JP2007203585A - アルミニウム合金と樹脂の複合体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子機器等において、加飾され、耐候性に優れ、生産性のよいアルミニウム合金と樹脂の複合体を製造する。
【解決手段】アルミニウム合金形状物に特殊液処理を施し、乾燥し、射出成形金型にインサートする。樹脂として、ポリオレフィン系樹脂をコンパウンドしたPBT、PPS系樹脂をこの射出金型に射出成形することにより、アルミニウム合金形状物と成形された樹脂が強力で安定的に接合した複合体が形成できる。この複合体はそのままアルマイト化しても、実質、アルミニウム合金形状物1と合成樹脂2間の接合力を低下させることがない。
【選択図】図1
【解決手段】アルミニウム合金形状物に特殊液処理を施し、乾燥し、射出成形金型にインサートする。樹脂として、ポリオレフィン系樹脂をコンパウンドしたPBT、PPS系樹脂をこの射出金型に射出成形することにより、アルミニウム合金形状物と成形された樹脂が強力で安定的に接合した複合体が形成できる。この複合体はそのままアルマイト化しても、実質、アルミニウム合金形状物1と合成樹脂2間の接合力を低下させることがない。
【選択図】図1
Description
本発明は、電子機器の筐体等に用いられるアルミニウム合金と高強度樹脂の複合体とその製造方法に関する。更に詳しくは、アルミニウム合金形状物と熱可塑性合成樹脂を一体化した複合体とその製造方法に関し、特に携帯用の各種電子機器、家電製品、医療機器、車両用構造部品、車両搭載用品、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等に用いられる耐候性のあるアルミニウム合金と樹脂の複合体とその製造方法に関する。
金属と合成樹脂を一体化する技術は、自動車、航空機、家庭電化製品、産業機器等の部品製造等の広い産業分野から求められており、このために多くの接着剤が開発されている。この中には非常に優れた接着剤が提案されている。常温、又は加熱により機能を発揮する接着剤は、金属と金属、金属と合成樹脂を一体化する接合(以下、「固着」と同義に用いる。)等に使われ、今日では一般的な固着技術である。
しかしながら、接着剤を使用しないで接合させる方法も従来から種々研究されてきた。マグネシウム、アルミニウムやその合金である軽金属類あるいはステンレスなど鉄合金類に対しては、接着剤の介在なしで高強度のエンジニアリング樹脂を一体化する方法、例えば、金属側に樹脂成分を射出する等の成形と同時に接着する方法も種々提案されているが、まだ本格的に実用化されている段階ではない。
これに関連し、実用化のため、本発明者らは鋭意研究開発を進めてきた。その結果、水溶性アミン系化合物の水溶液にアルミニウム合金形状物を浸漬してから、これにポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT」という。)、又はポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、「PPS」という。)を主成分とする熱可塑性合成樹脂組成物とを、高温高圧下で接触させると特異的に強い接着力が生じることを見出して、この技術を確立した。これに関わる技術について、本出願人はこの組成物を射出成形によりアルミニウム合金と樹脂を一体化させるできる構造物とその技術を開示している(特許文献1,2,3参照、以下、「射出接合」という。)。
又、金属表面を化学エッチングしてから射出成形金型にインサートし、射出接合する方法も知られている(特許文献4参照)。アルミニウムは合金化で、本来の物性である優れた展伸性、電導性、熱伝導性に加え、高強度化、高耐食性化、快削性化等が可能であり広い分野で用いられている。特に今後、個人の情報化が更に進展し各種のモバイル電子機器が汎用的に使われるようになれば、機器の軽量化への要望は一層強いものとなり、アルミニウム合金と硬質樹脂とを一体化した複合体とその技術は重要な要素技術となる。又、環境問題や石油資源の問題から、将来は省資源に結びつく分野の技術が主役になるとみられるが、この場合も車両等の運輸機械の軽量化にアルミニウム合金の適用が期待されている。
これらの対象にアルミニウム合金と、PBTやPPSとの射出接合による固着された成形品は重要な役目を果たすことができる。
本発明者等は、前述した発明を使用してアルミニウム合金にPBT、PPS等の合成樹脂を射出接合しその効果を確かめるべく種々の詳細な試験を行っている。加えて、モバイル電子機器等のケース、外部環境に曝される移動用機器等に、この技術が使えるようアルミニウム合金の耐食性、耐候性を確保する技術の研究開発を行った。この中でアルマイトは、アルミニウム表面を電解酸化して、強固な耐食性酸化被膜を形成する方法として知られている。例えば、アルミニウム合金板を射出成形金型にインサートして、これに合成樹脂を射出し、合成樹脂とアルミニウム合金を一体化したモバイルコンピュータの筐体を作り、これをそのまま通常の着色電解酸化工程にかけ、アルミニウム面を着色アルマイトにする開発が要請された。
アルマイト化等が要請される理由は、アルミニウムは元々酸塩基に弱くて腐食され易いので、少なくとも外装部に使用する場合は、何らかの表面処理を為さねばならないからである。特に、着色アルマイトは美麗な装飾で耐候性も優れたものである。実際、モバイル電子機器用の外装に使用する場合は、外装面を着色アルマイトとすることが多い。又、自転車等にアルミニウム材を使用するときは、電解酸化した上に更に塗装するなどして強固な防食層を形成する方法が採用されている。
しかしながら、アルミニウム合金と樹脂の一体化構造物を、何らの処理もせずにそのままの状態で電解酸化工程にかけると、樹脂部分とアルミニウム合金との境界部分の接着力が低下する問題点が生じる。これは、樹脂とアルミニウム合金が為す境界線部に薬液浸透があり、このため接着面が外周部から内部中央に向かい徐々に侵されていく現象が生じているからである。
