JP2018096905A - 耐摩耗性能予測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高分子複合材料中の加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の分散状態を調べ、耐摩耗性能を予測する耐摩耗性能予測方法を提供する。【解決手段】加硫促進剤及びそれに準ずる添加剤からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む高分子複合材料に高輝度X線を照射し、X線のエネルギーを変えながら該高分子複合材料の微小領域におけるX線吸収量を測定することにより、前記化合物の分散状態を調べ、該分散状態に基いて耐摩耗性能を予測する耐摩耗性能予測方法。【選択図】なし

Description

本発明は、耐摩耗性能予測方法に関する。
ゴム材料は、硫黄を用いてポリマー同士を橋掛けした架橋構造を形成させることで、強度、機械疲労、繰り返し変形によるエネルギーロスや周波数応答性など、特異な物理特性を発現するため、タイヤや制震材料などに応用され、欠かすことのできない材料となっている。しかしながら、今後、タイヤ需要の拡大等による原材料の供給不足等の懸念から、ゴム材料の性能の長期維持が求められており、そのためには、耐摩耗性能、耐破壊性能等を向上することが必要にある。
ゴム材料の耐摩耗性能を向上させるポイントの1つとして架橋構造の制御が挙げられ、そのためには、硫黄や加硫促進剤の分散状態等を調べることが重要である。従来から、蛍光X線分析(XRF)、エネルギー分散型X線分光法(EDX)等を用いた硫黄のマッピングが提案されており、硫黄の分散状態が分析されているが、例えば、加硫系材料として、硫黄加硫剤と共に用いられ、加硫反応に重要な加硫促進剤と区別して分散状態を調べることができない。
本発明は、前記課題を解決し、高分子複合材料中の加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の分散状態を調べ、耐摩耗性能を予測する耐摩耗性能予測方法を提供することを目的とする。
本発明は、加硫促進剤及びそれに準ずる添加剤からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む高分子複合材料に高輝度X線を照射し、X線のエネルギーを変えながら該高分子複合材料の微小領域におけるX線吸収量を測定することにより、前記化合物の分散状態を調べ、該分散状態に基いて耐摩耗性能を予測する耐摩耗性能予測方法に関する。
前記高分子複合材料の2次元マッピング画像における前記化合物の粒子面積に基いて耐摩耗性能を予測する方法であることが好ましい。
前記化合物の最大粒子面積が小さいほど耐摩耗性能が優れていると判断する方法であることが好ましい。
前記高輝度X線を用いて、エネルギー範囲130〜280eVの硫黄L殼吸収端におけるX線吸収量及びエネルギー範囲370〜500eVの窒素K殼吸収端におけるX線吸収量を測定する方法であることが好ましい。
本発明によれば、加硫促進剤及びそれに準ずる添加剤からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む高分子複合材料に高輝度X線を照射し、X線のエネルギーを変えながら該高分子複合材料の微小領域におけるX線吸収量を測定することにより、前記化合物の分散状態を調べ、該分散状態に基いて耐摩耗性能を予測する耐摩耗性能予測方法であるので、実際にタイヤ等の製品を製造して耐久試験をすることなく、耐摩耗性能を予測することが可能となる。従って、開発時間やコストも削減できる。
試料のマッピング画像及びX線吸収スペクトルを示す図の一例。 試料のマッピング画像及びX線吸収スペクトルを示す図の一例。 前記マッピング画像を二値化した図及び加硫促進剤粒子の粒子面積と個数の関係図の一例。 加硫促進剤粒子の最大粒子面積と耐摩耗性能の関係図の一例。
本発明は、加硫促進剤及びそれに準ずる添加剤からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む高分子複合材料に高輝度X線を照射し、X線のエネルギーを変えながら該高分子複合材料の微小領域におけるX線吸収量を測定することにより、前記化合物の分散状態を調べ、該分散状態に基いて耐摩耗性能を予測する耐摩耗性能予測方法である。
耐摩耗性能等の検討には、サンプル中に含まれる各加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の分散状態(未加硫ゴム材料や加硫ゴム材料中で加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の分散状態、等)を精密に観察することが必要である。
