JP6861178B2 - リチウム空気二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム空気二次電池の技術に関する。特に本発明は、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの従来の二次電池よりも小型、軽量でかつ遙かに大きい放電容量を実現できるリチウム空気二次電池に関する。
正極活物質として空気中の酸素を用いるリチウム空気二次電池は、電池外部から常に酸素が供給され、電池内に大量の負極活物質である金属リチウムを充填できるため、電池の単位体積当たり非常に大きな放電容量を示すことが報告されている。
また、非特許文献1,2では、正極である空気極に種々の触媒を添加することにより、放電容量、充放電サイクル特性などの電池性能を改善する試みが行われている。例えば、空気極の電極触媒として遷移金属酸化物が検討されており、非特許文献1ではλ−MnOなどの遷移金属酸化物が検討され、非特許文献2では主に酸化鉄(Fe)、コバルト酸化物(Co)などの遷移金属酸化物が検討されている。
J,Read、"Characterization of the Lithium/Oxygen Organic Electrolyte Battery"、Journal of The Electrochemical Society、149 (9)、Vol.149、2002年、p.A1190-p.A1195 Aurelie Debart、外3名、"An O2 cathode for rechargeable lithium batteries: The effect of a catalyst"、Journal of Power Sources、Vol.174、2007年、p.1177-p.1182
しかし、非特許文献1に開示されているリチウム空気二次電池では、充放電サイクルは可能であるが、4サイクル後に放電容量は約1/4に低下するため、二次電池としての性能は低いという課題があった。また、非特許文献1のリチウム空気二次電池では、充電電圧が約4.0Vであり、平均放電電圧の2.7Vと比較して非常に大きいため、充放電エネルギー効率が低いという課題もあった。
一方、非特許文献2では、9種類の触媒を検討しており、空気極に含まれるカーボンの重量当たりで1000〜3000mAh/gの非常に大きな放電容量が得られている。しかしながら、充放電を繰り返し行うと放電容量の低下が著しく、例えばCoの場合、10サイクルで容量維持率が約65%となる。このように、非特許文献2のリチウム空気二次電池でも著しい容量の減少が見られ、二次電池としての十分な特性は得られていない。また、多くの測定結果で平均放電電圧は2.5V程度である一方、充電電圧は4.0〜4.5Vを示し、最も低いものでも3.9V程度である。このため、非特許文献2のリチウム空気二次電池についても充放電エネルギー効率は低い。
なお、非特許文献1,2を含む多くの文献では、リチウム空気二次電池の有機電解液として、LiClO、LiPF、LiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)などのリチウム塩を、炭酸プロピレンなどの炭酸エステル系溶媒やテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)などのグライム系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒に、1.0mol/l程度の濃度で溶解した溶液が用いられている。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、リチウム空気二次電池を高容量の二次電池として作動させ、高出力、大放電容量を実現することを目的とする。
以上の課題を解決するため、請求項1に係るリチウム空気二次電池は、正極活物質として酸素を用いる正極と、負極活物質として金属リチウム又はリチウム含有材料を用いる負極と、前記正極と前記負極との間に配置されリチウム塩を含む有機電解液と、を備え、前記有機電解液は、アゾ基を有するクラウンエーテル化合物を含有することを特徴とする。
請求項2に係るリチウム空気二次電池は、請求項1に記載のリチウム空気二次電池において、前記クラウンエーテル化合物は、1−アザ−15−クラウン5−エーテル、1−アザ−18−クラウン6−エーテル、4,13−ジアザ−18−クラウン6−エーテル、N,N’−ジベンジル−4,13−ジアザ−18−クラウン6−エーテル、N−フェニルアザ−15−クラウン5−エーテル、のうちいずれかであることを特徴とする。
本発明によれば、大放電容量かつ優れた充放電サイクル性能を有するリチウム空気二次電池を提供できる。
