JP2019019358A - 皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板及びその製造方法 - Google Patents

皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面に、皮膜密着性に優れる張力付与性絶縁皮膜を形成する一方向性電磁鋼板の提供。【解決手段】質量%で、C:0.10%以下、Si:0.80〜7.00%、sol.Al:0.01〜0.07%、Mn:1.00%以下などを含有し、残部Feと不可避不純物からなる組成で、表面に張力付与性絶縁皮膜を有し、この絶縁皮膜と鋼板面界面に、平均膜厚が1.0nm〜1.0μmのSiO2中間酸化膜層を有する電磁鋼板において、SiO2中間酸化膜層の金属元素M(Al)のグロー放電発光分析スペクトルの時間微分曲線fM(t)が、下記式(1)を満足する。Tp:Siのグロー放電発光分析スペクトルの二階の時間微分曲線の極小値に対応する時間t(秒)、Tf:Siの当該分析スペクトルの分析開始点をTsとして、2Tp-Tsに対応する時間t(秒)。【選択図】図1

Description

本発明は、変圧器の鉄芯材料として使用する一方向性電磁鋼板及びその製造方法、特に、張力付与性絶縁皮膜の密着性に優れた一方向性電磁鋼板及びその製造方法に関する。
一方向性電磁鋼板は、{110}<001>方位(以下、Goss方位)に高配向集積した結晶粒により構成された、Siを7質量%以下含有する珪素鋼板で、主に、変圧器の鉄芯材料として用いられる。方向性電磁鋼板におけるGoss方位の高配向集積は、二次再結晶とよばれる粒成長現象を利用して実現される。
一方向性電磁鋼板は、磁気特性として、磁束密度が高く(B8値で代表される)、鉄損が低い(W17/50値で代表される)ことが要求されるが、最近では、省エネルギーの見地から、電力損失の低減、即ち、鉄損の低減に対する要求が一層高まっている。
一方向性電磁鋼板において、磁区は、交流磁場の下では、磁壁の移動を伴って変化する。磁壁の移動が円滑であることが、鉄損の低減に有効であるが、磁区の動きを観察すると、動かない磁区も存在する。
一方向性電磁鋼板の鉄損をさらに低減するためには、磁区の動きを阻害する鋼板表面のフォルステライト(Mg2SiO4)系皮膜(以下「グラス皮膜」ということがある。)の界面の凹凸によるピン止め効果をなくすことが重要である。このピン止め効果をなくすには、鋼板表面に、磁区の動きを阻害するグラス皮膜を形成しないことが有効な手段である。
上記ピン止め効果をなくす手段として、例えば、特許文献1〜5には、脱炭焼鈍の露点を制御し、脱炭焼鈍時に形成する酸化層において、Fe系酸化物(Fe2SiO4、FeO等)を形成しないこと、及び、焼鈍分離剤としてシリカと反応しないアルミナ等の物質を用いて、仕上げ焼鈍後に表面の平滑化を達成することが開示されている。
また、一方向性電磁鋼板を変圧器の鉄芯材料として用いる場合、鋼板の絶縁性を確保することが必須であるので、張力を有する絶縁皮膜を鋼板表面に形成する。例えば、特許文献6に開示されている、コロイド状シリカとリン酸塩を主体とする塗布液を鋼板表面に塗布し、焼き付けて絶縁皮膜を形成する方法は、鋼板に対する張力付与の効果が大きいので、絶縁性の確保に加え、鉄損の低減に有効である。
このように、仕上げ焼鈍工程で生じたグラス皮膜の上に、リン酸塩を主体とする絶縁皮膜を形成することが、一般的な、一方向性電磁鋼板の製造方法である。
上記絶縁皮膜をグラス皮膜の上に形成した場合には、かなりの皮膜密着性が得られるが、グラス皮膜を除去した場合、又は、仕上げ焼鈍工程で意図的にグラス皮膜を形成しなかった場合には、皮膜密着性は十分でない。
グラス皮膜を除去した場合には、塗布液を塗布して形成する張力付与性絶縁皮膜のみで、所要の皮膜張力を確保する必要があるので、必然的に、厚膜化しなければならず、より一層の皮膜密着性が必要である。
それ故、従来の皮膜形成法では、鏡面化の効果を十分に引き出すほどの皮膜張力を確保し、かつ、皮膜密着性をも確保することは困難であり、鉄損を十分に低減することができていなかった。そこで、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性を確保するための技術として、張力付与性絶縁皮膜の形成に先き立ち、仕上げ焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面に酸化膜を形成する方法が、例えば、特許文献7〜10にて提案された。
例えば、特許文献8に開示の技術は、鏡面化した、又は、鏡面に近い状態に調製した仕上げ焼鈍済みの一方向性珪素鋼板に、温度毎に、特定の雰囲気で焼鈍を施して、鋼板表面に外部酸化型の酸化膜を形成し、この酸化膜により、張力付与性絶縁皮膜と鋼板との密着性を確保する方法である。
特許文献9に開示の技術は、張力付与性絶縁皮膜が結晶質である場合において、無機鉱物質皮膜のない仕上げ焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面に、非晶質酸化物の下地皮膜を形成して、結晶質の張力付与性絶縁皮膜を形成する際に起きる鋼板酸化を防止する技術である。
特許文献10に開示の技術は、特許文献8に開示の技術をさらに発展させ、張力付与性絶縁皮膜と鋼板の界面において、Al、Mn、Ti、Cr、Siを含む金属酸化膜の膜構造を制御し、絶縁皮膜の密着性を改善する方法である。しかし、応力感受性が最も問題となる、金属酸化層と鋼板との界面の密着性については制御しておらず、特許文献10に開示の技術は、皮膜密着性を改善する技術としては不十分である。
特開平07−278670号公報 特開平11−106827号公報 特開平11−118750号公報 特開平11−118750号公報 特開2003−268450号公報 特開昭48−039338号公報 特開昭60−131976号公報 特開平06−184762号公報 特開平07−278833号公報 特開2002−348643号公報
鉄と鋼、vol 99(2013)、40.
鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を形成した一方向性珪素鋼板において、該絶縁皮膜をグラス皮膜(フォルステライト系皮膜)の上に形成した場合、上記絶縁皮膜の皮膜密着性は良好であるが、グラス皮膜の生成を意図的に抑制したり、グラス皮膜を研削や酸洗等の手段で除去したり、さらに、鋼板表面を鏡面光沢を呈するまで平坦化して、張力付与性絶縁皮膜を形成した場合、該絶縁皮膜の皮膜密着性は十分でなく、皮膜密着性と磁性安定性の両立を図ることは困難である。
そこで、本発明は、グラス皮膜の生成を意図的に抑制したり、グラス皮膜を研削や酸洗等の手段で除去したり、さらに、鋼板表面を鏡面光沢を呈するまで平坦化した、仕上げ焼鈍済みの一方向性電磁鋼板の表面に、皮膜密着性に優れた張力付与性絶縁皮膜を、磁気特性とその安定性を損なわずに形成することを課題とし、該課題を解決する一方向性電磁鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性を向上させる手法について鋭意検討した。その結果、張力付与性絶縁皮膜の形成に先き立ち、仕上げ焼鈍済みの一方向性電磁鋼板の表面に酸化膜(以下「中間酸化膜層」ということがある。)を形成する工程において、熱履歴及び酸素ポテンシャルを制御すると、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性が飛躍的に向上することを見いだした。
さらに、本発明者らは、皮膜密着性に最も大きく影響すると考えられる中間酸化膜層の組成を鋭意調査した。その結果、中間酸化膜層の酸化物は、Si酸化物(SiO2)であり、SiO2中間酸化膜層に、また、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に、Al、Cu、Cr、Caの一種又は二種以上が濃化していることを知見した。
Al、Cr、Cu、Caが、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化することにより、該界面おいて引力的な電子間相互作用が生じ、鋼板とSiO2中間酸化膜層の密着性が向上したと考えられる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.10%以下、Si:0.80〜7.00%、酸可溶性Al:0.01〜0.07%、N:0.012%以下、Mn:1.00%以下、S:0.08%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を有し、かつ、該張力付与性絶縁皮膜と上記鋼板表面の界面に、平均膜厚が1.0nm以上1.0μm以下のSiO2中間酸化膜層を有する一方向性電磁鋼板において、
上記SiO2中間酸化膜層の金属元素M(M:Al)のグロー放電発光分析スペクトルの時間微分曲線fM(t)が、下記式(1)を満足する
ことを特徴とする皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
Tp:Siのグロー放電発光分析スペクトルの二階の時間微分曲線の極小値に対応す る時間t(秒)
Tf:Siのグロー放電発光分析スペクトルの分析開始点をTsとして、2Tp−Tsに 対応する時間t(秒)
(2)前記一方向性電磁鋼板が、さらに、質量%で、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、Ca:0.001〜0.05%の一種又は二種以上を含有し、前記SiO2中間酸化膜層の金属元素M(M:Cr、Cu、Ca)のグロー放電発光分析スペクトルの時間微分曲線fM(t)が、下記式(2)〜(4)の一つ又は二つ以上を満足することを特徴とする前記(1)に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
Tp:Siのグロー放電発光分析スペクトルの二階の時間微分曲線の極小値に対応す る時間t(秒)
Tf:Siのグロー放電発光分析スペクトルの分析開始点をTsとして、2Tp−Tsに 対応する時間t(秒)
(3)前記一方向性電磁鋼板が、さらに、質量%で、Sn:0.01〜0.20%、B:0.001〜0.010%の一種又は二種を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の成分組成の鋼片を熱間圧延して熱延鋼板を製造する熱延工程、熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程、焼鈍後の鋼板を酸洗する酸洗工程、酸洗後の鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を製造する冷延工程、冷延鋼板を脱炭焼鈍する脱炭焼鈍工程、脱炭焼鈍鋼板を仕上焼鈍する仕上焼鈍工程、仕上焼鈍鋼板を焼鈍して、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程、酸化膜形成後の鋼板に、絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程を含む、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板を製造する製造方法において、
(i)上記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程における焼鈍を、600〜1400℃の温度T1(℃)で5〜1200秒、かつ、下記式(5)を満たす酸素ポテンシャルで行い、その後の冷却で、
(ii)下記式(6)で定義する温度T2(℃)以上、上記T1(℃)以下の温度域の平均冷却速度CR1(℃/秒)を50℃/秒以下とし、40℃以上、上記T2(℃)未満の温度域の平均冷却速度を、下記式(7)を満たす平均冷却速度CR2(℃/秒)とする
ことを特徴とする皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板の製造方法。
H2O/PH2≦5.65 ・・・(5)
T2=T1−100 ・・・(6)
CR1>CR2 ・・・(7)
(5)前記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程の加熱過程において、室温から600℃以下の温度域の平均加熱速度HR1(℃/秒)を10℃/秒以上とし、600℃を超え前記T1℃以下の温度域の平均加熱速度HR2(℃/秒)を50℃/秒以下とすることを特徴とする前記(4)に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、グラス皮膜の生成を意図的に抑制したり、グラス皮膜を研削や酸洗等の手段で除去したり、さらに、鋼板表面を鏡面光沢を呈するまで平坦化した、仕上げ焼鈍済みの一方向性電磁鋼板の表面に、皮膜密着性に優れる張力付与性絶縁皮膜を、磁気特性と、その安定性を損なわずに形成することができる。
グロー放電発光分析法(GDS)で得たSi由来のスペクトルの微分曲線を示す図である。
本発明の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板(以下「本発明電磁鋼板」ということがある。)は、
質量%で、C:0.10%以下、Si:0.80〜7.00%、酸可溶性Al:0.01〜0.07%、N:0.012%以下、Mn:1.00%以下、S:0.08%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を有し、かつ、該張力付与性絶縁皮膜と上記鋼板表面の界面に、平均膜厚が1.0nm以上1.0μm以下のSiO2中間酸化膜層を有する一方向性電磁鋼板において、
