JP2019050097A - リチウム空気二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】廉価なカーボン材料を用いて実用的な放電容量を実現できるリチウム空気二次電池を提供する。【解決手段】正極活物質として空気中の酸素を用いる正極(空気極101)と、負極活物質として金属リチウム又はリチウム含有材料を用いる負極102と、リチウム塩を含む有機電解液103とを有するリチウム空気二次電池100において、正極101は、カーボンとバインダーが充填された発泡金属シートを含み、発泡金属シートは、複数の該発泡金属シートが積層されて空気極101を構成する。【選択図】図2

Description

本発明は、正極活物質として酸素を用いるリチウム空気二次電池に関する。
正極活物質として空気中の酸素を用いるリチウム空気電池は、電池外部から常に酸素が供給され、電池内に大量の負極活物質である金属リチウムを充填することができる。このため、電池の単位体積当たりの放電容量の値を大きくできることが知られている。
これまでに、PtCo合金/カーボンナノチューブを空気極材料として用いて、重量当たりの放電容量が1000mAh/gで70回の充放電サイクルが可能であることが非特許文献1に開示されている。
また、PdFe合金/窒素ドープ酸化グラフェンを空気極材料として用いて、重量当たりの放電容量が1000mAh/gで400回の充放電サイクルが可能であることが非特許文献1に開示されている。
Byung Gon Kim, Hyung-Jin Kim, Seoin Back, Kwan Woo Nam, Yousung Jung, Young-Kyu Han, Jang Wook Choi," Improved reversibility in lithium-oxygen battery: Understanding elementary reactions and surface charge engineering of metal alloy catalyst",Scientific Reports, 4 : 4225, DOI: 10.1038 (2014). Limin Leng, Jing Li, Xiaoyuan Zeng, Huiyu Song, Ting Shu, Haishui Wang, Shijun Liao." Enhancing the cyclability of Li-O2 batteries using PdM alloy nanoparticles anchored on nitrogen-doped reduced graphene as the cathode catalyst", Journal of Power Sources, Vol. 337, pp.173-179 (2017).
しかしながら、非特許文献1,2に開示されたリチウム空気二次電池の放電容量は、それぞれ、0.6mAh/cm2、0.2 mAh/cm2程度であり、汎用的なリチウムイオン電池の正極面積当たりの放電容量(2〜5 mAh/cm2)と比較すると非常に小さいという課題がある。また、カーボンナノチューブやグラフェン等のカーボン材料は、高価であるという課題もある。
本発明は、これらの課題に鑑みてなされたものであり、廉価なカーボン材料を用いて実用的な電極面積当たりの放電容量を実現できるリチウム空気二次電池を提供することを目的とする。
本実施形態の一態様に係るリチウム空気二次電池は、正極活物質として空気中の酸素を用いる正極と、負極且つ物質として金属リチウム又はリチウム含有材料を用いる負極と、リチウム塩を含む有機電解液とを有するリチウム空気二次電池において、前記正極は、カーボンとバインダーが充填された発泡金属シートを含むことを要旨とする。
本発明によれば、廉価なカーボン材料を用いて実用的な電極面積当たりの放電容量を実現できるリチウム空気二次電池を提供することができる。
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池の構成を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池のより詳細な構成例を示す断面図である。 空気極の構造を簡略に示す模式図であり、(a)は本実施形態の実験例1、(b)は比較例1、(c)は比較例2のそれぞれの空気極の構造を簡略に示す模式図である。 図3に示す実験例1、比較例1、及び比較例2の初回放電曲線を示す図である。 空気極の電極断面構造を簡略に示す模式図であり、(a)は発泡金属シートを積層した図、(b)は発泡金属シートを単層にした図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
〔リチウム空気二次電池の概要〕
図1は、本実施形態に係るリチウム空気二次電池の基本的な構成図である。同図に示すように、リチウム空気二次電池100は、空気極101と、リチウムを含んで構成された負極102と、空気極101と負極102に挟まれて配置される有機電解液103とを備える。空気極101は正極として機能する。
空気極101は、触媒、導電性材料、支持体を構成要素に含むことができる。負極102は、金属リチウム又はリチウムイオンを放出及び吸収できるリチウム含有合金などの物質を構成要素とすることができる。
以下、本実施形態のリチウム空気二次電池100の各構成要素について説明する。なお、電解液とは、ここでは電解質が液体形態である場合をいう。
