JP6254325B1 - 高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法 - Google Patents

高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 変形に伴う物理量を精度よく比較する。【解決手段】 コンピュータを用いて、フィラーとポリマーとの相互作用が互いに異なる少なくとも2種類の高分子材料の性能を比較するための方法である。このシミュレーション方法は、各高分子材料に基づいて、フィラーとポリマーとの間の相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデルを、コンピュータにそれぞれ設定する工程S1と、コンピュータが、相互作用ポテンシャルに基づいて、各高分子材料モデルの構造緩和を計算する工程S2と、構造緩和後の各高分子材料モデルをそれぞれ変形させて、各高分子材料モデルの変形に伴う物理量を計算する工程S3とを含んでいる。構造緩和を計算する工程S3は、各高分子材料モデルの圧力、温度、並びに、フィラー及びポリマーを構成する粒子の数が互いに同一となる条件の下で、構造緩和を計算する。【選択図】図3

Description

本発明は、高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法に関し、詳しくは、コンピュータを用いて、フィラーとポリマーとの相互作用が互いに異なる少なくとも2種類の高分子材料の性能を比較するための方法に関する。
下記特許文献1は、コンピュータを用いて、フィラーとポリマーとを含む高分子材料のシミュレーション方法を提案している。下記特許文献1のシミュレーション方法では、先ず、高分子材料に基づいて、数値計算用の高分子材料モデルがコンピュータに設定される。フィラーとポリマーとの間には、斥力又は引力を作用させるための相互作用ポテンシャルが定義される。そして、下記特許文献1のシミュレーション方法では、相互作用ポテンシャルに基づいて、高分子材料モデルの構造緩和が計算される。
相互作用ポテンシャルには、その強度を定義するためのパラメータが含まれている。相互作用ポテンシャルの強度を小さくすると、フィラーとポリマーとの間の物理吸着が弱くなる。また、相互作用ポテンシャルの強度を大きくすると、フィラーとポリマーとの間の物理吸着が強くなる。
K.Hagita, H.Morita, H.Takano著、「Molecular dynamics simulation study of a fracture of filler-filled polymer nanocomposites」、Poymer、ELSEVIER、2016年9月2日、第99巻、p.368-375
上記非特許文献1では、相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデルを設定して、高分子材料モデルの破壊に関するシミュレーションが行われている。しかしながら、上記非特許文献1のシミュレーションでは、相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデルを対象とする構造緩和の計算方法が明示されていないため、各高分子材料モデルの変形に伴う物理量を、精度よく比較することが難しいという問題があった。
発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデルの構造緩和をそれぞれ適切に計算しないと、フィラーに対するポリマーの分布がそれぞれ変化し、緩和計算後の各高分子材料モデルの内部応力が互いに大きく異なることを知見した。そして、内部応力が互いに大きく異なる各高分子材料モデルでは、変形に伴う物理量を精度良く比較できないことを見出した。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、変形に伴う物理量を精度よく比較することができる高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法を提供することを主たる目的としている。
本発明は、コンピュータを用いて、フィラーとポリマーとの相互作用が互いに異なる少なくとも2種類の高分子材料の性能を比較するための方法であって、前記各高分子材料に基づいて、前記フィラーと前記ポリマーとの間の相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデルを、前記コンピュータにそれぞれ設定する工程と、前記コンピュータが、前記相互作用ポテンシャルに基づいて、前記各高分子材料モデルの構造緩和を計算する工程と、前記コンピュータが、構造緩和後の前記各高分子材料モデルをそれぞれ変形させて、前記各高分子材料モデルの前記変形に伴う物理量を計算する工程とを含み、前記構造緩和を計算する工程は、前記各高分子材料モデルの圧力、温度、並びに、前記フィラー及び前記ポリマーを構成する粒子の数が互いに同一となる条件の下で、前記構造緩和を計算することを特徴とする。
本発明に係る前記高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法において、前記物理量は、前記各高分子材料モデルの応力を含んでもよい。
本発明に係る前記高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法において、前記物理量は、前記各高分子材料モデルの空孔に関するパラメータを含んでもよい。
本発明に係る前記高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法において、前記空孔に関するパラメータは、前記空孔の合計体積、又は、前記各高分子材料モデルの体積に対する前記空孔の前記合計体積の割合であってもよい。
