JP2019109696A - ゴム材料モデルの作成方法及びシミュレーション方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 マトリックスゴムの特性を再現する。【解決手段】 マトリックスゴムに複数のフィラー粒子が配合されたゴム材料の有限要素モデルを、コンピュータを用いて作成するための方法及びシミュレーション方法である。この作成方法では、コンピュータが、マトリックスゴムを有限個の第1要素F(i)で離散化したマトリックスゴムモデル3Mを生成する工程と、コンピュータが、複数のフィラー粒子を有限個の第2要素G(i)で離散化した複数のフィラー粒子モデル4Mを生成する工程と、フィラー粒子モデル4Mのうち、マトリックスゴムモデル3Mの第1要素F(i)を介して隣接する少なくとも2つのフィラー粒子モデル4M、4M間を第3要素H(i)で結合する工程とを含む。【選択図】図6
Description
本発明は、マトリックスゴムに複数のフィラー粒子が配合されたゴム材料の有限要素モデルを作成するための方法及びシミュレーション方法に関する。
下記特許文献1は、ゴムとフィラーとを含むフィラー充填ゴムの解析モデルを、コンピュータを用いて作成するための方法を提案している。解析モデルは、フィラーを有限個の要素で分割した少なくとも2つのフィラーモデルと、ゴムを有限個の要素で分割したゴムモデルとを含んでいる。フィラーモデル及びゴムモデルの各要素には、フィラー及びゴムの物性に基づく材料定数がそれぞれ定義されている。
ところで、ゴムを構成するポリマーの分子鎖は、2つのフィラー粒子に跨るように結合する場合がある。このような分子鎖は、フィラー充填ゴムの引張変形等によってフィラー粒子間で十分に伸びきると、局所的に大きな力を発生させ、ゴムの特性に影響を及ぼす。
しかしながら、上記特許文献1の解析モデルは、ゴムモデルの各要素に同一の材料定数が定義されているため、上述のようなゴムの特性を再現できないという問題があった。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、マトリックスゴムの特性の再現できるゴム材料モデルの作成方法及びゴム材料のシミュレーション方法を提供することを主たる目的としている。
本発明は、マトリックスゴムに複数のフィラー粒子が配合されたゴム材料の有限要素モデルを、コンピュータを用いて作成するための方法であって、前記コンピュータが、前記マトリックスゴムを有限個の第1要素で離散化したマトリックスゴムモデルを生成する工程と、前記コンピュータが、前記複数のフィラー粒子を有限個の第2要素で離散化した複数のフィラー粒子モデルを生成する工程と、前記フィラー粒子モデルのうち、前記マトリックスゴムモデルの前記第1要素を介して隣接する少なくとも2つのフィラー粒子モデル間を第3要素で結合する工程とを含むことを特徴とする。
本発明に係る前記ゴム材料モデルの作成方法において、前記結合する工程は、前記少なくとも2つのフィラー粒子モデル間の距離が、予め定められた距離よりも小さい場合にのみ、前記少なくとも2つのフィラー粒子モデル間を前記第3要素で結合してもよい。
本発明に係る前記ゴム材料モデルの作成方法において、前記第3要素は、線要素、面要素又はソリッド要素であってもよい。
本発明のゴム材料のシミュレーション方法は、前記コンピュータが、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法で作成された前記ゴム材料モデルを、予め定められた条件に基づいて変形させる工程と、変形した前記ゴム材料モデルから予め定められた物理量を取得する工程とを含むことを特徴とする。
本発明に係る前記ゴム材料のシミュレーション方法において、前記第3要素は、前記第3要素が結合している前記少なくとも2つのフィラー粒子モデル間の距離が予め定められた距離よりも大きくなったときにのみ、前記少なくとも2つのフィラー粒子モデル間に前記距離が大きくなるのを妨げる抵抗力を生成する特性が定義されていてもよい。
第1発明のゴム材料モデルの作成方法は、コンピュータが、マトリックスゴムを有限個の第1要素で離散化したマトリックスゴムモデルを生成する工程と、前記コンピュータが、複数のフィラー粒子を有限個の第2要素で離散化した複数のフィラー粒子モデルを生成する工程とを含んでいる。さらに、第1発明のゴム材料モデルの作成方法は、前記フィラー粒子モデルのうち、前記マトリックスゴムモデルの前記第1要素を介して隣接する少なくとも2つのフィラー粒子モデル間を第3要素で結合する工程を含んでいる。