(I)空気極
本実施形態の空気極101は、触媒、導電性材料や支持体を少なくとも含み、必要に応じて結着剤等の添加剤を含む。
(I−1)触媒
本実施形態のリチウム空気二次電池100では、空気極101に触媒としてCr,Mn,Fe,Co,Niの中の少なくとも1種の金属を含む酸化物、もしくは、Pt,Ru,Irの中の少なくとも1種の金属を含み、さらに望ましくは、少なくともPtとRuを含む材料であることが求められる。
リチウム空気二次電池100の空気極101では、電解液/電極触媒/ガス(酸素)の三相部分において、電極反応が進行する。即ち、空気極101中に有機電解液103が浸透し、同時に大気中の酸素ガスが供給され、電解液−電極触媒−ガス(酸素)が共存する三相部位が形成される。前記電極触媒が高活性であれば、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)がスムーズに進行し、電池性能は大きく向上することになる。
空気極101での放電反応は次のように表すことができる。
2Li+O+2e→Li …(1)
式(1)中のリチウムイオン(Li)は、負極102から電気化学的酸化により有機電解液103中に溶解し、この有機電解液103中を空気極101表面まで移動してきたものである。また、酸素(O)は、大気(空気)中から空気極101内部に取り込まれたものである。なお、負極102から溶解する材料(Li)、空気極101で析出する材料(Li)、及び空気(O)を図1の構成要素と共に示した。
本実施形態で用いられる触媒は、正極活物質である酸素との相互作用が強いので、多くの酸素種を材料表面上に吸着でき、空気極101の電極反応を活性化させることができる。
このように、酸化物表面上に吸着された、又は酸素空孔内に吸蔵された酸素種は、式(1)の酸素源(活性な中間反応体)として酸素還元反応に使用され、上記反応が容易に進むようになる。また、式(1)の逆反応である充電反応に対しても、上記の材料は活性を有している。従って、電池の充電、つまり、空気極101上での酸素発生反応も効率よく進行する。
本実施形態のリチウム空気二次電池100では、電池の効率を上げるために、電極反応を引き起こす反応部位(上記の電解液/電極触媒(または導電性材料)/空気(酸素)の三相部分)がより多く存在することが望ましい。このような観点から、本実施形態では、上述の三相部位が電極触媒表面に多量に存在することが重要であり、使用する触媒は比表面積が高い方が好ましい。
本実施形態で使用される触媒は、公知の各種手法により合成することができる。例えば、合成法には、固相法や液相法などの公知のプロセスを用いることができる。しかし、高比表面積の粒子が得られる湿式法を用いることがより好ましい。
本実施形態に係るリチウム空気二次電池においては、空気極中での触媒含有量は、例えば5を越え、60重量%以下あることが望ましい。その他の成分の割合は、従来のリチウム空気二次電池と同様である。
(I−2)カーボン材料
本実施形態の空気極に含まれる導電性材料は、カーボンであることが好ましい。特に、本実施形態の導電性材料としては、以下のものに限定されないが、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類、活性炭類、グラファイト類、カーボンファイバー類等を挙げることができる。また、これらのカーボンは、例えば市販品として、又は合成により入手することが可能である。(I-1)の触媒と同様に、電極反応を引き起こす反応部位(上記の電解液/カーボン材料/空気(酸素)の三相部分)がより多く存在することが望ましい。このような観点から、使用するカーボン材料は比表面積が高い方が好ましく、BET比表面積の値としては1000m2/g以上であることが望ましい。さらに、安価なカーボンブラック類を使用してもよい。
(I−3)結着剤(バインダー)
空気極101は結着剤(バインダー)を含むことができる。この結着剤は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリブタジエンゴムなどを例として挙げることができる。これらの結着剤は、粉末として又は分散液として用いることができる。
(I−4)支持体
空気極支持体としては、導電性があり、カーボンや触媒を保持することが可能な構造を
有し、かつ、空気透過性を有していることが必須である。また、空気電池の作動雰囲気(有機電解液中)や作動条件(2V程度の高電圧)において腐食性がなく、形状安定性を有していることが望まれる。
(I−5)空気極の作製法
空気極101は以下のように調製することができる。使用する支持体の種類によって、空気極101の作製法は異なる。
支持体としては、網状の金属メッシュ、繊維状の導電性クロスもしくは紙状の導電性ペーパーや、金属内部に大量の気孔を有すため多くの空隙を有する多孔性(概ね空隙率80%以上)の発泡金属シートが使用可能である。なお、金属の材質としては上記の条件下で安定性が高いチタンやニッケルが望ましく、発泡金属シートの空隙率は、電極材料の保持率と空気の透過性が良好な90〜97%の範囲であることが望ましい。導電性クロス・ペーパについては、カーボンクロスやカーボンペーパーの入手が容易で空気極材料として使用することができる。本実施形態においては、特にニッケルを主成分とする発泡金属シートを使用することで、電池の大放電容量化が実現できることを明らかにしている。