本発明に係る前記高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法において、前記コンピュータが、前記各高分子材料モデルの前記物理量を比較する工程をさらに含んでもよい。
本発明に係る前記高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法において、前記相互作用ポテンシャルは、レナードジョーンズポテンシャルであり、前記強度は、前記レナードジョーンズポテンシャルのポテンシャルの深さεであってもよい。
本発明の高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法は、前記各高分子材料に基づいて、前記フィラーと前記ポリマーとの間の相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデルを、前記コンピュータにそれぞれ設定する工程を含んでいる。さらに、本発明の高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法は、前記コンピュータが、前記相互作用ポテンシャルに基づいて、前記各高分子材料モデルの構造緩和を計算する工程と、構造緩和後の前記各高分子材料モデルをそれぞれ変形させて、前記各高分子材料モデルの前記変形に伴う物理量を計算する工程とを含んでいる。
前記構造緩和を計算する工程は、前記各高分子材料モデルの圧力、温度、並びに、前記フィラー及び前記ポリマーを構成する粒子の数が互いに同一となる条件の下で、前記構造緩和を計算している。これにより、本発明の高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法は、構造緩和後の前記各高分子材料モデルの内部応力を互いに近似させることができるため、各高分子材料モデルの変形に伴う物理量を精度よく比較できる。
高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法を実行するコンピュータの一例を示す斜視図である。 ポリマーの一例を示す構造式である。 高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。 モデル設定工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 フィラーモデル及びポリマーモデルが配置されたセルの一例を示す概念図である。 図5のA部拡大図である。 フィラーモデルのフィラー粒子モデルの拡大図である。 ポリマーモデルの一例を示す概念図である。 フィラーモデル及びポリマーモデルの相互作用ポテンシャルの一例を説明する概念図である。 緩和工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 第2高分子材料モデルの体積分率と、時刻との関係を示すグラフである。 第1高分子材料モデルの平衡内部応力及び第2高分子材料モデルの内部応力と、時刻との関係を示すグラフである。 (a)は、変形計算前の高分子材料モデルの一部を示す概念図、(b)は、変形計算後の高分子材料モデルの一部を示す概念図である。 実施例の応力と歪みとの関係を示すグラフである。 実施例の空孔の体積分率と歪みとの関係を示すグラフである。 比較例の各高分子材料モデルの内部応力と時刻との関係を示すグラフである。 比較例の空孔の体積分率と時刻との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある。)では、コンピュータを用いて、フィラーとポリマーとの相互作用が互いに異なる少なくとも2種類(本実施形態では、2種類)の高分子材料の性能が比較される。
図1は、シミュレーション方法を実行するコンピュータの一例を示す斜視図である。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含んでいる。この本体1aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態のシミュレーション方法を実行するためのソフトウェア等が予め記憶されている。
フィラーとしては、例えば、シリカ、カーボンブラック、又は、アルミナ等が採用される。ポリマーとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、又は、樹脂等が採用される。
図2は、ポリマーの一例を示す構造式である。本実施形態のポリマーとしては、図2に示されるように、cis-1,4ポリイソプレン(以下、単に「ポリイソプレン」ということがある。)が例示される。ポリイソプレンを構成するポリマーは、メチン基等(例えば、−CH=、>C=)、メチレン基(−CH−)、及び、メチル基(−CH)によって構成されるイソプレンのモノマー(イソプレン分子)3が、重合度nで連結されて構成されている。なお、ポリマーには、ポリイソプレン以外のものが用いられてもよい。
本実施形態のシミュレーション方法において、性能が比較される高分子材料モデルには、第1高分子材料及び第2高分子材料が含まれている。これらの第1高分子材料及び第2高分子材料は、フィラーとポリマーとの相互作用が互いに異なっている。本実施形態の第1高分子材料は、第2高分子材料よりも相互作用が弱いものとして区分されるが、第2高分子材料よりも相互作用が強いものであってもよい。また、本実施形態の相互作用としては、物理吸着である場合が例示される。