この点について、本発明の方法は、先ず、サンプルの微小領域のX線吸収量を測定して加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の分散状態を測定するもので、例えば、窒素K殼吸収端や硫黄L殼吸収端におけるNEXAFSの2次元マッピングを測定することにより、サンプルの架橋構造の制御に重要な加硫促進剤やそれに準ずる添加剤のそれぞれの分散状態を観察できる。
そして本発明の方法は、その分散状態と耐摩耗性能の関係性が有ることを見出して、該分散状態の結果をもとに耐摩耗性能を予測する方法であり、例えば、サンプル中に存在する加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の粒子径分布(サンプル断面写真中に存在する加硫促進剤等を示す面積の分布、等)に基いて、該サンプルを用いて作製したタイヤ等の製品の耐摩耗性能の予測が可能である。
従って、加硫促進剤等の化合物を含む高分子複合材料(試験片)を本発明の方法に供することにより、実際にタイヤ等の製品を製造して耐久試験に供せずとも、該製品の耐摩耗性能を予測できる。
本発明の方法に供される高分子複合材料は、加硫促進剤及びそれに準ずる添加剤からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む材料である。加硫促進剤は、一般にゴム組成物の混練工程で添加(配合)、混練される加硫促進作用を持つ化合物である。加硫促進剤に準ずる添加剤は、無硫黄加硫剤(サルファードナー)である。
加硫促進剤としては、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類、キサントゲン酸塩類等、タイヤ工業で公知の各種加硫促進剤が挙げられる。特に、本発明の方法は、スルフェンアミド類等の硫黄含有加硫促進剤や、更に窒素も含む硫黄・窒素含有加硫促進剤等にも観察、分析にも好適に適用できる。
加硫促進剤に準ずる添加剤としては、4,4’−ジチオジモルホリン、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
高分子複合材料は、加硫剤を含むものでも良い。
加硫剤としては、タイヤ工業で一般的なものを使用でき、硫黄加硫剤(粉末硫黄等の硫黄からなる加硫剤);1,6−ヘキサメチレン−ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)などの硫黄を含む加硫剤:等が挙げられる。
高分子複合材料は、ジエン系ポリマーや、ブレンドゴム材料と1種類以上の樹脂とが複合された複合材料を含むものが好ましい。ジエン系ポリマーとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)などの二重結合を有するポリマーが挙げられる。
上記樹脂としては特に限定されず、例えば、ゴム工業分野で汎用されているものが挙げられ、例えば、C5系脂肪族石油樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂などの石油樹脂が挙げられる。
なお、高分子複合材料は、未加硫の複合材料、加硫済の複合材料のいずれでもよいが、種々の粒子径を持つ加硫促進剤等の粒子が観察され、該粒子径と耐摩耗性能の関係性を検討し易いという点から、未加硫の複合材料を用いる方が好適である。
本発明でX線吸収量を測定する方法としては、高輝度X線を用いて試料の微小領域におけるX線吸収スペクトルを測定する手法であるマイクロXAFS(X−ray Absorption Fine Structure)等を採用できる。通常のXAFSは、空間分解能を有しないため、試料全体の吸収量を検出するのに対し、マイクロXAFSは、試料の微小領域におけるX線吸収スペクトルを測定する測定方法であり、通常、100nm以下程度の空間分解能を有している。そのため、マイクロXAFSを採用することにより、試料中に含まれている各加硫促進剤やそれに準ずる添加剤、更には加硫剤等の吸収を検知し、各加硫促進剤やそれに準ずる添加剤、加硫剤等の吸収量の違いを検出できる。
空間分解能に優れるという点から、マイクロXAFSは軟X線領域で測定する方法(マイクロNEXAFS)が好ましく、走査型透過X線顕微鏡(STXM:Scanning Transmission X−ray Microscopy)法やX線光電子顕微鏡(XPEEM:X−ray Photo emission electron microscopy)法、等が挙げられる。
