JP2009204403A - 係数算出装置、係数算出方法、及び係数算出プログラム - Google Patents

係数算出装置、係数算出方法、及び係数算出プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】簡便にひずみエネルギー密度関数の係数を算出することができる係数算出装置、係数算出方法、及び係数算出プログラムを提供すること。
【解決手段】本実施形態に係る係数算出装置は、大ひずみ粘弾性(Large Strain Viscoelasticity)モデルにおいて、超弾性モデルの構成式に使用されるひずみエネルギー密度関数の係数を材料試験の測定結果から推定する係数算出装置であって、応力緩和率を算出して、応力―ひずみ曲線の測定データから、応力緩和率に応じた応力緩和分が除去された応力―ひずみ曲線の計算データを算出する手段24と、応力−ひずみ曲線の計算データに基づいて超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出する手段25と、を備えるものである。
【選択図】図2

Description

本発明は係数算出装置、係数算出方法、及び係数算出プログラムに関し、特に詳しくは、超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出する係数算出装置、係数算出方法、及び係数算出プログラムに関する。
ゴムやエラストマーのような樹脂材料は大変形が可能であり、超弾性材料或いは超弾性体と呼ばれる。この超弾性材料(以下、超弾性モデル)の力学構成式は、下の式(1)に示すように、ひずみエネルギー密度関数Wを右Cauchy−Kirchhoff変形テンソルCで偏微分することにより、第2Piola−Kirchhoff応力テンソルSが得られるというものである。
式(1)
Figure 2009204403
しかし、右Cauchy−Kirchhoff変形テンソルCは、その固有値である主ストレッチを対角成分に持つテンソルであり、ひずみエネルギー密度関数Wは固有値の関数であることから、超弾性モデルの構成式は時間の変化を含まない。そのため、変形速度が変わると応力−ひずみ曲線も変化すると言う時間依存特性を表現することができない。
これに対し、時間や温度依存特性を考慮可能な線形粘弾性モデルに超弾性モデルを組み込んだ大ひずみ粘弾性(Large Strain Viscoelasticity)モデルが提案されている(非特許文献1、2)。非特許文献2によれば、大ひずみ粘弾性モデルの構成式は下の式(2)である。
式(2)
Figure 2009204403
式(2)において、tは現在の時刻、τは時間0からtまでの時間、α 、α 、α 、αi は、時刻t=0の緩和弾性率をG、K、Prony級数の係数をG、K、G、Kとするとα =G/G、α =G/G、α =K/K、α =K/K、である。また、Jは体積変化率である。
式(2)の第1項の積分はせん断成分を、第2項の積分は体積成分を表す。式(2)において、せん断成分、体積成分とも、線形粘弾性による応力緩和率(式(2)の[]内)に超弾性モデルの応力の増分(式(2)のd/dτ以降の()内)を乗じたものを現在の時刻tまで積分するというモデルである。
大ひずみ粘弾性モデルにおいて、超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数を求めるには、超弾性モデル単体のひずみエネルギー密度関数の係数を求めるのと同様、単軸引張試験、等方2軸引張試験、純せん断試験、体積試験(以下、まとめて材料試験)の応力−ひずみ曲線の測定値から算出する。超弾性モデル単体の場合、非特許文献3に示すように、応力−ひずみ曲線の測定値をそのまま使用することが可能であるが、大ひずみ粘弾性モデルの超弾性モデルの場合には、応力−ひずみ曲線の測定値に線形粘弾性の応力緩和の影響が含まれているため、応力緩和の影響を除去した応力−ひずみ曲線のデータを作成する必要がある。
G.A. Holzapfel, "ON LARGE STRAIN VISCOELASTICITY:CONTINUUM FORMULATION AND FINITE ELEMENT APPLICATIONS TO ELASTOMERIC STRUCTURES", Int. J. Numer. Meth. Eng.,Vol. 39, pp. 3903−3926 (1996) ANSYS. Inc, "ANSYS 9.0 Documentation ANSYS, Inc. Theory Manual 4.7.7 Large Strain Viscoelasiticty" SIMULIA社,"Abacus Version 6.7 Theory Manual 4.6"Large−strain elasticity"
ひずみエネルギー密度関数の係数は、汎用シミュレータを利用して、算出することができる。汎用シミュレータなどを用いた場合、図14に示すように、3つの処理装置を用いた方法で係数を算出することができる。以下の3つの処理装置は、例えば、パーソナルコンピュータ等の演算処理装置である。
第1の処理装置100は、入力部101と、計算部102と、出力部104とを有している。入力部101は、材料試験の応力−ひずみ曲線のデータを入力する。計算部102は、超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を計算する算出手段121を有している。出力部104は、算出した係数を出力する
第2の処理装置200は、入力部201と、計算部202と、出力部204とを有している。入力部201は、第1の処理装置100の出力結果から、材料試験の応力シミュレーションを行うための設定を入力する。計算部202は、入力された設定にしたがって材料試験の応力シミュレーションを行う。計算部202は、応力シミュレーションによって応力―ひずみ曲線を算出する算出手段122を有している。出力部204は、シミュレーション結果から得られた応力−ひずみ曲線のデータを出力する
第3の処理装置300は、入力部301と、計算部302と、計算部402と、出力部304とを有している。入力部301は、第1の処理装置100の入力部101に入力した材料試験の応力−ひずみ曲線のデータと、第2の処理装置200の出力部204から出力された応力−ひずみ曲線のデータを入力する。計算部302は、2つの応力−ひずみ曲線のデータから、各ひずみでの応力緩和分を計算する算出手段123を有している。また、計算部402は、算出した応力緩和分を入力部101に入力した材料試験の応力から除去して応力緩和分を除いた応力−ひずみ曲線のデータを算出する算出手段124を有している。出力部304は、応力緩和分を除いた応力−ひずみ曲線のデータを出力する。
出力部304から出力された応力−ひずみ曲線のデータは、第1の処理装置100の入力データとなり、計算部302で応力緩和率が許容範囲に入るまで計算が繰り返される。そのため、繰り返し計算の最初に第1の処理装置100の入力部101に入力されるのは材料試験の測定値である。また、計算部202にはANSYS(登録商標)などの汎用シミュレータが使用され、計算部102には汎用シミュレータに付属する係数算出プログラムなどが使用される。さらに、計算部302には、汎用表計算プログラムが使用される。
