JP6769123B2 - 架橋密度の測定方法 - Google Patents
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Description
XAFS法はX線を照射し、狙った原子におけるX線吸収量を測定する方法であり、化学状態(結合)の違いによって吸収できるX線エネルギーが異なることを利用して詳細な化学状態(結合)を調べることができる。しかしながら、硫黄含有高分子複合材料中には、モノスルフィド結合、ジスルフィド結合、ポリスルフィド結合等の硫黄の結合長さが異なる硫黄架橋が存在し、これらはスペクトルで検出されるピークエネルギーが近い。また、酸化亜鉛を配合した場合には硫化亜鉛も生成され、そのスペクトルも観察される。このように硫黄含有高分子複合材料中の硫黄の化学状態は複雑であるため、硫黄成分を含まない高分子材料に比べて、得られるXAFSスペクトルはブロードなスペクトルとなる傾向がある。従って、硫黄含有高分子複合材料の分析には、より高精度な測定が要求される。そこで、XAFS法においてより高精度な測定を行うために、高輝度X線を用いることができる。
なお、X線のビームサイズを調整する方法としては、例えば、スリットを広げる、ポリキャピラリー等でビームサイズを拡大する、等が挙げられる。
試料を透過してきたX線強度を検出する方法である。透過光強度測定には、フォトダイオードアレイ検出器等が用いられる。
試料にX線を照射した際に発生する蛍光X線を検出する方法である。検出器は、Lytle検出器、半導体検出器等がある。前記透過法の場合、試料中の含有量が少ない元素のX線吸収測定を行うと、シグナルが小さい上に含有量の多い元素のX線吸収によりバックグラウンドが高くなるためS/B比の悪いスペクトルとなる。それに対し蛍光法(特にエネルギー分散型検出器等を用いた場合)では、目的とする元素からの蛍光X線のみを測定することが可能であるため、含有量が多い元素の影響が少ない。そのため、含有量が少ない元素のX線吸収スペクトル測定を行う場合に有効である。また、蛍光X線は透過力が強い(物質との相互作用が小さい)ため、試料内部で発生した蛍光X線を検出することが可能となる。そのため、本手法は透過法に次いでバルク情報を得る方法として最適である。
試料にX線を照射した際に流れる電流を検出する方法である。そのため試料が導電物質である必要がある。また、表面敏感(試料表面の数nm程度の情報)であるという特徴もある。試料にX線を照射すると元素から電子が脱出するが、電子は物質との相互作用が強いため、物質中での平均自由行程が短い。
そこで、蛍光法について、より具体的に以下説明する。
XAFS法は、X線エネルギーで走査するため光源には連続X線発生装置が必要であり、詳細な化学状態を解析するには高いS/N比及びS/B比のX線吸収スペクトルを測定する必要がある。シンクロトロンから放射されるX線は、1010photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw以上の輝度を有し、且つ連続X線源であるため、XAFS測定には最適である。なお、bwはシンクロトロンから放射されるX線のband widthを示す。上記X線の輝度は、1011photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw以上であることがより好ましい。上記X線の輝度の上限は特に限定されないが、放射線ダメージがない程度以下のX線強度を用いることが好ましい。
試料中には、硫黄の結合原子数が8のポリスルフィド結合が存在すると考えられることから、BOXのサイズは、このポリスルフィド結合が入るようなサイズである必要がある。ここで、分子軌道計算によりポリスルフィド結合の安定な構造を求めると、硫黄−硫黄の原子間距離は2.0〜2.4Åであることから、BOXの1辺は少なくとも16.8Å(=2.4〔Å〕×(8−1))以上必要である。そこで、BOXのサイズが1辺16.8Å以上になるよう粒子数を設定する。
以下の配合内容に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を充填率が58%になるように(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーに充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練した(工程1)。工程1で得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を以下の配合にて添加し、160℃で20分間加硫することでゴム試料を得た(工程2)。
天然ゴム:TSR20
ブタジエンゴム:宇部興産(株)製のBR150B
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN351
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
ステアリン酸:日油(株)製の椿
粉末硫黄(5%オイル含有):鶴見化学工業(株)製の5%オイル処理粉末硫黄(オイル分5質量%含む可溶性硫黄)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
<実施例>
得られたゴム試料について、硫黄K殻吸収端付近におけるXAFS法による測定を、垂直100μm×水平100μmのビームサイズのX線を照射することで実施した。更に、測定箇所を変えて実施し、計6箇所のXAFSスペクトルを得た。
なお、XAFS法の測定条件及び解析条件は以下のとおりである。
XAFS:SPring−8 BL27SUのBブランチのXAFS測定装置
(測定条件)