リチウム空気二次電池の構成を示す図である。 円柱形のリチウム空気二次電池の断面構造を示す図である。 化合物1の構造式を示す図である。 化合物2の構造式を示す図である。 化合物3の構造式を示す図である。 化合物4の構造式を示す図である。 化合物5の構造式を示す図である。 実施例1の初回の放電及び充電曲線を示す図である。 実施例1〜5の電池性能試験結果を示す図である。 化合物6の構造式を示す図である。 比較例1,2の電池性能試験結果を示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るリチウム空気二次電池について詳細に説明する。本発明は、下記実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
[リチウム空気二次電池の構成]
図1は、本実施形態に係るリチウム空気二次電池の構成を示す図である。リチウム空気二次電池100は、空気極102と、負極104と、有機電解液106とを少なくとも含み、空気極102が正極として機能する。また、空気極102と負極104との間に有機電解液106が配置される。有機電解液106は、添加剤としてアゾ基を有するアゾ系のクラウンエーテル化合物を含むことを特徴とする。
空気極102は、触媒及び導電性材料を構成要素に含むことができる。また、空気極102は、当該導電性材料を一体化するための結着剤を含むことが好ましい。また、負極104は、金属リチウム又はリチウムイオンを放出及び吸収することができるリチウム含有合金などの物質材料を構成要素とすることができる。
以下、リチウム空気二次電池を構成する上記構成要素について説明する。
(I)有機電解液106
有機電解液106は、添加剤としてアゾ系クラウンエーテル化合物を少なくとも含む。より具体的には、有機電解液106は、リチウム塩と有機溶媒を含み、かつ、添加剤としてアゾ系クラウンエーテル化合物を含む。有機電解液106に対する添加剤の添加量は、0.001〜1wt%の範囲であることが望ましい。
有機電解液106としては、空気極102と負極104との間でリチウムイオンの移動が可能な物質であればよく、リチウムイオンを含む金属塩を溶解した非水溶媒を使用できればよい。
このような溶質としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド[(CFSO)2NLi](LiTFSA)などを用いることができる。
また、溶媒としては、例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸メチルイソプロピル(MIPC)、炭酸メチルブチル(MBC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸エチルイソプロピル(EIPC)、炭酸エチルブチル(EBC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸ジイソプロピル(DIPC)、炭酸ジブチル(DBC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸1,2−ブチレン(1,2−BC)などの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン(DME)などのエーテル系溶媒、γ−ブチロラクトン(GBL)などのラクトン系溶媒、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDMEなどのグライム系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒、あるいはこれらの中から二種類以上を混合した溶媒を用いることができる。混合溶媒を用いる場合の混合割合は、特に限定されない。
(II)空気極(正極)102
空気極102は、導電性材料を少なくとも含み、必要に応じて触媒、結着剤などを含むことができる。また、空気極102は、正極活物質として空気中の酸素を用いる。
(II−1)導電性材料
空気極102に含まれる導電性材料は、カーボンであることが好ましい。特に、導電性材料としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類、活性炭類、グラファイト類、カーボンファイバー類、カーボンシート、カーボンクロスなどを用いることができるが、これらに限定されない。また、これらのカーボンは、例えば、市販品のものを利用してもよいし、既存品を合成して生成してもよい。
(II−2)触媒
空気極102の触媒は、酸化マンガン(MnO)、ルテニウム酸化物(RuO)などの酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)の両反応に対して高活性な酸化物触媒であればよく、従来から公知の酸化物触媒であれば特に限定されない。具体的には、MnO、Mn、MnO、FeO、Fe、FeO、CoO、Co、NiO、NiO、V、WOなどの単独酸化物、La0.6Sr0.4MnO、La0.6Sr0.4FeO、La0.6Sr0.4CoO、La0.6Sr0.4CoO、Pr0.6Ca0.4MnO、LaNiO、La0.6Sr0.4Mn0.4Fe0.6などのペロブスカイト型構造を有する複合酸化物を用いることができる。これらの触媒は、固相法や液相法などの公知のプロセスを用いて合成することができる。