このような構成を有する処理装置は次のように動作する。図15は、処理装置の動作フローを示す図である。
図15に示すように、入力部101には試験データを入力する(ステップA101)。算出手段121は、入力部101から入力された材料試験の応力−ひずみ曲線のデータから線形最小2乗法や非線形最小2乗法により超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出する(ステップA102)。
入力部201は、応力シミュレーションに必要な設定を入力する(ステップA201)。算出手段122は、入力部201から入力された設定に従って有限要素法により材料試験の応力シミュレーションを行い、その応力−ひずみ曲線を計算する(ステップA202)。そして、出力部204は算出手段122で算出された応力−ひずみ曲線のデータを出力する。
入力部301は、2つの応力−ひずみ曲線を入力する(ステップA301)。算出手段123は、入力部101に入力した応力−ひずみ曲線のデータと出力部204から出力された応力−ひずみ曲線のデータとを比較して、応力緩和率を計算する(ステップA302)。次に応力緩和率が十分小さいかどうかを判断する(ステップA305)。十分小さい場合、算出手段121により算出した超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を求める解とする。十分小さくない場合、算出手段124により、入力部101に入力した応力−ひずみ曲線のデータにおいて、応力緩和分を除去した応力を算出し、応力を新たな応力とした応力−ひずみ曲線のデータを算出する。さらに、新たに作成した応力−ひずみ曲線のデータを入力部101に入力して、上述の作業を繰り返す。
上記手法の第1の問題点は、処理算装置が別になっているため、処理装置間のデータの入出力に人手が掛かることである。その理由は、大ひずみ粘弾性の超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出には、材料試験の応力−ひずみ曲線から応力緩和分を除去する必要があり、前記応力緩和分を算出する装置が存在しないためである。第2の問題点は、第1の問題点に加えて繰り返し計算を要することである。これにより、より多くの人手が掛かることになる。この理由も、応力緩和率を直接算出する装置が存在しないためである。従って、上記の算出方法では、係数を算出するための処理が煩雑になってしまうという問題点がある。
本発明は、このような問題点を鑑みてなされてものであって、簡便にひずみエネルギー密度関数の係数を算出することができる係数算出装置、係数算出方法、及び係数算出プログラムを提供することを目的とする。
本発明にかかる係数算出装置は、大ひずみ粘弾性(Large Strain Viscoelasticity)モデルにおいて、超弾性モデルの構成式に使用されるひずみエネルギー密度関数の係数を材料試験の測定結果から推定する係数算出装置であって応力緩和率を算出して、応力―ひずみ曲線の測定データから前記応力緩和率に応じた応力緩和分が除去された応力―ひずみ曲線の計算データを算出する手段と、前記応力−ひずみ曲線の計算データに基づいて超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出する手段と、を備えるものである。
本発明にかかる係数算出方法は、大ひずみ粘弾性(Large Strain Viscoelasticity)モデルにおいて、超弾性モデルの構成式に使用されるひずみエネルギー密度関数の係数を材料試験の測定結果から推定する係数算出方法であって、応力緩和率を算出して、応力―ひずみ曲線の測定データから、前記応力緩和率に応じた応力緩和分が除去された応力―ひずみ曲線の計算データを算出するステップと、前記応力−ひずみ曲線の計算データに基づいて超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出するステップと、を備えるものである。
本発明にかかる係数算出プログラムは、大ひずみ粘弾性(Large Strain Viscoelasticity)モデルにおいて、超弾性モデルの構成式に使用されるひずみエネルギー密度関数の係数を材料試験の測定結果から推定する係数算出プログラムであって、コンピュータに対して応力緩和率を算出させ、応力―ひずみ曲線の測定データから前記応力緩和率に応じた応力緩和分が除去された応力―ひずみ曲線の計算データを算出させステップと、前記応力−ひずみ曲線の計算データに基づいて超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出させるステップと、を備えるものである。
本発明の目的は、簡便にひずみエネルギー密度関数の係数を算出することができる係数算出装置、係数算出方法、及び係数算出プログラムを提供することにある。
時間及び温度依存特性を考慮可能な線形粘弾性モデルに超弾性モデルを組み込んだ大ひずみ粘弾性(Large Strain Viscoelasticity)モデルにおいて、超弾性モデルの構成式に使用されるエネルギー密度関数の係数を材料試験の測定値から推定する。すなわち、大ひずみ粘弾性モデルで解析を行う際に、材料試験の測定データに基づいて、ひずみエネルギー密度関数の各係数を算出する。
図1に本発明にかかる係数算出装置10の構成を示す。係数算出装置10は、応力緩和率を算出して、応力―ひずみ曲線の測定データから応力緩和率に応じた応力緩和分が除去された応力―ひずみ曲線の計算データを算出する手段11と、応力−ひずみ曲線の計算データに基づいて超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出する手段12と、を備えている。
係数を算出するために、まず、測定値のデータを係数算出装置に入力する。すなわち、試験片に対して引張試験などを行い、応力に対するひずみを測定する。これにより、応力―ひずみ曲線の測定データを取得することができる。そして、時間と、応力と、ひずみとが組となった測定データを取得する。この測定データにおける応力は応力緩和分を含んでいる。そのため、手段12は、応力緩和率を算出し、応力緩和分を除去した計算データを算出する。すなわち、入力された応力―ひずみ曲線の測定データを用いて、応力―ひずみ曲線の応力緩和率を算出する。そして、測定データの応力から応力緩和分を除去する。
手段12は、測定データから応力緩和分が除去された応力―ひずみ曲線の計算データを算出する。すなわち、測定データから応力緩和分を除去して、応力緩和がない状態での超弾性モデルの応力の計算データを求める。手段12は、応力−ひずみ曲線の計算データに基づいて超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出する。最小自乗法などによって、例えば、Mooney−Rivlinモデルの係数を算出する。
このように大ひずみ粘弾性モデルにおいて解析を行う際に、ひずみエネルギー密度関数の係数を用いずに、応力緩和率に応じた応力緩和分を算出している。すなわち、応力―ひずみ曲線から直接に応力緩和分を除去した計算データを求める。そして、応力緩和分が除去された応力―ひずみ曲線の計算データからエネルギー密度関数の係数を算出している。このようにすることで、材料固有の力学的特性を数学的に表現する構成式の一つであるエネルギー密度を簡便に算出することができる。
実施形態1.
