JP7238291B2 - ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型及びその製造方法、並びにビーズ法発泡性合成樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
前記一対の金型であるビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型は、外部から成形空間内への蒸気の供給、及び成形空間内からの外部への蒸気の排出をするために、金型の内外に連通する蒸気孔が必要となる。
また、ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型として、コアベントを減らすか又は無くして、キャビティ型及びコア型にスリット状の蒸気孔を直接設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。
また、特許文献2における金型のスリット状の蒸気孔は、横型マシニングセンターの主軸に取り付けたメタルソーにより形成される(特許文献2の[請求項1]及び[0018]参照)。
さらに、特許文献2には、前記スリット状の蒸気孔の形成を、「レーザ加工機又はワイヤ放電加工機による除去加工により行うこともできる」という記載がある(特許文献2の[0019]参照)。
その上、例えば横型マシニングセンターの4軸を活用して、金型の4面に関して手作業による面替えをすることなく一気に加工することにより、さらに効率的な加工が可能になる。
したがって、特許文献2のように横型マシニングセンターの水平の主軸に取り付けたメタルソーにより前記スリット状の蒸気孔を形成することにより、加工時間を短縮できる。
よって、特許文献2のような横型マシニングセンターの水平の主軸に取り付けたメタルソーにより金型のスリット状の蒸気孔を効率的に加工する方法においても、加工時間をより短縮するという観点から見ると改良の余地がある。
その上、前記スリット状の蒸気孔の幅を比較的大きくした場合であっても、前記スリット状の蒸気孔の幅が小さい場合よりも前記スリット状の蒸気孔の個数は減るが、依然として前記スリット状の蒸気孔は多数であるので、加工時間をより短縮することが望ましいと言える。
レーザ加工機による除去加工により金型にスリット状の蒸気孔を形成する場合、レーザ加工機のレーザ発振器で出力したレーザ光を集光し、加工ヘッドから所定箇所にレーザ光を照射して対象物を溶融させ、同時に加工ヘッドのレーザと同軸に取り付けたノズルからアシストガスを噴き付け、加工ヘッドを移動させながら対象物の切断を行うレーザ切断の技術を応用することになる。
しかしながら、ビーズ法発泡性合成樹脂成形では、金型により形成される成形空間に加圧した蒸気を吹き込んでビーズ同士を加熱溶融させる必要があるので、その際の圧力に抗する強度及び剛性が金型に求められる。したがって、金型の肉厚には当然制約があり、金型の大きさ等に応じて5~10mm程度の肉厚は必要となる。
また、金型はアルミニウム合金製であるため、レーザ光の反射率が高く、熱伝導率が大きい。
アルミニウム合金鋳物(AC4A)で製作した6.4mmの厚さのキャビティ型及びコア型に対し、0.3mm程度の幅のスリットの加工を目論み、4kWのファイバーレーザ加工機を用い、ピアシング孔を加工する際のアシストガスを酸素、スリットを加工する際のアシストガスを窒素とし、スリットを加工する際のアシストガスである窒素の圧力を、1.5MPaとし、1500mm/minの速度で加工を行った。
このようにスリットが大きく波打っている場合、その凸凹部へ成形の際に樹脂が入り込んで離型時に樹脂が千切れやすくなり、スリットが詰りやすくなる。その上、スリットに詰った樹脂を除去するための掃除用の板材がスリットに入りにくいので掃除がしにくくなる。
このようにドロスが突出している面が成形空間側である場合、ドロスを除去するために、研削加工等の機械加工を行う必要がある。
本願の発明者らは、
(a)レーザ加工機による除去加工でスリット状の蒸気孔を形成するビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型は、所要の強度及び剛性を確保するため、その大きさ等に応じて5~10mm程度の比較的厚い肉厚が必要になる、
(b)ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型は、アルムニウム合金製であるのでレーザ光の反射率が高く熱伝導率が大きい、