本発明では、ポリマー中の加硫促進剤等がX線損傷しやすいため、X線損傷が起きにくい方法での測定が望ましく、この点から、X線損傷が生じにくいSTXM法の方が好適である。また、測定の際、試料を冷却することでX線損傷を防ぐことが更に好ましい。
STXM法は、フレネルゾーンプレートで集光した高輝度X線を試料の微小領域に照射し、試料を抜けた光(透過光)と入射光を測定することで微小領域のX線吸収量を測定できる。なお、フレネルゾーンプレートの代わりに、X線反射ミラーを用いたKirkpatrick−Baez(K−B)集光系で高輝度X線を集光してもよい。
そして、微小領域のX線吸収量を測定し、次いでNEXAFSの2次元マッピングを行って得られたマッピング画像や、分散状態を観察する試料部位のX線吸収スペクトル、更には加硫促進剤やそれに準ずる添加剤、加硫剤等の試料に含まれる各材料の標準スペクトルを用いることにより、当該部位における加硫促進剤やそれに準ずる添加剤、加硫剤等の各材料の分散状態を観察できる。
X線エネルギーで走査するため光源には連続X線発生装置が必要であり、詳細な化学状態を解析するには高いS/N比及びS/B比のX線吸収スペクトルを測定する必要がある。そのため、シンクロトロンから放射されるX線は、少なくとも1010(photons/s/mrad/mm/0.1%bw)以上の輝度を有し、且つ連続X線源であるため、測定には最適である。尚、bwはシンクロトロンから放射されるX線のband widthを示す。
高輝度X線の輝度(photons/s/mrad/mm/0.1%bw)は、好ましくは1010以上、より好ましくは1011以上、更に好ましくは1012以上である。上限は特に限定されないが、放射線ダメージがない程度以下のX線強度を用いることが好ましい。
また、高輝度X線の光子数(photons/s)は、好ましくは10以上、より好ましくは10以上である。上限は特に限定されないが、放射線ダメージがない程度以下のX線強度を用いることが好ましい。
高輝度X線を用いて走査するエネルギー範囲は、好ましくは4000eV以下、より好ましくは1500eV以下、更に好ましくは1000eV以下である。4000eVを超えると、目的とする高分子複合材料を分析できないおそれがある。下限は特に限定されない。
なかでも、高輝度X線を用いて、370〜500eVのエネルギー範囲を走査して窒素K殼吸収端におけるX線吸収量を測定することが好ましく、130〜280eVのエネルギー範囲を走査して硫黄L殼吸収端におけるX線吸収量を測定し、かつ370〜500eVのエネルギー範囲を走査して窒素K殼吸収端におけるX線吸収量を測定することがより好ましい。窒素K殼吸収端におけるX線吸収量の測定により、加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の分散状態を調べることは可能であるが、併せて硫黄L殼吸収端におけるX線吸収量も測定すると、同じ視野で硫黄加硫剤の分散も調べられる。
なお、硫黄L殼吸収端のエネルギー範囲は、140〜200eVがより好ましく、150〜180eVが更に好ましい。窒素K殼吸収端のエネルギー範囲は、375〜450eVがより好ましく、380〜430eVが更に好ましい。
STXM法等では、放射光が使用されるが、測定するエネルギーがかけ離れている場合、光学系が変わるため、別のビームラインで実験する必要がある。
各吸収端のエネルギーは、
[硫黄L殼吸収端]L2(2p1/2):163.6eV、L3(2p3/2):162.5eV
[窒素K殼吸収端]409.9eV
[硫黄K殼吸収端]2472eV
で、硫黄K殼吸収端のみエネルギーが高いため、硫黄K殼吸収端と窒素K殼吸収端を測定しようとすると、別々に実験する必要がある。そして、違うエネルギー領域でも同じ視野を測定しない限り、硫黄加硫剤、加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の各材料の分散状態を評価できないので、硫黄K殼吸収端と窒素K殼吸収端の測定では、別のビームラインでの実験が必要で、同じ視野での測定が困難である。よって、当該測定では、各材料の分散状態を評価することは基本的に困難である。
これに対し、硫黄K殼吸収端ではなく、硫黄L殼吸収端を採用すると、窒素K殼吸収端と測定するエネルギー範囲が近く、該窒素K殼吸収端と、同一装置での測定が可能となる。従って、同じ視野での測定が可能となり、各材料の分散状態を同時に観察できるようになる。
