JP4276547B2 - 高磁場鉄損と被膜特性に優れる超高磁束密度一方向性電磁鋼板 - Google Patents

高磁場鉄損と被膜特性に優れる超高磁束密度一方向性電磁鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、主として変圧器その他の電気機器等の鉄心として利用される方向性電磁鋼板に関するものである。特に、脱炭焼鈍の昇温速度および直後の均熱時間と雰囲気を制御することにより優れた皮膜特性と高磁場鉄損を有する、極めて高い磁束密度を有する方向性電磁鋼板に係るものである。
多くの電気機器に磁気鉄心として用いられる方向性電磁鋼板は、通常Siを2〜7%含有し、製品の結晶組織を{110}<001>方位に高度に集積させた鋼板である。方向性電磁鋼板の製品特性は鉄損特性と励磁特性の両方で評価される。鉄損を少なくすることは、電気機器として使用する際に熱エネルギーとして奪われる損失を少なくするため、省エネルギーの点で有効である。一方、励磁特性を高めることは電気機器の設計磁束密度を高めることが可能となり、機器の小型化に有効である。製品の結晶組織を{110}<001>方位に集積することは、励磁特性を高め鉄損低減にも有効であるため、近年多くの研究が重ねられ、様々な製造技術が開発されてきた。
磁束密度向上のための典型的な技術のひとつに、下記特許文献1に開示されている製造方法が挙げられる。これは、AlNとMnSをインヒビターとして機能させ、最終冷延工程における圧下率を80%を超える強圧下とする製造方法である。この方法により、{110}<001>方位に結晶粒の方位が集積し、B8 (800A/mにおける磁束密度)が1.870T以上の高磁束密度を有する方向性電磁鋼板が得られる。
更に磁束密度を向上させる技術として、特許文献2は、溶鋼に100〜5000g/TのBiを添加する方法が開示され、B8 が1.95T以上の製品が得られるようになった。更に特許文献3で、素材の組成成分にBiを0.0005〜0.05%を含有させ、脱炭焼鈍する前に100℃/秒以上の加熱速度で700℃以上の温度域へ急速に加熱する方法が開示され、コイル全長、全幅にわたり二次再結晶を安定化させコイル内全ての個所において工業的に安定してB8 が1.95T以上が得られるようになった。
一方、鉄損低減の方法として、特許文献4に開示されている鋼板にレーザー処理を施す方法、さらに特許文献5に鋼板に機械的な歪を導入する方法等、磁区を細分化する様々な方法が開示されている。一般的に方向性電磁鋼板の鉄損はJIS C2553でW17/50 (B8 :1.7T、50Hzの励磁条件下でのエネルギー損失)で評価され、グレード分けされているが、近年ではトランスの小型化を図るために、励磁磁束密度を1.7T以上とする場合や、1.7Tであってもトランスの鉄心の局部的には1.7T以上の磁束密度となることが明らかとなっており、高磁場(例えばW19/50 )での鉄損が少ない鋼板が求められている。
高磁場鉄損の優れた方向性電磁鋼板として、特許文献6に、鋼板の結晶方位を{110}<001>の理想方位に対して、平均値で5度以下のずれとし、鋼板の180℃磁区幅の平均が0.26超〜0.30mm以下、または鋼板の磁区幅の0.4mm超の面積率を3%超〜20%以下とするものが開示されている。
その製造方法として特許文献7に、脱炭焼鈍する直前に100℃/s以上の加熱速度で800℃以上の温度に加熱処理する方法が開示されている。しかし、得られた高磁場鉄損は最も低いもので、W19/50 =1.13W/kgであり、更なる高磁場低鉄損を有する方向性電磁鋼板が望まれている。
ここで一方向性電磁鋼板の表面に形成される電気的に絶縁性を有する被膜について説明する。かかる被膜は絶縁性を保持する役割のほか、鋼板に比較して熱膨張係数が小さいため鋼板に引張り応力を付与し鉄損低減させる役割も担っている。また、良好な絶縁被膜はトランス製造工程においても重要であり、特に巻きトランスの場合は方向性電磁鋼板に曲げ加工が加えられるため、被膜が剥離することがある。従って、被膜には優れた被膜密着性も要求される。
特許文献8には、脱炭焼鈍仕上焼鈍後にMgOを主成分とする焼鈍分離剤の塗布量を5g/m2 以上とする方法、特許文献9にはIg−loss値を0.4〜1.5%とする方法や、MgOの添加物として特許文献10では、SnO2 ,Fe2 3 ,Fe3 4 ,MoO3 を0〜15質量部添加し、さらにTiO2 を1.0〜15質量部添加する方法が開示されている。
しかし、鋼中にBiを含有する場合には,上述した方法により均一に一次被膜を形成させることは困難であり、さらに被膜張力を有する絶縁被膜を塗布した場合に密着性が劣化する問題があり、工業的に安定生産するに至っていない。