上記SiO2中間酸化膜層の金属元素M(M:Al)のグロー放電発光分析スペクトルの時間微分曲線fM(t)が、下記式(1)を満足する
ことを特徴とする。
Tp:Siのグロー放電発光分析スペクトルの2階の時間微分曲線の極小値に対応す る時間t(秒)
Tf:Siのグロー放電発光分析スペクトルの分析開始点をTsとして、2Tp−Tsに 対応する時間t(秒)
また、本発明電磁鋼板は、さらに、質量%で、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、Ca:0.001〜0.05%の一種又は二種以上を含有し、前記SiO2中間酸化膜層の金属元素M(M:Cr、Cu、Ca)のグロー放電発光分析スペクトルの時間微分曲線fM(t)が、下記式(2)〜(4)の一つ又は二つ以上を満足することを特徴とする。
Tp:Siのグロー放電発光分析スペクトルの2階の時間微分曲線の極小値に対応す る時間t(秒)
Tf:Siのグロー放電発光分析スペクトルの分析開始点をTsとして、2Tp−Tsに 対応する時間t(秒)
また、本発明電磁鋼板は、さらに、質量%で、Sn:0.01〜0.20%、B:0.001〜0.010%の一種又は二種を含有することを特徴とする。
本発明の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板の製造方法(以下「本発明製造方法」ということがある。)は、本発明電磁鋼板の成分組成の鋼片を熱間圧延して熱延鋼板を製造する熱延工程、熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程、焼鈍後の鋼板を酸洗する酸洗工程、酸洗後の鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を製造する冷延工程、冷延鋼板を脱炭焼鈍する脱炭焼鈍工程、脱炭焼鈍鋼板を仕上焼鈍する仕上焼鈍工程、仕上焼鈍鋼板を焼鈍して、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程、酸化膜形成後の鋼板に、絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程を含む、本発明電磁鋼板を製造する製造方法において、
(i)上記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程における焼鈍を、600〜1400℃の温度T1(℃)で5〜1200秒、かつ、下記式(5)を満たす酸素ポテンシャルで行い、その後の冷却で、
(ii)下記式(6)で定義する温度T2(℃)以上、上記T1(℃)以下の温度域の平均冷却速度CR1(℃/秒)を50℃/秒以下とし、40℃以上、上記T2(℃)未満の温度域の平均冷却速度を、下記式(7)を満たす平均冷却速度CR2(℃/秒)とする
ことを特徴とする。
H2O/PH2≦5.65 ・・・(5)
T2=T1−100 ・・・(6)
CR1>CR2 ・・・(7)
また、本発明製造方法は、前記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程の加熱過程において、室温から600℃以下の温度域の平均加熱速度HR1(℃/秒)を10℃/秒以上とし、600℃を超え前記T1℃以下の温度域の平均加熱速度HR2(℃/秒)を50℃/秒以下とすることを特徴とする。
以下、本発明電磁鋼板及び本発明製造方法について説明する。
<成分組成>
まず、本発明電磁鋼板の成分組成の限定理由について説明する。以下、成分組成に係る%は、質量%を意味する。
C:0.10%以下
Cが0.10%を超えると、二次再結晶焼鈍において鋼が相変態し、二次再結晶が十分に進行せず、良好な磁束密度と鉄損特性が得られないので、Cは0.10%以下とする。鉄損特性の改善の観点から、0.08%以下が好ましい。
下限は0%を含むが、Cの検出限界が0.0001%程度であるので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
Si:0.80〜7.00%
Siが0.80%未満であると、二次再結晶焼鈍において鋼が相変態して、二次再結晶が十分に進行せず、良好な磁束密度と鉄損特性が得られないので、Siは0.80%以上とする。好ましくは2.50%以上、より好ましくは3.00%以上である。
一方、Siが7.00%を超えると、鋼板が脆化し、製造工程での通板性が顕著に劣化するので、Siは7.00%以下とする。好ましくは4.00%以下、より好ましくは3.75%以下である。
酸可溶性Al:0.01〜0.07%
本発明電磁鋼板において、酸可溶性Al(sol.Al)は、皮膜密着性の改善の観点から必須の元素である。即ち、酸可溶性Alは、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化して濃化層を形成し、皮膜密着性を顕著に向上させる元素である。
酸可溶性Alが0.01%未満であると、上記濃化層が形成されないので、皮膜密着性が向上せず、さらに、インヒビターとして機能するAlNが十分に生成せず、二次再結晶が不充分となり、鉄損特性が向上しないので、酸可溶性Alは0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上である。
一方、酸可溶性Alが0.07%を超えると、鋼板が脆化し、特に、Siが多い本発明電磁鋼板では、脆化が顕著となるので、酸可溶性Alは0.07%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
N:0.012%以下
Nが0.012%を超えると、冷延時、鋼板中にブリスター(空孔)が生じるうえに、鋼板の強度が上昇し、製造時の通板性が悪化するので、Nは0.012%以下とする。好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.009%以下である。
一方、Alと結合して、インヒビターとして機能するAlNを形成するためには、Nは0.004%以上が好ましい。より好ましくは0.006%以上である。
Mn:1.00%以下
Mnが1.00%を超えると、二次再結晶焼鈍において鋼が相変態し、二次再結晶が十分に進行せず、良好な磁束密度と鉄損特性が得られないので、Mnは1.00%以下とする。好ましくは0.50%以下、より好ましくは0.20%以下である。
MnSを、二次再結晶時、インヒビターとして活用することができるが、AlNをインヒビターとして活用する場合、MnSは必須でないので、Mnの下限は0%を含む。MnSをインヒビターとして活用する場合、Mnは0.02%以上とする。好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.07%以上である。
S:0.08%以下
Sが0.08%を超えると、熱間脆性が原因となり、熱延が著しく困難になるので、Sは0.08%以下とする。好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。
AlNをインヒビターとして活用する場合、MnSは必須でないので、下限は0%を含むが、MnSを、二次再結晶時、インヒビターとして活用する場合、Sは0.005%以上が好ましい。