また、空気極102に添加される触媒として、中心金属にMn、Fe、Co、Ni、V、Wなどの遷移金属を少なくとも一種含むポルフィリンやフタロシアニンなどの大環状金属錯体も用いることができる。これらの金属錯体は、カーボンと混合後、不活性ガス雰囲気中で熱処理を行い活性化させてもよい。
空気極102に添加される触媒としては、上記の化合物系だけでなく、Pt、Au、Pdなどの貴金属、Co、Ni、Mnなどの遷移金属の単体金属を用いてもよい。例えば、これらの金属をカーボン上に高分散担持させることにより、高い活性を発現することができる。
空気極102では、電解液(有機電解液106)/電極触媒/ガス(酸素)の三相部分において、電極反応が進行する。即ち、空気極102中に有機電解液106が浸透し、同時に大気中の酸素ガスが供給され、電解液−電極触媒−ガス(酸素)が共存する三相部位が形成される。電極触媒が高活性であれば、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)がスムーズに進行し、電池性能は大きく向上することになる。
空気極102での放電反応は、式(1)のように表すことができる。
2Li+O+2e→Li・・・(1)
式(1)のリチウムイオン(Li)は、負極104から電気化学的酸化により有機電解液106内に溶解し、この有機電解液106を空気極102の表面まで移動してきたイオンである。また、酸素(O)は、大気(空気)中から空気極102の内部に取り込まれたものである。なお、負極104から溶解する材料(Li)、空気極102で析出する材料(Li)、及び空気極102に取り込まれる酸素(O)を、図1の構成要素と共に示した。
本実施形態のリチウム空気二次電池100では、電池反応速度を上げるために、電極反応を引き起こす反応部位(上記の電解液/電極触媒/空気(酸素)の三相部分)がより多く存在することが望ましい。このような観点から、本実施形態では、上述の三相部位が電極触媒表面に多量に存在することが重要であり、使用する触媒は比表面積が高い方が好ましい。例えば、焼成後の比表面積が10m/g以上であることが好適である。
(II−3)結着剤(バインダー)
空気極102は、結着剤(バインダー)を含むことができる。この結着剤は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリブタジエンゴムなどを例として挙げることができる。これらの結着剤は、粉末として又は分散液として用いることができる。
(II−4)空気極102の調製
空気極102は、例えば、以下のように調製することができる。触媒である酸化物粉末、カーボン粉末及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)のようなバインダー粉末を所定量混合し、この混合物をチタンメッシュなどの支持体上に圧着することにより、空気極102を成形することができる。
その他、前述の混合物を有機溶剤などの溶媒中に分散してスラリー状にし、金属メッシュ又はカーボンクロスやカーボンシート上に塗布して乾燥することによって、空気極102を形成することができる。
また、空気極102の強度を高め、電解液の漏洩を防止するために、冷間プレスだけでなく、ホットプレスを適用することによっても、より安定性に優れた空気極102を作製することができる。
なお、空気極102は、空気極102自体を構成する電極の片面は大気に曝され、もう一方の面は電解液と接する。
(III)負極104
負極104は、負極活物質を含む。この負極活性物質は、リチウム空気二次電池100の負極材料として用いることができる材料であれば特に制限されない。例えば、金属リチウムを用いることができる。あるいは、リチウム含有物質として、リチウムイオンを放出及び吸蔵することができる物質を用いてもよい。その他、リチウムとシリコン又はスズとの合金、あるいはLi2.6Co0.4Nなどのリチウム窒化物を例として挙げることができる。
負極104は、公知の方法で形成することができる。例えば、リチウム金属を負極とする場合には、複数枚の金属リチウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極104を作製すればよい。
負極104での放電反応は、式(2)のように表すことができる。
(放電反応)
Li→Li+e・・・(2)
なお、充電時においては、式(2)の逆反応であるリチウムの析出反応が起こる。
(IV)他の構成要素
リチウム空気二次電池100は、上記構成要素に加え、セパレータ、電池ケース、金属メッシュ(例えばチタンメッシュ)などの構造部材、その他のリチウム空気二次電池100に要求される要素を含むことができる。これらは、従来公知のものを用いることができる。
(V)リチウム空気二次電池の調製
リチウム空気二次電池100は、上述した通り、少なくとも空気極102、負極104及び有機電解液106を含み、図1に示したように、空気極102と負極104との間にアゾ系クラウンエーテル化合物を含有する有機電解液106を狭持するように構成される。このような構成を備えるリチウム空気二次電池100は、従来型の二次電池と同様に調製することができる。