第1発明のゴム材料モデルの作成方法では、前記第3要素により、前記少なくとも2つのフィラー粒子モデル間に、前記第1要素とは異なる特性を定義することができる。これにより、第1発明は、前記フィラー粒子間で局所的に大きな力が発生する前記マトリックスゴムの特性の再現できる前記ゴム材料モデルを作成することができる。
第2発明のゴム材料のシミュレーション方法は、コンピュータが、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法で作成されたゴム材料モデルを、予め定められた条件に基づいて変形させる工程と、変形した前記ゴム材料モデルから予め定められた物理量を取得する工程とを含んでいる。第2発明は、前記マトリックスゴムの特性を再現しうる前記ゴム材料モデルが用いられるため、ゴム材料の物理量を精度良く取得することができる。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態のゴム材料モデルの作成方法(以下、単に「作成方法」ということがある。)では、ゴム材料の有限要素モデル(ゴム材料モデル)が、コンピュータを用いて作成される。
本実施形態のゴム材料モデルの作成方法(以下、単に「作成方法」ということがある。)では、ゴム材料の有限要素モデル(ゴム材料モデル)が、コンピュータを用いて作成される。
有限要素モデルは、メッシュモデル等とも呼ばれている。このような有限要素モデルは、コンピュータを用いて作成され、後述のシミュレーション等に利用される。有限要素モデルは、二次元又は三次元の座標系に従って作成される。本実施形態では、有限要素モデルの二次元モデルとして、X方向及びY方向の二次元座標系に定義される。
図1は、本実施形態の作成方法及びシミュレーション方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含んで構成されている。本体1aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態の作成方法を実行するためのソフトウェアが予め記憶されている。本実施形態のソフトウェアとしては、汎用のメッシュ化ソフトウェア(例えば、ANSYS社の「ICEM CFD」)等が用いられる。
図2は、ゴム材料2の一例を示す部分断面図である。ゴム材料2は、マトリックスゴム3に、複数のフィラー粒子4が配合されている。マトリックスゴム3としては、天然ゴムやブタジエンゴム等が例示される。フィラー粒子4は、シリカである場合が例示される。なお、フィラー粒子4は、カーボンブラックやその他の充填剤が、単独で又は組み合わされても良い。本実施形態のフィラー粒子4は、部分的に凝集している。
ところで、マトリックスゴム3を構成する一つの分子鎖(図示省略)が、2つのフィラー粒子4、4に跨るように結合する場合がある。このような分子鎖は、ゴム材料2の引張変形等によってフィラー粒子4、4間で十分に伸びきると、局所的に大きな力を発生させ、マトリックスゴム3の特性に影響を及ぼす。したがって、ゴム材料2の開発には、上述のようなゴムの特性を再現したゴム材料モデルを作成して、それらの性能を評価することが重要である。図3は、ゴム材料モデルの作成方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。図4は、ゴム材料モデルの一例を視覚化して示す平面図である。図5は、図4の部分拡大図である。
本実施形態の作成方法では、先ず、コンピュータ1が、マトリックスゴム3(図2に示す)を有限個の第1要素F(i)(i=1、2、…)で離散化したマトリックスゴムモデル3Mを生成する(工程S1)。マトリックスゴムモデル3Mは、図2に示したゴム材料2中のマトリックスゴム3が占めている空間を、複数個の第1要素F(i)を用いて離散化することで定義される。マトリックスゴム3の空間は、例えば、実際のゴム材料2(図2に示す)の顕微鏡画像などに、公知の画像処理を施すことで特定することができる。
