JP2019083814A - Dnaを有効成分として含む、肝機能異常または肝機能障害の予防及び/または改善のための食品組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
脂肪肝は、肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜ることによる肝臓疾患であり、脂肪肝が重症化すると、肝炎、肝硬変あるいは肝がんへ進行する可能性があるとされている。また、脂肪肝と生活習慣病との関連も指摘されている。
脂肪肝の原因としては、過食や運動不足による肥満、飲酒、糖尿病、過度な食事制限、薬剤投与などが挙げられている。
脂肪肝は、大きくアルコール性と非アルコール性に分類されている。非アルコール性の脂肪肝は、単純性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver;略称:NAFL)とも言われている。NAFLを放置して悪化させると非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;略称:NASH)に進行する。NAFLとNASHは、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease;略称:NAFLD)に分類されている。NAFLは、有効な処置によって元の正常な状態に戻すことができる可逆的な状態であり、NASHでは炎症や線維化が進行し、不可逆的な状態となる。
脂肪肝では、自覚症状がない場合が多く、放置されると肝炎や肝硬変へ進行する場合がある。
そこで、脂肪肝の発症を予防したり、可逆的な状態にある脂肪肝を改善し、肝炎や肝硬変への進行を防止することは、肝炎、肝硬変及び肝がん等の肝臓疾患の予防医学の見地から大きな意義を持つ。
脂肪肝の発症の予防や治療には、食事習慣の改善、飲酒習慣の改善、適度な運動等が有効であるとされている。
本発明の目的は、有効成分としてDNA(デオキシリボ核酸)を含む、肝機能異常または肝機能障害の予防及び/または改善のための食品組成物を提供することにある。
本発明にかかるDNAの食品組成物の製造における使用方法は、DNAを、肝機能異常または肝機能障害の予防及び/または改善のための食品組成物の製造における、肝機能異常または肝機能障害の予防及び/または改善のための有効成分として使用することを特徴とする。
DNAの摂取または投与による肝機能異常または肝機能障害の予防及び/または改善は、この可逆的な段階から、肝炎、肝硬変あるいは肝がん等の特別な治療処置が必要となる段階への進行の可能性を排除したり、かかる進行を阻止する上で極めて有効な手段である。
本発明は、かかる本発明者による新たな知見に基づいてなされたものである。
DNAとしては、天然由来DNA及び合成DNAを利用することができる。
天然由来のDNAとしては、水産物及び畜産動物由来のDNAを挙げることができる。
DNA供給用の水産物としては、サケ、マグロ、カツオ、タラ、ニシン、サバ、フグ等の魚類、タコ、イカ等の頭足類等を挙げることができる。畜産動物としては、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、トリ等を挙げることができる。これらの精巣から抽出したDNAや、これらの精巣から抽出し、必要に応じてDNA分解酵素により低分子量化したDNAを用いることができる。天然DNAとしては、サケ精巣DNAを好ましく用いることができる。
サケ精巣DNAとしては、マルハニチロ(株)の商品であるDNA-Na(商品名)や水溶性を高めたDNA-Na(L)(商品名)等の市販品を用いることもできる。
DNAの分子量としては、本発明で目的とする有効成分としての効果を得ることができれば特に限定されない。DNAの分子量としては、5,000Da〜500,000Daの範囲が好ましく、10,000Da〜300,000Daの範囲がより好ましい。
DNAは、二重らせん構造を保持しないことで、生体での吸収が良くなる一本鎖DNAを用いることが好ましい。
DNAのヌクレオチド組成は、本発明で目的とする有効成分としての効果を得ることができれば特に限定されない。好ましいヌクレオチド組成としては以下の組成を挙げることができる。
AMP:23〜33質量部
TMP:24〜34質量部
CMP:15〜25質量部
GMP:18〜28質量部
なお、これらの各ヌクレオチドの割合は常法によるDNAの分析値から確認することができる。
DNAはそのままの形態で、あるいは塩基との塩の形態で利用することができる。従って、DNAとしては、DNA及びその塩から選択した少なくとも1種を用いることができる。
