JP2019018547A - 金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 - Google Patents

金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂の溶融粘度が高く溶融時の流動性に劣る場合であっても、金属部材と樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体の安定的な提供。【解決手段】微細凹凸表面104を有する金属部材103と、金属部材103の微細凹凸表面104に接合し、かつ、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された樹脂部材105と、を備える金属/樹脂複合構造体106であって、金属部材103の微細凹凸表面104上の、平行関係にある任意の3直線部、及び当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、表面粗さが要件(1)及び要件(2)を同時に満たし、微細凹凸表面104の表層は樹枝状層を含む金属/樹脂複合構造体。(1)十点平均粗さ(Rz)の平均値が5μmを超える、(2)粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が10〜400μmの範囲にある。【選択図】図1

Description

本発明は、金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法に関する。
電気・自動車分野を中心とした幅広い産業分野において、鉄系金属やアルミニウム系金属等の金属と熱可塑性樹脂とを一体化させる複合化技術の有用性が増している。
従来、このような金属と熱可塑性樹脂との接合には、接着剤を使用することが一般的であった。しかし、接着剤を使用する方法は生産工程数を増加させるだけでなく、接着力が経時的に低下したり、高温下における接合強度が十分でなかったりする場合があったため、特に自動車等の耐熱性が要求される分野への適用を難しくしていた。また、ねじ止め等の機械的な接合方法も従来から広く行われてきたが、軽量化の点や作業工程が煩雑になる等の理由によって普及が限定されていた。
金属と熱可塑性樹脂とを接合する新しい方法として、表面が粗化された金属部材に熱可塑性樹脂を射出成形する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
そして、このようなインサート成形で得られる金属と樹脂の複合体を、モバイル電子機器やノートパソコンの筐体、その他の移動用機器の部品に適用させるためには、樹脂が接合されていない金属表面に耐腐食性、耐候性を確保することが求められている。そして、このような性質は、例えば、電解酸化処理(金属種がアルミニウム合金の場合は「アルマイト処理」と呼ばれる)によって付与されている(例えば、特許文献2)。
国際公開第2015/8847号 特開2007−203585号公報 特開2001−62862号公報 特開2016−74116号公報
上記射出成形においては、通常、熱可塑性樹脂は金型キャビティに充満するのに充分な流動性を示す温度まで加熱して溶融した後に射出成形される。この際、溶融樹脂の流動性は金型キャビティへの充填の容易さを決めるだけではなく、表面粗化によって形成された金属面上の微細凹凸部分に溶融樹脂が十分に浸透・転写するかどうかを左右する重要な因子となる。
樹脂の流動性の指標の一つとして溶融樹脂の粘度が挙げられる。高溶融粘度タイプの熱可塑性樹脂、特に高強度および高耐熱特性の視点から有望な非晶性エンジニアリングプラスチック類を用いる場合は、溶融時の流動性が一般的に劣るため射出成形による金属−樹脂接合の際には金型の温度管理面での工夫が必要であった(例えば、特許文献3)。
従来、溶融樹脂の流動性を高めるため、樹脂温度や金型温度を高めることが効果的であるとされてきた。しかし、高い樹脂温度や高い金型温度はエネルギー的、生産効率的にも不利であり、また熱による樹脂分解を併発し樹脂本来の物性を損なう場合があった。このような問題点を克服するための様々な方法、例えばヒート&クール成形法等が提案されているが、特殊な金型および温調システムが必要であるという問題点があった(例えば、特許文献4)。
一方で、上記した射出成形法で製造されたモバイル電子機器筐体やノートパソコン筐体から構成される電気・電子機器類の使用環境が過酷(例えば高温・高湿下での長時間使用、ヒートサイクル下での使用)になるに従い、時間とともに金属と樹脂間の接合力が低下する問題が顕在化してきた。
更には、上記電解酸化処理において、インサート金属に樹脂を射出接合して得られる上記複合体をそのまま陽極酸化からなる電解酸化処理をした場合、陽極酸化の前段階であるアルカリエッチングや高濃度無機酸への浸漬処理、あるいは陽極酸化反応自体において、樹脂部分と金属部分の境界部分からアルカリ水や酸水溶液等の薬液の侵入・浸透が起こり、境界部分の接合力が低下してしまうという問題点があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、金属/樹脂複合構造体における樹脂部材を構成する熱可塑性樹脂の溶融粘度が高く溶融時の流動性に劣る場合であっても、金属部材と樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を安定的に提供するものである。
本発明者らは、金属/樹脂複合構造体における金属部材と樹脂部材との間の接合強度をこれまで以上に高める方法、あるいは溶融粘度が高くて溶融時の流動性に乏しい熱可塑性樹脂を用いた場合であっても高い接合強度を発現する複合構造体を開発すべく鋭意検討した。その結果、金属部材と樹脂部材との間に特定の金属樹枝状層を介在させる方法が有効であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば以下に示す金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法が提供される。
[1]
微細凹凸表面を有する金属部材と、
上記金属部材の上記微細凹凸表面に接合し、かつ、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された樹脂部材と、
を備える金属/樹脂複合構造体であって、
上記金属部材の上記微細凹凸表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが下記要件(1)および要件(2)を同時に満たし、
上記微細凹凸表面の表層は樹枝状層を含む金属/樹脂複合構造体。
(1)十点平均粗さ(Rz)の平均値が5μmを超える
(2)粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が10μm以上400μm以下の範囲にある
[2]
上記[1]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
