JP5402274B2 - 回転体のシミュレーション方法、装置及びプログラム - Google Patents
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Description
また、前記第6のステップで前記ミクロモデルに対して行う前記時間依存の解析のシミュレーションにおいて前記ミクロモデルに与える境界条件は、相対変位を許容した周期境界条件であるのが好ましい。
また、前記第6のステップで前記ミクロモデルに対して行う前記時間依存の解析のシミュレーションにおいて、前記ミクロモデルに与える材料物性パラメータは、時間、変形および場の少なくとも1つに依存するのが好ましい。
また、前記ミクロモデルは、ポリマー材料に少なくとも補強剤を充填した不均質複合材料であるゴムコンパウンドをモデル化したものであるのが好ましい。
また、前記ミクロモデルは、補強材を含むゴム系複合材料をモデル化したものであるのが好ましい。
また、前記第3のステップで前記回転体モデルに対して行う前記回転体の変形解析のシミュレーションにおいて、前記回転体モデルに与える材料物性パラメータは、前記ミクロモデルに変形を与えた場合に前記ミクロモデルに発生する変形の前記第2の物理量から得られるのが好ましい。
また、前記第3のステップで前記回転体モデルに対して行う前記回転体の変形解析のシミュレーションは、さらに、中の材料だけを転動させることにより、前記有限要素を転動させたような擬似的な効果を得て解析する定常輸送解析を含むのが好ましい。
さらに、上記目的を達成するために、本発明の第4の態様は、前記コンピュータに、本発明の第1の態様の回転体のシミュレーション方法の各ステップを実行させるための回転体のシミュレーションプログラムを記載したコンピュータに読取可能な記録媒体を提供するものである。
こうして、本発明によれば、回転体のミクロ領域の変形状態の時間変化が解析可能となる。すなわち、本発明によれば、タイヤなどの回転体の動的転動状態を含むマクロモデルの変形の時間履歴(又は回転角度履歴)からタイヤコンパウンド等の回転体のミクロ構造、特に不均質材のミクロ構造内に発生するミクロなひずみや応力の動的な変化過程、即ちコンパウンド等のミクロ構造のミクロ挙動をシミュレーションし、効率良く解析することができる。
図1は、本発明の回転体のシミュレーション方法を実施する本発明の回転体のシミュレーション装置の構成を機能的に示したブロック図である。以下では、回転体の代表例として、タイヤを挙げて説明するが、本発明はこれに限定されないのはもちろんであり、ゴム材料等のポリマー材料を用いる回転体であればどのようなものでも良く、例えば、ベルトコンベア等にも適用可能なことはもちろんである。
処理装置12は、ハードウエア構成として、CPU20、メモリ22、I/Oポート24、ROM26を備えたコンピュータであり、メモリ22あるいはROM26に記憶されたアプリケーションソフトウェアを読み出して、条件設定部30、タイヤモデル作成部32、変形解析演算部34、時間変換部36、ミクロモデル作成部38、境界条件設定部40、ミクロモデル解析演算部42及びミクロ挙動解析部44のそれぞれのサブルーチンを作成して構成され、これらのサブルーチンからなるアプリケーションソフトウェアをCPU20で実行することにより、後述する有限要素モデルであるタイヤモデル及びミクロモデルを作成し、有限要素法を用いた変形解析及びミクロモデル解析によるシミュレーション演算を実行して、タイヤのゴムコンパウンド(不均質材)のミクロ挙動を解析する。
条件設定部30は、ディスプレイ16に表示された入力画面を見ながらオペレータの入力に基づいて、タイヤのシミュレーションための各種条件が設定される。これらの条件は、タイヤモデル作成部32で作成される有限要素モデルであるタイヤモデルの構造の情報及び材料の情報、タイヤモデルでの変形解析のシミュレーション条件の情報が含まれる。また、後述するミクロモデル作成部38で用いるために予め必要となるミクロモデルの構造の情報及び材料の情報なども含まれる。条件設定部30で設定された各種条件は、メモリ22に記憶される。なお、ここでは、タイヤとして、空気入りタイヤを挙げて説明し、タイヤの各種条件として内圧条件を用いているが、本発明はこれに限定されず、空気入りでないリング状のタイヤに適用可能なことはもちろんである。