より詳細に説明する。本出願人の提案した前述の技術は、予め特殊処理したアルミニウム合金に対してPBTやPPS系樹脂組成物を射出接合して固着させるものであるが、この固着力は非常に強固なものである。射出成形する前にアルミニウム合金形状物に水溶液浸漬処理を行うが、この浸漬処理は大きく前処理と本処理(後述する)に分けることができ、これらの樹脂とアルミニウム合金の接合が強固になるのはこの本処理による。この原理は本処理によってアルミニウム合金形状物の表面に生じる超微細な凹部に溶融樹脂が入り込むためである。溶融樹脂が冷却固化することなく超微細凹部に入り込む理由は、本処理によってアルミニウム合金の表面に化学吸着した含窒素化合物と溶融樹脂が反応し発熱するために固化が遅れることによる。
但し、境界部分の外周部は樹脂が最も冷え易い部分であるので、接合力が他より弱い部分であり、又、成形後の樹脂収縮によって境界部の樹脂はアルミニウム合金の面から離れミクロンレベルの隙間を有して浮いていることが多い。アルミニウム合金は、そのままの状態であると傷がつきやすく環境の変化にも弱いので、表面を酸化させ皮膜を生成する処理、即ち電解酸化処理、特に普及しているのは低電圧の直流で陽極酸化するアルマイト化であるが、この電解酸化処理中に、樹脂とアルミニウム合金の為す境界線部に薬液浸透が生じ易いのである。
電解酸化は、電解液の中で金属に直流交流等の電界をかけて金属酸化物皮膜を生成させる方法の総称であり、実際には金属に陽極を繋いで直流酸化することが多いので陽極酸化ということも多い。アルミニウム合金に対して行う最も普及した陽極酸化法を日本ではアルマイト化と言い、得られた酸化アルミニウム皮膜付のアルミニウム形状品をアルマイトと言う。そこでアルマイト化工程についてやや詳細に述べる。
アルマイト化処理は、アルミニウム材を、通常、ブラスト、脱脂、アルカリエッチング、化学研磨、陽極酸化、染色、封孔の諸工程を踏んで為す。この中で本質的な工程は陽極酸化であるが、その陽極酸化工程の前に表面を美麗にする前処理を行う。即ち、アルカリエッチング工程は高濃度高温の苛性ソーダ水溶液への浸漬であり、これでアルミニウムやアルミニウム合金の表面を溶かして汚れや残存油剤をアルミニウム諸共に削り落とす工程である。又、化学研磨工程は、高温の燐酸、硫酸、硝酸等の高濃度酸に浸漬する工程であって、前工程でアルミニウム表面が溶かされて凹凸化した面の凸部に対して特に激しく溶解させる作用があり、表面を平滑にする。
アルミニウム合金と樹脂の射出接合物をアルマイト化工程にかけると、アルカリエッチングと化学研磨のこれら2工程によって、境界線部分から強塩基性や強酸性の薬液がアルミニウム合金を溶かしつつ内部に向かって浸入し、接着面を侵略するのである。その後に行う陽極酸化は20℃付近とした弱酸性水溶液である電解液中で十数V、数A/dm2を通電して合金表面にアルミニウム酸化物を成長させるものであり、前2工程ほどではないがやはり境界線部分から接合面を侵そうとする。
アルマイト化で行う陽極酸化は、十数Vという比較的低電圧の直流をかけて円滑に電解酸化する方法であり世界中で広く行われている方法であるが、アルマイト化以外にも多種多様な電解酸化法がある。例えば、数百Vの高圧直交流で酸化する方法がある。水中で火花を伴うような電解酸化であり、ミクロ的に超高温になるので非晶性の緻密な酸化アルミニウム層が出来る。通電は文字通り不電導性の酸化アルミニウム層を高電圧で打ち破った穴を経由している。それ故、孔開口部の形状は複雑でありアルマイト化で行う陽極酸化ほど幾何学的な形状ではない。短時間で耐食層を形成できるので、装飾性を必要としない場合にはこの方法も多用される。理論的には、陽極酸化にてアルミニウム酸化物が表層に生じると考え易いが、実際には交流でも逆流でも電圧等を制御することで色んなアルミニウム酸化物層が生成できるようである。何れも酸化アルミニウムで表面を被覆させるものであり、主目的は耐食性の確保である。
さて、本発明は、上述のような技術背景のもとに開発したものである。即ち、耐食性を確保すべく行うこれら表面処理の中に含まれるアルカリエッチングや化学研磨等の下化粧工程で、又、電解酸化工程で、塩基性や酸性の薬液が射出接合一体化物の境界線部分から浸入するのである。それ故、侵入を防いで元々のアルミニウム合金/樹脂間の接合力を低下させない為の方法につき鋭意アイデアを募り実験を繰り返し行った。その結果、本発明は得られた。
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
本発明1は、アルミニウム合金からアルミニウム合金形状物を形成する工程と、前記アルミニウム合金形状物をアンモニア、ヒドラジン、水溶性アミン化合物のいずれかの1以上の水溶液に浸漬する工程と、前記浸漬工程で処理された前記アルミニウム合金形状物を射出成形金型にインサートする工程と、前記射出成形金型に、PPSを主成分としポリオレフィン系樹脂を従成分とする熱可塑性合成樹脂組成物を射出する工程と、射出成形され一体化された前記アルミニウム合金形状物と前記熱可塑性合成樹脂塑性物の複合体を電解酸化する工程とを含むことを特徴とする耐候性あるアルミニウム合金と樹脂の複合体の製造方法を提供する。
本発明1は、アルミニウム合金からアルミニウム合金形状物を形成する工程と、前記アルミニウム合金形状物をアンモニア、ヒドラジン、水溶性アミン化合物のいずれかの1以上の水溶液に浸漬する工程と、前記浸漬工程で処理された前記アルミニウム合金形状物を射出成形金型にインサートする工程と、前記射出成形金型に、PPSを主成分としポリオレフィン系樹脂を従成分とする熱可塑性合成樹脂組成物を射出する工程と、射出成形され一体化された前記アルミニウム合金形状物と前記熱可塑性合成樹脂塑性物の複合体を電解酸化する工程とを含むことを特徴とする耐候性あるアルミニウム合金と樹脂の複合体の製造方法を提供する。
本発明2は、アルミニウム合金からアルミニウム合金形状物を形成する工程と、前記アルミニウム合金形状物をアンモニア、ヒドラジン、水溶性アミン化合物から選択される1以上の水溶液に浸漬する工程と、前記浸漬工程で処理された前記アルミニウム合金形状物を射出成形金型にインサートする工程と、前記射出成形金型に、PBTを主成分としポリオレフィン系樹脂を従成分とする熱可塑性合成樹脂塑性物を射出する工程と、射出成形され一体化された前記アルミニウム合金形状物と前記熱可塑性合成樹脂塑性物の複合体を電解酸化する工程とを含むことを特徴とする耐候性あるアルミニウム合金と樹脂の複合体の製造方法を提供する。
