JP2006015866A - 不均質材料のシミュレーション方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】不均質材料のミクロ構造を再現したミクロスケールモデルを変形させてシミュレーション演算を行うことにより、超弾性ポテンシャル及び材料定数を定め、不均質材料を含む構造体を再現したマクロスケールモデルを用いて、前記超弾性ポテンシャル及び前記材料定数に基づいてマクロスケールシミュレーション演算を行う。マクロスケールシミュレーション演算結果のうち、不均質材料の配置部分の代表点の歪の結果を取得し、この歪からミクロスケールモデルにおける境界領域の変位を定め、この変位をミクロスケールモデルの境界条件としてミクロスケールシミュレーション2を行う。
【選択図】図2
Description
その際、前記境界領域における変位又は変位速度の修正は、前記第1の離散化モデルに周期境界条件を付与した前記第1の離散化モデルにおける固有値解析によって得られる複数の固有ベクトルを用いて基底ベクトルを作成し、かつこの基底ベクトルを線形加算したベクトルを擾乱ベクトルとし、この擾乱ベクトルの前記境界領域に対応するベクトル成分の値を修正すべき変位又は変位速度に加算することにより行うことが好ましい。特に、前記平均値が前記不均質材料の代表点における物理量の値と許容範囲内で一致しない場合、前記基底ベクトルの線形加算の重み付け係数を変更することにより、前記変位又は変位速度の修正量を調整することが好ましい。
前記不均質材料は、例えば、カーボンブラック及びシリカの少なくとも1つを補強材料相として含むものである。
なお、前記第1のステップにおける、前記第1の離散化モデルを用いたシミュレーション演算は、一軸伸張、均等二軸伸張及び純せん断の少なくとも1つによるシミュレーション演算あることが好ましい。あるいは、前記第1のステップにおける、前記第1の離散化モデルを用いたシミュレーション演算は、二軸伸張によるシミュレーション演算であってもよい。
特に、ミクロスケールモデルにおける歪等の物理量の平均値が、構造体のマクロスケールモデルを用いて算出される不均質材料の配置部分の代表点における歪等の物理量の値と許容範囲内で一致しない場合、ミクロスケールモデルに境界条件として与える境界領域の変位又は変位速度を修正する。このため、マクロ構造のシミュレーション演算結果とミクロ構造のシミュレーション演算結果とを整合性よく算出することができる。
処理装置10は、入力操作系12、コンピュータ14及びディスプレイ16を有する。
入力操作系12は、マウスやキーボードであり、各種情報をオペレータの指示により入力するデバイスである。
ディスプレイ16は、入力操作系12を用いてオペレータが指示できるように入力画面を表示し、又後述する有限要素モデル及びシミュレーション演算結果を表示する部分である。
ミクロスケールシミュレーション演算部22、パラメータ設定部23及びマクロスケールシミュレーション演算部24の各部分の機能については後述する。
図2は不均質材料のシミュレーション方法の一例の流れを示すフローチャートである。図3は本発明のシミュレーションの対象となる不均質材料の代表領域の一例の断面図である。この不均質材料は、第1のポリマー相A(図3中白色領域)と、第2のポリマー相B(図3中黒領域)と、カーボンブラックやシリカ等の補強材料である粒系フィラー相C(図3中の円形状の灰色領域)と、粒系フィラー相の周りを取り巻くフィラー・ポリマー境界相D(図3中の灰色領域)とが不均質に分散配置されている。すなわち、材料特性の異なる複数のエラストマーが材料相として分散配置され、さらに、粒状の補強材が材料相として分散配置されている。この不均質材料は、複数の材料相における弾性率のうち、例えば最大の弾性率は最小の弾性率の100倍以上である。不均質材料を構成する材料相は、エラストマーやフィラー等の固体相であるばかりでなく、気体や液体が満たされた空隙相であってもよい。
このような不均質材料についてシミュレーションモデルが作成される。
不均質材料の代表領域は、例えば直方体形状とし互いに直交する3方向にメッシュ分割することにより、直方体形状の有限要素(ボクセル)を連続的に配置し、例えば256個×256個×256個の有限要素により構成した有限要素モデルを作成する。
図4は、直方体形状の有限要素によって構成された有限要素モデルの一例を示している。
なおミクロスケールモデルは、図4に示すように直方体形状のボクセルであるが、本発明においてはこのような一定の形状を成したボクセルに限られない。互いに直交する3方向にメッシュ分割せず、有限要素を材料相の形状に合わせてメッシュ分割して、6面体形状、4面体形状等の有限要素によってミクロスケールモデルを構成してもよい。
図5(a),(b)は二軸伸張及びミクロスケールシミュレーション1の演算結果の一例を示す図である。図5(b)には、二軸伸張のほかに、一軸伸張及び純せん断によるシミュレーション結果を示している。