フィラーとポリマーとの間の物理吸着は、主にフィラーとポリマーとの間に働くファンデルワールス相互作用及び静電相互作用によって、ポリマーがフィラーの表面に吸着される現象である。フィラーとポリマーとの間の物理吸着が強いほど、高分子材料の耐破壊性が向上すると期待される。このような物理吸着の強弱は、実際の高分子材料において、例えば、分子の化学構造や分子密度等を調節することで適宜設定することができる。一方、後述のシミュレーションに用いられる高分子材料モデルでは、例えば、フィラーとポリマーとの間の相互作用ポテンシャルの強度(ポテンシャルの深さ)に設定される値を調節することで、物理吸着の強弱を定義することができる。
図3は、シミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態のシミュレーション方法は、先ず、高分子材料に基づいて、相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデルが、コンピュータ1に設定される(モデル設定工程S1)。本実施形態のモデル設定工程S1では、第1高分子材料をモデル化した第1高分子材料モデルと、第2高分子材料をモデル化した第2高分子材料モデルとがそれぞれ設定される。図4は、モデル設定工程S1の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のモデル設定工程S1では、先ず、高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセルが、コンピュータ1に定義される(工程S11)。セル4は、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))毎に定義される。図5は、フィラーモデル6、及び、ポリマーモデル7が配置されたセル4の一例を示す概念図である。
セル4は、少なくとも互いに向き合う一対の面5、5、本実施形態では、互いに向き合う三対の面5、5を有しており、直方体又は立方体(本例では、立方体)として定義されている。各面5、5には、周期境界条件が定義されている。このようなセル4が用いられることにより、後述の粗視化分子動力学計算において、例えば、ポリマー(図2に示す)をモデル化した後述のポリマーモデル7について、一方側の面5aから出て行ったポリマーモデル7の一部が、他方側の面5bから入ってくるように計算することができる。従って、セル4は、一方側の面5aと、他方側の面5bとが連続している(繋がっている)ものとして取り扱うことができる。
セル4の一辺の各長さL1は、適宜設定することができる。本実施形態の長さL1は、後述のポリマーモデル7の拡がりを示す量である慣性半径(図示省略)の3倍以上が望ましい。これにより、後述の粗視化分子動力学計算では、周期境界条件による自己のイメージとの衝突の発生を防いで、ポリマーモデル7の空間的拡がりを適切に計算することができる。また、セル4の大きさは、例えば1気圧で安定な体積に設定される。これにより、セル4は、解析対象の高分子材料の少なくとも一部の体積を定義することができる。
図6は、図5のA部拡大図である。セル4の内部には、例えば、立方体状に区分された複数の小領域9が定義されている。各小領域9には、節点9tが設定されている。このような小領域9は、後述する分子動力学計算において、フィラーモデル6の小粒子12(図9に示す)、及び、ポリマーモデル7の粗視化粒子15(図9に示す)の追跡等に用いられる。小領域9の1辺の長さL2は、例えば、粗視化粒子15の直径に対して0.1〜5倍程度に設定されるのが望ましい。セル4は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のモデル設定工程S1では、図5に示したセル4の内部に、フィラーをモデル化したフィラーモデル6が定義される(工程S12)。本実施形態の工程S12では、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))のセル4毎に、フィラーモデル6がそれぞれ定義される。
本実施形態のフィラーモデル6は、セル4の内部で凝集した複数のフィラー粒子モデル11によって定義されている。本実施形態では、実際の高分子材料の電子線透過画像のフィラーの一次粒子の位置に基づいて、フィラー粒子モデル11が配置されている。これにより、フィラーモデル6は、実際のフィラーの形状を精度よく表現することができる。図7は、フィラーモデル6のフィラー粒子モデル11の拡大図である。
各フィラー粒子モデル11は、複数の小粒子12を含んで構成されている。小粒子12は、後述の粗視化分子動力学計算において、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、小粒子12には、質量、直径、電荷又は初期座標などのパラメータが定義される。
各フィラー粒子モデル11には、隣接する小粒子12、12間の相対位置を固定する拘束条件が定義されてもよいし、隣接する小粒子12、12間を拘束する結合鎖モデル(図示省略)が定義されても良い。これにより、フィラーモデル6は、後述の粗視化分子動力学計算において、フィラー粒子モデル11の形状が維持され、フィラーモデル6の形状を実際のフィラーの形状に近似させることができる。
小粒子12、12間を拘束する結合鎖モデル(図示省略)は、例えば、論文( Kurt Kremer & Gary S. Grest 著、「Dynamics of entangled linear polymer melts: A molecular-dynamics simulation」、J. Chem Phys. vol.92, No.8, 15 April 1990、p5057-5086)に記載されているレナードジョーンズポテンシャルとFENEポテンシャルとの和で定義することができる。また、各ポテンシャルに定義される定数については、上記論文に基づいて、適宜設定することができる。