また、Sの一部を、Se又はSbで置き換えてもよく、その場合は、Seq=S+0.406Se、又は、Seq=S+0.406Sbで換算した値を用いる。
本発明電磁鋼板は、上記元素の他、本発明電磁鋼板の特性を向上させるため、以下の元素の一種又は二種以上を含有してもよい。
Cr:0.01〜0.50%
Crは、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化して濃化層を形成し、皮膜密着性の向上に寄与する元素である。0.01%未満では、皮膜密着性の向上効果が十分に得られないので、Crは0.01%以上とする。好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上である。
一方、0.50%を超えると、CrがSiとOと結合し、SiO2中間酸化層の形成を阻害することがあるので、Crは0.50%以下とする。好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.20%以下である。
Cu:0.01〜0.50%
Cuは、Al、Crと同様に、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化して濃化層を形成し、皮膜密着性の向上に寄与する元素である。0.01%未満では、皮膜密着性の向上効果が十分に得られないので、Cuは0.01%以上とする。好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上である。
一方、0.50%を超えると、熱間圧延中、鋼板が脆化するので、Cuは0.50%以下とする。好ましくは0.20%以下、より好ましくは0.10%以下である。
Ca:0.001〜0.05%
Caは、Al、Cr、Cuと同様に、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化して濃化層を形成し、皮膜密着性の向上に寄与する元素である。0.001%未満では、皮膜密着性の向上効果が十分に得られないので、Caは0.001%以上とする。好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010以上である。
一方、0.05%を超えると、鋼中で微細なCaSが生成し、磁気特性が劣化するので、Caは0.05%以下とする。好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。
Sn:0.01〜0.20%
Snは、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化しないが、皮膜密着性の向上に寄与する元素である。Snの皮膜密着性の向上機構は明らかでないが、二次再結晶後の鋼板平滑度を調査した結果、鋼板平滑度の向上が認められたので、Snは、鋼板表面の凹凸を低減して平滑化し、凹凸欠陥の少ない、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面の形成に寄与すると考えられる。
0.01%未満では、鋼板表面の平滑化効果が十分に得られないので、Snは0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.03%以上である。
一方、0.20%を超えると、二次再結晶が不安定となり、磁気特性が劣化するので、Snは0.20%以下とする。好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.10%以下である。
B:0.001〜0.010%
Bは、Al、Cr、Cu、Caと同様に、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化して濃化層を形成し(本発明者らは、濃化層をGDSで確認した)、皮膜密着性の向上に寄与する元素である。0.001%未満では、皮膜密着性の向上効果が十分に得られないので、Bは0.001%以上とする。好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.003%以上である。
一方、0.010%を超えると、鋼板強度が増加し、冷延における通板性が劣化するので、Bは0.010%以下とする。好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下である。
本発明電磁鋼板の成分組成の残部は、Fe及び不可避的不純物であるが、磁気特性の向上、強度、耐食性、疲労特性などの構造部材に求められる特性の向上、鋳造性や通板性の向上、スクラップ等の使用による生産性の向上を目的として、Mo、W、In、Sn、Bi、Sb、Ag、Te、Ce、V、Co、Ni、Se、Re、Os、Nb、Zr、Hf、Ta、Pb、Y、La等の一種又は二種以上を、合計で5.00%以下、好ましくは3.00%以下、より好ましくは1.00%以下含有してもよい。
<SiO2中間酸化膜層>
次に、皮膜密着性の向上に重要な役割を果たすSiO2中間酸化膜層について説明する。本発明電磁鋼板は、グラス皮膜を研削や酸洗等で除去したり、又は、グラス皮膜の生成を意図的に防止して製造するので、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性を十分に確保するため、張力付与性絶縁皮膜と鋼板の界面に、所要の膜厚のSiO2中間酸化膜層を形成する。
SiO2中間酸化膜層の平均膜厚:1.0nm以上、1.0μm以下
SiO2中間酸化膜層の平均膜厚が1.0nm未満であると、皮膜密着性を十分に確保することができないので、SiO2中間酸化膜層の平均膜厚は1.0nm以上とする。好ましくは5.0nm以上、より好ましくは9.0nm以上である。
一方、1.0μmを超えると、SiO2中間酸化膜層の内部に、破壊の起点となるクラックが発生し、皮膜密着性が劣化するので、SiO2中間酸化膜層の平均膜厚は1.0μm以下とする。好ましくは0.7μm(=700nm)以下、より好ましくは0.4μm(=400nm)以下である。
SiO2中間酸化膜層の膜厚は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で、試料断面を観察して計測する。
中間酸化膜層を構成する化合物が“SiO2”であることは、TEM又はSEMに付随するエネルギー分散分光(EDS)による元素分析で確認することができる。なお、SiとOの化学結合比は、必ずしも2であるとは限らないため、化学量論比の解析結果、SiOx(xは任意の数)であっても、本発明電磁鋼板の特性は損なわれない。
具体的には、SiO2中間酸化膜層のEDSスペクトルにおいて、横軸に、エネルギー1.8±0.3kevの位置にSi−Kα線を検出し、同時に、0.5±0.3kevの位置にO−Kα線を検出することにより、“SiO2”の存在を確認することができる。元素の同定は、Kα線以外にも、Lα線やKγ線を用いて行うことができる。
ただし、SiのEDSスペクトルは、鋼板中のSiに由来するスペクトルを含んでいる可能性もあるので、正確には、鋼板断面を電子線マイクロアナライザ(EPMA)で分析し、Siが、鋼板由来か、SiO2中間酸化膜層由来かを判別する。
さらに、SiO2中間酸化膜層をフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)で測定し、波数1250(cm-1)にSiO2由来のピークが存在することを確認することが、SiO2中間酸化膜層を構成する化合物を同定するうえで好ましい。