(c)スリット状の蒸気孔の幅は、成形品の表面性状の美麗性を高めるために小さくするのが好ましい、
という前記金型の特性に着目した。
このような知見に基づき、本願の発明者らは、ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型に対し、レーザ加工機による除去加工でスリット状の蒸気孔を形成することを実用化するための金型の形状やレーザ加工機による加工方法について具体的に検討を行い、本発明を完成するに至った。
〔1〕キャビティ型及びコア型からなる一対の金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡性ビーズを充填し、前記発泡性ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥して所要形状の発泡性合成樹脂の成形品を得るビーズ法発泡性合成樹脂成形に用いる前記金型であって、
前記金型は、アルミニウム合金製であり、
立体形状の前記金型の所要箇所に、前記金型の内外に連通して前記蒸気を通すための、前記金型自体に直接形成したスリット状の蒸気孔を有し、
前記スリット状の蒸気孔は、レーザ加工機による除去加工で形成されたものであり、
隣接する前記スリット状の蒸気孔の間隔は、10mm~50mmであり、
前記金型に前記スリット状の蒸気孔を設ける箇所における、前記成形空間と反対側の面に、前記スリット状の蒸気孔まわりの肉厚をその他の部分よりも薄肉にする肉盗み部を、一つの前記スリット状の蒸気孔に対して一つ設けてなることを特徴とするビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型。
前記キャビティ型及び前記コア型を削り出す際に形成、
前記キャビティ型及び前記コア型を鋳造する鋳型で形成、又は
前記キャビティ型及び前記コア型を鋳造した後に機械加工で形成
してなる、
前記〔1〕記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型。
前記肉盗み部を設けない箇所の肉厚は、5~10mmである、
前記〔1〕又は〔2〕に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型。
前記金型は、アルミニウム合金製であり、
前記一対の金型を、削り出し及び/又は鋳造により形成する金型形成工程と、
前記一対の金型に対して、スリット状の蒸気孔をレーザ加工機による除去加工で形成する蒸気孔形成工程と、
を含み、
隣接する前記スリット状の蒸気孔の間隔は、10mm~50mmであり、
前記金型形成工程で前記一対の金型を形成する際に、前記金型の成形空間と反対側の面に、前記スリット状の蒸気孔を形成する箇所及びそのまわりの肉厚を、その他の部分よりも薄肉にする肉盗み部を形成、又は、
前記金型形成工程で前記一対の金型を形成した後に機械加工で前記肉盗み部を形成し、
前記肉盗み部は、一つの前記スリット状の蒸気孔に対して一つ設けられ、
前記蒸気孔形成工程では、
前記レーザ加工機がピアシング孔を除去加工で開けた後に、前記レーザ加工機が前記スリット状の蒸気孔を除去加工する際のアシストガスを空気とし、
前記レーザ加工機の加工ヘッドにおける、レーザと同軸に取り付けたノズルから噴出する前記空気の圧力を、0.5~2.0MPaとしてなることを特徴とするビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型の製造方法。
前記〔4〕に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型の製造方法。
前記〔4〕又は〔5〕に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型の製造方法。
前記〔4〕~〔6〕の何れか1項に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型の製造方法。
前記金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡性ビーズを充填し、前記発泡性ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥することにより所要形状の発泡性合成樹脂の成形品を製造するビーズ法発泡性合成樹脂成形品の製造方法。