上記のマイクロXAFS法を用いて、加硫促進剤やそれに準ずる添加剤を含む高分子複合材料のX線吸収スペクトル測定を行い、2次元マッピング、aXis2000等のソフトェア、等を用いて解析することにより、試料中に含まれる各加硫促進剤等の分散状態を観察できる。以下、この点について具体的に説明する。
図1−1(a)は、試料(加硫促進剤CZ、DPGを含む高分子複合材料)の窒素K殼吸収端のマッピング画像(上段)、当該試料のX線吸収スペクトル(中段)、加硫促進剤CZ(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、加硫促進剤DPG(1,3−ジフェニルグアニジン)の窒素K殼吸収端のX線吸収スペクトル(下段)を示す。図1−2(b)は、試料の硫黄L殼吸収端のマッピング画像(上段)、当該試料のX線吸収スペクトル(中段)、硫黄加硫剤、加硫促進剤CZ、DPGの硫黄L殼吸収端のX線吸収スペクトル(下段)を示す。
試料は、天然ゴム、ブタジエンゴム、硫黄(硫黄加硫剤)、加硫促進剤CZ、加硫促進剤DPG等を混練し、作製した高分子複合材料(未加硫)である。先ず、窒素K殼吸収端について、走査型透過X線顕微鏡(STXM)法を用いて、396〜403eVのエネルギー範囲を走査して窒素K殼吸収端におけるX線吸収量を測定し、試料のX線吸収スペクトルを得る。更に、得られた窒素K殼吸収端のX線吸収スペクトルに2次元マッピングを行い、図1−1(a)上段のマッピング画像を得る。
そして、得られたマッピング画像において、丸囲み箇所(試料の丸囲み箇所)の黒色部位の窒素K殼吸収端におけるX線吸収量、加硫促進剤CZ、DPGの窒素K殼吸収端におけるX線吸収量を、同エネルギー範囲で測定し、試料の該黒色部位のX線吸収スペクトル(図1−1(a)中段)、CZ、DPGのX線吸収スペクトル(標準スペクトル)を得る(図1−1(a)下段)。
窒素K殼吸収端と同一測定箇所の硫黄L殼吸収端についても、同様に、STXM法を用いて、162〜168eVのエネルギー範囲を走査して試料のX線吸収スペクトルを得、その硫黄L殼吸収端のX線吸収スペクトルに2次元マッピングを行い、図1−2(b)上段のマッピング画像を得る。
そして、得られたマッピング画像において、丸囲み箇所(試料の丸囲み箇所)の黒色部位(黒色部位1:硫黄及び加硫促進剤CZが存在する部位)、黒色部位2:主に加硫促進剤CZが存在する部位)の硫黄L殼吸収端におけるX線吸収量、硫黄、CZの硫黄L殼吸収端におけるX線吸収量を、同エネルギー範囲で測定し、試料の該黒色部位1、2のX線吸収スペクトル(図1−2(b)中段)、硫黄、CZのX線吸収スペクトル(標準スペクトル)を得る(図1−2(b)下段)。
マッピング画像では黒色部位の方がX線吸収量が大きく、これは、黒色部位に硫黄又は加硫促進剤が存在することを示している。そして、図1−1(a)の黒色部位の窒素K殼吸収端のスペクトル(図1−1(a)中段)を、CZ、DPGの標準スペクトル(図1−1(a)下段)と比較すると、加硫促進剤CZ、DPGのスペクトルと同エネルギーにピークを有している。従って、試料の当該部位に加硫促進剤CZ、DPGが存在することが分かる。
同様に、図1−2(b)の黒色部位1、2の硫黄L殼吸収端(図1−2(b)中段)を、硫黄、CZの標準スペクトル(図1−2(b)下段)と比較すると、硫黄、加硫促進剤CZと同エネルギーにピークを有している。従って、試料の当該箇所に、硫黄と、加硫促進剤CZとが存在することが分かる。
更に、図1−2(b)上段の硫黄L殼吸収端のマッピング画像において、硫黄及び加硫促進剤の存在が確認される黒色部位は、コントラストのはっきりした粒状の部分とコントラストのはっきりしない箇所が見られる。一方、図1−1(a)上段の窒素K殼吸収端のマッピング画像は、黒色部位のコントラストがはっきりしていない。従って、コントラストがはっきりしている粒状部分に硫黄、はっきりしていない部分に加硫促進剤が、主に分散していると予想される。
なお、試料中の化合物の同定に関し、スペクトルの測定時期が異なると、スペクトルのエネルギーが多少ずれるケースがある(ズレが大きい場合、1〜2eV程度)。そのため、同時期に試料のスペクトル及び標準スペクトルを測定することが望ましいが、例えば、標準スペクトルの測定は1回だけ行い、異なる時期に試料のスペクトルを測定するケースにおいて、仮に両時期のエネルギーがずれていても、ピークの数、各ピークのエネルギー間隔及び強度が、標準スペクトルと対応している(スペクトルの形状が似ている)という点に基いて、試料中の化合物を同定することは可能である。但し、エネルギーのズレを確認(補正)する目的で、標準試料を1個以上測定することが望ましい。例えば、加硫促進剤CZは、窒素及び硫黄の両原子を含有しているため、窒素K殻及び硫黄L殻の吸収端をそれぞれ測定する手法を使用できる。
