JP2000141464A - 冷却速度に部分的な差のある中空成形品のブロー成形方法及び成形装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インサート物を一体化させるようにブロー成
形する場合に、中空成形品を均一にかつ短時間で強制冷
却することができるブロー成形法を提供する。 【解決手段】 予め成形したシートを金型内にインサー
トし、パリソンのブロー成形時に一体化さる成形法にお
いて、該シートと接着した部分の成形品の内面のみをミ
スト噴霧で冷却させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂製中空成形品
をブロー成形する方法と装置に関し、詳しくは、例えば
インサート物を有するようにしてブロー成形される成形
品を効率よく製造するのに用いられる方法と、装置に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】樹脂製中空成形品のブロー成形法におい
ては、成形品を金型から取り出す際にこの成形品が変形
を起こすのを防止するため、金型内で該成形品を十分に
冷却することが求められ、一般にこの冷却は、成形品の
内側に冷却媒体を供給して強制冷却する方式で行われて
おり、このブロー成形品の強制冷却に関連する先行技術
としては、例えば、冷却媒体を噴出させながら成形金型
の型開きを開始する方式（特開平３−９８３１号公
報）、成形中のパリソン内部に冷却ガスを噴出するガス
導入管とその冷却ガスを排出するガス排出管とを金型に
取付けた方式（特開平З−２２２７１４号公報）、及び
パリソン内部に水を混合した高圧空気流を金型下方から
吹込んでパリソンを膨張させながら内面を冷却する方式
（特公平６−３６５号公報）等が知られている。

【０００３】しかし、これらの従来の強制冷却法にはそ
れぞれ、均質な製品が得られないとか、水滴が溜ってし
まうなどの欠点がある。そこで本発明者等は鋭意研究を
進めて、成形金型の内面にパリソンを倣わせるように賦
形する成形工程に続いて行う冷却工程において、水の微
小粒子であるミストを所定の条件の下でパリソン内部に
噴霧する方法が有効であることを見出し、水ミスト噴霧
方式の冷却工程を行うブロー成形法を既に提案した。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、水ミスト噴
霧を行うことによってパリソンを迅速に冷却する方法で
あっても、実際の工業的な実施場面では成形条件は常に
同じでない。

【０００５】例えば、既成形物等の他の物体をブロー成
形時に中空成形品と一体化させるためにインサートして
ブロー成形を行う場合があるが、この場合には、該イン
サート物の比熱が中空成形品と異なり、強制冷却時の成
形品の一部領域の伝熱性に大きな違いのあることがしば
しばある。

【０００６】このため、中空成形品の冷却の大きな部分
を占める金型面からの吸熱に対してこのインサート物が
断熱材として作用することになって、該成形品の均一な
冷却を損なう結果となり、不均一な冷却が行われ、製品
の不均一性が問題となる場合を招く虞れがある。

【０００７】本発明は、このような問題に鑑み、インサ
ート物等の付加物を組み合わせてブロー成形する場合
に、中空成形品を均一にかつ短時間で強制冷却すること
が可能なブロー成形品の冷却方法及びこれに使用するブ
ロー成形装置を提供することを目的としてなされたもの
である。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記の目的は、本願の各
請求項に記載したブロー成形方法及び装置の発明により
達成される。

【０００９】請求項１の冷却速度に部分的な差のある中
空成形品のブロー成形方法の発明は、金型内に取り込ん
だパリソンをブローエアの吹込みにより金型内面と密着
させて賦形し、かつ該金型を通じて外面から冷却するこ
とで樹脂製中空成形品を成形する方法において、前記中
空成形品の内面を、密着した金型を通した冷却速度の高
い領域とこの冷却速度の遅い領域とに区画して、当該冷
却速度の遅い領域の表面にのみ、水粒子のミストを噴霧
して内面から冷却することを特徴とする。

【００１０】上記において、噴霧するミストの大きさ
は、中空成形品の内面に水滴跡が残らないようにするた
めに、２００μｍ以下、好ましくは２０μｍ以下、より
好ましくは１０μｍ以下とすることがよい。

