JP2019104135A - ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型、及びビーズ法発泡合成樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
前記一対の金型であるビーズ法発泡合成樹脂成形用金型は、外部から成形空間内への蒸気の供給、及び成形空間内からの外部への蒸気の排出をするために、金型の内外に連通する蒸気孔が必要である。そのため、金型表面に直交する方向へ多数のベントホール(コアベント取付孔)を形成して、これらのベントホールに、例えば外径が10mmで全長(高さ)が6mmのキャップ状で、多数のスリット又は小穴が形成されたコアベント(ベント金具)を、金型表面(成形面)側が面一となるように取り付けたものが一般的に使用される(例えば、特許文献1の図8(a)及び(b)、並びに図7(a)及び(b)参照)。
また、前記金型の製造コストを低減するために、前記コアベントを用いずに、削り出し及び/又は鋳造により形成された立体形状の前記金型の所要箇所に、前記金型の内外に連通して前記蒸気を通すための、前記金型自体に直接形成したスリット状の蒸気孔を設けたものがある(例えば、特許文献3参照)。
また、特許文献3には、スリット状の蒸気孔について、コアベントのみにより蒸気孔を形成したビーズ法発泡合成樹脂成形用金型と同等の蒸気孔開口率を持たせる場合の検討を行うとともに、蒸気孔開口率を容易に高めることができると記載されているのみである。特許文献3のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型において、例えば図3のスリット状の蒸気孔の開口率は、部分的なものであり金型に形成したスリット状の蒸気孔全体の平均開口率ではない参考例ではあるが、約1.4%である。
特許文献2及び3のようなスリット状の蒸気孔を形成したビーズ法発泡合成樹脂成形用金型では、蒸気孔開口率を高めることに主眼を置いている。
その結果、直接形成スリットにより蒸気孔を設けた金型は、コアベントにより蒸気孔を設けた金型よりも蒸気孔の平均開口率(蒸気孔の成形室側全開口面積÷成形室側全表面積×100)を低くしても融着の悪化や強度の低下は無いことが分かった。
よって、直接形成スリットにより蒸気孔を設けた金型の平均開口率を低く設定することにより、省エネルギー化を図るとともに、スリット状の蒸気孔の数の低減及び/又はスリット状の蒸気孔の幅の縮小により、成形品の表面の美麗性をより高めるという知見を得た。
〔1〕コア型及びキャビティ型からなる一対の金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥して所要形状の発泡合成樹脂の成形品を得るビーズ法発泡合成樹脂成形に用いる前記金型であって、
削り出し及び/又は鋳造により形成された立体形状の前記金型の所要箇所に、前記金型の内外に連通して前記蒸気を通すための、前記金型自体に直接形成したスリット状の蒸気孔を有し、
前記スリット状の蒸気孔の平均開口率は、0.5%以上1.0%以下であることを特徴とするビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
(1)直接形成スリットにより蒸気孔を設けた金型を用いることにより、コアベントにより蒸気孔を設けた金型のようにベントホールを形成する金型の壁面とベントホールに打ち込むコアベントとの間の接触熱抵抗がなく、コアベントのスリット部のように肉厚が薄くないことから蒸気孔の壁面が蒸気に接触する面積が大きくなるので、金型を効率的に加熱できる。
(2)その上、金型の成形空間と反対側の面に、冷却水が滞留する窪みが無いことから、真空放冷中に金型温度が必要以上に低下しないので、金型温度を高めに維持できる。
(3)よって、スリット状の蒸気孔の平均開口率を低くしても融着の悪化や強度の低下は無く、少ない蒸気で金型を必要な温度まで加熱できるので、前記平均開口率を、0.5%以上1.0%以下とすることが可能となり、省エネルギー化を図ることができる。
