JP2007265382A - 不均質材料のシミュレーション方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】不均質材料における複数の材料相固有の材料特性を規定する内部変数値2と、不均質材料のシミュレーションモデルにおける対応する材料相の材料定数の最大値に対する最小値の比を小さくして材料特性を規定する内部変数値1とを作成する。次に、シミュレーションモデルに内部変数値1を与え、内部変数値1で規定される材料特性を備えたシミュレーションモデルに対して歪みを所定の位置に入力として与えてシミュレーションを行い、このときの変形した前記シミュレーションモデルに対して、前記入力を保持したまま、内部変数値2を与えて、シミュレーション計算を続ける。
【選択図】図2
Description
そして、この有限要素モデルがあたかも上下、左右、奥行き方向に連続して無限に連なってバルクを成すように、有限要素モデルの対向する面に周期境界条件を付与してシミュレーションモデルを作成してシミュレーション演算を行う。
一方、下記非特許文献2では、非連成双方向マルチスケールシミュレーションに関するシミュレーション方法が開示されている。当該方法では、ミクロ構造モデルで得られた引張試験のシミュレーション結果からマクロ構造モデルにおける材料パラメータを求め、この材料パラメータをマクロ構造モデルに用いて、シミュレーションを行う、いわゆるミクロ−マクロ非連成解析手法が行われている。
また、前記材料特性は、例えば、超弾性ポテンシャルで規定される特性である。
シミュレーション装置10は、CPU12、メモリ14、ROM16、I/Oボード18を備えたコンピュータであり、メモリ14あるいはROM16に記憶されたアプリケーションソフトウェアを読み出して、モデル作成部20、周期境界条件設定部22、有限要素解析部24及び材料パラメータ同定部26のそれぞれのサブルーチンを作成して構成される。
このとき、ミクロ領域が3方向に連続的に配置される状態をミクロモデルが再現するように、各境界面上の各節点には、周期境界条件が付与される。周期境界条件では、境界面上の節点は、これらの節点とは別個独立した節点との間で関係式が定められる。詳細については後述する。
また、不均質材料を構成部材の材料として備える構造体のモデルがマクロモデルとして作成される。このマクロモデルでは、不均質材料の部分は均質材料としてモデル化される。すなわち、不均質材料の部分は均質材料等価モデルとして表される。なお、ミクロモデルにおける各材料相の材料定数は、後述する内部変数値によって変更されるようになっており、例えば、各材料相固有の材料特性の値を備えるようにミクロモデルの材料定数をセットする内部変数値と、固有の材料特性が本来異なるにもかかわらず略同一の材料特性の値を備えるようにミクロモデルの材料定数をセットする内部変数値が作成される。
さらに、有限要素解析部24は、構造体の上記力学挙動時、不均質材料のミクロ領域がどのような挙動を示しているかを再現するために、ミクロモデルを用いた力学挙動のシミュレーションを行う。例えば、マクロモデルを用いたシミュレーション結果をミクロモデルに与えて、ミクロモデルにおける応力、歪み等を計算する。
なお、ミクロモデルを用いたシミュレーションの際、ミクロモデルにおける各材料相の材料定数は、内部変数値によって変更される。最初、各材料相固有の材料特性が本来異なるにもかかわらず略同一の材料特性の値を備えるようにミクロモデルの材料定数をセットして、力、変位、応力及び歪みのいずれか1つを所定の位置に入力として与えてシミュレーションを行う。この後、このシミュレーション結果である変形したミクロモデルに対して、与えた入力を保持したまま、内部変数値を変更して、各材料相固有の材料特性の値を備えるようにミクロモデルの材料定数をセットして、シミュレーション結果が収束するまでシミュレーションを続ける。
図2は、本発明のシミュレーション方法の一例であるフローチャートである。
モデル作成部20にて、ミクロモデルが作成される(ステップS100)。