【００１１】また、冷却速度の遅い領域に選択的にミス
トを噴霧するには、後述する実施形態で説明するよう
に、ミスト噴霧方向を特定できるミストノズルを用いる
ことができる。

【００１２】この発明によれば、金型を通しての冷却性
に部分的に大きな差がある成形品について、冷却効果が
劣っている部分に選択的にミストを噴霧できるので、噴
霧ミストの蒸発による気化潜熱作用で該領域部分の冷却
を促進でき、全体の平均的な冷却を実現することができ
る。したがって、中空成形品を均一にかつ迅速に強制冷
却して効率のよいブロー成形サイクルを実施できる。

【００１３】請求項２の方法の発明は、上記発明におい
て、ミスト噴霧と同時に、又はミスト噴霧に続いて、成
形品内部にエアを供給すると共に外気に排出するエア給
排を行うことを特徴とする。

【００１４】この発明によれば、温度が高くなったエア
を速やかに外部に排気して冷却を促進することができ
る。

【００１５】請求項３の発明は、上記請求項２の発明に
おいて、エア給排（循環）は、成形品を金型内面に密着
させることができるように予め定めた所定圧力の状態に
内部圧を保持しながら行うことを特徴とする。

【００１６】この発明によれば、成形品を金型に密着さ
せた状態を保持できるので、該金型を通じた冷却を良好
に維持できる。

【００１７】請求項４の発明は、上記の各発明におい
て、ミストの噴霧は間欠的に繰り返して行うことを特徴
とする。

【００１８】この発明によれば、成形品の温度状態に応
じてミストの噴霧量を次第に少なくして製品内面に水滴
跡を残さないようにすることができる。

【００１９】請求項５の発明は、上記の各発明におい
て、冷却速度の低い領域は、ブローエアの吹込みで賦形
されるパリソンと一体化するように予め金型内にインサ
ートされた伝熱性の低い付加物の一体化により形成さ
れ、ミストはこの付加物と一体化する領域の中空成形品
の内面に対して噴霧されるものであることを特徴とす
る。上記において、インサート物は、予め成形したシー
ト、ブロック等をブロー成形時に予め金型内に挿入・保
持させておき、ブロー成形によって一体化させるものを
いい、このインサート物をブロー成形時に一体化させる
場合が上記した中空成形品に冷却性の異なる領域が生ず
る代表的な例である。なお、冷却性の異なる領域が生ず
る場合はこのインサート物を用いる場合に限定されるも
のではなく、例えば、パリソンが３層に形成され、中間
層に発泡層を設けたものなどを挙げることができる。

【００２０】この発明によれば、インサート物等を用い
る場合にも、中空成形品の全体を均一に冷却することが
実現される。

【００２１】請求項６の発明は、上記請求項５の発明に
おいて、中空成形品が扁平な直方体形状をなし、かつこ
の中空成形品に一体化される付加物が、該直方体形状を
なす中空成形品の広い面積を呈する二面の一方の外面に
一体化された弾性を有する表皮材であることを特徴とす
る。

【００２２】この発明によれば、例えば競技場等の長尺
のベンチの上に一人一人のための座席を形成する椅子を
容易に製作することができる。

【００２３】請求項７の中空成形品のブロー成形装置の
発明は、パリソンを取り込むブロー成形のための金型
と、該パリソンを金型内面と密着させて賦形するように
該金型内のパリソン内部にブローエアを吹込むエア吹き
込み手段と、賦形された成形品の内面うちで該金型を通
した外面からの冷却速度の高い領域に比べて冷却速度の
遅い領域の内面に対し水粒子のミストを噴霧するミスト
噴霧手段とを備えたことを特徴とする。

【００２４】上記のエア吹き込み手段は、例えばエアノ
ズルとして設けられ、またミスト噴霧手段は例えばミス
トノズルとして設けることができる。これらの各ノズル
は、一体化して金型の同じ位置に設けることもできる
し、それぞれ別の位置に設けることもできる。