電子顕微鏡を用いて測定される上記樹枝状層の平均厚みが35nm以上700nm以下の範囲にある金属/樹脂複合構造体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記金属部材の前記微細凹凸表面上の、JIS Z8781−4(2013)に準拠して測定されるCIELAB表示系におけるb*座標値が0以上9以下の範囲にある金属/樹脂複合構造体。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記熱可塑性樹脂が非晶性熱可塑性樹脂を含む金属/樹脂複合構造体。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記熱可塑性樹脂が、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリエーテルイミド樹脂から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記金属部材は鉄系金属、アルミニウム系金属、マグネシウム系金属、銅系金属およびチタン系金属から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
微細凹凸表面を有する金属部材を金型内に配置し、上記金属部材の上記微細凹凸表面に接するように熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を上記金型内に射出し、上記熱可塑性樹脂または上記樹脂組成物により構成された樹脂部材を成形することにより、上記金属部材と上記樹脂部材とを接合させる工程を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
本発明によれば、金属/樹脂複合構造体における樹脂部材を構成する熱可塑性樹脂の溶融粘度が高く溶融時の流動性に劣る場合であっても、金属部材と樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を安定的に提供することができる。
本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体の構造の一例を示す模式図である。 本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体の接合部断面の一例を示す概念図である。 本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体の接合部断面のSEM写真の一例を示す図である。 本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体の接合部断面のZero−loss TEM写真の一例を示す図である。 本発明に係る実施形態の金属部材の微細凹凸表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部の測定箇所を説明するための模式図である。 本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体を製造する過程の一例を模式的に示した構成図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
<金属/樹脂複合構造体>
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を示す模式図である。図2は、本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体106の接合部断面の一例を示す概念図である。
図1および図2に示すように、金属/樹脂複合構造体106は、微細凹凸表面104を有する金属部材103と、金属部材103の微細凹凸表面104に接合し、かつ、熱可塑性樹脂(A)または熱可塑性樹脂(A)を含む樹脂組成物(P)により構成された樹脂部材105と、を備える。金属部材103の微細凹凸表面104には後述する特定の要件(1)と要件(2)を満たす微細凹凸形状が形成されている。そして、微細凹凸表面104の表層は樹枝状層103−1を含み、好ましい実施態様においては微細凹凸表面104の全表層の最表層部は樹枝状層103−1からなる。なお、本実施形態において「樹枝状」とは、木の枝のような形状で、複数の小枝が絡み合った形状として定義される。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、上記構成を備えることにより、金属/樹脂複合構造体における樹脂部材105を構成する熱可塑性樹脂(A)の溶融粘度が高く溶融時の流動性に劣る場合であっても、金属部材103と樹脂部材105との接合強度を良好にすることができる。さらに、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は耐電解酸化性にも優れているため、例えば陽極酸化時の接合強度の低下を小さくすることができる。さらに、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、高温・高湿環境下やヒートサイクル条件下にあっても接合強度の低下を小さくすることができる。
樹枝状層103−1は、金属/樹脂複合構造体106の接合部断面の電子顕微鏡観察によって、その存在と厚みを確認することができる。具体的には、イオンミリング法による接合部断面の切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)による反射電子像の獲得、あるいはTEM(透過型電子顕微鏡)やこれにEELS元素マッピングを組み合わせたEELS電子線エネルギー損失分光法(TEM−EELS)を行うことによって樹枝状層103−1の存在とその厚みを確認することができる。このようにして観測される、樹枝状層103−1の平均厚みは、好ましくは35nm〜700nm、好ましくは40nm〜500nm、より好ましくは50nm〜400nm、さらに好ましくは50nm〜300nm、特に好ましくは60nm〜300nmの範囲にある。なお、樹枝状層103−1の平均厚みを求める方法は特に限定されないが、例えば対象とする金属/樹脂複合構造体106の接合部断面を複数個所切り出した後、各々について上記SEMまたは上記TEM分析画像を獲得し、樹枝状層103−1の幅を画像中で測定しこれらを平均することによって得られる。
図3はSEM分析によって観察した、実施例1に係る金属/樹脂複合構造体106の接合部周辺の断面図を示す。図4はTEM分析によって観察した、実施例1に係る金属/樹脂複合構造体106の接合部周辺の断面図を示す。金属部材103の表面110に形成された微細凹凸形状に追従するように樹枝状層103−1が形成されていることが確認できる。