まず、触媒粉末、カーボン粉末及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)のようなバインダー粉末をN-メチル-2-ピロリドン溶剤に所定比に混合しスラリーを調製した。各支持体による空気極の作製法の概要は以下の通りである。
(金属メッシュ)
上記のスラリーを金属メッシュ上に塗布し、乾燥し空気極を作製した。必要に応じて、塗布と乾燥を繰り返し行い、所望の電極厚さになるように調整した。
(導電性クロス・ペーパー)
上記のスラリーを導電性クロス・ペーパー上に塗布し、乾燥し空気極を作製した。必要に応じて、塗布と乾燥を繰り返し行い、所望の電極厚さになるように調整した。
(発泡金属シート)
上記のスラリーを発泡金属シート上に滴下し、金属製スパチュラでスラリーがシート中に浸透するように、ある程度、力を加えながら練り込んだ。その後、乾燥を行い、重量測定を行い、充填量を測定した。この操作を必要に応じて繰り返すことにより、カーボン充填量の調整を行った。
(II)負極
本実施形態のリチウム空気二次電池100は、負極102に負極活物質を含む。この負極活性物質は、リチウム二次電池の負極材料として用いることができる材料であれば特に制限されない。例えば、金属リチウムを挙げることができる。或いは、リチウム含有物質として、リチウムイオンを放出及び吸蔵することができる物質である、リチウムと、シリコン又はスズとの合金、或いはLi2.6Co0.4Nなどのリチウム窒化物を例として挙げることができる。
なお、上記のシリコン又はスズの合金を負極として用いる場合、負極を合成する時にリチウムを含まないシリコン又はスズなどを用いることもできる。しかし、この場合には、空気電池の作製に先立って、化学的手法又は電気化学的手法(例えば、電気化学セルを組んで、リチウムとシリコン又はスズとの合金化を行う方法)によって、シリコン又はスズが、リチウムを含む状態にあるように処理しておく必要がある。具体的には、作用極にシリコン又はスズを含み、対極にリチウムを用い、有機電解液中で還元電流を流すことによって合金化を行う等の処理をしておくことが好ましい。
リチウム空気二次電池100の負極102は、例えば、リチウム金属を負極とする場合には、複数枚の金属リチウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極102を作製すればよい。
ここで、放電時の負極(金属リチウム)の反応は以下のように表すことができる。
(放電反応) Li→Li+e (2)
なお、充電時の負極においては、式(2)の逆反応であるリチウムの析出反応が起こる。
(III)電解液
(III−1)有機電解液
有機電解液103としては、正・負極間でリチウムイオンの移動が可能な物質であればよく、リチウムイオンを含む金属塩(リチウム塩)を溶解した非水溶媒を使用でき、溶質として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)やリチウムトリフルオロメタンスルホニルアミド[(CFSO)2NLi](LiTFSI)などを用いることができ、溶媒としては、例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸メチルイソプロピル(MIPC)、炭酸メチルブチル(MBC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸エチルイソプロピル(EIPC)、炭酸エチルブチル(EBC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸ジイソプロピル(DIPC)、炭酸ジブチル(DBC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸1,2−ブチレン(1,2−BC)などの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン(DME)などのエーテル系溶媒、γ−ブチロラクトン(GBL)などのラクトン系溶媒、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDMEなどのグライム系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒あるいはこれらの中から二種類以上を混合した溶媒を挙げることができる。混合溶媒を用いる場合の混合割合は、特に限定されない。
また、上記のような有機電解液だけでなく、リチウムイオン導電性を有する固体電解質、高分子電解質、リチウム金属塩を溶解させたイオン液体なども使用することができる。
(III−2)添加剤
本実施形態では、電解液に添加剤を加えることにより、電池性能改善が実現される。具体的には、添加剤として、Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Ruの中の少なくとも1種の金属を含む金属錯体が用いられる。具体的な化合物群としては、ポルフィリン系,フタロシアニン系,サレン系の金属錯体などを使用することができる。この中でも、特にMnサレンを用いた時に最も良好な電池性能を得ることができる。具体的な電解液への添加量としては、0.01〜3wt%の範囲であることが望ましい。
(IV)他の要素
本実施形態のリチウム空気二次電池100は、上記構成要素に加え、セパレータ、電池ケース、金属メッシュ(例えばチタンメッシュ)などの構造部材、その他のリチウム空気二次電池に要求される要素を含む。これらの要素は、従来のものを使用することができる。