また、タイヤモデル作成部32は、タイヤを再現したタイヤモデル50に加え、さらに、タイヤが接地し、転動する路面を再現する剛体路面モデル56をも作成し設定する。
図示例では、条件設定部30とタイヤモデル作成部32とを別々に設けているが、本発明はこれに限定されず、一体化されたユニットとしても良い。
ミクロモデル作成部38で作成されるミクロモデルは、詳細は後述するが、タイヤの所定の一部分のミクロ構造、例えば材料特性パラメータ等の異なる複数の材料相が分散配置された、ゴムコンパウンド(不均質材)のミクロ構造を、複数の有限要素を用いて再現したモデルであることが好ましい。例えば、ミクロモデルは、一例として、図4(a)に示すミクロモデル60のように、図4(b)に示すフィラー分布を持つトレッドゴムコンパウンドのミクロ領域内をモデル化した、同一の直方体(6面体)形状のボクセル(単位セル)を有限要素として多数個配置した立方体形状の有限要素モデルを挙げることができる。
図示例においては、タイヤモデル作成部32とミクロモデル作成部38とは、別々に設けられているが、本発明はこれに限定されず、両者が一体化されたモデル設定部としても良いし、さらに、条件設定部30もこのモデル設定部に一体化しても良い。
まず、図2に示すステップS100では、図1に示すシミュレーション装置10において、処理装置12の条件設定部30に、図3および図4に示すタイヤモデル50及びミクロモデル60のシミュレーションに必要な各種条件が入力操作系14を用いてオペレータ等により入力されて、設定される。これらの条件は、例えば、タイヤモデル50及びミクロモデル60の構造(メッシュ、節点や要素形状)の情報及び材料物性パラメータ(材料定数等)の情報、タイヤモデル50での変形解析のシミュレーションのためのタイヤ内圧条件、荷重条件、転動速度条件、スリップ角度条件、および、キャンバー角度条件等の情報、さらには、タイヤモデルに接地処理を施すためのシミュレーション条件の情報や、必要に応じてさらに、ミクロモデルの時間依存シミュレーションなどのミクロ挙動解析に必要な情報も含まれる。
ここで、図3(a)及び(b)に示すタイヤモデル52及び50は、一例としてタイヤサイズ205/65R15のタイヤを再現して作成された有限要素モデルである。タイヤモデル50は、図3(a)に表された子午断面の2次元モデル52をタイヤ周方向に1回転展開し、展開した2次元モデル52を周方向に一定の角度で要素分割するように区切られている3次元有限要素モデルである。この3次元有限要素モデルでは、トレッド部材、サイド部材、ビードフィラー部材等のゴム部材、カーカス部材やベルト部材の補強層等が、6面体要素又は4面体要素、5面体要素等で構成される。
なお、このステップS102で行われるタイヤモデルの設定に、ステップS100で行われるメッシュ作成、材料物性パラメータ入力、境界条件設定を含めても良い。
なお、本発明においては、路面モデルは、図示例の剛体路面モデル56に限定されず、凹凸を含む平面をモデル化したものでもドラム試験機のドラムのような曲面をモデル化したものでもよい。
次に、ステップS104では、タイヤモデル作成部32において、さらに、図3(a)及び(b)に示すように、タイヤモデル50(52)の複数の有限要素の中から変形解析の対象とする注目要素54が選定されると共に、図6に示すように、注目要素54がタイヤモデル50の周方向に1回転するときのタイヤの周方向に沿った周方向経路58が設定される。
また、図6に示す注目要素54の周方向経路58は、図3(a)に示すトレッドセンタ付近の要素が注目要素54の対象とされた場合、タイヤモデル50のトレッドセンタ部の注目要素54が1回転するときの軌跡に対応する。この軌跡は、後述する変形解析処理により変形したタイヤの変形形状における経路となる。
例えば、タイヤ変形解析としての静的な接地解析は、以下のようにして行うことができる。