【００２５】この発明の成形装置は、上記した各方法発
明を実施するのに用いることができる。

【００２６】請求項８の発明は、上記の成形装置の発明
において、ブロー成形のための金型は、ブローエアの吹
込みで賦形されるパリソンと一体化するように予め該金
型内にインサートされた伝熱性の低い付加物を保持する
ように設けられていることを特徴とする。

【００２７】上記の付加物（インサート物等）の保持部
は、例えば金型に凹部として設けることができ、この発
明によれば、インサート物を用いる場合にも中空成形品
の全体を均一に冷却することが実現される。

【００２８】請求項９の発明は、上記の請求項８の発明
において、中空成形品は扁平な直方体形状をなし、付加
物は該直方体形状をなす中空成形品の広い面積を呈する
二面の一方の外面に一体化された弾性を有する表皮材で
あることを特徴とする。

【００２９】この発明によれば、例えば競技場等のベン
チ型の座席の上に一人一人のための座席を形成する椅子
を容易に製作することができる。

【００３０】請求項１０の発明は、上記の請求項９の発
明において、直方体形状をなす中空成形品の広い面積を
呈する二面の一方の弾性を有する表皮材が外面に一体化
された面に対して、ミストを噴霧するミスト噴霧手段
は、表皮材を保持する面とは異なる他の面が密着する金
型内面から突き出されたミストノズルであることを特徴
とする。

【００３１】この発明によれば、冷却速度の遅い領域部
分に適した位置からミストを噴霧することができる。

【００３２】請求項１１の発明は、上記の各成形装置の
発明において、ミストの噴霧と同時に又はミストの噴霧
に続いて、成形品内部にエアを供給しかつ外気に排出す
るエア給排を行うためのエア給排手段を有することを特
徴とする。

【００３３】この発明によれば、吹き込まれた後昇温し
たエアを速やかに外気に排出することで、効率的に強制
冷却を実施することができる。

【００３４】請求項１２の発明は、上記の請求項１１の
発明において、エア給排手段は、成形品を金型内面に密
着させることができる予め定めた所定圧力の状態に内部
圧を保持する圧力保持手段を有することを特徴とする。

【００３５】上記に於いて圧力保持手段は、例えば排気
系に設けたリリーフ弁により構成することができる。

【００３６】この発明によれば、強制冷却時に成形品を
金型に良好に密着させることができて、該金型を通じた
冷却効果を良好に得ることができる。

【００３７】請求項１３の発明は、上記の各成形装置の
発明において、ミストの噴霧を間欠的に繰り返して行う
制御手段を有することを特徴とする。

【００３８】この発明によれば、ミスト噴霧量の経時的
な低減を行うことができ、また成形品内面の水滴跡の発
生を良好に防止することができる。

【００３９】

【発明の実施の形態】実施形態１ この実施形態１は、図１〜図６により説明され、長尺の
ベンチの上に一人用の座席を形成する椅子をブロー成形
する装置１０を説明するものである。

【００４０】このブロー成形装置１０は、図１の紙面に
垂直な方向に一対をなす凹形空所を有する金型片の組合
せからなる金型１１によって構成されており、図１は、
ブローダイヘッド（図示せず）から金型１１に上方から
下方向に供給される図示しないパリソン（成形品の符号
を「１」とする）を金型片の対が閉型して閉じ込めた状
態を縦断面図で示している。なおこの金型１１には、冷
媒流通流路が型の肉厚内に形成されて冷却装置を構成し
ているが、図が煩雑となるため省略した。また１１１
は、直方体状の金型内のキャビティの一面に形成された
凹部であり、椅子表面の弾性シートをなす表皮材１８
（図２，図３参照）をパリソンの閉じ込め前に予め挿入
して保持させるためのものである。

【００４１】１２はエア給排手段としてのノズル装置
（以下「エア給排ノズル」という）であり、金型１１の
下方から該金型１１に閉じ込められたパリソンの下端か
ら嵌挿されるように設けられ、ブローエア及び冷却用エ
アを吹込むためのエア供給路１３と、成形品内のエアを
排気するエア排気路１４とを有し、これらは隔壁１２１
により区画されている。