〔リチウム空気二次電池の構成〕
次に、本実施形態のリチウム空気二次電池100の構成について説明する。
図2は、本実施形態のリチウム空気二次電池100のより詳細な構成例を示す断面図である。
図2に示すリチウム空気二次電池100は、円柱形のリチウム空気電池であり、空気極101、負極102、有機電解質103、セパレータ105、空気極支持体115、空気極固定用リング104、負極固定用リング107、負極固定用座金108、負極支持体109、固定ねじ110、Oリング111、空気極端子121、及び負極端子122を備える。
空気極101、負極102、有機電解質103、及びセパレータ105は、円筒形状の空気極支持体115に収容される。空気極支持体115は、円筒内中央部に仕切り151があり、仕切り151により空気極101が配置される第1領域105aと、負極102及びセパレータ105が配置される第2領域105bとに区画されている。また、仕切り151は中央部が開口しており、開口部により第1領域105aと第2領域105bが連通している。
液状の有機電解質103は、仕切り151の開口に配置され、空気極101およびセパレータ105に挟まれている。セパレータ105には電解質103が含浸している。なお、セパレータ105の周囲にも有機電解質103は配置されている。
また、空気極101は、ポリテトラフルオロエチレン (PTFE)より構成された空気極固定用リング104と仕切り151とに挟まれて、空気極支持体115の円筒内の第1領域105aに固定されている。空気極固定用リング104の開口内において、空気極101と空気との接触する電極の有効面積は、2cm2とされている。一方、セパレータ105は、PTFEより構成された負極固定用リング107と仕切り151とに挟まれて、空気極支持体115の円筒内の第2領域105bに固定されている。このようにして、液状の有機電解質103が、仕切り151の開口において空気極101とセパレータ105との間に封入されている。
また、負極102は、負極固定用リング107の内部で、負極固定用座金108が積層され、この上に金属から構成された負極支持体109が被せられている。負極102は、厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔が同心円上に重ねられて構成され、負極固定用座金108に圧着されている。負極102は、有効面積が2cm2とされている。負極支持体109は、固定ねじ110により空気極支持体115に固定されている。また、空気極支持体115と負極支持体109との間には、Oリング111が配置されている。
固定ねじ110により空気極支持体115の側に押しつけられている負極支持体109により、負極固定用座金108を介し、負極102がセパレータ105の方向に押圧され、セパレータ105に圧接されている。
なお、空気極支持体115は、金属から構成されているが、図示していないが、PTFEに被覆され、電解質103,セパレータ105などと絶縁分離されている。なお、空気極101と空気極支持体115が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFEによる被覆を施さない。また、金属から構成された固定ねじ110も、図示していないが、PTFEに被覆され、空気極支持体115と負極支持体109とが、電気的に分離された状態としている。
〔リチウム空気二次電池の作製手順〕
続いて、図2のリチウム空気二次電池100の作製手順について説明する。
リチウム空気電池セルは、露点が-55℃以下の乾燥空気中で以下の手順で作製する。
(空気極作製法)
空気極101は、カーボン粉末及びポリフッ化ビニデン(PVdF)のようなバインダー粉末を混合し、この混合物を発泡金属等の支持体上に充填(又は塗布)することで形成する。その支持体の形状は、例えば発泡金属シート等にカーボンとバインダーを充填して空気極101を構成するので空気極101の形状と等しい。ここから発泡金属シートの参照符号を「50」と表記する。
また、上記の混合物をNメチル2ピロリドン(NMP)などの有機溶剤等の溶媒中に分散してスラリー状にし、発泡金属シート50への充填、金属メッシュ又はカーボンクロスやカーボンシート上に塗布して乾燥することによって、空気極101を形成する。形成された空気極101は、その電極の片面は大気に曝され、もう一方の面は有機電解液103と接する。次に、具体的な実験例の空気極101の作製方法を示す。
〔実験例1〕
図3(a)は、実験例1の空気極101の構造を簡略に示す模式図である。市販の発泡ニッケル10(厚さ0.6mm,空隙率96%、株式会社ニラコ製)に、カーボン粉末であるケッチェンブラックEC600JD粉末とPVdF粉末の重量比9:1の混合粉末とNMP溶剤が重量比で5:95となるように作製した粘稠性スラリーをスパチュラで押し付けることで、カーボン+PVdF20を発泡ニッケル10内に充填した。その後、80℃で12時間の前乾燥を行い、さらに100℃で12時間の真空乾燥を行った。なお、発泡ニッケル10を切断し、その断面を電子顕微鏡で観察することで、ほぼ隙間なく構造中に粉末が充填されていることを確認した。
〔比較例1〕
