JP6219607B2 - 化学状態測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ゴム材料の化学状態を正確に調べることが可能な化学状態測定方法に関する。
ジエン系ゴムなどのゴム成分を含むゴム材料の化学状態を調べる方法として、X線光電子分光法(XPS法)、高輝度X線を用いて着目している特定元素の吸収端付近のX線吸収スペクトルを測定する方法(NEXAFS法など)など、X線を使用する手法が知られている(特許文献1参照)。
XPS法やNEXAFS法は、検出深度が表面〜数十nmである表面敏感な測定手法であり、例えば、ポリマーの化学状態を調べるためには、XPS法では炭素1s軌道付近のスペクトルなど、NEXAFS法では炭素K殻吸収端近傍のスペクトルなど、に着目した測定が実施される。
しかしながら、従来の評価方法に比べ、ゴム材料の化学状態をより正確に測定できる評価方法を提供することが望まれている。
特開2012−141278号公報
本発明は、前記課題を解決し、ゴム材料の化学状態、特に劣化などの表面から生じる化学状態の変化(ゴム材料の劣化状態)を正確に測定できる化学状態測定方法を提供することを目的とする。
本発明は、ゴム材料にフリーサルファー除去処理を施した後、X線を用いた表面分析法を適用することにより、ゴム材料の化学状態を測定する化学状態測定方法に関する。
前記フリーサルファー除去処理は、前記ゴム材料中のフリーサルファー含有量を0.2質量%以下に低減するものであることが好ましい。
前記化学状態測定方法は、前記ゴム材料の化学状態の変化を調べ、前記ゴム材料の劣化状態を測定するものであることが好ましい。
前記フリーサルファー除去処理は、溶媒を用いて前記ゴム材料中のフリーサルファーを除去するものであることが好ましい。ここで、前記溶媒は、有機溶媒であることが好ましい。
前記フリーサルファー除去処理は、溶媒抽出法を用いて前記ゴム材料中のフリーサルファーを除去するものであることが好ましい。
本発明によれば、ゴム材料にフリーサルファー除去処理を施した後、X線を用いた表面分析法を適用することにより、ゴム材料の化学状態を測定する化学状態測定方法であるので、ゴム材料の正確な化学状態を測定できる。従って、特に劣化などの表面から生じる化学状態の変化を正確に測定でき、ゴム材料の劣化状態を評価できる。
硫黄K殻吸収端近傍のXAFSスペクトル。 硫黄K殻吸収端近傍のXAFSスペクトル(フリーサルファー除去処理前後)。 天然ゴムとブタジエンゴムのブレンドゴムの新品及びオゾン劣化を7時間実施した試料の炭素原子のK殻吸収端のNEXAFS測定結果を示したグラフ(規格化前)。 天然ゴムとブタジエンゴムのブレンドゴムの新品及びオゾン劣化を7時間実施した試料の炭素原子のK殻吸収端のNEXAFS測定結果を示したグラフ(規格化後)。 天然ゴムとブタジエンゴムのブレンドゴムの新品及び熱酸素劣化を1週間実施した試料の硫黄原子のK殻吸収端のXAFS測定結果を示したグラフ(規格化前)。 天然ゴムとブタジエンゴムのブレンドゴムの新品及び熱酸素劣化を1週間実施した試料の硫黄原子のK殻吸収端のXAFS測定結果を示したグラフ(規格化後)。 天然ゴムとブタジエンゴムのブレンドゴムの新品及び熱酸素劣化を1週間実施した試料の高分子材料のS2p(イオウの2p軌道)におけるX線光電子スペクトルの測定結果を示したグラフ。 天然ゴムとブタジエンゴムのブレンドゴムの新品及び熱酸素劣化を1週間実施した試料の高分子材料のS1s(イオウの1s軌道)におけるX線光電子スペクトルの測定結果を示したグラフ。
本発明の化学状態測定方法は、ゴム材料にフリーサルファー除去処理を施した後、X線を用いた表面分析法を適用することにより、ゴム材料の化学状態を測定する方法である。
加硫ゴムなどのイオウ架橋させたゴム材料の劣化要因として、紫外線、酸素、オゾン、熱などによるポリマー分子鎖の劣化、イオウ架橋の劣化などが知られているが、耐劣化性を改良するためには、どの要因によってポリマー分子鎖、イオウ架橋構造がどのように変化するかを知ることが重要である。
この点について、NEXAFS法を用いて試料の測定を行い、酸素K殻吸収端付近のX線吸収スペクトルの全面積からゴム材料に酸素やオゾンなどが結合した量を求める手法が提案されているが、高分子部分、イオウ架橋部分のいずれに結合したのかを判断できない。またXPS法で得られたS1s軌道のスペクトルの全面積に対するイオウ架橋に結合した酸化物のピークの割合を算出することで、イオウ架橋劣化を求める手法も考えられるが、酸化物の量から間接的にイオウ架橋部の劣化を求めるもので、劣化に直接関与する架橋部分の切断量を測定できない。
これに対し、イオウ架橋させたゴム材料(高分子材料)に、X線を照射し、X線のエネルギーを変えながらX線吸収量を測定することにより求めた高分子の劣化状態及びイオウ架橋の劣化状態から、高分子劣化とイオウ架橋劣化の劣化割合を求める劣化解析方法を用いることにより、それぞれの劣化割合を求めることができる。例えば、炭素K殻吸収端付近におけるX線吸収スペクトルからポリマーの劣化度を求めるとともに、硫黄K殻吸収端付近におけるX線吸収スペクトルのS−S結合量の変化からイオウ架橋の劣化度を求めることにより、高分子、イオウ架橋のそれぞれの劣化度を測定し、どちらの劣化がより進行しているか、劣化割合を判別できる解析方法を提供することが可能である。