DNAの塩を形成する塩基としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、リチウム塩、アルミニウム塩などの無機塩や、メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリエチルアミン塩のようなモノ―、ジ―及びトリ―アルキルアミン塩、モノ−、ジ−及びトリ−ヒドロキシアルキルアミン塩、グアニジン塩、N−メチルグルコサミン塩などの有機塩を挙げることができる。DNAのナトリウム塩(DNA-Na)は、水への溶解性や取り扱い性の点で好ましい。
DNAは、1種を、あるいは異なるDNAの2種以上を混合物として利用することができる。なお、天然由来のDNAが、ヌクレオチド組成及び分子量が異なるDNAの混合物として得られる場合でも、本発明にかかる有効成分として用いることができる。
また、天然由来のDNAとしては、食品に配合し得る形態であれば、DNAを含む抽出物やその粗精製物及び精製物の少なくとも1種を用いることができる。
また、DNAの目的とする効果が損なわれない範囲で、肝機能異常または肝機能障害の予防及び/または改善のための食品用として許容し得る、食材及びDNA以外の成分を食品組成物に配合してもよい。
食材成分としては、食品組成物の形態に応じて選択することができる。本発明にかかる食品組成物の形態は特に限定されない。例えば、本発明にかかる食品組成物の食品または食品製品としての形態には、機能性食品を含む食品そのもの、各種の加工食品、機能性食品を含む食品を製造する際に用いる添加剤、動物用飼料そのもの、動物用飼料を製造する際に用いる添加剤等が含まれる。これらの各種形態は、通常行われている方法によって、目的とする形態に応じた1種または2種以上の食材成分を用いて製造することができる。
なお、本発明の適用対象としての食品組成物は、飲料を含む食品全般を包含し、いわゆる健康食品を含む一般加工食品の他、日本国消費者庁の保健機能食品制度に規定される特定保健用食品、機能性表示食品や栄養機能食品等の保健機能食品、サプリメント等、並びに日本国以外の国において対応する特定保健用食品、機能性表示食品や栄養機能食品等の保健機能食品、サプリメント等を包含し、さらには動物に給餌される飼料も包含する。
本発明にかかる食品組成物の物理的な形態としては、固形、半固形又は液状の形態をとることができる。
サプリメント等の機能性食品として製剤化する場合の形態としては、液剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル、液剤、シロップ、粉末、ゼリー、顆粒等の各種の製剤形態を挙げることができる。
サプリメント等の機能性食品の製剤化には、製薬等において用いられている各種の担体、賦型剤、希釈剤、基剤などの添加剤が利用できる。
各種製剤で用いられる添加剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、乳糖、デキストリン、デンプン類、メチルセルロース、脂肪酸グリセリド類、水、プロピレングリコール、マクロゴール類、アルコール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース類、ポピドン、ポリビニルアルコール、ステアリン酸カルシウム等を挙げる事ができる。この際、必要に応じて、着色剤、安定化剤、抗酸化剤、防腐剤、pH調節剤、等張化剤、溶解補助剤及び/または無痛化剤等を添加する事ができる。
顆粒剤、錠剤、またはカプセル剤は、コーティング基剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等によってコーティングする事もできる。
本発明を適用し得る食品の製品形態としては、例えば、飲料(清涼飲料、茶飲料、コーヒー飲料、乳飲料、果汁飲料、炭酸飲料、栄養飲料、粉末飲料、ゼリー飲料、アルコール飲料など)、パン類、麺類、ご飯類、ゼリー状食品、菓子類(各種スナック類、焼き菓子、ケーキ類、チョコレート、ガム、飴、タブレットなど)、スープ類、乳製品、冷凍食品、水産加工品(魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺんなど)、畜産加工品(ハンバーグ、ハム、ソーセージ、ウィンナー、チーズ、バター、ヨーグルト、生クリーム、マーガリン、発酵乳など)、インスタント食品、サプリメント、カプセル、シリアル、その他加工食品、調味料及びそれらの材料等が挙げられる。