本発明3は、アルミニウム合金と硬質の樹脂成形物が直接的に接合しており、しかもアルミニウム合金側は電解酸化処理されているアルミニウム合金と樹脂の複合体であって、前記樹脂成形物の成分がポリオレフィン系樹脂を含むPPS及びポリオレフィン系樹脂を含むPBTであることを特徴とする耐候性あるアルミニウム合金と樹脂の複合体を提供する。
[本発明の上記各構成の説明]
以下、前述した本発明の耐候性あるアルミニウム合金と樹脂の複合体の製造方法について、その手段を詳述する。アルミニウム合金にPBT系、又は、PPS系の熱可塑性合成樹脂組成物を射出成形する技術は、前述の特許文献に記載され公知技術であり、これに関する技術の詳細な説明は省略する。本発明は前述のように主に2種類の製造方法があるが、使用する樹脂種が異なるだけで工程自体は同じである。即ち、本発明の金属樹脂複合体の製造方法は、アルミニウム合金形状物の作成、液処理、射出接合、電解酸化である。電解酸化を除く射出接合までの工程は、本発明者らが過去に開示した方法そのものである。従来では問題あった射出接合による一体化物の直接的な電解酸化を可能にしたのは使用する樹脂組成の改良に拠る。樹脂組成の要点、及び樹脂組成が電解酸化に与えた効果については後述する。これらを含め、以下、全工程について順を追って詳細に説明する。
以下、前述した本発明の耐候性あるアルミニウム合金と樹脂の複合体の製造方法について、その手段を詳述する。アルミニウム合金にPBT系、又は、PPS系の熱可塑性合成樹脂組成物を射出成形する技術は、前述の特許文献に記載され公知技術であり、これに関する技術の詳細な説明は省略する。本発明は前述のように主に2種類の製造方法があるが、使用する樹脂種が異なるだけで工程自体は同じである。即ち、本発明の金属樹脂複合体の製造方法は、アルミニウム合金形状物の作成、液処理、射出接合、電解酸化である。電解酸化を除く射出接合までの工程は、本発明者らが過去に開示した方法そのものである。従来では問題あった射出接合による一体化物の直接的な電解酸化を可能にしたのは使用する樹脂組成の改良に拠る。樹脂組成の要点、及び樹脂組成が電解酸化に与えた効果については後述する。これらを含め、以下、全工程について順を追って詳細に説明する。
〔アルミニウム合金形状物の作成〕
本発明で使用するアルミニウム合金は、日本工業規格JISの展伸用合金A1000〜7000番系のもの、又鋳造用合金のADC1〜12等である。射出成形により樹脂との固着を行う場合、アルミニウム合金は、この素材から、鋸加工、フライス加工、放電加工、ドリル加工、鍛造、プレス加工、研削加工、研磨加工、等の機械加工により、所望の形状に加工され、射出成形金型へのインサート部品として必要な形状に仕上げられる。必要な形状に仕上げられた物の多くは、一般に機械加工のときに用いた油材が表面に付着している。そのような場合、下記の工程送る前に、トリクレン、メチレンクロライド、灯油、パラフィン系油剤等の溶剤を使用した溶剤脱脂装置を使用して加工油剤を除去しておくのが好ましい。
本発明で使用するアルミニウム合金は、日本工業規格JISの展伸用合金A1000〜7000番系のもの、又鋳造用合金のADC1〜12等である。射出成形により樹脂との固着を行う場合、アルミニウム合金は、この素材から、鋸加工、フライス加工、放電加工、ドリル加工、鍛造、プレス加工、研削加工、研磨加工、等の機械加工により、所望の形状に加工され、射出成形金型へのインサート部品として必要な形状に仕上げられる。必要な形状に仕上げられた物の多くは、一般に機械加工のときに用いた油材が表面に付着している。そのような場合、下記の工程送る前に、トリクレン、メチレンクロライド、灯油、パラフィン系油剤等の溶剤を使用した溶剤脱脂装置を使用して加工油剤を除去しておくのが好ましい。
〔液処理/脱脂洗浄工程〕
この液処理/脱脂洗浄工程は、液処理工程の中で最初に行う工程である。アルミニウム合金の表面に付着した機械加工のための切削、研削等の加工油、指脂による汚れ等を除去するのが目的であるが、機械加工油が大量付着している場合は、脱脂槽1基では除去し切れないので前述した溶剤脱脂装置に一旦通してからこの工程へ投入するのが好ましい。脱脂材には市販のアルミニウム合金用脱脂剤が使用できる。市販のアルミニウム合金用脱脂剤を使う場合、これを水に投入溶解し指定の温度と時間、即ち多くは50〜80℃、5分前後で、アルミニウム合金形状物をこの脱脂剤水溶液に浸漬するのが好ましい。この浸漬後これを水洗する。
この液処理/脱脂洗浄工程は、液処理工程の中で最初に行う工程である。アルミニウム合金の表面に付着した機械加工のための切削、研削等の加工油、指脂による汚れ等を除去するのが目的であるが、機械加工油が大量付着している場合は、脱脂槽1基では除去し切れないので前述した溶剤脱脂装置に一旦通してからこの工程へ投入するのが好ましい。脱脂材には市販のアルミニウム合金用脱脂剤が使用できる。市販のアルミニウム合金用脱脂剤を使う場合、これを水に投入溶解し指定の温度と時間、即ち多くは50〜80℃、5分前後で、アルミニウム合金形状物をこの脱脂剤水溶液に浸漬するのが好ましい。この浸漬後これを水洗する。
〔液処理/前処理〕
この前処理は、酸塩基性液に数分浸漬しておおまかにエッチングして表層被膜を化学的に除去し、以降の本処理に適するようにするものである。アルミニウム合金形状物を液処理して射出接合に適した処理をする場合、これを2段に分け、前処理、本処理と称することにする。本発明者らが好ましいと考えている前処理には前処理Iと前処理IIの2種類があり、前処理Iで使用する浸漬用の液は単純な酸と塩基の水溶液である。塩基性液としては、0.5〜3.0%濃度の苛性ソーダ水溶液を35〜40℃に加温し、酸性液としては、0.5〜5.0%濃度の塩酸、硝酸水溶液を35〜40℃に加温するように温度制御して使用する。前処理Iは銅や珪素分の少ないA1000番台、A5000番台合金に使用する。