図5に示されるように、第1要素F(i)は、有限要素法により取り扱い可能なものである。本実施形態の第1要素F(i)は、面要素として設定される。面要素としては、例えば、四辺形要素又は三角形要素等の多角形要素が好適に用いられる。なお、ゴム材料モデル2M(図4に示す)が三次元モデルとして設定される場合、第1要素F(i)は、ソリッド要素(例えば、4面体ソリッド要素、5面体ソリッド要素、又は、6面体ソリッド要素)として定義される。
第1要素F(i)は、複数の第1節点7と、第1節点7、7間を接続する辺8とを有している。第1要素F(i)には、第1節点7の番号、及び、第1節点7の座標値が設定される。さらに、各第1要素F(i)には、図2に示したマトリックスゴム3の物性値に基づいた弾性率や減衰係数などの特性が入力される。マトリックスゴムモデル3Mは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の作成方法では、コンピュータ1が、複数のフィラー粒子4(図2に示す)を有限個の第2要素G(i)(i=1、2、…)で離散化した複数のフィラー粒子モデル4Mを生成する(工程S2)。図4に示されるように、フィラー粒子モデル4Mは、図2に示したゴム材料2中のフィラー粒子4が占めている空間を、複数個の第2要素G(i)を用いて離散化することで定義される。フィラー粒子4の空間の特定には、マトリックスゴム3(図2に示す)の空間を特定する方法と同一の方法が採用される。フィラー粒子モデル4Mは、第1要素F(i)及び第2要素G(i)が隣接する界面部11を介して、マトリックスゴムモデル3Mに隣接して配置されている。
第2要素G(i)は、第1要素F(i)と同様に、有限要素法により取り扱い可能なものである。また、本実施形態の第2要素G(i)は、第1要素F(i)と同様に、面要素として設定される。なお、ゴム材料モデル2Mが三次元モデルとして設定される場合、第2要素G(i)は、ソリッド要素として定義されるのが望ましい。
第2要素G(i)は、複数の第2節点17と、第2節点17、17間を接続する辺18を有している。第2要素G(i)には、第2節点17の番号、及び、第2節点17の座標値が設定される。さらに、各第2要素G(i)には、図2に示したフィラー粒子4の物性値に基づいた弾性率や減衰係数などの特性が入力される。フィラー粒子モデル4Mは、コンピュータ1に入力される。
本実施形態のマトリックスゴムモデル3M及びフィラー粒子モデル4Mは、界面部11において、第1節点7と第2節点17とが互いに共有するように配置されている。なお、本発明では、第1節点7と第2節点17とを互いに共有させる態様に限定されない。例えば、特開2015−162236号公報に記載されるように、第1節点7及び第2節点17の共有を考慮することなく、マトリックスゴムモデル3Mにフィラー粒子モデル4Mを重ねて配置してもよい。この場合、マトリックスゴムモデル3Mとフィラー粒子モデル4Mとの間に、拘束条件が定義されるのが望ましい。
次に、本実施形態の作成方法では、コンピュータ1が、少なくとも2つのフィラー粒子モデル4M、4M間を第3要素H(i)で結合する(工程S3)。本実施形態の工程S3では、2つのフィラー粒子4、4に跨るように結合する分子鎖(図示省略)を定義するように、少なくとも2つのフィラー粒子モデル4M、4M間を、第3要素H(i)で結合している。図6は、マトリックスゴムモデル3M及びフィラー粒子モデル4Mに定義された第3要素H(i)の拡大図である。
工程S3では、複数のフィラー粒子モデル4Mのうち、マトリックスゴムモデル3Mの第1要素F(i)を介して隣接する少なくとも2つのフィラー粒子モデル4M、4M間を、第3要素H(i)(i=1、2、…)で結合している。なお、本実施形態の工程S3において、互いに当接(凝集)しているフィラー粒子モデル4M、4M間については、第3要素H(i)が結合されない。第3要素H(i)は、例えば、一つの辺21からなる線要素として定義される。線要素は、有限要素法により取り扱い可能な1次元要素である。このような第3要素H(i)は、長手方向の引張や圧縮の計算に用いることができる。
第3要素H(i)は、第3節点23、第4節点24、及び、第3節点23と第4節点24との間をのびる一つの辺21を有している。本実施形態の第3要素H(i)の第3節点は、2つのフィラー粒子モデル4M、4Mのうち、一方のフィラー粒子モデル4Mの第2節点17(本実施形態では、界面部11に配置される第2節点17)と共有するように定義されている。一方、第4節点24は、2つのフィラー粒子モデル4M、4Mのうち、他方のフィラー粒子モデル4Mの第2節点17(本実施形態では、界面部11に配置される第2節点17)と共有するように定義されている。これにより、第3要素H(i)は、2つのフィラー粒子モデル4M、4M間を結合できる。
