JP2019085792A - 防舷材 - Google Patents
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Abstract
Description
ゴム製の防舷材は、架橋性のゴムに、充填剤、架橋成分、添加剤その他を配合して調製したゴム組成物を、所定の防舷材の立体形状に成形するとともに、架橋させて製造される。
これは、ゴム製の防舷材の、表面の摩擦が大きいため、上述した船舶の動きに追従して防舷材が不規則に大きく変形され、それによって防舷材に局所的に過剰な応力が加わることが原因であると考えられる。
たとえば、特許文献1では、表面層を、超高分子量ポリエチレンによって形成することが提案されている。また、特許文献2では、表面層を、ジエン系ゴムと結晶性ポリオレフィン樹脂とのポリマーブレンドによって形成することが提案されている。
そのため、超高分子量ポリエチレンからなる表面層は、防舷材の変形に十分に追従することができず、とくに防舷材を繰り返し変形させた際に、破損したり、防舷材から脱落したりしやすいという課題がある。
特許文献2に記載された、ジエン系ゴムと結晶性ポリオレフィン樹脂とのポリマーブレンド物を用いると、超高分子量ポリエチレンからなる表面層に比べて、表面層の柔軟性を向上することはできる。しかし、ゴムの割合が多くなるほど、相対的に表面層の表面の摩擦が大きくなることから、特許文献2では、結晶性ポリオレフィン樹脂の割合を50〜80重量%と多めに設定している。
シリコーンは、周知のように摩擦の低減効果に優れるものの、極性が低いため、ゴムには相溶しない。しかし、シリコーンの分子中に、ゴムとの相溶性のよい樹脂を構成する繰り返し単位を導入すると、シリコーンによる良好な摩擦の低減効果を維持しながら、ゴムとの相溶性を向上したシリコーン系共重合体を得ることができる。
したがって、本発明によれば、種々の課題を生じる表面層を形成しない上述した簡単な構造を維持しながら、表面の摩擦が低減され、船舶の動きによる不規則でかつ大きな変形が抑制されて、それ自体や岸壁の破損を生じにくい防舷材を提供することができる。
〈ゴム〉
ゴムとしては、架橋性を有する種々のゴムを用いることができる。とくに、防舷材に良好な緩衝性能を付与するために、天然ゴムが好適に用いられる。天然ゴムとしては、たとえば、TSR−20、RSS#3等の各種グレードの天然ゴムが挙げられる他、脱蛋白天然ゴム等を用いることもできる。
他のゴムとしては、たとえば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムの1種または2種以上が挙げられる。
SBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明ではいずれのタイプのSBRを用いることもできる。
非油展タイプのSBRとしては、たとえば、JSR(株)製のJSR(登録商標)1500〔結合スチレン量:23.5%〕、JSR1502〔結合スチレン量:23.5%〕、JSR1503〔結合スチレン量:23.5%〕、JSR1507〔結合スチレン量:23.5%〕等の1種または2種以上が挙げられる。
この範囲よりSBRが少ない場合には、SBRを併用することによる、前述した、防舷材の緩衝性能を向上する効果が十分に得られないおそれがある。また、耐摩耗性が小さくなって、防舷材を繰り返し船舶の接岸に使用した際に損耗しやすくなるなど、防舷材の耐久性が不十分になるおそれもある。
なお、油展タイプのSBRを使用する場合、配合割合は、油展タイプのSBR中に含まれる固形分(ゴム)としてのSBR自体の割合とする。
シリコーン系共重合体としては、前述したように、その分子中に、ゴムと相溶する樹脂を構成する繰り返し単位を含む、種々のシリコーン系の共重合体が使用可能である。
シリコーン系共重合体を構成する、ゴムと相溶する樹脂としては、たとえば、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂(EMMA)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合物等の1種または2種以上が挙げられる。
シリコーン系共重合体の配合割合は、少なくとも表面を形成するゴム組成物中の、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましい。
すなわち、防舷材の、表面を含む表層部にのみシリコーン系共重合体が含まれる場合は、当該表層部を構成するゴム組成物中でのシリコーン系共重合体の配合割合が、上記の範囲であるのが好ましい。一方、防舷材の全体にシリコーン系共重合体が含まれる場合は、防舷材の全体を構成するゴム組成物中でのシリコーン系共重合体の配合割合が、上記の範囲であるのが好ましい。
なお、これらの効果をより一層向上することを考慮すると、シリコーン系共重合体の配合割合は、上記の範囲でも、ゴムの総量100質量部あたり5質量部以上、とくに7質量部以上であるのが好ましい。
ゴム組成物には、ゴムを架橋させるため、従来同様に架橋成分を配合する。架橋成分としては、架橋剤、架橋促進剤が挙げられる。
(架橋剤)
架橋剤としては、たとえば、硫黄系架橋剤、過酸化物系架橋剤等が挙げられ、とくに硫黄系架橋剤が好ましい。
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、オイル入り粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等の硫黄や、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物などが挙げられ、とくに硫黄が好ましい。
硫黄の配合割合がこの範囲未満では、ゴム組成物の全体での架橋速度が遅くなり、架橋に要する時間が長くなって、防舷材の生産性が低下するおそれがある。
また、硫黄の配合割合が上記の範囲を超える場合には、架橋後の圧縮永久ひずみが大きくなったり、過剰の硫黄が防舷材の表面にブルームしたりするおそれがある。