本発明にかかる食品組成物中のDNAの含有量は、その摂取や投与によって目的とする効果を得ることができるように適宜設定することができ、特に限定されない。好ましい食品組成物のDNA含有割合は、2質量%〜80質量%の範囲から選択することができる。
なお、本発明にかかる食品組成物の対象者における摂取量は特に限定されず、目的とする本発明の効果を得ることができるように適宜設定することができる。
本発明にかかる食品組成物によるDNAのヒトに対する摂取量または投与量は、好ましくは100mg/日〜180g/日、より好ましくは、300mg/日〜3g/日の範囲から選択することができる。
また、各種動物(ヒト以外)に対する摂取量または投与量は、好ましくは1mg/kg/日〜3g/kg/日、より好ましくは、3mg/kg/日〜0.5g/kg/日の範囲から選択することができる。
また、肝機能の異常または障害の改善とは、肝機能の異常が疑われる状態、肝機能の異常が生じる可能性のある状態、肝機能の異常が確認された状態、肝機能障害が疑われる状態、肝機能障害が生じる可能性のある状態、肝機能障害が確認された状態などの可逆性の段階にある肝臓の各状態を改善することを意味する。
肝機能異常や肝機能障害としては、急性や慢性のものが含まれる。
可逆性の肝機能異常や肝機能障害の段階は、種々の方法で確認あるいは推定することができる。
例えば、血液検査項目であるALT値及び/またはAST値において基準値を超えた状態を、肝機能異常や肝機能障害の発生のリスクが高い、あるいは肝機能異常や肝機能障害が発生している状態として判定または推定することができる。ALT値及びAST値の基準は、検査機関や病院等によって異なるが、これらの上限基準値を30(IU/L)として、この値を超えた状態を要注意状態として本発明にかかる食品組成物の摂取対象とすることが好ましい。
ヒトにおいては日本人間ドック協会の各種検査項目の基準、(2014年4月1日改定)(人間ドック学会・健康保険組合連合会から入手可能)によるとALT値及びAST値の基準について以下のように記載されている。
・ALT(GPT):
A異常なし:0〜30
B軽度異常:31〜40
C要経過観察・生活改善:41〜50
D要医療:51以上
・AST(GOT):
A異常なし:0〜30
B軽度異常:31〜35
C要経過観察・生活改善:36〜50
D要医療:51以上
肝機能障害の不可逆的段階に関しては、アセトアミノフェンによる肝機能障害では、ALT値が数百以上であり(特許文献1参照)、後述する実施例1における四塩化炭素による肝機能障害においても、数百〜数万と高値を示す。一方で、可逆的な肝機能障害モデルとしての後述する実施例2及び3におけるDNA-Naを含まない高脂肪餌の群では、いずれもALT値が200(IU/L)までに留まっている。これらの数値を参考として、本発明にかかる食品組成物の摂取対象者の可逆的状態を、ALT値が200(IU/L)以下であることを指標として判断することが好ましい。
なお、上述したALT値及びAST値 による可逆的な状態の判断は、検査機関や病院、あるいは国毎に設定される基準値に従って行えばよい。
また、可逆的な肝機能障害の確認は、IL-1β、TNF-αが上昇し、炎症が進行すると高値を示すIL-6の有意な亢進がないこと(実施例2の図8(C)の高脂肪餌でのデータ)や、SOD活性低下抑制が認められること(実施例2の図7の高脂肪餌でのデータ)により行うことができる。さらに、肝臓から試験用の肝臓片が採取可能である場合には、病理組織学的解析により評価することが出来る。
なお、後述する実施例1と、実施例2及び3との対比から、肝炎等の不可逆的な段階への進行が早い場合よりも、可逆的な段階を経て不可逆的な段階へある程度緩やかに進行する場合における可逆的な段階に対して適用することが好ましい。
本発明において対象となる肝機能の異常または障害の可逆的な段階の状態としては、NAFL等の非アルコール性の状態が好ましい。
カロリー過多の食事習慣や運動不足等の生活習慣等によってNAFLの発症リスクを有する対象者が本発明にかかる食品組成物を摂取することで、NAFLの発症のリスクを低減してその発症を予防することができる。更に、NAFLを発症している対象者が、本発明にかかる食品組成物を摂取することによって、NAFLの状態を改善することができる。
四塩化炭素(CCl4、0.5 mL/kg)により肝機能障害を誘導してDNAの効果を検証した。
1.餌投与
Wisterラット(7週齢、雄)に通常餌(AIN-93M、固型飼料、表1)を与え1週間馴化させた後、体重のデータから有意差がつかないように(1)A群:コントロール群(n=5)、(2)B群:CCl4+通常餌群(n=8)、(3)C群:CCl4+DNA餌群(n=8)の3群に分けた。その後、A群は、6週間の試験期間中、通常餌を与えた。B群も同様に通常餌をCCl4投与開始前4週間、CCl4投与開始後2週間、計6週間与えた。C群には、通常餌にDNA-Na原末を添加し、コーンスターチの配合量を調整したDNA餌をCCl4投与開始前4週間、CCl4投与開始後2週間、計6週間与えた。餌の成分を表1に示す。