特公昭40−15644号公報 特開平 6−88171号公報 特開平 8−188824号公報 特公昭57−2252号公報 特公昭58−2569号公報 特開2000−345306号公報 特開2000−345305号公報 特開平 8−253819号公報 特開平10−25516号公報 特開2000−96149号公報
以上の従来の製造方法では、極めて鉄損が優れかつB8 ≧1.94Tの極めて高い磁束密度を有する方向性電磁鋼板において、高磁場特性に優れ且つ密着性が良好な一次被膜を安定して得ることが困難であった。
すなわち本発明は、従来の方向性電磁鋼板にも増して高磁場特性と被膜密着性とに優れた方向性電磁鋼板を提供するものである。
本発明は上記課題を解決するために、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で
Si:2〜7%
C :0.03〜0.15%、
Mn:0.02〜0.3%、
S又はSeのうちから選んだ1種又は2種の合計:0.005〜0.04%、
酸可溶性Al:0.015〜0.04%、
N :0.003〜0.015%、
Bi:0.0005〜0.05%
を必須成分として含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を熱延板にし、熱延板焼鈍を施し、1回あるいは2回以上又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、次いで脱炭焼鈍を施し、乾燥して仕上げ焼鈍を行う一連の工程で製造される一方向性電磁鋼板において、一次被膜及び地鉄を含む鋼板表面の断面を観察した際に、表面から10μm深さの範囲内に円相当径で0.1μm以上のMgを含有する内部酸化物が存在し、かつクサビ率が10%以上であり、かつ地鉄と一次被膜界面にBiが質量で0.01ppm以上1000ppm未満存在することにより、W17/50 (1.7T、50Hzの励磁条件下でのエネルギー損失)に対するW19/50 (1.9T、50Hzの励磁条件下でのエネルギー損失)比率:W19/50 /W17/50 <1.8で、かつ30mm径の曲率曲げに際し被膜剥離の生じる割合(%)が25%未満であることを特徴とする一方向性電磁鋼板。
ここでクサビ率とは、ある観察断面における内部酸化物およびその左右(表面と平行な方向)5μmの範囲の長さをlとした場合に、この観察断面内のlの総和Σl(重なりは除く)の総観察断面長Lに対する比率(Σl/L)をいう。
また、地鉄と一次被膜界面のBi濃度とは、二次イオン質量分析法による測定においてバルクのFeの二次イオン強度が50%となるスパッタ時間でのBi+ 二次イオン強度を濃度に換算した値をいう。
(2)このクサビ率が30%以上であり、かつ地鉄と一次被膜界面にBiが質量で0.1ppm以上1000ppm未満存在することを特徴とする前記(1)記載の一方向性電磁鋼板。
(3)磁束密度B8 が1.94T以上の極めて高い値を有する前記(1)または(2)記載の一方向性電磁鋼板。
(4)磁区制御後にW19/50 /W17/50 <1.6となる極めて高磁場での劣化率の少ないことを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の一方向性電磁鋼板。
(5)磁区制御後にW19/50 ≦1.2W/kgとなる極めて高磁場での鉄損に優れる前記(1)乃至(4)記載のいずれか1項に記載の一方向性電磁鋼板。
本発明により、高磁場鉄損に優れ、かつ磁気特性の極めて良好な方向性電磁鋼板を提供することができる。
次に本発明について詳細に説明する。本発明者らは、高磁場鉄損に優れ、一次被膜密着性の良好な一方向性電磁鋼板を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、鋼中にBiを含有させて、一次被膜形成と{110}<001>方位を発現させる二次再結晶焼鈍中に、一次被膜と地鉄との界面中のBi濃度を制御することが一次被膜と地鉄の界面構造を決定し、この構造が極めて重要であることを見出した。
そこで本発明者らは、超高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造方法を種々変更した結果、鋼中にBiを含有させ一次再結晶焼鈍ないし脱炭焼鈍の昇温速度を100℃/秒以上とする場合に、昇温時の雰囲気とそれに引き続く均熱条件を種々変更し、最終仕上焼鈍を施した後の製品の磁気特性及び被膜密着性の関係を調査した結果、両特性に優れた製品のグラス被膜構造は従来の一方向性電磁鋼板と異なる特徴を有していることを見出した。
すなわち、一次被膜と地鉄の界面においてくさび効果を有すると考えられるMgを含有する内部酸化物が存在し、この内部酸化物の存在率と地鉄と一次被膜界面に微量に存在するBiと高磁場鉄損及び二次被膜密着性との間に密接な関係が存在する。
まず、内部酸化物の観察方法について説明する。
