JP2018080531A - 防舷材用ゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】常温環境下から低温環境下までの広い温度範囲に亘って、緩衝性能に優れる上、クラックを生じにくい防舷材を形成できる防舷材用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】防舷材用ゴム組成物は、スチレン含量が10質量%以上、25質量%以下のスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、α−オレフィン誘導体、およびカーボンブラックを含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、防舷材の形成材料としての防舷材用ゴム組成物に関するものである。
例えば岸壁等に設置されて、船舶等の接岸時や係留時に緩衝材として機能する防舷材としては、全体を弾性材料、特にゴムの架橋物によって一体に形成したものが、構造が簡単でしかも壊れにくいため、広く一般に普及している。
上記防舷材は、架橋性のゴムに充填剤、ゴムを架橋させるための架橋成分、ならびに各種添加剤等を配合して調製したゴム組成物を、所定の防舷材の立体形状に成形するとともに、ゴムを架橋させて製造される(例えば特許文献1等)。
架橋性のゴムとしては、架橋後のゴム硬さや切断時伸び、引張強さなどの物性を適度にバランスさせることで防舷材のゴム弾性を向上して、当該防舷材に高い緩衝性能を付与すること等を考慮して、あるいは入手のしやすさ等の観点から、天然ゴムが好適に使用される。
天然ゴムは単独で使用してもよいし、他のゴムと併用してもよい。
防舷材は、通常は屋外に設置されるものであって、設置される地域や季節等によっては、例えば−30℃以下といった低温(極寒)環境下で使用される場合がある。
そのため防舷材には、上記低温環境下で硬くなり、圧縮時の反力が増大して緩衝性能が低下したり、圧縮と伸長を繰り返した際にクラックを生じたりしにくいことが求められる。
例えば特許文献2では、低温環境下でも良好な緩衝性能を維持するために、防舷材の、温度−30℃の低温環境下での圧縮試験における最大反力R−30と、温度23℃の常温環境下での圧縮試験における最大反力R23との比R−30/R23で表される圧縮性能変化率を1.3以下に規定することが提案されている。
防舷材の圧縮時の反力を低くするためには、例えば軟化剤として石油系オイルを多量に配合して、上記防舷材をできるだけ軟らかくすることが有効と考えられる。
しかし低温環境下では、特に圧縮時に石油系オイルが防舷材から滲出しやすく、滲出が生じると防舷材が硬くなって反力が増大する傾向があるため、上記の圧縮性能変化率を有する防舷材を実現するのは、技術的に決して容易ではない。
また、特に低温環境下でクラックが生じるのを抑制することについて、特許文献2では一切考慮されていない。
特開2013−194155号公報 特開2002−13121号公報
本発明は、常温環境下から低温環境下までの広い温度範囲に亘って、緩衝性能に優れる上、クラックを生じにくい防舷材を形成できる防舷材用ゴム組成物を提供することにある。
本発明は、スチレン含量が10質量%以上、25質量%以下のスチレンブタジエンゴム、および天然ゴムを含むゴム、α−オレフィン誘導体、ならびにカーボンブラックを含む防舷材用ゴム組成物である。
本発明によれば、常温環境下から低温環境下までの広い温度範囲に亘って、緩衝性能に優れる上、クラックを生じにくい防舷材を形成できる防舷材用ゴム組成物を提供できる。
上記のように本発明は、スチレン含量が10質量%以上、25質量%以下のスチレンブタジエンゴム(SBR)、および天然ゴムを含むゴム、α−オレフィン誘導体、ならびにカーボンブラックを含む防舷材用ゴム組成物である。
かかる本発明の防舷材用ゴム組成物によれば、ゴムとして、上記所定の範囲のスチレン含量を有するSBRを選択して天然ゴムと併用し、なおかつ従来の石油系オイルに代えて、軟化剤(オイルないしワックス)として機能するα−オレフィン誘導体を配合するとともに、さらに補強剤としてカーボンブラックを配合することにより、常温環境下から低温環境下までの広い温度範囲に亘って、緩衝性能に優れる上、クラックを生じにくい防舷材を形成できる。
すなわちSBRは、一般に天然ゴムと併用することで、架橋後の物性をより好適にバランスさせて、防舷材に良好な緩衝性能を付与できる成分であるが、かかるSBRと天然ゴムの併用系に、さらに軟化剤として機能して防舷材に良好な柔軟性を付与できるα−オレフィン誘導体を配合すると、当該防舷材の緩衝性能をより一層向上できるとともに、クラックが生じるのをさらに良好に抑制できる。
ただし、スチレン含量が10質量%未満であるSBRは、架橋後の強度を向上する効果が十分でないため、低温だけでなく常温でも、圧縮と伸長を繰り返した際に防舷材にクラックを生じやすい。