まず、不均質材料における代表領域(ミクロ領域)が定められ、このミクロ領域について、複数の節点によって形状が特徴付けられた複数のボクセルを用いて1つのミクロ領域を再現した有限要素モデルであるミクロモデルが作成される。図3(a)は、ミクロ領域を、複数のボクセルを用いて定めたミクロモデルの一例を示している。ここでは、濃淡により3つの領域に区分けされており、材料特性の異なる3つの材料相が母材中に分散配置された不均質材料のモデルである。勿論、各材料相毎に材料定数は設定される。なお、材料相の1つは、気相からなる空隙であってもよい。ここで、ミクロモデルにおける各材料相の材料定数は、内部変数値によって変更されるように構成されている。内部変数値1では、各材料相固有の材料特性が本来異なるにもかかわらず略同一の材料特性の値を備えるようにミクロモデルの材料定数をセットする。内部変数値2では、各材料相固有の材料特性の値を備えるようにミクロモデルの材料定数をセットする。このような内部変数値1、2が設定される。
これらのミクロモデル及びマクロモデルは3次元モデルであるが、2次元モデルであってもよい。
この周期境界条件は、後述するミクロシミュレーションA,Bを行うためにミクロモデルに付与される条件である。
なお、ミクロシミュレーションAは、材料相固有の材料特性を有するように材料定数が設定されたミクロモデルに対して引っ張り、又は圧縮試験を再現する不均質材料のシミュレーションであり、ミクロ領域が3方向に無限に連続的に配置されてバルク特性を示すように、ミクロモデルの境界面に周期境界条件が付与される。このミクロシミュレーションAでは、力学特性として、応力―歪み曲線を求めるために、例えば一軸引張試験を再現したものが行われる。
図4(a)は、単純なミクロモデルの例を示し、図4(b)は単純なマクロモデルの例を示している。図4(b)に示すマクロモデルは、剛性の異なる2種類の層(濃淡で表された2種類の層)が積層された構造体であり、濃い方の層の図中○で囲まれた部分のミクロモデルが、図4(a)に示されたモデルである。ミクロモデルでは、力学特性の異なる2種類の材料で構成され、濃淡の淡い方の材料を母材として、濃い方の材料が母材中に分散配置されている。
例えば、図5(b)中のy1方向に設定された歪みをミクロモデルに付与して引張試験のシミュレーションを行う場合、すなわち歪み制御によるシミュレーションの場合、この対応付けられた節点A、Bについて、変位勾配テンソルを用いた関係式が作成される。すなわち、歪みによって作られる変位勾配テンソルが算出され、この変位勾配テンソルを節点A,Bの変位ベクトルとともに用いて、節点A,B間における変位ベクトルの差分と関係付けることができる。すなわち、ミクロモデルにおいて、歪みの平均値が設定値になるように(平均歪みとなるように)関係式を定める。関係式は、節点Aの変位ベクトル、節点Bの変位ベクトルをそれぞれWa、Wbとし、さらに、ミクロモデルにおける節点と別個独立した仮想の節点Dを導入し、この節点Dの変位ベクトルをWdとし、節点A及び節点Bの位置ベクトルをそれぞれYa及びYbとし、上記変位勾配テンソルをHとする。このとき、下記式(2)の右辺の値(節点A,Bの変位ベクトルの差分に変位勾配テンソルを作用させた値)を節点Dにおける変位ベクトルとすることにより、下記式(1)が定まる。
Wb − Wa = Wd (1)
Wd = H・(Yb−Ya) (2)
このように、シミュレーションに際して、仮想の節点Dを導入し、式(1)の関係式を節点A,B,D間の拘束条件として与えることで、式(2)に示す値を節点Dの変位ベクトルとして与えるだけで、ミクロモデルにおける周期境界条件を設定することになる。
Tb − Ta = Td (3)
このように、シミュレーションに際して、仮想の節点Dを導入し、式(3)の関係式を、節点A,B,D間の拘束条件として与えることで、節点Dに作用する荷重ベクトルTdを与えるだけで、ミクロモデルにおける周期境界条件を設定することができる。
上記例では、y1方向の一方向についての周期境界条件の説明であるが、勿論、ミクロモデルを連続的に配置する方向を2方向あるいは3方向とした場合、周期境界条件は、図5(a)におけるy2方向に面する境界面あるいはy3方向に面する境界面についても上記式(1)又は(3)と同様の式を定める。