本実施例におけるDNA餌投与の場合における試験スケジュールを図1に示す。
体重および摂餌量は、餌馴化期間は週に一度測定し、CCl4の皮下投与時は投与直前に測定し、各群における平均値を算出した。採血は、群分け前および試験餌馴化4週間後、CCl4の皮下投与2、4回目の投与24時間後に行った。
・炭酸カルシウム:357
・リン酸二水素カリウム:250
・クエン酸三カリウム:28
・塩化ナトリウム: 74
・硫酸カリウム:46.6
・酸化マグネシウム:24
・クエン酸第二鉄:6.06
・スミソナイト(菱亜鉛鉱):1.65
・炭酸マンガン:0.63
・炭酸第二銅:0.324
・ヨウ素酸カリウム:0.01
・セレン酸ナトリウム:0.0103
・モリブデン酸アンモニウム・4H2O:0.00795
・メタケイ酸ナトリウム・9H2O:1.45
・硫酸クロムカリウム・12H2O:0.275
・塩化リチウム:0.0174
・ホウ酸:0.0815
・フッ化ナトリウム:0.0635
・炭酸ニッケル(II)・4H2O:0.0306
・メタバナジン酸アンモニウム:0.0066
・ショ糖:209.7832
表1におけるAIN−93ビタミン配合は、以下の組成(g/kg)を有する。
・ニコチン酸:3
・パントテン酸カルシウム:1.6
・塩酸ピリドキシン:0.7
・塩酸チアミン: 0.6
・リボフラビン:0.6
・葉酸:0.2
・D−ビオチン:0.02
・ビタミンB−12(シアノコバラミン:0.1%):2.5
・ビタミンE(all−rac−アルファ−トコフェロール酢酸エステル:50%):15
・ビタミンA(all−trans−パルミチン酸レチノール:500,000U/g):0.8
・ビタミンD3(コレカルシフェロール:400,000U/g):0.25
・ビタミンK(フィロキノン):0.075
・ショ糖:974.655
表1におけるDNA-Na原末として、マルハニチロ(株)の商品である「DNA-Na」を用いた。
なお、DNA-Na原末のDNA及び各ヌクレオチドの含有量を常法により分析した結果は以下の通りである。
・DNA:73.9質量%
・5'-dCMP:14.5質量%
・5'-dAMP:20.7質量%
・5'-dTMP:21.5質量%
・5'-dGMP:17.2質量%
餌馴化後、A群には、オリーブ油、B群およびC群にはCCl4をオリーブ油に混合したもの(CCl4:オリーブ油=2:3、質量比)を0.5 mL/kgとなるように皮下投与した(週2回投与、計4回)。採血は4回目の投与24時間後に行い、その後剖検した。肝臓は、灌流後に摘出し、生理食塩水で洗い水分を軽く拭き取り全体の湿重量を測定した。また摘出した肝臓から、それぞれ抗酸化能測定(SOD測定)用および病理切片用にサンプリングを行った。
約200 mg量り取った肝臓片は3 mL凍結破砕用チューブに入れ液体窒素で凍結し、SOD活性測定用サンプルは液体窒素気相下(−180℃)、それ以外のサンプルは−80℃で保存した(計3本)。病理切片用サンプルは、5 mm角にカットし10質量%ホルマリン溶液で固定し、病理学的評価を実施した。残りの肝臓は液体窒素で凍結し、−80℃で保存した。
3.抗酸化能測定(SOD測定)
酸化ストレスマーカーであるSOD活性は、肝機能障害の指標の一つとして知られている(CAI, Xiaxia, et al. Dietary nucleotides supplementation and liver injury in alcohol-treated rats: a metabolomics investigation. Molecules, 2016, 21.4: 435.)。
SOD活性測定を以下のようにして行った。
サンプル調製及び測定は、SOD assay Kit-WST S311のテクニカルマニュアル(株式会社同仁化学研究所)に従い行った。
1.通常餌とDNA餌の成分分析
通常餌とDNA餌の栄養分析およびDNA含有量の分析を常法により行った。得られた結果を表2に示す。表2に示すように、通常餌と DNA餌とで栄養成分に大きな違いはなかった。
群分けから剖検日までの各群に属するラットの体重と、餌馴化期間中及びCCl4投与週における群分け時、試験餌投与4週間後及び四塩化炭素投与4回目後の各群の平均体重および平均合計摂餌量を表3に示す。