フィラー粒子モデル11を構成する複数の小粒子12のうち、フィラー粒子モデル11の外面を構成する小粒子12には、例えば、官能基をモデル化した官能基モデル(図示省略)が設けられてもよい。これにより、後述の粗視化分子動力学計算、及び、高分子材料の変形計算において、官能基によって変化するフィラーとポリマーとの相互作用を考慮することができる。フィラーモデル6は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のモデル設定工程S1では、図5に示したセル4の内部に、ポリマーをモデリングしたポリマーモデル7が定義される(工程S13)。本実施形態の工程S13では、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))のセル4毎に、ポリマーモデル7がそれぞれ定義される。
本実施形態の工程S13では、セル4の内部において、フィラーモデル6が配置されてない領域に、少なくとも一つ(例えば、10個〜1,000,000個)のポリマーモデル7が配置される。これにより、工程S13では、フィラーモデル6との重なりを回避しながら、ポリマーモデル7を定義することができる。
図8は、ポリマーモデル7の一例を示す概念図である。本実施形態のポリマーモデル7は、図2に示したポリマーの分子構造を、複数の粗視化粒子15でモデリングしたものである。隣接する粗視化粒子15、15の間には、結合鎖モデル16で連結されている。
粗視化粒子15は、ポリマーのモノマー又はモノマーの一部分をなす構造単位を置換したものである。ポリマーがポリイソプレンである場合には、上記論文に基づいて、例えば1.73個分のモノマー3(図2に示す)を構造単位として、1個の粗視化粒子15に置換される。これにより、各ポリマーモデル7には、複数(例えば、10〜5000個)の粗視化粒子15が設定される。
粗視化粒子15は、後述の粗視化分子動力学計算において、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、粗視化粒子15には、例えば、質量、直径、電荷又は初期座標などのパラメータが定義される。
図9は、フィラーモデル6、及び、ポリマーモデル7の相互作用ポテンシャルの一例を説明する概念図である。結合鎖モデル16は、粗視化粒子15、15間に、伸びきり長が設定された相互作用ポテンシャルP1によって定義される。相互作用ポテンシャルP1については、適宜定義することができる。相互作用ポテンシャルP1には、例えば、従来と同様に、レナードジョーンズポテンシャルとFENEポテンシャルとの和で定義することができる。各ポテンシャルに定義される定数については、上記論文に基づいて、適宜設定することができる。これにより、粗視化粒子15が伸縮自在に拘束された直鎖状のポリマーモデル7を定義することができる。ポリマーモデル7は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のモデル設定工程S1では、隣接するフィラーモデル6及びポリマーモデル7に、相互作用ポテンシャルが定義される(工程S14)。本実施形態の工程S14では、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))において、相互作用ポテンシャルがそれぞれ定義される。
本実施形態の工程S14では、図9に示されるように、フィラーモデル6の小粒子12、又は、ポリマーモデル7の粗視化粒子15に、下記の相互作用ポテンシャルP2〜P4が定義される。
相互作用ポテンシャルP2:フィラーモデル6の小粒子12と
フィラーモデル6の小粒子12との間
相互作用ポテンシャルP3:ポリマーモデル7の粗視化粒子15と
ポリマーモデル7の粗視化粒子15との間
相互作用ポテンシャルP4:フィラーモデル6の小粒子12と
ポリマーモデル7の粗視化粒子15との間
上記相互作用ポテンシャルP2〜P4は、従来と同様に、レナードジョーンズポテンシャルで定義することができる。相互作用ポテンシャルP2〜P4の定数については、上記論文に基づいて、適宜設定することができる。これらの相互作用ポテンシャルP2〜P4は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のモデル設定工程S1では、高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))毎に、フィラーとポリマーとの間の相互作用ポテンシャルの強度を互いに異ならせる(工程S15)。工程S15では、フィラーモデル6の小粒子12とポリマーモデル7の粗視化粒子15との間に定義された相互作用ポテンシャルP4の強度を、高分子材料モデル10毎に互いに異ならせている。
本実施形態の工程S15では、高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))毎に、相互作用ポテンシャルP4として定義されているレナードジョーンズポテンシャルのポテンシャルの深さεを互いに異ならせている。上述したように、本実施形態の第1高分子材料は、第2高分子材料よりも物理吸着が弱いものとして区分されるため、第1高分子材料モデル10Aの相互作用ポテンシャルP4(即ち、レナードジョーンズポテンシャル)のポテンシャルの深さεが、第2高分子材料モデルの相互作用ポテンシャルP4のポテンシャルの深さεよりも小さく設定される。これにより、モデル設定工程S1では、フィラーとポリマーとの間の相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデル10をそれぞれ設定することができる。各高分子材料モデル10は、コンピュータ1に記憶される。なお、第1高分子材料モデル10A、及び、第2高分子材料モデルの相互作用ポテンシャルP4のポテンシャルの深さεについては、適宜設定することができ、本実施形態では、以下のように設定される。
第1高分子材料モデルのポテンシャルの深さε:0.5
第2高分子材料モデルのポテンシャルの深さε:2.0