(1)スリット状の蒸気孔(スリット)まわりの肉厚をその他の部分よりも薄肉にする肉盗み部を、一つのスリットに対して一つ設けることにより、レーザ加工機による除去加工でスリットを設ける箇所の肉厚を比較的薄くしていることから、母材に熱が逃げにくくなり、レーザ光の入射面の温度が低くなる傾向を防止できると共に、レーザ光の焦点位置より深い箇所が溶融しにくくならない。
(2)したがって、肉厚が比較的厚い金型にレーザ加工機による除去加工でスリットを形成する場合のようにレーザ光の入射面の反対面側のスリットの形状が大きく波打つことがなくなる。よって、成形の際にスリットの凸凹部へ樹脂が入り込んで離型時に樹脂が千切れやすくなってしまうという欠点が生じ難く、その結果スリットが詰りにくく、掃除用の板材をスリットの中に侵入させることによりスリットの掃除を容易に行うことが可能となる。
(3)また、肉厚が比較的厚い金型にレーザ加工機による除去加工でスリットを形成する場合のようにレーザ光の入射面の反対面側に近い範囲の条痕が粗くならず、レーザ光の入射面の反対面に付着するドロスを低減できる。よって、金型の成形空間側に付着したドロスを除去する機械加工の作業時間を大幅に短縮できる。
(4)一つのスリットに対して一つの肉盗み部を設けることによりスリットを設ける箇所の肉厚が薄くなることから、レーザ加工機による除去加工で金型にスリットを形成する際の加工速度を速くできるので、加工時間を短縮できる。
(5)スリットの近傍にのみ肉盗み部があるので金型の強度低下が少なく、肉盗み部を設けることにより金型の軽量化もできるので金型の取り扱いが容易になる。
(6)一つのスリットに対して一つの肉盗み部を設けることにより金型の熱容量が小さくなることから、ビーズ法発泡性合成樹脂成形における加熱冷却時間を短縮でき、それにより成形時間を短縮できるので生産性を向上できるとともに、省エネルギー化を図ることができる。
(1)スリット状の蒸気孔を除去加工する際のアシストガスが空気であるので、前記アシストガスを窒素とした場合と比べて、体積比で空気に約20%含まれる酸素による酸化反応熱が、アシストガスを100%酸素にした場合のように急激に作用しない範囲で、アルミニウム合金を溶融させるために効果的に作用する。
(2)したがって、スリット内面の条痕が細かくなり、ドラグラインの波打ちも小さく、レーザ光の入射面の反対面に付着するドロスの量も大幅に少なくなる。
(3)ピアシング孔を除去加工する際のアシストガスを空気にすることにより、アシストガスを100%酸素にした場合のように酸化反応熱が急激に作用しないため、ピアシング孔の径が適正な範囲に収まる。
(4)アシストガスを空気にすることにより、コンプレッサーを供給源にできるため、他のガスと比べてランニングコストを大幅に低減できるとともに、圧力を適正化することにより、一層ランニングコストを低減できる。
(5)スリット状の蒸気孔を除去加工する際のアシストガスを空気とし、アシストガスである空気の圧力を0.8~1.2MPaとすることにより、レーザ光の入射面の反対面側のスリットの凸凹をより少なくできる。
ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型は、キャビティ型(凹型)及びコア型(凸型)からなる一対の金型であるが、以下に示す図1ないし図6の例ではキャビティ型を代表させて説明する。
本発明の実施の形態に係るビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型1は、アルミニウム合金製であり、図1の斜視図に示すキャビティ型(凹型)2、及び図示しないコア型(凸型)からなり、削り出し及び/又は鋳造により立体形状に形成されたものであり、図示しない一般的な成形装置に取り付けて使用される。
本発明において、立体形状の金型を形成する「削り出し及び/又は鋳造」は、削り出し単体の金型、部分的な削り出し部分を組み立ててなる金型、鋳造単体の金型、部分的な鋳造部分を組み立ててなる金型、削り出し部分と鋳造部分を組み立ててなる金型等を含む広い概念を意味する。
ビーズ法発泡性合成樹脂成形は、ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型1を取り付けた成形装置を用いて、金型1により形成される成形空間に、原料充填口6,6から熱可塑性樹脂の発泡性ビーズを充填し、前記発泡性ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥した後に離型ピン用開口7,7,…から離型ピンを挿入して押し出すことにより、所要形状の発泡性合成樹脂の成形品を得るものである。
