JP2004191237A - 方向性電磁鋼板の製造条件の評価方法および製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】最終製品の良否を脱炭焼鈍処理後の段階で事前に評価し、最終製品の歩留まりを向上させ、また、評価値によって製造条件を制御し、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造する。
【解決手段】方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板より試料をとり出し、試料鋼板の一方の表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)により測定し、該鋼板中の少なくとも1つの元素量の深さ方向の変化によって、方向性電磁鋼板の製造条件を評価することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造条件の評価方法。
【選択図】なし
【解決手段】方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板より試料をとり出し、試料鋼板の一方の表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)により測定し、該鋼板中の少なくとも1つの元素量の深さ方向の変化によって、方向性電磁鋼板の製造条件を評価することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造条件の評価方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面をrf−GDSで測定し、製造条件を評価し、歩留まりの向上を図る方法および磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板は脱炭焼鈍の過程において、SiO2 を主成分とする酸化被膜が生成される。図1にその断面図を示す。酸化被膜は、SiO2 が主で、その他にFe2 SiO4 ,FeSiO3 を含んだものである。この後、フォルステライト(Mg2 SiO4 )被膜を作製し、さらに張力被膜をコーティングする。しかし、磁気特性には、酸化被膜の生成状態が影響を与えることが知られている。
従来、鋼板より試料を切り出し、その片面を電解質溶液に接触させ試料極とし、対局を一定距離に配置し、定電流を流し、電圧の経時変化を測定し、それを基に製造条件の適正を判断している(特許文献1参照)。しかし、この方法では、電極の劣化や、液温の変化によって測定電圧値が変化してしまうという問題があった。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−103938号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の従来技術における問題点に鑑み、脱炭焼鈍後の酸化被膜をrf−GDSで測定し、そのFeの強度変化を基に、脱炭焼鈍後の段階で製造条件を評価すると共に、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板を製造することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は以下の各発明を提供する。
(1)方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板より試料をとり出し、試料鋼板の一方の表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)により測定し、該鋼板中の少なくとも1つの元素量の深さ方向の変化によって、方向性電磁鋼板の製造条件を評価することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造条件の評価方法。
(2)上記1に記載する評価方法により、脱炭焼鈍処理工程もしくはそれ以前の条件を制御し、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板を製造する方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)上記1に記載する方法により測定したFeの地鉄部分と界面近傍の酸化被膜の最も低い部分との強度の差をD値として、その値が0.70から0.78であることを特徴とする方向性電磁鋼板用脱炭焼鈍板。
【0006】
(4)上記3に記載の方向性電磁鋼板用脱炭焼鈍板を用いて得られる磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板。
(5)方向性電磁鋼板の製造工程の脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板よりとり出した試料を陰極とするグロー放電管と、該試料鋼板へグロー放電して得られる発光を分光・検出する分光器および検出器と、少なくとも1つの元素量の該鋼板中の深さ方向の変化によって、方向性電磁鋼板の製造条件を評価するデータ処理装置とを有する方向性電磁鋼板の製造条件の評価装置。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