常法により測定したALT値、 AST値を図2(A)及び(B)に示す。図2中のA、B、Cは、A群、B群、C群をそれぞれ示す。
これらの値に関して、コントロールのA群とB群(CCl4+通常餌)及びC群(CCl4+DNA餌)(以下これら2群をまとめる時、CCl4投与群という)との間では有意な差が認められた。しかし、B群とC群との間では有意な差は認められなかった。
また、肝臓の病理組織学的観察の結果、コントロール群に比べ、CCl4投与群は肝細胞の脂肪化がみられた。しかし、病理切片でのB群とC群との間に明らかな差は観察されなかった。
血液指標に関して、CCl4投与によりALT値およびAST値において有意に大幅な増加が認められ、肝機能障害の誘導が確認できた。この試験において、ALT値およびAST値の増加について、B群およびC群との間では、有意な差は認められなかった。これらのことから、CCl4による肝機能障害においてはDNA-Naの効果は認められなかった。
高脂肪餌により脂肪肝になる動物モデルを用いてDNAの脂肪肝に対する効果について検証した。餌により脂肪肝が誘発されたことを体重および血液指標、脂肪重量により確認した。本試験において、高脂肪DNA餌群は、高脂肪餌群と比較し、ALT値及びAST値の増加およびSOD活性の低下を有意に抑制する効果が認められた。
1.群分けから試験餌投与
C57BL/6Jマウス(7週齢、雄)に1週間、対照群の餌で馴化後、体重のデータから有意差がつかないように、コントロールとしてのA群(n=5)、並びに高脂肪餌試験群としてのC群(n=11)及びDNA-Na原末配合高脂肪餌群のD群(n=10)の3群に分けた(表4)。
チャールス・リバー フォーミュラーに基づき、日本チャールス・リバー株式会社が定める品質規格、包装、表示などに則り製造している飼料。
群分け後、それぞれのマウスに表4に示す配合の餌を12週間自由摂取させた。本実施例における試験スケジュールを図3に示す。
2−1.体重、脂肪量、血液検査、NAFLD Activity score(NAS)
群分け後、それぞれの試験群の餌を自由摂取させ、4週間ごとに尾静脈採血を行い、常法により測定した血液指標(ALT、AST)により肝機能障害誘導を確認した。また、血液サンプルを用いて、総コレステロール(T-CHO)値、トリグリセリド(TG)値及び遊離脂肪酸(NEFA)値を常法により測定した。
なお、尾静脈採血は、群分け前および試験餌投与4、8、12週間後において、16時間絶食後に行った。また、体重および摂餌量は週に一度測定した。
剖検は、試験餌投与12週間後の尾静脈採血後に実施した。肝臓は、灌流後に摘出し、湿重量を測定した。肝臓全体の湿重量は、体重当たりの肝重量比(%)([肝湿重量(g)/体重(g)]×100)で算出した。また、摘出した肝臓は、それぞれ抗酸化能(SOD)測定用、RNA抽出用および病理切片用(組織観察およびNASの算出)にサンプリングを行った。
SOD測定用サンプルは、約100mg量り取った肝臓片を3 mL 凍結破砕用チューブに入れ液体窒素で凍結し、液体窒素気相下(−180℃)で保存した。RNA抽出用サンプルも抗酸化能測定用と同様に、約100 mg 量り取り1.5 mL容エッペンチューブに入れ液体窒素で凍結し、−80℃で保存した。病理切片用サンプルは、5 mm角にカットし10質量%ホルマリン溶液で固定し、病理組織検査を実施した。
NASは、1個体あたり1切片での、脂肪化、肝実質における炎症、肝細胞障害についてそれぞれ写真を撮影し、撮影した画像を観察して、常法によりスコア化して作製した。残りの肝臓はRNA抽出用サンプルと同様の操作を行い、−80℃で保存した。
睾丸周辺脂肪組織を摘出後、その湿重量を測定した。測定した湿重量は、体重当たりの脂肪量比(%)([脂肪組織湿重量(g)/体重(g)]×100)で算出した。
2−2.SOD測定
サンプル調整および測定は、実施例1と同様に行った。
2−3−1.RNA抽出及びcDNA合成
サンプリングした肝臓片から、ISOGEN(株式会社ニッポンジーン)を用いて製品添付の方法でtotal RNAを抽出した。抽出したtotal RNAの純度と濃度は、NanoDrop 2000c(超微量分光分析装置、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を用いて常法により算出した。その後、total RNAを鋳型としてPrimeScript RT reagent Kit (Perfect Real Time)を用いて製品添付の方法でcDNAを合成した。
2−3−2.リアルタイムPCR