本実施形態にかかる係数算出方法、及び装置について、図2を用いて説明する。図2は、係数算出装置の構成を示すブロック図である。図2を参照すると、係数算出装置は、キーボードやマウス等の入力部1と、係数の算出を行う計算部2と、計算時にデータを保持するための記憶部3と、ディスプレイや印刷機あるいはファイル装置等の出力部4とを有している。
計算部2は、入力データ読み込み手段21と、シフトファクターを算出する手段22(以下、第一算出手段22)と、時刻0の緩和弾性率でProny級数の係数を除したα、αを算出する手段23(以下、第二算出手段23)と、応力緩和率を算出して応力−ひずみ曲線のデータを計算する手段24(以下、第三算出手段24)と、ひずみエネルギー密度関数の係数算出手段25(以下、第四算出手段25)とから構成される。また、計算部2に接続された記憶部3には、3つの記憶部31〜33が設けられている。
なお、これらの算出手段や記憶部は、物理的に同一の構成であってもよい。係数算出装置は、データの入出力が可能なパーソナルコンピュータ等の演算処理装置である。例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶ディスク、通信用のインターフェースなどを有し、係数算出プログラムにしたがって各種演算処理を実行する。RAMや記憶ディスクなどが各記憶部となる。また、CPUなどのプロセッサが各算出手段となる。そして、プロセッサなどは、予め格納されたコンピュータプログラムを実行することで、それぞれの処理を行う。従って、これらの算出手段は物理的に同一のプロセッサなどで構成されていても良い。例えば、記憶ディスクなどに記憶されている演算プログラムをCPUによって実行されると、入力されている測定値や設定値をRAMなどに読み込んで、各種演算を行う。そして、その計算過程のデータや計算結果のデータをRAMや記憶ディスクなどに書き込む。このように、演算処理装置に予め記録されている係数算出プログラムにしたがって、下記の演算処理が実行される。
これらの構成はそれぞれ概略つぎのように動作する。
入力データ読み込み手段21は、入力部1によって与えられた数値データを読み込み、記憶部3に書き込む。これにより、数値データが記憶部3に保存される。入力部1から与えられる数値データは、例えば、以下の4つである。
(A)シフトファンクションの係数、(B)Prony級数の緩和時間とそれに対応する係数、(C)材料試験の測定値(試験データ)、(D)(C)の試験温度が入力部1によって入力される。これらは、作業者によって入力されてもよいし、他の装置から転送されてもよい。
(A)、(D)のデータは第一記憶部31に、(B)、(C)のデータは第二記憶部32に記憶される。第一記憶部31は、入力されたシフトファンクションの係数と、試験温度とを設定値として格納する。また、第二記憶部32は、Prony級数の緩和時間とそれに対応する係数を設定値として格納し、材料試験の測定値(試験データ)を測定データとして格納する。
ただし、(A)で、シフトファンクションの係数を入力する代わりに、シフトファクターaを入力しても良い。その場合、後述の第一算出手段22、及び(D)の試験温度の入力は不要となる。(B)で、Prony級数の代わりに時刻0の緩和弾性率でProny級数の係数を除したα、αiを読み込んでも良い。この場合、後述のα、αiを算出する第二算出手段23は不要となる。
また、(C)材料試験の測定値は試験結果のひずみε(k=1・・・M)と、ひずみに対応する応力σと、時間tと、の組のデータ(以下、測定データ)である。したがって、測定データとして、ひずみと応力と時間とから構成されるデータセットがM組用意される。(C)について、材料試験の負荷を等ひずみ速度で与えた場合、各ひずみに対応する時間tの代わりに、ひずみ速度を与えてもよい。この場合、計算部2がtを計算しても良い。さらに、試験結果をひずみではなくストレッチとしても良い。公称ひずみεと主ストレッチλはλ=1+εの関係があるためである。主ストレッチλが公称ひずみεに換算される。
第一算出手段22は、第一記憶部31からシフトファンクションの係数、試験温度を読み出す。そして、入力データ読み込み手段21は、これらのデータをシフトファンクションの式に代入することにより算出する。すなわち、第一算出手段22は、シフトファンクションの係数、及び試験温度からシフトファンクションを算出する。シフトファンクションの式は、記憶部3に予め登録されている。
第二算出手段23は時刻0の緩和弾性率でProny級数の係数を除したα、αiを算出する。そのため、第二算出手段23は第二記憶部32からProny級数の係数G、G(i=1・・・n)を読み取る。そして、第二算出手段23は、各Prony級数の係数を時刻0の緩和弾性率G=G+G+G+・・・+Gで除して、α=G/G、α=G/G(i=1・・・n)によりα、αiを得る。
第三算出手段24は応力緩和率を算出して応力−ひずみ曲線の計算データを計算する。そのため、第三算出手段24は第一算出手段22で算出したシフトファクターaと、第二記憶部32から読み取ったProny級数の緩和時間と、第二算出手段23で算出したα、αiと、測定データと、から各ひずみでの応力緩和率を算出する。そして、第三算出手段24は、応力緩和分を除去した応力−ひずみ曲線のデータを算出する。応力緩和率の算出は、次のようにして行われる。但し、以下では式(2)のせん断成分(式(2)の第1項)に対して述べるが、体積成分(式(2)の第2項)についても同様にして求めることができる。
式(2)の第1項を区分求積法により表現すると、下の式(3)のようになる。但し、試験温度によりProny級数はシフトすることから、式(3)シフトファクターaも考慮した式となっている。
式(3)
Figure 2009204403