(4)また、省エネルギー化を図る目的で融点の低い樹脂を使用しても、蒸気孔の壁面近傍に熱が溜まらないので、樹脂の固着が少なくなる。
(5)さらに、スリット状の蒸気孔の数の低減及び/又はスリット状の蒸気孔の幅の縮小により、成形品の表面の美麗性をより高めることができる。
本発明の「スリット状の蒸気孔」とは、金型自体に直接形成した細い隙間状の蒸気孔であるので、金型に形成したベントホールに打ち込むためのコアベント等において、その成形空間側表面等に予め形成されているスリット状の蒸気孔等は含まない。
本発明の実施の形態に係る、直接形成スリットにより蒸気孔を設けた金型であるビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1は、図1の斜視図に示すコア型(凸型)2、並びに、図2Aの斜視図及び図2B平面図に示すキャビティ型(凹型)3からなり、図示しない一般的な成形装置に取り付けて使用される。
ビーズ法発泡合成樹脂成形は、前記成形装置を用いて、コア型2及びキャビティ型3により形成される成形空間に、原料充填口5から熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥した後に離型ピン用開口6から離型ピンを挿入して押し出すことにより、所要形状の発泡合成樹脂の成形品を得るものである。
金型に充填する発泡ビーズとは、発泡性ビーズを予備発泡して得られる予備発泡ビーズをも包含する概念である。
なお、図2A及び図2Bの水抜き駒7は、成形品の底部分に穴を設けるための部品である。
前記発泡合成樹脂が発泡ポリオレフィン系樹脂であると、ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1を用いて、強度や耐熱性に優れるとともに耐油性及び耐薬品性も有している成形品を成形できる。
また、前記発泡合成樹脂が発泡ポリスチレン系樹脂であると、ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1を用いて、断熱性や衝撃吸収性に優れるともに軽量で低コストな成形品を成形できる。
本発明において、立体形状の金型を形成するについて、削り出し及び/又は鋳造というのは、削り出し単体の金型、部分的な削り出し部分を組み立ててなる金型、鋳造単体の金型、部分的な鋳造部分を組み立ててなる金型、削り出し部分と鋳造部分を組み立ててなる金型などを含んだ広い概念を意味している。
また、コア型2及びキャビティ型3には、それらの所要箇所に、内外に連通して蒸気を通すためのスリット状の蒸気孔4,4,…が直接形成される。このようなスリット状の蒸気孔4,4,…の形成は、ツールとしてメタルソーを取り付けたマシニングセンターによる切削加工、又はレーザ加工機若しくはワイヤ放電加工機による除去加工等により行う。
なお、スリット状の蒸気孔4,4,…は、コア型2及びキャビティ型3の所要箇所の外面側及び/又は内面側に形成される。
ここで、コア型2及びキャビティ型3の側面に配置されるスリット状の蒸気孔4,4,…は、金型の開閉方向に沿って設けられているので、成形品を金型中で成形した後、金型を開いて成形品を金型から離型する際などに、成形品表面が蒸気孔4,4,…中に食い込んで形成される蒸気孔痕が金型と擦れ合ってできる成形品表面の引っ掛かり傷が出来にくい。
蒸気孔4,4の間隔Bは、等間隔であっても良く、不等間隔であっても良い。
本発明では、スリット状の蒸気孔4,4,…の平均開口率(蒸気孔4,4,…の成形室側全開口面積÷成形室側全表面積×100(%))を、0.5%以上1.0%以下にしている。
前記平均開口率は、0.6%以上0.9%以下であるのがより好ましく、0.7%以上0.8%以下であるのが最も好ましい。
(1)幅Aが0.35mmで長さが48mmのスリット状の蒸気孔4が3本で、前記平均開口率は0.504%、
(2)幅Aが0.4mmで長さが50mmのスリット状の蒸気孔4が3本で、前記平均開口率は0.6%、
(3)幅Aが0.4mmで長さが50mmのスリット状の蒸気孔4が4本で、前記平均開口率は0.8%、
(4)幅Aが0.3mmで長さが50mmのスリット状の蒸気孔4が6本で、前記平均開口率は0.9%、