次に、本実施形態のシミュレーション方法は、コンピュータ1が、相互作用ポテンシャルに基づいて、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))の構造緩和を計算する(緩和工程S2)。本実施形態の緩和工程S2では、粗視化分子動力学計算に基づいて、各高分子材料モデル10の構造緩和がそれぞれ計算される。
本実施形態の粗視化分子動力学計算では、例えば、セル4について所定の時間、フィラーモデル6、及び、ポリマーモデル7が古典力学に従うものとして、ニュートンの運動方程式が適用される。そして、各時刻でのフィラーモデル6、及び、ポリマーモデル7の動きが、シミュレーションの単位時間毎に追跡される。構造緩和の計算は、例えば(株)JSOL社製のソフトマテリアル総合シミュレーター(J−OCTA)に含まれるCOGNAC、又は、VSOPを用いて処理することができる。
ところで、従来のシミュレーション方法では、上記論文等と同様に、各高分子材料モデル10の体積、温度、並びに、フィラー及びポリマーを構成する粒子の数(フィラーモデル6の小粒子12、及び、ポリマーモデル7の粗視化粒子15)が一定となる条件(即ち、NVT)の下で、各高分子材料モデル10の構造緩和が計算されていた。なお、各高分子材料モデル10は、体積、温度及び粒子数が同一に設定されている。このため、従来のシミュレーション方法の構造緩和計算では、各高分子材料モデル10において、フィラーに対するポリマーの分布(即ち、フィラーモデル6に対するポリマーモデル7の粗視化粒子15の分布)がそれぞれ変化し、各高分子材料モデル10の内部応力がそれぞれ異なってしまう。このような内部応力がそれぞれ異なる各高分子材料モデル10を用いて変形計算が行われた場合、変形に伴う物理量を精度良く比較できないという問題がある。
本実施形態の緩和工程S2は、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))の圧力、温度、並びに、フィラー及びポリマーを構成する粒子(フィラーモデル6の小粒子12、及び、ポリマーモデル7の粗視化粒子15)の数が互いに同一となる条件の下で、構造緩和が計算される。図10は、緩和工程S2の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の緩和工程S2では、先ず、モデル設定工程S1で設定された高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))から、一つの高分子材料モデル10(以下、単に、「基準高分子材料モデル」ということがある。)が選択される(工程S21)。本実施形態の基準高分子材料モデルとしては、第1高分子材料モデル10Aが選択される場合が例示されるが、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、第2高分子材料モデルが選択されてもよい。
次に、本実施形態の緩和工程S2では、選択された一つの高分子材料モデル(基準高分子材料モデル)10について、従来のシミュレーション方法と同様に、構造緩和が計算される(工程S22)。工程S22では、基準高分子材料モデル(第1高分子材料モデル10A)について、高分子材料モデル10の体積、温度、並びに、フィラー及びポリマーを構成する粒子の数(フィラーモデル6の小粒子12の数、及び、ポリマーモデル7の粗視化粒子15の数)が一定となる条件(即ち、NVTアンサンブル)の下で、構造緩和が計算される。
工程S22では、従来のシミュレーション方法と同様の手順に基づいて、基準高分子材料モデル(本例では、第1高分子材料モデル10A)において、フィラーモデル6、及び、ポリマーモデル7の初期配置が十分に緩和されるまで計算される。これにより、工程S22では、フィラーモデル6、及び、ポリマーモデル7の平衡状態(構造が緩和した状態)を、確実に計算することができる。構造緩和された基準高分子材料モデルは、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の緩和工程S2では、構造緩和が計算されていない他の高分子材料モデル10(本例では、第2高分子材料モデル(図示省略))が選択され(工程S23)、選択された高分子材料モデル10の構造緩和が計算される(工程S24)。
工程S24では、選択された高分子材料モデル10(本例では、第2高分子材料モデル(図示省略))について、基準高分子材料モデル(本例では、第1高分子材料モデル10A)の圧力、温度、並びに、フィラー及びポリマーを構成する粒子の数(フィラーモデル6の小粒子12の数、及び、ポリマーモデル7の粗視化粒子15の数)と同一となる条件の下で、構造緩和が計算される。
上述したように、モデル設定工程S1において、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))は、体積、温度及び粒子数が同一に設定されている。このため、工程S24では、選択された高分子材料モデル10(本例では、第2高分子材料モデル)について、基準高分子材料モデル(本例では、第1高分子材料モデル10A)とは異なる体積に変化させながら構造緩和が計算されることで、基準高分子材料モデルの圧力、温度、並びに、フィラー及びポリマーを構成する粒子の数と同一にしている。