ここで、当該解析方法のイオウ架橋劣化について、硫黄K殻吸収端付近におけるXAFS法を用いてX線吸収スペクトルを得ることで、図1に示されるようにS−S結合に帰属されるピークが検出され、該S−S結合は劣化によって切断されてピークが減少するため、その減少割合によってイオウ架橋劣化度を測定できる。しかし、ゴムを加硫する際、硫黄が全て反応せずゴム材料中に残っていることがあり、その場合、イオウ架橋部分のS−S結合が精度良く検出されないので、イオウ架橋の劣化度を正確に求められない。
本発明は、NEXAFS法、XAFS法、XPS法などの表面分析を実施する前に、予め溶媒などを用いるフリーサルファー除去処理を施し、ゴム材料中でイオウ架橋を形成しないフリーサルファーを除去することで、イオウ架橋部分のS−S結合を精度良く検出でき、高分子部分だけでなく、イオウ架橋部分についても精密に測定することが可能となるため、ゴム材料の正確な化学状態を測定できる。従って、NEXAFSスペクトル、XAFSスペクトル、XPSスペクトルなどにより正確な化学状態を測定できるとともに、劣化前後のスペクトルを対比することで、劣化状態(劣化度合)も正確に測定可能である。
具体的に説明すると、図2は、フリーサルファー除去処理前後のゴム材料について、硫黄K殻吸収端付近のXAFSスペクトルを示しているが、図示されているように、フリーサルファー除去処理後のスペクトルは、除去処理前のスペクトルに比べて、S−S結合のピークが小さくなっている。これは、XAFS法に供する前に、ゴム材料中に含まれるフリーサルファーが除去されていることで、フリーサルファーのS−S結合分が減少し、イオウ架橋部分のS−S結合が精度良く検出可能となっているものと考えられる。
本発明では、先ず、ゴム材料にフリーサルファー除去処理が施される。
本発明に供するゴム材料としては特に限定されず、従来公知のゴム組成物を使用でき、例えば、ゴム成分、他の配合材料を含むゴム組成物などが挙げられる。
ゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)などのジエン系ゴムなどが挙げられる。また、ゴム成分は、水酸基、アミノ基などの変性基を1つ以上含むものでもよい。
更にゴム成分としては、前記ゴム成分と1種類以上の樹脂とが複合された複合材料も使用できる。上記樹脂としては特に限定されず、例えば、ゴム工業分野で汎用されているものが挙げられ、例えば、C5系脂肪族石油樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂などの石油樹脂が挙げられる。
ゴム材料には、カーボンブラック、シリカなどの充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、オイル、加硫剤、加硫促進剤、架橋剤など、従来公知のゴム分野の配合物を適宜配合してもよい。このようなゴム材料(ゴム組成物)は、公知の混練方法などを用いて製造できる。このようなゴム材料としては、例えば、タイヤ用ゴム材料(タイヤ用ゴム組成物)などが挙げられる。
フリーサルファー(ゴム材料中でイオウ架橋を形成しないサルファー)除去処理としては、ゴム材料からフリーサルファーを除去できる任意の処理方法を適用でき、例えば、溶媒を用いる方法が挙げられる。溶媒を用いるフリーサルファー除去処理としては、室温や加熱状態など、所定条件下において、ゴム材料を溶媒に湿潤(含浸)する方法、ソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて溶媒抽出を実施する等の抽出法(溶媒抽出法)などが挙げられる。なかでも、フリーサルファーを効率的に除去できる点から、ソックスレー抽出などの抽出法が好ましく、ソックスレー抽出が特に好ましい。
ソックスレー抽出としては、JISK6229に準じたソックスレー抽出法による抽出操作などを実施できる。例えば、ソックスレー抽出器の最下部に設けた抽出フラスコに溶媒(溶剤)を満たし、中間部分に設けた紙又は焼結ガラス製容器内に、適当な大きさの試験片に調製した所定量のゴム材料を入れ、最上部に冷却管を結合することにより、実施できる。
ソックスレー抽出などの抽出時間は、フリーサルファーを除去でき、ゴムの化学状態を変化させない時間であれば特に限定されず、本発明に適用するゴム材料の構成成分などに応じて適宜設定すればよい。例えば、ソックスレー抽出の抽出時間は、10〜36時間が好ましい。10時間未満であると、フリーサルファーを充分に除去できないおそれがあり、36時間を超えると、劣化して短くなったゴム分子まで除去されてしまうおそれがある。なお、例えば、アセトンソックスレー抽出を用いた際のフリーサルファー量は、ゴム材料に配合されたイオウ量の約10%程度であり、また、劣化したゴム材料は、新品よりもフリーサルファー量が少ない傾向にある。