なお、たとえば、硫黄としてオイル入り粉末硫黄、分散性硫黄等を使用する場合、配合割合は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の割合とする。
架橋促進剤としては、たとえば、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、下記の各種の有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤。
2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系促進剤。
テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤。
N,N′−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素等のチオウレア系促進剤。
架橋促進剤の配合割合は、その種類によって任意に設定できるが、通常は、ゴムの総量100質量部あたり0.2質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
ゴム組成物には、さらに必要に応じて充填剤、老化防止剤、架橋助剤、可塑剤、ワックス、着色剤、粘着付与剤等を、任意の割合で配合してもよい。
(充填剤)
充填剤としては、たとえば、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。とくに、加工性やゴムに対する分散性等を考慮するとカーボンブラックが好ましい。
ただし、カーボンブラックは、ゴムの総量に対する配合割合と補強効果との兼ね合い等を考慮すると、ゴムの総量よりも少量の配合で架橋物のゴム硬さを大きくして、ゴム組成物の架橋物からなる防舷材の緩衝性能を、より一層効率よく向上できることが望ましい。そのため、カーボンブラックとしては、比較的粒径が小さく、かつストラクチャが発達した、表面積の大きいグレードのカーボンブラックを用いることが好ましい。
窒素吸着比表面積が50m2/g未満であるカーボンブラックは粒径が大きすぎ、またDBP吸油量が90cm3/100g未満であるカーボンブラックはストラクチャの発達が不十分である。そのため、このいずれのカーボンブラックを使用した場合にも、上述した補強効果が十分に得られず、架橋物のゴム硬さが小さくなりすぎて、防舷材に良好な緩衝性能を付与できないおそれがある。
これらの特性を満足するカーボンブラックとしては、たとえば、東海カーボン(株)製のシースト3〔HAF、窒素吸着比表面積:79m2/g、DBP吸油量:101cm3/100g〕、シーストN〔LI−HAF、窒素吸着比表面積:74m2/g、DBP吸油量:101cm3/100g〕等の少なくとも1種が挙げられる。
カーボンブラックの配合割合がこの範囲未満では、十分な補強効果が得られず、架橋物のゴム硬さが小さくなりすぎて、防舷材に良好な緩衝性能を付与できないおそれがある。また、とくに高温環境下で、経時変化による防舷材の緩衝性能の低下やクラック等を生じやすくなるおそれもある。
また、架橋物中で隣り合うカーボンブラック同士の距離が近すぎるため、防舷材を繰り返し変形させた際にカーボンブラックが摩耗しやすくなって、経時変化による防舷材の緩衝性能の低下やクラック等を生じやすくなるおそれもある。
これに対し、カーボンブラックの配合割合を上記の範囲とすることにより、混練性や加工性等を良好に維持しながら、カーボンブラックによる補強効果を適度の範囲に調整して、防舷材に良好な緩衝性能を付与することができる。また、経時変化による緩衝性能の低下やクラック等を生じにくくすることもできる。
老化防止剤としては、耐候性老化防止剤、耐熱老化防止剤等の、主な機能によって分類される種々の老化防止剤の1種または2種以上が挙げられる。
老化防止剤の具体例としては、たとえば、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等が挙げられる。
老化防止剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
(架橋助剤)
架橋助剤としては、たとえば、酸化亜鉛等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸その他、従来公知の架橋助剤の1種または2種以上が挙げられる。
架橋助剤の配合割合は、個別に、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
可塑剤としては、たとえば、オイルや液状ゴムが挙げられる。
このうちオイルとしては、たとえば、出光興産(株)製のダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW、NP、NS、NR、NM、AC、AH等の各種グレードのオイルの1種または2種以上が挙げられる。
液状イソプレンゴムとしては、たとえば、(株)クラレ製のクラプレン(登録商標)LIR−30(数平均分子量:28000)、LIR−50(数平均分子量:54000)等が挙げられる。
可塑剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり10質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましい。
ワックスとしては、たとえば、日本精蝋(株)製のオゾエース(登録商標)0355、大内新興化学工業(株)製のサンノック(登録商標)、サンノックN、サンノックP等が挙げられる。これらのワックスは、老化防止剤との併用によって日光亀裂、オゾン亀裂を防止するために機能する。
ワックスの配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下であるのが好ましい。
ゴム組成物は、たとえば、上記各成分のうち架橋成分以外の各成分を、まずバンバリミキサ等を用いて混練したのち、さらに架橋成分を加えて混練する等して調製できる。