[1] 本発明の評価方法は、方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板より試料を切り出す等の方法でとりだし、試料鋼板の一方の表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)により測定し、該鋼板中の少なくとも1つの元素量の深さ方向の変化によって、方向性電磁鋼板の製造条件を評価することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造条件の評価方法である。
【0008】
一般に、方向性電磁鋼板の製造工程は、Si:2.5〜4.0質量%を含むスラブを熱延し、焼鈍と1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷延により、最終板厚とされる。次いで、連続焼鈍炉において、水素ガス、または水素ガスと窒素ガスの混合雰囲気中で脱炭焼鈍を行い、脱炭とともに、一次再結晶およびSiO2 を主成分とする酸化被膜が生成される。その後、MgOなどからなる焼鈍分離剤を水に懸濁させスラリー状として、それを鋼板上に塗布し、乾燥後、コイル状に巻き取り、最終仕上げ焼鈍を行い、フォルステライト(Mg2 SiO4 )被膜( グラス被膜)を作製し、さらにリン酸塩系を主体とする張力被膜をコーティングして、平坦化焼鈍されて最終製品とされる。
【0009】
本発明者らは脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板より試料を切り出し、その片面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)により測定し、該鋼板中の少なくとも1つの元素量の深さ方向の測定をし、例えば、Feの、地鉄と酸化被膜の界面近傍の最も測定量の低い部分との強度の差を求めたところ、この強度が、最終製品の方向性電磁鋼板の磁気特性と相関があることを知見した。この相関を用いて、方向性電磁鋼板の製造条件を評価する方法を発明した。
評価に用いる少なくとも1つの元素は、Fe、O、Si等を挙げることができるが、Feが好ましい。
【0010】
[2]高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)は、特に限定されるものではないが、以下の本発明の装置を用いて行うことができる。
図2は、本発明の方向性電磁鋼板の評価装置を示す。
図2において、1は脱炭焼鈍後の鋼板試料、2はグロー放電源で、これらはレンズ4と共にグロー放電管10を形成し、鋼板試料1は陰極となる。グロー放電管10は、グロー放電制御系13により制御される。一方グロー放電は、冷却系、ガス圧制御系、RF電源、DC電源を備えたグロー放電部15によって行われる。3は試料に当たったイオンスパッタリングによって表面原子の一部がプラズマ中に放出され、他の原子との衝突を繰り返して励起され、それが脱励起された際に放出される光である。光3はレンズ4を通って真空紫外域測定用真空容器11内の分光器12中に入る。分光器12中に入った光は回折格子6により回折されて分光され、それぞれ出口スリット7から光電子増倍管8等の検出器で検出される。検出された光の信号は、電気導線9により光強度測定回路16に入り測定される。測定されたデータは、少なくとも1つの元素量の該鋼板中の深さ方向の変化量として、方向性電磁鋼板の製造条件を評価できるデータとしてデータ処理装置17により処理される。データ処理装置は、制御回路、ローカルコンピュータ、パーソナルコンピュータを備えていて、グロー放電系13、グロー放電部15、真空制御系18の制御を行っても良い。
【0011】
少なくとも1つの元素量の該鋼板中の深さ方向の変化量の1例として図3にrf−GDSのFeの測定例を示す。図中、地鉄部分のFeの励起光と界面近傍の酸化被膜のFeの励起光の最も低い部分との強度差をDとして(以下D値と表示)、この値と最終製品の品質とを比較して製造条件を評価する。最終製品で評価する品質は、特に限定されないが、磁気特性が好ましい。評価される製造条件は限定されないが、脱炭焼鈍までの製造条件のいずれでも評価できる。
【0012】
[3]また、この評価方法を用いて、脱炭焼鈍処理条件等の種々の製造条件を制御することにより、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板を製造することが可能となった。
脱炭焼鈍処理条件としては、ガス流入以前の真空度、水素ガス、または水素ガスと窒素ガスの混合雰囲気の流量、比率、露点または脱炭処理の温度、時間等の処理条件を制御することができる。
その他の処理条件は、スラブ中のSi量またはその他の添加元素や不純物元素の量、スラブの熱延、焼鈍の条件や回数、冷間圧延条件や回数、最終板厚等の条件が挙げられる。
また、予め各種の処理条件を変化させた場合について、少なくとも1つの元素の深さ方向の量の変化幅を調査しておくことにより、処理条件の変動因子を把握することができる。
【0013】
本発明の製造方法を用いれば、脱炭焼鈍処理等種々の製造条件を、最終製品を得る以前に評価でき各種の製造条件を制御することにより、磁気特性の良い方向性電磁鋼板を製造することを可能とする。種々の処理条件の制御は、個々の工程を別個に制御してもよいし、複数の工程を同時に制御してもよい。
【0014】
【実施例】
以下、図面を参照して実施例を説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されない。