例えば、図2に示すような円柱形のリチウム空気二次電池100を調製することができる。具体的には、まず、空気極102を、絶縁被覆(PTEF被覆)された空気極支持体2の内部に配置して固定する。負極104は、負極支持体11に対して固定する。空気二次電池の内部空間(空気極102と負極104の間となる空間)に、アゾ系クラウンエーテル化合物を含有した有機電解液106を充填し、負極104が空気極102の大気と接する面と逆の面に配置されるように負極支持体11を被せて空気二次電池全体を固定する。
上記構成要素に加え、空気極102と負極104との間となる部分にセパレータ5などの部材を配置することができる。その他、絶縁部材、Oリング9、固定具(空気極固定用PTFEリング3、負極固定用PTFEリング6、負極固定用座金7、絶縁被覆(PTEF被覆)されたセル固定用ねじ12)、空気極端子4、負極端子13などを適宜配置することができる。
[実施例]
(化合物1〜5を含む有機電解液(TEGDME溶媒)の調製)
本実施例では、有機電解液106に、添加剤としてアゾ系クラウンエーテル化合物を含有する。具体的には、下記化合物1〜5のうちいずれかの化合物を有機電解液106に含有する。化合物1〜5の各構造式を図3〜図7にそれぞれ示す。化合物1〜5に対する各実施例をそれぞれ実施例1〜5とする。
(化合物1)1−アザ−15−クラウン5−エーテル,(CAS番号:66943−05−3),Mw219.28
(化合物2)1−アザ−18−クラウン6−エーテル,(CAS番号:33941−15−0),Mw263.33
(化合物3)4,13−ジアザ−18−クラウン6−エーテル,(CAS番号:23978−55−4),Mw262.35
(化合物4)N,N’−ジベンジル−4,13−ジアザ−18−クラウン6−エーテル,(CAS番号:69703−25−9),Mw442.60
(化合物5)N−フェニルアザ−15−クラウン5−エーテル,(CAS番号:66750−10−5),Mw295.38
本実施例では、市販の化合物1〜5(東京化成工業株式会社)を有機電解液106に混合した。また、有機電解液106に混合する際、超音波洗浄機を用いて最大出力で約2時間の分散を行った。また、有機電解液106は、LiTFSAを有機溶媒(TEGDME溶媒)に1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。有機電解液106に、添加剤として化合物1〜5を0.01wt%の重量を混合した。
また、空気極用の触媒として公知であるLa0.6Sr0.4MnOを用いて、リチウム空気二次電池セルを以下の手順で作製した。La0.6Sr0.4MnOは公知のクエン酸を用いる手法で合成した。
La0.6Sr0.4MnO粉末、ケッチェンブラック粉末及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を、10:72:18の重量比でミキサーを用いてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に十分混合し、スラリーを作製した。このスラリーを直径17mmのカーボンシートに塗布し、90℃の真空乾燥機に入れて一晩乾燥させ、ガス拡散型の空気極を得た。
その後、図2に示す断面構造を有する円柱形のリチウム空気二次電池100のセルを作製した。リチウム空気電池セルは、露点が−60℃以下の乾燥空気中で以下の手順で作製した。
上記の方法で調製した空気極102を、PTFEで被覆された空気極支持体2の内側凹部に配置し、空気極固定用PTFEリング3で固定した。なお、空気極102と空気極支持体2が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFEによる被覆を施さないものとした。
次に、空気極102と大気が接触する面とは逆の面に、リチウム空気二次電池用のセパレータ5を凹部の底面に配置した。続いて、図2に示すような負極固定用座金7に負極104である厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔を同心円上に重ねて圧着した。続いて、負極固定用PTFEリング6を、空気極102を設置する凹部と対向する逆の凹部に配置し、中央部に金属リチウムが圧着された負極固定用座金7を更に配置した。続いて、Oリング9を、図2に示すように空気極支持体2の底部に配置した。
その後、セルの内部(空気極102と負極104との間)に有機電解液106を充填し、負極支持体11を被せて、セル固定用ねじ12で、セル全体を固定した。有機電解液106は、上述のピロリン酸第二鉄含有有機電解液(1mol/l:LiTFSA/TEGDME溶液)を用いた。そして最後に、空気極端子4を空気極支持体2に設置し、負極端子13を負極支持体11に設置した。
電池のサイクル試験は、充放電測定システム(Bio Logic社製)を用いて、空気極102の面積当たりの電流密度で0.1mA/cmを通電し、開回路電圧から電池電圧が2.0Vに低下するまで放電電圧の測定を行った。電池の充電試験は、放電時と同じ電流密度で、電池電圧が4.2Vに達するまで行った。電池の充放電試験は、通常の生活環境下で行った。充放電容量は空気極(カーボン+酸化物+PVDF)重量当たりの値(mAh/g)で表した。
