JP7069874B2 - 耐摩耗性能及び耐破壊性能の変化を予測する方法 - Google Patents
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Description
試料を透過してきたX線強度を検出する方法である。透過光強度測定には、フォトダイオードアレイ検出器等が用いられる。
試料にX線を照射した際に発生する蛍光X線を検出する方法である。検出器は、Lytle検出器、半導体検出器等がある。前記透過法の場合、試料中の含有量が少ない元素のX線吸収測定を行うと、シグナルが小さい上に含有量の多い元素のX線吸収によりバックグラウンドが高くなるためS/B比の悪いスペクトルとなる。それに対し蛍光法(特にエネルギー分散型検出器等を用いた場合)では、目的とする元素からの蛍光X線のみを測定することが可能であるため、含有量が多い元素の影響が少ない。そのため、含有量が少ない元素のX線吸収スペクトル測定を行う場合に有効的である。また、蛍光X線は透過力が強い(物質との相互作用が小さい)ため、試料内部で発生した蛍光X線を検出することが可能となる。そのため、本手法は透過法に次いでバルク情報を得る方法として最適である。
試料にX線を照射した際に流れる電流を検出する方法である。そのため試料が導電物質である必要がある。また、表面敏感(試料表面の数nm程度の情報)であるという特徴もある。試料にX線を照射すると元素から電子が脱出するが、電子は物質との相互作用が強いため、物質中での平均自由行程が短い。
そこで、蛍光法について、より具体的に以下説明する。
(試料1)
下記配合内容をロールで練り込み、新品試料1(加硫ゴム:加硫条件160℃、20分)を作製した。
下記配合内容に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を充填率が58%になるように、バンバリー型ミキサーに充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練し、得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を下記配合にて添加し、新品試料2(加硫ゴム:加硫条件160℃、20分)を作製した。
下記配合内容に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を充填率が50%になるように、バンバリー型ミキサーに充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練し、得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を下記配合にて添加し、新品試料3(加硫ゴム:加硫条件160℃、20分)を作製した。
天然ゴム50質量部、ブタジエンゴム50質量部、カーボンブラック60質量部、オイル5質量部、老化防止剤2質量部、ワックス2.5質量部、酸化亜鉛3質量部、ステアリン酸2質量部、粉末硫黄1.2質量部、加硫促進剤CZ1質量部、加硫促進剤DPG0.5質量部
天然ゴム:TSR20
ブタジエンゴム:宇部興産(株)製BR150B
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN351
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX-140
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
ステアリン酸:日油(株)製の椿
粉末硫黄(5%オイル含有):鶴見化学工業(株)製の5%オイル処理粉末硫黄(オイル分5質量%含む可溶性硫黄)
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
新品試料1~3のゴム組成物がトレッド部となる新品タイヤ1~3(サイズ:195/65R15)を作製した。
新品試料1~3、新品タイヤ1~3を、それぞれJIS-K6257記載の促進老化試験で老化させることにより、経年劣化品1~3、劣化タイヤ1~3を作製した。
各新品タイヤ、劣化タイヤについて、以下のタイヤ性能試験に供した。
(耐摩耗性能)
新品タイヤ又は劣化タイヤを実車走行させ、30000km走行前後のパターン溝深さの変化を求めた。各新品タイヤ1~3を100とし、対応する各劣化タイヤ1~3を指数で表示した。指数が大きいほど(指数が100に近いほど)、耐摩耗性能の変化が少ないことを示す。
新品タイヤ又は劣化タイヤのトレッド部について、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に基づき、引張試験を行った後、TB×EB/2として破壊特性を算出した。各新品タイヤ1~3を100とし、対応する各劣化タイヤ1~3を指数で表示した。指数が大きいほど(指数が100に近いほど)、耐破壊性能の変化が少ないことを示す。
(サンプリング方法)
特開2014-238287号公報に記載の方法を用いて、試料中のフリーサルファを除去した後、ミクロトームで、TEM-EDX用試料は、厚み100nmにカット後、TEM用のCu製のグリッドにマウントした。XAFS用試料は、厚み10μmにカット後、グラファイト製のホルダーにマウントした。
作製した新品試料、経年劣化品をTEM-EDX測定(市販の装置を使用)に供した。
作製した新品試料、経年劣化品について、以下の測定条件で、硫黄K殻吸収端近傍におけるXAFS法による測定を実施してXAFSスペクトルを得た。
XAFS:SPring-8 BL27SUのBブランチのXAFS測定装置
(測定条件)
輝度:1×1016photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw
光子数:5×1010photons/s
分光器:Si結晶分光器
検出器:SDD(シリコンドリフト検出器)
測定法:蛍光法
エネルギー範囲:2360~3500eV
X線のスポットサイズ:15μm×15μm(X線吸収量測定の各箇所:20μm×20μm)
なお、二値化に際し、概ね硫黄系化合物のみ存在する箇所を「所定以上の高硫黄濃度を有する各箇所」とした(1μm2あたり、硫黄系化合物の占める面積が約1μm2)。
実施例(XAFS)、比較例(TEM-EDX)のそれぞれについて、新品及び経年劣化品の硫黄系化合物の凝集状態(分散状態)の変化(実施例では、二値化した図において、経年劣化品中の所定以上の高硫黄濃度を有する各箇所の面積の総和と、新品中の所定以上の高硫黄濃度を有する各箇所の面積の総和との差分の算出)の測定の可否を評価した。結果を表1に示す。
Claims (6)
- 硫黄及び硫黄化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硫黄系材料を含む経年劣化前後の高分子複合材料に高輝度X線を照射し、X線のエネルギーを変えながら該高分子複合材料の測定領域におけるX線吸収量の測定を行い、前記測定領域における硫黄濃度の2次元マッピング画像から所定以上の高硫黄濃度を有する各箇所の面積を算出し、算出された面積の変化に基づいて耐摩耗性能及び耐破壊性能の変化を予測する方法。
- 経年劣化後の高分子複合材料の2次元マッピング画像中の所定以上の高硫黄濃度を有する各箇所の面積の総和と、経年劣化前の高分子複合材料の2次元マッピング画像中の所定以上の高硫黄濃度を有する各箇所の面積の総和との差分に基づいて変化を予測する請求項1記載の耐摩耗性能及び耐破壊性能の変化を予測する方法。
- 前記差分が小さいほど耐摩耗性能及び耐破壊性能の変化が小さいと判断する請求項2記載の耐摩耗性能及び耐破壊性能の変化を予測する方法。
- 経年劣化後の高分子複合材料の2次元マッピング画像中の所定以上の高硫黄濃度を有する各箇所が連続して形成された高硫黄濃度部位の最大面積と、経年劣化前の高分子複合材料の2次元マッピング画像中の所定以上の高硫黄濃度を有する各箇所が連続して形成された高硫黄濃度部位の最大面積との差分に基づいて変化を予測する請求項1記載の耐摩耗性能及び耐破壊性能の変化を予測する方法。
- 前記差分が小さいほど耐摩耗性能及び耐破壊性能の変化が小さいと判断する請求項4記載の耐摩耗性能及び耐破壊性能の変化を予測する方法。
- 前記高輝度X線を用いて、エネルギー範囲2400~3000eVの硫黄K殼吸収端におけるX線吸収量又はエネルギー範囲130~280eVの硫黄L殼吸収端におけるX線吸収量を測定する請求項1~5のいずれかに記載の耐摩耗性能及び耐破壊性能の変化を予測する方法。
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