製品板あるいは仕上焼鈍終了後などの一次被膜が形成後の鋼板から試料を切り出し、断面を走査型電子顕微鏡などで被膜と地鉄の界面を観察する。この観察面は特に限定しないが、圧延と直角方向の断面を観察することが望ましい。この際、樹脂埋めあるいは金属板などで挟むなどの処置をした後に、#1000より細かい研磨紙などで断面を研磨すると表面被膜が剥離し難く、正確に断面観察可能である。更にGaの収束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)などの方法を用いて、断面観察することも好ましい。
図1に、超高磁束密度一方向性電磁鋼板の一次被膜形成後の鋼板から試料を切りだしFIBにより試料加工を行って走査型電子顕微鏡で断面観察した写真及び概念図を示す。これより、一次被膜と地鉄の連続界面から内方(地鉄側)に独立して存在しているように見える粒状あるいは筋状に観察される酸化物が存在する。このような酸化物を、本発明において内部酸化物と定義する。この内部酸化物はMg系の焼鈍分離剤を用いた場合は一次被膜組成と類似したMg2 SiO4 やMgAl2 4 などを主成分とし、通常は表面から10μm深さの範囲内に存在する。上限値10μmは、これを超える深さでは通常地鉄のみとなるので決定した。
更に詳細調査したところ、これらの内部酸化物は表層部のフォルステライトを主体とする一次被膜に繋がっており、あたかも樹木や草の根のように一次被膜が地鉄中に張り巡らされていることを見出した。従って、観察断面において一見孤立したかのように見える内部酸化物が頻度多く観察される場合は、一次被膜が地鉄にくさび止めや釘付けされたような状態になることによる固着作用(くさび効果)が強く発揮され、極めて密着性に優れたものとなると考えられる。
本発明者らが更に調査したところ、内部酸化物の大きさが円相当径で0.1μm以下の場合、内部酸化物が表面の一次被膜と繋がっておらず孤立しているため、くさび効果がないと考えられる場合があることが明らかになった。この理由は明らかではないが、0.1μm未満のサイズでは一次被膜形成後の純化焼鈍により内部酸化物の凝集が進み孤立化するためと推定される。内部酸化物によるくさび効果の度合いは、以下のように判断する。 図2に示すように、観察断面において内部酸化物およびその左右(表面と平行な方向)5μmの範囲をくさび効果長lと定義し、さらに、観察断面におけるくさび効果長の総計Σl(重なりは除く)の総断面長Lに対する比率(Σl/L)をクサビ率と定義する。
ここで、5μmの範囲をくさび効果長としたのは、曲げ試験により被膜が剥離した断面を観察したところ内部酸化物の左右5μmが残存していたため、5μm以内はくさび効果があると推定されるからである。ここで図3にこのクサビ率の一例として超高磁束密度一方向性電磁鋼板の一次被膜形成後の鋼板から試料を切りだし樹脂埋めした後に、#1500の研磨紙により断面研磨した後に走査型電子顕微鏡で断面観察した写真及びこの写真から求めたクサビ率を示す。
次に、Biの分析方法について説明する。地鉄と一次被膜界面に微量に存在するBiは、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry )により検出および定量化することが可能である。
SIMSの測定法について以下に詳細に説明する。
SIMSにより一次被膜中および地鉄と一次被膜の界面近傍におけるBiを分析する場合、Fe、MgおよびSiなどからなる分子イオンの妨害を除去することが必要である。質量分解能が500以上となる条件で測定することによりBiと妨害イオンの質量分離が可能であり、好ましくは質量分解能を1000以上となる条件で測定する。そのため質量分解能の高い二重集束型質量分析器を有するSIMSが好適に用いられる。
一次イオンビームとして162 + イオンビームを用いる場合はBi+ 二次イオンを検出し、Cs+ イオンビームを用いる場合はBi- あるいはCsBi+ 二次イオンを測定することにより、微量なBiを高感度に検出することが可能となる。測定する深さおよびBi濃度から、一次イオンビームの種類、エネルギー、照射面積、および電流量を決定する。
Biの定量法について以下に詳細に説明する。
SIMS測定により得られるBi二次イオン強度からBiの濃度を求める方法として、Siウエハ中のBの定量法を規定したISO 14237と同様の手法を用る。標準試料は、Bi無添加材の表面を地鉄と一次被膜の界面から約10μmの厚さほど地鉄を研磨して鏡面仕上げした鋼板に、既知のエネルギーでBiを所定の照射量ほどイオン注入して作製する。また、Biの相対感度係数を算出するためのマトリックス強度は、一次被膜をスパッタリングした後の地鉄中で測定する。28Si2 分子イオンによる妨害を除去するため、162 + 一次イオンビームを用いて正の二次イオンを検出する場合は54Fe+ 二次イオン強度をマトリックス強度として用い、Cs+ 一次イオンビームを用いて負の二次イオンを検出する場合は54Fe+ 二次イオン強度を、正の二次イオンを検出する場合は54Fe+ 二次イオン強度を用いる。