ここで、α 、α (i=1・・・n)は時刻0の緩和弾性率でProny級数の係数を除したもので、前記のα、α(i=1・・・n)である。また、tは現在の時刻、τは時間0からtまでの時刻、τはαiに対応する緩和時間である。Nは区分求積法の分割数であり、ΔS はΔτ=t/Nでの超弾性モデルの応力の増分である。式(3)において、Σの中の[]内が応力緩和率を示している。このように、各時間における応力緩和率に応力の増分を乗じた値の時間0〜tまでの総和を取っている。
第2Piola‐Kirchhoff応力ではなく公称応力−公称ひずみで測定データを入力する場合、第2Piola‐Kirchhoff応力を公称応力σに、超弾性モデルの第2Piola‐Kirchhoff応力(式(3)の右辺のd/dτ以降の()内)を公称応力(=第1Piola‐Kirchhoff応力)Πに置き換えれば良い。この置き換えを行ったものが下の式(4)である。
式(4)
Figure 2009204403
ここでは、式(3)の右辺のd/dτ以降の()内をΠに、式(3)のテンソルSを公称応力σに置換している。
測定データは公称応力−公称ひずみで入力することが多いため、以降、式(4)を用いて説明する。すなわち、測定データが公称応力で取得されている場合について説明する。ここで、j番目の分割での公称応力の増分をΔσjとすると、式(4)から次の式(5)が成り立つ。
式(5)
Figure 2009204403
また、式(4)の公称応力σを時間微分したものをσ'とすると、式(5)の各変数は図3の関係がある。
式(5)から、大ひずみ粘弾性モデルの超弾性モデルについて、j番目の分割での増分ΔΠjは下の式(6)から得られる。
式(6)
Figure 2009204403
式(6)の右辺において、分母は応力緩和率を示し、分子は所定時間での応力の増分を示す。このように、測定データの応力の増分を応力緩和率で除することによって、超弾性モデルの応力の増分ΔΠjを得ることができる。応力の増分ΔΠjは、測定データから応力緩和分を除去したものである。このように、応力の増分は測定データ、及び入力された設定値から算出することができる。ΔΠjは、時間t/Nでの増分であるため、時刻tでの大ひずみ粘弾性モデルの超弾性モデルの応力Πは次の式(7)により得られる。
式(7)
Figure 2009204403
このような演算式によって、応力緩和分を除去した応力を求めることができる。測定データの各組(ε,t)(k=1・・・M、但し、tk−1<t)から、応力緩和分を除去した計算データを計算するには具体的に次のようになる。まず、式(6)を利用できるよう、下の式(8)により公称応力σを時間微分したσ'に応力を変換する(但し、σ=0、t=0)。
式(8)
Figure 2009204403
例えば、隣接する組の公称応力の差(σ−σk−1)をその時間間隔(t−tk−1)で除することで公称応力の時間微分σ'を得ることができる。応力緩和分を除去した時刻t(k=1・・・M)の超弾性モデルの応力を求める。このため、時刻t1からtまでのデータで形成される公称応力−時間曲線を分割数Nで分割する。ここでは、測定データで表される、公称応力−時間曲線をN個に等分割している。測定データは離散していることから、j番目の時刻t×j/Nに対して測定データが無い場合がある。その場合、時刻t×j/N近傍の測定データから線形補完やスプライン補完などにより、σ'を決定する。すなわち、データ補間によって、任意の時刻t×j/Nにおける公称応力を用意することができる。時刻t×j/Nでのσ'の値をσ'とすると、式(6)のΔσは、t/Nにおける公称応力の増分であるため。Δσ=σ'×t/Nとして求められる。但し、このΔσは、長方形で面積を近似した場合であり、台形などで近似しても良い。このように、式(6)の右辺の分子が求められる。
一方、式(6)の右辺の分母は、応力緩和率であり、t=tとして第一算出手段22で算出したシフトファクターa、第二算出手段23で算出したα、α(i=1・・・n)、及び第二記憶部32から読み取った緩和時間τ(i=1・・・n)を用いて算出される。これによって式(6)のj番目の分割での増分ΔΠj(j=1・・・N)が求められる。このように、入力された設定値を用いることで、任意の時刻における応力緩和率を求めることができる。さらに、式(7)により、時刻tでの応力緩和分を除去した超弾性モデルの応力Πが求められる。このように、応力Πの増分を離散的に時間積分することによって、任意の時刻(t=t)における応力Πを求めることができる。
但し、区分求積の分割数が少ない場合、分割数Nで求めた応力と分割数N+1で求めた応力の誤差が大きくなることがある。そのため、許容範囲の誤差になるようNを決定するか、許容範囲の誤差になるまでNを増やしながら上述の手順を繰り返す必要がある。すなわち、区分求積の分割数を増加すると、応力の増分、及び応力緩和率を精度よく求めることができる。そして、応力Πが収束するまで、分割数Nの値を徐々に増やしていく。
上記を全ての測定データに適用することにより、測定データ(ε,t)から応力緩和分を除去した超弾性モデルの計算データ(ε,t)(k=1・・・M)に変換することができる。このようにして計算データが算出され、は、第三算出手段24で求めた超弾性モデルの応力−ひずみの第三記憶部33に記憶される。
第四算出手段25は、第三算出手段24で求めた超弾性モデルの応力−ひずみのデータ(ε)(k=1・・・M)からひずみエネルギー密度関数の係数を算出する。ここでは、線形最小2乗法や非線形最小2乗法を用いて、係数を算出する。これにより、超弾性モデルの構成式となるひずみエネルギー密度関数の係数を算出することができる。そして、第四算出手段25は係数を出力部4に出力する。あるいは、第四算出手段25は係数を記憶部3に書き込む。このように、簡便に係数を算出することができる。