これに対し、スチレン含量が10質量%以上であるSBRは、架橋後の強度を向上する効果に優れている。そのためかかるSBRに、補強剤としてのカーボンブラックを、当該カーボンブラックの分散剤としても機能するα−オレフィン誘導体とともに配合することで、上記強度をさらに向上できる。
そのため、上記α−オレフィン誘導体が軟化剤として機能して柔軟性をも向上できることと相まって、防舷材にクラックが生じるのをより一層良好に抑制できる。
また、スチレン含量が25質量%を超えるSBRは、それ自体のガラス転移温度が高いことから、架橋後のガラス転移温度を上昇させるため、特に−30℃以下の低温環境下で防舷材がゴム弾性を失って緩衝性能が低下したり、圧縮と伸長を繰り返した際にクラックを生じたりしやすい。
これに対し、スチレン含量が25質量%以下であるSBRは、それ自体のガラス転移温度が低く、架橋後のガラス転移温度をも上昇させないため、低温環境下でも防舷材がゴム弾性を失うことがない。
そのためα−オレフィン誘導体が、従来の石油系オイル等に比べてSBRや天然ゴムとの相溶性に優れており、低温環境下での圧縮時にも滲出せずに、防舷材の良好な柔軟性を維持できることと相まって、かかる低温環境下でも防舷材の緩衝性能が低下したり、クラックが生じたりするのを抑制できる。
したがって本発明の防舷材用ゴム組成物によれば、常温環境下から低温環境下までの広い温度範囲に亘って、緩衝性能に優れる上、圧縮と伸長を繰り返した際にクラックを生じにくい防舷材を形成できる。
〈ゴム〉
ゴムとしては、上述したようにスチレン含量が10質量%以上、25質量%以下であるSBR、および天然ゴムを、少なくとも併用する。
(SBR)
上記のうちSBRとしては、スチレンと1,3−ブタジエンとを溶液重合法、乳化重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成される種々のSBRのうち、スチレン含量が上記の範囲である特定のSBRを選択して用いる。この理由は前述したとおりである。
またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、伸展油としては石油系オイルを使用するのが一般的であるため、油展タイプのSBRでは、上記伸展油が低温環境下での圧縮時に滲出して、防舷材の緩衝性能が低下したり、クラックを生じたりしやすくなるおそれがある。
そのため、これらの問題が生じるのを抑制して、前述した本発明の効果をより一層向上することを考慮すると、SBRとしては、伸展油を含まない(除く)非油展タイプのSBRが好ましい。
これらの条件を満足するSBRとしては、例えばランクセス社製のBUNA(登録商標)BL8497〔スチレン含量:10質量%、非油展〕、日本ゼオン(株)製のNipol(登録商標)NS612〔スチレン含量:15質量%、非油展〕、NS116R〔スチレン含量:21質量%、非油展〕、NS616〔スチレン含量:21質量%、非油展〕、1502〔スチレン含量:23.5質量%、非油展〕、住友化学(株)製のSBR1502〔スチレン含量:23.5質量%、非油展〕等の1種または2種以上が挙げられる。
ただし、低温環境下で防舷材の緩衝性能が低下したり、クラックが生じたりするのをより一層良好に抑制することを考慮すると、SBRとしては、上記の中でもスチレン含量が21質量%以下、特に18質量%以下であるSBRが好ましい。
(天然ゴム)
天然ゴムとしては、例えばTSR−20、RSS#3等の各種グレードの天然ゴムがいずれも使用可能である他、脱蛋白天然ゴム等も使用できる。
(その他のゴム)
ゴムとしては、上記SBRと天然ゴムの2種に加えて、さらに両ゴムとともに架橋可能な種々のゴムを併用してもよい。かかる他のゴムとしては、例えばイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等の1種または2種以上が挙げられる。
しかし、上記特定のスチレン含量を有するSBRを天然ゴムと併用することによる前述した効果をより一層良好に発現させることを考慮すると、ゴムとしては、特定のスチレン含量を有するSBRと天然ゴムの2種のみを併用するのが好ましい。
なお上記「2種のみ」には、2種以上の、特定のスチレン含量を有するSBR、および/または2種以上の天然ゴムを併用する場合を含むこととする。
(配合割合)
特定のスチレン含量を有するSBRの配合割合は、ゴムの総量100質量部中の10質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましい。
SBRの配合割合がこの範囲未満では、当該SBRを配合することによる、前述した、常温環境下から低温環境下までの広い温度範囲に亘って、緩衝性能に優れる上、クラックを生じにくい防舷材を形成する効果が十分に得られないおそれがある。また耐摩耗性が小さくなって、繰り返し使用した際に防舷材が損耗しやすくなるおそれもある。