溶媒を用いるフリーサルファー除去処理(湿潤、抽出など)において、使用可能な溶媒としては、有機溶媒が好適である。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;等が挙げられる。なお、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明におけるフリーサルファー除去処理において、ゴム材料中のフリーサルファーの含有量を0.2質量%以下に低減することが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下であり、イオウ架橋部分のS−S結合を精度良く測定するためには、除去するほど望ましい。
本発明では、予めゴム材料にフリーサルファー除去処理を施した後、得られた試料(除去処理を施したゴム材料)にX線を用いた表面分析法が適用される。このような表面分析法としては、ゴム材料表面の化学状態を正確に測定できるという点から、NEXAFS(Near Edge X−ray Absorption Fine Structure:吸収端近傍X線吸収微細構造)法、XAFS(X−ray Absorption Fine Structure:吸収端近傍X線吸収微細構造)法などが好ましい。フリーサルファーを除去した試料に前記表面分析法を適用することで、正確な化学状態を調べることができる。また、劣化前後のそれぞれの試料に適用し、劣化前後のピーク強度や面積の比較により劣化状態(劣化度合)を精度良く調べることも可能である。
例えば、新品及び劣化後のゴム材料にフリーサルファー除去処理を施して作製された試料に対してそれぞれX線をエネルギーを変えながら照射し、X線吸収量を測定して得られた各スペクトルを比較することで、劣化後の試料の劣化状態を解析し、ポリマー劣化度とイオウ劣化度の劣化割合を判定する。具体的には、特定元素の吸収端付近のX線吸収スペクトルを測定する手法などを用いて、フリーサルファーを除去した試料の測定を行うことで、ポリマーの劣化度とイオウ架橋の劣化度を精度良く解析し、得られたそれぞれの劣化度からポリマーとイオウ架橋の劣化割合を判定する。
例えば、NEXAFS測定により得られる炭素原子のK殻吸収端のX線吸収スペクトルのピーク面積などからポリマー部分の劣化状態を解析するとともに、XAFS測定により得られる硫黄原子のK殻吸収端のX線吸収スペクトルのピーク面積などからイオウ架橋部分の劣化状態を解析し、得られたそれぞれの劣化度からポリマーとイオウ架橋の劣化割合を判定できる。なお、炭素K殻吸収端付近と硫黄K殻吸収端付近では、使用するX線のエネルギーが異なる。そのため、一般にシンクロトロンから放射される連続X線の必要なエネルギー範囲を分光器で切り出して測定に使用されるが、使用するエネルギーによって異なる分光器が用いられる。
NEXAFS法及びXAFS法は、X線エネルギーで走査するため光源には連続X線発生装置が必要であり、詳細な化学状態を解析するには高いS/N比及びS/B比のX線吸収スペクトルを測定する必要がある。そのため、シンクロトロンから放射されるX線は、少なくとも1010(photons/s/mrad/mm/0.1%bw)以上の輝度を有し、且つ連続X線源であるため、NEXAFS測定及びXAFS測定には最適である。尚、bwはシンクロトロンから放射されるX線のband widthを示す。
上記X線の輝度(photons/s/mrad/mm/0.1%bw)は、好ましくは1010以上、より好ましくは1011以上である。上限は特に限定されないが、放射線ダメージがない程度以下のX線強度を用いることが好ましい。
また、上記X線の光子数(photons/s)は、好ましくは10以上、より好ましくは10以上である。上限は特に限定されないが、放射線ダメージがない程度以下のX線強度を用いることが好ましい。
上記X線を用いて走査するエネルギー範囲は、好ましくは5000eV以下、より好ましくは4000eV以下、更に好ましくは3500eV以下である。5000eVを超えると、目的とする高分子複合材料中の劣化状態解析ができないおそれがある。下限は特に限定されない。
測定は、例えば、超高真空中に設置した試料にX線を照射することで光電子が飛び出し、それを補うためにグラウンドから電子が流れ、その試料電流を測定するという方法で実施できる。そのため、表面敏感ではあるが、測定可能な試料の条件として真空中でガスを出さないこと、導電性であることが挙げられるので、これまでは結晶や分子吸着の研究が主であり、ガスを出しそうでかつ絶縁体であるゴム試料の研究はほとんど行われていない。
この点について、NEXAFS及びXAFSは非占有軌道への励起を見ており、調査する元素に結合した元素の影響を大きく受けるため、個々の結合状態を分離することが可能で、劣化要因の分離が可能であるため、高分子劣化の分析に使用できる。
NEXAFS及びXAFSの測定方法には次の3つの方法が代表的に用いられている。本発明の実施例では、NEXAFS法では電子収量法、XAFS法では蛍光法を用いて実施したが、これに限定されるものではなく、様々な検出方法を用いてもよく、組み合わせて同時計測してもよい。
(透過法)