【００４２】上記した各エア給排ノズル１２のエア供給
路１３は、図示しないエアポンプ（図示せず）に接続さ
れて、ブローエア及び冷却用エアを吹込むように利用さ
れる。またエア排気路１４は、リリーフ弁１６を介して
ブロアなどの強制排気装置（図示せず）と大気開放とが
切換えできるように接続されている。なお、エア排気路
１４のリリーフ弁１６の上流位置に圧力検知器１７が接
続されていて、成形体の内部圧力状態を検知できるよう
にしている。

【００４３】１５はミスト噴霧ノズルであり、本例では
図６に示す如く、循環エアと共にミストを噴霧しかつ排
気するために、エア供給路１５１と、エア排気路１５２
とを有し、このエア供給路１５１内にミストを噴霧する
ミストノズル１５３が内装されている。１５４はエア供
給路１５１とエア排気路１５２を区画するための隔壁で
ある。上記のミストノズル１５３は、例えば、その円錐
形状をなす先端閉塞壁の斜面１５６に、複数の小孔をミ
スト噴霧穴１５５として図６の如く偏って設けること
で、このミスト噴霧穴１５５からミストを特定の方向に
噴霧できるようになっている。このミストノズル１５に
は、好ましくは１０μｍ以下のミストを発生するものが
用いられる。なお、上記エア供給路１５１とエア排気路
１５２には、エア給排ノズル１２と同様にエアポンプ、
ブロア等に接続されると共に、排気路にはリリーフ弁を
設けることもできる。

【００４４】次に本例の成形装置によるブロー成形の手
順と作用を、図４に示したタイミングチャートを参考に
して説明する。

【００４５】まず開型している金型１１に、表皮材１８
を金型の凹部１１１に嵌挿して保持させ、次いでブロー
ダイヘッドから押出されたパリソンを閉じ込めるように
閉型する。

【００４６】次いで、エア給排ノズル１２を下方からエ
ア吹込位置まで上動させ、中空キャビティ内に嵌挿さ
せ、まず初めに、エア給排ノズル１２のエア供給路１３
からブローエアを吹き込んでパリソンが金型１１の内面
に倣って密着するように賦形する。またこの賦形時に、
パリソンの一部はインサート物である表皮材１８に接触
し、接着する。なお、この際吹込むブローエアは、後述
する冷却時にパリソン内に保持されるエア圧よりも高圧
とすることでパリソンの成形を迅速に行わせることがよ
い。

【００４７】パリソンが金型のキャビティ内面に倣い、
かつ表皮材１８と接着した状態（この状態になったもの
が「成形品１」）になったことを、圧力検知器１７でパ
リソン内の圧力が所定圧に達したことで検知してブロー
エアの吹込みを停止し、また、ミスト噴霧ノズル１５を
成形品１の一面から突き刺す。なお図２ではこのミスト
噴霧ノズルの位置を表皮材１８の側方としたが、これは
説明の便宜上であり、実際には表皮材の反対側の面から
突き刺すようにすることがよい。この後、冷却工程に移
行する。

【００４８】冷却工程では、前記ミストノズル１５３の
先端からパリソンの表皮材接着部分の内面に向けて、例
えば１０μｍ以下のミストを噴霧し、パリソン内面とミ
ストを直接接触させるようにする。この際、循環エアの
吹き込みを同時に開始し（循環エアは強制排気まで継
続）、エア給排ノズル１２からのエア吹き込みは一時停
止する。このミスト噴霧により、表皮材１８が接着して
いるために金型１１からの冷却作用が小さい該パリソン
内面に接触したミストが蒸発することで、気化潜熱によ
り当該部分のパリソン内面を急冷する。この際、ミスト
が１０μｍ以下であれば、中空成形品の内面と接触した
瞬間にミストが蒸発するので、中空成形品への衝突に伴
って中空成形品内面に凹凸面を生じさせることがない。