(5)幅Aが0.35mmで長さが47mmのスリット状の蒸気孔4が6本で、前記平均開口率は0.987%、
になる。
次に、直接形成スリットにより蒸気孔を設けた金型を用いて製造した発泡合成樹脂の成形品と、コアベントにより蒸気孔を設けた金型を用いて製造した発泡合成樹脂の成形品とを比較した実験結果について説明する。
また、コアベントにより蒸気孔を設けた金型であるビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1’(コア型2’及びキャビティ型3’)の一例は、コアベントを打ち込む前の状態を示す図4の斜視図、図5Aの斜視図及び図5Bの平面図のとおりであり、図1の斜視図、図2Aの斜視図及び図3Bの平面図と同一符号は、同一の部分又は部品を示している、
コアベントにより蒸気孔を設けた金型1’においては、図4のコア型2’のベントホール8,8,…、及び図5Aのキャビティ型3’のベントホール8,8,…に,図6の要部拡大正面図のようにコアベント9,9,…を打ち込むことにより、蒸気孔を形成する。
表1に示す成形条件で、表2に示す実施例1ないし7では直接形成スリットにより蒸気孔を設けた金型を用いて成形品を製造し、表2に示す比較例1ないし7ではコアベントにより蒸気孔を設けた金型を用いて成形品を製造し、実施例Nと比較例N(N=1,2,3,…,7)との成形品サイズを同じにした。
なお、実施例3及び比較例3の成形品は、断熱容器の蓋であり、それ以外の成形品は断熱容器の容器本体である。
すなわち、実施例1ないし7では、蒸気孔(「直接形成スリット」)の平均開口率は、キャビティ型で0.65%から1.00%、コア型で0.59%から0.77%である。
それらに対して比較例1ないし7では、蒸気孔(「コアベント」)の平均開口率は、キャビティ型で1.27%から1.94%、コア型で1.05%から1.90%である。
成形品を破断して融着率を目視で確認した。
それにより、実施例1ないし7及び比較例1ないし7の全てにおいて、成形品に融着の悪化は無かった。
成形品の強度を、TEAC社製TD−250Tデジタル指示計と空圧シリンダーを用いた強度試験機により測定した。
それにより、実施例1ないし7及び比較例1ないし7の全てにおいて、成形品に強度の低下は無かった。
よって、本発明では、スリット状の蒸気孔4,4,…の平均開口率を、0.5%以上1.0%以下にしている。
その上、金型の成形空間と反対側の面に、冷却水が滞留する窪みが無いことから、真空放冷中に金型温度が必要以上に低下しないので、金型温度を高めに維持できる。
また、省エネルギー化を図る目的で融点の低い樹脂を使用しても、蒸気孔の壁面近傍に熱が溜まらないので、樹脂の固着が少なくなる。
さらに、スリット状の蒸気孔の数の低減及び/又はスリット状の蒸気孔の幅の縮小により、成形品の表面の美麗性をより高めることができる。
2,2’ コア型
3,3’ キャビティ型
4 スリット状の蒸気孔
5 原料充填口
6 離型ピン用開口
7 水抜き駒
8 ベントホール
9 コアベント
A スリット状蒸気孔の幅
B 隣接する蒸気孔の間隔
Claims (2)
- コア型及びキャビティ型からなる一対の金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥して所要形状の発泡合成樹脂の成形品を得るビーズ法発泡合成樹脂成形に用いる前記金型であって、
削り出し及び/又は鋳造により形成された立体形状の前記金型の所要箇所に、前記金型の内外に連通して前記蒸気を通すための、前記金型自体に直接形成したスリット状の蒸気孔を有し、
前記スリット状の蒸気孔の平均開口率は、0.5%以上1.0%以下であることを特徴とするビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。 - 請求項1に記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥することにより所要形状の発泡合成樹脂の成形品を製造するビーズ法発泡合成樹脂成形品の製造方法。
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