図3(b)は、比較例1の空気極101の構造を簡略に示す模式図である。市販のチタンメッシュ30(線径0.1mm,100メッシュ、ニラコ株式会社製)に、カーボン粉末であるケッチェンブラックEC600JD粉末とPVdF粉末の重量比9:1の混合粉末とNMP溶剤が重量比で5:95となるように作製した粘稠性スラリーをスパチュラで塗布し、チタンメッシュ30の上にカーボン+PVdF20の層を積み重ねて空気極101を形成した。80℃で12時間の前乾燥及び80℃でのホットプレスを行い、さらに100℃で12時間の真空乾燥を行った。この工程を繰り返すことで、任意の電極厚さの空気極101を作製できることを確認した。比較例1では、この工程を5回繰り返すことで、厚さ0.6mmの空気極101を作製した。
〔比較例2〕
図3(c)は、比較例2の空気極101の構造を簡略に示す模式図である。市販のカーボンペーパー40(厚さ110ミクロン, THP-H-030、東レ株式会社製)に、カーボン粉末であるケッチェンブラックEC600JD粉末(以下、KBと略記)とPVdF粉末の重量比9:1の混合粉末とNMP溶剤が重量比で5:95となるように作製した粘稠性スラリーをスパチュラで塗布し、カーボンペーパー40の上にカーボン+PVdF20の層を積み重ねて空気極101を形成した。80℃で12時間の前乾燥及び80℃でのホットプレスを行い、さらに100℃で12時間の真空乾燥を行った。この工程を繰り返すことで、任意の電極厚さの空気極101を作製できることを確認した。この工程を3回繰り返すことで、厚さ0.6mm(カーボンペーパーの厚さは除く)の空気極101を作製した。
上記のように成形した空気極101は、PTFEで被覆された空気極支持体115の凹部に配置し、空気極固定用リング104で固定する。なお、空気極101と空気極支持体115が接触する部分は、電気的接触をとるためPTFE被覆を施さないものとする。
負極102は、例えば、金属リチウムを用いる場合は、複数枚の金属リチウム箔を重ねて所定の形状に成形して作製する。負極102は、厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔を、負極固定用座金108に圧着して固定する。
セパレータ105を、空気極支持体115の円筒内部に、空気極101とは反対側から仕切りに接する状態で配置し、負極固定用リング107をセパレータ105と同じ側から空気極支持体115の円筒内部に配置し、さらに、負極102を圧着した負極固定用座金108を負極固定用リング107の円筒内部に配置する。
セルの内部(空気極101と負極102との間)に、有機電解液103を充填し、負極支持体109を被せ、固定ねじ110で空気極支持体115と負極支持体109を固定する。有機電解液103は、1mol/lのリチウムトリフルオロメタンスルホニルアミド/トリエチレングリコールジメチルエーテル(LiTFSA/TEGDME溶液、富山薬品工業株式会社)溶液を用いた。
最後に、空気極端子121を空気極支持体115に接続して固定し、負極端子122を負極支持体109に接続して固定する。
〔電池のサイクル試験〕
次に、電池のサイクル試験について説明する。電池のサイクル試験は、充放電測定システム(VMP3,Bio Logic社製)を用いて、空気極101の面積当たりの電流密度で0.2mA/cm2を通電し、開回路電圧から電池電圧が、2.0Vに低下するまで放電電圧の測定を行った。電池の充電試験は、放電時と同じ電流密度で、電池電圧が、4.2Vに達するまで行った。電池の充放電試験は、通常の生活環境下で行った。充放電容量は空気極の面積当たりの値(mAh/cm2)で表した。
<実験例1の評価結果>
空気極101として、発泡ニッケル10(実験例1)、チタンメッシュ30(比較例1)、カーボンペーパー40(比較例2)を用いた電池の初回放電曲線を図4に、充放電サイクル試験の結果を表1に示す。図4より、全て同じ電極厚さにも関わらず、電池性能に差異が見られ、発泡ニッケル10を用いた電池が最も大きな放電容量の16mAh/cm2が得られた。序列としては、発泡ニッケル10>カーボンペーパー40>チタンメッシュ30であった。表1に示すように、充放電サイクル試験を行っても、この序列に変化はなく、20サイクル後において、発泡ニッケル10が最も大きな放電容量を維持した。なお、カーボンペーパー40やチタンメッシュ30を支持体として用いた場合は、0.6mm以上の厚膜化は剥離などにより非常に困難であることを確認している。よって、後述するが、任意の膜厚での電極作製が容易な発泡金属シート50が空気極支持体として優れていることが確認できた。
〔発泡金属シート積層した電池の充放電性能〕
図5(a)は、発泡金属シート50を積層した空気極101の電極断面構造を簡略に示す模式図である。市販の厚さ1mmの発泡金属シート50に、実験例1と同様に、カーボン+PVdF20を含むスラリーを十分に塗り込んだ。同様にして、カーボン充填発泡金属シート50を合計で3枚を作製し、中心が一致するように重ねた。その後、室温で12時間以上の自然乾燥を行った。この乾燥により、発泡金属シート50は、強固に互いが密着していることを確認した。この空気極101は、80℃で12時間の前乾燥を行い、さらに100℃で12時間の真空乾燥を行った。この工程で、発泡金属シート50はより強固に接着されていることを確認した。ここで、発泡金属シート50は、〔実験例2〕ニッケル製(マグネクス株式会社製)、〔実験例3〕アルミニウム製(ERG Materials and Aerospace社製)、〔実験例4〕SUS430製(マグネクス株式会社製)、〔実験例5〕チタン製(株式会社長峰製作所製)、〔実験例6〕銅製(ERG Materials and Aerospace社製)、〔実験例7〕銀製(マグネクス株式会社製)のものを用いて、全て、同様の方法で厚さ1mmのカーボン充填金属シートを3枚積層させた空気極101を作製した。