また、試料のスペクトルが、複数の化合物の各標準スペクトルを足し合わせた形状に近いケースでは、試料中に当該複数の化合物が存在すると同定できる。
以上のような分析により、試料中に含まれる硫黄等の加硫剤、加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の分散状態の観察が可能であることが分かる。なお、図1には、硫黄加硫剤及び2種の加硫促進剤を含む高分子複合材料の例が示されているが、例えば、加硫促進剤やそれに準ずる添加剤1種類のみを含む試料でも、本発明を適用することで、同様に、その加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の分散状態を観察できる。
本発明は、前述の方法等により、加硫促進剤やそれに準ずる添加剤、硫黄等の加硫剤の分散状態を観察し、次いで、その分散状態と、分散状態を観察したサンプルを用いた製品の耐摩耗性能との関係性が有るという知見を見出したもので、該関係性に基いて、該耐摩耗性能を予測できる。以下、この点について一例を挙げ、具体的に説明する。
図1−1(a)上段に示されている試料(加硫促進剤CZ、DPGを含む高分子複合材料)の窒素K殼吸収端のマッピング画像を、Image−J等の画像解析ソフトにより二値化し、図2上段を得る。図1−1(a)上段の各黒色部位は、加硫促進剤CZ、DPGの存在を示すものである。よって、これを二値化した図2上段の各黒色部位には、加硫促進剤CZ及びDPGからなる加硫促進剤粒子が存在することを示す。
二値化した図2上段の各黒色部位で示されている加硫促進剤粒子の粒子解析を行い、粒子面積(粒子径、粒子の断面積)と、該粒子面積を持つ粒子の個数の分布(関係)を求める。図2下段は、前記粒子解析により求めた、図1−1(a)上段に存在する各加硫促進剤粒子の粒子面積分布(粒子径分布、粒子断面積分布)を示している。
次いで、図2下段の粒子面積分布で観察される試料中の加硫促進剤粒子の最大粒子面積(約22μm)と、該試料を用いて作製したタイヤの耐摩耗性能(耐久試験)の結果との関係、更には他の試料の最大粒子面積とそれを用いたタイヤの耐摩耗性能の結果との関係、をプロットした図の一例が図3である。図3に示されているように、加硫促進剤粒子の最大粒子面積が小さいほど、良好な耐摩耗性能が得られる傾向がある。この理由としては、(1)加硫促進剤の分散状態が架橋粗密に関与している可能性があること、(2)架橋粗密のサイズが大きい(架橋が不均一)と耐摩耗性能が良くないこと、等が考えられる。
図3に示されているとおり、良好な耐摩耗性能が得られるという点から、高分子複合材料中に存在する加硫促進剤の前記最大粒子面積は、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。
このように、本発明は、高分子複合材料中の加硫促進剤やそれに準ずる添加剤の分散状態(粒子径分布等)と、該材料を用いたタイヤ等の製品の耐摩耗性能との間に関係性が存在するという知見を見出し完成したもので、前述の手法等により観察される前記分散状態に基いて、製品の耐摩耗性能を予測できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
<試料作成方法>
(試料1)
下記配合内容に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を充填率が50%になるように、バンバリー型ミキサーに充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練し、得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を下記配合にて添加し、試料1(未加硫)を作製した。
(試料2)
下記配合内容に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を充填率が58%になるように、バンバリー型ミキサーに充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練し、得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を下記配合にて添加し、試料2(未加硫)を作製した。
(試料3)
下記配合内容に従い、充填率が58%になるように、バンバリー型ミキサーに充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練し、試料3(未加硫)を作製した。
(試料4)
下記配合内容をロールで練り込み、試料4(未加硫)を作製した。