この前処理は、酸塩基性液に数分浸漬しておおまかにエッチングして表層被膜を化学的に除去し、以降の本処理に適するようにするものである。アルミニウム合金形状物を液処理して射出接合に適した処理をする場合、これを2段に分け、前処理、本処理と称することにする。本発明者らが好ましいと考えている前処理には前処理Iと前処理IIの2種類があり、前処理Iで使用する浸漬用の液は単純な酸と塩基の水溶液である。塩基性液としては、0.5〜3.0%濃度の苛性ソーダ水溶液を35〜40℃に加温し、酸性液としては、0.5〜5.0%濃度の塩酸、硝酸水溶液を35〜40℃に加温するように温度制御して使用する。前処理Iは銅や珪素分の少ないA1000番台、A5000番台合金に使用する。
一方、前処理IIでは酸性水溶液を主に使用するが、酸性液として弗化水素酸を含む水溶液や弗化水素酸の誘導体を使用する。前処理IIは、銅や珪素を含む合金、即ち、A2000番台、A6000番台、A7000番台、及びADC12等の鋳造用合金に使用する。何れにせよ、酸塩基性液に数分浸漬しておおまかにエッチングして表層被膜を化学的に除去し、以降の本処理に適するようにするのが前述した前処理の目的である。水洗してアルミニウム合金形状物を次工程に送る。
〔液処理/本処理〕
前処理を終了したアルミニウム合金形状物を、アンモニア、ヒドラジン、又は水溶性アミン化合物の水溶液に浸漬する。これが本発明でいう本処理である。本処理は、前処理工程で得たアルミニウム合金形状物の表面を超微細エッチングし、同時にこれらアミン系化合物を吸着させるのがこの工程の目的である。使用するのは広い意味のアミン化合物であり、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、アリルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン、その他のアミン類が含まれる。これらの内、特にヒドラジンが好ましい。
前処理を終了したアルミニウム合金形状物を、アンモニア、ヒドラジン、又は水溶性アミン化合物の水溶液に浸漬する。これが本発明でいう本処理である。本処理は、前処理工程で得たアルミニウム合金形状物の表面を超微細エッチングし、同時にこれらアミン系化合物を吸着させるのがこの工程の目的である。使用するのは広い意味のアミン化合物であり、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、アリルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン、その他のアミン類が含まれる。これらの内、特にヒドラジンが好ましい。
理由は臭気が小さいこと、低濃度で有効なこと、安価なこと、等による。浸漬は、40〜80℃、特に好ましくは50〜70℃で行い、濃度と浸漬時間は使用する化合物によって異なるが、ヒドラジンの場合は1水和ヒドラジンとして2〜10%濃度、特に3〜5%の水溶液が好ましく、浸漬時間は30〜90秒が好ましい。浸漬条件がこれより緩いとエッチングが十分とならず後の射出接合での接合力が低くなる。又、浸漬条件がこれより厳しいとエッチングが複層して表面の凹部径が大きくなり且つ凹部の中にまた凹部が出来てスポンジ状の複雑表面層となる。この場合も後の射出接合で得られる一体化品の接合力は弱くなる。この浸漬後、水洗し、40〜90℃で熱風乾燥する。
〔熱可塑性合成樹脂組成物〕
次に、本発明で使用する熱可塑性合成樹脂組成物、及び射出接合について説明する。本発明で使用するのは、PBT、又はPPSを主成分として含む熱可塑性合成樹脂組成物である。PBT、PPSに加え、ポリオレフィン系ポリマーをコンパウンドすることが本発明の要点でもある。双方の合計を100質量部としたとき、PBT又はPPS60〜95質量部に対し、ポリオレフィン系樹脂を40〜5質量部使用するのが好ましい。ポリオレフィン系樹脂が40質量部以上であれば射出接合力、即ち固着力が大きく低下するし、ポリオレフィン系樹脂が5質量部以下であると後工程であるアルマイト化で問題が起きる。そして、PBTやPPSに対して相溶性が低いポリオレフィン系樹脂を相溶し易くするため、ポリオレフィン系樹脂そのものを改良する方法、及びその他成分を更に相溶化剤として加えることは好ましい方法である。
次に、本発明で使用する熱可塑性合成樹脂組成物、及び射出接合について説明する。本発明で使用するのは、PBT、又はPPSを主成分として含む熱可塑性合成樹脂組成物である。PBT、PPSに加え、ポリオレフィン系ポリマーをコンパウンドすることが本発明の要点でもある。双方の合計を100質量部としたとき、PBT又はPPS60〜95質量部に対し、ポリオレフィン系樹脂を40〜5質量部使用するのが好ましい。ポリオレフィン系樹脂が40質量部以上であれば射出接合力、即ち固着力が大きく低下するし、ポリオレフィン系樹脂が5質量部以下であると後工程であるアルマイト化で問題が起きる。そして、PBTやPPSに対して相溶性が低いポリオレフィン系樹脂を相溶し易くするため、ポリオレフィン系樹脂そのものを改良する方法、及びその他成分を更に相溶化剤として加えることは好ましい方法である。
[ポリオレフィン系樹脂]
混入させるポリオレフィン系樹脂の役目について述べておく。一つは、アルマイト化には関係ない。即ち、ポリオレフィン系樹脂を加えることが射出接合で得た一体化物の接合力に全く悪影響を与えないことである。もう一つは、アルマイト化に関係することであり、それはポリオレフィン系樹脂を含んだPBT、PPSを射出した場合に、この樹脂中の主成分であるPBTやPPS成分よりポリオレフィン系樹脂の方が熱分解し易く、射出時の溶融樹脂の流れにポリオレフィン系樹脂の分解ガスが同伴することである。射出成形金型内にインサートされたアルミニウム合金に溶融樹脂流が接触し接合に至るわけであるが、樹脂部とアルミニウム合金部が作る境界線部分は金型的に言えばガス逃がし部に当たり、ガスのみが通過する部分である。要するに、境界線近傍のアルミニウム合金部には高濃度のポリオレフィン系樹脂分解ガスが通過接触する。ナノオーダーの超微細凹凸加工されたアルミニウム合金面を分解ガスが金型で冷やされながら通過すると、ガス成分は強く吸着される。ポリオレフィン系樹脂の熱分解成分は蝋、パラフィンのような成分と推定される。これがアルミニウム合金表面に吸着され、その後のアルマイト化で酸水溶液、塩基水溶液等の水溶液に対し無反応であるのでアルミニウム合金は保護を受けると理解される。即ち、本発明者等は、射出接合品を直接アルマイト化して特に問題を生じない理由は上記したポリオレフィン系樹脂の分解ガスにあると考えている。以下、ポリオレフィン系樹脂について述べる。
