し、下記(式4)及び(式5)から得られるアスペクト比の変動と上記動的粘弾性測定の入力周波との位相差φを用いて応答特性を評価することが好ましい。
Figure 0006613637
本発明によれば、動的粘弾性測定を実施しながら、X線又は中性子線を照射してX線散乱測定又は中性子散乱測定を実施することで、動的な状態で内部構造の応答特性を測定することができるため、エネルギーロスなどを高い測定精度で評価できる。
実施例1におけるSAXS測定により得られた散乱強度曲線の一例。 実施例1におけるRg(horizontal)及びRg(vertical)の時間変化。 実施例1における動的粘弾性測定の入力周波とアスペクト比の時間変化。
本発明は、高分子材料に対し、動的粘弾性測定を実施しながら、X線又は中性子線を照射してX線散乱測定又は中性子散乱測定を実施することにより、高分子材料の内部構造の応答特性を評価する方法である。
本発明では、動的粘弾性測定とともにX線散乱測定又は中性子散乱測定を同時に実施することで、高分子材料の内部構造の応答特性を、動的粘弾性測定で周期的な歪を加えている状態、すなわち、動的な状態で測定することができるため、特許文献1で示されている、動的粘弾性測定から得られる損失正接(tanδ)の値を評価する手法と比較して、エネルギーロスなどを高い測定精度で評価できる。
また、特許文献2で提案されている、X線散乱測定や中性子散乱測定により、高分子材料中の充填剤が凝集して形成されたクラスターの慣性半径Rを算出し、このRを用いて高分子材料のエネルギーロスを評価する手法は、充填剤の分散状態からエネルギーロスを推定することになるため、充填剤の分散状態が同程度の高分子材料の場合、そのエネルギーロスの差を高精度に評価することは困難であった。これに対し、本発明では、動的な状態で内部構造の応答特性を測定することにより、充填剤の分散状態が同程度の高分子であっても、エネルギーロスの差を高精度に評価することができる。
また、特許文献3で提案されている、X線散乱測定や中性子散乱測定により、ポリマーの架橋点間距離に相当すると推察される0.1nm〜100μmの相関長ξを算出し、このξを用いて高分子材料のエネルギーロスを評価する手法は、充填剤の有無などにかかわらず、任意の高分子材料についてエネルギーロスを精度良く評価できるものであった。しかしながら、静的な状態でエネルギーロスを測定するものであるため、高分子材料と充填剤の結合状態の硬さ(強度)を判断することができなかった。これに対し、本発明は、動的な状態で応答特性を測定するものであるため、高分子材料と充填剤の結合状態の硬さについても評価することができる。これにより、高分子材料と充填剤の結合状態の硬さを加味した応答特性の評価が可能となるため、静的な状態での測定と比較して、エネルギーロスの差をより高精度に評価することができる。
動的粘弾性測定と、X線散乱測定又は中性子散乱測定とを同時に実施する手法としては、例えば、粘弾性試験機から発信されたパルス信号に対して、X線検出装置又は中性子検出装置の露光を同期させることにより、パルス信号が最初に発信された時刻(t=0)を基準として、動的粘弾性測定の1周期を任意の回数に分割し、X線散乱測定又は中性子散乱測定を実施する手法が好適である。
パルス信号が最初に発信されるタイミングは、特に限定されるわけではないが、例えば、動的粘弾性測定における変位が0である点(起点となる歪を加えたとき)を用いるのが、解析上都合が良い。
動的粘弾性測定の1周期を分割する回数は、特に限定されるわけではないが、金属原子が凝集して形成されたクラスターや充填剤が凝集して形成されたクラスターの傾きを追従できる程度の回数であることが、解析上都合が良い。
動的粘弾性測定は、試料を周期的に歪ませた(変形させた)ときの応答を測定するものであり、変形(歪)のモードとして、引張(延伸)、圧縮、せん断、曲げなどがあるが、エネルギーロスの測定には、引張、圧縮が好適である。初期歪、周波数、動的歪振幅など、その他の条件については、測定対象とする高分子材料に応じて適宜設定可能である。
動的粘弾性測定に使用できる装置としては、特に限定されず、例えば、(株)上島製作所製のスペクトロメーターなど、一般的なものを使用できる。
本発明では、高分子材料の内部構造の応答特性(特にエネルギーロス)をより精度よく評価するために、X線散乱測定として、高分子材料にX線を照射し散乱強度を測定するSAXS(Small Angle X−ray Scattering 小角X線散乱(散乱角:通常10度以下))測定を好適に採用できる。なお、小角X線散乱では、X線を物質に照射して散乱するX線のうち、散乱角が小さいものを測定することで物質の構造情報が得られ、高分子材料のミクロ相分離構造など、数ナノメートルレベルでの規則構造を分析できる。