試料を透過してきたX線強度を検出する方法である。透過光強度測定には、フォトダイオードアレイ検出器などが用いられる。
(蛍光法)
試料にX線を照射した際に発生する蛍光X線を検出する方法である。検出器は、Lytle検出器、半導体検出器などがある。前記透過法の場合、試料中の含有量が少ない元素のX線吸収測定を行うと、シグナルが小さい上に含有量の多い元素のX線吸収によりバックグラウンドが高くなるためS/B比の悪いスペクトルとなる。それに対し蛍光法(特にエネルギー分散型検出器などを用いた場合)では、目的とする元素からの蛍光X線のみを測定することが可能であるため、含有量が多い元素の影響が少ない。そのため、含有量が少ない元素のX線吸収スペクトル測定を行う場合に有効的である。また、蛍光X線は透過力が強い(物質との相互作用が小さい)ため、試料内部で発生した蛍光X線を検出することが可能となる。そのため、本手法は透過法に次いでバルク情報を得る方法として最適である。
(電子収量法)
試料にX線を照射した際に流れる電流を検出する方法である。そのため試料が導電物質である必要がある。高分子材料は絶縁物であるため、今まで高分子材料のX線吸収測定は、蒸着やスピンコートなどによって試料をごく薄く基板に乗せた物を用いることがほとんどだったが、本発明では、ゴム材料をミクロトームで100μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは500nm以下に加工(カット)することでS/B比及びS/N比の高い測定を実現できる。
また、電子収量法の特徴として表面敏感(試料表面の数nm程度の情報)であるという点が挙げられる。試料にX線を照射すると元素から電子が脱出するが、電子は物質との相互作用が強いため、物質中での平均自由行程が短い。
例えば、ゴム材料にフリーサルファー除去処理を施して作製された試料のX線吸収スペクトル測定を行い解析することで、高分子劣化度(%)、イオウ架橋劣化度(%)を分析できる。以下、これについて説明する。
NEXAFS法により、イオウ架橋させたゴム材料における高分子の劣化状態を求める手法としては、例えば、上記X線のエネルギーを260〜400eVの範囲において炭素原子のK殻吸収端の必要な範囲を走査することによって得られるX線吸収スペクトルに基づいて下記(式1−1)により規格化定数α及びβを算出し、該規格化定数α及びβを用いて補正された炭素原子のK殻吸収端のX線吸収スペクトルを波形分離し、得られた285eV付近のπ遷移に帰属されるピーク面積を用いて下記(式1−2)により高分子劣化度(%)を求める方法が挙げられる。
(式1−1)
[劣化前の試料における測定範囲のX線吸収スペクトルの全面積]×α=1
[劣化後の試料における測定範囲のX線吸収スペクトルの全面積]×β=1
(式1−2)
[1−[(劣化後のπのピーク面積)×β]/[(劣化前のπのピーク面積)×α]]×100=高分子劣化度(%)
これにより、劣化後の高分子(ポリマー部分)の劣化度合(%)が得られ、ポリマー部分劣化率を分析できる。ここで、上記高分子劣化度を求める方法において、上記X線のエネルギーを260〜350eVの範囲にすることが好ましい。なお、上記劣化度を求める方法では、上記(式1−1)の操作を行う前に、吸収端前のスロープから評価してバックグランドを引くことが行われる。
上記高分子劣化度を求める方法において、上記(式1−1)におけるX線吸収スペクトルの全面積は、測定範囲内のスペクトルを積分したものであり、測定条件等によってエネルギー範囲は変えることができる。
上記高分子劣化度を求める方法について、NRとBRのブレンドゴムの新品、オゾン劣化を7時間実施した劣化品(共にイオウ架橋)のそれぞれにフリーサルファー除去処理を施して作製された試料を用いた例を用いて具体的に説明する。
除去処理済のこれらの試料について、炭素原子のK殻吸収端のNEXAFS測定結果を図3に示す。図3のように、劣化した試料では285eV付近のπのピークが新品と比較して小さくなるが、NEXAFS法は絶対値測定が困難である。その理由は、光源からの試料の距離などの微妙な変化がX線吸収スペクトルの大きさに影響を与えるためである。以上の理由により、炭素原子のK殻吸収端のNEXAFS測定結果については、試料間の単純な比較ができない。
そこで、測定した試料間のX線吸収スペクトルを比較するために以下の様に規格化を行った(直接比較できるように各試料のX線吸収スペクトルを補正した)。劣化前後で炭素殻のX線吸収量は変わらないことから、上記(式1−1)を用いて、炭素原子のK殻吸収端のピーク面積が1となるように規格化する。つまり、先ず規格化前のX線吸収スペクトルについて(式1−1)をもとに規格化定数α、βを算出し、次いで規格化前のX線吸収スペクトルにα、βを乗じたスペクトルに補正(規格化)することで、試料間のπのピークを直接比較できる。
このようにして得られた規格化後の炭素原子のK殻吸収端のスペクトル(NEXAFS)を図4に示す。規格化したスペクトルから高分子劣化度を上記(式1−2)を用いて決定する。上記高分子劣化度は、劣化前から劣化後へのπのピークの減少率であり、試料におけるポリマー鎖の劣化率(%)を示している。