ただし、FTIRは、試料最表面の化合物を選択的に分析する方法であるので、分析は、(a)張力付与性絶縁皮膜が存在していない試料について、又は、(b)鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を有する試料については、アルカリ洗浄などで張力付与性絶縁皮膜を完全に除去した後に行う。
なお、赤外分光法(IR)には、反射法と吸収法があるが、吸収法は、試料最表面の情報と鋼板内部の情報が重畳するので、SiO2中間酸化膜層を構成する化合物を同定するには、反射法が好ましい。
また、吸収法では、SiO2中間酸化膜層に由来の波数は1250(cm-1)とならず、SiO2の形成状態に応じてピークシフトする。ただし、SiO2中間酸化膜層の平均膜厚を1.0nm以上1.0μm以下に制御するのみでは、皮膜密着性の確保は不十分である。
SiO2中間酸化膜層の膜厚を制御することにより、張力付与性絶縁皮膜とSiO2中間酸化膜層間の皮膜密着性を確保することができるが、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面は、金属と酸化物の界面、即ち、異種原子間の界面であり、原子間相互作用が弱い界面であるので、剥離は、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面を起点にして起きる場合が多い。
そこで、AlがSiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化すると、SiO2中間酸化膜層と鋼板の間に引力的な電子間相互作用が働き、皮膜密着性が向上すると考えられる。例えば、CとFeは相互作用が引力的であるので、Cが粒界に偏析すると、粒界強度が上昇することが知られている。このことを前提にすれば、本発明電磁鋼板においては、同様に、Alが、SiO2とFeの間に、引力的な電子間相互作用を生起したと考えることができる。
電子間相互作用の程度を、実験により直接検出することは困難であるが、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化したAlの濃化態様は、SiO2中間酸化膜層を露出させた状態の鋼板表面をグロー放電発光分析法(GDS)で分析することが可能である。
本発明電磁鋼板においては、Alを、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化させ濃化層を形成するので、SiO2中間酸化膜層の深さ位置とAl濃化層の深さ位置の関係が重要である。SiO2中間酸化膜層の存在位置は、Siに由来するGDSスペクトル(以下「FSi(t)」と記載することがある。)から解析することが可能である。
なお、解析に際し、得られたスペクトルに、ピーク解析ソフトウェアなどを使って、スムージング処理を行ってもよい。また、ピーク解析の精度の向上の点で、測定時間の間隔Δtは、小さい方が望ましく、0.05秒以下が好ましい。
以下、tは、試料の深さ位置に対応する時間(秒)であり、GDSスペクトルを時間の関数としたときの変数である。
鋼板から採取した試料の表面にSiO2中間酸化膜層が存在すると、試料の表面に相当する領域で、Si由来のGDSスペクトルにおいて、(A)バックグラウンドからのピーク立上がり位置、(B)ピークの頂点位置、及び、(C)バックグラウンドへのピーク終端位置を観測することができる。
ここで、ピーク立上り位置に対応するtをTs、ピーク頂点位置に対応するtをTp、ピーク終端位置に対応するtをTfとする。SiO2中間酸化膜層は、測定試料の最表面に相当する。即ち、GDSスペクトルの測定開始点のtが、ピーク立上り位置に対応するとして、GDSの測定開始点をTsと定義してよい。また、ピークは、正規分布に従い左右対称であり、Tf=2Tp−Tsと定義できる。
GDSスペクトルの測定時間間隔Δtは0.05秒以下と小さいので、Ts≒0と近似して、Tf=2×Tpとしてもよい。いずれにせよ、Tfを決めるうえで、Tpを決定する必要がある。以下に、Tpの決定方法について説明する。
図1に、グロー放電発光分析法(GDS)で得たSi由来のスペクトルの微分曲線を示す。
Tpは、Si由来のGDSスペクトルのピーク頂点位置に対応する。ピーク頂点位置を決定するには、FSi(t)を時間で二階微分し、二階微分曲線(図1中、「d2F(t)/dt」、参照)の極小値に対応するtを見つければよい。ただし、この極小値は、t=0秒以上、Δt×100秒以下の範囲において見つかるものに限定する。なぜなら、SiO2中間酸化膜層は試料表面にのみ存在し、鋼板内部には存在しないため、tは、比較的小さい値を有するからである。
さらに、FSi(t)を時間で一階微分した曲線fSi(t)(=dFSi(t)/dt)(図1中、「dF(t)/dt」、参照)において、t=Ts〜Tpの範囲で、常に、fSi(t)≧0であれば、Tpがピーク頂点位置に対応することは、より決定的である。
なお、微分曲線の導出方法は導関数を求めてもよいし、差分法によって、f(tn)=[F(tn)−F(tn-1)]/[tn−tn-1]と近似してもよい。ここで、n番目の測定点(時間)をtnとし、そのときのスペクトル強度をF(tn)としている。
Si由来のピークが不明瞭な場合は、Fe由来のGDSスペクトル[以下、FFe(t)]からも解析可能である。この場合は、FFe(t)の一階の微分曲線(以下、fFe(t)とする)において、極大値に相当するtを前記Tfとした場合、前記Tpは、Tp=0.5×(Tf+Ts)として示されるが、Ts≒0と近似して、Tp=0.5×Tfとしてもよい。これは、fFe(t)の極大値がSiO2と地鉄の界面に相当するからである。
ただし、この極大値は、t=0秒以上、Δt×100秒以下の範囲において見つかるものに限定する。なぜなら、SiO2中間酸化膜層は、試料表面にのみ存在し、鋼板内部には存在しないので、tは、比較的小さい値を有するからである。
本発明電磁鋼板においては、皮膜密着性の向上を目的とし、Alを、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面の位置であるt=Tfにおいて濃化させる必要がある。ただし、Alをt=Tfの位置のみに留めておくことは不可能であり、実際には、t=Tfを起点とし、t=Tp〜Tfの範囲に亘って分布することになる。この領域を、以下、界面濃化層という。
また、Al以外でも、Cr、Cu、Caについても、界面濃化層を形成して皮膜密着性の向上に寄与することが確認されている。即ち、本発明電磁鋼板においては、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に相当するt=Tp〜Tfの範囲において、金属元素M(M=Al、Cr、Cu、Ca)が界面濃化層を形成している。
この界面濃化層の存在は、金属元素Mに由来のGDSスペクトル(以下「FM(t)」と記載することがある。)を用いて確認することが可能である。具体的には、FM(t)の時間微分曲線fM(t)を積分(積分範囲:t=Tp〜Tf)したとき、積分値が0より大きければ、金属元素Mは、界面濃化層として存在していると判断することができる。
なお、鋼板内部では、金属元素Mは均一に分布しているため、鋼板内部におけるfM(t)の積分値は0又は限りなく0に近い値になる。
また、GDSの測定におけるtは連続でなく、t=Tp〜Tfにおいて、fM(t)は不連続な点の集まりである。そのため、fM(t)の各点を直線で繋いで連続な関数として近似して積分する。なお、Σを使った積算値としてもよい。