図11は、第1高分子材料モデル10Aの体積に対する第2高分子材料モデル(図示省略)の体積の比率(体積分率)と、時刻との関係を示すグラフである。図12は、第1高分子材料モデルの平衡内部応力及び第2高分子材料モデル(図示省略)の内部応力と、時刻との関係を示すグラフである。本実施形態では、選択された高分子材料モデル10(本例では、第2高分子材料モデル)の相互作用ポテンシャルP4の強度が、基準高分子材料モデル(本例では、第1高分子材料モデル10A)の相互作用ポテンシャルP4の強度に比べて大きい。このような場合、工程S24では、図11に示されるように、選択された高分子材料モデル(第2高分子材料モデル)の体積を、基準高分子材料モデル(第1高分子材料モデル10A)の体積よりも小さくして、構造緩和が計算される。これにより、選択された高分子材料モデル10(第2高分子材料モデル)のフィラーに対するポリマーの分布と、基準高分子材料モデル(第1高分子材料モデル10A)のフィラーに対するポリマーの分布とが異なっていても、図12に示されるように、選択された高分子材料モデル(第2高分子材料モデル(図示省略))の内部応力を、基準高分子材料モデル(第1高分子材料モデル10A)の内部応力に近似させることができる。
工程S24では、選択された高分子材料モデル10(本例では、第2高分子材料モデル(図示省略))において、フィラーモデル6、及び、ポリマーモデル7の初期配置が十分に緩和されるまで計算される。選択された高分子材料モデル10の圧力の制御は、例えば、アンダーソン(Andersen)の圧力制御や、パリネロ・ラーマン(Parrinello-Rahman)等の圧力制御に基づいて実施される。これにより、工程S24では、上記条件に基づいて、フィラーモデル6、及び、ポリマーモデル7の平衡状態(構造が緩和した状態)を、確実に計算することができる。構造緩和された高分子材料モデル10(第2高分子材料モデル)は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の緩和工程S2では、全ての高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))の構造緩和が計算されたか否かが判断される(工程S25)。工程S25において、全ての高分子材料モデル10の構造緩和が計算された場合(工程S25において、「Y」)、次の工程S3(図3に示す)が実施される。他方、工程S25において、全ての高分子材料モデル10の構造緩和が計算されていないと判断された場合(工程S25において、「N」)、工程S23〜工程S25が再度実施される。これにより、緩和工程S2では、各高分子材料モデル10の圧力、温度、並びに、フィラー及びポリマーを構成する粒子の数(フィラーモデル6の小粒子12の数、及び、ポリマーモデル7の粗視化粒子15の数)が互いに同一となる条件の下で、構造緩和を計算することができる。緩和計算後の各高分子材料モデル10の内部応力を近似させることができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、構造緩和後の各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))をそれぞれ変形させて、各高分子材料モデル10の変形に伴う物理量を計算する(工程S3)。
工程S3では、図5に示されるように、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))を、予め定められた方向に引っ張る単軸引張試験が計算される。高分子材料モデル10を引っ張る方向については、適宜選択することができ、本例では、z軸方向に引っ張っている。
高分子材料モデル10の変形計算は、例えば、特許文献(特開2016−81297号公報)に記載された内容の手順に従い、z軸方向において、高分子材料モデル10の一端(図5に示したセル4の一方側の面5a)、及び、高分子材料モデル10の他端(図5に示したセル4の他方側の面5b)が互いに離間するように、高分子材料モデル10の伸長が計算される。高分子材料モデル10の伸長計算は、分子動力学計算に基づいて計算される。
図13(a)は、変形計算前の高分子材料モデル10の一部を示す概念図である。図13(b)は、変形計算後の高分子材料モデル10の一部を示す概念図である。高分子材料モデル10の変形計算前において、セル4の内部の各小領域9には、上述した構造緩和計算により、フィラーモデル6(図示省略)、及び、ポリマーモデル7のいずれかが配置されている。
工程S3では、高分子材料モデル10の伸長計算により、フィラーモデル6、及び、ポリマーモデル7の熱運動が計算される。このような熱運動は、高分子材料モデル10に与えられた歪み、図9に示した上記相互作用ポテンシャルP1〜P4、及び、運動方程式に基づいて計算される。これにより、図13(b)に示されるように、セル4には、フィラーモデル6、ポリマーモデル7、及び、カップリング剤モデル8が配置されない小領域9が形成される。このような小領域9は、高分子材料モデル10に形成された空孔(ボイド)26として定義される。このような空孔26により、高分子材料モデル10の破壊が再現される。
変形条件としては、ポリマーモデル7が配置される領域の少なくとも一部に空孔26を形成することができれば、適宜設定することができる。変形条件の一例としては、高分子材料モデル10に与えられる歪みが0.1〜0.3程度であり、また、1歪み当たりの変形速度V1(図5に示す)が1000〜10000τ程度である。
工程S3では、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))の変形開始から変形終了までの間、分子動力学計算の単位ステップ(MDステップ)毎に、各高分子材料モデル10の変形に伴う物理量が計算される。物理量としては、適宜採用することができる。本実施形態の物理量は、高分子材料モデル10の応力が含まれる。工程S3では、高分子材料モデル10に与えられる歪毎に、高分子材料モデル10の伸長方向の応力成分が計算される。これにより、本実施形態のシミュレーション方法では、各高分子材料モデル10の応力と歪との関係を示す応力−歪曲線を取得することができる。
