JP6578200B2 - 高分子材料中の充填剤構造解析方法 - Google Patents

高分子材料中の充填剤構造解析方法 Download PDF

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Description

本発明は、ゴムなどの高分子材料中における充填剤構造の解析方法に関する。
ゴムなどの高分子材料には、例えば補強剤としてカーボンブラックやシリカなどの充填剤が配合されている。高分子材料の性能を評価する上で、高分子材料中の充填剤構造(例えば、凝集体サイズなどの形状情報や凝集体分布などの空間構造情報)を知ることは有益である。
高分子材料中の充填剤構造を解析する手段として、例えば、電子顕微鏡による観察や、原子間力顕微鏡による観察、X線CT(コンピュータ断層撮影)、粘弾性の振幅依存測定などがある。しかし、電子顕微鏡観察は局所情報であり、全体を見ることはできず、また、原子間力顕微鏡観察は静的観察を主としたものである。また、X線CTはサンプル形状に制限があり、更に粘弾性の振幅依存測定は、充填剤の形状や分布を数値化できない。
一方、材料中の散乱体の構造情報を取得する方法として、X線小角散乱測定が知られており、ゴム材料などの高分子材料中における充填剤の構造解析に利用して、高分子材料の物性を評価することも提案されている(特許文献1〜3参照)。
WO2013/065405A1 特開2015−025746号公報 特開2013−108800号公報
かかるX線小角散乱測定では、測定試料中の散乱体(充填剤)の濃度が低い場合には、散乱強度を各散乱体からの散乱強度の和として表すことができ、散乱体間距離を反映する構造因子の影響を仮定することができるので、散乱強度から正確な散乱体構造情報を取得することができる。しかしながら、散乱体の濃度が高い場合には、散乱体の形状に起因する形状因子と、散乱体の配置(散乱体間干渉)に起因する構造因子(空間構造因子ともいう。)と、を分離することが困難であるため、正確な散乱体構造情報を得ることは難しい。一般に、タイヤなどに用いられるゴムに配合される充填剤の量は、X線小角散乱測定からすると高濃度であり、そのため、その測定データをそのまま解析しても、真の充填剤構造情報とはいえない。
本発明は、上記の点に鑑み、ゴムなどの高分子材料の充填剤構造情報を精度よく求めることができる充填剤構造解析方法を提供することを目的とする。
本発明に係る高分子材料中の充填剤構造解析方法は、充填剤を含有する高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施することにより、前記充填剤の配向による異方性を持つ二次元散乱像を得て、前記二次元散乱像を前記充填剤の配向方向における所定角度範囲で一次元化して散乱プロファイルを得て、得られた散乱プロファイルに対するフィッティングにより前記充填剤の形状情報を求めるものである。
本発明によれば、X線小角散乱測定により充填剤の配向方向に基づく異方性を持つ二次元散乱像を得て、該二次元散乱像のうち、形状因子の影響が強い所定角度範囲のデータを用いて解析することにより、充填剤の形状情報を精度よく求めることができる。
X線小角散乱測定の原理を説明するための図。 (A)は二次元散乱像の一例を示す図、(B)は一次元散乱プロファイルの一例を示す図。 異方性を持つ二次元散乱像の一例を示す図。 一実施例に係る二次元散乱像の図。 二次元散乱像の配向方向(くびれ部)における所定角度範囲で平均化した一次元散乱プロファイルの図。 二次元散乱像の配向方向に垂直な方向(扇形部)における所定角度範囲で平均化した一次元散乱プロファイルの図。
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
本実施形態に係る充填剤構造解析方法では、X線小角散乱測定を用いて高分子材料中の充填剤の構造を評価する。詳細には、充填剤を含有する高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施することにより、該充填剤の配向方向に基づく異方性を持つ二次元散乱像を得て、得られた二次元散乱像を上記配向方向における所定角度範囲で一次元化して散乱プロファイルを得て、得られた散乱プロファイルに対するフィッティングにより充填剤の形状情報を求める。