以上の議論から、Alが、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化し、濃化層として存在するには、下記式(1)を満たすことが必要である。
また、下記式(2)〜(4)を一つ又は二つ以上満たすことで、皮膜密着性は、さらに向上する。
本発明電磁鋼板において、金属元素M(Al、Cr、Cu、Ca)は化学分析でも検出することが可能である。張力付与性絶縁皮膜を形成する前の状態、又は、張力付与性絶縁皮膜を除去した状態の試料の鋼板部分を、ヨウ素メタノール法により溶解し、SiO2中間酸化膜層を抽出する。次に、抽出したSiO2中間酸化膜層を、ICPなどを用いて化学分析する。これにより、SiO2中間酸化膜層に侵入した金属元素Mを捉えることができる。
金属元素M(Al、Cr、Cu、Ca)は、SiO2中間酸化膜層中に、質量%で、合計、0.05%以上2.00%以下存在すればよい。0.05%未満では、皮膜密着性が向上しないので、金属元素Mの合計は0.05%以上が好ましい。より好ましくは0.10%以上である。
一方、2.00%を超えると、偏析の影響でSiO2の結晶格子が乱れ、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に多くの格子欠陥が導入されて、皮膜密着性が劣化するので、金属元素Mの合計は2.00%以下が好ましい。より好ましくは1.50%以下である。
GDSや化学分析などによる、皮膜密着性の向上効果の検証には、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した後、張力付与性絶縁皮膜を形成する前の状態の鋼板試料が最も適しているが、表面に張力付与性絶縁皮膜が形成されている鋼板試料については、アルカリ洗浄の後、酸洗、又は、アルコール、水などによる超音波洗浄で、張力付与性絶縁皮膜のみを完全に除去して分析に供すればよい。
また、酸洗、又は、アルコール、水などによる超音波洗浄の後に、更なる表面清浄を目的に、水素100%の雰囲気にて800℃以上1100℃以下で、1時間以上5時間以下の焼鈍を実施して、分析に供してもよい。SiO2は安定な化合物であるので、上記焼鈍でSiO2が還元されて、SiO2中間酸化膜層が消失することはない。
本発明電磁鋼板は、通常の電磁鋼板の製造と同様に、転炉で溶製され、連続鋳造された鋼片に、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、一次再結晶焼鈍、二次再結晶焼鈍、SiO2中間酸化膜層を形成する焼鈍、及び、絶縁皮膜を形成する焼鈍を施して製造する。
熱間圧延は、直送熱延や、連続熱延でもよく、鋼片加熱温度は限定されない。冷間圧延は、二回以上の冷延、温間圧延でもよく、圧下率は限定されない。二次再結晶焼鈍は、箱形炉によるバッチ焼鈍、連続ライン焼鈍のいずれでもよく、焼鈍方式に依らない。
焼鈍分離剤は、アルミナ、マグネシア、又は、シリカなどの酸化物を含有すれものであればよく、その種類に依らない。
皮膜密着性に優れた一方向性電磁鋼板を製造する場合、SiO2中間酸化膜層の形成に際しては、SiO2中間酸化膜層を生成するとともに、金属元素M(Al、Cr、Cu、Ca)がSiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化する熱処理条件を採用することが重要である。即ち、Al、Cr、Cu、Caが、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化する濃化時間を確保することが重要である。
本発明電磁鋼板において、SiO2中間酸化膜層は、二次再結晶後の鋼板を600℃以上1400℃以下の温度T1(℃)で、5〜1200秒焼鈍して形成する。
焼鈍温度が600℃未満であると、SiO2は生成せず、SiO2中間酸化膜層は形成されないので、焼鈍温度は600℃以上とする。一方、焼鈍温度が1400℃を超えると、鋼板が溶融する恐れがあるので、焼鈍温度は1400℃以下とする。好ましくは、SiO2の析出温度である700〜1150℃である。
SiO2中間酸化膜層を成長させ、優れた皮膜密着性の確保に必要な層厚を確保するため、焼鈍時間は5秒以上とする。好ましくは20秒以上である。優れた皮膜密着性の確保の観点で、焼鈍時間は長くてもよいが、生産性の観点から、1200秒を上限とする。好ましくは1000秒以下である。
焼鈍雰囲気は、外部酸化型のシリカ(SiO2中間酸化膜層)を生成し、かつ、ファイヤライト、ウスタイト、マグネタイト等の低級酸化物の生成を回避する焼鈍雰囲気とする。そのため、焼鈍雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2を、下記式(5)を満たす酸素ポテンシャルとする。
H2O/PH2≦5.65 ・・・(5)
酸素ポテンシャルPH2O/PH2が低いほど、外部酸化型のシリカ(SiO2中間酸化膜層)は生成し易く、本発明の効果を発揮し易いが、酸素ポテンシャルPH2O/PH2を3.0×10-4未満に制御することは難しいので、工業的には3.0×10-4程度が実質的な下限となる。
一方、酸素ポテンシャルPH2O/PH2が5.65を超えると、ファイヤライト、ウスタイト、マグネタイト等の低級酸化物が生成するので、酸素ポテンシャルPH2O/PH2は5.65以下とする。好ましくは2.25以下である。
金属元素M(Al、Cr、Cu、Ca)を、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に効果的に濃化させるためには、金属元素Mの偏析温度を確保する必要がある。そのため、SiO2中間酸化膜層を形成する焼鈍後の冷却においては、偏析温度域である下記式(6)で定義するT2(℃)以上、上記T1(℃)以下の温度域を、50℃/秒以下の平均冷却速度CR1(℃/秒)で冷却する。
50℃/秒以下の平均冷却速度CR1の冷却により、本発明電磁鋼板の特性が劣化することはないが、生産性の観点から、CR1は0.1℃/秒以上が好ましい。T2(℃)まで冷却した後、冷却速度を速くすると、熱歪が導入され、皮膜密着性及び磁気特性が低下するので、40℃〜T2(℃)の温度域の平均冷却速度CR2は、下記式(7)を満たす平均冷却速度とする。
T2=T1−100 ・・・(6)
CR1>CR2 ・・・(7)
上記式(5)を満たす酸素ポテンシャルPH2O/PH2の焼鈍雰囲気で、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した後、一旦、室温まで冷却し、次いで、T2℃以上、T1℃以下の温度域に再加熱し、10秒以上保持した後、室温以上、T2℃未満の温度域を、平均冷却速度CR3:30℃/秒以下で冷却してもよい。
皮膜密着性に優れたSiO2中間酸化膜の形成においては、鋼板を加熱する加熱速度も重要である。SiO2以外の酸化物は、張力付与性絶縁皮膜の密着性を低下させるだけでなく、鋼板の表面平滑性を阻害し、鉄損特性の低下を招くので、SiO2以外の酸化物が極力生成しない加熱速度を採用する必要がある。
非特許文献1に記載されているように、SiO2は、他のFe系酸化物に比べ、安定でないので、加熱途中に、Fe系酸化物が生成しない熱履歴を採用することが好ましい。具体的には、室温から500℃までの温度域における平均加熱速度HR1を10℃/秒以上とすることで、FeXOの生成を回避することができる。この温度域における加熱速度は、速いほど好ましいが、工業的な理由から、平均加熱速度HR1の上限は200℃/秒が好ましい。