図2に示した装置を用いて、下記の条件で製造した方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍後の鋼板試料1を陰極として、Feのrf−GDSを測定した。
鋼板試料は次のように作製した。脱炭焼鈍前処理として、中間焼鈍で表面に生成したSi濃度の低い部分を酸洗により0.05μm以上除去し、中間焼鈍時に生成した酸化物を0.01〜0.5g/m2 残留させる、表面粗度を0.1〜0.7μmの範囲内で制御し、Si化合物を付着させることを適宜変化させた。その後、脱炭焼鈍処理条件として、水素雰囲気中で、露点を30〜70℃、均熱保持温度を820〜880℃、均熱保持時間を80〜130秒、加熱時、均熱保持および還元処理の雰囲気酸化性(分圧比pH2 O/pH2 )を0.09〜0.70、650℃から均熱保持温度の10℃低いところまでの昇温速度を1〜30℃/秒、還元処理時間を5〜150秒と適宜変化させた。
【0015】
一方同じ脱炭焼鈍後の鋼板試料から最終製品の方向性電磁鋼板を製造し、鉄損値としてB8(T)とW17/50を測定し、磁気特性を測定した。Feのrf−GDSを測定した結果を図3に示した。図中、地鉄部分と界面近傍の酸化被膜の最も低い部分との差をDとした(以下D値と表示)。D値と磁気特性との相関を求め、製造条件を評価した。
D値と鉄損(W17/50)の相関関係を図4に示す。図から、D値を特定の範囲とすれば、最終製品の磁気特性を良好な範囲とすることができることがわかる。特に、D値が0.70から0.78の間が好適範囲と考えられる。
【0016】
そこで、D値が0.70から0.78になるように脱炭焼鈍前処理および脱炭焼鈍処理条件を下記の条件に制御し、20コイルについて最終製品の鉄損値としてB8(T)とW17/50を測定した。結果をD値を特定範囲に制御しない上記の製造条件で製造した場合(従来法)と比較したところ、表1に示すように、D値をこの範囲に制御すると製品の磁気特性のばらつきは少なくなり、平均の特性も向上した。
【0017】
【表1】
【0018】
D値が0.70から0.78になるように脱炭焼鈍前処理および脱炭焼鈍処理条件を制御した最適な方向性電磁鋼板の処理条件は、以下に示すものであった。
脱炭焼鈍前処理条件としては、中間焼鈍で表面に生成したSi濃度の低い部分を酸洗により0.1μm以上除去し、中間焼鈍時に生成した酸化物を0.01〜0.3g/m2 残留させ、表面粗度を0.1〜0.5μmの範囲内で制御し、Si化合物を付着させる。その後の脱炭焼鈍処理条件としては、水素雰囲気中で、露点58〜61℃、加熱保持温度820〜840℃、加熱保持時間100〜120秒、加熱時の雰囲気酸化性0.25〜0.50、均熱保持での雰囲気酸化性を加熱時よりも0.02〜0.20高くし、650℃から均熱温度の10℃低いところまでの昇温速度を1.5〜25℃/秒、還元処理を雰囲気酸化性0.2以下で、5〜100秒実施でした。これにより、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板の製造が可能であった。
【0019】
脱炭焼鈍後のコイルは通常の製造方法に従い、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、コイル状に巻き取って最終仕上げ焼鈍を行った後、張力コーティングを鋼板表面に付与した。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように、方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面のFeをrf−GDSにより測定し、そのプロファイルの酸化被膜下層と地鉄の強度差を求め、製造条件を評価することができる。最終製品の良否を脱炭焼鈍処理後の段階で事前に評価し、最終製品の歩留まり向上に好適である。また、評価値によって製造条件を制御し、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階での鋼板の断面を示す模式図である。
【図2】rf−GDS測定に用いる測定装置を説明する図である。
【図3】鋼板中のFeの深さ方向の変化量を示す測定結果の1例を示すグラフである。
【図4】鉄損とD値の相関関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1: 鋼板試料
2: グロー放電源
3: 光
4: レンズ
5: スリット
6: 回折格子
7: 出口スリット
8: 光電子増倍管
9: 電気導線
10: グロー放電管
11: 真空紫外域測定用真空容器
12: 分光器
13: グロー放電制御系
15: グロー放電部
16: 光強度測定回路
17: データ処理装置
18: 真空制御系
D: 地鉄と酸化被膜下層の強度差
【発明の属する技術分野】
本発明は、方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面をrf−GDSで測定し、製造条件を評価し、歩留まりの向上を図る方法および磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板は脱炭焼鈍の過程において、SiO2 を主成分とする酸化被膜が生成される。図1にその断面図を示す。酸化被膜は、SiO2 が主で、その他にFe2 SiO4 ,FeSiO3 を含んだものである。この後、フォルステライト(Mg2 SiO4 )被膜を作製し、さらに張力被膜をコーティングする。しかし、磁気特性には、酸化被膜の生成状態が影響を与えることが知られている。