(本実施例のリチウム空気二次電池の電池性能の試験結果)
実施例1の初回の放電及び充電曲線を図8に示す。図8より、平均放電電圧は2.75V、放電容量は1255mAh/gと大きな値であることが確認された。ここで、平均充放電電圧は、図中の全放電容量の中間値時の放電電圧及び充電電圧と定義する。また、初回の充電電圧は3.73V、充電容量は放電容量とほぼ同様の1185mAh/gであり、可逆性に優れていることが分かる。
実施例1〜5の電池性能試験の結果を図9に示す。何れの実施例でも放電・充電が可能であり、初回において1000mAh/gを超える大きな放電容量を示し、50サイクル後においても放電容量の減少は10%以下であった。一方、放電電圧・充電電圧については、それぞれ徐々に低下・増加するという性能低下が見られたが、50サイクル後も実施例1が最も良好な電圧性能を示すことを確認した。これらの性能試験の結果から、有機電解液106への添加効果としては、以下の序列で高活性であることが確認できた。
化合物1>化合物2≒化合物3>化合物5>化合物4
この序列は化合物の分子量と相関が見られ、分子量が小さい化合物がより高い活性を示すことが分かった。これは、低分子量の化合物を添加した場合が、電解液の粘度の上昇が抑制されるためリチウムイオンの拡散がスムーズに行われるためであると考えられる。
(本実施例に対する比較例1〜2の試験結果)
本実施例の効果を検証するために、何ら添加剤を加えない場合(比較例1)と、公知の添加剤である(化合物6、比較例2)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO,CAS番号:2564−83−2)を使用した場合の電池性能試験を行った。化合物6の構造式を図10に示す。電池作製及び評価は実施例1〜5と同様の手法で行った。
比較例1,2の測定結果を図11に示す。比較のために、実施例1の結果も合わせて記す。添加剤を添加しない比較例1の場合、明らかに初回容量は小さく、サイクルを繰り返すと著しい容量の減少が見られた。また、公知の添加剤である比較例2のTEMPOの場合、初回サイクルについては、実施例1よりも大きな放電容量と高放電電圧・低充電電圧を示すことを確認した。しかし、50サイクル後には、約60%の容量減少と電圧特性の低下が顕著に見られた。それゆえ、実施例1は比較例2よりも明らかに高い性能を示すことが確認され、実施例1〜5の添加剤(化合物1〜5)は優れた長期安定性を有していることが実証された。
以上より、本実施形態によれば、リチウム空気二次電池100が、正極活物質として空気中の酸素を用いる空気極102と、負極活物質として金属リチウム又はリチウム含有材料を用いる負極104と、空気極102と負極104との間に配置されリチウム塩を含む有機電解液106と、を備え、有機電解液106は、アゾ基を有するクラウンエーテル化合物を添加剤として含有するので、大放電容量かつ優れた充放電サイクル性能を有するリチウム空気二次電池を提供できる。
また、本実施形態によれば、有機電解液106に含有されるクラウンエーテル化合物が、1−アザ−15−クラウン5−エーテル、1−アザ−18−クラウン6−エーテル、4,13−ジアザ−18−クラウン6−エーテル、N,N’−ジベンジル−4,13−ジアザ−18−クラウン6−エーテル、N−フェニルアザ−15−クラウン5−エーテル、のうちいずれかであるので、より大放電容量かつ優れた充放電サイクル性能を有するリチウム空気二次電池を提供できる。
有機電解液106の添加剤としてアゾ系クラウンエーテル化合物を用いることにより、高性能なリチウム空気二次電池100を作製することができ、様々な電子機器や自動車などの駆動源として有効に利用することができる。
100…リチウム空気二次電池
102…空気極(正極)
104…負極
106…有機電解液
2…空気極支持体
3…空気極固定用PTFEリング
4…空気極端子
5…セパレータ
6…負極固定用PTFEリング
7…負極固定用座金
9…Oリング
11…負極支持体
12…セル固定用ねじ
13…負極端子

Claims (2)

  1. 正極活物質として酸素を用いる正極と、
    負極活物質として金属リチウム又はリチウム含有材料を用いる負極と、
    前記正極と前記負極との間に配置されリチウム塩を含む有機電解液と、を備え、
    前記有機電解液は、
    アゾ基を有するクラウンエーテル化合物を含有することを特徴とするリチウム空気二次電池。
  2. 前記クラウンエーテル化合物は、
    1−アザ−15−クラウン5−エーテル、
    1−アザ−18−クラウン6−エーテル、
    4,13−ジアザ−18−クラウン6−エーテル、
    N,N’−ジベンジル−4,13−ジアザ−18−クラウン6−エーテル、
    N−フェニルアザ−15−クラウン5−エーテル、
    のうちいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気二次電池。
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