測定対象としての高分子材料としては、樹脂やゴムなどの高分子に充填剤が配合されたものであればよく、高分子の種類は特に限定されない。好ましくは、高分子材料としては、ゴム(即ち、ゴムポリマーに充填剤が配合されたゴム組成物)が挙げられ、より好ましくは、かかるゴム組成物を加硫してなる加硫ゴムである。ゴムポリマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)などが挙げられ、これらのゴムポリマーを単独又は2種類以上ブレンドしたものでもよい。
充填剤としては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、シリカ、タルク、クレー、アルミナなどの各種無機充填剤が挙げられる。好ましくは、補強効果の高い、カーボンブラックやシリカなどの補強性充填剤であり、一実施形態としては、カーボンブラック及び/又はシリカである。充填剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴムポリマー100質量部に対して10〜200質量部でもよく、20〜150質量部でもよい。
高分子材料は、充填剤の他、様々な配合剤を任意成分として含有してもよい。一実施形態として、上記ゴムを構成するゴム組成物には、シランカップリング剤、オイル等の軟化剤、可塑剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤など、通常ゴム工業で使用される各種配合剤を配合することができる。これら各成分の配合量は特に限定されない。なお、かかるゴム組成物は、バンバリーミキサーなどの混合機を用いて各成分を常法に従い混練することにより作製することができ、該ゴム組成物を常法に従い加熱して加硫することにより加硫ゴムが得られる。
測定対象としての高分子材料の形状は、X線が透過可能であれば、特に限定されないが、シート状であることが好ましい。一実施形態として、測定対象としては、シート状に加硫成形したゴムシートを用いてもよく、あるいはまた、タイヤ等のゴム製品からシート状に切り出したものを用いてもよい。
次に、X線小角散乱測定について説明する。
X線小角散乱(SAXS: Small-angle X-ray Scattering)測定は、散乱角が数度以下の散乱X線を測定する手法であり、散乱角は通常10°以下である。X線小角散乱測定では、測定試料である高分子材料にX線を照射すると、高分子材料を構成する物質の電子密度を反映してX線は散乱される。その散乱の強度分布を見ることで、構造解析に応用できる。
詳細には、充填剤(散乱体)によるX線の散乱は、図1に示す通りであり、入射X線のベクトル及び散乱X線のベクトルをそれぞれS0及びS1とするとき、散乱ベクトルqは下記式(1)で定義することができる。
式(1)を、散乱角θを用いて表現しなおすと、
となり、このときの光路差は、
で与えられる。したがって、体積V、電子密度分布ρ(r)の試料からの散乱X線の振幅A(q)は、各散乱を重ね合わせて、下記式(4)で表される。
振幅A(q)からなる散乱強度I(q)は、
より得ることができる。ここで、試料を多原子系と考えると、全系の電子密度分布ρ(r)は、粒子自身の電子密度分布p(r)と粒子分布関数s(r)に依存することから、
と表され、ここで、F(q)、S(q)はそれぞれ散乱体の形状因子、系の構造因子であり、それぞれを分離して求めることは困難である。
一方、充填剤を含有する高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施すると、図2(A)に示すような二次元散乱像が得られる。二次元散乱像は、散乱強度の大きさを示したものであり、図2(A)では白色に近いほど散乱強度が大きく、黒色に近いほど散乱強度が小さいことを示し、その等高線を白線(点線)で示している(図3及び図4において同じ)。従って、散乱中心から遠ざかるにつれて、散乱強度は小さくなる。なお、散乱中心(散乱像の中央の黒色部分)及びそこから下方に延びる黒色の線は、ビームストッパによる影の部分であり、散乱強度の大きさを示すものではない。