金属部材103の微細凹凸表面104に形成された、ミクロンオーダーの凹凸形状と、この凹凸形状の表層に形成されたナノオーダーの間隙部を有する樹枝状層103−1と、からなる微細凹凸形状の凹部に樹脂組成物(P)が効果的に侵入することによって、金属部材103と樹脂部材105との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が効果的に発現し、通常では接合が困難な金属部材103と樹脂組成物(P)からなる樹脂部材105とを強固に接合することが可能になったものと考えられる。このようにして得られた金属/樹脂複合構造体106は、金属部材103と樹脂部材105の界面への水分や湿気の浸入を防ぐこともできる。
以下、金属/樹脂複合構造体106を構成する各部材について説明する。
(金属部材)
本実施形態に係る金属部材103は、少なくとも樹脂部材105との接合部表面に微細凹凸形状を有する金属部材である。ここで、本実施形態において、微細凹凸形状が形成された表面を微細凹凸表面104とも呼ぶ。本実施形態に係る微細凹凸表面104は、具体的には、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが下記要件(1)と要件(2)の特性を同時に満たしている。
要件(1);十点平均粗さ(Rz)の平均値が5μm超え、好ましくは7μm〜30μm、より好ましくは8μm〜25μm、さらに好ましくは10μm〜20μmの範囲にある。なお、上記の十点平均粗さ(Rz)の平均値は、前述の任意の6直線部のRzを平均したものを採用することができる。
要件(2);粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が10μm〜400μm、好ましくは50μm〜350μm、より好ましくは70μm〜330μm、さらに好ましくは70μm〜250μm、さらにより好ましくは70μm〜230μmの範囲にある。なお、上記粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値は、前述の任意の6直線部のRSmを平均したものを採用することができる。
図5は、金属部材103の微細凹凸表面104上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部を説明するための模式図である。
上記6直線部は、例えば、図5に示すような6直線部B1〜B6を選択することができる。まず、基準線として、金属部材103の微細凹凸表面104の中心部Aを通る中心線B1を選択する。次いで、中心線B1と平行関係にある直線B2およびB3を選択する。次いで、中心線B1と直交する中心線B4を選択し、中心線B1と直交し、中心線B4と並行関係にある直線B5およびB6を選択する。ここで、各直線間の垂直距離D1〜D4は、例えば、2〜5mmである。
なお、通常、金属部材103の表面110中の接合部表面だけでなく、金属部材103の表面110全体に対して表面粗化処理が施されている。金属部材103の表面110全体に対して表面粗化処理が施されている場合は、金属部材103の接合部表面と同一面で、接合部表面以外の箇所から6直線部を選択してもよい。
本実施形態に係る金属部材103の微細凹凸表面104に形成された微細凹凸形状は、上記要件(1)と要件(2)を充足することに加えて、上記微細凹凸形状の表層部は、金属/樹脂複合構造体106の断面観察においてその存在が確認された樹枝状層103−1から構成されている。すなわち、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106における金属部材103と樹脂部材105の間に介在する上記樹枝状層103−1は、樹脂部材105を接合する前の金属部材103の微細凹凸表面104にも同様に存在する。そして、この樹枝状層103−1は、樹脂部材105を接合後であっても観察することができる。
微細凹凸形状の凹部には、樹枝状層103−1を介して熱可塑性樹脂(A)を含む樹脂組成物(P)が侵入する。本実施形態においては、微細凹凸形状を構成する樹枝状層103−1のナノオーダーの間隙部(凹部)の平均厚みδの1/2以上の深さの領域まで、樹脂組成物(P)が侵入していることをEELS電子線エネルギー損失分光法(TEM−EELS)によって確認している。
本実施形態に係る金属部材103の微細凹凸表面104上の、JIS Z8781−4(2013)に準拠して測定されるCIELAB表示系におけるb*座標値は、好ましくは0以上9以下の範囲、より好ましくは0超え8未満、さらに好ましくは1以上7未満、特に好ましくは1超え6以下の範囲にある。b*座標がこの範囲を満たすことによって、金属/樹脂複合構造体106を過酷な環境下、例えば、高温条件下、高湿条件下、或いはヒートサイクル条件下で使用したとしても接合強度の低下をより一層抑制することが可能となる。
金属部材103は、例えば、金属材料(M)を加工し、次いで、表面に微細凹凸形状を形成することによって得ることができる。金属材料(M)の種類は特に制限されないが、例えば、鉄系金属(鉄、鉄合金、鉄鋼材、ステンレス鋼等)、アルミニウム系金属(アルミニウム単体、アルミニウム合金等)、マグネシウム系金属(マグネシウム、マグネシウム合金等)、銅系金属(銅、銅合金等)、チタン系金属(チタン、チタン合金)等を挙げることができる。これらの金属は単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、軽量で、かつ、高強度である点からアルミニウム系金属が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
アルミニウム合金としては、JIS H4000に規定された合金番号1050、1100、2014、2024、3003、5052、6063、7075等が好ましく用いられる。
金属部材103の形状は、樹脂部材105と接合できる形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、パイプ状、塊状等とすることができる。また、これらの組み合わせからなる構造体であってもよい。
また、樹脂部材105と接合する接合部表面の形状は、特に限定されないが、例えば、平面、曲面等が挙げられる。
金属部材103は、金属材料を切断やプレス等による塑性加工や、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工等の除肉加工によって上述した所定の形状に加工された後に、後述する粗化処理がなされたものが好ましい。要するに、種々の加工法により、必要な形状に加工されたものを用いることが好ましい。
本実施形態に係る金属部材103の微細凹凸表面104は、例えば、エッチング剤や陽極酸化法、機械的切削法等を用いて金属部材103の表面110を粗化処理した後に、金属部材103の表面110に対して温水による処理をおこなうことにより形成することができる。
ここで、エッチング剤や陽極酸化法、機械的切削法等を用いて金属部材の表面を粗化処理すること自体は従来技術においても行われてきた。しかし、本実施形態では、エッチング剤や陽極酸化法、機械的切削法等を用いて金属部材の表面を粗化処理することによってミクロンオーダーの凹凸形状を形成した後に、温水による処理をさらにおこなうことによって、微細凹凸表面104の表層部に樹枝状層103−1を形成している。すなわち、本実施形態に係る金属部材103の微細凹凸表面104を得るためには、エッチング剤や陽極酸化法、機械的切削法等による粗化処理に加えて、温水による処理をおこなうことが重要となる。