本実施形態の第3要素H(i)は、マトリックスゴムモデル3Mの第1要素F(i)に重ねて配置されている。第3要素H(i)には、任意の特性が定義される。これにより、第3要素H(i)は、少なくとも2つのフィラー粒子モデル4M、4M間に、マトリックスゴムモデル3Mの第1要素F(i)とは異なる特性を定義することができる。
本実施形態の第3要素H(i)には、少なくとも2つのフィラー粒子モデル4M、4M間に距離L1が大きくなるのを妨げる抵抗力を生成する特性が定義されている。これにより、第3要素H(i)は、後述のゴム材料モデル2Mを変形させる工程S3において、2つのフィラー粒子4、4に跨るように結合する分子鎖(図示省略)のように、フィラー粒子モデル4M、4M間に局所的に大きな力を発生させることができる。
このように、本実施形態の作成方法では、フィラー粒子4、4間で局所的に大きな力が発生するマトリックスゴム3の特性の再現しうるゴム材料モデル2Mを作成することができる。しかも、本実施形態の第3要素H(i)は、線要素で定義されているため、第3節点23及び第4節点24を支点として、第3要素H(i)で結合されている2つのフィラー粒子モデル4M、4Mの相対変位(回転変位)を許容することができる。したがって、本実施形態のゴム材料モデル2Mは、後述のゴム材料モデル2Mを変形させる工程S3において、柔軟に変形することができる。第3要素H(i)及びゴム材料モデル2Mは、コンピュータ1に記憶される。
抵抗力を生成する特性としては、適宜設定することができる。図7は、第3要素H(i)の応力(抵抗力)と、フィラー粒子モデル4M、4M間の距離L1との関係を示すグラフである。
マトリックスゴム3を構成するポリマーの分子鎖(図示省略)は、2つのフィラー粒子4、4間で十分に伸びきるまでは大きな力を発生させないと考えることができる。このため、第3要素H(i)には、第3要素H(i)が結合している少なくとも2つのフィラー粒子モデル4M、4M間の距離L1が予め定められた距離L2(図7に示す)よりも大きくなったときにのみ、少なくとも2つのフィラー粒子モデル4M、4M間に距離L1が大きくなるのを妨げる抵抗力(応力)を生成する特性が定義されるのが望ましい。これにより、ゴム材料モデル2Mは、マトリックスゴム3の特性を効果的に再現することができる。
抵抗力を生成する特性は、2つのフィラー粒子モデル4M、4M間の距離L1に比例して、抵抗力(応力)が大きくなっている。これにより、第3要素H(i)は、分子鎖(図示省略)の伸びが大きくなるほど、抵抗力(応力)が大きくなるマトリックスゴム3の特性を再現することができる。
抵抗力を生成する特性については、適宜求めることができる。本実施形態では、ゴム材料モデル2Mを用いたシミュレーションの計算結果で、ゴム材料2を用いた実験結果を再現できるように、抵抗力を生成する特性が帰納的に求められている。なお、抵抗力生成する特性は、分子鎖をモデル化した粗視化分子モデルや全原子モデルを用いた分子動力学計算の計算結果に基づいて、演繹的に求められてもよい。
抵抗力を生成する特性は、抵抗力(応力)の上限値を設けてもよい。また、抵抗力を生成する特性は、2つのフィラー粒子モデル4M、4M間の距離L1が予め定められた距離を超えた場合に、抵抗力(応力)がゼロに設定されてもよい。これにより、ポリマーの分子鎖の切断を定義することができる。
第3要素H(i)で結合される少なくとも2つのフィラー粒子モデル4Mについては、適宜選択することができる。図2に示されるように、実際のゴム材料2では、2つのフィラー粒子4、4の距離L3が、マトリックスゴム3を構成する分子鎖(図示省略)の大きさ(慣性半径)よりも小さい場合に、2つのフィラー粒子4、4に跨るように分子鎖が結合すると考えられている。このため、図6に示されるように、少なくとも2つのフィラー粒子モデル4M、4M間の距離L1が、予め定められた距離(例えば、図2に示した距離L3)よりも小さい場合にのみ、2つのフィラー粒子モデル4M、4M間を第3要素H(i)で結合されるのが望ましい。