金型に充填する発泡性ビーズとは、発泡性ビーズを予備発泡して得られる予備発泡ビーズをも包含する概念である。
前記発泡性合成樹脂が発泡性ポリオレフィン系樹脂であると、ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型1を用いて、強度や耐熱性に優れるとともに耐油性及び耐薬品性も有している成形品を成形できる。
また、前記発泡性合成樹脂が発泡性ポリスチレン系樹脂であると、ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型1を用いて、断熱性や衝撃吸収性に優れるともに軽量で低コストな成形品を成形できる。
図1及び図2に示すように、キャビティ型2には、それらの所要箇所に、内外に連通して蒸気を通すための蒸気孔A,A,…が、レーザ加工機による除去加工でスリット状に直接形成される。なお、図示しないコア型にも、同様のスリット状の蒸気孔A,A,…を、レーザ加工機による除去加工で直接形成する。
また、ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型1にスリットA,A,…を設ける箇所における、成形空間(成形空間側の面C)と反対側の面Dには、スリットA,A,…まわりの肉厚をその他の部分よりも薄肉にする肉盗み部B,B,…を設ける。
肉盗み部B,B,…は、
(a)ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型1をマシニングセンタ等で削り出す際に形成、
(b)ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型1を鋳造する鋳型で形成、及び
(c)ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型1を鋳造した後にマシニングセンタ等による機械加工で形成、
の何れかで形成する。
ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型1の製造方法は、一対の金型(キャビティ型及びコア型)を、削り出し及び/又は鋳造により形成する金型形成工程と、前記一対の金型に対して、スリット状の蒸気孔A,A,…をレーザ加工機による除去加工で形成する蒸気孔形成工程とを含む。
前記蒸気孔形成工程では、先ずピアシング孔を開け、加工ヘッドを移動させながらスリット状の蒸気孔A,A,…を形成する。
レーザ加工機がピアシング孔を加工する際のアシストガスは、例えば酸素又は空気とし、レーザ加工機がスリットを加工する際のアシストガスは、例えば窒素又は空気とする。
ファイバーレーザは、レーザ媒質を細いファイバー状にし、この中に励起用の半導体レーザを導光することにより発振する、ファイバーそのものを増幅器にしたレーザ発振器であり、発振効率が高く、ビーム品質に優れている。
ファイバーレーザは、波長が短いため(1.06μm)反射率が低くなるとともに、スポット径を小さく絞ることができるため高エネルギー密度が得られるので、アルミニウム合金等の高反射材料へのスリットAの加工に適しており、スリットAの幅をより小さく加工できる。
ファイバーレーザを使用することにより、レーザ発振器用ガスは不要となり、アシストガスや電気代を、CO2レーザと比較して約70%~80%削減できる。
また、二次元レーザ加工機よりも三次元レーザ加工機を使用するのが好ましい。三次元レーザ加工機を使用することにより、金型1を一度機械にセットすれば、立体形状の金型1の製品に接する面全てにスリットA,A,…を加工できるため、加工時間をより短縮できるためである。
なお、本実施の形態のように、本体3と底板4を組み付けてキャビティ型2を形成する場合には、底板4に対しては、成形空間側からレーザ光を照射することによりスリット状の蒸気孔A,A,…を形成できる。
次に、スリット状の蒸気孔A、及び肉盗み部Bの寸法等の諸元について説明する。
図3の要部拡大側面図、図4の要部拡大部分断面斜視図、及び図5の要部拡大部分断面斜視図に示す、スリットAの幅Eは、0.1mm~1.0mmとするのが好ましい。
肉盗み部Bの幅Fは、肉盗み部Bがある側からレーザ光を照射する場合は、前記加工ヘッドとの干渉を避けるために10mm以上とするのが好ましい。
肉盗み部Bの幅Fは、コア型のように肉盗み部Bがない成形空間側からレーザ光を照射する場合は、前記加工ヘッドとの干渉を避ける必要がないので、10mm未満としてもよく、例えば2~5mmとしてもよい。