一方、SBRの配合割合が上記の範囲を超える場合には、架橋後の引裂き強度が小さくなって、例えば微小な傷などを生じた状態で防舷材を繰り返し使用した際に、当該傷が急速にクラックに成長するおそれがある。すなわち耐亀裂成長性が低下する場合がある。
これに対し、SBRの配合割合を上記の範囲とすることにより、引裂き強度が小さくなってクラックに成長しやすくなったり、耐摩耗性が小さくなったりするのを抑制しながら、防舷材の緩衝性能をさらに向上できる。
〈α−オレフィン誘導体〉
α−オレフィン誘導体としては、SBRや天然ゴムに対する相溶性に優れたα−オレフィンモノマーの重合体であって、任意の分子量を有し、分子量の大小に応じて、常温で液状を呈するオイルから固形状を呈するワックスまで、任意の状態で軟化剤、分散剤として機能しうる種々の化合物が使用可能である。
特に、高純度のα−オレフィンモノマーを原料として、メタロセン触媒によって重合させて合成された、側鎖に結晶性基を有する側鎖結晶性α−オレフィン重合体(CPAO)が、SBRや天然ゴムに対する相溶性に特に優れる上、低融点で、しかも分子量分布や融点がシャープである点で好ましい。
かかるCPAOの具体例としては、例えば出光興産(株)製のエルクリスタ(登録商標)シリーズのうちCPAO−1〔オイル、融点:28℃〕、豊国精油(株)製のHSクリスターシリーズのうち4100〔オイル、融点:42℃〕等が挙げられる。
α−オレフィン誘導体の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり10質量部以上であるのが好ましく、35質量部以下であるのが好ましい。
α−オレフィン誘導体の配合割合がこの範囲未満では、当該α−オレフィン誘導体を配合することによる前述した効果が十分に得られず、特にカーボンブラックの分散性が低下してクラックを生じやすくなるおそれがある。
一方、α−オレフィン誘導体の配合割合が上記の範囲を超える場合には、架橋後の強度が不足して、防舷材として適した範囲に達しないおそれがある。
これに対し、α−オレフィン誘導体の配合割合を上記の範囲とすることにより、架橋後の強度を防舷材として適した範囲に維持しながら、クラックが生じるのをより一層良好に抑制できる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、軟化剤としてはα−オレフィン誘導体のみを配合して、石油系オイルは含まない(除く)ことが好ましい。
〈カーボンブラック〉
カーボンブラックとしては、前述したSBRや天然ゴムの補強剤、あるいは充填剤として機能し得る種々のカーボンブラックが使用可能である。
ただしカーボンブラックとしては、ゴムの総量に対する配合割合と補強効果との兼ね合い等を考慮すると、当該ゴムの総量より少量の配合でゴム硬さを大きくして、防舷材の緩衝性能をより一層効率よく向上させたり、クラックが生じるのを抑制したりするために、比較的粒径が小さくかつストラクチャが発達した、表面積の大きいグレードのものを用いるのが好ましい。
特に窒素吸着比表面積が70m/g以上、120m/g以下、DBP吸油量が90cm/100g以上、130cm/100g以下であるカーボンブラックが好適に使用される。
窒素吸着比表面積が70m/g未満であるカーボンブラックは粒径が大きすぎ、またDBP吸油量が90cm/100g未満であるカーボンブラックはストラクチャの発達が不十分であるため、このいずれを使用した場合にも上述した補強効果が十分に得られず、ゴム硬さを十分に大きくできないため防舷材に良好な緩衝性能を付与したり、クラックが生じるのを抑制したりできないおそれがある。
一方、窒素吸着比表面積が120m/gを超えるカーボンブラックは粒径が小さすぎ、またDBP吸油量が130cm/100gを超えるカーボンブラックはストラクチャの発達が過剰であるため、このいずれを使用した場合にも上述した補強効果が強くなりすぎ、ゴム硬さが大きくなりすぎたり切断時伸びが小さくなりすぎたりして、やはり防舷材に良好な緩衝性能を付与したり、クラックが生じるのを抑制したりできないおそれがある。
これに対し、窒素吸着比表面積およびDBP吸油量がともに前述した範囲であるカーボンブラックを選択的に使用することにより、適度の補強効果を確保して、防舷材に良好な緩衝性能を付与できる。
上記特性を満足するカーボンブラックとしては、例えば東海カーボン(株)製のシースト6〔ISAF、窒素吸着比表面積:119m/g、DBP吸油量:114cm/100g〕、シースト5H〔IISAF、窒素吸着比表面積:99m/g、DBP吸油量:129cm/100g〕、シーストKH〔N399、窒素吸着比表面積:93m/g、DBP吸油量:119cm/100g〕、シースト3H〔HAF−HS、窒素吸着比表面積:82m/g、DBP吸油量:126cm/100g〕、シーストNH〔N351、窒素吸着比表面積:74m/g、DBP吸油量:127cm/100g〕、シースト3〔HAF、窒素吸着比表面積:79m/g、DBP吸油量:101cm/100g〕、シーストN〔LI−HAF、窒素吸着比表面積:74m/g、DBP吸油量:101cm/100g〕等の1種または2種以上が挙げられる。