以下、本実施形態に係る金属部材103の微細凹凸表面104の形成方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る金属部材103の微細凹凸表面104の形成方法は、以下の例に限定されない。
金属部材103の少なくとも微細凹凸表面104に存在するミクロンオーダーの凹凸形状は、公知の金属表面粗化方法によって形成することが可能である。例えば、薬液処理法;陽極酸化法;サンドブラスト、ローレット加工、レーザー加工等の機械的切削法等を挙げることができる。これらの公知方法は単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
これらの公知方法の中では、酸系エッチング剤による薬液処理が好ましい。酸系エッチング剤を用いる公知薬液処理方法としては、例えば国際公開第2015/8847号、特開2001−348684号公報、国際公開第2008/81933号等に開示された処理方法を採用することができる。
また、金属部材103の表面110を粗化処理した後におこなう温水による処理方法としては、例えば、特開2008−162115号公報に開示された処理方法を採用することができる。
本実施形態においては、酸系エッチング剤による処理前に、亜鉛イオン含有アルカリ水溶液による処理を付加すると、金属/樹脂複合構造体106の接合面の気密性向上、表面粗化された金属表面の平滑性が損なわれる現象を防止することができるので好ましい。なお、亜鉛イオン含有アルカリ水溶液との処理については、例えば国際公開第2013/47365号に開示された処理方法を採用することができる。
本実施形態において、金属部材103の表面110に微細凹凸形状を形成させる具体的な方法として、次の工程(1)〜(5)を含んでなるプロセス、好ましくは、次の工程(1)〜(5)をこの順に行うプロセスを例示することができる。当該プロセスは後述する実施例においても採用しているが、本発明はこのプロセスに何ら限定されるものではない。
(1)前処理工程
金属部材103における樹脂部材105との接合側の表面に存在する酸化膜や水酸化物等からなる被膜を除去する工程である。通常、機械研磨や化学研磨処理が行われる。接合側表面に機械油等の著しい汚染がある場合は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液による処理や、脱脂を行なう場合もある。
(2)亜鉛イオン含有アルカリ水溶液による処理工程
水酸化アルカリ(MOH)と亜鉛イオン(Zn2+)とを質量比(MOH/Zn2+)1〜100の割合で含む亜鉛イオン含有アルカリ水溶液中に、前処理後の金属部材103を浸漬し、金属部材表面に亜鉛含有被膜形成させる工程である。
(3)酸系エッチング剤による処理工程
上記工程(2)終了後の金属部材103を、第二鉄イオンと第二銅イオンの少なくとも一方と、酸を含む酸系エッチング剤により処理して金属部材103の表面上の亜鉛含有被膜を溶離させると共に、ミクロンオーダーの凹凸形状を形成させる工程である。
(4)温水による処理工程
上記工程(3)終了後の金属部材103を、45℃〜95℃の温水に5〜30分浸漬させることによって、金属部材103上に形成されているミクロンオーダーの凹凸形状の上に、ナノオーダーの間隙部を有する樹枝状層を付与する工程である。
温水処理時の温水の温度は、例えば金属/樹脂複合構造体106に耐候性や美麗装飾性を付与するためのアルマイト化処理等の陽極酸化処理を行う場合には重要なパラメーターとなる。すなわち、このような陽極酸化処理を行う際には、温水の温度は低い方が好ましく、具体的には45℃以上70℃以下、好ましくは45℃超え65℃以下、より好ましくは45℃超え60℃未満、特に好ましくは46℃以上59℃以下である。温水処理時の時間は通常5分〜30分である。温水の温度が相対的に低い50℃前後の場合は処理時間15分〜30分程度、温水の温度が相対的に高い60℃前後の場合は処理時間が5分〜15分程度である。温水の温度が上記範囲を満たすことによって、例えば陽極酸化処理時のアルカリエチングと化学研磨の二工程において、金属−樹脂接合部の境界部分から強塩基性や強酸性の薬液が金属部材を溶かしつつ内部に向かって侵入し、接合面を破壊、延いては接合強度低下する現象をより効果的に防御することが可能となる。
(5)後処理工程
上記工程(4)の後に行われる洗浄工程である。通常は、水洗および乾燥操作からなる。スマット除去のために超音波洗浄操作を含めてもよい。
本実施形態においては、工程(1)、工程(2)、工程(3)の最終段階で、通常水洗が行われる。水洗は超音波照射下の水洗(超音波洗浄とも言う)であってもよい。特に、工程(3)の最終段階では超音波洗浄を実施すると、次工程で用いる希硝酸の使用ライフを延命化できるので好ましい。
また、金属部材103上に樹脂組成物を射出接合して得られる本実施形態の金属/樹脂複合構造体106を、特に過酷な環境下(例えば、高温下、高湿下、ヒートサイクル環境等)で使用する場合に要求される耐熱性・耐湿性を付与するためには工程(3)終了後、且つ工程(4)の実施前に下記工程(3’)を実施することが好ましい。
(3’)希硝酸による処理工程
工程(3’)は、工程(3)終了後の金属部材103を、濃度10〜40質量%の希硝酸で洗浄後、水洗する工程である。この工程(3’)における水洗は金属表面の黄色成分が消失する程度に実施することが好ましい。より好ましくは、水洗、次いで乾燥後の金属部材表面の、JIS Z8781−4(2013)に準拠して測定されるCIELAB表示系におけるb*座標値が0以上7以下の範囲を満たすように水洗が行われる。このための具体的な水洗方法は特に限定されるものではないが、水洗時に超音波を併用する方法、あるいは水槽中の金属部材を垂直方法及び/または水平方向に搖動させる方法を一例として挙げることができる。
本発明者らは、金属材料を上記酸系エッチング剤により処理する過程でミクロンオーダーの凹凸形状が金属部材103の表面に形成され、次いで、温水による処理過程で金属部材103の表面にナノオーダーの間隙を有する樹枝状層が形成されると考えている。
(樹脂部材)
以下、本実施形態に係る樹脂部材105について説明する。
樹脂部材105は、熱可塑性樹脂(A)を含む樹脂組成物(P)により構成される。樹脂組成物(P)は、樹脂成分として熱可塑性樹脂(A)と、必要に応じて充填材(B)と、を含む。さらに、樹脂組成物(P)は必要に応じてその他の配合剤を含む。なお、便宜上、樹脂部材105が熱可塑性樹脂(A)のみからなる場合であっても、樹脂部材105は熱可塑性樹脂組成物(P)により構成されると記載する。
熱可塑性樹脂(A)としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。