SAXS測定から詳細な分子構造情報を得るためには、高いS/N比のX線散乱プロファイルを測定できることが望ましい。そのため、シンクロトロンから放射されるX線は、少なくとも1010(photons/sec/mrad/mm/0.1%bw)以上の輝度を有することが好ましい。尚、bwはシンクロトロンから放射されるX線のband widthを示す。このようなシンクロトロンの例として、財団法人高輝度光科学研究センター所有の大型放射光施設SPring−8のビームラインBL03XU,BL08B2,BL20XUなどが挙げられる。
上記X線の輝度(photons/sec/mrad/mm/0.1%bw)は、好ましくは1010以上、より好ましくは1012以上である。上限は特に限定されないが、放射線ダメージがない程度以下のX線強度を用いることが好ましい。
上記X線の光子数(photons/sec)は、好ましくは10以上、より好ましくは10以上である。上限は特に限定されないが、放射線ダメージがない程度以下のX線強度を用いることが好ましい。
同様に、本発明では、高分子材料の内部構造の応答特性(特にエネルギーロス)をより精度よく評価するために、中性子散乱測定として、高分子材料に中性子線を照射し散乱強度を測定するSANS(Small Angle Neutron Scattering 小角中性子散乱(散乱角:通常10度以下))測定を好適に採用できる。なお、小角中性子散乱測定では、中性子線を物質に照射して散乱する中性子線のうち、散乱角が小さいものを測定することで物質の構造情報が得られ、高分子材料のミクロ相分離構造など、数ナノメートルレベルでの規則構造を分析できる。
SAXS測定と同様に、高いS/N比の中性子散乱プロファイルが得られるという点から、上記中性子線の中性子束強度(neutrons/cm/s)は、好ましくは10以上、より好ましくは10以上である。上限は特に限定されないが、放射線ダメージがない程度以下の中性子束強度を用いることが好ましい。
このような中性子束強度が得られると言う点で、SANSなどの中性子散乱測定に使用される中性子線は、独立行政法人日本原子力研究開発機構所有のJRR−3研究炉のビームラインSANS−J、大強度陽子加速器施設J−PARC付属のSANS装置(BL15 TAIKAN, BL20 iMATERIAなど)、大韓民国のKAERI(Korea Atomic Energy Research Institute)所有の原子炉HANARO(High−flux Advanced Application Reactor)付属のSANS装置(40mSANS)などを用いることができる。
X線散乱測定又は中性子散乱測定においては、高分子材料のより微細な分子構造を測定する必要があるという点から、上記X線又は中性子線を用いて、下記(式1)で表されるqが10nm−1以下の領域で測定することが好ましい。前記q(nm−1)の領域は、数値が大きくなるほどより小さな情報が得られる点から望ましいので、該qの領域は、20nm−1以下であることがより好ましい。
Figure 0006613637
SAXS測定において散乱するX線は、X線検出装置によって検出され、該X線検出装置からのX線検出データを用いて画像処理装置などによって画像が生成される。
X線検出装置としては、例えば、2次元検出器(X線フィルム、原子核乾板、X線撮像管、X線蛍光増倍管、X線イメージインテンシファイア、X線用イメージングプレート、X線用CCD、X線用非晶質体など)、ラインセンサー1次元検出器を使用できる。分析対象となる高分子材料の種類や状態などにより、適宜X線検出装置を選択すればよい。
画像処理装置としては、X線検出装置によるX線検出データに基づき、通常のX線散乱画像を生成できるものを適宜使用できる。
SANS測定でもSAXS測定と同様の原理により測定可能であり、散乱する中性子線を中性子線検出装置により検出し、該中性子線検出装置からの中性子線検出データを用いて画像処理装置などによって画像が生成される。ここで、前記と同様、中性子線検出装置としては、公知の2次元検出器や1次元検出器、画像処理装置としては、公知の中性子線散乱画像を生成できるものを使用でき、適宜選択すればよい。
本発明では、X線散乱測定、中性子散乱測定のいずれを採用してもよいが、露光時間が短くても充分なS/N比を得られるという理由から、強度の高いX線を使用するX線散乱測定が好適である。
本発明における高分子材料としては特に限定されず、従来公知のものが挙げられるが、例えば、1種類以上の共役ジエン系化合物と1種類以上の充填剤とを含む複合材料を適用できる。共役ジエン化合物としては特に限定されず、イソプレン、ブタジエンなどの公知の化合物が挙げられる。
このような共役ジエン系化合物としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)などの二重結合を有するポリマーが挙げられる。また、前記複合材料などの高分子材料は、水酸基、アミノ基などの変性基を1つ以上含むものでもよい。