タイヤの静的な接地解析による変形解析では、まず、作成されたタイヤモデル50に対して、内圧充填処理が施される。内圧充填処理は、タイヤモデル50の空洞領域に接する節点に所定の力を付与する処理である。次に、路面を再現した剛体路面モデル56に対して、設定された荷重条件で、内圧充填処理の施されたタイヤモデル50を、シミュレーション条件に基づいて接地する接地処理が施される。変形解析として静解析のシミュレーションを行う場合には、タイヤモデル50の材料特性は、弾性特性を再現するものであればよく、例えば、neo-Hookean弾性モデルで表したものを用いても良い。接地処理の結果はメモリ22に記憶される。
こうして、タイヤモデル50を用いて、タイヤの静止状態における接地再現したシミュレーションが行われると共に、剛体路面モデル56上でのタイヤモデル50の転動を再現したシミュレーションを行うために、注目要素54の周方向経路に沿った各要素の変位勾配が抽出され、タイヤモデル50の注目要素54に作用する変形の物理量の変化情報(幾何学的な周方向の変化情報)として変位勾配の変化情報(周方向分布(回転角情報に対する分布))が算出される。
マクロスケールシミュレーションでは、タイヤモデル50を用いて、所定の条件下でタイヤの転動状態におけるタイヤの挙動がシミュレートされる。所定の条件とは、例えば、タイヤに内圧を付与する際の内圧、路面に対する負荷荷重、タイヤ転動速度、タイヤのスリップ角度、タイヤのキャンバー角度等の条件である。すなわち、マクロスケールシミュレーションでは、タイヤモデル50に別途作成されたリムを再現したリムモデルを装着し、タイヤモデル50とリムモデルとにより囲まれた空洞領域に面するタイヤモデル50の内周面に対して内圧充填処理を施し、この後、路面の剛体路面モデル56に接触させて荷重を与え、さらに、所定の転動速度を与えてタイヤモデル50を転動させる。その際、タイヤモデル50にスリップ角度、タイヤのキャンバー角度あるいは、回転トルク等を与える。なお、転動解析においても、タイヤモデル50のメッシュ自体を移動させずに、中の材料だけを転動させることにより、メッシュを転動させたような擬似的な効果を得て解析する定常輸送解析を行っても良い。
次に、このシミュレーションにより得られる演算結果から、各有限要素の変形の物理量、例えば歪み・変位勾配や変形勾配等の変化情報を算出する。
こうして、本変形解析ステップS106では、変形解析演算部34において、タイヤモデル作成部32で選定されたタイヤモデル52の注目要素54に作用する、設定された周方向経路に沿った変形の物理量の変化情報が算出される。ここで算出された変形の物理量の変化情報のシミュレーション結果は、メモリ22に記憶される。
ここで、図7に、図3(a)及び(b)に示すタイヤモデル50(52)のトレッドセンタ部の注目要素54の変形の物理量の時間変化履歴情報として抽出された変位勾配の時間変化履歴情報の一例を示す。なお、図7は、タイヤモデル50に付与する内圧を200[kPa]、荷重を4.0[kN]、転動速度を80[km/h]とするときのタイヤモデル50を用いた有限要素法(FEM)による転動解析の結果である。
また、上述したように、本発明においては、本ステップS108で抽出される注目要素の変形の物理量の時間変化履歴情報を、タイヤが1周するときの軌跡であるタイヤモデル50の周方向経路58に沿った要素のタイヤモデル50のタイヤ周方向情報から作成することができるので、タイヤモデル50のメッシュが移動しない解析(接地解析や定常輸送解析)においても、タイヤのミクロ領域の変形状態の時間変化を解析することができる。
本発明に用いられるミクロモデルは、タイヤの所定の一部分のミクロ構造を再現するものであれば、どのようなミクロ領域をモデル化したものであっても良いが、例えば材料特性パラメータ等の異なる複数の材料相が分散配置された、ゴムコンパウンド(不均質材)のミクロ構造を、複数の有限要素を用いて再現したモデルであることが好ましい。
例えば、本発明に好適に用いられるミクロモデルの一例として、図4(a)に示すミクロモデル60が挙げることができる。