本実施形態においては、熱可塑性樹脂(A)は非晶性熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。例えば、非晶性熱可塑性樹脂(A)と上記非晶性熱可塑性樹脂(A)とは異なる種類の非晶性熱可塑性樹脂(A)とのブレンド(アロイ);非晶性熱可塑性樹脂(A)と結晶性熱可塑性樹脂(A)とのブレンド(アロイ);等を用いる場合において、本実施形態に係る効果をより効果的に得ることができる。
ここで、非晶性熱可塑性樹脂(AまたはA)とは結晶状態をとりえないか、あるいは結晶化しても結晶化度が極めて低い熱可塑性樹脂を指し、さらに詳しくはアモルファスポリマーとも呼ばれ、原子または分子が三次元的に規則正しい空間格子をとらずに、それらが不規則に集合した固体状態(無定形)である。
無定形状態にはガラス状態とゴム状態があり、ガラス転移点(Tg)以下では硬いガラス状を示すが、Tg以上では軟らかいゴム状を示す特徴をもつ熱可塑性樹脂であり、上述の熱可塑性樹脂群の中では、例えば、ポリスチレン樹脂、ABS、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等が該当する。このような非晶性熱可塑性樹脂は、高強度および高耐熱性を示すことから多くの産業分野で注目されている樹脂である。
本実施形態によれば、このような非晶性熱可塑性樹脂または上記非晶性熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(P)を用いた場合であっても、ヒート&クール成形法等の特殊な成形法を用いなくても十分な接合強度を有する金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。また、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の製造方法において、ヒート&クール成形等の特殊な射出成形法を組み合わせれば、接合強度をさらに飛躍的に向上させることができる。
樹脂組成物(P)の構成成分として、前述のように上記非晶性熱可塑性樹脂を単独で若しくは2種以上適宜組み合わせて使用してもよいし、非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂を適宜組み合わせて使用してもよい。樹脂組成物(P)が非晶性熱可塑性樹脂を含む場合は、樹脂組成物(P)全体に対して当該非晶性熱可塑性樹脂を10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上含有することが好ましい。
非晶性熱可塑性樹脂の中では、寸法安定性に優れ、成形収縮が相対的に小さく、吸水率が小さな変性ポリフェニレンエーテル樹脂(以下、m−PPEと略記する場合がある)または該m−PPEを含有する樹脂組成物が好ましい。
本実施形態に係るm−PPEは、PPE100質量部に対してポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンおよびゴム補強したシンジオタクチックポリスチレンから選択される少なくとも一種を500質量部以下の範囲、好ましくは200質量部以下の範囲で加えたものであることが好ましい。本実施形態に係るPPEとしては、汎用性と入手容易性等の視点から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が好んで用いられる。
本実施形態に係るポリエステル樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂(A)としては、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリエーテルイミド樹脂から選択される一種または二種以上であることが好ましい。
(充填材(B))
樹脂組成物(P)は、金属部材103と樹脂部材105との線膨張係数差の調整や樹脂部材105の機械的強度を向上させる観点から、充填材(B)をさらに含んでもよい。
充填材(B)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。
なお、樹脂組成物(P)が充填材(B)を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上90質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以上80質量部以下である。
(その他の配合剤)
樹脂組成物(P)には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含んでもよい。このような配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。
なお、樹脂組成物(P)がその他配合剤を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.0001〜5質量部であり、より好ましくは0.001〜3質量部である。
(樹脂組成物(P)の調製方法)
樹脂組成物(P)の調製方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により調製することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、熱可塑性樹脂(A)、必要に応じて充填材(B)、さらに必要に応じてその他の配合剤と、をバンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、樹脂組成物(P)が得られる。
<金属/樹脂複合構造体の製造方法>
図6は、本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体106を製造する過程の一例を模式的に示した構成図である。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、例えば、微細凹凸表面104を有する金属部材103を金型102内に配置し、熱可塑性樹脂(A)を含む樹脂組成物(P)を金型102内に射出することにより製造可能である。
射出工程は、例えば、微細凹凸表面104を有する金属部材103を射出成形用の金型102のキャビティ部にインサートし、金属部材103の微細凹凸表面104に接するように樹脂組成物(P)を射出する射出成形法によって樹脂部材105を成形し、金属/樹脂複合構造体106を製造する工程である。
具体的には、まず、射出成形用の金型102を用意し、その金型102を開いてその一部に金属部材103を設置する。その後、金型を閉じ、樹脂組成物(P)の少なくとも一部が金属部材103の表面110に形成された微細凹凸形状と接するように、上記金型内に樹脂組成物(P)を射出して固化する。その後、金型を開き離型することにより、金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。