混入させるポリオレフィン系樹脂の役目について述べておく。一つは、アルマイト化には関係ない。即ち、ポリオレフィン系樹脂を加えることが射出接合で得た一体化物の接合力に全く悪影響を与えないことである。もう一つは、アルマイト化に関係することであり、それはポリオレフィン系樹脂を含んだPBT、PPSを射出した場合に、この樹脂中の主成分であるPBTやPPS成分よりポリオレフィン系樹脂の方が熱分解し易く、射出時の溶融樹脂の流れにポリオレフィン系樹脂の分解ガスが同伴することである。射出成形金型内にインサートされたアルミニウム合金に溶融樹脂流が接触し接合に至るわけであるが、樹脂部とアルミニウム合金部が作る境界線部分は金型的に言えばガス逃がし部に当たり、ガスのみが通過する部分である。要するに、境界線近傍のアルミニウム合金部には高濃度のポリオレフィン系樹脂分解ガスが通過接触する。ナノオーダーの超微細凹凸加工されたアルミニウム合金面を分解ガスが金型で冷やされながら通過すると、ガス成分は強く吸着される。ポリオレフィン系樹脂の熱分解成分は蝋、パラフィンのような成分と推定される。これがアルミニウム合金表面に吸着され、その後のアルマイト化で酸水溶液、塩基水溶液等の水溶液に対し無反応であるのでアルミニウム合金は保護を受けると理解される。即ち、本発明者等は、射出接合品を直接アルマイト化して特に問題を生じない理由は上記したポリオレフィン系樹脂の分解ガスにあると考えている。以下、ポリオレフィン系樹脂について述べる。
ポリオレフィン系樹脂としては、通常ポリオレフィン系樹脂として知られているエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂等であり、市販のものであってもよい。その中でも、特に射出接合力に優れた複合体を得ることが可能となることから、無水マレイン酸変性エチレン系共重合体、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン共重合体、エチレンアルキルアクリレート共重合体等であることが好ましい。無水マレイン酸変性エチレン系共重合体としては、例えば無水マレイン酸グラフト変性エチレン重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体等をあげることができ、その中でも特に優れた複合体が得られることからエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体であることが好ましい。
このエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体の具体的な例示としては、「ボンダイン(アルケマ社製)」等が挙げられる。又、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体としては、グリシジルメタクリレートグラフト変性エチレン重合体、グリシジルメタクリレート−エチレン共重合体を挙げることができ、その中でも特に優れた複合体が得られることからグリシジルメタクリレート−エチレン共重合体であることが好ましく、このグリシジルメタクリレート−エチレン共重合体の具体例としては、「ボンドファースト(住友化学社製)」等が挙げられる。このグリシジルエーテル変性エチレン共重合体としては、例えばグリシジルエーテルグラフト変性エチレン共重合体、グリシジルエーテル−エチレン共重合体を挙げることができ、このエチレンアルキルアクリレート共重合体の具体例としては、「ロトリル(アルケマ社製)」等が挙げられる。
[相溶化剤]
次に、前述したポリオレフィン系ポリマーをPBTやPPSに相溶し易くする成分、即ち、相溶化剤として本発明者等が好ましくみている成分について述べておく。即ち、多官能性イソシアネート化合物、及びエポキシ樹脂の添加は相溶性を高める成分として使用できる。樹脂分合計100質量部に対し、多官能性イソシアネート化合物0〜6質量部及び/又はエポキシ樹脂0〜25質量部を配合するのが好ましい。この多官能性イソシアネート化合物は、市販の非ブロック型、ブロック型のものが使用できる。該多官能性非ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン等が例示される。
次に、前述したポリオレフィン系ポリマーをPBTやPPSに相溶し易くする成分、即ち、相溶化剤として本発明者等が好ましくみている成分について述べておく。即ち、多官能性イソシアネート化合物、及びエポキシ樹脂の添加は相溶性を高める成分として使用できる。樹脂分合計100質量部に対し、多官能性イソシアネート化合物0〜6質量部及び/又はエポキシ樹脂0〜25質量部を配合するのが好ましい。この多官能性イソシアネート化合物は、市販の非ブロック型、ブロック型のものが使用できる。該多官能性非ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン等が例示される。
また、この多官能性ブロック型イソシアネート化合物としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有し、そのイソシアネート基を揮発性の活性水素化合物と反応させて、常温では不活性としたものであり、この多官能性ブロック型イソシアネート化合物の種類は特に規定したものではなく、一般的には、アルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類等のブロック剤によりイソシアネート基がマスクされた構造を有する。この多官能性ブロック型イソシアネートとしては、例えば「タケネート(三井竹田ケミカル社製)」等が挙げられる。