図4(a)に示すミクロモデル60は、ポリマー材料(ゴム)62に、補強剤(フィラー)として、例えば、濃い色で示されるカーボンブラック(CB)64及び薄い色で示されるシリカ66の2種類のフィラーを充填した不均質複合材をモデル化したものである。図示例では、これらの2種のフィラーは、ミクロモデル60としてモデル化されるトレッドゴムコンパウンドのミクロ領域において、ポリマー材料(ゴム)62内に、図4(b)に示すようにそれぞれ複数の粒子として分布している場合、このモデル化に際しては、例えば、有限要素(FE)モデルのメッシュを作成し、各フィラー粒子の中心座標及び半径を用いてこれらの粒子の中に各メッシュが含まれているか否かを調べ、含まれる場合はそのメッシュは当該フィラー粒子で構成されており、含まれない場合にはそのメッシュにポリマー(ゴム)で構成されているとして、該当するメッシュにそれぞれのフィラー粒子の材料物性又はポリマー(ゴム)材料の材料物性を入力すれば良い。
例えば、図4(a)に示す例では、トレッドゴムコンパウンドのミクロ領域として、0.1μm×0.1μm×0.1μmの領域は、30×30×30からなるボクセル要素からなるミクロモデル60としてモデル化され、ポリマー(ゴム相)材料62で構成される要素には弾性係数Eとして1.0[MPa]が、カーボンブラック64及びシリカ66で構成される要素には弾性係数Eとして10,000[MPa]が付与される。
ここで、補強材とは、カーカスやベルトカーバーといった有機繊維補強材やベルトやビードといった金属材料やスチールコード線材等である。なお、ミクロモデルとして、モデル化する補強材は単線でもよいし、複数の線からなる撚り線でもよい。
このように、補強材を含むゴム系複合材料をモデル化したミクロモデルを用いることにより、転動中のタイヤの補強材付近のミクロ変形の解析が可能となる。例えば、タイヤのベルトなどの撚り線に挟まれたゴムコンパウンドに発生するひずみの分析が可能となる。
なお、このステップS110で行われるミクロモデルの設定に、ステップS100で行われるメッシュ作成、材料物性パラメータ入力、境界条件設定を含めても良い。
また、このステップS110で行われるミクロモデルの設定は、後のステップS114のミクロモデル60を用いた時間依存シミュレーションの実行前、好ましくは次のステップS112のミクロモデル60の境界条件設定前であれば、何時どこで行っても良い。
すなわち、周期境界条件として、ミクロモデル60が連続的に無限に配置される状態を再現するように、6面体要素であるミクロモデル60の3方向のそれぞれについて、一方の境界面上の節点と対向する境界面上の同じ相対位置にある節点との間の挙動を関係付ける関係式を定めるのが良い。この関係式が、後述するシミュレーションの際、拘束条件として用いられる。
このように、境界条件として相対変位を許容した周期境界条件を設定することにより、均質化法の適用が可能となり、ミクロモデル60をタイヤのミクロ領域の一部とした解析が可能となる。すなわち、マクロスケールモデルであるタイヤモデル50とミクロスケールモデルであるミクロモデル60との両領域間のマルチスケール解析とすることができる。
例えば、図4(a)に示すタイヤのトレッドゴムコンパウンドのミクロモデル60に対して、ステップS108で、タイヤのトレッドセンタ部の変形の物理量の時間変化履歴情報として抽出された、図7に示す抽出された変位勾配の時間変化履歴情報をメモリ22から読み出し、ステップS112で設定される境界条件として与え、各時間変化毎に、ミクロモデル変形解析を実行して、例えば応力、歪解析のシミュレーションを行って、各時間変化毎に、ミクロモデルに発生した変形、例えば、図8に示すミクロモデル60Aのような変形を求める。ここで、図8は、転動しているタイヤの接地しているトレッドセンタ部、例えば注目要素54又はその一部のトレッドゴムコンパウンドを再現したミクロモデルの動的挙動の所定の時間変化過程の一例を示す斜視図であり、接地のために変形している状態のミクロモデル60Aを示している。
図9は、タイヤモデル50が1回転するときのトレッドセンタ部の有限要素、例えば注目要素54の各位置と、各位置に対応する注目要素54又はその一部のトレッドゴムコンパウンドを再現したミクロモデル60の変形の状態の時間変化履歴を示す説明図である。ここで、タイヤモデル50は、回転軸と直交する赤道面で切断した断面図で示され、時間依存シミュレーションを行った各時間変化過程での変形の状態を示す8個のミクロモデル60a〜60hを示す。