〔比較例3〜8〕
発泡金属シート50を積層した効果を確認する目的で、3層積層した空気極101(図5(a))と同じ厚み(3mm)を単層の発泡金属シート50で形成して比較例を作製した。図5(b)は、発泡金属シート50の単層の空気極101の電極断面構造を簡略に示す模式図である。発泡金属シート50の厚みが厚いことにより、発泡金属シート50の中心部分にカーボン+PVdF20を含むスラリーを十分に充填できない領域60が生じる
〔比較例3〕発泡金属シート50をニッケル製(マグネクス社製)、〔比較例4〕アルミニウム製(ERG Materials and Aerospace社製)、〔比較例5〕SUS430製(マグネクス社製)、〔比較例6〕チタン製(長峰製作所製)、〔比較例7〕銅製(ERG Materials and Aerospace社製)、〔比較例8〕銀製(マグネクス社製)を用いた。なお、発泡金属シート50の空隙率は、全て90%以上であり、大きな差異はない。
<実験例2〜7の評価結果>
表2に、実験例2〜7の発泡金属シート積層空気極を用いた電池の充放電試験結果を示す。表3に、比較例3〜8の発泡金属シート単層空気極を用いた電池の充放電試験結果を示す。
積層空気極と単層空気極の厚さは、両構造とも3mmであるが、電池性能には大きな差異が確認された。同じ材質であっても、積層空気極の方が、単層空気極よりも、より大きな放電容量と、より高い放電電圧とより低い充電電圧を示す傾向と、より安定したサイクル性能を示した。発泡金属シート50の材質としては、ニッケルが最も優れた性能を示し、積層・単層の構造によって、材質種による性能の序列の違いは見られなかった。これは、それぞれの金属の特性が、電極構造に依存することなく電池性能に影響を及ぼしているためと考えられる。
全体的な傾向として、同じ電極厚さであっても、厚さが小さい発泡金属シート50を積層した方が、より高い電池性能を示すことを本発明では見出した。これは、別途行った電極の断面構造観察により、薄い発泡ニッケルの方が、より密に空気極部材であるカーボンが充填されていることを確認した。よって、部材の充填率が低い単層空気極よりも、より充填率が高い発泡金属シート50を複数積層した方が、空気極部材が密に存在するため、より多量の反応サイトが空気極中に形成され、より優れた電池特性を示すと考えられる。
〔触媒担持・発泡金属シート積層した電池の充放電性能〕
空気極101の電極断面構造は、発泡金属シート50を積層した構造とし、金属酸化物系の触媒を用いた実験例8〜18を作製した。
〔実験例8〕Cr(粉末、関東化学株式会社製)、〔実験例9〕Mn(粉末、関東化学株式会社製)、〔実験例10〕Fe(粉末、関東化学株式会社製)、〔実験例11〕Co(粉末、関東化学株式会社製)、〔実験例12〕NiO(粉末、関東化学株式会社製)を用いた。スラリーは、金属酸化物粉末:KB粉末:PVdF粉末とNMP溶媒を十分に混練し作製した。混合割合は、重量比で、金属酸化物:KB:PVdF=10:80:10となるように調整した。
貴金属系触媒は、既知の手法(参考文献:Y. Yui et al. ,Journal of Power Sources, Vol. 340, pp.121-125,2017年)を参考に、〔実験例13〕Pt、〔実験例14〕Ru、〔実験例15〕Ir、〔実験例16〕Pt50Ru50、〔実験例17〕Pt50Ir50、〔実験例18〕Ir50Ru50を、上記と同様に、重量比で貴金属:KB:PVdF=10:80:10となるように調整した。
市販の厚さ1mmの発泡金属シート50に、上記と同様に、触媒、カーボンとPVdFを十分に混練したスラリーを十分に塗り込んだ。同様にして、カーボン充填発泡金属シートを合計で3枚を作製し、中心が一致するように重ねた。その後、室温で12時間以上の自然乾燥を行った。この乾燥により、発泡金属シート50は、強固に互いが密着していることを確認した。この積層空気極は、80℃で12時間の前乾燥を行い、さらに100℃で12時間の真空乾燥を行った。この工程で、発泡金属シート50はより強固に接着されていることを確認した。
<実験例8〜18の評価結果>
実験例8〜18の触媒担持・発泡金属シート積層空気極を用いた電池の充放電試験結果を表4に、比較のために、実験例2の触媒未担持・発泡金属シート積層空気極の結果とともに示す。表より、使用する触媒によって、電池性能に違いが見られた。特にMnとPt50Ru50が大きな初回放電容量と充放電電圧の改善が見られた。一方、Cr、Fe,NiO,Pt,Irは、触媒未担持のものよりも初回放電容量が低下した。しかし、触媒を担持した全ての実験例において、20サイクル後も約80%の放電容量維持率を示し、未担持のものより大きな放電容量を維持している。このように、触媒担持は、初回放電容量の増大効果、もしくは充放電サイクル性能の改善効果を有していることを確認した。
〔Pt-Ru触媒担持・発泡金属シートを積層した電池の充放電性能〕
空気極101の電極断面構造は、発泡金属シート50を積層した構造とし、Pt-Ru触媒を用いた実験例19〜20を作製した。Pt-Ru触媒は、既知の手法(上記の参考文献)を参考に、〔実験例13〕Pt、〔実験例19〕Pt75Ru25、〔実験例16〕Pt50Ru50、〔実験例20〕Pt10Ru90、〔実験例14〕Ruを、上記と同様に、重量比で貴金属:KB:PVdF=10:80:10となるように調整した。