なお、上記高分子劣化度を求める方法では、上記(式1−2)においてピーク面積に代えてピーク強度を用いても同様に高分子劣化度を求めることができる。
また、上記では、オゾン劣化品について説明しているが、酸素劣化品、オゾンと酸素の両方で劣化した劣化品でも同様の手法で解析でき、ポリマー鎖の劣化度を求めることが可能である。
前述の高分子の劣化状態は、例えば、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターのBL12ビームラインを用いて解析できる。
更に、XAFS法により、イオウ架橋させたゴム材料におけるイオウ架橋の劣化状態を求める手法としては、例えば、上記X線のエネルギーを2460〜3200eVの範囲において硫黄原子のK殻吸収端の必要な範囲を走査することによって得られるX線吸収スペクトルに基づいて下記(式1−3)により規格化定数γ及びδを算出し、該規格化定数γ及びδを用いて補正された硫黄原子のK殻吸収端のX線吸収スペクトルを波形分離し、得られた2472eV付近のS−S結合に帰属されるピーク面積を用いて下記(式1−4)によりイオウ架橋劣化度(%)を求める方法が挙げられる。
(式1−3)
[劣化前の試料における測定範囲のX線吸収スペクトルの全面積]×γ=1
[劣化後の試料における測定範囲のX線吸収スペクトルの全面積]×δ=1
(式1−4)
[1−[(劣化後のS−S結合のピーク面積)×δ]/[(劣化前のS−S結合のピーク面積)×γ]]×100=イオウ架橋劣化度(%)
これにより、劣化後のイオウ架橋部分の劣化度合(%)が得られ、イオウ架橋の劣化率を分析できる。ここで、上記イオウ架橋劣化度を求める方法において、上記X線のエネルギーを2460〜2500eVの範囲にすることが好ましい。なお、上記劣化度を求める方法では、上記(式1−3)の操作を行う前に、吸収端前のスロープから評価してバックグランドを引くことが行われる。
上記イオウ架橋劣化度を求める方法において、上記(式1−3)におけるX線吸収スペクトルの全面積は、測定範囲内のスペクトルを積分したものであり、測定条件等によってエネルギー範囲は変えることができる。
上記イオウ架橋劣化度を求める方法について、NRとBRのブレンドゴムの新品、熱酸素劣化を1週間実施した劣化品(共にイオウ架橋)のそれぞれにフリーサルファー除去処理を施して作製された試料を用いた例を用いて具体的に説明する。
除去処理済のこれらの試料について、硫黄原子のK殻吸収端のXAFS測定結果を図5に示す。図5のように、劣化した試料では2472eV付近のS−S結合(硫黄−硫黄結合)に対応するピークが減少し、SOx(硫黄酸化物)に対応するピークが増加することが判り、これは、S−S結合が切断され、その部分に酸素が結合したことを示しているが、XAFS法は絶対値測定が困難である。その理由は、光源からの試料の距離などの微妙な変化がX線吸収スペクトルの大きさに影響を与えるためである。以上の理由により、硫黄原子のK殻吸収端のXAFS測定結果については、試料間の単純な比較ができない。
そこで、測定した試料間のX線吸収スペクトルを比較するために以下の様に規格化を行った(直接比較できるように各試料のX線吸収スペクトルを補正した)。劣化前後で硫黄殻のX線吸収量は変わらないことから、上記(式1−3)を用いて、硫黄原子のK殻吸収端のピーク面積が1となるように規格化する。つまり、先ず規格化前のX線吸収スペクトルについて(式1−3)をもとに規格化定数γ、δを算出し、次いで規格化前のX線吸収スペクトルにγ、δを乗じたスペクトルに補正(規格化)することで、試料間のS−S結合のピークを直接比較できる。
このようにして得られた規格化後の硫黄原子のK殻吸収端のスペクトル(XAFS)を図6に示す。規格化したスペクトルからイオウ架橋劣化度を上記(式1−4)を用いて決定する。上記イオウ架橋劣化度は、劣化前から劣化後へのS−S結合のピークの減少率であり、試料におけるイオウ架橋の劣化率(%)を示している。
なお、上記イオウ架橋劣化度を求める方法では、上記(式1−4)においてピーク面積に代えてピーク強度を用いても同様にイオウ架橋劣化度を求めることができる。
また、上記では、酸素劣化品について説明しているが、オゾン劣化品、オゾンと酸素の両方で劣化した劣化品でも同様の手法で解析でき、イオウ架橋の劣化度を求めることが可能である。
前述のイオウ架橋の劣化状態は、例えば、SPring−8のBL27SUのBブランチを用いて解析できる。
また、本発明における表面分析法として、XPS法(X線光電子分光法)も有効であり、フリーサルファーを除去した試料にXPS法を適用することで、正確な化学状態を調べることができる。また、劣化前後のそれぞれの試料に適用し、劣化前後のピーク強度や面積の比較により劣化状態(劣化度合)を精度良く調べることも可能である。
詳細には、イオウ架橋させたゴム材料に、一定エネルギーのX線を照射し、励起・放出された光電子を測定する劣化解析方法により、高分子の劣化状態、イオウ架橋の劣化状態を求めることができる。また、高分子の劣化状態とイオウ架橋の劣化状態を求めることで、それぞれの劣化割合も解析できる。