一次被膜中と地鉄中ではBiの二次イオン化率、スパッタレートおよび相対感度係数などは異なり、また一次被膜厚さの不均一性および地鉄と一次被膜の界面が平坦でないなどの理由により、一次被膜表面から地鉄内部にわたるBiの濃度分布を厳密に求めることは極めて困難であるが、上記標準試料の地鉄内部におけるBiの相対感度係数を用いて、一次被膜から地鉄内部にわたるBi二次イオン強度分布を見かけのBi濃度分布に換算することが可能である。本発明では、上記見かけのBi濃度をBi濃度として定義する。
図4に板厚0.23mmの方向性電磁鋼板の最終仕上焼鈍後、即ち絶縁被膜コーティングを施す前の鋼板、もしくは絶縁コーティングを除去した鋼板の、二次イオン質量分析法(SIMS)によるBi+ プロファイルの概念図を示す。
図4において、Feの二次イオン強度がバルクより少ない側(鋼板表層側)でBi濃度はピーク値を取る。一次被膜と地鉄は入り組んだ構造をしているため、Feのプロファイルは表層から徐々に立ちあがった後一定値をとる。
本発明では、このバルクのFeの二次イオン強度が50%となるスパッタ時間でのBi+ 二次イオン強度から換算したBi濃度を、一次被膜と地鉄界面のBi濃度と定義する。 尚、図4より明らかなように、地鉄中にはBiが殆ど存在しない。確認のために、一次被膜と内部酸化物を酸洗により10μm除去し、地鉄中のBi濃度を測定したところ1ppm以下であった。
以上の手法により定義したクサビ率と地鉄と表層被膜の界面に存在するBi濃度は製造方法により変化し得る。そこで、0.23mm厚の一方向性電磁鋼板から50mm間隔で9試料を切りだして断面研磨した後に、1試料あたりの総断面長Lを1mmとしてクサビ率を求め、被膜密着性との関係を調査した結果を図5に示す。被膜密着性は、20mm径及び30mm径の曲率曲げに際し被膜剥離の生じない割合(%)で評価した。
これより、クサビ率が10%以上で20mm径の曲率で被膜剥離のない割合が75%超となり、30mm径の曲率で被膜剥離のない割合が90%超となる。更に、クサビ率が30%以上で20mm径の曲率でも被膜剥離のない割合が90%超と良好になることが判明した。
図6にクサビ率と地鉄と一次被膜界面に存在するBi濃度との関係を示す。これより、クサビ率の増加に従い、地鉄と一次被膜界面に存在するBi濃度が単調に増加する。
図7にクサビ率とW19/50 /W17/50 との関係を調査した結果を示す。W19/50 /W17/50 はW17/50 に対するW19/50 の劣化の程度を表す。図7より明らかなように、クサビ率が10%以上で、劣化率が1.86より小さいことが判明した。更には、30%以上で劣化率が1.6未満と、特に劣化率が小さい。
図8にクサビ率とレーザーによる磁区細分化処理後のW17/50 、W19/50 との関係を示す。クサビ率が10%以上でW19/50 ≦1.2W/kgの良好な高磁場鉄損が得られ、クサビ率が30%以上で、W19/50 ≦1.1W/kgと更に良好な高磁場鉄損が得られる。
この内部酸化物によるくさび効果長の存在比率を表すクサビ率と地鉄と一次被膜界面に存在するBi濃度及び高磁場鉄損との間に上記のような相関が存在する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
MgO塗布後に引き続き施される仕上焼鈍工程の役割は、一次被膜形成、二次再結晶発現と鋼中の不純物を除去する純化焼鈍である。
一次被膜は脱炭焼鈍において鋼板表面に形成されたSiO2 が、その後に塗布された焼鈍分離剤と最終仕上焼鈍工程において反応して得られる。一般的に焼鈍分離剤はMgOを主成分としたものが用いられ、SiO2 と反応してMg2 SiO4 となる。
Biは高磁束密度化に必須な元素であるが、製品地鉄中に残存すると磁気特性を劣化させるため、一次被膜形成過程あるいは形成後に鋼中からガス状あるいは化合物として除去を行う。このとき、Biは地鉄中から一次被膜と地鉄の界面を通過して除去される。
一次被膜形成過程でBiが一次被膜と低融点化合物を形成すると、一次被膜と地鉄界面の構造が平滑化しやすくなり、クサビ効果が失われ最終製品での被膜密着性が劣化すると考えられる。一方で、一次被膜を早期形成させて一次被膜形成終了後にBiを除去すると、低融点化合物による平滑化が進行し難く、内部酸化物が残存したクサビ効果を有する一次被膜構造となり、被膜密着性が良好となると推定される。
この界面構造と、一次被膜と地鉄の界面に存在する微量Biとの間に図6に示される関係が存在するのは、以下のように考えられる。
一次被膜と地鉄界面の単位面積あたりに存在し得るBi量は一定であると推定され、ある量以上存在すると拡散により一次被膜外に除去される。したがって、クサビ効果を持った内部酸化物などが存在し一次被膜と地鉄界面が入り組んだ構造となると界面面積が増加するため、界面Bi量も増加することになる。