市販の厚さ1mmの発泡金属シート50に、上記と同様に、触媒、カーボンとPVdFを十分に混練したスラリーを十分に塗り込んだ。同様にして、カーボン充填発泡金属シートを合計で3枚を作製し、中心が一致するように重ねた。その後、室温で12時間以上の自然乾燥を行った。この乾燥により、発泡金属シート50は、強固に互いが密着していることを確認した。この積層空気極は、80℃で12時間の前乾燥を行い、さらに100℃で12時間の真空乾燥を行った。この工程で、発泡金属シート50はより強固に接着されていることを確認した。
<実験例19〜20の評価結果>
上記と同様の手法で実験例19〜20の電池性能を評価した。実験例13,19,16,20,14のPt-Ru触媒担持・発泡金属シート積層空気極を用いた電池の充放電試験結果を表5に、比較のために、実験例2の触媒未担持・発泡金属シート積層空気極の結果とともに示す。表5より、Pt-Ru触媒を用いることにより、初回放電容量の増大や充放電サイクル性能改善が確認された。電池性能は、PtとRuの組成比に大きな依存性が見られた。特に、Pt10Ru90の組成の触媒を用いた時に、100mAh/cm2を超える非常に大きな放電容量と、20サイクル後も約80%の高い放電容量維持率を示した。これらの結果から、Pt-Ruは空気極触媒として、非常に優れた活性を有していることを確認した。
〔電解液添加剤を用いた電池の充放電性能〕
空気極101の電極断面構造は、発泡金属シート50を積層した構造とし、電解液添加剤を用いた実験例21〜38を作製した。Pt10Ru90触媒は、既知の手法(上記の参考文献)を参考に、重量比でPt10Ru90:KB:PVdF=10:80:10となるように調整した。
市販の厚さ1mmの発泡金属シート50に、上記と同様に、触媒、カーボンとPVdFを十分に混練したスラリーを十分に塗り込んだ。同様にして、カーボン充填発泡金属シートを合計で3枚を作製し、中心が一致するように重ねた。その後、室温で12時間以上の自然乾燥を行った。この乾燥により、発泡金属シート50は、強固に互いが密着していることを確認した。この積層空気極は、80℃で12時間の前乾燥を行い、さらに100℃で12時間の真空乾燥を行った。この工程で、発泡金属シート50はより強固に接着されていることを確認した。
電解液添加剤として、〔実験例21〕Crポルフィリン、〔実験例22〕Crフタロシアニン、〔実験例23〕Crサレン(シグマアルドリッチ社製)、〔実験例24〕Mnポルフィリン、〔実験例25〕Mnフタロシアニン(シグマアルドリッチ社製)、〔実験例26〕Mnサレン(東京化成工業製)、〔実験例27〕Feポルフィリン(シグマアルドリッチ社製)、〔実験例28〕Feフタロシアニン(シグマアルドリッチ社製)、〔実験例29〕Feサレン、〔実験例30〕Coポルフィリン(関東化学社製)、〔実験例31〕Coフタロシアニン(シグマアルドリッチ社製)、〔実験例32〕Coサレン(シグマアルドリッチ社製)、〔実験例33〕Niポルフィリン、〔実験例34〕Niフタロシアニン(シグマアルドリッチ社製)、〔実験例35〕Niサレン、〔実験例36〕Ruポルフィリン、〔実験例37〕Ruフタロシアニン、〔実験例38〕Ruサレンを使用した。電解液である1mol/l LiTFSA-TEGDMEへの添加割合は、0.005wt%とした。所定量の上記の添加剤を電解液に混合し、全ての試料が完全に溶解するまで、超音波処理を実施した。なお、電解液添加剤としては、市販の試薬及び既知の手法で合成した試薬を使用した。
<実験例21〜38の評価結果>
上記と同様の手法で電池性能の評価を実施した。実験例21〜38の電解液添加剤を用いた電池の充放電試験結果を表6に、比較のために、実験例20のPt10Ru90触媒担持・発泡金属シート積層空気極の結果とともに示す。表6より、中心金属や構造の違いによって電池性能に違いが見られたが、全ての実験例で充放電サイクル時の放電容量維持率の改善が確認され、20サイクル後においても約90%の値を示している。
全体的な傾向としては、中心金属については、Mn>Ru>Co>Ni>Fe>Cr、錯体構造については、サレン>ポルフィリン>フタロシアニンの序列となることが分かった。これらの中で、最も性能が良い添加剤は、Mn系とRu系であった。いずれの構造でも、110mAh/cm2を超える大きな放電容量と、20サイクル後においても100mAh/cm2を超える容量を維持する十分なサイクル安定性を有していることが確認された。よって、最適な中心金属と錯体構造を有する本発明による電解液添加剤を使用することで、電池性能の改善が達成可能であることが分かった。
〔発泡ニッケル積層数と電池の充放電性能の依存性〕
発泡ニッケルシートの積層数を変えた実験例39〜42を作製した。Pt10Ru90触媒担持カーボンは、既知の手法(上記の参考文献)を参考に、重量比でPt10Ru90:KB:PVdF=10:80:10となるように合成した。
市販の厚さ1mmの発泡金属シート50に、上記と同様に、触媒、カーボンとPVdFを十分に混練したスラリーを十分に塗り込んだ。同様にして、任意の枚数のカーボン充填発泡金属シートを中心が一致するように重ねた。その後、室温で12時間以上の自然乾燥を行った。この乾燥により、発泡金属シート50は、強固に互いが密着していることを確認した。この積層空気極は、80℃で12時間の前乾燥を行い、さらに100℃で12時間の真空乾燥を行った。この工程で、発泡金属シート50はより強固に接着されていることを確認した。