図9において、タイヤモデル50は、例えば、周方向に10度毎に36個にメッシュ分割され、タイヤモデル50の剛体路面モデル56側(下側)の子午断面に対して±25度の範囲内は、2.5度毎にさらに細かくメッシュ分割されている。このように、メッシュ分割されたタイヤモデル50の1つの有限要素(注目要素54)に注目し、その全部又は一部のトレッドゴムコンパウンドを再現したミクロモデル60に対して、それに作用する変位勾配の時間変化履歴情報を境界条件として付与して、時間依存のシミュレーションを行った結果が図9に示される。このようなシミュレーション結果は、メモリ22に記憶される。なお、図9に示す要素分割において、周上の分割点の数では、得られる情報が粗すぎる場合には、ミクロモデルの移動が円滑にならず、タイヤのマクロ挙動の一部とならず、正確なミクロ挙動を解析できなくなるので、その分割点の間を補間するのが好ましい。補間方法は、上述の種々の補間方法を用いることができる。
ここで、タイヤモデル50が1回転するときの回転角度と回転時間とは、回転速度を解して互いに変換されるので、ミクロモデル60a〜60hとして得られるミクロモデルの変形の回転角度変化履歴は、時間変化履歴として得ることができる。
このようにして求められた、図10(a)のミクロモデル60中に○印で示される要素Eの変形の物理量の時間変化履歴情報のグラフを図10(b)に示す。ここで、図10(a)は、ミクロモデル60の図中○印で示されるポリマー材料(ゴム)62である要素Eが時間依存シミュレーション結果を算出する要素であることを示し、図10(b)は、その要素Eに対して算出されたひずみの成分11の時間変化履歴情報のグラフを示す。
こうして、タイヤ転動時のゴムコンパウンドのミクロ挙動(ミクロ領域内の変形挙動)、すなわちゴムコンパウンド内に発生するミクロなひずみ、応力、ひずみエネルギ等の動的な変化過程を解析することができる。
このように、ミクロモデルに与える材料物性パラメータを時間、変形及び場の少なくとも1つに依存させることにより、ミクロモデルに発生する時間、変形、場の少なくとも1つに依存する物理量が算出可能となる。
ここで、第3の物理量の時間変化情報としては、例えばミクロモデル60に発生したひずみエネルギ、粘弾性エネルギ損失、ひずみの振幅値、応力の振幅値等を挙げることができる。また、ミクロモデルでは不均質なコンパウンドをモデル化しているために、ミクロモデルの中に発生するひずみや応力が局所的に異なっているので、第3の物理量の時間変化情報として、ミクロモデルの中のひずみや応力の平均値や標準偏差等の統計値、すなわち上述の物理量の各々の統計値を求めることもできる。さらに、ひずみの値や応力の値として所定の範囲の値を持つ要素がミクロモデルの中に存在する個数を表すひずみヒストグラムや応力ヒストグラム等の上述の物理量の各々のヒストグラム等を挙げることができる。
こうして、本発明の回転体シミュレーション方法においては、タイヤモデルとそのミクロモデル、特にゴムコンパウンド(不均質材)をモデル化したミクロモデルを用意し、図5に示すようなタイヤモデルの接地解析・転動解析から有限要素の変形の変化履歴情報を抽出し、その変形の変化履歴情報を、図7に示す変位勾配等の時間(回転角度)変化履歴情報に変換して、この情報をミクロモデルの境界条件としてミクロモデルの解析を行うことができるので、図8に示すような、タイヤ転動時のコンパウンド内に発生するミクロなひずみ・応力等の変形の物理量の動的な変化過程を解析することができる。すなわち、本発明では、タイヤのマクロ変形(動的転動状態を含む)の時刻履歴(回転角度履歴)をコンパウンドのミクロモデルへ入力してコンパウンドのミクロ変形挙動をシミュレーションすることができる。
本発明の回転体のシミュレーション方法は、基本的に以上のように構成される。
このようにして、本発明においても、マルチスケールシミュレーションにおけるミクロモデルからマクロモデルへの均質化手法を用いることができる。その結果、ミクロモデルを利用してタイヤモデル(マクロモデル)の材料物性を決定することができる。
図11(a)に、図4(a)に示すミクロモデル60と同様にして作成したタイヤのトレッドセンタのゴムコンパウンド(不均質材)のミクロモデル70を示す。