これにより、本実施形態の作成方法では、分子鎖(図示省略)の実際の結合に基づいて、2つのフィラー粒子モデル4M、4M間を第3要素H(i)で結合できるため、マトリックスゴム3の特性の効果的に再現できるゴム材料モデル2Mを作成することができる。第3要素H(i)の結合の判断に用いられる距離については、例えば、分子鎖の慣性半径、並びに、第1要素F(i)及び第2要素G(i)の大きさ等に基づいて、適宜設定することができる。
一つのフィラー粒子モデル4Mに結合される第3要素H(i)の本数の上限については、適宜設定することができる。第3要素H(i)の本数の上限は、例えば、マトリックスゴム3及び分子鎖(図示省略)の構造、鎖長、及び、特性に基づいて設定することができる。
本実施形態の第3要素H(i)は、その第3節点23、及び、第4節点24を、2つのフィラー粒子モデル4M、4Mの第2節点17に共有させる態様が例示されたが、このような態様に限定されない。例えば、第3要素H(i)は、その第3節点23、及び、第4節点24を、2つのフィラー粒子モデル4M、4Mを構成する第2要素G(i)に関連付けられてもよい。図8は、本発明の他の実施形態の第3要素H(i)を示す平面図である。
第3節点23及び第4節点24の第2要素G(i)への関連付け(拘束)は、例えば、特開2015−162236号公報に記載される方法と同様に、第2要素G(i)に対する第3節点23及び第4節点24(図示省略)の幾何学的な位置に基づいて、第3節点23及び第4節点24に決定される重み係数によって定義される。このような第3要素H(i)は、フィラー粒子モデル4M、4Mの第2節点17の位置に左右されることなく、フィラー粒子モデル4M、4M間の任意の位置で結合することができる。第3節点23及び第4節点24は、フィラー粒子モデル4Mの表面を構成する第2要素G(i)に関連付けられるのが望ましい。
これまでの実施形態の第3要素H(i)は、線要素として定義されたが、このような態様に限定されない。第3要素H(i)は、第1要素F(i)や第2要素G(i)と同様に、面要素として設定されてもよいし、ゴム材料モデル2Mが三次元モデルとして設定される場合には、ソリッド要素として定義されてもよい。このような面要素及びソリッド要素は、線要素とは異なり、複数の節点で、フィラー粒子モデル4M、4M間を連結することができる。これにより、フィラー粒子4、4間に挟まれた糸毬状のポリマーが、フィラー粒子4、4と複数点で結合している状態を、例えば、複数の線要素でモデル化する場合に比べて、精度よくモデル化することができる。
次に、本実施形態の作成方法で作成されたゴム材料モデル2Mを用いたゴム材料のシミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある。)について説明する。図9は、ゴム材料のシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のシミュレーション方法では、先ず、図3に示した作成方法に基づいて、コンピュータ1に、ゴム材料モデル2Mが作成される(工程S5)。工程S5では、例えば、強度等を評価したゴム材料2(図2に示す)の構造等に基づいて、ゴム材料モデル2M(図4に示す)が作成される。ゴム材料モデル2Mは、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、ゴム材料モデル2Mを、予め定められた条件に基づいて変形させる(工程S6)。ゴム材料モデル2Mの変形の計算としては、例えば、ゴム材料モデル2Mの引張変形や圧縮変形など、適宜選択することができる。本実施形態の変形計算は、ゴム材料モデル2Mの引張変形が行われる。
工程S6では、図4に示されるように、ゴム材料モデル2MのY方向の端面15の変位が拘束され、予め定められた歪み(例えば、X方向への任意の歪み速度V)に基づいて、X方向に引張されたゴム材料モデル2Mが計算される。
ゴム材料モデル2Mの変形計算は、従来の方法と同様に、市販の有限要素解析アプリケーションソフト(例えば、ANSYS社の「LS-DYNA」)を用いて、単位時間Tx(x=0、1、…)ごと(例えば、1μ秒ごと)に行われる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、変形したゴム材料モデル2Mから予め定められた物理量を取得する(工程S7)。変形したゴム材料モデル2Mにおいて、マトリックスゴムモデル3Mとフィラー粒子モデル4Mとの相互作用(力や変位)は、図5に示したマトリックスゴムモデル3Mとフィラー粒子モデル4Mとの界面部11(図5に示す)で共有する第1節点7及び第2節点17、並びに、第3要素H(i)を介して伝達される。そして、工程S7では、ゴム材料モデル2Mの変位や応力等を含む物理量が計算される。