従来品ではこの内部酸化物による一次被膜の深さは問題ではなかったが、本発明の超高磁束密度材では極めて重要な影響を及ぼし、特に高磁場鉄損で重要となる。即ち、入り組んだ界面構造では被膜密着性は良好となるが、一次被膜が深すぎると鋼板厚に対して非磁性層の比率が増加したり、入り組み過ぎると磁壁のピンニングが大きくなり高磁場鉄損が劣化する。このように入組みすぎるときは界面Bi濃度も増加することとなり、一次被膜が深すぎないように界面Bi濃度に上限を用いる必要がある。一方で、地鉄と一次被膜界面が平滑化しすぎて、一次被膜と地鉄間の固着効果が消失すると、被膜剥離により被膜張力が低減して張力による鉄損低減効果が薄れ、磁気特性が劣化すると考えられる。
従って、高磁場鉄損を良好とし、密着性を確保するためには、一次被膜と地鉄界面の構造を最適化することが重要である。
この考えに基づき本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、脱Bi時の一次被膜と地鉄との界面構造を変えるためには、脱炭焼鈍における初期酸化膜形成状態を制御して一次被膜と地鉄界面のBi濃度を最適化することが有効であることを見出した。
本発明者らは、100℃/秒以上の急速に加熱したときに表層部に生じるSiO2 を主体とする初期酸化層は、加熱時あるいは加熱直後の雰囲気条件と加熱直後の均熱時間に大きく依存し、引き続く脱炭焼鈍での内部酸化層構造およびMgO塗布後の仕上焼鈍での一次被膜形成時期に大きく影響することを見出し、1000℃以上の高温から始まるBiによる被膜破壊に影響を及ぼすことを見出した。
本発明の製品の良好な一次被膜特性は、脱炭焼鈍の昇温速度を100℃/秒とし、かつ昇温及びそれに引き続く均熱初期の雰囲気を制御することにより得られたものである。脱炭焼鈍の昇温速度を従来に比較して、100℃/秒以上に急速に加熱したときに生じる酸化膜は、特開2000−204450号公報の段落[0035]に記載されるように、昇温過程の雰囲気が殆どの場合、平衡論的には有害なFeO生成領域にあるにも関わらず、これらのFe系の酸化物を殆ど形成せず、SiO2 を主体とする酸化層となり、非平衡論的側面が極めて強いことが開示されている。
本発明者らが更に調査を行った結果、Biを添加した場合は、急速に昇温した後で脱炭焼鈍前に適度に均熱した方が良好な一次被膜が得られることを見出した。急速に昇温した場合はSiO2 を主体とする酸化層が形成されるが、加熱直後に保持する均熱条件によりSiO2 量が変化する。このSiO2 量は表層部のSiO2 の被覆率を表していると推定され、均熱時間が長すぎたりP H2 O が高すぎるとSiO2 被覆率が多すぎ、内部酸化層が深くなり内部酸化層構造が入り組みすぎた構造となり、磁束密度が低下し、高磁場鉄損を劣化させる。
一方で、均熱時間が少ない場合やP H2 O が低い場合は、通常の脱炭焼鈍で得られる内部酸化膜と大差ないものとなり、その後の仕上焼鈍中で一次被膜と地鉄界面が入り組まず、一次被膜密着性を劣化させる。従って均熱時間やP H2 O を制御することにより、初期酸化膜であるSiO2 被覆率を適正化することが重要であることが明らかとなった。
次に本発明の成分条件について説明する。
Siは鋼の電気抵抗を高めて鉄損の一部を構成する渦電流損失を低減するのに極めて有効な元素であるが、2%未満では製品の渦電流損失を抑制できない。また7.0%を超えた場合では、加工性が著しく劣化するので好ましくない。
なお、本発明の製品においては、以降の製造方法の結果生じる不可避的不純物を含有していても、本発明は何ら差し支えない。
次に本発明の一次被膜安定製造と鉄損改善方法について説明する。熱延に先立つ溶鋼段階で以下のように成分調整を行う。
Cは0.03%未満では、熱延に先立つスラブ加熱時において結晶粒が異常粒成長し、製品において線状細粒と呼ばれる二次再結晶不良を起こすので好ましくない。一方、0.15%を超えた場合では、冷延後の脱炭焼鈍において脱炭時間が長時間必要となり経済的でないばかりでなく、脱炭が不完全となりやすく、製品での磁気時効と呼ばれる磁性不良を起こすので好ましくない。
Mnは二次再結晶を左右するインヒビターと呼ばれるMnS及び、またはMnSeを形成する重要な元素である。0.02%未満では、二次再結晶を生じさせるのに必要なMnS、MnSeの絶対量が不足するので好ましくない。また0.3%を超えた場合は、スラブ加熱時の固溶が困難になるばかりでなく、熱延時の析出サイズが粗大化しやすく、インヒビターとしての最適サイズ分布が損なわれて好ましくない。
S及び、またはSeは上述したMnとMnSおよび、またはMnSeを形成する重要な元素である。上記範囲を逸脱すると充分なインヒビター効果が得られないので、0.005〜0.040%に限定する必要がある。