また、隣接するスリットA,Aの間隔Kは、10mm~50mmとするのが好ましい。
さらに、図6の縦断面側面図に示す、肉盗み部Bを設けた箇所の肉厚Gは、3mm~6mm、より好ましくは3~4mmとし、肉盗み部Bを設けない箇所の肉厚Hは、5mm~10mmとするのが好ましい。
ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型1にスリットAを設ける箇所における、成形空間(成形空間側の面C)と反対側の面Dに、スリットAまわりの肉厚Gをその他の部分よりも薄肉にする肉盗み部Bを設けることにより、レーザ加工機による除去加工でスリットAを設ける箇所の肉厚Gを比較的薄くしている。
それにより、母材に熱が逃げにくくなり、レーザ光の入射面の温度が低くならず、レーザ光の焦点位置より深い箇所が溶融しにくくならない。
したがって、肉厚が比較的厚い金型にレーザ加工機による除去加工でスリットを形成する場合のようにレーザ光の入射面の反対面側のスリットの形状が大きく波打つことがなくなる。よって、成形の際にスリットの凸凹部へ樹脂が入り込んで離型時に樹脂が千切れやすくなってしまうという欠点が生じ難く、その結果スリットが詰りにくく、掃除用の板材をスリットの中に侵入させることによりスリットの掃除を容易に行うことが可能となる。
その上、肉厚が比較的厚い金型にレーザ加工機による除去加工でスリットを形成する場合のようにレーザ光の入射面の反対面側に近い範囲の条痕が粗くならず、レーザ光の入射面の反対面に付着するドロスを低減できる。よって、金型の成形空間側に付着したドロスを除去する機械加工の作業時間を大幅に短縮できる。
さらに、スリットAの近傍にのみ肉盗み部Bがあるので、金型1の強度低下が少ない。
さらにまた、肉盗み部B,B,…を設けることにより金型1の軽量化もできるので、金型の取り扱いが容易になる。
また、肉盗み部B,B,…を設けることにより金型1の熱容量が小さくなることから、ビーズ法発泡性合成樹脂成形における加熱冷却時間を短縮でき、それにより成形時間を短縮できるので生産性を向上できるとともに、省エネルギー化を図ることができる。
図11に示すスリット内面の拡大写真は、前記のとおり、アルミニウム合金鋳物(AC4A)で製作した6.4mmの厚さの金型に対し、4kWのファイバーレーザ加工機を用い、スリットを加工する際のアシストガスを窒素とし、レーザと同軸に取り付けたノズルから噴出する窒素の圧力を1.5MPaとし、1500mm/minの速度で加工を行った場合のものである。
それに対して、図7に示すスリット内面の拡大写真は、アルミニウム合金鋳物(AC4A)で製作した8.0mmの厚さの金型に対し、3kWのファイバーレーザ加工機を用い、スリットを加工する際のアシストガスを空気とし、レーザと同軸に取り付けたノズルから噴出する空気の圧力を1.5MPaとし、800mm/minの速度で加工を行った場合のものである。
その理由は、図7では8.0mmと比較的厚みのあるアルミニウム合金製の金型に対して、前記アシストガスが空気であるので、前記アシストガスを窒素とした場合と比べて、体積比で空気に約20%含まれる酸素による酸化反応熱が、アシストガスを100%酸素にした場合のように急激に作用しない範囲で、アルミニウム合金を溶融させるために効果的に作用したためであると考えられる。
例えば、圧力1.5MPaで比較すると、ピアシング孔の径は、アシストガスが酸素である場合は約0.8mmであったが、アシストガスが空気である場合は約0.5mmであった。
図8に示すスリット内面の拡大写真は、アルミニウム合金鋳物(AC4A)で製作した8.7mmの厚さの金型に形成する肉盗み部の深さを変えることにより、スリット状の蒸気孔まわりの肉厚を変えた例を示している。スリット状の蒸気孔まわりの肉厚は、図8(a)が7.2mm、図8(b)が6.1mm、図8(c)が3.9mmである。
図8(a)ないし図8(c)において、金型の成形空間側、すなわち肉盗み部が無い側をレーザ光の入射面としており、3kWのファイバーレーザ加工機を用い、スリットを加工する際のアシストガスを空気とし、レーザと同軸に取り付けたノズルから噴出する空気の圧力を1.5MPaとし、800mm/minの速度で加工を行った結果である。
また、図8(a)ないし図8(c)では、加工速度は同じであるが、金型の肉厚が薄いほど加工速度を速くできる。
(a)スリット状の蒸気孔まわりの肉厚が薄いほどスリット状の蒸気孔の加工速度を速くできるが、所要の金型の強度を確保できる肉厚は必要であること、