さらに、本実施形態の物理量としては、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))の空孔26に関するパラメータを含んでいる。空孔26に関するパラメータについては、例えば、高分子材料モデル10の系全体に形成された空孔26の合計体積や、各高分子材料モデル10の体積に対する空孔26の合計体積の割合(以下、単に「空孔の体積分率」ということがある。)など、適宜選択することができる。工程S3では、高分子材料モデル10に与えられる歪毎に、高分子材料モデル10の系全体に形成される空孔26の合計体積が計算される。これにより、本実施形態のシミュレーション方法では、各高分子材料モデル10の空孔26に関するパラメータ(本例では、空孔の体積分率)と、歪との関係を示すグラフを取得することができる。空孔26の体積分率は、上記変形計算によって生じたひずみによる高分子材料モデル10(セル4)の体積変化量に対する空孔26の体積の割合であってもよい。
本実施形態の工程S3では、構造緩和後の内部応力を互いに近似させた各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))の変形が計算されるため、各高分子材料モデル10の物理量の尺度を互いに揃えることができる。従って、本実施形態のシミュレーション方法では、フィラーとポリマーとの相互作用を考慮した各高分子材料モデル10の変形を、物理量の尺度を揃えて計算することができるため、各高分子材料モデル10の変形に伴う物理量を精度良く比較することができる。各高分子材料モデル10の物理量は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))の物理量を比較する(工程S4)。工程S4では、各高分子材料モデル10について、応力及び空孔に関するパラメータがそれぞれ比較される。これにより、本実施形態のシミュレーション方法では、フィラーとポリマーとの相互作用(本例では、物理吸着)が互いに異なる高分子材料について、それらの性能(例えば、破壊特性等)を評価することができるため、高分子材料の開発に役立つ。また、本実施形態のシミュレーション方法では、様々な相互作用を設定して、高分子材料モデル10の物理量を評価するパラメータスタディにより、高分子材料の開発の方向性を提示することが可能となる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、各高分子材料モデル10(本例では、第1高分子材料モデル10A及び第2高分子材料モデル(図示省略))について、物理量が良好な高分子材料モデル10が存在するか否かを判断する(工程S5)。工程S5では、予め定められた閾値に基づいて、各高分子材料モデル10の物理量の良否が判断される。本実施形態では、各高分子材料モデル10の応力が、閾値よりも大きい場合に、耐破壊性能に優れていると判断される。さらに、本実施形態では、各高分子材料モデル10の空孔26に関するパラメータが閾値よりも小さい場合に、耐破壊性能に優れていると判断される。なお、閾値については、例えば、高分子材料に求められる耐破壊性能等に応じて適宜設定することができる。
工程S5において、物理量が良好な高分子材料モデル10が存在すると判断された場合(工程S5において、「Y」)、物理量が良好な高分子材料モデル10に設定された諸条件に基づいて、高分子材料が製造される(工程S6)。他方、工程S5において、物理量が良好な高分子材料モデル10が存在しないと判断された場合(工程S5において、「N」)、フィラーとポリマーとの相互作用(本例では、物理吸着)が変更され(工程S7)、工程S2〜工程S5が再度実施される。これにより、本実施形態のシミュレーション方法は、フィラーとポリマーとの相互作用に基づいて、耐破壊性能に優れる高分子材料を開発することができる。
本実施形態のシミュレーション方法では、図5に示したセル4の内部に、フィラーモデル6及びポリマーモデル7が定義されたが、このような態様に限定されない。例えば、セル4の内部には、ポリマーにフィラーを結合させるためのカップリング剤をモデリングしたカップリング剤モデル(図示省略)がさらに定義されてもよい。
高分子材料モデル10には、隣接するポリマーモデル7を連結するための架橋モデル(図示省略)が定義されてもよい。この場合、予め定められた架橋点に基づいて、ポリマーモデル7の粗視化粒子15、15間を架橋モデルで連結させるのが望ましい。これにより、この実施形態のシミュレーション方法では、架橋された高分子材料モデル10の変形に伴う物理量を、精度よく比較することができる。
さらに、カップリング材料モデルは、例えば、ポリマーモデル7と同様に、複数の粗視化粒子と、隣接する粗視化粒子を結合する結合鎖モデルとで定義することができる。また、少なくとも一部のフィラーモデル6及びポリマーモデル7は、カップリング剤モデルを介して連結される。これにより、この実施形態のシミュレーション方法では、カップリング反応後の高分子材料モデル10について、変形に伴う物理量を精度よく比較することができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図3に示した処理手順に基づいて、フィラーとポリマーとの間の相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデルが設定された(実施例、比較例)。高分子材料モデルとしては、上述した第1高分子材料モデル及び第2高分子材料モデルが設定された。そして、実施例及び比較例では、各高分子材料モデルの構造緩和が計算され、構造緩和後の各高分子材料モデルの変形に伴う物理量が計算された。
実施例の構造緩和を計算する工程は、各高分子材料モデルの圧力、温度、並びに、フィラー及びポリマーを構成する粒子の数が互いに同一となる条件の下で、各高分子材料モデルの構造緩和が計算された。一方、比較例では、特許文献(特開2016−81297号公報)のシミュレーション方法と同様に、各高分子材料モデルの体積、温度、並びに、フィラー及びポリマーを構成する粒子の数が一定となる条件の下で、各高分子材料モデルの構造緩和が計算された。