また、上記射出成形工程においては、公知の射出発泡成形や、金型の温度制御を射出成形の一サイクルの中で行い加熱冷却する公知のヒート&クール成形を併用してもよい。ヒート&クール成形の条件としては、射出成形金型を80℃以上300℃以下の温度に加熱し、樹脂組成物(P)の射出が完了した後、射出成形金型を冷却することが望ましい。金型を加熱する温度は、樹脂組成物(P)を構成する熱可塑性樹脂(A)によって好ましい範囲が異なり、結晶性樹脂で融点が200℃未満の熱可塑性樹脂であれば、80℃以上200℃以下が好ましく、結晶性樹脂で融点が200℃以上の熱可塑性樹脂であれば、120℃以上300℃以下が好ましい。非晶性樹脂を含有する樹脂組成物においては、樹脂のTg(ガラス転移温度)以上の温度で射出完了させた後、20℃以上180℃以下に金型を冷却することが好ましい。
<金属/樹脂複合構造体の用途>
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、高い気密性、水密性が発現するので、これらの特性に応じた用途に好適に用いられる。
例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、電池周辺部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
より具体的には、樹脂だけでは強度が足りない部分を金属がサポートする様にデザインされた次のような部品である。車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ラジエータ、オイルパン、ステアリングホイール、ECUボックス、LIB電池モジュール、LIB冷却部材、電装部品等が挙げられる。また、建材や家具類として、ガラス窓枠、手すり、カーテンレール、たんす、引き出し、クローゼット、書棚、机、椅子等が挙げられる。また、精密電子部品類として、コネクタ、リレー、ギヤ等が挙げられる。また、輸送容器として、輸送コンテナ、スーツケース、トランク等が挙げられる。
また、金属部材103の高い熱伝導率と、樹脂部材105の断熱的性質とを組み合わせ、ヒートマネージメントを最適に設計する機器に使用される部品用途、例えば、各種家電にも用いることができる。具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカー等の家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池等電子情報機器、ロボット用部材等が挙げられる。
以上、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の用途について述べたが、これらは本発明の用途の例示であり、上記以外の様々な用途に用いることもできる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(表面粗化工程)
JIS H4000に規定された合金番号3003のアルミニウム合金板(厚み:2.0mm)を、長さ45mm、幅18mmに切断した。このアルミニウム合金板を脱脂処理した後、水酸化ナトリウムを15質量%と酸化亜鉛を3質量%含有するアルカリ系エッチング剤(30℃)が充填された処理槽1に3分間浸漬(以下の説明では「亜鉛前処理」と略称する場合がある)後、水洗した。次いで、得られたアルミニウム合金板を、塩化第二鉄を3.9質量%と、塩化第二銅を0.2質量%と、硫酸を4.1質量%とを含有する酸系エッチング水溶液(以下の説明では「薬液1」と略称する場合がある)が充填された処理槽2に、30℃下で5分間浸漬し搖動させた。次いで、30質量%硝酸水溶液中に65℃下5分間浸漬後、十分水洗を行った。なお、以下の説明ではこの酸系エッチング剤を薬液1と略称する場合がある。次いで、58℃の温水槽に10分間浸漬し搖動させた後、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、その後乾燥させることによって表面処理済みのアルミニウム合金板1を得た。
得られた表面処理済みのアルミニウム合金板1の表面粗さを、表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用し、JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)をそれぞれ測定した。その結果、Rz平均値は14μm、RSmの平均値は135μmであった。なお、Rz平均値およびRSm平均値は、測定場所を変えた6点の測定値の平均である。なお、測定場所は、図5に示すように、金属部材103の微細凹凸表面104上の任意の3直線部、および当該直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について行ったものである。
また、表面粗さ測定条件は以下のとおりである。
・触針先端半径:5μm
・基準長さ:0.8mm
・評価長さ:4mm
・測定速度:0.06mm/sec
また、得られた表面処理済みのアルミニウム合金板1について、粗化面から5点を任意に選定し、JIS Z8781−4(2013)に準拠してCIELAB表示系のb*座標を測定したところ、その平均値は3.2であった。
(射出成形工程)
上記方法で得られた表面処理済みアルミニウム合金板1を、日本製鋼所製の射出成形機J55−ADに装着された小型ダンベル金属インサート金型内に設置した。次いで、その金型内に樹脂組成物(P)として、サビックイノベーティブプラスチックス社製の変性ポリフェニレンエーテル(ノリルCN1134;ガラス繊維20質量%含有)を、シリンダー温度(樹脂温度)280℃、金型温度100℃、射出一次圧125〜135MPa、保圧110MPaの条件にて射出成形し、樹脂部材を表面処理済みアルミニウム合金板1に射出接合させることによって金属/樹脂複合構造体を得た。
得られた金属/樹脂複合構造体の接合部断面のSEM写真を図3に示す。これによれば、樹枝状層の平均厚みは210nmと算出された。また、得られた金属/樹脂複合構造体の接合部断面のZero−loss TEM写真を図4示す。樹枝状層の平均厚みはSEMの場合と同様に210nmと見積もられ、またミクロンオーダーの凹凸形状に追随するようにナノオーダーの樹枝状層が覆っていることが確認された。なお、この樹枝状層は射出成形前のアルミニウム合金板1の表面のSEM分析においても同様に観測されており、その平均厚みは210nmであった。以下の実施例と比較例においては、樹枝状層の平均厚みは特に断らない限り、金属/樹脂複合構造体の断面SEM写真から求めた。
上記射出成形工程で得られた金属/樹脂複合構造体について接合部の引っ張りせん断強度測定試験を実施した。具体的には、引っ張り試験機「モデル1323(アイコーエンジニヤリング社製)」を使用し、引張試験機に専用の治具を取り付け、室温(23℃)にて、チャック間距離60mm、引張速度10mm/minの条件にて接合強度の測定をおこなった。破断荷重(N)をアルミニウム合金板と樹脂部材との接合部分の面積で除することにより接合強度(MPa)を得た。接合強度は29MPaであった。破壊面の形態は母材破壊のみが認められた。