リアルタイムPCRは、THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡株式会社)のテクニカルマニュアルに従って行った。合成したcDNA を用いて、炎症系サイトカインの発現量を測定した。95.0 ℃ 30秒反応後、95.0℃、15秒、56.0℃、15秒、72.0℃、30秒の反応を40サイクル行った。
<結果>
1.通常餌とDNA餌の成分分析、並びに体重及び摂餌量の推移
群分け後投与した餌の栄養分析及びDNA含有量の分析を常法により行った。得られた結果を表5に示す。
入荷日から剖検日までの各週において測定した各群のマウスの一日当たりの平均摂餌量を表6に示す。群分け時、試験餌投与12週間後の各群のマウスの平均体重を表7に示す。
2−1.脂肪量、生化学検査結果、NASスコアリング結果
12週間後の体重に関しては、先に表7に示した通り、C群はA群と比較して高脂肪餌による有意な増加が認められたのに対し、D群は有意な増加は認められなかった。なお、C群とD群との間には有意な差は認められなかった。
12週間後の各群における脂肪重量比及び肝重量比の結果を図4(A)及び(B)に示す。図4中のA、C、Dは、A群、C群、D群をそれぞれ示す。
脂肪重量比において、A群とC群、A群とD群との間では、有意な増加が認められたが、C群とD群との間には有意な増加は認められなかった。一方で、肝重量比はどの群においても違いは見られなかった。
12週間後の各群における肝機能マーカーであるALT値及びAST値の測定結果を図5(A)及び(B)に示す。図5中のA、C、Dは、A群、C群、D群をそれぞれ示す。
ALT値において、A群に比べ、CおよびD群は有意な増加が認められた。また、C群に比べ、D群は有意に低値を示した。AST値において、A群に比べ、C群は有意な増加が認められ、D群はA群と有意な差が認められなかった。
他の生化学指標としてのT-CHO値、TG値及びNEFA値の各群における測定結果を図6(A)〜(C)にそれぞれに示す。図6中のA、C、Dは、A群、C群、D群をそれぞれ示す。
T-CHO値は、A群に比べて、C群およびD群は有意に増加していた。TG値及びNEFA値は、A群に比べ、C群およびD群は有意に減少していた。
また、肝臓の病理組織検査から、A群は正常動物の範囲内と考えられる肝細胞増大(微小脂肪滴沈着の増加による軽微なもの)がみられたが、C群及びD群はほとんどの個体に軽度、中程度の小葉周辺性の肝細胞脂肪化(脂肪滴は大滴性および中滴性)がみられた。D群はC群と比較して、中程度の小葉周辺性の肝細胞脂肪化がみられた個体が減少し、軽減化傾向がみられた。
NASスコアリングの結果を表8に示す。
12週間後の各群におけるSOD活性測定の結果を図7に示す。図7中のA、C、Dは、A群、C群、D群をそれぞれ示す。
SOD活性に関して、A群とC群、A群とD群の間には有意な差が認められなかったが、C群に比べ、D群は有意な高値を示していた。
2−3.リアルタイムPCR法による炎症系サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6)の発現量測定結果
肝機能の低下の指標の一つとして知られている炎症系サイトカインのmRNA発現量を調べた。その結果を図8(A)〜(C)に示す。図8中のA、C、Dは、A群、C群、D群をそれぞれ示す。
炎症初期から産生されるTNF-αとIL-1βについて、高脂肪DNA混餌もしくは高脂肪餌の摂取による遺伝子発現の変動が認められた(図8(A)及び(B))。TNF-αに関しては、通常餌と比較して高脂肪餌による遺伝子発現の増加が認められた(A群対C群)が、DNA投与による遺伝子発現の有意な増加抑制が認められた(C群対D群)。IL-1βに関しては、通常餌と比較して高脂肪餌による有意な遺伝子発現増加が認められた(A群対C群)が、DNAの投与による遺伝子発現の有意な増加は認められなかった(A群対D群)。IL-6では各群とも差は見られなかった。
生活習慣により肝機能が低下するNAFLDは、脂肪が原因の肝疾患であり、脂肪が肝臓に溜まることが発症と進展に深く関与することが知られている。脂肪が肝臓に溜まるメカニズムは、(I)過栄養や運動不足により内臓脂肪が蓄積、(II)内臓脂肪から遊離脂肪酸の分泌亢進、アディポネクチンの分泌低下、TNF-αの分泌亢進などが起こる。遊離脂肪酸は門脈を介して肝臓の組織に到達し、中性脂肪として蓄積し、脂肪肝の形成に直接関与する。さらに、遊離脂肪酸やアディポサイトカイン(アディポネクチンやTNF-αなど)の分泌異常により、インスリン抵抗性が惹起され、肝臓への脂肪蓄積がさらに促進される。ここまでの段階をNAFL(NAFLDの第一段階)とされている(総合医科学研究所HP:http://www.soiken.info/clinical/area03/content03.html及びNAFLD/NASH診療ガイドライン2014,南江堂, 2014参照)