従来、鋼板より試料を切り出し、その片面を電解質溶液に接触させ試料極とし、対局を一定距離に配置し、定電流を流し、電圧の経時変化を測定し、それを基に製造条件の適正を判断している(特許文献1参照)。しかし、この方法では、電極の劣化や、液温の変化によって測定電圧値が変化してしまうという問題があった。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−103938号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の従来技術における問題点に鑑み、脱炭焼鈍後の酸化被膜をrf−GDSで測定し、そのFeの強度変化を基に、脱炭焼鈍後の段階で製造条件を評価すると共に、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板を製造することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は以下の各発明を提供する。
(1)方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板より試料をとり出し、試料鋼板の一方の表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)により測定し、該鋼板中の少なくとも1つの元素量の深さ方向の変化によって、方向性電磁鋼板の製造条件を評価することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造条件の評価方法。
(2)上記1に記載する評価方法により、脱炭焼鈍処理工程もしくはそれ以前の条件を制御し、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板を製造する方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)上記1に記載する方法により測定したFeの地鉄部分と界面近傍の酸化被膜の最も低い部分との強度の差をD値として、その値が0.70から0.78であることを特徴とする方向性電磁鋼板用脱炭焼鈍板。
【0006】
(4)上記3に記載の方向性電磁鋼板用脱炭焼鈍板を用いて得られる磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板。
(5)方向性電磁鋼板の製造工程の脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板よりとり出した試料を陰極とするグロー放電管と、該試料鋼板へグロー放電して得られる発光を分光・検出する分光器および検出器と、少なくとも1つの元素量の該鋼板中の深さ方向の変化によって、方向性電磁鋼板の製造条件を評価するデータ処理装置とを有する方向性電磁鋼板の製造条件の評価装置。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
[1] 本発明の評価方法は、方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板より試料を切り出す等の方法でとりだし、試料鋼板の一方の表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)により測定し、該鋼板中の少なくとも1つの元素量の深さ方向の変化によって、方向性電磁鋼板の製造条件を評価することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造条件の評価方法である。
【0008】
一般に、方向性電磁鋼板の製造工程は、Si:2.5〜4.0質量%を含むスラブを熱延し、焼鈍と1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷延により、最終板厚とされる。次いで、連続焼鈍炉において、水素ガス、または水素ガスと窒素ガスの混合雰囲気中で脱炭焼鈍を行い、脱炭とともに、一次再結晶およびSiO2 を主成分とする酸化被膜が生成される。その後、MgOなどからなる焼鈍分離剤を水に懸濁させスラリー状として、それを鋼板上に塗布し、乾燥後、コイル状に巻き取り、最終仕上げ焼鈍を行い、フォルステライト(Mg2 SiO4 )被膜( グラス被膜)を作製し、さらにリン酸塩系を主体とする張力被膜をコーティングして、平坦化焼鈍されて最終製品とされる。
【0009】
本発明者らは脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板より試料を切り出し、その片面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)により測定し、該鋼板中の少なくとも1つの元素量の深さ方向の測定をし、例えば、Feの、地鉄と酸化被膜の界面近傍の最も測定量の低い部分との強度の差を求めたところ、この強度が、最終製品の方向性電磁鋼板の磁気特性と相関があることを知見した。この相関を用いて、方向性電磁鋼板の製造条件を評価する方法を発明した。
評価に用いる少なくとも1つの元素は、Fe、O、Si等を挙げることができるが、Feが好ましい。
【0010】
[2]高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)は、特に限定されるものではないが、以下の本発明の装置を用いて行うことができる。