カーボンブラックの配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり40質量部以上、特に60質量部以上であるのが好ましく、80質量部以下であるのが好ましい。
カーボンブラックの配合割合がこの範囲未満では、補強効果が十分に得られず、特に防舷材の強度が低下して、圧縮と伸長を繰り返した際にクラックを生じやすくなるおそれがある。
一方、カーボンブラックの配合割合が上記の範囲を超える場合には、隣り合うカーボンブラック同士の距離が近すぎるため、防舷材を繰り返し変形させた際にカーボンブラックが摩耗しやすくなって、経時変化による防舷材の緩衝性能の低下やクラックを生じやすくなるおそれがある。
これに対し、カーボンブラックの配合割合を上記の範囲とすることにより、当該カーボンブラックによる補強効果を適度の範囲に調整して、防舷材に良好な緩衝性能を付与できる。また、上記防舷材を長期間に亘って使用し続けても、防舷材の緩衝性能が低下したり、クラックを生じたりするのを抑制できる。
〈架橋成分〉
本発明の防舷材用ゴム組成物には、SBRや天然ゴムを架橋させるため、従来同様に架橋成分が配合される。
架橋成分としては、硫黄(架橋剤)と、当該硫黄によるゴムの架橋を促進する作用をする架橋促進剤との組み合わせが好適に採用される。
(硫黄)
このうち硫黄としては、SBRや天然ゴムの架橋剤として機能しうる種々の硫黄が使用可能である。
硫黄の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下であるのが好ましい
硫黄の配合割合がこの範囲未満では、防舷材用ゴム組成物の全体での架橋速度が遅くなり、架橋に要する時間が長くなって防舷材の生産性が低下するおそれがある。
また、硫黄の配合割合が上記の範囲を超える場合には、架橋後の圧縮永久ひずみが大きくなって、防舷材の緩衝性能が低下したりクラックを生じたり、あるいは過剰の硫黄が防舷材の表面にブルームして外観が悪化したりするおそれがある。
これに対し、硫黄の配合割合を上記の範囲とすることにより、防舷材の良好な生産性を維持しながら、架橋密度を適度の範囲に調整して、防舷材に良好な緩衝性能を付与するとともに、クラックやブルームの発生を抑制できる。
なお、例えば硫黄としてオイル入り粉末硫黄、分散性硫黄等を使用する場合、上記配合割合は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の割合とする。
(架橋促進剤)
架橋促進剤としては、例えば消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、グアニジン系促進剤、チアゾール系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤、チオウレア系促進剤等の有機促進剤の1種または2種以上が挙げられる。特に遅効性の架橋促進剤を選択して用いるのが好ましい。
一般に防舷材は、防舷材用ゴム組成物を上記防舷材の立体形状に成形した状態で、例えば130〜160℃の温度で3〜20時間程度の時間をかけて架橋させることによって製造される。
そのため、遅効性の架橋促進剤を選択して用いることにより、上記成形時のスコーチなどを良好に抑制できる。
遅効性の架橋促進剤としては、特にスルフェンアミド系促進剤が好ましい。
またスルフェンアミド系促進剤としては、例えばN−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(MSA)等の1種または2種以上が挙げられる。
スルフェンアミド系促進剤は単独(2種以上のスルフェンアミド系促進剤を併用する場合を含む。以下同様。)で使用してもよいし、他の架橋促進剤と併用してもよい。
スルフェンアミド系促進剤と併用する他の架橋促進剤としては、スコーチの発生を抑制しながら、なおかつスルフェンアミド系促進剤を活性化して架橋速度を上昇させ、架橋時間を短縮して防舷材の生産性を向上できる架橋促進剤等が挙げられる。
かかる他の架橋促進剤としては、前述した有機促進剤のうち例えばチウラム系促進剤、グアニジン系促進剤、チアゾール系促進剤、ジチオカルバミン酸系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
スルフェンアミド系促進剤を単独で使用する場合の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
スルフェンアミド系促進剤の配合割合がこの範囲未満では、当該スルフェンアミド系促進剤を配合することによる、硫黄とゴムとの架橋反応を促進する効果が十分に得られないためゴム硬さが不足して、防舷材に良好な緩衝性能を付与できないおそれがある。