また、この用途のエポキシ樹脂としては、一般にビスフェノールA型、クレゾールノボラック型等として知られているエポキシ樹脂を用いることができ、該ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば「エピコート(ジャパンエポキシレジン社製)」等が挙げられ、該クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、「エピクロン(大日本インキ化学工業社製)」等が挙げられる。
[フィラー]
次に、フィラーについて述べる。フィラーの含有は、アルミニウム合金形状物と熱可塑性合成樹脂組成物との線膨張率を一致させるという点から非常に重要である。フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、その他これらに類する高強度繊維が良い。又、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ガラス、タルク、粘土、炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物、その他類する樹脂充填用無機フィラーを含有した熱可塑性合成樹脂組成物であることがより好ましい。アルミニウム合金の線膨張率(2.5×10−5℃−1程度)に樹脂のそれを合わせるために、フィラーの含量をコンパウンド全体の25〜50%とする。
次に、フィラーについて述べる。フィラーの含有は、アルミニウム合金形状物と熱可塑性合成樹脂組成物との線膨張率を一致させるという点から非常に重要である。フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、その他これらに類する高強度繊維が良い。又、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ガラス、タルク、粘土、炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物、その他類する樹脂充填用無機フィラーを含有した熱可塑性合成樹脂組成物であることがより好ましい。アルミニウム合金の線膨張率(2.5×10−5℃−1程度)に樹脂のそれを合わせるために、フィラーの含量をコンパウンド全体の25〜50%とする。
〔射出接合〕
本発明でいう射出接合は、射出成形金型にアルミニウム合金形状物をインサートした後、この射出成形金型に熱可塑性合成樹脂組成物を射出してこの熱可塑性合成樹脂組成物とアルミニウム合金形状物を固着することをいう。具体的な射出接合の手順は、最初に前記した熱可塑性合成樹脂組成物を乾燥機にまず投入して乾燥し射出成形に備える。射出成形金型を準備し、金型を開いてその一方の金型にアルミニウム合金形状物をインサートする。インサート後金型を閉め、前述した熱可塑性合成樹脂組成物を射出する。
本発明でいう射出接合は、射出成形金型にアルミニウム合金形状物をインサートした後、この射出成形金型に熱可塑性合成樹脂組成物を射出してこの熱可塑性合成樹脂組成物とアルミニウム合金形状物を固着することをいう。具体的な射出接合の手順は、最初に前記した熱可塑性合成樹脂組成物を乾燥機にまず投入して乾燥し射出成形に備える。射出成形金型を準備し、金型を開いてその一方の金型にアルミニウム合金形状物をインサートする。インサート後金型を閉め、前述した熱可塑性合成樹脂組成物を射出する。
射出成形された構造物が固まったら、射出成形金型を開き離型する。大量生産では、部品を射出成形金型内にインサート用のロボットを使用すると能率的である。ロボットは、作業を早くすると同時に作業の安定化に寄与し、製品を均一化させるのに効果がある。射出温度に関し、PBT系樹脂を使用するときは通常の使用温度よりかなり高く、即ち270℃以上にするのが好ましい。これはPBT系樹脂の射出温度としては高すぎるが、高温にすることでポリオレフィン系樹脂の熱分解が生じ、パラフィン系ガスの発生量が増えるからである。
又、射出成形金型温度はやや高い方、具体的には120℃以上、にすることで接合に関し良い結果が得られるが、その他の成形条件は通常の射出成形に比較して特に変更する必要はない。接合力を上げるためには、ガスを十分逃がして障害をなくした上で、高温高圧の溶融樹脂がアルミニウム合金形状物の表面に充分に接触することである。そのためにガス抜きが十分に行われるように金型製作上で対策が施されていなければならない。
〔電解酸化〕
アルミニウム合金に対して最も広く工業的量産法として使われて来た電解酸化は染色アルマイト化である。従ってここでは染色アルマイト化について述べる。即ち、染色アルマイト化は、アルカリエッチング、化学研磨、陽極酸化、染色、封孔の諸工程を踏む。実施方法については多くの成書があり、数十年実施されているアルミニウム合金の防食、加飾の方法であって、アルマイト会社として多社あり各社毎の多くのノウハウが蓄積されている。本発明で得られるアルミニウム合金と樹脂の一体化物は、多くのアルマイト会社が現実に実施している方法でアルマイト化できる。アルマイト化で接合力が低下して問題を生じることはない。
アルミニウム合金に対して最も広く工業的量産法として使われて来た電解酸化は染色アルマイト化である。従ってここでは染色アルマイト化について述べる。即ち、染色アルマイト化は、アルカリエッチング、化学研磨、陽極酸化、染色、封孔の諸工程を踏む。実施方法については多くの成書があり、数十年実施されているアルミニウム合金の防食、加飾の方法であって、アルマイト会社として多社あり各社毎の多くのノウハウが蓄積されている。本発明で得られるアルミニウム合金と樹脂の一体化物は、多くのアルマイト会社が現実に実施している方法でアルマイト化できる。アルマイト化で接合力が低下して問題を生じることはない。