酸可溶性Alは、高磁束密度一方向性電磁鋼板のための主要インヒビター構成元素であり、0.015%未満では、量的に不足してインヒビター強度が不足するので好ましくない。一方0.040%を超えるとインヒビターとして析出させるAlNが粗大化し、結果としてインヒビター強度を低下させるので好ましくない。
Nは上述した酸可溶性AlとAlNを形成する重要な元素である。上記範囲を逸脱すると充分なインヒビター効果が得られないので、0.0030〜0.0150%に限定する必要がある。
さらに、Snについては薄手製品の二次再結晶を安定して得る元素として有効であり、また二次再結晶粒径を小さくする作用もあるため、添加しても良い。この効果を得るためには、0.05%以上の添加が必要であり、0.50%を超えた場合にはその作用が飽和するので、コストアップの点から0.50%以下に限定する。
CuについてはSn添加鋼の一次被膜形成安定化元素として有効である。0.01%未満では効果が少なく、0.40%を超えると製品の磁束密度が低下するので好ましくない。
Sbおよび、またはMoについては薄手製品の二次再結晶を安定して得る元素として有効であるため、添加しても良い。この場合、この効果を得るためには、0.0030%以上の添加が必要であり、0.30%を超えた場合にはその作用が飽和するので、コストアップの点から0.30%以下に限定する。
Biは本発明であるB8 ≧1.94Tの超高磁束密度一方向性電磁鋼板の安定製造において、そのスラブ中に必須の元素であり、磁束密度向上効果を有する。0.0005%未満ではその効果が充分に得られず、また0.05%を超えた場合は磁束密度向上効果が飽和するだけでなく、熱延コイルの端部に割れが発生するので好ましくない。
上記のごとく成分を調整した超高磁束密度方向性電磁鋼板製造用溶鋼は、通常の方法で鋳造する。特に鋳造方法に限定はない。
次いで通常の熱間圧延によって熱延コイルに圧延される。
引き続いて、熱延板焼鈍後仕上げ冷延、あるいは中間焼鈍を含む複数回の冷延、あるいは熱延板焼鈍後中間焼鈍を含む複数回の冷延によって製品板厚に仕上げるわけであるが、仕上げ冷延前の焼鈍では結晶組織の均質化と、AlNの析出制御を行う。
以上最終製品厚まで圧延されたストリップに、脱炭焼鈍を施す。
最終板厚まで冷延された鋼板を脱炭焼鈍する前に、700℃以上の温度域へ100℃/s以上の加熱速度により加熱したのち、700℃以上の均熱時間を1〜20秒間とし、かつこの温度域の雰囲気構成成分をH2 Oと不活性ガス、もしくはH2 OとH2 、H2 Oと不活性ガスとH2 とし、かつH2 O分圧が10-4〜6×10-1とする。
この加熱速度については、初期酸化膜形成に重要な20〜700℃以上の最高到達温度までの平均加熱速度を示すが、特に300℃〜700℃までの加熱速度が重要であり、この部分の平均加熱速度が100℃/sより遅いと、一次被膜密着性がする。最高到達温度は700℃以下ではSiO2 層が形成されないため700℃を下限とする。このような高い昇温速度を達成するためには、加熱方法として、誘導加熱や通電加熱を採用するのがよい。
急速昇温された直後で脱炭焼鈍前に行われる均熱について述べる。
均熱温度が700℃未満の場合は適性なSiO2 が形成されないため、均熱温度は700℃以上とする。均熱時間が20秒を超える場合やH2 O分圧が6×10-1を超えると、SiO2 量が十分確保されるが、一次地被膜と地鉄の界面構造が複雑となりすぎ、一次被膜が深くなり高磁場鉄損が劣化する。一方で、均熱時間が1秒未満のときや、H2 O分圧が10-4未満の場合は、適性なSiO2 量が確保できないために被膜密着性を劣化させる。また、この雰囲気は昇温とそれに引き続く均熱において上記範囲内であれば、変えても構わない。
次に脱炭焼鈍を行うが、上記加熱処理を昇温に組み込んでも構わない。
上記均熱後に引き続く脱炭焼鈍の雰囲気は通常と同様である。すなわちH2 とH2 OもしくはH2 とH2 Oと不活性ガスの混合雰囲気とし、P H2 O /P H2 を0.15から0.65の範囲とする。尚、脱炭焼鈍後の残留炭素量は、通常の場合と同様に50ppm以下とする必要がある。AlNのみをインヒビターとして用いる場合には、脱炭焼鈍後にアンモニア含有雰囲気中で焼鈍することにより鋼板を窒化し、この段階でインヒビター形成を行ってもよい。
脱炭焼鈍後、鋼板にMgOを主体とする焼鈍分離材を塗布乾燥するが、この際MgO中にTiO2 を1〜40%程度添加しても良く、好ましくは塗布量を片面あたり5g/m2 以上とする。
さらに、一次被膜形成、二次再結晶、純化を目的として1100℃以上の最終仕上焼鈍を行う。この際、MgO中の水分除去を目的として、二次再結晶焼鈍前に700℃以下の低温でH2 濃度を20%以上とした還元雰囲気で保持する脱水工程を付与することが望ましい。
多くの場合、最終仕上焼鈍後、一次被膜の上にさらに絶縁被膜を施す。特に燐酸塩とコロイダルシリカを主体とするコーティング液を焼き付けることによって得られる絶縁被膜は、鋼板に対する付与張力が大きく、更なる鉄損改善に有効である。