ここでは、まず、図11(a)に示すミクロモデル70に対して一軸伸張解析を行う。すなわち、図11(a)に示すミクロモデル70に対して予め定められた材料相(例えば、ポリマー材料、カーボンブラック粒子、シリカ粒子)の材料定数及び所定の境界条件を付与して、所定の伸張条件で、図中矢印方向に一軸伸長処理を施し、ミクロモデル70を変形させ、図11(b)に示すようなミクロモデル70aの変形状態を取得し、応力−ひずみの関係(応力−ひずみ曲線(SS曲線))を求めるミクロスケールシミュレーションを行い、ミクロモデル70における応力分布又は歪分布、例えば、図12に示すSS曲線を算出する。さらに、算出された応力分布又は歪分布が所定の条件を満たさない場合、ミクロスケールモデルに与える境界条件を修正して、応力分布又は歪分布が所定の条件を満たすようにする。
例えば、ゴムコンパウンドの材料物性パラメータを求める関数として、下記式(1)のようなArruda−Boyce超弾性ポテンシャル関数Uが例示される。このポテンシャル関数を用いて、図12に示すSS曲線から、材料物性パラメータμ及びλmを非線形最小二乗法により求めることができる。具体的には、材料物性パラメータμとλmの値を繰り返し変更しながら、下記式(2)に示す誤差関数が最小となる材料物性パラメータを算出することにより、例えば、タイヤのトレッドセンタ部のゴムコンパウンドの材料物性パラメータとして、μ=0.52、λm=1.16を同定することができる。
以上のようにして、ミクロモデルを利用して、タイヤモデル(マクロモデル)の材料物性パラメータを決定して、入力することができる。なお、この方法については、具体的には、特許文献2に開示の方法を用いることができる。
例えば、本発明の回転体のシミュレーションプログラムは、上述した回転体のシミュレーション方法の各ステップをコンピュータ、具体的にはそのCPU20(図1参照)に行わせる手順を有するものである。これらの手順からなるプログラムは、1つ又は複数のプログラムモジュールとして構成されていても良い。
これらのコンピュータが実行する手順からなる回転体のシミュレーションプログラムは、コンピュータ又はサーバのメモリ(記憶装置)内に記憶されるものであっても良いし、記録媒体に記憶されるものであっても良く、実行時に、当該コンピュータ(CPU20)又は他のコンピュータによって、メモリ又は記録媒体から読み出されて実行されるものである。したがって、本発明は、上記第1の態様の回転体のシミュレーション方法をコンピュータに実行させるための回転体のシミュレーションプログラムを記憶したコンピュータに読み取り可能なメモリもしくは記録媒体であっても良い。
12 シミュレーション演算処理装置(処理装置)
14 入力操作系
16 ディスプレイ
18 プリンタ
20 CPU
22 メモリ
24 I/Oポート
26 ROM
30 条件設定部
32 タイヤモデル作成部
34 変形解析演算部
36 時間変換部
38 ミクロモデル作成部
40 境界条件設定部
42 ミクロモデル解析演算部
44 ミクロ挙動解析部
50、52 タイヤモデル
54 注目要素
56 剛体路面モデル
60、60A、60a、60b、60c、60d、60e、60f、60g、60h、70、70a ミクロモデル
62 ポリマー(ゴム)材料62
64 カーボンブラック
66 シリカ
Claims (14)
- 数値解析可能な要素でモデル化された回転体及びそのミクロモデルの挙動を、コンピュータを有するシミュレーション装置を用いて解析する回転体のシミュレーション方法であって、
前記コンピュータが、前記回転体を、複数の有限要素を用いて再現する回転体モデルを作成する第1のステップと、
前記コンピュータが、この第1のステップで作成された前記回転体モデルの回転軸を含む平面で切断した前記回転体モデルの子午断面上に位置する有限要素の1つを、注目要素として選定する第2のステップと、
前記コンピュータが、予め設定されたシミュレーション条件を前記回転体モデルの周上の少なくとも一部分に付与して、有限要素法を用いて前記有限要素を移動させずに前記回転体の変形解析のシミュレーションを行い、前記回転体モデルの有限要素に作用する第1の物理量の変化情報を算出する第3のステップと、