二軸伸張とは、図5(a)に示すように、互いに直交する2方向に同時に引っ張る形態であり、一軸伸張とは、1方向に引っ張る形態である。一方、純せん断は、1方向にせん断のみを与える形態である。二軸伸張は、二軸の方向に異なる伸張比で伸張する形態の他、伸張比が同じ均等二軸伸張であってもよい。
図5(b)に示すように、不均質材料の伸び率(歪み)に対する応力は非線形を示している。
上述したように、不均質材料における伸び率(歪み)に対する応力は非線形を示しているため、超弾性ポテンシャルを用いて不均質材料の材料パラメータを算出して、超弾性ポテンシャルを定める。
例えば、等方性超弾性ポテンシャルの場合、下記式(1)〜(3)のような非線形なポテンシャル関数Wp、Wo、WA-Bが例示される。
有限要素モデルにおける変形後の座標をx、変形前の座標をXとすると、変形勾配Fは下記式(4)のように表される。このとき体積変化を表す量Jは下記式(5)のヤコビアンによって定義される。変形勾配の修正を下記式(6)のよう定め、この修正変形勾配を用いて修正右コーシー・グリーン変形テンソルが下記式(7)のように定義される。式(7)中の“T”は転置を表す。修正右コーシー・グリーン変形テンソルの第1、第2不変量がそれぞれ下記式(8)〜(9)にて定義される。また、λ1, λ2, λ3を伸張比として下記式(10)によって修正伸張比が定義される。
上記式(1)〜(3)は、このように定義される各種パラメータを用いる。
具体的には、材料定数の値を繰り返し変更しながら、下記式(11)に示す誤差関数が最小となる材料定数を求める。
マクロスケールモデルは、例えば図6におけるトレッドゴム材料を不均質材料として有するタイヤのタイヤモデル40が例示される。タイヤモデル40は、複数の有限要素によって構成された3次元モデルであり、図6ではタイヤモデルの断面形状が示されている。
タイヤモデル40のトレッドゴム材料を有するトレッド部分は、ミクロスケールモデルのように、複数の材料相が分散配置されたミクロ構造を再現したものではなく、不均質材料を均質材料と見なして構成される。
なお、本実施形態においては、不均質材料を有する構造体としてトレッドゴム材料を有するタイヤを用いて説明するが、本発明においてはタイヤモデルに限定されない。
マクロスケールシミュレーションの際、ステップS14で設定された超弾性ポテンシャル及び材料パラメータがタイヤモデル40に付与されて、マクロスケールシミュレーションが行われる。例えば、別途作成された図示されないリムモデルにタイヤモデル40が結合されて、内圧充填処理が施され、さらに別途作成された剛体路面モデル42に対して接地処理が施され、所定の荷重が負荷される。さらに、タイヤモデル42に転動処理を施してもよい。
こうしてマクロスケールシミュレーションによって得られたマクロスケールモデルにおける、トレッドゴム材料を有する部分の代表点の歪の結果を取得する。図6では、トレッドゴム材料の代表点として点44が定められており、点44における歪の値が取り出される。
ミクロスケールシミュレーション2では、代表点の歪を、下記式(12)中の歪exx,exy,exz,eyx,eyy,eyz,ezx,ezy,ezzに代入し、Δx、Δy、Δzに直方体形状のボクセルの一辺の長さを代入することで、一方の有限要素の境界面上の節点を基準とした他方の節点の変位Δux,Δuy,Δuzが求められる。この変位をミクロスケールモデルの境界上の節点に強制変位として与え、ミクロスケールシミュレーション1と同様の材料定数を用いて、代表領域における歪分布、応力分布が算出される。代表領域には複数の材料相が分散配置されており、剛性の低い材料相の部分には歪が集中し易い。したがって、歪分布や応力分布を調べることにより、不均質材料の破断や亀裂が入り易い状態か否かを判断することができる。
歪みの平均値は、下記式(13)のように表され、代表領域における歪の成分を有限要素の体積成分で積分して、ミクロスケールモデルの体積で除算した値である。応力の平均値についても同様に表される。
この再設定は、修正すべき強制変位に対して擾乱ベクトルにより修正量が設定され付与されることにより、行われる。下記式(14)に擾乱ベクトルΦが定義されている。
変位Δux,Δuy,Δuzの修正量は、重み係数wiによって変化するため、予め設定された値を重み係数wiに与えて擾乱ベクトルΦを定める。こうして再設定された強制変位をミクロスケールモデルに付与してミクロスケールシミュレーション2を再度行う。シミュレーションの結果、ステップS22において肯定されるまで、ステップS26を繰り返す。この場合、重み係数wiの値が適宜変更される。重み係数wiの変更方法は特に制限されない。
こうして、ミクロスケールシミュレーション2の演算結果をマクロスケールシミュレーションの演算結果と一致させることができ、タイヤが転動中のタイヤトレッドゴム材料のミクロ構造に作用する物理量が、マクロスケールとミクロスケールの整合性を持って算出させることができる。
図7(b)は、このような算出結果の一例として、最大主歪分布を示す図である。
この場合、歪速度から変位速度(Δvx,Δvy,Δvy,)の算出は下記式(15)を用いて行うことができる。