発泡ニッケルシートの積層数を、〔実験例39〕1層、〔実験例40〕2層、〔実験例26〕(比較のために記載)、〔実験例41〕4層、〔実験例42〕5層として、空気極101を作製した。
電解液添加剤としてMnサレンを使用し、電解液である1mol/l LiTFSA-TEGDMEへの添加割合は、0.005wt%とした。所定量のMnサレンを電解液に混合し、全ての試料が完全に溶解するまで、超音波処理を実施した。
<実験例39〜42の評価結果>
上記と同様の手法で電池性能の評価を実施した。実験例39〜42の電解液添加剤を用いた電池の充放電試験結果を表7に、比較のために、実験例26の結果とともに示す。表7より、積層数3層までは、空気極101の積層数に比例して、電池の放電容量も大きくなり、積層数3層で最大の放電容量135mAh/cm2が得られた。よって、面積当たりの放電容量の改善のために、空気極101の積層数を増していくことが有効な手法であると言える。また、この積層数の領域では、20サイクル後の放電容量維持率は約90%であり高いサイクル性能が得られている。
しかし、積層数が4層を超えると、放電容量や放電容量維持率も著しく減少し、5層においては20回のサイクルも困難であった。このように、発泡金属シート50の積層数については、最適値が存在することが分かる。これは、積層数が多くなりすぎると、単純に電気抵抗が増加し、空気極101中での酸素の拡散や十分な電解液の空気極101中への浸透が困難になることで電極反応が進行しにくくなることが原因であると考えられる。また、このような最適値は、発泡金属シート50の厚さや空隙率、空気極101に充填する材料の粒径などの物性によって決定されると考えられる。よって、本実施形態による積層手法では、これらの材料の条件を考慮しつつ積層数などの電極構造のパラメーターを決定することが必要である。
以上説明したように、本実施形態に係るリチウム空気二次電池100は、正極活物質として空気中の酸素を用いる正極と、負極活物質として金属リチウムまたはリチウム含有材料を用いる負極と、リチウム塩を含む有機電解液とを有し、正極は、カーボンを含有する空気極101であり、カーボンが発泡金属シート50に充填され、さらに、カーボンが充填された複数の発泡金属シート50が積層され一体の空気極101が構成されている。発泡金属シート50としては、金属ニッケルを主成分とする材料が用いられる。
また、空気極101には、触媒としてCr,Mn,Fe,Co,Niの中の少なくとも1種の金属を含む酸化物、もしくは、Pt,Ru、Irの中の少なくとも1種の金属を含み、触媒としては少なくともPtとRuを含む材料を用いる。
また、電解液には、添加剤としてCr,Mn,Fe,Co,Niの中の少なくとも1種の金属を含むポルフィリン系、フタロシアニン系やサレン系の金属錯体が用いられ、特にMnサレンを用いる。これにより、市販カーボンを用いて、電極面積当たりの大きなリチウム空気二次電池を提供することができる。
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で変形が可能である。
10:発泡ニッケル
20:カーボン+PVdF
30:チタンメッシュ
40:カーボンペーパー
50:発泡金属シート
60:領域
100:リチウム空気二次電池
101:空気極(正極)
102:負極
103:有機電解液
104:空気極固定用リング
105:セパレータ
107:負極固定用リング
108:負極固定用座金
109:負極支持体
110:固定ねじ
111:Oリング
121:空気極端子
122:負極端子
151:仕切り

Claims (7)

  1. 正極活物質として空気中の酸素を用いる正極と、負極活物質として金属リチウム又はリチウム含有材料を用いる負極と、リチウム塩を含む有機電解液とを有するリチウム空気二次電池において、
    前記正極は、カーボンとバインダーが充填された発泡金属シートを含む
    ことを特徴とするリチウム空気二次電池。
  2. 前記発泡金属シートは、複数の該発泡金属シートが積層されて前記正極を構成する
    ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気二次電池。
  3. 前記発泡金属シートは、金属ニッケルを主成分とする
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム空気二次電池。
  4. 前記正極は、触媒としてCr,Mn,Fe,Co,Niの何れか1種の金属を含む酸化物、若しくはPt,Ru,Irの何れか1種の金属を含む
    ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のリチウム空気二次電池。
  5. 前記正極の触媒は、PtとRuを含む
    ことを特徴とする請求項4に記載のリチウム空気二次電池。
  6. 前記有機電解液は、添加剤としてCr,Mn,Fe,Co,Ni,Ruの何れか1種の金属を含む金属錯体を含む
    ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のリチウム空気二次電池。
  7. 前記添加剤は、Mnサレンである
    ことを特徴とする請求項6に記載のリチウム空気二次電池。
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