図2は、本発明の方向性電磁鋼板の評価装置を示す。
図2において、1は脱炭焼鈍後の鋼板試料、2はグロー放電源で、これらはレンズ4と共にグロー放電管10を形成し、鋼板試料1は陰極となる。グロー放電管10は、グロー放電制御系13により制御される。一方グロー放電は、冷却系、ガス圧制御系、RF電源、DC電源を備えたグロー放電部15によって行われる。3は試料に当たったイオンスパッタリングによって表面原子の一部がプラズマ中に放出され、他の原子との衝突を繰り返して励起され、それが脱励起された際に放出される光である。光3はレンズ4を通って真空紫外域測定用真空容器11内の分光器12中に入る。分光器12中に入った光は回折格子6により回折されて分光され、それぞれ出口スリット7から光電子増倍管8等の検出器で検出される。検出された光の信号は、電気導線9により光強度測定回路16に入り測定される。測定されたデータは、少なくとも1つの元素量の該鋼板中の深さ方向の変化量として、方向性電磁鋼板の製造条件を評価できるデータとしてデータ処理装置17により処理される。データ処理装置は、制御回路、ローカルコンピュータ、パーソナルコンピュータを備えていて、グロー放電系13、グロー放電部15、真空制御系18の制御を行っても良い。
【0011】
少なくとも1つの元素量の該鋼板中の深さ方向の変化量の1例として図3にrf−GDSのFeの測定例を示す。図中、地鉄部分のFeの励起光と界面近傍の酸化被膜のFeの励起光の最も低い部分との強度差をDとして(以下D値と表示)、この値と最終製品の品質とを比較して製造条件を評価する。最終製品で評価する品質は、特に限定されないが、磁気特性が好ましい。評価される製造条件は限定されないが、脱炭焼鈍までの製造条件のいずれでも評価できる。
【0012】
[3]また、この評価方法を用いて、脱炭焼鈍処理条件等の種々の製造条件を制御することにより、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板を製造することが可能となった。
脱炭焼鈍処理条件としては、ガス流入以前の真空度、水素ガス、または水素ガスと窒素ガスの混合雰囲気の流量、比率、露点または脱炭処理の温度、時間等の処理条件を制御することができる。
その他の処理条件は、スラブ中のSi量またはその他の添加元素や不純物元素の量、スラブの熱延、焼鈍の条件や回数、冷間圧延条件や回数、最終板厚等の条件が挙げられる。
また、予め各種の処理条件を変化させた場合について、少なくとも1つの元素の深さ方向の量の変化幅を調査しておくことにより、処理条件の変動因子を把握することができる。
【0013】
本発明の製造方法を用いれば、脱炭焼鈍処理等種々の製造条件を、最終製品を得る以前に評価でき各種の製造条件を制御することにより、磁気特性の良い方向性電磁鋼板を製造することを可能とする。種々の処理条件の制御は、個々の工程を別個に制御してもよいし、複数の工程を同時に制御してもよい。
【0014】
【実施例】
以下、図面を参照して実施例を説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されない。
図2に示した装置を用いて、下記の条件で製造した方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍後の鋼板試料1を陰極として、Feのrf−GDSを測定した。
鋼板試料は次のように作製した。脱炭焼鈍前処理として、中間焼鈍で表面に生成したSi濃度の低い部分を酸洗により0.05μm以上除去し、中間焼鈍時に生成した酸化物を0.01〜0.5g/m2 残留させる、表面粗度を0.1〜0.7μmの範囲内で制御し、Si化合物を付着させることを適宜変化させた。その後、脱炭焼鈍処理条件として、水素雰囲気中で、露点を30〜70℃、均熱保持温度を820〜880℃、均熱保持時間を80〜130秒、加熱時、均熱保持および還元処理の雰囲気酸化性(分圧比pH2 O/pH2 )を0.09〜0.70、650℃から均熱保持温度の10℃低いところまでの昇温速度を1〜30℃/秒、還元処理時間を5〜150秒と適宜変化させた。
【0015】
一方同じ脱炭焼鈍後の鋼板試料から最終製品の方向性電磁鋼板を製造し、鉄損値としてB8(T)とW17/50を測定し、磁気特性を測定した。Feのrf−GDSを測定した結果を図3に示した。図中、地鉄部分と界面近傍の酸化被膜の最も低い部分との差をDとした(以下D値と表示)。D値と磁気特性との相関を求め、製造条件を評価した。
D値と鉄損(W17/50)の相関関係を図4に示す。図から、D値を特定の範囲とすれば、最終製品の磁気特性を良好な範囲とすることができることがわかる。特に、D値が0.70から0.78の間が好適範囲と考えられる。
【0016】
そこで、D値が0.70から0.78になるように脱炭焼鈍前処理および脱炭焼鈍処理条件を下記の条件に制御し、20コイルについて最終製品の鉄損値としてB8(T)とW17/50を測定した。結果をD値を特定範囲に制御しない上記の製造条件で製造した場合(従来法)と比較したところ、表1に示すように、D値をこの範囲に制御すると製品の磁気特性のばらつきは少なくなり、平均の特性も向上した。
【0017】
【表1】
【0018】
D値が0.70から0.78になるように脱炭焼鈍前処理および脱炭焼鈍処理条件を制御した最適な方向性電磁鋼板の処理条件は、以下に示すものであった。