【００４９】ミスト噴霧を所定時間行った後、噴霧を停
止し、エア給排ノズル１２からのエアを吹き込みを再開
して、リリーフ弁１６を介し大気に開放する。このリリ
ーフ弁１６によって該内部空間の内圧を所定圧に保ちな
がら、エアを給排させることで昇温したエアを速やかに
外気に排気することができる。このミスト噴霧とエア給
排を４回繰り返す。

【００５０】以上のようなミストの噴霧とエア給排の操
作を所定手順で行った後、成形品内の圧力エアを強制排
気して大気圧にし、金型１１を開型して成形品１を取出
す。以上の操作により、中空成形品内面の表皮材１８が
接着した部分がミストにより冷却され、かつこれと並行
して成形品の他の部分は、その外面が密着する金型１１
の冷媒通し孔（図示せず）に流した冷媒により冷却され
る。

【００５１】以上によって本例のブロー成形が終了す
る。

【００５２】本例の装置を用いて行うブロー成形のブロ
ー圧力及びブロー時間は、中空成形品の容量やエア給排
ノズル１２の径により適宜選定される。

【００５３】この実施形態の成形装置によれば、インサ
ート物である表皮材１８をブロー成形時に一体化できる
と共に、表皮材１８が存在するために金型からの冷却効
果が金型に直接密着している部分と大きな差のある部分
を、ミスト噴霧により内面から冷却して全体として一様
・均一な冷却を行うことができ、迅速なパリソンの成形
が実現できる。

【００５４】

【実施例】対象材料： 高密度ポリエチレン ＨＤＰＥ ８０００Ａ ＜東ソー
（株）製＞ （メルトインデックスＨＬＭＩ＝０．３５／１０分 密度 ｄ＝０．９５７ｇ／ｃｍ³ ） ブロー成形品： 椅子：３０ｃｍ×３０ｃｍ×８ｃｍ厚 （平均肉厚８ｍ
ｍ） インサート物： ポリエチレン製 ３０倍発泡シート ２０ｃｍ×２８ｃｍ×１５ｍｍ厚 ブロー成形方法： ハリ吹込式 成形条件（エアによるブロー成形を基準とする） ： 押出シリンダー温度 １８０℃ 金型冷却温度 ２３℃ 射出時間 １０秒 ブロー圧力 ６ｋｇ／ｃｍ² （ブロー成形品内面の温度測定法）型開き開始後９０秒
経過した時点で、このブロー成形品内面の温度をサーモ
グラフィ（日本アビオニクス株式会社製、機種ＴＶＳ−
２１００ＭＫII ＳＴ）により、図５に示す製品内側両
面サイドの各５点を測定した。

【００５５】前記の要件を前提条件として試験した下記
の実施例１、比較例１，２の結果を表１に示した。

【００５６】実施例１ 図１の装置を用い、表皮材をインサートし、中空成形品
の内面の冷却媒体を水ミスト（大きさ１０μｍ）とし、
ブローにより賦形し、中空内部圧が０．５５ＭＰａにな
るのを圧力検知器１７により検知した後、ミスト噴霧に
よる強制冷却工程に移行した。この強制冷却工程は、中
空部内圧を０．５５ＭＰａに保持したまま、ミスト噴
霧、及びエア給排を、図４のタイミングチャートにした
がって４回繰り返して行った。なお、ミスト噴霧状態の
概要は図２に示した。

【００５７】以上により行ったブロー成形の合時間は２
９０秒であり、詳細には、初期の賦形のためのブロー時
間５秒、ミスト噴霧時間３５秒、エア循環時間３５秒
（これらのミスト噴霧とエア循環は４回繰り返し）、及
び排気時間５秒とした。