上記射出成形工程で得られた金属/樹脂複合構造体を、60℃、95%RHに維持された恒温恒湿機(東京理化器械(株)製,EYEL4「エンビロス」)中に1500時間保管し、次いで、一昼夜かけて室温まで放冷後に上記と同様な方法で接合強度を測定した。その結果、接合強度は28MPaであった。
さらに、上記射出成形工程で得られた金属/樹脂複合構造体を、ヒートショック試験機(日立アプライアンス(株)製,COSMPIA,ES−53L)にセットし、65℃×1時間/−40℃×1時間のサイクルを500サイクル実施後、一昼夜かけて室温まで放冷後に上記と同様な方法で接合強度を測定した。その結果、接合強度は24MPaであった。
これらの結果を表1にまとめた。
[実施例2]
実施例1における表面粗化工程において、58℃の温水槽への10分間浸漬・搖動操作の代わりに60℃の温水槽への8分間浸漬・搖動操作を実施した点、および射出成形工程において、樹脂組成物(P)として、変性ポリフェニレンエーテルの代わりにポリプラスチック社製PBT樹脂(ジェラネックス930HL)を用い、シリンダー温度(樹脂温度)270℃、金型温度160℃、射出一次圧95MPa、保圧80MPaの条件にて射出成形した点を除いて実施例1と同様に操作して表面処理済みのアルミニウム合金板2および金属/樹脂複合構造体をそれぞれ得た。
JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。その結果、Rz平均値は15μm、RSmの平均値は143μmであった。また、得られた金属/樹脂複合構造体の断面SEM分析を行ったところ、樹枝状層の平均厚み:230nmと算出された。
実施例1と同様にして、引張せん断強度を測定し、接合強度を求めた結果、36MPaであった。破壊面の形態は母材破壊のみが認められた。
上記射出成形工程で得られた金属/樹脂複合構造体についてアルマイト処理を行った。(アルマイト条件:上記金属/樹脂複合構造体を、アルカリエッチング工程として水酸化ナトリウム水溶液(50g/L)に55℃で60秒間浸漬、次いで化学研磨工程としてリン酸80容量%と硫酸20容積%の混合液に95℃、50秒間浸漬、次いでスマット除去として60%硝酸水溶液に室温下、30秒浸漬した。その後、各サンプルを硫酸水溶液(200g/L)に20℃で40分間通電した。その際の電流密度は1.0A/dm)であった。最後に封孔処理として、酢酸ニッケル水溶液に95℃で20分間浸漬し、水洗、エアーブロー乾燥した。アルマイト処理後の金属/樹脂複合構造体の接合強度は28MPaであった。
これらの結果を表1にまとめた。
[実施例3]
実施例2における表面粗化工程において、60℃の温水槽への8分間浸漬・搖動操作の代わりに55℃の温水槽への12分間浸漬・搖動操作を実施した以外は実施例2と同様に操作して表面処理済みのアルミニウム合金板3および金属/樹脂複合構造体をそれぞれ得た。
JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。その結果、Rz平均値は14μm、RSmの平均値は150μmであった。また、得られた金属/樹脂複合構造体の断面SEM分析を行ったところ、樹枝状層の平均厚み:200nmと算出された。
実施例2と同様にして、引張せん断強度を測定し、接合強度を求めた結果、36MPaであった。破壊面の形態は母材破壊のみが認められた。
上記射出成形工程で得られた金属/樹脂複合構造体について実施例2と同様にしてアルマイト処理を行った後の接合強度を測定した結果34MPaであった。
これらの結果を表1にまとめた。
[実施例4]
実施例2における表面粗化工程において、60℃の温水槽への8分間浸漬・搖動操作の代わりに50℃の温水槽への24分間浸漬・搖動操作を実施した以外は実施例2と同様に操作して表面処理済みのアルミニウム合金板4および金属/樹脂複合構造体をそれぞれ得た。
JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。その結果、Rz平均値は12μm、RSmの平均値は165μmであった。また、得られた金属/樹脂複合構造体の断面SEM分析を行ったところ、樹枝状層の平均厚み:250nmと算出された。
実施例2と同様にして、引張せん断強度を測定し、接合強度を求めた結果、35MPaであった。破壊面の形態は母材破壊のみが認められた。
上記射出成形工程で得られた金属/樹脂複合構造体について実施例2と同様にしてアルマイト処理を行った後の接合強度を測定した結果34MPaであった。
これらの結果を表1にまとめた。
[実施例5]
実施例1において合金番号3003のアルミニウム合金板の代わりに合金番号6063のアルミニウム合金板を用いた以外は実施例1と同様に操作して表面処理済みのアルミニウム合金板5および金属/樹脂複合構造体をそれぞれ得た。
JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。その結果、Rz平均値は18μm、RSmの平均値は148μmであった。また、得られた金属/樹脂複合構造体の断面SEM分析を行ったところ、樹枝状層の平均厚み:270nmと算出された。
実施例1と同様にして、引張せん断強度を測定し、接合強度を求めた結果、27MPaであった。破壊面の形態は母材破壊のみが認められた。
これらの結果を表1にまとめた。
[実施例6]
実施例1における表面粗化工程において、30質量%硝酸水溶液浸漬後の水洗操作を行わなかった以外は実施例1と同様に操作して表面処理済みのアルミニウム合金板6および金属/樹脂複合構造体をそれぞれ得た。
JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。その結果、Rz平均値は12μm、RSmの平均値は135μmであった。また、得られた金属/樹脂複合構造体の断面SEM分析を行ったところ、樹枝状層の平均厚み:280nmと算出された。また、得られた表面処理済みのアルミニウム合金板6について、粗化面から5点を任意に選定し、JIS Z8781−4(2013)に準拠してCIELAB表示系のb*座標を測定したところ、その平均値は11.7であった。
実施例1と同様にして、引張せん断強度を測定し、接合強度を求めた結果、26MPaであった。破壊面の形態は母材破壊のみが認められた。
上記射出成形工程で得られた金属/樹脂複合構造体を、実施例1と同様に恒温恒湿機中で1500時間保管し、次いで、一昼夜かけて室温まで放冷後に上記と同様な方法で接合強度を測定した。その結果、接合強度は18MPaであった。
さらに、上記射出成形工程で得られた金属/樹脂複合構造体を、実施例1と同様にヒートショック試験機中で500サイクルのヒートサイクル実施後、一昼夜かけて室温まで放冷後に上記と同様な方法で接合強度を測定した。その結果、接合強度は5MPaであった。
これらの結果を表1にまとめた。
[実施例7]
実施例1における表面粗化工程において、58℃の温水槽への10分間浸漬・搖動操作の代わりに70℃の温水槽への10分間浸漬・搖動操作を実施した以外は実施例1と同様に操作して表面処理済みのアルミニウム合金板7を得た。
JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。その結果、Rz平均値は9μm、RSmの平均値は142μmであった。次いで、表面処理済みのアルミニウム合金板7を用いて、実施例1と同様にして射出成形工程を実施し金属/樹脂複合構造体を得た。また、得られた金属/樹脂複合構造体の断面SEM分析を行ったところ、樹枝状層の平均厚み:260nmと算出された。
実施例1と同様にして、引張せん断強度を測定し、接合強度を求めた結果、23MPaであった。結果を表2にまとめた。
[実施例8]
実施例1における表面粗化工程において、薬液1の代わりに塩化第二鉄を2.0質量%と、塩化第二銅を0.1質量%と、硫酸を2.1質量%とを含有する酸系エッチング剤(水溶液;以下の説明では薬液2と略称する場合がある)を用いた以外は実施例1と同様に操作して表面処理済みのアルミニウム合金板8を得た。
JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。その結果、Rz平均値は15μm、RSmの平均値は134μmであった。次いで、表面処理済みのアルミニウム合金板8を用いて、実施例1と同様にして射出成形工程を実施し金属/樹脂複合構造体を得た。また、得られた金属/樹脂複合構造体の断面SEM分析を行ったところ、樹枝状層の平均厚み:190nmと算出された。
実施例1と同様にして、引張せん断強度を測定し、接合強度を求めた結果、26MPaであった。結果を表2にまとめた。
[実施例9]
実施例1における表面粗化工程において、水酸化ナトリウムを15質量%と酸化亜鉛を3質量%含有するアルカリ系エッチング剤(30℃)への浸漬を行わなかった以外は実施例1と同様に操作して表面処理済みのアルミニウム合金板9を得た。JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。その結果、Rz平均値は21μm、RSmの平均値は308μmであった。次いで、表面処理済みのアルミニウム合金板9を用いて、実施例1と同様にして射出形工程を実施し金属/樹脂複合構造体を得た。また、得られた金属/樹脂複合構造体の断面SEM分析を行ったところ、樹枝状層の平均厚み:220nmと算出された。
実施例1と同様にして、引張せん断強度を測定し、接合強度を求めた結果、24MPaであった。結果を表2にまとめた。
[比較例1]
実施例1における表面粗化工程において、58℃の温水槽への10分間浸漬・搖動操作を行わなかった以外は実施例1と同様に操作して表面処理済みのアルミニウム合金板10を得た。
JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。その結果、Rz平均値は15μm、RSmの平均値は135μmであった。
次いで、表面処理済みのアルミニウム合金板10を用いて、実施例1と同様にして射出成形工程を実施し金属/樹脂複合構造体を得た。また、得られた金属/樹脂複合構造体の断面SEM分析を行ったところ、樹枝状層は全く観測されなかった。
実施例1と同様にして、引張せん断強度を測定し、接合強度を求めた結果、10MPaであった。結果を表2にまとめた。
[比較例2]
実施例1における表面粗化工程において、酸系エッチング剤(水溶液)への浸漬・搖動を行わなかった以外は実施例1と同様に操作して表面処理済みのアルミニウム合金板11を得た。JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。その結果、Rz平均値は1μm、RSmの平均値は166μmであった。次いで、表面処理済みのアルミニウム合金板11を用いて、実施例1と同様にして射出成形工程を実施し金属/樹脂複合構造体を得ようとしたが、接合できなかった。また、接合する前のアルミニウム合金板表面のSEM観察を行ったところ、樹枝状層の平均厚み:100nmと算出された。結果を表2にまとめた。
101 射出成形機
102 金型
103 金属部材
103−1 樹枝状層
104 微細凹凸表面
105 樹脂部材
106 金属/樹脂複合構造体
107 ゲート/ランナー
110 表面

Claims (7)

  1. 微細凹凸表面を有する金属部材と、
    前記金属部材の前記微細凹凸表面に接合し、かつ、熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された樹脂部材と、
    を備える金属/樹脂複合構造体であって、
    前記金属部材の前記微細凹凸表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが下記要件(1)および要件(2)を同時に満たし、
    前記微細凹凸表面の表層は樹枝状層を含む金属/樹脂複合構造体。
    (1)十点平均粗さ(Rz)の平均値が5μmを超える
    (2)粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が10μm以上400μm以下の範囲にある
  2. 請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    電子顕微鏡を用いて測定される前記樹枝状層の平均厚みが35nm以上700nm以下の範囲にある金属/樹脂複合構造体。
  3. 請求項1または2に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記金属部材の前記微細凹凸表面上の、JIS Z8781−4(2013)に準拠して測定されるCIELAB表示系におけるb*座標値が0以上9以下の範囲にある金属/樹脂複合構造体。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記熱可塑性樹脂が非晶性熱可塑性樹脂を含む金属/樹脂複合構造体。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記熱可塑性樹脂が、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリエーテルイミド樹脂から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記金属部材は鉄系金属、アルミニウム系金属、マグネシウム系金属、銅系金属およびチタン系金属から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
    微細凹凸表面を有する金属部材を金型内に配置し、前記金属部材の前記微細凹凸表面に接するように熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を前記金型内に射出し、前記熱可塑性樹脂または前記樹脂組成物により構成された樹脂部材を成形することにより、前記金属部材と前記樹脂部材とを接合させる工程を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
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