高分子材料としては、例えば、分子構造中に少なくとも1種の金属配位能を有する官能基を含む複合材料などを好適に適用できる。ここで、金属配位能を有する官能基としては、金属配位能を持つものであれば特に限定されず、例えば、酸素、窒素、硫黄などの金属配位性の原子を含む官能基が挙げられる。具体的には、ジチオカルバミン酸基、リン酸基、カルボン酸基、カルバミン酸基、ジチオ酸基、アミノ燐酸基、チオール基などが例示される。上記官能基は1種のみ含まれても、2種以上含まれてもよい。
なお、該官能基に対する配位金属としては、例えば、Fe,Cu,Ag,Co,Mn,Ni,Ti,V,Zn,Mo,W,Os,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Siなどが挙げられる。例えば、このような金属原子(M)を有する化合物が配合されかつ金属配位能を有する官能基(−COOなど)を含む高分子材料では、各−COOMが配位結合して多数の−COOMが重なることにより、金属原子が凝集したクラスターが形成される。
なお、上記金属原子(M)の配合量としては、高分子材料中のポリマー成分100質量部に対して、0.01〜200質量部が好ましい。
上記充填剤としては、カーボンブラック、シリカ;mM・xSiOy・zHO(式中、Mはアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、チタン及びジルコニウムよりなる群より選択された少なくとも1種の金属、又は該金属の酸化物、水酸化物、水和物若しくは炭酸塩を示し、mは1〜5、xは0〜10、yは2〜5、zは0〜10の範囲の数値を示す。)、などが挙げられる。
上記mM・xSiO・zHOで表される充填剤の具体例としては、水酸化アルミニウム(Al(OH))、アルミナ(Al、Al・3HO(水和物))、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al(SiO・5HOなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、酸化カルシウム(CaO)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化マグネシウム(MgO)、タルク(MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、チタン白(TiO)、チタン黒(Ti2n−1)などが挙げられる。このような充填剤を含む高分子材料では、充填剤が凝集したクラスターが形成される。なお、上記充填剤の配合量としては、高分子材料中のポリマー成分100質量部に対して、10〜200質量部が好ましい。
上記複合材料は、ゴム工業分野で汎用されている他の配合剤(シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイル、ワックス、加硫剤、加硫促進剤、架橋剤など)を含むものでもよい。このような複合材料は、公知の混練方法などを用いて製造できる。このような複合材料としては、例えば、タイヤ用ゴム材料として使用されるものが挙げられる。
次に、高分子材料のX線散乱測定又は中性子散乱測定で得られた散乱強度曲線の解析法について具体的に説明する。金属原子を含みかつ金属配位能を有する官能基を含む高分子材料やシリカなどの充填剤を含む複合材料について、SAXS測定やSANS測定を実施した場合、例えば、得られた散乱強度曲線を以下の方法で解析することにより、1nm〜100μmのクラスター(散乱体)の慣性半径(Rg)を求めることができる。
図1などのSAXS測定、SANS測定により得られた散乱強度曲線I(q)に対して、下記(式2)〜(式3)を用いてカーブフィッティングを行い、フィッティングパラメーターを最小2乗法で求める。
Figure 0006613637
求められたフィッティングパラメーターのうち、1nm〜100μmのサイズの分子構造の慣性半径Rgが、金属原子が凝集して形成されたクラスターや充填剤が凝集して形成されたクラスターに相当すると推定される。
動的粘弾性測定と、X線散乱測定又は中性子散乱測定とを同時に実施すると、慣性半径Rは、動的粘弾性測定における変形の周期に合わせて変化することになる。ここで、前記の(式2)及び(式3)を用いて、動的粘弾性測定の延伸方向に対して水平な方向の散乱強度曲線I(horizontal)(q)から、動的粘弾性測定の延伸方向に対して水平な方向の慣性半径Rg(horizontal)を算出するとともに、動的粘弾性測定の延伸方向に対して垂直な方向の散乱強度曲線I(vertical)(q)から、動的粘弾性測定の延伸方向に対して垂直な方向の慣性半径Rg(vertical)を算出し、下記(式4)及び(式5)を用いることで、アスペクト比の変動と動的粘弾性測定の入力周波との位相差φを算出することができる。
Figure 0006613637