脱炭焼鈍前処理条件としては、中間焼鈍で表面に生成したSi濃度の低い部分を酸洗により0.1μm以上除去し、中間焼鈍時に生成した酸化物を0.01〜0.3g/m2 残留させ、表面粗度を0.1〜0.5μmの範囲内で制御し、Si化合物を付着させる。その後の脱炭焼鈍処理条件としては、水素雰囲気中で、露点58〜61℃、加熱保持温度820〜840℃、加熱保持時間100〜120秒、加熱時の雰囲気酸化性0.25〜0.50、均熱保持での雰囲気酸化性を加熱時よりも0.02〜0.20高くし、650℃から均熱温度の10℃低いところまでの昇温速度を1.5〜25℃/秒、還元処理を雰囲気酸化性0.2以下で、5〜100秒実施でした。これにより、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板の製造が可能であった。
【0019】
脱炭焼鈍後のコイルは通常の製造方法に従い、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、コイル状に巻き取って最終仕上げ焼鈍を行った後、張力コーティングを鋼板表面に付与した。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように、方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面のFeをrf−GDSにより測定し、そのプロファイルの酸化被膜下層と地鉄の強度差を求め、製造条件を評価することができる。最終製品の良否を脱炭焼鈍処理後の段階で事前に評価し、最終製品の歩留まり向上に好適である。また、評価値によって製造条件を制御し、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階での鋼板の断面を示す模式図である。
【図2】rf−GDS測定に用いる測定装置を説明する図である。
【図3】鋼板中のFeの深さ方向の変化量を示す測定結果の1例を示すグラフである。
【図4】鉄損とD値の相関関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1: 鋼板試料
2: グロー放電源
3: 光
4: レンズ
5: スリット
6: 回折格子
7: 出口スリット
8: 光電子増倍管
9: 電気導線
10: グロー放電管
11: 真空紫外域測定用真空容器
12: 分光器
13: グロー放電制御系
15: グロー放電部
16: 光強度測定回路
17: データ処理装置
18: 真空制御系
D: 地鉄と酸化被膜下層の強度差
Claims (5)
- 方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板より試料をとり出し、試料鋼板の一方の表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)により測定し、該鋼板中の少なくとも1つの元素量の深さ方向の変化によって、方向性電磁鋼板の製造条件を評価することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造条件の評価方法。
- 請求項1に記載する評価方法により、脱炭焼鈍処理工程もしくはそれ以前の条件を制御し、磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板を製造する方向性電磁鋼板の製造方法。
- 請求項1に記載する方法により測定したFeの地鉄部分と界面近傍の酸化被膜の最も低い部分との強度の差をD値とし、その値が0.70から0.78であることを特徴とする方向性電磁鋼板用脱炭焼鈍板。
- 請求項3に記載の方向性電磁鋼板用脱炭焼鈍板を用いて得られる磁気特性のばらつきの少ない方向性電磁鋼板。
- 方向性電磁鋼板の製造工程の脱炭焼鈍後の段階で、該鋼板よりとり出した試料を陰極とするグロー放電管と、該試料鋼板へグロー放電して得られる発光を分光・検出する分光器および検出器と、少なくとも1つの元素量の該鋼板中の深さ方向の変化によって、方向性電磁鋼板の製造条件を評価するデータ処理装置とを有する方向性電磁鋼板の製造条件の評価装置。
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JP2002360801A JP2004191237A (ja) | 2002-12-12 | 2002-12-12 | 方向性電磁鋼板の製造条件の評価方法および製造方法 |
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JP2002360801A JP2004191237A (ja) | 2002-12-12 | 2002-12-12 | 方向性電磁鋼板の製造条件の評価方法および製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019019358A (ja) * | 2017-07-13 | 2019-02-07 | 新日鐵住金株式会社 | 皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板及びその製造方法 |
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2002
- 2002-12-12 JP JP2002360801A patent/JP2004191237A/ja active Pending
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