上述したように、本実施形態のゴム材料モデル2Mは、少なくとも2つのフィラー粒子モデル4M、4M間を連結する第3要素H(i)により、その2つのフィラー粒子モデル4M、4M間に距離L1が大きくなるのを妨げる抵抗力が生成される。本実施形態のシミュレーションでは、フィラー粒子4、4間で局所的に大きな力が発生するマトリックスゴム3の特性の再現しうるゴム材料モデル2Mが用いられるため、ゴム材料2(図2に示す)の物理量を精度よく取得することができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、ゴム材料モデル2Mが、予め定められた条件まで変形したか否かが判断される(工程S8)。変形条件については、例えば、求めたい物理量に応じて適宜設定することができる。本実施形態の工程S8では、ゴム材料モデル2Mが1%〜100%程度伸長しているか否かが判断される。このような判断は、コンピュータ1によって実施される。
工程S8において、ゴム材料モデル2Mが前記条件まで変形したと判断された場合(工程S8において、「Y」)、次の工程S9が実施される。他方、工程S8において、ゴム材料モデル2Mが前記条件まで変形していないと判断された場合(工程S8において、「N」)、単位時間Txを一つ進めて(工程S10)、工程S6〜工程S8が再度実施される。したがって、本実施形態のシミュレーション方法では、ゴム材料モデル2Mが予め定められた条件まで変形する間、単位時間Tx毎の変形量(例えば、引張長さ等)ごとに、物理量(例えば、応力等)を取得することができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、ゴム材料モデル2Mの物理量が、良好か否かが判断される(工程S9)。工程S3では、ゴム材料モデル2Mの物理量に基づいて、ゴム材料モデル2Mの強度等が評価される。
工程S9において、ゴム材料モデル2Mの物理量が良好であると判断された場合(工程S9で、「Y」)、ゴム材料2を用いて、ゴム製品が製造される(工程S11)。他方、工程S9において、ゴム材料モデル2Mの物理量が良好でないと判断された場合(工程S9で、「N」)、ゴム材料2の構造等を変更し(工程S12)、工程S5〜工程S9が再度実施される。これにより、本実施形態のシミュレーション方法では、所望の性能を有するゴム製品(ゴム材料)を開発することができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
フィラー粒子の体積分率が10%の第1ゴム材料、及び、フィラー粒子の体積分率が20%の第2ゴム材料がそれぞれ製造された。そして、第1ゴム材料及び第2ゴム材料の引張試験が行われ、応力−ひずみ曲線が求められた(実験例)。
図3に示した処理手順に従って、第1ゴム材料をモデル化した第1ゴム材料モデル、及び、第2ゴム材料をモデル化した第2ゴム材料モデルが作成された。第1ゴム材料モデル及び第2ゴム材料モデルは、フィラー粒子モデルのうち、マトリックスゴムモデルの第1要素を介して隣接する少なくとも2つのフィラー粒子モデル間が、第3要素で結合された。実施例では、フィラー粒子モデル間の距離L1が、89.3nm以下の場合に、第3要素で結合された。図4は、実施例の第1ゴム材料モデルを示す平面図である。図10は、実施例の第2ゴム材料モデルを示す平面図である。
実施例の第2ゴム材料モデルは、実施例の第1ゴム材料モデルに比べて、フィラー粒子モデルの密度が大きいため、フィラー粒子モデル間の距離が相対的に小さい。このため、実施例の第2ゴム材料モデルのフィラー粒子モデルは、実施例の第1ゴム材料モデルのフィラー粒子モデルに比べて、第3要素で多く結合された。
比較のために、図4に示した実施例の第1ゴム材料モデルから第3要素を削除した比較例の第1ゴム材料モデル、及び、図10に示した実施例の第2ゴム材料モデルから第3要素を削除した比較例の第2ゴム材料モデルが作成された。
そして、実施例の第1ゴム材料モデル及び第2ゴム材料モデル、並びに、比較例の第1ゴム材料モデル及び第2ゴム材料モデルを引張する変形計算が行われ、応力−ひずみ曲線が求められた。共通仕様は、次のとおりである。