SiO2の生成温度域は600℃以上、T1℃以下である。そのため、より多くのSiO2を生成させるために、この温度域の平均加熱速度HR2を50℃/秒以下とする。ただし、加熱速度が遅いと、SiO2よりも熱的に安定なFe2SiO4が生成するので、平均加熱速度HR2は5℃/秒以上が好ましい。
また、SiO2の生成駆動力は、600℃までの加熱速度の増加に伴い大きくなるので、室温から600℃までは加熱速度を速くし、その後の生成温度における滞在期間を長くすることが好ましい。そのため、平均加熱速度が下記式(8)を満たすことが、皮膜密着性を確保する点で好ましい。
HR1<HR2 ・・・(8)
以下、本発明の実施例を挙げながら、本発明の技術的内容についてさらに説明する。なお、以下に示す実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。また、本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
<実施例1>
表1に示す成分組成の珪素鋼を1000〜1400℃に加熱して熱間圧延に供し、板厚2.3〜2.8mmの熱延鋼板とし、該熱延鋼板に900〜1200℃で焼鈍を施し、その後、一回の冷間圧延又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して、最終板厚0.23mmの冷延鋼板とした。
最終板厚0.23mmの冷延鋼板に、脱炭焼鈍と窒化焼鈍を施し、その後、焼鈍分離剤を塗布して、1200℃で仕上げ焼鈍を施し、次いで、仕上げ焼鈍板を、酸素ポテンシャルPH2O/PH2=0.9の雰囲気、1200℃×400秒の条件で焼鈍し、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した。
なお、1100℃以上、1200℃以下の温度域における平均冷却速度CR1を20℃/秒とし、かつ、40℃以上、1100℃未満の平均冷却速度CR2を7℃/秒とした。
その後、鋼板表面に絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成し、該絶縁皮膜の皮膜密着性を評価するとともに、磁気特性(磁束密度)を評価した。
張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性は、評価用試料を、直径20mmの円筒に巻き付け、180°曲げた時の皮膜残存面積率で評価した。評価は、鋼板から剥離せず、被膜残存面積率が95%以上の場合をVG(非常に優れる)、90%以上95%未満の場合をG(優れる)、80%以上90%未満の場合をF(効果がある)、80%未満をB(効果がない)とした。
磁気特性は、JIS C 2550に準じて評価した。磁束密度は、B8を用いて評価した。B8は、磁界の強さ800A/mにおける磁束密度で、二次再結晶の良否の判断基準となる。B8=1.89T以上を、二次再結晶したものと判断した。
なお、一部の試料については、SiO2中間酸化膜層の形成後に、張力付与性絶縁皮膜を形成せず、SiO2中間酸化膜層の膜厚調査と、界面濃化元素の調査に供した。SiO2中間酸化膜層の膜厚は、特許文献10に記載の方法に準じて、TEM観察により同定した。界面濃化元素は、GDSにより調査した。GDSの測定時間は100秒、時間間隔は0.02秒とした。一連の評価結果を表2に示す。
B1〜B7は発明例であり、いずれも良好な皮膜密着性を示している。一方、b1〜b8は比較例である。b3、b5、b6は、鋼a3、鋼a5、鋼a6が、それぞれ、Si、Al、Nを多量に含有するため、室温での脆化が著しく、冷延が不可能であった。b8は、鋼a8がSを多量に含有し、熱間での脆化が著しく、熱延が不可能であった。それ故、b3、b5、b6、b8は、いずれも、皮膜密着性の評価に至らなかった。
b1、b2、b4、b7は、いずれも、鋼の添加元素が本発明の範囲外であるため、二次再結晶しなかった。なお、二次再結晶しなかった試料は、いずれも、皮膜密着性が悪かった。二次再結晶しなかった場合、鋼板の結晶粒径は微細で、表面凹凸が激しく、SiO2中間酸化膜層が適切に成長できなかったためと考える。
<実施例2>
表1に示す成分組成の珪素鋼を1000〜1400℃に加熱して熱間圧延に供し、板厚2.3〜2.8mmの熱延鋼板とし、該熱延鋼板に900〜1200℃で焼鈍を施し、その後、一回の冷間圧延又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して、最終板厚0.23mmの冷延鋼板とした。
最終板厚0.23mmの冷延鋼板に、脱炭焼鈍と窒化焼鈍を施し、その後、焼鈍分離剤を塗布して、1200℃で仕上げ焼鈍を施し、次いで、仕上げ焼鈍板を、酸素ポテンシャルPH2O/PH2=0.005の雰囲気、1100℃×200秒の条件で焼鈍し、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した。
なお、900℃以上、1100℃以下の温度域における平均冷却速度CR1を15℃/秒とし、かつ、40℃以上、1000℃未満の平均冷却速度CR2を7℃/秒とした。
その後、鋼板表面に絶縁被膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成し、絶縁被膜の密着性を評価するとともに、磁気特性(磁束密度)を評価した。
表3に、SiO2中間酸化膜層の膜厚、GDS分析による界面濃化元素の濃化度、皮膜密着性の評価結果を示す。測定及び評価は、実施例1の測定及び評価に準じて行った。また、表3の「SiO2中間酸化膜層/鋼板の界面への濃化元素」の欄には、GDSスペクトルにより濃化が確認された元素を記載した。
C1〜C8は発明例である。C1〜C4においては、Cr、Cu、及び、Caのいずれか1種の濃化が確認されており、良好な皮膜密着性を示している。C5及びC6においては、Cr、Cu、及び、Caの濃化が確認されており、C1〜C4に比べて、さらに良好な皮膜密着性を示している。
C7においては、Crの濃化は確認できないが、CuとCaの濃化に加え、SnとBの濃化により、C5と同等の皮膜密着性を示している。C8においては、Cr、Cu、Caの濃化に加え、Sn、Bの濃化が加わったことにより、さらに良好な皮膜密着性を示している。
<実施例3>
表1に示す成分組成の珪素鋼を1000〜1400℃に加熱して熱間圧延に供し、板厚2.3〜2.8mmの熱延鋼板とし、該熱延鋼板に900〜1200℃で焼鈍を施し、その後、一回の冷間圧延又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して、最終板厚0.23mmの冷延鋼板とした。
最終板厚0.23mmの冷延鋼板に、脱炭焼鈍と窒化焼鈍を施し、その後、焼鈍分離剤を塗布して、1200℃で仕上げ焼鈍を施し、次いで、仕上げ焼鈍板を、表4に示す条件で焼鈍し、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した。その後、鋼板表面に絶縁被膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成し、絶縁被膜の皮膜密着性を評価するとともに、磁気特性(磁束密度)を評価した。
表4に、SiO2中間酸化膜層の膜厚、GDSスペクトルによる界面濃化元素の濃化度、皮膜密着性の評価結果を示す。測定及び評価は、実施例1の測定及び評価に準じて行った。