次に、図4を参照して本実施形態の全体動作について詳細に説明する。図4は、本実施の形態にかかる係数算出方法を示すフローチャートである。また、図4の各ステップには、図2で示した各算出部や各記憶部などが合わせて示されている。
まず、入力部1から与えられた材料試験結果のひずみε、それに対応する応力σと時間t(k=1・・・M)、Prony級数の緩和時間τ(i=1・・・n)とそれに対応する係数G、G、シフトファンクションの係数C、C、・・・(個数はシフトファンクションに依存)、試験温度Teは、入力データ読み込み手段21を通じて読み込まれる。そして、読み込まれたシフトファンクションの係数と試験温度を第一記憶部31に記憶し、Prony級数と測定データを第二記憶部32に記憶する (図4のステップA1)。
次に、第一記憶部31からシフトファンクションの係数と試験温度を読み取り、シフトファンクションの式からシフトファクターaを決定する。(ステップA2)。シフトファンクションはT−N式やWLF式などが使用可能であり、例えばT−N式では2つの係数C、Cを必要とし、次の式からシフトファクターが求められる。
式(9)
Figure 2009204403
シフトファクターaの算出後、Prony級数の緩和時間τ(i=1・・・n)とそれに対応する係数G、G、測定データε、σ、t(k=1・・・M)を第二記憶部32から読み込む(ステップA3)。次に、G=G+G+G+・・・+Gとして、α=G/G、α=G/G(i=1・・・n)により、α、α(i=1・・・n)を求める(ステップA4)。なお、ステップA3とステップA4は順序が逆でも良い。
その後、測定データをtk−1<tとなるように整列した後、応力σをσ'=(σ−σk−1)/(t−tk−1)により時間微分での応力σ'に変換する(ステップA5)。その際、σ=0、t=0とする。
次に、変換した各測定データε、σ'、tの応力から応力緩和分の除去を行う。まず、k=1として、時間が小さいデータから開始する(ステップA6)。すなわち、1組目のデータから順番に応力緩和分を除去していく。但し、k=Mとして、時間が大きいデータから開始しても良い。
k番目のデータに対し、シフトファクターa、Prony級数の係数を時刻0の緩和弾性率で除したα、α、k番目のデータの時刻tから応力緩和率を算出して、分割数Nでの応力緩和分を除去した超弾性モデルの応力Π を求める(ステップA7)。また、求めた超弾性モデルのデータ(ε ,t)を第三記憶部33に記録する。第三記憶部33は、あるk番目のデータに対応する応力Π を含む超弾性モデルのデータ(ε ,t)を計算データとして格納する。以降、k番目の測定データにおける超弾性モデルの応力Πに対し、右上のNはその応力を算出した際の分割数Nを示す。
次に、分割数をN+a(a>0の整数)に増やしてステップA7同様に応力緩和率を算出して、分割数N+aでの応力緩和分を除去した超弾性モデルの応力Π N+aを求める(ステップA8)。なお、A8では、分割数がA7から増加しているため、応力緩和率もA7での応力緩和率から変化している。第三記憶部33からk番目のデータに対応する応力Π を読み取り、Π とΠ N+aとを比較して、誤差を算出する(ステップA9)。誤差を算出した後、第三記憶部33にあるk番目のデータに対応する応力を分割数N+aの超弾性モデルの応力Π N+aで置換して記録する(ステップA10)。すなわち、k番目のデータの応力Πが分割数を増やして求めた応力Π N+aに更新される。そして、更新された応力Πが対応するひずみと共に記憶される。
比較の結果、誤差が十分小さくない場合(ステップA11)、分割数の増分aを1以上増やす(ステップA12)。そして、ステップA8に戻る。
逆に、誤差が十分小さい場合(ステップA11)、k=Mかを調べ、全てのデータの処理を終えたか調べる(ステップA13)。但し、k=Mから開始している場合はk=1かを調べる。
すなわち、応力Π N+aと応力Π をの差がしきい値より小さくなっていれば、分割数の増加による応力Πの変化が収束していると判定する。そして、収束していれば、これ以上分割数を増やしても変化が小さいため、算出を終了する。一方、差がしきい値以上の場合、応力Πの変化が収束していないと判定する。そして、応力変化が収束するまで分割数を増やして、応力Πを更新する。このように、応力緩和分が除去された応力が取得され、計算データとして第三記憶部33に保存される。
全てのデータの処理を終えていない場合、kを1増やしてステップA7へ戻る(ステップA14)。すなわち、ステップA7〜ステップA11までの処理を繰り返し行って、k=1からMまで順番に、応力Πを算出していく。
全てのデータの処理を終えた場合、第三記憶部33から超弾性モデルのひずみεと応力Π(k=1・・・M)を読み取る。この応力Πは応力緩和率に応じた応力緩和分が除去されている。そして、応力緩和分が除去された応力−ひずみ曲線の計算データから超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出する(ステップA15)。
このように係数算出装置は、大ひずみ粘弾性モデルの超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数に含まれる複数の係数の値を材料試験の測定値、Prony級数、シフトファンクションの係数、試験温度から推定する。係数算出装置に設けられている記憶部3は、測定値、Prony級数、シフトファンクションの係数、試験温度および計算過程のデータを記憶する。係数算出装置は、記憶部3に接続された計算部2とを有している。計算部2は、シフトファンクションの係数と試験温度からシフトファクターを算出する手段と、シフトファクター、Prony級数、材料試験の測定値から応力緩和率を計算して、応力緩和分が除去された超弾性モデルの応力−ひずみ曲線の計算データを算出する算出手段と、応力−ひずみ曲線の計算データからひずみエネルギー密度関数の複数の係数を算出する算出手段とを備えている。