このようにして得られた二次元散乱像は、従来の解析手法では、全角度範囲で強度平均することで一次元化され、図2(B)に示すような散乱プロファイルが得られる。すなわち、散乱中心の周りで散乱強度を全周にわたって平均化すること(円環平均)により、図2(B)に示す一次元散乱強度曲線が得られる。従来の解析手法では、このようにして得られた散乱プロファイルを用いてフィッティングにより充填剤の形状情報(例えば、粒子サイズ)を取得するが、この散乱プロファイルには上記式(6)のように形状因子だけでなく、構造因子も含まれるため、正確な形状情報は得られない。
そこで、本実施形態では、これまでのX線小角散乱測定では困難であった形状因子と構造因子を分離解析する。すなわち、本実施形態では、上記二次元散乱像として、充填剤の配向による異方性を持つものを得て、かかる異方性を持つ二次元散乱像を該配向方向における所定角度範囲で一次元化する。これにより、形状因子に特化した散乱プロファイルが得られるので、より精度の高い充填剤の形状情報を取得することができる。
充填剤の配向による異方性を持つ二次元散乱像を得るための方法としては、高分子材料を延伸させずにX線小角散乱測定を行ってもよく、あるいはまた、高分子材料を延伸した状態でX線小角散乱測定を行ってもよい。具体的には、下記(a)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)充填剤を含有する高分子材料を延伸させずにX線小角散乱測定を実施する方法であり、高分子材料中で配向した充填剤によって二次元散乱像に異方性(配向による散乱の角度依存性)が生じる場合である。充填剤を含有する高分子材料において充填剤の配合量が多くなると、充填剤の配向が強くなって、図3に示すように、二次元散乱像は、充填剤の配向方向Eにおいて括れたような形状を示す。かかる充填剤の配向は、高分子材料の成形時における引張や材料流れなどにより形成されるものであり、図3に示す例では、充填剤が主として二次元散乱像の赤道方向Eに並んだ形態となることで、当該赤道方向Eが配向方向となっている。
(b)元々二次元散乱像に異方性を示さない高分子材料を、延伸させた状態でX線小角散乱測定を実施することにより、異方性を持つ二次元散乱像を得る方法である。充填剤を含有する高分子材料については、未延伸の状態では異方性を持たないものであっても、延伸した状態でX線小角散乱測定を行うことにより、得られた二次元散乱像において、上記(a)の場合と同様の括れ形状を持つ異方性が生じることが分かった。この場合、延伸方向に垂直な方向が配向方向となる。このような延伸による異方性の二次元散乱像は、充填剤の配合量が極端に少ない系では得られないが、ある程度以上充填剤を含有する系では取得することができる。
(c)延伸させずに測定した場合にも二次元散乱像に異方性を持つ高分子材料(即ち、充填剤に基づく配向方向を持つ高分子材料)を延伸させた状態でX線小角散乱測定を実施する方法である。この方法では、充填剤を含有する高分子材料を当該充填剤の配向方向に垂直な方向に延伸し、延伸した高分子材料にX線を照射して二次元散乱像を得ることが好ましい。これにより、高分子材料が元々有する充填剤の配向を、延伸により更に強調することができるので、二次元散乱像における異方性を高めて、形状因子と構造因子をより一層効果的に分離することができる。
この場合、延伸前にX線小角散乱測定を行って配向方向を求めることが好ましい。すなわち、一実施形態において、充填剤を含有する高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施することにより、該高分子材料における充填剤の配向方向を求め、求めた配向方向に対して垂直な方向に該高分子材料を延伸し、延伸した高分子材料を用いてX線小角散乱測定を行うことにより、上記一次元化を実施する二次元散乱像を取得してもよい。
なお、本実施形態において、X線小角散乱測定を行う際に使用するX線としては、例えば1010(photons/s/mrad2/mm2/0.1%bw)以上の高輝度X線であることが好ましい。このようなX線を放射するシンクロトロンとしては、高輝度光科学研究センターのSPring−8などが挙げられる。また、X線小角散乱測定におけるカメラ長(即ち、試料から散乱X線の検出器までの距離)は、特に限定されず、例えば6〜16mでもよい。検出器としては、CCDカメラ等の一般的なX線検出器を用いることができる。
次に、一次元化により散乱プロファイルを取得する方法について説明する。