一方、スルフェンアミド系促進剤の配合割合が上記の範囲を超える場合には架橋密度が高くなりすぎるため、却って緩衝性能が低下したり、クラックを生じたりしやすくなるおそれがある。
これに対し、スルフェンアミド系促進剤の配合割合を上記の範囲とすることにより、架橋密度を適度の範囲に調整して、防舷材に良好な緩衝性能を付与するとともに、クラックの発生を抑制できる。
〈その他の成分〉
本発明の防舷材用ゴム組成物には、さらに必要に応じて架橋助剤、粘着付与剤、老化防止剤等を任意の割合で配合してもよい。
架橋助剤としては、例えば酸化亜鉛等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸その他、従来公知の架橋助剤の1種または2種以上が挙げられる。
架橋助剤の配合割合は、個別に、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
本発明の防舷材用ゴム組成物は、例えば上記各成分のうち架橋成分以外の各成分を、まずバンバリミキサ等を用いて混練したのち、さらに架橋成分を加えて混練する等して調製できる。
調製した防舷材用ゴム組成物を用いて防舷材を製造する工程は従来同様でよい。すなわち、製造する防舷材の大きさや形状に応じて成形、シート成形、組み立て、および架橋等の任意の工程を組み合わせて防舷材を製造できる。
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらに限定されるものではない。
〈実施例1〉
ゴムとしては、スチレン含量が15質量%であるSBR〔前出の日本ゼオン(株)製のNipol NS612、非油展〕30質量部と、天然ゴム(TSR20品)70質量部とを併用した。
両ゴムの総量100質量部を、下記表1に示す各成分のうちα−オレフィン誘導体、およびカーボンブラックとともに、バンバリミキサを用いて混練した後、さらに硫黄とスルフェンアミド系促進剤とを加えて、2軸オープンロールを用いて混練して、シート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
Figure 2018080531
表1中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部を示す。
α−オレフィン誘導体:CPAO、前出の出光興産(株)製のエルクリスタCPAO−1、オイル、融点:28℃
カーボンブラック:HAF、前出の東海カーボン(株)製のシースト3、窒素吸着比表面積:79m/g、DBP吸油量:101cm/100g
硫黄:架橋剤、鶴見化学工業(株)製の金華印5%油入微粉硫黄
スルフェンアミド系促進剤:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、前出の三新化学工業(株)製のサンセラーNS−G
〈実施例2〉
SBRとして、スチレン含量が10質量%であるSBR〔前出のランクセス社製のBUNA BL8497、非油展〕30質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、シート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
〈実施例3〉
SBRとして、スチレン含量が23.5質量%であるSBR〔前出の住友化学(株)製のSBR1502、非油展〕30質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、シート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
〈比較例1〉
α−オレフィン誘導体に代えて、石油系オイル〔出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルNH−70S〕20質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、シート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
〈比較例2〉
SBRとして、スチレン含量が5質量%であるSBR〔旭化成(株)製のタフデン(登録商標)1005A、非油展〕30質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、シート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
〈比較例3〉
SBRとして、スチレン含量が30質量%であるSBR〔旭化成(株)製のN207、非油展〕30質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、シート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
〈実施例4〜7〉