次に、本実施の形態の効果について説明する。
本実施の形態では、測定データから数値計算により応力緩和分を除去した応力−ひずみ曲線を算出し、前記応力−ひずみ曲線に対して大ひずみ粘弾性モデルの超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出している。このため、係数算出工数を低減できる。また、演算処理装置間のデータのやり取り回数を低減することができるため、簡便に係数を算出することができる。
ひずみエネルギー密度関数の係数を求めることなく、直接、応力緩和率に応じた応力緩和分を除去している。すなわち、応力緩和率から応力緩和分を求めることで、ひずみエネルギー密度関数の係数を求める前に、応力緩和分を除去することが可能になる。よって、応力緩和分の誤差が小さくなるまで、繰り返し、ひずみエネルギー密度関数の係数、及び応力―ひずみ曲線を算出する必要がなくなる。応力シミュレーションによってひずみエネルギー密度関数の係数から応力―ひずみ曲線を算出するための商用のシミュレータが不用となるため、より簡便に係数を求めることができる。応力緩和分の誤差が小さくなるまでひずみエネルギー密度関数の係数を繰り返し算出することがなくるため、計算時間を短縮することができる。よって、簡便に係数を算出することができ、利便性を向上することができる。
実施の形態2.
図5を参照すると、本発明の実施形態2は、インターネット等のネットワーク5を通じてサーバコンピュータ6とクライアントコンピュータ7とが接続されたネットワークシステムにおいて、ネットワーク5を通じてクライアントコンピュータ7から係数算出要求をサーバコンピュータ6へ送信し、この要求を受けたサーバコンピュータ6がネットワーク5を通じて係数算出処理を行って求めた係数の値を要求元のクライアントコンピュータ7へ返却するサービスを有料または無料で提供する。
サーバコンピュータ6には、図1の計算部2と記憶部3とが設けられている。クライアントコンピュータ7には、図1の入力部1と出力部4とが設けられている。クライアントコンピュータ7とサーバコンピュータ6がネットワーク5を通じて通信可能に接続される。クライアントコンピュータ7に設けられた入力部1及び出力部4と、サーバコンピュータ6に設けられた計算部2とがネットワーク5を通じて通信可能に接続される。従って、クライアントコンピュータ7の入力部1で入力された各データがサーバコンピュータ6の記憶部3に記憶される。また、サーバコンピュータ6の計算部2で計算されたデータが、クライアントコンピュータ7の出力部4に出力される。
次に本実施の形態の動作を説明する。
クライアントコンピュータ7のユーザは、ネットワーク5を通じてサーバコンピュータ6にクライアントコンピュータ7を接続し、材料試験結果のひずみε、それに対応する応力σと時間t(k=1・・・M)、Prony級数の緩和時間τ(i=1・・・n)とそれに対応する係数G、G、シフトファンクションの係数C、C、・・・、試験温度Tをサーバコンピュータ6へ送信する。
サーバコンピュータ6は、係数算出要求を受信すると、それに含まれる材料試験結果のひずみε、それに対応する応力σと時間t(k=1・・・M)、Prony級数の緩和時間τ(i=1・・・n)とそれに対応する係数G、G、シフトファンクションの係数C、C、・・・、試験温度Tを記憶装置に記憶し、第1の実施の形態における計算部2と同様の処理を実行して係数を算出する。そして、サーバコンピュータ6は、ネットワーク5を通じて、それらの値を含む応答メッセージをクライアントコンピュータ7へ送信する。
クライアントコンピュータ7は、サーバコンピュータ6から応答メッセージを受信すると、それに含まれる係数の値を記憶部に記憶する。記憶された係数の値は、各種のシミュレーションに利用される。このように、物理的に異なる処理装置を用いた場合でも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施例
次に、具体的な実施例を説明する。
図6にエラストマー樹脂の単軸引張試験データ(試験温度T=125℃、ひずみ速度0.1%/secで一定)を示す。図7にProny級数の緩和時間τ(i=1・・・39)と対応する係数G、G、を示す。図6,7では、各データを2段で示している。また、シフトファクター算出に使用するシフトファンクションはT−N式とし、図8にシフトファンクションの係数を示す。さらに、算出する超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数Wは下の式(10)のようにMooney−Rivlinモデルとし、その次数は3とする(9パラメータのMooney−Rivlinモデル)。算出する係数はAi,jである。但し、入力に使用する材料試験が単軸引張試験であるため、せん断成分しか求めることができないことから、式(10)はせん断成分のみを記す。なお、式(10)において、Iは、偏差右Cauchy−Green変形テンソルの不変量を示す。
式(10)
Figure 2009204403
入力データの読み込み手段21は、測定データのひずみεkと対応する応力σと時間t(k =1・・・65)、Prony級数の緩和時間τ(i=1・・・39)と対応する係数G、G、シフトファンクションの係数C、C、及び試験温度T=125℃を読み込み、シフトファンクションの係数と試験温度を記憶部31に、測定データとProny級数を第二記憶部32に記憶する(図4のステップA1)。
次に、記憶部31からシフトファンクションの係数C、Cと試験温度Tを読み取り、T−N式からシフトファクターaを算出する。(ステップA2)。但し、T−N式ではC、Tを絶対温度で入力する必要があることから、絶対温度へ変換するために273℃を加えている。