D1〜D9は発明例である。特に、D7及びD8は、SiO2中間酸化膜層を形成する際の焼鈍温度及び酸素ポテンシャルが好ましい範囲内であるので、極めて良好な皮膜密着性を示している。
一方、d1〜d4は比較例である。d1〜d3においては、SiO2中間酸化膜層を形成する際の焼鈍温度、焼鈍時間、及び、酸素ポテンシャルのいずれかが、本発明の範囲外であるため、SiO2中間酸化膜層が形成されず、皮膜密着性を確保できなかった。また、d1〜d3においては、GDSでSiO2由来のピークを観察できなかったため、Tp及びTfを定義できなかった。
d4においては、SiO2中間酸化膜層を形成できたものの、冷却速度が速く、AlがSiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化するための時間を確保できず、皮膜密着性の評価はB(効果がない)となった。
<実施例4>
表1に示す成分組成の珪素鋼を1000〜1400℃に加熱して熱間圧延に供し、板厚2.3〜2.8mmの熱延鋼板とし、該熱延鋼板に900〜1200℃で焼鈍を施し、その後、一回の冷間圧延又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して、最終板厚0.23mmの冷延鋼板とした。
最終板厚0.23mmの冷延鋼板に、脱炭焼鈍と窒化焼鈍を施し、その後、焼鈍分離剤を塗布して、1200℃で仕上げ焼鈍を施し、次いで、仕上げ焼鈍板を、表5に示す条件で焼鈍し、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した。その後、鋼板に絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成し、絶縁皮膜の皮膜密着性を評価するとともに、磁気特性(磁束密度)を評価した。
表5に、SiO2中間酸化膜層の膜厚、GDSスペクトルによる界面濃化元素の濃化度、皮膜密着性の評価結果を示す。測定及び評価は、実施例1の測定及び評価に準じて行った。
E1〜E5は発明例である。特に、E5は、HR1<HR2の条件を満たしており、皮膜密着性の評価はVGである。E1〜E3は、HR1<HR2の条件を満たしているが、HR1又はHR2が、本発明範の囲の上下限に近いので、皮膜密着性は、E5と比べてやや劣り、評価はGである。
E4は、SiO2中間酸化膜層の形成の際の焼鈍温度、焼鈍時間、酸素ポテンシャル、冷却速度が、いずれも、本発明の範囲内であるものの、HR1<HR2の条件を満たしておらず、皮膜密着性の評価はFとなった。
前述したように、本発明によれば、グラス皮膜の生成を意図的に抑制したり、グラス皮膜を研削や酸洗等の手段で除去したり、さらに、鋼板表面を鏡面光沢を呈するまで平坦化した、仕上げ焼鈍済みの一方向性電磁鋼板の表面に、皮膜密着性に優れた張力付与性絶縁皮膜を、磁気特性とその安定性を損なわずに形成することができる。よって、本発明は、電磁鋼板製造産業及び電磁鋼板利用産業において利用可能性が高いものである。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.10%以下、Si:0.80〜7.00%、酸可溶性Al:0.01〜0.07%、N:0.012%以下、Mn:1.00%以下、S:0.08%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を有し、かつ、該張力付与性絶縁皮膜と上記鋼板表面の界面に、平均膜厚が1.0nm以上1.0μm以下のSiO2中間酸化膜層を有する一方向性電磁鋼板において、
    上記SiO2中間酸化膜層の金属元素M(M:Al)のグロー放電発光分析スペクトルの時間微分曲線fM(t)が、下記式(1)を満足する
    ことを特徴とする皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
    Tp:Siのグロー放電発光分析スペクトルの二階の時間微分曲線の極小値に対応す る時間t(秒)
    Tf:Siのグロー放電発光分析スペクトルの分析開始点をTsとして、2Tp−Tsに 対応する時間t(秒)
  2. 前記一方向性電磁鋼板が、さらに、質量%で、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、Ca:0.001〜0.05%の一種又は二種以上を含有し、前記SiO2中間酸化膜層の金属元素M(M:Cr、Cu、Ca)のグロー放電発光分析スペクトルの時間微分曲線fM(t)が、下記式(2)〜(4)の一つ又は二つ以上を満足することを特徴とする請求項1に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
    Tp:Siのグロー放電発光分析スペクトルの二階の時間微分曲線の極小値に対応す る時間t(秒)
    Tf:Siのグロー放電発光分析スペクトルの分析開始点をTsとして、2Tp−Tsに 対応する時間t(秒)
  3. 前記一方向性電磁鋼板が、さらに、質量%で、Sn:0.01〜0.20%、B:0.001〜0.010%の一種又は二種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分組成の鋼片を熱間圧延して熱延鋼板を製造する熱延工程、熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程、焼鈍後の鋼板を酸洗する酸洗工程、酸洗後の鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を製造する冷延工程、冷延鋼板を脱炭焼鈍する脱炭焼鈍工程、脱炭焼鈍鋼板を仕上焼鈍する仕上焼鈍工程、仕上焼鈍鋼板を焼鈍して、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程、酸化膜形成後の鋼板に、絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板を製造する製造方法において、
    (i)上記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程における焼鈍を、600〜1400℃の温度T1(℃)で5〜1200秒、かつ、下記式(5)を満たす酸素ポテンシャルで行い、その後の冷却で、
    (ii)下記式(6)で定義する温度T2(℃)以上、上記T1(℃)以下の温度域の平均冷却速度CR1(℃/秒)を50℃/秒以下とし、40℃以上、上記T2(℃)未満の温度域の平均冷却速度を、下記式(7)を満たす平均冷却速度CR2(℃/秒)とする
    ことを特徴とする皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板の製造方法。
    H2O/PH2≦5.65 ・・・(5)
    T2=T1−100 ・・・(6)
    CR1>CR2 ・・・(7)
  5. 前記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程の加熱過程において、室温から600℃以下の温度域の平均加熱速度HR1(℃/秒)を10℃/秒以上とし、600℃を超え前記T1℃以下の温度域の平均加熱速度HR2(℃/秒)を50℃/秒以下とすることを特徴とする請求項4に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板の製造方法。
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