なお、散乱強度曲線I(horizontal)(q)は、Azimuthal Angleを動的粘弾性測定の延伸方向に対して水平な方向にとって、部分平均することによって算出することができる。同様に、散乱強度曲線I(vertical)(q)は、Azimuthal Angleを動的粘弾性測定の延伸方向に対して垂直な方向にとって、部分平均することによって算出することができる。
具体的には、散乱強度曲線I(horizontal)(q)を算出する際のAzimuthal Angleは、動的粘弾性測定の延伸方向に完全に水平な方向を0°としたとき、0°を含み−45°〜45°のうちの任意角度範囲、及び/又は、180°を含み135°〜225°のうちの任意角度範囲とすればよい。また、散乱強度曲線I(vertical)(q)を算出する際のAzimuthal Angleは、90°を含み45°〜135°のうちの任意角度範囲、及び/又は、270°を含み225°〜315°のうちの任意角度範囲とすればよい。
この位相差φ及びその正接tanφは、高分子材料のエネルギーロスと相関性が高く、φ及びtanφが小さいほど、エネルギーロスも小さい。よって、動的粘弾性測定とX線散乱測定又は中性子散乱測定とを同時に実施し、(式2)〜(式5)を用いてφ及びtanφを求めることにより、高分子材料のエネルギーロスの評価が可能となる。
なお、φ及びtanφとエネルギーロスとに相関性がある理由は必ずしも明らかでないが、以下のように推測される。
シリカを含む複合材料を例にして説明すると、シリカのクラスターは、ラグビーボール型の凝集構造を有しており、動的粘弾性測定で歪が加えられると、凝集構造の傾き(形状)が変わるため、アスペクト比が変動することになる。φは、このアスペクト比の変動の波と、動的粘弾性測定の入力周波とのずれであり、φ及びtanφが小さければ、複合材料の粘弾性における粘性の寄与が小さく、エネルギーロスが少ないことを意味すると推測される。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
イソプレンゴム(IR):日本ゼオン(株)製のニッポールIR2200
ブタジエンゴム(BR):JSR(株)製のBR730
シリカ:東ソー・シリカ(株)製のNipol VN3
シランカップリング剤A〜C:試作品
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
(実施例1、比較例1,2で使用する成型品の製造方法)
表1に示す配合処方にしたがい、バンバリー混練機及びロール混練機にて混練し、次いで、混練した材料を170℃で20分間プレス成型して成型品を得た。得られた成型品(サンプル)を以下に示す試験方法により評価した。結果を表2に示した。
Figure 0006613637
[実施例1:動的粘弾性測定及びSAXS測定の同時実施]
<動的粘弾性測定>
60℃にセットした粘弾性試験機((株)上島製作所製のスペクトロメーター)内で、10mm×10mmのサンプルを、チャックでつかみ固定した。そして、このサンプルに対し、引張モードで、10%の初期歪を加えた後、周波数10Hz、動的歪振幅5%の歪を繰り返し加えることで、動的粘弾性測定を実施した。
<SAXS測定>
粘弾性測定中のサンプルに対し、動的粘弾性測定の変位が0となる点を規準とし、10msecごとにX線を照射し、下記条件で小角X線散乱(SAXS)測定を実施することで、成型品の内部構造の構造変化を観察した。粘弾性の1周期は10分割とした。得られた散乱強度曲線の一例を図1に示す。
(SAXS測定の条件)
X線の輝度:5x1012photons/sec/mrad/mm/0.1%bw
X線の光子数:2x10photons/sec
X線のエネルギー:8keV(BL08B2),23keV(BL20XU)
試料から検出器までの距離:3m(BL08B2),160m(BL20XU)
(SAXSの検出器)
2次元検出器:イメージング・インテンシファイア及びCCDカメラ
<SAXSのデータ処理>
BL08B2での測定から得られた、動的粘弾性測定の延伸方向に対して水平な方向の散乱強度曲線I(horizontal)(q)と、BL20XUでの測定から得られた同方向の散乱強度曲線I(horizontal)(q)とを、最小2乗法にて結合させた。動的粘弾性測定の延伸方向に対して垂直な方向の散乱強度曲線I(vertical)(q)についても同様にした。2つの曲線の結合は、広角側のBL08B2から得られる散乱強度曲線を固定し、小角側のBL20XUから得られる散乱強度曲線をシフトさせることで行った。
結合後の散乱強度曲線I(q)に対して、(式2)及び(式3)を用いてカーブフィッティンングを行い、フィッティングパラメーターRg(1nm〜100μmの慣性半径)を、動的粘弾性測定の延伸方向に水平な方向、垂直な方向のそれぞれに対して、最小2乗法で求めた。Rg(horizontal)及びRg(vertical)の時間変化を図2に示す。