例えば、新品及び劣化後のゴム材料にフリーサルファー除去処理を施して作製された試料に対してそれぞれ一定エネルギーのX線を照射し、励起・放出された光電子を測定して得られた各スペクトルを比較することで、劣化後の試料の劣化状態を解析し、ポリマー劣化度とイオウ劣化度の劣化割合を判定する。具体的には、特定軌道のX線光電子スペクトルを測定する手法などを用いて、フリーサルファーを除去した試料の測定を行うことで、ポリマーの劣化度とイオウ架橋の劣化度を精度良く解析し、得られたそれぞれの劣化度からポリマーとイオウ架橋の劣化割合を判定する。
例えば、XPS測定により得られる炭素1s軌道付近のスペクトルのピーク面積などからポリマー部分の劣化状態を解析するとともに、イオウS2p、S1s軌道に対応するスペクトルのピーク面積などからイオウ架橋部分の劣化状態を解析し、得られたそれぞれの劣化度からポリマーとイオウ架橋の劣化割合を判定できる。
ここで、イオウ架橋させたゴム材料に、一定のエネルギーX線を照射し、励起・放出された光電子を測定する手法としては、X線光電子分光法(XPS)などが挙げられ、具体的には、通常のAl Kα線(1486.6eV)を用いたXPS法、硬X線光電子分光法(HAX−PES:Hard X−ray Photoemission Spectroscopy)などを用いて測定できる。
XPS法により、イオウ架橋の劣化状態を測定する手法としては、例えば、一定エネルギーのX線を照射することによって励起・放出された光電子を分光し、イオウS2pに対応する光電子強度を測定したX線光電子スペクトルを波形分離し、得られたイオウ酸化物に帰属されるピーク面積を用いて下記(式2−1)によりイオウ架橋劣化度(%)を求める方法(方法1)が挙げられる。
(式2−1)
(S2pのイオウ酸化物に帰属されるピーク面積)/(S2pに関係する全ピーク面積)×100=イオウ架橋劣化度(%)
これにより、劣化後のイオウ架橋部分の劣化度(%)が得られ、劣化率を分析できる。
上記方法1において、上記(式2−1)におけるS2pに関係する全ピーク面積は、測定範囲内のスペクトルを積分したものであり、測定条件等によってエネルギー範囲は変えることができる。
上記方法1において、使用される一定エネルギーのX線のエネルギー範囲は、S2p(イオウ2p軌道)に関係するピークの面積を測定できるという点から、好ましくは、150〜200eV、より好ましくは155〜180eVである。
上記方法1について、NRとBRのブレンドゴムの新品、熱酸素劣化を1週間実施した劣化品(共にイオウ架橋)のそれぞれにフリーサルファー除去処理を施して作製された試料を用いた例を用いて具体的に説明する。
除去処理済のこれらの試料について、S2p(イオウの2p軌道)におけるX線光電子スペクトルの測定結果を図7に示す。図7のように、劣化した試料では、S−S結合に対応するピークが減少し、イオウ酸化物(SOx)に対応するピークが増加することがわかる。従って、劣化品のS2pにおけるX線光電子スペクトルを、S−S結合、SOxの各ピークに波形分離し、SOxに帰属されるピーク面積とS2pに関係する全ピーク面積を上記(式2−1)に適用することでイオウ架橋劣化度(%)が求められる。
ここで、S2p軌道はスピン軌道分裂のため、1つの帰属に付き2つのピークが出現し、また、イオウ酸化物(SOx)のピークは価数の異なる複数のピークが重なっていると考えられるが、原理的に考えると、図7のように、大きくS−Sに帰属されるピークとSOxに帰属されるピークに分離することが可能である。
なお、上記方法1では、上記(式2−1)においてピーク面積に代えてピーク強度を用いても同様にイオウ架橋劣化度を求めることができる。
また、HAX−PES法により、イオウ架橋の劣化状態を測定する手法としては、例えば、一定エネルギーのX線を照射することによって励起・放出された光電子を分光し、イオウS1sに対応する光電子強度を測定したX線光電子スペクトルを波形分離し、得られたイオウ酸化物に帰属されるピーク面積を用いて下記(式2−2)によりイオウ架橋劣化度(%)を求める方法(方法2)が挙げられる。
(式2−2)
(S1sのイオウ酸化物に帰属されるピーク面積)/(S1sに関係する全ピーク面積)×100=イオウ架橋劣化度(%)
これにより、劣化後のイオウ架橋部分の劣化度(%)が得られ、劣化率を分析できる。
特に、HAX−PES法を使用することで、通常のXPS法では測定できないS1s軌道を測定できるというメリットがある。つまり、通常のXPS法では、S2p軌道のスペクトルを測定することになるが、使用するX線のエネルギーが低いため、検出深さが表面〜数nmとなるのに対し、HAX−PES法では、S1s軌道を測定でき、使用するX線のエネルギーが高いため、検出深さは表面〜数十nmとなる。従って、ゴム材料の極表面にはイオウ化合物のブルームが生じるため、極表面を測定するXPS法では測定結果に影響を及ぼす懸念があるが、HAX−PES法は検出深さが深く、ブルームの影響を受けないと考えられる。よって、HAX−PES法によると、特にゴム材料のバルク(内部)におけるイオウ架橋の劣化解析が可能になる。