このような式(1)、(3)は、節点A,B,Dの間で、変位又は荷重を拘束する多点拘束条件に該当する。このような多点拘束条件の設定は、有限要素解析部24にて用いられる汎用有限要素解析プログラム中で自在に設定できるように用意されているものである。したがって、ミクロモデルとは別個の独立した仮想の節点Dを導入し、この節点Dに上記式(2)に従って算出される変位ベクトルを与えることで、あるいは平均応力をボクセルの境界面上で面積積分した値を節点Dに作用する荷重として与えることで、ミクロモデルは周期境界条件を満足することができるので、周期境界条件の設定が極めて容易に行うことができる。
ミクロシミュレーションAは、例えば一軸引張試験のシミュレーションが例示される。
この場合、上述した周期境界条件は1方向しか設定されない。また、歪み制御によるシミュレーションか、応力制御によるシミュレーションかが選択されて、ミクロモデルにおける引張試験のシミュレーションが行われ、これにより、ミクロ歪みの応力―歪み曲線が求められる。このときのミクロシミュレーションAは、材料相固有の材料特性を有するようにミクロモデルにおける材料定数が設定されて、ミクロモデルのシミュレーションが行われる。
図6(a),(b)には、図5(a)に示されるミクロモデルを、周期境界条件に基づきシミュレーションした結果の一例が示されている。図6(a)では、ミクロモデルが引張り方向に引き伸ばされた状態を示している。図6(b)は、このときの応力―歪み曲線の一例の結果を示している。
例えば、公知の超弾性ポテンシャル関数を用いて図6(b)の曲線をカーブフィットし、材料パラメータを抽出する。このような材料パラメータは、後述するマクロモデルにおける不均質材料を用いた有限要素の材料定数として用いる。
例えば、図4(b)に示すマクロモデルに対して、上部端面に図中の左右方向にせん断力を与えたシミュレーションを行う。
例えば、マクロシミュレーションで求められた不均質材料の解析したいミクロ領域の部分の歪みを取り出して、この歪みをミクロモデルに歪み制御により与えてシミュレーションが行われる。
このミクロシミュレーションBでは、まず、内部変数値1が設定されて、材料相が固有の材料特性を有するにもかかわらず均一な材料特性となるようにミクロモデルの材料定数が設定され、マクロシミュレーションで得られた歪みに基づいて、歪みを所定の位置に入力として与えてシミュレーションが行われる。シミュレーションは、非線形解析計算であるため、繰り返し計算により、解が収束するまで続けられる。図7(a)は、内部変数値1が設定されているミクロシミュレーションBの結果の一例を示している。
次に、この収束した内部変数値1におけるミクロモデルの変形したモデルにおいて、所定の位置に与えた入力を保持したまま、内部変数値1から内部変数値2に変更し、すなわち、材料相固有の材料特性を有するようにミクロモデルの材料定数を設定して、シミュレーションが行われる。図7(b)は、内部変数値2が設定されているミクロシミュレーションBの結果の一例を示している。
なお、本実施形態では、ミクロモデルを用いたシミュレーションは歪みを入力として与えて行うが、本発明では、ひずみの他に力、変位、応力を入力として与えても良い。
ミクロモデルは、図4(a)に示すモデルと同一であり、力学特性の異なる2種類の材料で構成されている。濃淡の淡い方の材料はゴム材であり、濃い方の材料は補強材である。補強材は、ゴム材の補強充填材として用いられるものであり、例えば剛性が100倍程度異なる。
ミクロモデルにて用いる各材料相の材料特性は、超弾性ポテンシャルモデルにおけるPolynominal form(N=1)を用い、そのときの係数C01は0.0とし、C10は下記表1のように設定して内部変数値1,2を定めた。内部変数値1では、ミクロモデルは均質モデルとなり、内部変数値2では、補強材の剛性が100倍程度硬くなる。