<考察>
今回の試験では、このNAFLを対象としたDNA-Naの有効性を検証するために、脂肪肝誘導動物モデルの確立とその有効性検証を行った。
高脂肪餌により脂肪肝になる動物モデルが確立できたことを、体重および血液指標、脂肪重量比により確認した。高脂肪餌によって内臓脂肪組織の蓄積を、睾丸周辺脂肪組織の湿重量を測定することにより確認した。また、肝機能の低下をALT値およびAST値により確認(図5(A)及び(B))し、肝機能の低下に伴い血中のTG値が低下することを確認した(図6(B))。さらに、炎症系サイトカインの発現量測定結果から、A群と比べC群はIL-1βでは有意な上昇が認められ、TNF-αでは有意な差ではなかったが増加傾向が認められた(図8(A)、(B))。また、IL-6の発現量に有意な差がなかったこと(図8(C))から、肝臓への損傷が少ない状態であると捉えることができ、今回のモデルは可逆的な肝機能障害モデルと考えられる。
従って、これらのことから、高脂肪餌による食事性慢性肝機能障害モデルが確立出来たといえる。
この時、高脂肪DNA混餌によるD群において、ALT値およびAST値は有意な増加抑制が認められた(図5(A)、(B))。加えて、D群のSOD活性は、高脂肪餌群のC群と比べて、有意な高値を示した。また、TNF-αでは、D群はC群と比べて有意な増加抑制が認められ(図8(A))、IL-1βでは、D群はC群と比べて有意な差ではなかったが増加抑制傾向が認められた(図8(B))。さらに、図9に示す病理組織学的検査結果(HE染色)からも、DNA投与により脂肪肝が抑制されていた。
以上のことから、DNAは、NAFLDの第一段階であるNAFLを抑制する効果を持つことが確認された。
DNAの肝機能に対する効果を評価するため、飼育期間に応じて、脂肪肝から肝癌まで段階的に病態が進行するSTAM(R)マウス(登録商標)を用いて試験を行った。STAM(R)マウスは、II型糖尿病を背景に6週齢時に脂肪肝、8週齢時に脂肪性肝炎、9週齢時に肝線維化、20週齢時に肝癌を発症するヒトのNASHの進行と予後に類似した病理所見を示すモデルマウスである。本試験は、試験期間を脂肪性肝炎 (不可逆的な肝機能の低下) が生じる8週齢まで実施した。本実施例においても実施例2と同様に、DNAは、肝機能低下の初期段階から観察される血液指標 (ALT) や脂肪滴蓄積の抑制に起因する肝機能改善効果を示した。しかし、肝臓組織の線維化や炎症性細胞の浸潤などの不可逆的な肝機能低下への移行を緩和することはできなかった。以上の結果から、DNAは、可逆的な肝機能の低下時の摂取に有効であると考えられる。
1.試験食投与
C57BL/6Jマウス(雌) の馴化飼育後、自然分娩させ、出生した雄をモデル動物作製に使用した。STAM(R)マウスは、2日齢時にストレプトゾトシンを背部皮下に投与することによって作製した。生後28 ± 2日齢時に離乳し、それ以降は、高脂肪餌 (High Fat Diet 32)で飼育した。
高脂肪餌投与開始日の前日に、STAM(R)マウスを平均体重が均等になるように体重層別化無作為抽出法によって、表9に示す2群(n=8)に群分けを行った。また、高脂肪餌及び高脂肪DNA混餌の成分の分析結果を表10に示す。
High Fat Diet 32は、江崎治博士が配合設計した高脂肪飼料をベースとし、その一部を変更して糖尿病・肥満モデル動物に好適な飼料として日本クレア株式会社が開発した飼料。
群分け後、図10に示すスケジュールで試験を行った。それぞれの試験群の餌を自由摂取させ、4〜8週齢時に頬採血を行い、血液指標(ALT、AST)により肝機能障害の進行を確認した。また、体重は投与期間中毎日、摂餌量は1週間に2回の割合で測定した。剖検は、8週齢時の頬採血後に実施した。摘出した肝臓の湿重量を実施例2の方法で測定後NAS及びFibrosis areaの算出に供した。NASは、実施例2の方法と同様にして行った。また、Fibrosis areaの算出は、シリウスレッド (SR) 染色を行った標本を撮影し、撮影した画像をもとに、ImageJ software (National Institute of Health) を用いて、各視野におけるシリウスレッド陽性面積を計測した。
1.群分けから試験餌投与
投与期間中の各群の平均体重、摂餌量を表11に示す。STAM(R)群と高脂肪DNA混餌群との間に体重推移と摂餌量の有意な差は認められなかった。