メッシュフリー法とは、図8に示すように、複数の要素点(離散点)が連続して配置される状態において、注目する要素点50a(図8中、黒丸)を中心として距離ρ0 内の範囲をサポートとし、この範囲において図8に示すようなスプライン関数、例えば4次のスプライン関数で重み関数w(x,y)が設定されている。すなわち、各要素点において距離ρ0内の範囲をサポートとして単位セルが設定されている。
12 入力操作系
14 コンピュータ
16 ディスプレイ
18 CPU
20 メモリ
22 ミクロスケールシミュレーション演算部
23 パラメータ設定部
24 マクロスケールシミュレーション演算部
Claims (10)
- 材料特性の異なる複数の材料相が分散配置されたミクロ構造を有する不均質材料の挙動を離散化モデルを用いてシミュレートする不均質材料のシミュレーション方法であって、
不均質材料の前記ミクロ構造を再現した第1の離散化モデルを変形させてシミュレーション演算を行うことにより、不均質材料のミクロ構造を均質な構造としたときの超弾性ポテンシャル及びこのポテンシャルに基づく材料定数を定める第1のステップと、
前記不均質材料を含む構造体を、前記不均質材料を均質材料と見なして再現した第2の離散化モデルを用いて、前記超弾性ポテンシャル及び前記材料定数に基づいて所定の条件でシミュレーション演算を行う第2のステップと、
前記第2の離散化モデルを用いて行われたシミュレーション演算結果のうち、前記構造体における前記不均質材料の配置部分の代表点の歪又は歪速度の結果を取得し、この歪又は歪速度から前記第1の離散化モデルにおける境界領域の変位又は変位速度を定め、この変位又は変位速度を前記第1の離散化モデルの境界条件として前記第1の離散化モデルに付与してシミュレーション演算を行うことで、前記ミクロ構造を有する不均質材料に作用する物理量を算出する第3のステップと、を有することを特徴とする不均質材料のシミュレーション方法。 - 前記第3のステップにおいて算出される前記物理量の、前記第1の離散化モデルにおける平均値が、前記第2の離散化モデルを用いて算出される前記不均質材料の代表点における物理量の値と許容範囲内で一致しない場合、前記第1の離散化モデルに付与される前記境界領域の変位又は変位速度を修正することにより、前記平均値を、前記不均質材料の代表点における物理量に許容範囲内で一致させる請求項1に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記境界領域における変位又は変位速度の修正は、前記第1の離散化モデルに周期境界条件を付与した前記第1の離散化モデルにおける固有値解析によって得られる複数の固有ベクトルを用いて基底ベクトルを作成し、かつこの基底ベクトルを線形加算したベクトルを擾乱ベクトルとし、この擾乱ベクトルの前記境界領域に対応するベクトル成分の値を修正すべき変位又は変位速度に加算することにより行う請求項2に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記平均値が前記不均質材料の代表点における物理量の値と許容範囲内で一致しない場合、前記基底ベクトルの線形加算の重み付け係数を変更することにより、前記変位又は変位速度の修正量を調整する請求項3に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記超弾性ポテンシャル及び前記材料定数を定めるステップでは、非線形関数を用いて超弾性ポテンシャルを定める請求項1〜4のいずれか1項に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記不均質材料は、カーボンブラック及びシリカの少なくとも1つを補強材料相として含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記第1のステップにおける、前記第1の離散化モデルを用いたシミュレーション演算は、一軸伸張、均等二軸伸張及び純せん断の少なくとも1つによるシミュレーション演算である請求項1〜6のいずれか1項に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記第1のステップにおける、前記第1の離散化モデルを用いたシミュレーション演算は、二軸伸張によるシミュレーション演算である請求項1〜6のいずれか1項に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記第1の離散化モデル及び前記第2の離散化モデルは、複数の有限要素によって構成した有限要素モデルである請求項1〜8のいずれか1項に記載の不均質材料のシミュレーション方法。
- 前記第1の離散化モデル及び前記第2の離散化モデルの少なくとも一方の離散化モデルの少なくとも一部は、メッシュフリー法により離散化された部分モデルを有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の不均質材料のシミュレーションモデル方法。
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