一方、従来のように、初めから内部変数値2を用いてミクロシミュレーションBを行った場合、図8に示す○印の部分のように、ミクロモデルの剛性の高い要素の間に存在する剛性の低い要素の変形が極めて大きくなり、収束解がなかなか得られず、シミュレーション計算が長時間にわたり、場合によってはシミュレーション計算が停止する場合もある。
本発明は、材料特性を規定する内部変数値を変更することによって、上記問題を解決することができる。
また、内部変数値は、別途設けられた温度場の温度に応じて、あるいはシミュレーションにおける経過時間に応じて変更するものであってもよい。
また、不均質材料は、カーボンブラックやシリカ等の補強材で補強されたゴムの他、繊維補強材でゴム部材が補強された不均質材料であってもよい。
12 CPU
14 メモリ
16 ROM
18 I/Oボード
20 モデル作成部
22 周期境界条件設定部
24 有限要素解析部
26 材料パラメータ同定部
30 ディスプレイ
32 プリンタ
34 マウス・キーボード
Claims (7)
- 材料特性の異なる複数の材料相が配置された不均質材料のシミュレーションモデルを用いて、コンピュータ上で行う不均質材料のシミュレーション方法であって、
不均質材料における複数の材料相固有の材料特性のうち、材料特性を表す材料定数の最大値の最小値に対する比に対して、不均質材料のシミュレーションモデルにおける対応する材料相の材料定数の最大値に対する最小値の比を小さくして材料特性を規定する第1の内部変数値と、不均質材料のシミュレーションモデルにおいて、材料相固有の材料特性を規定する第2の内部変数値を作成するステップと、
前記シミュレーションモデルに前記第1の内部変数値を与え、前記第1の内部変数値で規定される材料特性を備えたシミュレーションモデルを用いて、力、変位、応力及び歪みのいずれか1つを所定の位置に入力として与えて不均質材料のシミュレーションを行い、このとき得られる変形した前記シミュレーションモデルに対して、前記所定の位置に与えられた前記入力を保持したまま、前記第1の内部変数値に替えて前記第2の内部変数値を与えて、シミュレーション計算を続けるステップと、を有することを特徴とする不均質材料のシミュレーション方法。 - 前記第1の内部変数値として規定される材料特性の最大値に対する最小値の比は1〜30である請求項1に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記材料特性は、超弾性ポテンシャルで規定される特性である請求項1又は2に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- さらに、前記不均質材料を材料とする構成部材を均質材料の等価モデルによってモデル化した構造体のシミュレーションモデルを作成するステップと、
前記構造体のシミュレーションモデルに変形又は外力を与えて前記構造体のシミュレーションを行うステップと、を有し、
前記構造体のシミュレーションの結果、前記等価モデルに作用する歪み又は応力を取得し、この歪みの値又は応力の値が、前記不均質材料のシミュレーションにおける不均質材料のシミュレーションモデルにおける平均歪み又は平均応力となるように、前記不均質材料のシミュレーションモデルに周期境界条件を与える請求項1〜3のいずれか1項に記載の不均質材料のシミュレーション方法。 - 前記不均質材料は、母材中に少なくとも1種類以上の材料相が分散した材料である請求項1〜4のいずれか1項に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記不均質材料の少なくとも一部が補強充填材で補強されたゴムである請求項1〜5のいずれか1項に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記不均質材料が、繊維補強材で補強されたゴムである請求項1〜5のいずれか1項に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
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