さらに、上記一方向性電磁鋼板に、レーザー照射、プラズマ照射、歯型ロールやエッチングによる溝加工等のいわゆる磁区細分化処理を施すことが望ましい。
表1に示す化学成分系を含み2.3mm厚にまで熱間圧延させて熱延板に1100℃で1分間焼鈍を施した。この後、冷間圧延により最終板厚0.22mmにまで圧延した。
さらに、得られたストリップをP H2 O :1×10-1のH2 −N2 雰囲気中で表2に示す昇温速度で720℃まで誘導加熱法により昇温してから720℃で5秒間の均熱処理を実施した後、840℃の均一温度、湿潤水素中で脱炭焼鈍し、MgOを主成分とした焼鈍分離剤を塗布した後、1200℃に20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を行った。
得られた鋼板の余剰MgOを除去し、形成されたフォルステライト被膜上にコロイダルシリカと燐酸塩を主体とする絶縁被膜を形成させ製品としたのち、クサビ率、地鉄−一次被膜界面Bi濃度測定及び磁気測定を実施した。更に6mmピッチのレーザー照射による磁区制御処理を施した後、20mmφ曲げによる被膜密着性評価及び磁気測定を行った。
クサビ率の評価は、50mm間隔で9試料を切りだして樹脂に埋めこんだ後、表面被膜が剥離しないように断面研磨した後に、1試料あたりの総断面長Lを1mmとして9試料の平均値を採用した。
SIMS測定は、CAMECA社製imsを用いた。測定は、加速電圧8kVで照射電流110nAの162 + 一次イオンビームを125μm四方の領域に照射し、質量分解能が約2000となる条件で行った。
得られた諸特性を表2に示した。本発明条件を満足するコイルは、被膜特性と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板となっている。
Figure 0004276547
Figure 0004276547
表3に示す化学成分系を含み2.3mm厚にまで熱間圧延させて熱延板に1150℃で1分間焼鈍を施した。この後、冷間圧延により最終板厚0.23mmにまで圧延した。
さらに、得られたストリップをP H2 O :5×10-1のH2 −N2 雰囲気中で850℃まで300℃/sの通電加熱法により昇温したのち800℃で表4に示す時間の均熱処理を実施したのち急冷した。この後、820℃の均一温度、湿潤水素中で脱炭焼鈍し、MgOを主成分とした焼鈍分離剤を塗布してから、700℃×20hのMgO中水分除去処理を行った後、1200℃に20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を行った。
得られた鋼板の余剰MgOを除去し、形成されたフォルステライト被膜上にコロイダルシリカと燐酸塩を主体とする絶縁被膜を形成させ製品とした後、クサビ率、地鉄−一次被膜界面Bi濃度測定及び磁気測定を実施した。更に歯型ロールにより5mmピッチで深さ20μmの溝加工処理を施した後、30mmφ曲げによる被膜密着性評価及び磁気測定を行った。
クサビ率の評価及びSIMS測定は実施例1と同様に実施した。
得られた諸特性を表4に示した。本発明条件を満足するコイルは、被膜特性と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板となっている。
Figure 0004276547
Figure 0004276547
表5に示す化学成分系を含み2.1mm厚にまで熱間圧延させて熱延板に1120℃で1分間焼鈍を施した。この後、冷間圧延により最終板厚0.23mmにまで圧延した。
さらに、得られたストリップをH2 −N2 雰囲気中で850℃まで400℃/sの昇温速度で加熱した後、800℃で5秒間の均熱処理を実施する際の雰囲気中のP H2 O を表6の水準で実験した。
この後、830℃の均一温度、湿潤水素中で脱炭焼鈍し、MgOを主成分とした焼鈍分離剤を塗布した後、700℃×48hのMgO中水分除去処理をH2 :80%の還元雰囲気で行った後、1200℃に20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を行った。
得られた鋼板の余剰MgOを除去し、形成されたフォルステライト被膜上にコロイダルシリカと燐酸塩を主体とする絶縁被膜を形成させ製品とした後、クサビ率、地鉄−一次被膜界面Bi濃度測定及び磁気測定を実施した。更に5mmピッチのレーザー処理による磁区制御を施した後、20mmφ曲げによる被膜密着性評価及び磁気測定を行った。
クサビ率の評価及びSIMS測定は実施例1と同様に実施した。
得られた諸特性を表6に示す。本発明条件を満足するコイルは、被膜特性と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板となっている。
Figure 0004276547