【００５８】比較例１ 通常のブロー成形法により、片側に実施例１と同じ表皮
材をインサートして、エア吹込時間２００秒で成形を行
った。

【００５９】比較例２ 通常のブロー成形法により、片側に実施例１と同じ表皮
材をインサートして、エア吹込時間４００秒で成形を行
った。

【００６０】

【表１】

【００６１】この表の結果から分かるように、通常のブ
ロー成形法による成形時間に比べて本発明の方法による
成形は３／４程度に短縮されることが明らかになった。

【００６２】

【発明の効果】本発明によれば、成形金型内に表皮材な
どをインサートしてブロー成形を行うため、金型を通し
ての冷却性に部分的に大きな差がある成形品において、
金型を通しての冷却効果が劣っている部分に、選択的に
ミスト噴霧とエア循環を行うことでミストの蒸発による
気化潜熱作用で冷却を促進させ、全体として平均的な冷
却を実現することができる。これによってインサート物
が挿入されている中空成形品を均一にかつ迅速に強制冷
却して、効率のよいブロー成形サイクルを実施すること
ができる。

【００６３】また、ミスト噴霧とエア循環を繰り返し行
うようにすることで、より一層、冷却効率を向上させる
ことができる。

【００６４】また噴霧するミストの大きさを１０μｍ以
下とすれば、ミストが中空成形品の内面と接触時に瞬間
的に蒸発し、冷却した中空成形品の内面に大きな水滴跡
はつかず、更にこのミストと中空成形品の衝突時に中空
成形品に凹凸面は生じないようにすることができる。

【００６５】また、エア循環（給排）を組合せること
で、ミストの消費量を低減できると共に、パリソンの再
処理時に水分含有がないので再生機能の品質を高めるこ
とができると共に、成形品の適宜の温度に冷却でき、成
形品の取り出し時に火傷するのを防止することができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態１に用いるブロー成形装置の
構成概要を示した図。

【図２】実施形態１で使用するミストノズルによりミス
トが噴霧される方向を示した図。

【図３】実施形態１の成形装置を用いて製作された扁平
中空成形品の表面に表皮材（クッション材）が一体化さ
れたベンチ等に固定して用いられる椅子を説明する図で
あり、（イ）はその平面図、（ロ）は同側面図。

【図４】実施形態１の成形装置を用いて図３の椅子をブ
ロー成形する際の各工程の開始と停止のタイミングを示
したタイミングチャート図。

【図５】図３の椅子をブロー成形した際の成形品内面の
温度測定箇所を示した図であり、（イ）は表皮材を一体
化させた側の内面の温度測定箇所、（ロ）は表皮材を一
体化させていない側の内面の温度測定箇所を示す。

【図６】実施形態１のミスト噴霧に用いるミスト噴霧ノ
ズルの構成概要を示したものであり、（イ）はミスト噴
霧ノズルの全体概要を示した斜視図。（ロ）はミストノ
ズルの先端面図、（ハ）はミストノズル先端部分の正面
図。

【符号の説明】

１：成形品 １０：ブロー成形装置 １１：金型 １１１：凹部 １２：エア給排ノズル １２１：隔壁 １３：エア供給路 １４：排気路 １５：ミスト噴霧ノズル １５１：エア供給路 １５２：エア排気路 １５３：ミストノズル １５４：隔壁 １５５：ミスト噴霧穴 １５６：斜面 １６：リリーフ弁 １７：圧力検知器 １８：表皮材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永堀 和敏 埼玉県岩槻市笹久保新田550 株式会社プ ラコー内 (72)発明者 千葉 智 宮城県多賀城市栄２−３−32−44 Ｆターム(参考） 4F208 AA05 AD05 AD08 AD17 AG03 AG07 AH26 AH49 AK02 AR02 LB01 LB13 LN10 LN13 LN14 LW01 LW15