式(11)
Figure 2009204403
シフトファクターaの算出後、Prony級数の緩和時間τ(i=1・・・39)と対応する係数G、G、及び測定データのひずみεk、応力σ、時間t(k =1・・・65)を第二記憶部32から読み込む(ステップA3)。
その後、上記のように、図8のデータを用いてα、αを算出する(ステップA4)。すなわち、α=G/G、α=G/G(i=1・・・n)によりα、αiを得る。算出したα、αを図9に示す。なお、図9では、データを2段で示している。
さらに、測定データを時間微分の形式σ'に変換する(ステップA5)。ステップA5では、測定データの組(εk、σ、t)をtk−1 <tとなるよう整列した後、次の式(12)により(εk、σ、t)を(εk、σ'、t)へ変換する。変換結果を図10に示す。図10では、データを2段で示している。但し、σ=0、t=0である。
式(12)
Figure 2009204403
次に、測定データのカウンタであるkを1として、各測定データから応力緩和分を除去する計算を開始する(ステップA6)。ここでは、区分求積の分割数の初期値Nを1、分割数の加算分aの初期値を1、加算分の増加分を1とした例を示す。
まず、1番目のデータについて、区分求積の分割数の初期値1で式(6)から応力緩和分を除去した超弾性モデルの応力Πを求めるとΠ =1.618518となった。前記Π を対応するひずみε1と時間tの組として第三記憶部33に記録する。(ステップA7)。但し、Πの右上の数字1は分割数であり、以降も同様である。
今度は分割数をN+a=2として応力緩和分を除去した超弾性モデルの応力Πを求めるとΠ =3.193646となった(ステップA8)。また、誤差を(Π b+1−Π )/Π とすると、誤差は(Π −Π )/Π =0.9731である(ステップA9)。
誤差の算出後、第三記憶部33の1番目のデータの応力Π をステップA8で算出した値Π に書き換えて保存する(ステップA10)。
誤差が十分小さいとするしきい値を1×10−3とすると、ステップA9で求めた誤差はしきい値1×10−3よりも大きい(ステップA11)。そのため、分割数の増分aを1増やして2とし(ステップA12)、ステップ8へ戻る。
上記手順を誤差がしきい値1×10−3以下になるまで繰り返したところ、分割数N=26で誤差0.9266×10−3となり、Π 26=4.574098であった。このように、分割数26でのデータが計算データとして保存される。
ステップA11で誤差が十分小さいと判断されたため、測定データのカウンタkを確認する(ステップA13)。現在、k=1であり、測定データ数65に達していないことから、カウンタを1増やして(ステップA14)、ステップA7からA11を繰り返す。上記手順により得た、応力緩和分を除去した超弾性モデルの応力−ひずみ曲線のデータε、Π(k =1・・・65)を図11に示す。図11では、データを2段で示している。
測定データのカウンタkが測定データ数65に達した場合、第三記憶部33から応力緩和分を除去した超弾性モデルの応力−ひずみ曲線のデータε、Π(k =1・・・65)を読み出し、線形最小2乗法によりMooney−Rivlinの係数Ai,jを算出する(ステップA15)。算出したMooney−Rivlinの係数を図12に示す。本発明の手法で得た解を図12に示す。
また、本発明の手法で得た係数を用いた際の商用シミュレータの応力−ひずみ曲線と材料試験結果との比較を図13に示す。図13から、本手法で得た係数は実用上十分な精度を有することが分かる。このように、簡便且つ、高精度に係数を算出することができる。
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、本発明は以上の例に限定されず、その他各種の付加変更が可能である。例えば、誤差のしきい値、分割数の初期値、分割の加算分の初期値は特に限定されるものではない。また、分割の加算分の増分aを入力部1から入力しても良い。分割数の初期値、分割の加算分の初期値、加算分の増分を全て1としたが、0以上であればよい。さらに、分割数Nに加算分aを加えて分割数を増加させたが、Nの定数倍、べき乗倍などの手法により分割数を増加させても良い。分割数はどのような手法であれ、ステップからA8からA12の繰り返し中に増加していけば良い。加えて、ステップA14で分割数、分割の加算分、加算分の増分を初期値に戻しても良い。
本発明の実施例では、せん断成分の係数算出に適用したが、体積成分の算出にも同様に適用可能である。また、単軸引張試験の測定データから係数を算出したが、等方2軸引張試験、純せん断試験、体積試験等の他の材料試験の測定データを用いても同様に係数を算出できる。加えて、ひずみエネルギー密度関数をMooney−Rivlinとし、次数を3としたが、3以外の次数でも良く、さらに他のひずみエネルギー密度関数を用いても良い。例えば、Neo−HookeモデルやOgdenモデルやArruda−Boyceモデルのひずみエネルギー密度関数の係数を求めてもよい。
本発明によれば、力学構成式の積分項に含まれる力学モデルの係数を、材料試験の測定値から推定する分野に利用できる。特に、大ひずみ粘弾性モデルの超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出する用途に適用できる。