肝機能マーカーであるALT値及びAST値の推移を図11(A)及び(B)に示す。図11中のSTAM(R)群及びDNA群は、STAM(R)群及び高脂肪DNA混餌群をそれぞれ示す。
これらの値は、6及び8週齢時において、STAM(R)群と比較して高脂肪DNA混餌群は一貫して低値を示し、特に8週齢時ではALT値の増加を有意に抑制した。
続いて、8週齢時の肝臓について肝重量比の測定、病理組織学的分析(NAS、Fibrosis area)を行なった。
肝重量比の測定結果を表12に示す。肝重量比では、STAM(R)群と高脂肪DNA混餌群との間に有意な差は認められなかった。
また、HE染色像からのNASスコアを表13に示す。図13にマウス肝臓の病理組織検査結果(HE染色)によるNASスコアを示す。図13におけるSTAM(R)及びDNAは、STAM(R)群及び高脂肪DNA混餌群での結果をそれぞれ示す。
可逆的な肝機能の低下 (NAFL) が生じている段階では、病理組織学的分析において脂肪滴の蓄積のみが確認される。これを基盤として、炎症性細胞の浸潤や肝細胞の風船様変性が生じるとともに抗酸化機能の低下や線維化が誘導され、肝機能障害は不可逆的な段階(脂肪性肝炎から線維化)に移行することが知られている。本試験における8週齢時のSTAM(R)マウスでは、実施例2の試験とは異なり、あきらかに不可逆的な段階まで肝機能障害が進行していた。このとき、高脂肪DNA混餌群においても、一定の緩和効果は得られたものの、最終的には不可逆的な段階まで肝機能の低下が進行していた。DNA摂取によって機能低下が緩和された項目に着目すると、ALT値の上昇、脂肪滴蓄積、肝細胞の風船様変性が挙げられる。この中でも、特にALT値の(緩やかな)上昇と脂肪滴蓄積に関しては、肝機能低下の初期段階から観察される因子である。よって、DNAは、肝機能の低下の初期段階、すなわち可逆的な肝機能低下時の摂取が好ましいと考えられる。
30歳以上70歳未満の健康な成人男性15名を対象に、サケ白子核酸を12週間の継続摂取した時の肝機能に及ぼす効果を検証した。DNA群(8名)はDNA錠を1日4粒(DNA 530 mg/4粒)、プラセボ群(7名)はDNAの替りにデキストリンを配合したプラセボ錠を1日4粒摂取させた。肝機能に関する血中指標としてALT、ASTおよびγGTPの測定を行った。また、腹部CTスキャンを行い、L/S(liver/spleen)比を算出し、脂肪肝の評価を行った。
なお、DNA錠には、DNA-Na原末として、マルハニチロ(株)の商品である「DNA-Na」を用いた。
Claims (14)
- 食材成分と、有効成分としてのDNAを含むことを特徴とする肝機能異常または肝機能障害の予防及び/または改善のための食品組成物。
- 前記肝機能異常または肝機能障害が、可逆的肝機能異常または肝機能障害である、請求項1に記載の食品組成物。
- 前記DNAの投与量または摂取量が、300mg/日〜3g/日である、請求項1または2に記載の食品組成物。
- 前記DNAが、水産物及び畜産動物の精巣DNAである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の食品組成物。
- 前記DNAが、魚類由来DNAである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の食品組成物。
- 前記DNAが、サケ精巣DNAである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の食品組成物。
- 前記DNAの分子量が、5,000Da〜500,000Daの範囲にある請求項1乃至6のいずれか1項に記載の食品組成物。
- DNAの、肝機能異常または肝機能障害の予防及び/または改善のための食品組成物の製造における、肝機能異常または肝機能障害の予防及び/または改善のための有効成分としての使用方法。
- 前記肝機能異常または肝機能障害が、可逆的肝機能異常または肝機能障害である請求項8に記載の使用方法。
- 前記DNAの投与量または摂取量が、300mg/日〜3g/日である、請求項8または9に記載の使用方法。
- 前記DNAが、水産物及び畜産動物の精巣DNAである請求項8乃至10のいずれか1項に記載の使用方法。
- 前記DNAが、魚類由来DNAである請求項8乃至10のいずれか1項に記載の使用方法。
- 前記DNAが、サケ精巣DNAである請求項8乃至10のいずれか1項に記載の使用方法。
- 前記DNAの分子量が、5,000Da〜500,000Daの範囲にある請求項8乃至12のいずれか1項に記載の使用方法。
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