調製したゴム組成物を用いて、本発明の防舷材を製造する工程は従来同様でよい。すなわち、製造する防舷材の大きさや形状に応じて成形、シート成形、組み立て、および架橋等の任意の工程を組み合わせて防舷材を製造することができる。
〈実施例1〉
(ゴム組成物の調製)
ゴムとしては、天然ゴム(TSR20品)80質量部と、非油展タイプのSBR〔前出のJSR(株)製のJSR1502、結合スチレン量:23.5%〕20質量部とを併用した。両ジエン系ゴムの総量100質量部を、下記表1に示す各成分のうち硫黄、およびスルフェンアミド系促進剤以外の各成分とともに、バンバリミキサを用いて混練した。そして、さらに硫黄とスルフェンアミド系促進剤とを加え、2軸オープンロールを用いて混練して、シート状のゴム組成物を調製した。
シリコーン系共重合体:前出の東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−202H、樹脂:LDPE、シリコーン含有量:60%
カーボンブラック:HAF、前出の東海カーボン(株)製のシースト3、窒素吸着比表面積:79m2/g、DBP吸油量:101cm3/100g
オイル:前出の出光興産(株)製のダイアナ プロセスオイルNR26
老化防止剤:N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、精工化学(株)製のオゾノン(登録商標)6C
ワックス:前出の日本精鑞(株)製のオゾエース0355
酸化亜鉛2種:架橋助剤、三井金属鉱業(株)製
ステアリン酸:架橋助剤、日油(株)製の商品名つばき
硫黄:架橋剤、鶴見化学工業(株)製の金華印5%油入微粉硫黄
スルフェンアミド系促進剤:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)NS−G
〈実施例2〜4〉
シリコーン系共重合体の配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり7質量部(実施例2)、30質量部(実施例3)、40質量部(実施例4)としたこと以外は実施例1と同様にして、シート状のゴム組成物を調製した。
シリコーン系共重合体として、前出の東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−220〔樹脂:EVA、シリコーン含有量:60%〕7質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、シート状のゴム組成物を調製した。
〈実施例6〉
シリコーン系共重合体として、前出の東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−201〔樹脂:PP、シリコーン含有量:40%〕7質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、シート状のゴム組成物を調製した。
シリコーン系共重合体として、前出の日信化学工業(株)製のシャリーヌR−170S〔シリコーン含有量:70%、球形、平均粒径30μm、一次粒子径:0.2〜0.3μm〕7質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、シート状のゴム組成物を調製した。
シリコーン系共重合体を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、シート状のゴム組成物を調製した。
〈比較例2〉
シリコーン系共重合体に代えて、固体潤滑剤である薄片化黒鉛〔日本黒鉛工業(株)製のUP−5N〕7質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、シート状のゴム組成物を調製した。
〈比較例3〉
シリコーン系共重合体に代えて、固体潤滑剤である二硫化モリブデン〔住鉱潤滑剤(株)製のモリパウダーPS〕7質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、シート状のゴム組成物を調製した。
上記各実施例、比較例において、上述した手順で各成分を混練してシート状のゴム組成物を調製した際の状態を観察した。そして、混練しても各成分をゴム組成物として纏めてシート状に調製できなかったものを加工性不良(×)と評価した。また、各成分をゴム組成物として纏めてシート状に調製できたものの、調製したシートの表面ががさついたものを加工性中間レベル(△)、表面が滑らかであったものを加工性良好(○)と評価した。
各実施例、比較例で調製したシート状のゴム組成物を、150℃×60分間プレス成形し、架橋させて、動摩擦係数測定用のサンプルを作製した。そして、各サンプルの表面の動摩擦係数を、(株)トリニティーラボ製の摩擦摩耗測定機トライボマスターTL201Tsを用いて、下記の条件で測定した。
接触子:ボール接触子
荷重:10g
計測距離:10mm
移動速度:10mm/秒
以上の結果を、表2、表3に示す。
また実施例1〜4の結果より、ゴム組成物を調製する際の加工性を向上することを考慮すると、シリコーン系共重合体の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましいことが判った。
Claims (3)
- ゴムを含むゴム組成物の架橋物からなる防舷材であって、前記防舷材の少なくとも表面を形成する前記ゴム組成物は、前記ゴムと相溶する樹脂を構成する繰り返し単位を分子中に含むシリコーン系共重合体を含んでいる防舷材。
- 全体が、前記シリコーン系共重合体を含む前記ゴム組成物からなる請求項1に記載の防舷材。
- 前記シリコーン系共重合体の配合割合は、前記少なくとも表面を形成する前記ゴム組成物中の前記ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、30質量部以下である請求項1または2に記載の防舷材。
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