なお、通常のXPS法でS2p軌道のスペクトルを測定する場合においても、アルゴンイオンエッチングなどにより、極表面を除去した後に測定することでブルームの影響を低下させた測定結果を得ることも可能である。
上記方法2において、上記(式2−2)におけるS1sに対応するイオウの全ピーク面積は、測定範囲内のスペクトルを積分したものであり、測定条件等によってエネルギー範囲は変えることができる。
上記方法2において、使用される一定エネルギーのX線のエネルギー範囲は、イオウS1s(イオウの1s軌道)に関係するピークの面積を測定できるという点から、好ましくは、4〜10kevである。
上記方法2について、NRとBRのブレンドゴムの新品、熱酸素劣化を1週間実施した劣化品(共にイオウ架橋)のそれぞれにフリーサルファー除去処理を施して作製された試料を用いた例を用いて具体的に説明する。
除去処理済のこれらの試料について、S1s(イオウの1s軌道)におけるX線光電子スペクトルの測定結果を図8に示す。図8のように、劣化した試料では、S−S結合に対応するピークが減少し、イオウ酸化物(SOx)に対応するピークが増加することがわかる。従って、劣化品のS1sにおけるX線光電子スペクトルを、S−S結合、SOxの各ピークに波形分離し、SOxに帰属されるピーク面積とイオウに関係する全ピーク面積を上記(式2−2)に適用することでイオウ架橋劣化度(%)が求められる。
ここで、イオウ酸化物(SOx)のピークは価数の異なる複数のピークが重なっていると考えられるが、原理的に考えると、図8のように、大きくS−Sに帰属されるピークとSOxに帰属されるピークに分離することが可能である。
なお、上記方法2では、上記(式2−2)においてピーク面積に代えてピーク強度を用いても同様にイオウ架橋劣化度を求めることができる。
また、上記方法1、2では、酸素劣化品について説明しているが、オゾン劣化品、オゾンと酸素の両方で劣化した劣化品でも同様の手法で解析でき、イオウ架橋の劣化度を求めることが可能である。
前述のイオウ架橋の劣化状態は、例えば、Kratos製 AXIS Ultraなどの通常のXPS装置、SPring−8 BL46XUビームライン付属のHAX−PES装置を用いて解析できる。
更に上記劣化解析方法では、例えば、下記(式3)によって高分子劣化とイオウ架橋劣化の寄与率を算出することができる。
(式3)
[高分子劣化度(%)]/[イオウ架橋劣化度(%)]=高分子劣化とイオウ架橋劣化の寄与率
つまり、前述の高分子劣化度を求める方法やイオウ架橋劣化度を求める方法などを用いて高分子とイオウ架橋のそれぞれの劣化度を示す高分子劣化度(%)とイオウ架橋劣化度(%)の比(割合)を求めることにより、いずれの劣化がより進行しているか判別できる。具体的には、上記(式3)において、高分子劣化とイオウ架橋劣化の寄与率>1の場合は高分子劣化の進行の方が大きく、高分子劣化とイオウ架橋劣化の寄与率<1の場合はイオウ架橋劣化の進行の方が大きい、と判断できる。そのため、フリーサルファー除去処理を施したゴム材料に、前記劣化解析方法を採用することにより、従来よりも有効性の高い耐劣化対策が立てられる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
<実施例、参考例、及び比較例>
(ゴム材料)
以下の配合内容に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を充填率が58%になるように(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーに充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練した(工程1)。工程1で得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を以下の配合にて添加し、160℃で20分間加硫することでゴム材料を得た(工程2)。
(配合)
天然ゴム50質量部、ブタジエンゴム50質量部、カーボンブラック60質量部、オイル5質量部、老化防止剤2質量部、ワックス2.5質量部、酸化亜鉛3質量部、ステアリン酸2質量部、粉末硫黄1.2質量部、及び加硫促進剤1質量部。
なお、使用材料は以下のとおりである。また、劣化ゴム材料は下記条件で劣化させたものである。
天然ゴム:TSR20
ブタジエンゴム:宇部興産(株)製BR150B
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN351
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
ステアリン酸:日油(株)製の椿
粉末硫黄(5%オイル含有):鶴見化学工業(株)製の5%オイル処理粉末硫黄(オイル分5質量%含む可溶性硫黄)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
(劣化条件)
オゾン劣化:40℃ 50pphm(24時間)
酸素劣化:80℃ 空気中(168時間)