実施例の変形計算は、下記の摩擦係数及び変形速度に基づいて、z軸方向の引張計算が実施された。比較例の変形計算は、下記の初期摩擦係数及び初期変形速度に基づいて、z軸方向の引張計算が実施された後に、摩擦係数を上記論文の摩擦係数と同一に設定し、かつ、高分子材料モデルの体積を固定して、900τの緩和計算が実施された。実施例及び比較例の共通仕様については、次のとおりである。
セル:
一辺の長さL1:350σ
小領域の一辺の長さL2:1.5σ
フィラーモデル:
体積分率:16.2%
フィラー粒子モデルの個数:1973個
フィラー粒子モデルの直径:28.2σ
1つのフィラー粒子モデルを構成する小粒子:16、589個
ポリマーモデル:
個数:100、000本
1つのポリマーモデルを構成する粗視化粒子:1000個
架橋密度:0.007245(1/σ3
カップリング剤モデル:
1つのカップリング剤モデルを構成する粗視化粒子:1個
1つのフィラー粒子モデルあたりのカップリング剤モデル:80個
変形計算:
歪み:0.15
実施例:
摩擦係数:上記論文の摩擦係数と同一
変形速度:6300τ/歪み
比較例:
初期摩擦係数:上記論文の10倍
初期変形速度:6.3τ/歪み
図12に示したように、実施例では、構造緩和後の各高分子材料モデルの内部応力を互いに近似させることができた。図14は、実施例の応力と歪みとの関係を示すグラフである。図15は、実施例の空孔の体積分率と歪みとの関係を示すグラフである。なお、体積分率は、ひずみ0.15によるセルの体積変形量に対する空孔の体積の割合として計算された。図14に示されるように、第2高分子材料モデルは、第1高分子材料モデルに比べて、応力が大きく計算された。図15に示されるように、第2高分子材料モデルは、第1高分子材料モデルに比べて、5〜10%歪において、空孔の体積分率が小さく計算された。このように、実施例は、各高分子材料モデルの物理量の尺度を互いに揃えることができたため、フィラーとポリマーとの相互作用(物理吸着)を考慮した各高分子材料モデルの変形を計算することができた。従って、実施例は、各高分子材料モデルの変形に伴う物理量を、精度良く比較することができた。
図16は、比較例の各高分子材料モデルの内部応力と時刻との関係を示すグラフである。図17は、比較例の空孔の体積分率と時刻との関係を示すグラフである。図16に示されるように、比較例では、構造緩和後の各高分子材料モデルの内部応力が互いに大きく異なった。従って、比較例は、各高分子材料モデルの物理量の尺度を互いに揃えることができなかった。これにより、比較例は、フィラーとポリマーとの相互作用(物理吸着)を考慮した各高分子材料モデルの変形を計算できなかったため、図17に示されるように、第1高分子材料モデルの物理量(空孔の体積分率)と、第2高分子材料モデルの物理量(空孔の体積分率)とが略同一となった。従って、比較例は、各高分子材料モデルの変形に伴う物理量を、精度良く比較することができなかった。
S1 相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデルを設定する工程
S2 各高分子材料モデルの構造緩和を計算する工程
S3 各高分子材料モデルの変形に伴う物理量を計算する工程

Claims (6)

  1. コンピュータを用いて、フィラーとポリマーとの相互作用が互いに異なる少なくとも2種類の高分子材料の性能を比較するための方法であって、
    前記各高分子材料に基づいて、前記フィラーと前記ポリマーとの間の相互作用ポテンシャルの強度が互いに異なる高分子材料モデルを、前記コンピュータにそれぞれ設定する工程と、
    前記コンピュータが、前記相互作用ポテンシャルに基づいて、前記各高分子材料モデルの構造緩和を計算する工程と、
    前記コンピュータが、構造緩和後の前記各高分子材料モデルをそれぞれ変形させて、前記各高分子材料モデルの前記変形に伴う物理量を計算する工程とを含み、
    前記構造緩和を計算する工程は、前記各高分子材料モデルの圧力、温度、並びに、前記フィラー及び前記ポリマーを構成する粒子の数が互いに同一となる条件の下で、前記構造緩和を計算する、
    高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法。
  2. 前記物理量は、前記各高分子材料モデルの応力を含む請求項1記載の高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法。
  3. 前記物理量は、前記各高分子材料モデルの空孔に関するパラメータを含む請求項1又は2記載の高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法。
  4. 前記空孔に関するパラメータは、前記空孔の合計体積、又は、前記各高分子材料モデルの体積に対する前記空孔の前記合計体積の割合である請求項3記載の高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法。
  5. 前記コンピュータが、前記各高分子材料モデルの前記物理量を比較する工程をさらに含む請求項1乃至4のいずれかに記載の高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法。
  6. 前記相互作用ポテンシャルは、レナードジョーンズポテンシャルであり、
    前記強度は、前記レナードジョーンズポテンシャルのポテンシャルの深さεである請求項1乃至5のいずれかに記載の高分子材料の粗視化分子動力学シミュレーション方法。
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