Figure 0004276547
表7に示す化学成分系を含み2.3mm厚にまで熱間圧延させて熱延板に1150℃で1分間焼鈍を施した。この後、冷間圧延により最終板厚0.22mmにまで圧延した。
更に、得られたストリップをP H2 O :4×10-1のH2 −N2 雰囲気中で表8に示す昇温速度で710℃まで誘導加熱法により昇温してから、720℃で10秒間の均熱処理を実施した後、850℃の均一温度、湿潤水素中で脱炭焼鈍し、MgOを主成分とした焼鈍分離剤を塗布した後、1200℃に20時間、水素ガス雰囲気中で高温焼鈍を行った。
得られた鋼板の余剰MgOを除去し、形成されたフォルステライト被膜上にコロイダルシリカと燐酸塩を主体とする絶縁被膜を形成させ製品とした後、クサビ率、地鉄−1次被膜界面Bi濃度測定及び磁気測定を実施した。更に5mmピッチのエッチング処理による磁区制御を施した後、20mmφ曲げによる被膜密着性評価及び磁気測定を行った。
クサビ率の評価及びSIMS測定は実施例1と同様に実施した。
得られた諸特性を表8に示す。本発明条件を満足するコイルは、被膜特性と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板となっている。
Figure 0004276547
Figure 0004276547
方向性電磁鋼板の一次被膜と地鉄界面近傍の断面写真と概念図。 断面観察時の内部酸化物とクサビ率の定義方法。 断面写真とクサビ率定義例。 方向性電磁鋼板の二次イオン質量分析法(SIMS)におけるFeとBiのプロファイルの概念図。 内部酸化物によるクサビ率と被膜剥離の発生しない比率との関係を示す図。 内部酸化物によるクサビ率と地鉄と一次被膜界面のBi濃度との関係を示す図。 内部酸化物によるクサビ率とW19/50 /W17/50 との関係を示す図。 内部酸化物によるクサビ率とW19/50 とW17/50 との関係を示す図。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    Si:2〜7%
    C :0.03〜0.15%、
    Mn:0.02〜0.3%、
    S又はSeのうちから選んだ1種又は2種の合計:0.005〜0.04%、
    酸可溶性Al:0.015〜0.04%、
    N :0.003〜0.015%、
    Bi:0.0005〜0.05%
    を必須成分として含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を熱延板にし、熱延板焼鈍を施し、1回あるいは2回以上又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、次いで脱炭焼鈍を施し、乾燥して仕上げ焼鈍を行う一連の工程で製造される一方向性電磁鋼板において、一次被膜及び地鉄を含む鋼板表面の断面を観察した際に、表面から10μm深さの範囲内に円相当径で0.1μm以上のMgを含有する内部酸化物が存在し、かつクサビ率が10%以上であり、かつ地鉄と一次被膜界面にBiが質量で0.01ppm以上1000ppm未満存在することにより、W17/50 (1.7T、50Hzの励磁条件下でのエネルギー損失)に対するW19/50 (1.9T、50Hzの励磁条件下でのエネルギー損失)比率:W19/50 /W17/50 <1.8で、かつ30mm径の曲率曲げに際し被膜剥離の生じる割合(%)が25%未満であることを特徴とする一方向性電磁鋼板。
    ここでクサビ率とは、ある観察断面における内部酸化物およびその左右(表面と平行な方向)5μmの範囲の長さをlとした場合に、この観察断面内のlの総和Σl(重なりは除く)の総観察断面長Lに対する比率(Σl/L)をいう。
    また、地鉄と一次被膜界面のBi濃度とは、二次イオン質量分析法による測定においてバルクのFeの二次イオン強度が50%となるスパッタ時間でのBi+ 二次イオン強度を濃度に換算した値をいう。
  2. クサビ率が30%以上であり、かつ地鉄と一次被膜界面にBiが質量で0.1ppm以上1000ppm未満存在することを特徴とする請求項1記載の一方向性電磁鋼板。
  3. 磁束密度B8 が1.94T以上の極めて高い値を有する請求項1または2記載の一方向性電磁鋼板。
  4. 磁区制御後にW19/50 /W17/50 <1.6となる極めて高磁場での劣化率の少ないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の一方向性電磁鋼板。
  5. 磁区制御後にW19/50 ≦1.2W/kgとなる極めて高磁場での鉄損に優れる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の一方向性電磁鋼板。
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