ゴム材料モデルのサイズ:357nm×357nm
フィラー粒子:シリカ(1次粒子(フィラー粒子)径:25nm)
マトリックスゴム:ブタジエンゴム
ゴム材料モデルのサイズ:357nm×357nm
フィラー粒子:シリカ(1次粒子(フィラー粒子)径:25nm)
マトリックスゴム:ブタジエンゴム
図11は、第1ゴム材料モデル(第1ゴム材料)の応力−歪み曲線を示すグラフである。図12は、第2ゴム材料モデル(第2ゴム材料)の応力−歪み曲線を示すグラフである。図11及び図12に示されるように、実施例の応力は、比較例の応力に比べて、歪みが大きくなるほど、実験例の応力に近似した。したがって、実施例は、比較例に比べて、マトリックスゴムの特性の再現することができた。
第2ゴム材料では、第1ゴム材料に比べて、フィラー粒子の体積分率が大きいため、フィラー粒子間の距離が小さくなり、2つのフィラー粒子に跨るように結合するポリマーの分子鎖も多くなると考えられる。図12に示されるように、実施例の第2ゴム材料モデルは、比較例の第2ゴム材料モデルに比べて、実験例の第2ゴム材料の応力−歪み曲線に効果的に近似させることができた。したがって、実施例は、フィラー粒子間で局所的に大きな力が発生するマトリックスゴムの特性の再現できるゴム材料モデルを作成することができ、ゴム材料の物理量を精度良く取得することができた。
3M マトリックスゴムモデル
4M フィラー粒子モデル
F(i) 第1要素
G(i) 第2要素
H(i) 第3要素
4M フィラー粒子モデル
F(i) 第1要素
G(i) 第2要素
H(i) 第3要素
Claims (5)
- マトリックスゴムに複数のフィラー粒子が配合されたゴム材料の有限要素モデルを、コンピュータを用いて作成するための方法であって、
前記コンピュータが、前記マトリックスゴムを有限個の第1要素で離散化したマトリックスゴムモデルを生成する工程と、
前記コンピュータが、前記複数のフィラー粒子を有限個の第2要素で離散化した複数のフィラー粒子モデルを生成する工程と、
前記フィラー粒子モデルのうち、前記マトリックスゴムモデルの前記第1要素を介して隣接する少なくとも2つのフィラー粒子モデル間を第3要素で結合する工程とを含む、
ゴム材料モデルの作成方法。 - 前記結合する工程は、前記少なくとも2つのフィラー粒子モデル間の距離が、予め定められた距離よりも小さい場合にのみ、前記少なくとも2つのフィラー粒子モデル間を前記第3要素で結合する、請求項1記載のゴム材料モデルの作成方法。
- 前記第3要素は、線要素、面要素又はソリッド要素である、請求項1又は2に記載のゴム材料モデルの作成方法。
- 前記コンピュータが、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法で作成された前記ゴム材料モデルを、予め定められた条件に基づいて変形させる工程と、
変形した前記ゴム材料モデルから予め定められた物理量を取得する工程とを含む、ゴム材料のシミュレーション方法。 - 前記第3要素は、前記第3要素が結合している前記少なくとも2つのフィラー粒子モデル間の距離が予め定められた距離よりも大きくなったときにのみ、前記少なくとも2つのフィラー粒子モデル間に前記距離が大きくなるのを妨げる抵抗力を生成する特性が定義されている、請求項4記載のゴム材料のシミュレーション方法。
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JP2017242056A JP2019109696A (ja) | 2017-12-18 | 2017-12-18 | ゴム材料モデルの作成方法及びシミュレーション方法 |
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JP7339657B2 (ja) | 2019-10-09 | 2023-09-06 | 公立大学法人 富山県立大学 | 解析方法、製造方法、解析装置、及びプログラム |
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2017
- 2017-12-18 JP JP2017242056A patent/JP2019109696A/ja active Pending
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