前記コンピュータが、前記第2のステップで選定された前記回転体モデルの前記注目要素に作用する、前記第3のステップによって算出された前記第1の物理量の変化情報を、前記第1の物理量の時間又は角度変化情報に変換して抽出する第4のステップと、
前記コンピュータが、前記回転体の一部分であるミクロ構造を、複数の有限要素を用いて再現するミクロモデルを作成する第5のステップと、
前記コンピュータが、前記第4のステップで抽出された前記第1の物理量の時間又は角度変化情報を境界条件として前記第5のステップで作成された前記ミクロモデルに付与して、前記ミクロモデルに対して有限要素法を用いて時間依存の解析のシミュレーションを行うことにより、前記ミクロモデルに発生する第2の物理量の時間又は角度履歴情報を算出する第6のステップと、
前記コンピュータが、前記第6のステップによって算出された前記ミクロモデルの前記第2の物理量の時間又は角度履歴情報から前記ミクロモデルの第3の物理量の時間又は角度変化情報を演算し、又は表示し、若しくは演算して表示する第7のステップと、を有し、
さらに、前記回転体モデルの前記注目要素が前記回転体モデルの周方向に1周する周方向経路を前記コンピュータが定める第8のステップを有し、
前記第3のステップでは、前記コンピュータが、前記回転体モデルの有限要素に作用する、前記周方向経路に沿った前記第1の物理量の変化情報を算出し、
前記第4のステップでは、前記コンピュータが、前記注目要素に作用する、前記周方向経路に沿った前記第1の物理量の変化情報を、前記回転体が回転するときの回転周期に合せて、前記第1の物理量の時間又は角度変化情報に変換し、
前記第6のステップでは、前記コンピュータが、前記注目要素が前記周方向経路に沿って一周するときに前記ミクロモデルに発生する第2の物理量の時間又は角度履歴情報を算出することを特徴とする回転体のシミュレーション方法。 - 前記第4のステップで抽出される前記第1の物理量の変化情報は、前記回転体が1周するときの軌跡に沿った有限要素の回転体周方向情報から作成されることを特徴とする請求項1に記載の回転体のシミュレーション方法。
- 前記第6のステップで前記ミクロモデルに対して行う前記時間依存の解析のシミュレーションにおいて前記ミクロモデルに与える境界条件は、相対変位を許容した周期境界条件であることを特徴とする請求項1または2に記載の回転体のシミュレーション方法。
- 前記第6のステップで前記ミクロモデルに対して行う前記時間依存の解析のシミュレーションにおいて、前記ミクロモデルに与える材料物性パラメータは、時間、変形および場の少なくとも1つに依存することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転体のシミュレーション方法。
- 前記ミクロモデルは、材料特性の異なる複数の材料相が分散配置された、不均質材料のミクロ構造を、前記複数の有限要素を用いて再現したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転体のシミュレーション方法。
- 前記ミクロモデルは、ポリマー材料に少なくとも補強剤を充填した不均質複合材料であるゴムコンパウンドをモデル化したものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転体のシミュレーション方法。
- 前記ミクロモデルは、補強材を含むゴム系複合材料をモデル化したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転体のシミュレーション方法。
- 前記第3のステップで前記回転体モデルに対して行う前記回転体の変形解析のシミュレーションにおいて、前記回転体モデルに与える材料物性パラメータは、前記ミクロモデルに変形を与えた場合に前記ミクロモデルに発生する変形の前記第2の物理量から得られることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転体のシミュレーション方法。
- 前記回転体は、タイヤであり、