染色アルマイト化の標準的な実施工程は、ブラスト又はバフ掛け、アルカリエッチング、化学研磨、陽極酸化、染色、封孔の諸工程である。外観部品として使用する場合、ブラスト又はバフ掛けをして前工程の射出接合時に付いた金型との擦り傷、押し傷等を消す必要があると思われる。単に防食のためであり、且つ、アルマイト化の後で更に塗装を行う場合は不要かもしれない。アルカリエッチング工程以降は通常のアルマイト化と同様に行うことができる。
強いて言えば、樹脂成形部とアルミニウム合金が為す境界線部分近傍のアルミニウム合金表面はポリオレフィン系樹脂の分解ガスで保護されているのみであるので、通常通りか又は通常よりやや緩い条件でアルカリエッチング及び化学研磨をするのが好ましい。具体的に言えば、現行の当業者のアルマイト化はブラストやバフ掛け工程の多少のムラ(十分にアルミ上のキズを取り切っていないこと)を、アルカリエッチングと化学研磨で取り返すべくきつくなっていることが多いので、前工程に手を掛けることで、アルカリエッチングでの液温度を常時より10〜20℃下げ、化学研磨では浸漬時間を半分にするなどである。
アルマイト化にて接合に支障がなかったか否かを見る最も簡単な手法は、アルマイト化し水洗乾燥した後の製品に於いて、樹脂とアルミ材が為す境界線部分に全く白粉らしき物が付着してなければほぼ成功であり、白粉が確認されれば殆ど不成功とみる方法である。実際には数十〜数百個をアルマイト化し、その破断試験を行って確認するが、前記した簡便法での結果と殆ど一致する。アルマイト化工程の具体的内容は多くの成書がある上、国内に数百の業者が実践をしているので記述を省略する。本発明者らの実施方法は実施例に示した。
アルマイト化以外の電解酸化法についても、酸化以前の下化粧である前処理工程は殆ど同じである。そして、通電法が高圧になったり交流になったりしても境界線からの侵食は浸漬液の酸塩基性によって生じる方が大きいので本発明はそのまま使用できる。
以上詳記したように、本発明の耐候性あるアルミニウム合金と樹脂の複合体の製造方法は、熱可塑性合成樹脂組成物とアルミニウム合金形状物とを容易に剥がれることのない一体化できる構造物とし、又その製造技術を確立したものである。射出接合に引き続いて電解酸化できるようにした。問題となる境界線部は使用する樹脂成分の改良により解決した。従って、各種機器の筐体や部品、構造物等を加飾し耐候性の優れた複合体とすることができた。本発明によって製造した筐体、部品、構造物は、着色されてデザイン的に優れたものとなり、しかも製造技術は、軽量化や機器製造工程の簡素化を達成するもので、量産化が可能で低コストのものとできる。
アルミニウム合金の形状物による実物で種々の試験を行った。その効果を実施例において確認したので、本発明の実施の形態を実施例に代えて説明する。又、本発明は、実施例に限定されないことはいうまでもない。本発明の技術は、実施例に限らず、前述のようにあらゆる分野に適用可能である。
[調整例1(PPS組成物の調製例)]
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、Na2S・2.9H2Oを6,214g、及びN−メチル−2−ピロリドンを17,000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1,355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7,160gとN−メチル−2−ピロリドン5,000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が280ポイズのPPSを得た。このPPSを、さらに窒素雰囲気下250℃で3時間硬化を行った。得られたPPSの溶融粘度は、400ポイズであった。このPPSを「PPS(1)」ということにする。
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、Na2S・2.9H2Oを6,214g、及びN−メチル−2−ピロリドンを17,000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1,355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7,160gとN−メチル−2−ピロリドン5,000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が280ポイズのPPSを得た。このPPSを、さらに窒素雰囲気下250℃で3時間硬化を行った。得られたPPSの溶融粘度は、400ポイズであった。このPPSを「PPS(1)」ということにする。
このPPS(1)を6.5kg、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体を1.5kg「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」、及びエポキシ樹脂0.4kg「エピコート1004(ジャパンエポキシレジン社製)」を、予めタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B(東芝機械社製)」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91(日本板硝子社製)」を、サイドフィーダーから添加量が20重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を175℃で5時間乾燥し、PPS組成物(1)とした。
[調整例2(PPS組成物の調製)]
調整例1で得られたPPS(1)を6.0kgと、グリシジルメタクリレート−エチレン共重合体を2.0kg「ボンドファーストE(住友化学社製)」とを、予めタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が20重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を175℃で5時間乾燥し、PPS組成物(2)とした。