本発明にかかる係数算出装置の構成を示すブロック図である。 実施の形態1にかかる係数算出装置の構成を示すブロック図である。 式(6)の各パラメータの意味を示す図である。 実施の形態1にかかる係数算出方法を示すフローチャートである。 実施の形態2にかかる係数算出装置の構成を示す図である。 実施例で使用する単軸引張試験結果である。 実施例で使用するProny級数の緩和時間及び係数である。 実施例で使用するシフトファンクションの係数である。 実施例の計算の途中結果で、Prony級数の緩和時間と時刻0の緩和弾性率で図6の係数を除したものである。 実施例の計算の途中結果で、測定データから単位時間の応力増分σ'を求めたものである。 実施例の計算の途中結果で、応力緩和分を除去した超弾性モデルの応力−ひずみ曲線のデータである。 実施例の計算によって得られた、Mooney−Rivlinの係数を示す表である。 本実施例の計算結果から商用シミュレータで得られた応力―ひずみ曲線と実測の材料試験結果の比較を表す図である。 商用シミュレータを用いた係数算出装置の構成を示すブロック図である。 商用シミュレータを用いた係数算出方法を示すフローチャートである。
符号の説明
1 入力部
2 計算部
21 入力データ読み込み手段
22 第一算出手段(シフトファクタ算出手段)
23 第二算出手段(Prony級数からα、αを算出する手段)
24 第三算出手段(応力緩和率を算出し、応力−ひずみ曲線を算出する手段)
25 第四算出手段(ひずみエネルギー密度関数の係数計算手段)
3 記憶部
31 第一記憶部(シフトファンクションの係数、試験温度記憶部)
32 第二記憶部(Prony級数と測定データ記憶部)
33 第三記憶部(超弾性モデルの応力と対応するひずみの記憶部)
4 出力部
5 ネットワーク5
6 サーバコンピュータ6
10 係数算出装置
11 手段
12 手段
100 第1の処理装置
101 入力部
102 計算部
121 係数算出部
104 出力部
200 第2の処理装置
201 入力部
202 計算部
204 出力部
300 第3の処理装置
301 入力部
302 計算部
304 出力部
402 計算部

Claims (12)

  1. 大ひずみ粘弾性(Large Strain Viscoelasticity)モデルにおいて、超弾性モデルの構成式に使用されるひずみエネルギー密度関数の係数を材料試験の測定結果から推定する係数算出装置であって、
    応力緩和率を算出して、応力―ひずみ曲線の測定データから前記応力緩和率に応じた応力緩和分が除去された応力―ひずみ曲線の計算データを算出する手段と、
    前記応力−ひずみ曲線の計算データに基づいて超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出する手段と、を備える係数算出装置。
  2. シフトファクターを算出する手段、及びProny級数の係数を時刻0の緩和弾性率で除した係数を算出する手段の少なくとも一方の手段を有している請求項1に記載の係数算出装置。
  3. 前記超弾性モデルの応力の増分を所定の時間まで離散的に積分することによって、前記所定の時間における応力の計算データを算出している請求項1、又は2に記載の係数算出装置。
  4. 前記測定データにおける前記応力の増分を前記応力緩和率で除することによって、前記超弾性モデルの応力の増分が算出されている請求項3に記載の係数算出装置。
  5. 大ひずみ粘弾性(Large Strain Viscoelasticity)モデルにおいて、超弾性モデルの構成式に使用されるひずみエネルギー密度関数の係数を材料試験の測定結果から推定する係数算出方法であって、
    応力緩和率を算出して、応力―ひずみ曲線の測定データから、前記応力緩和率に応じた応力緩和分が除去された応力―ひずみ曲線の計算データを算出するステップと、
    前記応力−ひずみ曲線の計算データに基づいて超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出する手段と、を備える係数算出方法。
  6. シフトファクターを算出するステップ、及びProny級数の係数を時刻0の緩和弾性率で除した係数を算出するステップの少なくとも一方のステップを有している請求項5に記載の係数算出方法。
  7. 前記超弾性モデルの応力の増分を所定の時間まで離散的に積分することによって、前記所定の時間における応力の計算データを算出している請求項5、又は6に記載の係数算出方法。
  8. 前記測定データにおける前記応力の増分を前記応力緩和率で除することによって、前記超弾性モデルの応力の増分が算出されている請求項7に記載の係数算出方法。
  9. 大ひずみ粘弾性(Large Strain Viscoelasticity)モデルにおいて、超弾性モデルの構成式に使用されるひずみエネルギー密度関数の係数を材料試験の測定結果から推定する係数算出プログラムであって、
    コンピュータに対して
    応力緩和率を算出させ、応力―ひずみ曲線の測定データから前記応力緩和率に応じた応力緩和分が除去された応力―ひずみ曲線の計算データを算出させステップと、
    前記応力−ひずみ曲線の計算データに基づいて超弾性モデルのひずみエネルギー密度関数の係数を算出させるステップと、を備える係数算出プログラム。
  10. コンピュータに対して、
    シフトファクターを算出させるステップ、及びProny級数の係数を時刻0の緩和弾性率で除した係数を算出させるステップの少なくとも一方のステップを有している請求項9に記載の係数算出プログラム。
  11. 前記超弾性モデルの応力の増分を所定の時間まで離散的に積分することによって、前記所定の時間における応力の計算データを算出させている請求項9、又は10に記載の係数算出プログラム。
  12. 前記測定データにおける前記応力の増分を前記応力緩和率で除することによって、前記超弾性モデルの応力の増分が算出させている請求項11に記載の係数算出プログラム。
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