図4は、上記(c)の方法により得られた異方性を持つ二次元散乱像である。図4に示す二次元散乱像では、子午線方向M(上下方向)が延伸方向であり、赤道方向E(水平方向)が配向方向である。二次元散乱像は、延伸方向Mに垂直な方向である配向方向Eにおいて括れた形状を示している。すなわち、散乱中心を通る赤道線EL上において、両側の散乱像が散乱中心に向かって狭まった形状を呈しており、散乱中心を通る赤道方向Eでは、これに垂直な子午線方向Mよりも、散乱強度の勾配が大きくなっている。
本実施形態では、かかる充填剤の配向方向Eにおける所定の角度範囲αで二次元散乱像を一次元化する。すなわち、二次元散乱像の散乱強度を全周にわたって平均化するのではなく、延伸方向Mに垂直な方向Eに現れるくびれ部における所定の角度範囲α(即ち、散乱中心を通る配向方向線(赤道線)EL上における所定の角度範囲)で、二次元散乱像の散乱強度を平均化して、散乱プロファイル(一次元散乱強度曲線)を取得する。この所定の角度範囲としては、散乱中心を通る配向方向線(赤道線)ELを中心として、αが10°以上50°以下のいずれかの角度範囲でもよく、10°以上40°以下のいずれかの角度範囲でもよく、15°以上35°以下のいずれかの角度範囲でもよい。なお、一次元化する散乱強度のデータは、例えば図4に示す二次元散乱像において散乱中心の左右両側のくびれ部における所定の角度範囲αでもよく、片側のくびれ部における所定の角度範囲αでもよい。
本実施形態では、このようにして一次元化した散乱プロファイルを用いて、当該散乱プロファイルに対するフィッティング(曲線当てはめ(カーブフィッティング)とも称される。)により充填剤の形状情報を求める。充填剤の形状情報としては、充填剤の粒子サイズ(例えば、一次凝集体サイズなど)が挙げられる。
フィッティング自体は公知の方法を用いることができ、例えば、下記式(7)のフィッティング関数(式出典:G. Beaucage, J.Appl.Cryst. 28, 717-728 (1995))で最小二乗法により解析する手法が挙げられる。
式中、I(q)は散乱強度であり、Gi、Bi、k、Piは回帰係数であり、qは散乱ベクトルで独立変数である。Rgiが、凝集体慣性半径(一次凝集体サイズ)を表す。
ここで、上記のように二次元散乱像の一部を一次元化した散乱プロファイルを用いることにより、精度の高い充填剤の形状情報が得られるが、これは次の実験結果から判明したものである。
実験では、高分子材料として、カーボンブラックを配合した加硫ゴムを用いた。その配合は、スチレンブタジエンゴム(JSR(株)製「JSR1502」)100質量部に対し、カーボンブラック(東海カーボン(株)製「シースト3」)30質量部と、亜鉛華(三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」)2質量部と、ステアリン酸(花王(株)製「ルナックS−20」)1質量部と、硫黄(細井化学工業(株)製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」)2質量部と、加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」)1質量部とし、常法に従い混練したゴム組成物を160℃でプレス加硫して厚さ1.0mmのゴムシートに成形した。
得られたゴムシートを用いて、未延伸時と、配向方向に垂直な方向に50%、100%及び200%の各延伸時について、次の試験条件でX線小角散乱測定を実施して二次元散乱像を取得した。試験条件は、X線の波長:1.5Å、カメラ長(試料から検出器までの距離):6m、qレンジ:0.005〜0.3nm-1、X線照射時間:1秒とした。
取得した二次元散乱像から、延伸方向Mに垂直な方向Eに現れるくびれ部における20°の角度範囲α(図4参照)で散乱強度を平均化して、図5に示す一次元化した散乱プロファイルを得た。また、延伸方向Mに現れる扇形部における20°の角度範囲β(図4参照)で散乱強度を平均化して、図6に示す一次元化した散乱プロファイルを得た。得られた散乱プロファイルを用いて、式(7)のフィッティング関数で最小二乗法による解析を行うことで、一次凝集体サイズを求めた。その結果は下記表1に示す通りである。