(b)ドラグラインの波打ちを小さくしながらドロスの付着をなるべく少なくしたいこと、
から、
ビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型のスリット状の蒸気孔まわりの肉厚は、前記のとおり、3mm~6mm、より好ましくは3~4mmとするのが好適である。
図9に示すドロス除去後であるレーザ光の入射面の反対面側のスリットの拡大写真において、図9(a)は、図10(b)に相当する。すなわち図9(a)は、アルミニウム合金鋳物(AC4A)製の金型の肉厚が6.4mmで、スリットを加工する際のアシストガスが窒素であり、その圧力が1.5MPaである場合であり、図9(b)ないし(d)との比較用に示したものである。
図9(b)ないし(d)は、アルミニウム合金鋳物(AC4A)製の金型の肉厚が8.0mmで、スリットを加工する際のアシストガスが空気である場合を示しており、前記空気の圧力は、図9(b)が1.0MPa、図9(c)が1.5MPa、図9(d)が2.0MPaである。
また、前記アシストガスが窒素の場合よりも前記アシストガスが空気の場合の方がドロスの量が少なかった。
すなわち、レーザ光の入射面の反対面側のスリットの幅は、図9(a)が0.35~0.46mmであるのに対して、図9(b)は約0.27mm、図9(c)は0.27~0.44mm、図9(d)は0.24~0.37mmであった。
また、図9(b)のアシストガスが空気で圧力が1.0MPaである場合は、レーザ光の入射面の反対面側のスリットが綺麗で凸凹が少ないことが分かる。
すなわち、レーザ加工機がピアシング孔を除去加工で開けた後に、スリット状の蒸気孔を除去加工する際のアシストガスを空気とし、実用的な範囲として、アシストガスである空気の圧力は、0.5~2.0MPaであるのが好ましい。そして、レーザ光の入射面の反対面側のスリットの凸凹をより少なくするために、前記空気の圧力を、0.8~1.2MPaとするのが一層好ましい。
特許文献1のような立型マシニングセンターによる溝切り加工で金型1にスリットAを形成する方法、及び特許文献2のようなメタルソーによる切削加工で金型1にスリットAを形成する方法では、スリットAの幅Eを変える場合には、スリット幅に応じて工具やメタルソーを交換する必要が有るのに対し、レーザ加工機による除去加工で金型1にスリットAを形成する方法によれば、焦点距離や焦点位置等を調整することでスリットAの幅Eを容易に変更できる。
その上、メタルソーによる切削加工で金型1にスリットAを形成する場合、メタルソーを保持する回転軸にある程度の太さが必要で有ることから、切り込める距離に制限があるので、干渉を避けるために加工前の計算・シミュレーションをする必要があり、その時間が嵩むのに対し、レーザ加工機による除去加工で金型1にスリットAを形成する場合は、前記加工前の計算・シミュレーションに時間が掛からない。
その上、メタルソーによる切削加工で金型1にスリットAを形成する場合は、直線状のスリットAしか形成できなかったのに対し、レーザ加工機による除去加工で金型1にスリットAを形成する場合は、成形品に模様を付与する等の必要に応じて、曲線状やジグザグ状のスリットAを形成できる。
その上さらに、レーザ加工機による除去加工で金型1にスリットAを形成することにより、金型1にシリアル番号等を設ける必要がある場合、そのレーザ加工機で金型1にシリアル番号等をマーキングできる。
2 キャビティ型
3 本体
3A 螺孔
4 底板
4A 通孔
5 ボルト
6 原料充填口
7 離型ピン用開口
A スリット状の蒸気孔(スリット)
B 肉盗み部
C 成形空間側の面
D 成形空間と反対側の面
E スリット状の蒸気孔の幅
F 肉盗み部の幅
G 肉盗み部を設けた箇所の肉厚
H 肉盗み部を設けない箇所の肉厚
I スリット状の蒸気孔の長さ
J 肉盗み部の長さ
K 隣接するスリット状の蒸気孔の間隔
Claims (8)
- キャビティ型及びコア型からなる一対の金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡性ビーズを充填し、前記発泡性ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥して所要形状の発泡性合成樹脂の成形品を得るビーズ法発泡性合成樹脂成形に用いる前記金型であって、
前記金型は、アルミニウム合金製であり、
立体形状の前記金型の所要箇所に、前記金型の内外に連通して前記蒸気を通すための、前記金型自体に直接形成したスリット状の蒸気孔を有し、