前記第3のステップで前記回転体モデルに対して行う前記回転体の変形解析のシミュレーションは、少なくともタイヤと路面とを接触させた状態で解析する接地解析を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転体のシミュレーション方法。 - 前記第3のステップで前記回転体モデルに対して行う前記回転体の変形解析のシミュレーションは、さらに、中の材料だけを転動させることにより、前記有限要素を転動させたような擬似的な効果を得て解析する定常輸送解析を含むことを特徴とする請求項9に記載の回転体のシミュレーション方法。
- 前記第6のステップにおいて前記時間又は角度履歴情報が算出される前記ミクロモデルの前記第2の物理量は、前記ミクロモデルに発生したひずみ、応力、ひずみエネルギの少なくとも1つであり、
前記第7のステップにおいて前記時間又は角度変化情報が算出される前記ミクロモデルの前記第3の物理量は、前記ミクロモデルに発生したひずみエネルギ、粘弾性エネルギ損失、ひずみの振幅値、応力の振幅値、これらの物理量の各々の統計値、及びこれらの物理量の各々のヒストグラムの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の回転体のシミュレーション方法。 - 数値解析可能な有限要素でモデル化された回転体及びそのミクロモデルの挙動を解析する回転体のシミュレーション装置であって、
前記回転体を、複数の有限要素を用いて再現する回転体モデルを作成する回転体モデル作成手段と、
この回転体モデル作成手段によって作成された前記回転体モデルの回転軸を含む平面で切断した前記回転体モデルの子午断面上に位置する有限要素の1つを、注目要素として選定する注目要素選定手段と、
予め設定されたシミュレーション条件を前記回転体モデルの周上の少なくとも一部分に付与して、有限要素法を用いて前記有限要素を移動させずに前記回転体の変形解析のシミュレーションを行い、前記回転体モデルの有限要素に作用する第1の物理量の変化情報を算出する回転体モデルシミュレーション手段と、
前記注目要素選定手段によって選定された前記回転体モデルの前記注目要素に作用する、前記回転体モデルシミュレーション手段によって算出された前記第1の物理量の変化情報を、前記第1の物理量の時間又は角度変化情報に変換して抽出する時間変換手段と、
前記回転体の一部分であるミクロ構造を、複数の有限要素を用いて再現するミクロモデルを作成するミクロモデル作成手段と、
前記時間変換手段によって抽出された前記第1の物理量の時間又は角度変化情報を境界条件として前記ミクロモデル作成手段によって作成された前記ミクロモデルに付与して、前記ミクロモデルに対して有限要素法を用いて時間依存の解析のシミュレーションを行うことにより、前記ミクロモデルに発生する第2の物理量の時間又は角度履歴情報を算出するミクロモデルシミュレーション手段と、
前記ミクロモデルシミュレーション手段によって算出された前記ミクロモデルの前記第2の物理量の時間又は角度履歴情報から前記ミクロモデルの第3の物理量の時間又は角度変化情報を演算し、又は表示し、若しくは演算して表示するミクロ挙動解析手段と、を有し、
さらに、前記回転体モデルの前記注目要素が前記回転体モデルの周方向に1周する周方向経路を定める周方向経路設定手段を有し、
前記回転体モデルシミュレーション手段は、前記回転体モデルの有限要素に作用する、前記周方向経路に沿った前記第1の物理量の変化情報を算出し、
前記時間変換手段は、前記注目要素に作用する、前記周方向経路に沿った前記第1の物理量の変化情報を、前記回転体が回転するときの回転周期に合せて、前記第1の物理量の時間又は角度変化情報に変換し、
前記ミクロモデルシミュレーション手段は、前記注目要素が前記周方向経路に沿って一周するときに前記ミクロモデルに発生する第2の物理量の時間又は角度履歴情報を算出することを特徴とする回転体のシミュレーション装置。 - 前記コンピュータに、請求項1〜11のいずれか1項に記載の回転体のシミュレーション方法の各ステップを実行させるための回転体のシミュレーションプログラム。
- 前記コンピュータに、請求項1〜11のいずれか1項に記載の回転体のシミュレーション方法の各ステップを実行させるための回転体のシミュレーションプログラムを記載したコンピュータに読取可能な記録媒体。
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