表1に示すように、扇形部の角度範囲βから算出した一次凝集体サイズは、延伸率が高くなるほど大きくなっており、そのため、構造因子の影響が大きいことが分かる。これに対し、くびれ部の角度範囲αから算出した一次凝集体サイズは、延伸率が高くなっても大きさの変化は小さく、従って、構造因子の影響は小さく、形状因子の影響が大きいことが分かる。特に延伸によって、一次凝集体サイズは一定の値に収束する傾向があるので、延伸により構造因子の影響を除いて、形状因子に起因した散乱プロファイルを抜き出せると考えられる。そのため、くびれ部の角度範囲αのデータを用いて解析することにより、より精度の高い一次元凝集体サイズを求めることができる。
上記の結果より、好ましい実施形態は、高分子材料を延伸させた状態で取得した二次元散乱像を用いることである。高分子材料の延伸率は特に限定されず、例えば、30〜300%でもよく、50〜200%でもよい。充填剤の形状情報をより高い精度で取得するためには、一実施形態として、複数の延伸率で高分子材料を延伸させて、各延伸率についてくびれ部における所定の角度範囲αで解析して充填剤の形状情報を求め、該形状情報の収束性を確認した上で、形状情報が一定の値に収束していれば、その値を当該高分子材料における充填剤の形状情報として決定することである。
本実施形態によれば、上記のように、X線小角散乱測定では従来は困難であった形状因子と構造因子の分離解析が可能となり、形状因子を抜き出して、高分子材料の充填剤の形状情報を精度よく取得することができる。このように形状因子を精度よく求めることができれば、あとは全体の情報に形状因子を割り付ければ、構造因子(充填剤の空間構造情報)を算出することができる。
詳細には、一実施形態において、延伸していない高分子材料に対するX線小角散乱測定により得られた二次元散乱像(図2(A)参照)を、全角度範囲(即ち、全周)で一次元化して散乱プロファイル(図2(B)参照)を得て、当該散乱プロファイルから上記で得られた充填剤の形状情報が支配的なプロファイルで割り付けることで、充填剤の空間構造情報(例えば、凝集体分布の指標となる凝集体間距離(粒子間距離)など)を求めてもよい。すなわち、上記式(6)の通り、形状因子と構造因子は積の関係にあるので、形状因子が支配的なプロファイルで割り付けることにより、構造因子を算出することができる。
このように充填剤の形状情報と空間構造情報(例えば、凝集体サイズと凝集体分布)を求めることができるので、それを用いて高分子材料の物性を評価するための高分子材料モデルを作成することができ、当該高分子材料モデルを用いた高分子材料の物性評価シミュレーションに利用することができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合(質量部)に従い、ゴムポリマーに配合剤を添加し混練して、未加硫ゴム組成物を調製した。
表2中の各成分の詳細は以下の通りである。
・SBR:JSR(株)製「JSR1502」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・硫黄:細井化学工業(株)製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
得られた未加硫ゴム組成物を、金型モールドでプレス加工(160℃、30分)することにより、厚さ1.0mmの加硫ゴムシートを作製した。得られたゴムシートを短冊状に打ち抜いて測定試料とした。測定試料は、任意のひずみで固定できる両端引張装置を用いて、100%延伸後、当該ひずみにおいてX線を照射してX線小角散乱測定を実施した。
X線小角散乱測定の測定条件は以下の通りである。
・X線の波長:1.5Å
・カメラ長:6m
・qレンジ:0.005〜0.3nm-1
・X線照射時間:1秒
より詳細には、実施例1〜3と比較例1〜3については、まず未延伸の試料についてX線小角散乱測定を行って二次元散乱像を取得し、該二次元散乱像からカーボンブラックの配向方向を求めた。そして、この配向方向に垂直な方向に100%延伸した状態でX線小角散乱測定を行って二次元散乱像を取得し、得られた二次元散乱像を用いて、比較例1〜3では、その全周にわたって散乱強度を平均化すること(円環平均)により、一次元散乱プロファイルを得て、式(7)を用いたフィッティングによりカーボンブラックの一次凝集体サイズを取得した。