得られたRg(horizontal)及びRg(vertical)を、(式4)及び(式5)を用いて解析することで、動的粘弾性測定の入力周波に対するRgのアスペクト比の変動の位相差φと、その正接tanφとを算出した。動的粘弾性測定の入力周波とアスペクト比の時間変化とを図3に示す。算出した位相差φは0.34551[rad]、tanφは0.35995であった。
[比較例1:走査型電子顕微鏡(SEM)測定]
室温にて、サンプルを走査型電子顕微鏡(日本FEI(株)製のXL30)で観察した。
[比較例2:透過型電子顕微鏡(TEM)測定]
ミクロトーム(LEICA社製のウルトラミクロトームEM VC6)でサンプルを50nm厚に切削し、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製のJEM2100F)で観察した。
Figure 0006613637
表2から、動的粘弾性測定及びSAXS測定を同時実施した実施例1では、内部構造の測定だけでなく、SEM測定を行った比較例1や、TEM測定を行った比較例2では不可能な、内部構造の応答特性であるエネルギーロスまでもが測定できることが明らかとなった。
(実施例2、比較例3,4で使用する成型品の製造方法)
表3に示す配合処方にしたがい、バンバリー混練機及びロール混練機にて混練し、次いで、混練した材料を170℃で20分間プレス成型して成型品(サンプル)A〜Cを得た。
[実施例2:動的粘弾性測定及びSAXS測定の同時実施]
実施例1と同様の手法によりφ及びtanφを算出し、それらの逆数を、サンプルAを100として指数表示した。数値が大きいほど、エネルギーロスが小さいことを示す。
[比較例3:動的粘弾性測定]
実施例1と同様の条件で動的粘弾性測定を実施してtanδを測定し、その逆数を、サンプルAを100として指数表示した。数値が大きいほど、エネルギーロスが小さいことを示す。
[比較例4:タイヤ転がり性能測定]
サンプルA〜Cの各配合をタイヤ部材に適用した試供タイヤについて、転がり抵抗試験機を用い、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、サンプルAを100として指数で表示した。数値が大きいほど、タイヤの転がり性能が良く、エネルギーロスが小さいことを示す。
Figure 0006613637
表3から、動的粘弾性測定及びSAXS測定を同時に実施した実施例2において、φ及びtanφを求めることにより、エネルギーロスを評価できることが立証された。また、実施例2から得られたφ及びtanφは、比較例3から得られたtanδと比較して、比較例4で得られたタイヤ転がり性能との相関性が高く、従来の測定で得られるtanδでは性能差を評価しにくいものでも、精度よく性能差を評価できることが明らかとなった。

Claims (5)

  1. 高分子材料に対して、動的粘弾性測定を実施しながら、X線又は中性子線を照射してX線散乱測定又は中性子散乱測定を実施得られた散乱強度曲線I(q)に対し、下記(式2)及び(式3)でカーブフィッティングして得られる1nm〜100μmの慣性半径R を用いて高分子材料の内部構造の応答特性を評価する方法であって、
    下記(式2)及び(式3)を用いて、動的粘弾性測定の延伸方向に対して水平な方向の散乱強度曲線I (horizontal) (q)から、動的粘弾性測定の延伸方向に対して水平な方向の慣性半径R g(horizontal) を算出するとともに、動的粘弾性測定の延伸方向に対して垂直な方向の散乱強度曲線I (vertical) (q)から、動的粘弾性測定の延伸方向に対して垂直な方向の慣性半径R g(vertical) を算出し、
    下記(式4)及び(式5)から得られるアスペクト比の変動と動的粘弾性測定の入力周波との位相差φを用いて応答特性を評価する、高分子材料の内部構造の応答特性を評価する方法
    Figure 0006613637
    Figure 0006613637
  2. 粘弾性試験機から発信されたパルス信号に対し、X線検出装置又は中性子検出装置の露光を同期させることにより、パルス信号が最初に発信された時刻を基準として、動的粘弾性測定の1周期を任意の回数に分割し、X線散乱測定又は中性子散乱測定を実施する請求項1記載の高分子材料の内部構造の応答特性を評価する方法。
  3. X線散乱測定が小角X線散乱測定、中性子散乱測定が小角中性子散乱測定である請求項1又は2記載の高分子材料の内部構造の応答特性を評価する方法。
  4. 高分子材料が、1種類以上の共役ジエン系化合物と1種類以上の充填剤とを含む複合材料である請求項1〜3のいずれかに記載の高分子材料の内部構造の応答特性を評価する方法。
  5. X線又は中性子線を用いて、下記(式1)で表されるqが10nm−1以下の領域で測定する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
    Figure 0006613637
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