前記スリット状の蒸気孔は、レーザ加工機による除去加工で形成されたものであり、
隣接する前記スリット状の蒸気孔の間隔は、10mm~50mmであり、
前記金型に前記スリット状の蒸気孔を設ける箇所における、前記成形空間と反対側の面に、前記スリット状の蒸気孔まわりの肉厚をその他の部分よりも薄肉にする肉盗み部を、一つの前記スリット状の蒸気孔に対して一つ設けてなることを特徴とするビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型。
- 前記肉盗み部は、
前記キャビティ型及び前記コア型を削り出す際に形成、
前記キャビティ型及び前記コア型を鋳造する鋳型で形成、又は
前記キャビティ型及び前記コア型を鋳造した後に機械加工で形成
してなる、
請求項1に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型。 - 前記肉盗み部を設けた箇所の肉厚は、3~6mmであり、
前記肉盗み部を設けない箇所の肉厚は、5~10mmである、
請求項1又は2に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型。 - キャビティ型及びコア型からなる一対の金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡性ビーズを充填し、前記発泡性ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥して所要形状の発泡性合成樹脂の成形品を得るビーズ法発泡性合成樹脂成形に用いる前記金型の製造方法であって、
前記金型は、アルミニウム合金製であり、
前記一対の金型を、削り出し及び/又は鋳造により形成する金型形成工程と、
前記一対の金型に対して、スリット状の蒸気孔をレーザ加工機による除去加工で形成する蒸気孔形成工程と、
を含み、
隣接する前記スリット状の蒸気孔の間隔は、10mm~50mmであり、
前記金型形成工程で前記一対の金型を形成する際に、前記金型の成形空間と反対側の面に、前記スリット状の蒸気孔を形成する箇所及びそのまわりの肉厚を、その他の部分よりも薄肉にする肉盗み部を形成、又は、
前記金型形成工程で前記一対の金型を形成した後に機械加工で前記肉盗み部を形成し、
前記肉盗み部は、一つの前記スリット状の蒸気孔に対して一つ設けられ、
前記蒸気孔形成工程では、
前記レーザ加工機がピアシング孔を除去加工で開けた後に、前記レーザ加工機が前記スリット状の蒸気孔を除去加工する際のアシストガスを空気とし、
前記レーザ加工機の加工ヘッドにおける、レーザと同軸に取り付けたノズルから噴出する前記空気の圧力を、0.5~2.0MPaとしてなることを特徴とするビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型の製造方法。
- 前記ピアシング孔を除去加工する際のアシストガスを空気としてなる、
請求項4に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型の製造方法。 - 前記金型における前記スリット状の蒸気孔を形成する箇所の肉厚は、3~6mmである、
請求項4又は5に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型の製造方法。 - 前記レーザ加工機は、ファイバーレーザ加工機である、
請求項4~6の何れか1項に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型の製造方法。 - 請求項1~3の何れか1項に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型、又は、請求項4~7の何れか1項に記載のビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型の製造方法で製造されたビーズ法発泡性合成樹脂成形用金型を用い、
前記金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡性ビーズを充填し、前記発泡性ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥することにより所要形状の発泡性合成樹脂の成形品を製造するビーズ法発泡性合成樹脂成形品の製造方法。
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