これに対し、実施例1〜3では、取得した二次元散乱像のうち、赤道線EL上の20°の角度範囲α(図4参照)で散乱強度を平均化することにより、一次元散乱プロファイルを得て、式(7)を用いたフィッティングによりカーボンブラックの一次凝集体サイズを取得した。
一方、比較例4〜6として、未延伸の試料についてX線小角散乱測定を行って取得した二次元散乱像を用いて、その全周にわたって散乱強度を平均化すること(円環平均)により、一次元散乱プロファイルを得て、式(7)を用いたフィッティングによりカーボンブラックの一次凝集体サイズを取得した。
また、実施例1〜3について、未延伸の試料についてX線小角散乱測定を行って取得した二次元散乱像を用いて、その全周にわたって散乱強度を平均化すること(円環平均)により、一次元散乱プロファイルを得て、当該一次元散乱プロファイルに、上記で得られたカーボンブラックの形状因子プロファイルで割り付けて、得られたプロファイルを式(7)のフィッティング関数で最小二乗法による解析を行うことで、カーボンブラックの平均凝集体間距離を算出した。この際、式(7)中Rgiが凝集体間距離に相当する。
結果は表2に示す通りである。比較例1〜3は、試料を配向方向に延伸した二次元散乱像を全周にわたって平均化し一次凝集体サイズを算出したものであり、この場合、カーボンブラックの増量に伴い、一次凝集体サイズが低下した。比較例4〜6は、試料を延伸せずに取得した二次元散乱像を全周にわたって平均化し一次凝集体サイズを算出したものであり、この場合も同様に、カーボンブラックの増量に伴い、一次凝集体サイズが低下した。これら比較例1〜6では、凝集体密度が増えたことにより、凝集体間距離が小さくなって構造因子の影響が大きくなり、これにより一次凝集体サイズの算出結果に影響を与えたものと考えられ、正確な一次凝集体サイズとはいえない。
これに対し、実施例1〜3では、カーボンブラックの配合量の違いによる一次凝集体サイズの違いが小さく、よって、一次凝集体そのものの値を取得できていることが分かる。このように実施例1〜3であると、取得した二次元散乱像を全体ではなく、配向方向における所定角度範囲αで平均化したことにより、一次凝集体サイズを精度よく算出することができる。また、得られた一次凝集体サイズを用いることにより、カーボンブラックの平均凝集体間距離も算出することができるので、該一次凝集体サイズと平均凝集体間距離を用いて、加硫ゴムの物性評価シミュレーションを行うために必要なゴムモデルを作成することができる。
α…配向方向(くびれ部)における所定角度範囲、β…配向方向に垂直な方向(扇形部)における所定角度範囲

Claims (5)

  1. 充填剤を含有する高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施することにより、前記充填剤の配向による異方性を持つ二次元散乱像を得て、
    前記二次元散乱像を前記充填剤の配向方向における所定角度範囲で一次元化して散乱プロファイルを得て、
    得られた散乱プロファイルに対するフィッティングにより前記充填剤の形状情報を求める、
    高分子材料中の充填剤構造解析方法。
  2. 充填剤を含有する高分子材料を当該充填剤の配向方向に垂直な方向に延伸し、延伸した高分子材料にX線を照射して前記二次元散乱像を得て、前記二次元散乱像を、延伸方向に垂直な方向である前記配向方向における所定角度範囲で一次元化する、
    請求項1に記載の解析方法。
  3. 充填剤を含有する高分子材料にX線を照射してX線小角散乱測定を実施することにより、前記高分子材料における充填剤の配向方向を求め、求めた配向方向に対して垂直な方向に前記高分子材料を延伸する、
    請求項2に記載の解析方法。
  4. 延伸していない前記高分子材料に対するX線小角散乱測定により得られた二次元散乱像を、全角度範囲で一次元化して散乱プロファイルを得て、当該散乱プロファイルと前記充填剤の形状情報を用いて前記充填剤の空間構造情報を求める、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の解析方法。
  5. 前記高分子材料がゴムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の解析方法。
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