輝度:1×1016photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw
光子数:5×1010photons/s
分光器:結晶分光器
検出器:SDD(シリコンドリフト検出器)
測定法:蛍光法
エネルギー範囲:2360〜3500eV
(XAFS解析)
(株)リガク製のXAFS解析統合ソフトウェアREX2000
平均化したXAFSスペクトルからEXAFS振動を抜き出した。平均化したXAFSスペクトルからの、EXAFS振動χ(k)の抜き出しは、下記式(4)により行った。
垂直15μm×水平15μmのビームサイズのX線を照射し、1箇所のXAFSスペクトルを得て、該XAFSスペクトルからEXAFS振動を抜き出した以外は、実施例と同様の方法により、積算後のスペクトル(図6)を得た。
積算後のスペクトルにおけるkが大きい領域は、架橋構造の違いやノイズの影響をうけやすい。図5(実施例)において、kが大きい領域で振動成分が小さいことから、本発明の方法は架橋構造の違いやノイズの影響が少ないことが分かり、硫黄架橋の不均一性の影響を受けずに、硫黄の化学状態の情報を高精度に得られることが分かった。
次に、得られた実施例のスペクトルから、硫黄の各結合数に対する架橋密度を算出した。
なお、硫黄架橋に関わっていない炭素については不要であるため、解析には使用しない。
得られた実測のEXAFS振動Eexp(k)から、リバースモンテカルロ法にて、χ2が収束するまで計算を実行し、収束したχ2からゴム試料中の硫黄の三次元構造を特定した。
リバースモンテカルロ計算における計算条件は以下のとおりとした。
プログラム:RMC_POT
初期配置:硫黄粒子7400個、炭素粒子1415個の計8815個をランダムに配置した。なお、硫黄粒子の数は、任意に設定したものであり、炭素粒子の数は、下記方法により求めたものである。
硫黄の数密度:下記方法により求めた。
炭素の数密度:下記方法により求めた。
また、計算は下記制限を設けて行った。
(a)原子間距離
分子軌道計算等により求めたゴム中のS−S距離、S−C距離、C−C距離より近すぎても、遠すぎてもいけないため、取り得る原子間距離の制限を設ける。本実施例では、S−S:2.0〜2.6Å、S−C:1.7〜2.3Å、C−C:1.4〜1.9Åとする。
(b)角度
分子軌道計算の結果から、S−S−S:120〜145°、C−S−S:120〜145°とする。
(c)配位数
上記のとおり、S−S、S−Cのいずれの場合も配位数は2である。
JIS K6229に準じたソックスレー抽出法を用いて、フリーサルファー(架橋に関与していない硫黄)やオイルやワックス、老化防止剤等ゴムの結合に関与していない薬品を除去した。具体的には、ソックスレー抽出器の最下部に設けた抽出フラスコにアセトンを満たし、中間部分に設けた紙又は焼結ガラス製容器内に、ハサミで細かく刻んだゴム試料20mgを入れ、最上部に冷却管を結合して24時間抽出を行った。
得られたゴム試料の試験片(2cm×2cm、厚み1mm)を、テトラヒドロフランとトルエンを1:1の割合で混合した溶液に1日浸して膨潤させた。この膨潤サンプルについて、熱機械分析計(島津製作所社製、製品名「TMA−50」)を用いて膨潤圧縮度を測定した。そして、Flory−Rehnerの式を用いて、膨潤サンプルの膨潤圧縮度から全網目密度νTを算出した。結果は、νT=7.10×10−5[mol/cc]であった。
2×7.10×10−5/1024[mol/Å3]×6.022×1023[個/mol]=8.5512×10−5[個/Å3]
なお、式中、6.022×1023[個/mol]はアボガドロ数である。
硫黄の粒子数を7400個に設定すると、上記で算出した硫黄の数密度(4.4736×10−4[個/Å3])、炭素の数密度(8.5512×10−5[個/Å3])から、炭素の粒子数xは、以下のように算出できる。
4.4736×10−4[個/Å3]:8.5512×10−5[個/Å3]=7400[個]:x[個]
x=1414.5[個]≒1415[個]
上記特定したゴム試料中の硫黄の三次元構造から、硫黄の結合原子数が1〜8の各スルフィド結合(R−Sn−R(1≦n≦8))についてそれぞれいくつあるかその本数を数え、その後、下記式(3)により各スルフィド結合(R−Sn−R(1≦n≦8))の架橋密度を算出した。各スルフィド結合の架橋密度を下記表1に示す。
なお、分子軌道計算により、ポリスルフィド結合の安定な構造における硫黄−硫黄の原子間距離は2.0〜2.4Åであったことから、硫黄−硫黄の原子間距離が2.0〜2.4Åの範囲が硫黄−硫黄結合しているとみなした。
Claims (4)
- 硫黄含有高分子複合材料における架橋密度を測定する方法であって、
硫黄含有高分子複合材料における架橋密度を測定する部位全体に、高輝度X線を照射し、X線のエネルギーを変えながらX線吸収スペクトルを測定する測定工程と、
前記X線吸収スペクトルから硫黄の各結合数に対する架橋密度を算出する算出工程とを含み、
前記測定する部位全体を675μm 2 以上とする架橋密度の測定方法。 - 前記硫黄含有高分子複合材料中の架橋が不均一である請求項1記載の架橋密度の測定方法。
- 前記X線を用いて走査するエネルギー範囲を2300〜4000eVとすることで、硫黄K殻吸収端付近の硫黄のX線吸収スペクトルを測定する請求項1又は2記載の架橋密度の測定方法。
- 前記X線は、光子数が107photons/s以上、輝度が1010photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw以上である請求項1〜3のいずれかに記載の架橋密度の測定方法。
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