Claims (13)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金型内に取り込んだパリソンをブローエ
   アの吹込みにより金型内面と密着させて賦形し、かつ該
   金型を通じて外面から冷却することで樹脂製中空成形品
   を成形する方法において、前記中空成形品の内面を、密
   着した金型を通した冷却速度の高い領域とこの冷却速度
   の遅い領域とに区画して、当該冷却速度の遅い領域の表
   面にのみ、水粒子のミストを噴霧して内面から冷却する
   ことを特徴とする冷却速度に部分的な差のある中空成形
   品のブロー成形方法。
2. 【請求項２】 請求項１において、ミスト噴霧と同時
   に、又はミスト噴霧に続いて、成形品内部にエアを供給
   すると共に外気に排出するエア給排を行うことを特徴と
   する冷却速度に部分的な差のある中空成形品のブロー成
   形方法。
3. 【請求項３】 請求項２において、エア給排は、成形品
   を金型内面に密着させることができるように予め定めた
   所定圧力の状態に内部圧を保持しながら行うことを特徴
   とする冷却速度に部分的な差のある中空成形品のブロー
   成形方法。
4. 【請求項４】 請求項１ないし３のいずれかにおいて、
   ミストの噴霧は間欠的に繰り返して行うことを特徴とす
   る冷却速度に部分的な差のある中空成形品のブロー成形
   方法。
5. 【請求項５】 請求項１ないし４のいずれかにおいて、
   冷却速度の低い領域は、ブローエアの吹込みで賦形され
   るパリソンと一体化するように予め金型内にインサート
   された伝熱性の低い付加物の一体化により形成され、ミ
   ストはこの付加物と一体化する領域の中空成形品の内面
   に対して噴霧されるものであることを特徴とする冷却速
   度に部分的な差のある中空成形品のブロー成形方法。
6. 【請求項６】 請求項５において、中空成形品が扁平な
   直方体形状をなし、かつこの中空成形品に一体化される
   付加物が、該直方体形状をなす中空成形品の広い面積を
   呈する二面の一方の外面に一体化された弾性を有する表
   皮材であることを特徴とする冷却速度に部分的な差のあ
   る中空成形品のブロー成形方法。
7. 【請求項７】 パリソンを取り込むブロー成形のための
   金型と、該パリソンを金型内面と密着させて賦形するよ
   うに該金型内のパリソン内部にブローエアを吹込むエア
   吹き込み手段と、賦形された成形品の内面うちで該金型
   を通した外面からの冷却速度の高い領域に比べて冷却速
   度の遅い領域の内面に対し水粒子のミストを噴霧するミ
   スト噴霧手段と、を備えたことを特徴とする中空成形品
   のブロー成形装置。
8. 【請求項８】 請求項７において、ブロー成形のための
   金型は、ブローエアの吹込みで賦形されるパリソンと一
   体化するように予め該金型内にインサートされた伝熱性
   の低い付加物を保持するように設けられていることを特
   徴とする中空成形品のブロー成形装置。
9. 【請求項９】 請求項８において、中空成形品は扁平な
   直方体形状をなし、付加物は該直方体形状をなす中空成
   形品の広い面積を呈する二面の一方の外面に一体化され
   た弾性を有する表皮材であることを特徴とする中空成形
   品のブロー成形装置。
10. 【請求項１０】 請求項９において、直方体形状をなす
    中空成形品の広い面積を呈する二面の一方の弾性を有す
    る表皮材が外面に一体化された面に対して、ミストを噴
    霧するミスト噴霧手段は、表皮材を保持する面とは異な
    る他の面が密着する金型内面から突き出されたミストノ
    ズルであることを特徴とする中空成形品のブロー成形装
    置。
11. 【請求項１１】 請求項７ないし１０のいずれかにおい
    て、ミストの噴霧と同時に又はミストの噴霧に続いて、
    成形品内部にエアを供給しかつ外気に排出するエア給排
    を行うためのエア給排手段を有することを特徴とする中
    空成形品のブロー成形装置。
12. 【請求項１２】 請求項１１において、エア給排手段
    は、成形品を金型内面に密着させることができる予め定
    めた所定圧力の状態に内部圧を保持する圧力保持手段を
    有することを特徴とする中空成形品のブロー成形装置。
13. 【請求項１３】 請求項７ないし１２のいずれかにおい
    て、ミストの噴霧を間欠的に繰り返して行う制御手段を
    有することを特徴とする中空成形品のブロー成形装置。