(配合)
天然ゴム50質量部、ブタジエンゴム50質量部、カーボンブラック60質量部、オイル5質量部、ワックス2.5質量部、酸化亜鉛3質量部、ステアリン酸2質量部、粉末硫黄1.2質量部、及び加硫促進剤CZ1質量部、加硫促進剤DPG0.5質量部
なお、使用材料は、以下のとおりである。
天然ゴム:TSR20
ブタジエンゴム:宇部興産(株)製BR150B
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN351
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
ステアリン酸:日油(株)製の椿
粉末硫黄(5%オイル含有):鶴見化学工業(株)製の5%オイル処理粉末硫黄(オイル分5質量%含む可溶性硫黄)
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
(サンプリング方法)
特開2014−238287号公報に記載の方法を用いて、試料中のフリーサルファを除去した後、ミクロトームで、TEM−EDX用試料は厚み100nm、STXM用試料は厚み250nmにカットした後、TEM用のCu製のグリッドにマウントした。
〔比較例〕
作製した試料をTEM−EDX測定(市販の装置を使用)に供した。
〔実施例〕
以下の条件下で、作製した試料をSTXM測定に供した。
(測定場所)
自然科学研究機構 分子科学研究所 極端紫外光研究施設 BL4U
(測定条件)
輝度:1×1016(photons/s/mrad/mm/0.1%bw)
分光器:グレーティング
(測定エネルギー)
硫黄L殼吸収端:162〜168eV
窒素K殼吸収端:396〜403eV
〔評価〕
実施例(STXM)、比較例(TEM−EDX)のそれぞれについて、試料中の硫黄(硫黄加硫剤)、加硫促進剤の分散状態の観察、加硫促進剤の最大粒子面積の算出の可否を評価した。なお、実施例は、図1〜3の方法に沿い、aXis2000(フリーソフト)、Image−J(フリーソフト)を用いて解析し、前記最大粒子面積を算出した。結果を表1〜2に示す。
<試験タイヤ作成方法>
試料1〜4のゴム組成物がトレッド部となる試験タイヤ(サイズ:195/65R15)を作製し、以下のタイヤ性能試験(耐摩耗性能)に供した。
〔タイヤ性能試験(耐摩耗性能)〕
試験タイヤを実車走行させ、30000km走行前後のパターン溝深さの変化を求めた。試料2を用いて作製した試験タイヤの耐摩耗性能の指数を100とし、各試験タイヤの指数を算出した。指数が大きいほど耐摩耗性能が良好である。
表1から、TEM−EDXによる比較例の方法は、硫黄の分散状態しか観察できないのに対し、STXMによる実施例の方法は、硫黄と加硫促進剤共に、分散状態の観察が可能であった。表2のとおり、比較例の方法は、加硫促進剤粒子の最大粒子面積を算出できないのに対し、実施例の方法は、算出が可能であった。
そして、各試料を用いた試験タイヤの耐摩耗性能試験の結果と、実施例により算出した各試料の最大粒子面積に相関が見られ、該最大粒子面積が小さいほど、耐摩耗性能が優れていた。従って、本発明の方法により、加硫促進剤やそれに準ずる添加剤、硫黄等の加硫剤の分散状態の観察、加硫促進剤等の粒子の最大粒子面積の算出が可能で、それに基いて、各試料を用いた製品の耐摩耗性能を予測できることが明らかとなった。

Claims (4)

  1. 加硫促進剤及びそれに準ずる添加剤からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む高分子複合材料に高輝度X線を照射し、X線のエネルギーを変えながら該高分子複合材料の微小領域におけるX線吸収量を測定することにより、前記化合物の分散状態を調べ、該分散状態に基いて耐摩耗性能を予測する耐摩耗性能予測方法。
  2. 前記高分子複合材料の2次元マッピング画像における前記化合物の粒子面積に基いて耐摩耗性能を予測する請求項1記載の耐摩耗性能予測方法。
  3. 前記化合物の最大粒子面積が小さいほど耐摩耗性能が優れていると判断する請求項2記載の耐摩耗性能予測方法。
  4. 前記高輝度X線を用いて、エネルギー範囲130〜280eVの硫黄L殼吸収端におけるX線吸収量及びエネルギー範囲370〜500eVの窒素K殼吸収端におけるX線吸収量を測定する請求項1〜3のいずれかに記載の耐摩耗性能予測方法。
JP2016243384A 2016-12-15 2016-12-15 耐摩耗性能予測方法 Active JP6870309B2 (ja)

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