作製したゴム材料(新品、劣化品)に表1〜2に記載した前処理を施した後、処理後の各試料について、炭素K殻吸収端近傍におけるNEXAFS測定を実施してNEXAFSスペクトルを得、また、硫黄K殻吸収端近傍におけるXAFS測定を実施してXAFSスペクトルを得、更に、XPS測定を実施してXPSスペクトルを得た。
<NEXAFS測定>
NEXAFSを使用して、劣化前後の各試料について、以下の分析の実施により高分子劣化度(%)を測定した。
(使用装置)
NEXAFS:佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターのBL12ビームライン付属のNEXAFS測定装置
(測定条件)
輝度:5×1012photons/s/mrad/mm/0.1%bw
光子数:2×10photons/s
分光器:回折格子分光器
測定法:電子収量法
(高分子劣化度分析)
X線のエネルギーを260〜400eVの範囲で走査し、炭素原子のK殻吸収端のX線吸収スペクトルを得た。このスペクトルにおいて必要な範囲である260〜350eVの範囲をもとに(式1−1)から規格化定数α、βを算出し、この定数を用いてスペクトルを規格化(補正)した。規格化後のスペクトルを波形分離し、285eV付近のπ遷移に帰属されるピーク面積をもとに(式1−2)から高分子劣化度(%)を求めた。
<XAFS測定>
XAFSを使用して、劣化前後の各試料について、以下の分析の実施によりイオウ架橋劣化度(%)を測定した。
(使用装置)
XAFS:SPring−8 BL27SUのBブランチのXAFS測定装置
(測定条件)
輝度:1×1016photons/s/mrad/mm/0.1%bw
光子数:5×1010photons/s
分光器:結晶分光器
検出器:SDD(シリコンドリフト検出器)
測定法:蛍光法
(イオウ架橋劣化度分析1)
X線のエネルギーを2460〜3200eVの範囲で走査し、硫黄原子のK殻吸収端のX線吸収スペクトルを得た。このスペクトルにおいて必要な範囲である2460〜2500eVの範囲をもとに(式1−3)から規格化定数γ及びδを算出し、この定数を用いてスペクトルを規格化(補正)した。規格化後のスペクトルを波形分離し、2472eV付近のS−S結合に帰属されるピーク面積をもとに(式1−4)からイオウ架橋劣化度(%)を求めた。
<XPS測定>
XPSを使用して、劣化後の各試料について、以下の方法1の分析の実施によりイオウ架橋劣化度(%)を測定した。
(使用装置)
XPS:Kratos社製 AXIS Ultra
(測定条件)
測定光源:Al(モノクロメータ)
照射X線のエネルギー:1486eV
測定出力:20kV×10mA
測定元素及び軌道:S2p
束縛エネルギー:163.6eV(S2p1/2)、162.5eV(S2p3/2)
(イオウ架橋劣化度分析2(方法1))
上記の一定エネルギーのX線を照射することによって励起・放出された光電子を分光し、イオウS2pに対応する光電子強度を測定したX線光電子スペクトルを得た。このスペクトルの160〜175eVの範囲について、164eV付近のS−S結合、168eV付近のSOxに対応するピークにそれぞれ波形分離し、得られたイオウ酸化物に帰属されるピーク面積と160〜175eVの範囲のイオウの全ピーク面積を用いて(式2−1)からイオウ架橋劣化度(%)を求めた。
(高分子劣化とイオウ架橋劣化の寄与率分析)
上記の高分子劣化度分析で求められた高分子劣化度、イオウ架橋劣化度分析1又は2で求められたイオウ架橋劣化度の値を(式3)に適用して、高分子劣化とイオウ架橋劣化の寄与率を算出した。
上記の高分子劣化度分析、イオウ架橋劣化度分析1で得られた結果を表1、上記の高分子劣化度分析、イオウ架橋劣化度分析2で得られた結果を表2にそれぞれ示した。
Figure 0006219607
Figure 0006219607
予めゴム材料中のフリーサルファーを除去した後、NEXAFS、XAFS、XPSなどを用いて表面分析をすることで、高分子劣化だけでなく、イオウ架橋劣化も精度良く測定することが可能となり、本発明の評価法の有効性が立証された。

Claims (5)

  1. イオウ架橋させたゴム材料にフリーサルファー除去処理を施した後、X線を照射し、X線のエネルギーを変えながらX線吸収量を測定することにより、ゴム材料の化学状態の変化を調べ、ゴム材料における高分子の劣化状態及びイオウ架橋の劣化状態を測定し、高分子劣化とイオウ架橋劣化の劣化割合を求める化学状態測定方法。
  2. フリーサルファー除去処理がゴム材料中のフリーサルファー含有量を0.2質量%以下に低減するものである請求項1記載の化学状態測定方法。
  3. フリーサルファー除去処理が溶媒を用いてゴム材料中のフリーサルファーを除去するものである請求項1又は2記載の化学状態測定方法。
  4. 溶媒が有機溶媒である請求項3記載の化学状態測定方法。
  5. フリーサルファー除去処理が溶媒抽出法を用いてゴム材料中のフリーサルファーを除去するものである請求項1〜4のいずれかに記載の化学状態測定方法。
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