α−オレフィン誘導体の量を10質量部(実施例4)、35質量部(実施例5)、5質量部(実施例6)、40質量部(実施例7)としたこと以外は実施例1と同様にして、シート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
〈サンプルの作製〉
上記各実施例、比較例で調製したシート状の防舷材用ゴム組成物を140℃で50分間プレス成形して、架橋させたシート状のサンプルを作製した。
〈引張試験〉
作製したシート状のサンプルを打ち抜いて、日本工業規格JIS K6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に規定されたダンベル状3号形試験片を作製し、温度23℃の常温環境下で、同規格に規定された引張試験をして引張強さTS(MPa)、および切断時伸びE(%)を求めた。
引張強さTSは、16MPa未満を「×」、16MPa以上、18MPa未満を「○」、18MPa以上を「◎」と評価した。
また切断時伸びEは、350%未満を「×」、350%以上、370%未満を「○」、370%以上を「◎」と評価した。
〈動的特性試験〉
作製したシート状のサンプルを打ち抜いて、日本工業規格JIS K6394:2007「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−動的性質の求め方−一般指針」に規定された短冊状試験片を作製し、温度23℃の常温環境下、および温度−30℃の低温環境下で、同規格に規定された小形試験装置を用いて、強制振動非共振方法のうち引張方法によって測定した結果から、下記の各特性を求めた。
(弾性変化率)
−30℃での複素たて弾性係数E −30と、23℃での複素縦弾性係数E 23とを求めて、両者の比E −30/E 23を弾性変化率とした。
弾性変化率は、2.3以上を「×」、2.2以上、2.3未満を「○」、2.2未満を「◎」と評価した。
(損失正接)
23℃での損失正接(tanδ)を求めて、0.10以上を「×」、0.10未満を「◎」と評価した。
(ガラス転移温度)
低周波数におけるガラス転移温度(℃)を求めて、−30℃以上を「×」、−30℃未満を「◎」と評価した。
〈総合評価〉
上記各試験の結果が全て「◎」であったものを「◎」、「◎」と「○」でかつ「○」が1つであったものを「○」、「◎」と「○」でかつ「○」が2つ以上であったものを「△」、一つでも「×」であったものを「×」と評価した。
以上の結果を表2、表3に示す。
Figure 2018080531
Figure 2018080531
表2、表3の実施例1〜7、比較例1〜3の結果より、スチレン含量が10質量%以上、25質量%以下であるSBRを選択的に用いるとともに、従来の石油系オイルに代えてα−オレフィン誘導体を用いることにより、常温環境下から低温環境下までの広い温度範囲に亘って、緩衝性能に優れる上、クラックを生じにくい防舷材を形成できることが判った。
また実施例1、4〜7の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、α−オレフィン誘導体の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり10質量部以上であるのが好ましく、35質量部以下であるのが好ましいことが判った。
また実施例1〜3の結果より、上記の効果をより一層向上し、特に低温での緩衝性能の低下を抑制することを考慮すると、SBRのスチレン含量は、上記の範囲でも21質量%以下、特に18質量%以下であるのが好ましいことが判った。
さらに実施例1〜7の結果より、スチレンブタジエンゴムの配合割合は、ゴムの総量100質量部中の10質量部以上、40質量部以下であるのが好ましく、カーボンブラックの配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり40質量部以上、80質量部以下であるのが好ましいことが判った。

Claims (4)

  1. スチレン含量が10質量%以上、25質量%以下のスチレンブタジエンゴム、および天然ゴムを含むゴム、α−オレフィン誘導体、ならびにカーボンブラックを含む防舷材用ゴム組成物。
  2. 前記α−オレフィン誘導体の配合割合は、前記ゴムの総量100質量部あたり10質量部以上、35質量部以下である請求項1に記載の防舷材用ゴム組成物。
  3. 前記スチレンブタジエンゴムの配合割合は、前記ゴムの総量100質量部中の10質量部以上、40質量部以下である請求項1または2に記載の防舷材用ゴム組成物。
  4. 前記カーボンブラックの配合割合は、前記ゴムの総量100質量部あたり40質量部以上、80質量部以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の防舷材用ゴム組成物。
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