調整例1で得られたPPS(1)を6.0kgと、グリシジルメタクリレート−エチレン共重合体を2.0kg「ボンドファーストE(住友化学社製)」とを、予めタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が20重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を175℃で5時間乾燥し、PPS組成物(2)とした。
[調整例3(PPS組成物の調製)]
調整例1で得られたPPS(1)を6.0kgと、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体を2.0kg「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」とを、予めタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が20重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を175℃で5時間乾燥し、PPS組成物(3)とした。
調整例1で得られたPPS(1)を6.0kgと、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体を2.0kg「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」とを、予めタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が20重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を175℃で5時間乾燥し、PPS組成物(3)とした。
[調整例4(ポリオレフィン系樹脂の入っていないPPS組成物)]
調整例1で得られたPPS(1)8.0kgを二軸押出機「TEM−35B」にかけ、これに平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が20重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を175℃で5時間乾燥し、PPS組成物(4)とした。
調整例1で得られたPPS(1)8.0kgを二軸押出機「TEM−35B」にかけ、これに平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が20重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を175℃で5時間乾燥し、PPS組成物(4)とした。
[調整例5(PBT組成物の調整)]
市販のガラス繊維等フィラー40%入りPBT/PET樹脂を5.5kg「TW908GU(三菱レイヨン社製)」、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体を0.5kg「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」、及び
市販のガラス繊維等フィラー40%入りPBT/PET樹脂を5.5kg「TW908GU(三菱レイヨン社製)」、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体を0.5kg「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」、及び
エポキシ樹脂0.15kg「エピコート1004(ジャパンエポキシレジン社製)」を、予めタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B(東芝機械社製)」にて供給しながらシリンダー温度260℃で溶融混練してペレット化し、PBT系樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を150℃で5時間乾燥し、PBT組成物(1)とした。
[調整例6(ポリオレフィン系樹脂の入っていないPBT組成物)]
市販のガラス繊維等フィラー40%入りPBT/PET樹脂「TW908GU(三菱レイヨン社製)」を150℃で5時間乾燥し、PBT組成物(2)とした。
市販のガラス繊維等フィラー40%入りPBT/PET樹脂「TW908GU(三菱レイヨン社製)」を150℃で5時間乾燥し、PBT組成物(2)とした。
〈実施例1〉
市販の3mm厚のA5052アルミ合金板(住友軽金属工業社製)を購入した。100mm×25mmの長方形片200個に切断した。浸漬治具に全て充填し、市販のアルミ脱脂剤「NE−6(メルテックス社製)」を、7.5%濃度で湯に溶かし75℃とした槽(脱脂槽)に5分間浸漬し、水洗した。続いて、40℃の1%塩酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。続いて40℃の3%苛性ソーダ水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。次いで40℃の3%硝酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。続いて60℃の3.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第1処理槽に1分浸漬し、40℃の0.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第2処理槽に0.5分浸漬し水洗した。これを40℃で15分、60℃で5分間、温風乾燥した。治具より直接指で触れないようにしてアルミニウム合金板を取り出し、各々をアルミ箔で包み、更にこれらをポリエチ袋に入れて封じ保管した。
市販の3mm厚のA5052アルミ合金板(住友軽金属工業社製)を購入した。100mm×25mmの長方形片200個に切断した。浸漬治具に全て充填し、市販のアルミ脱脂剤「NE−6(メルテックス社製)」を、7.5%濃度で湯に溶かし75℃とした槽(脱脂槽)に5分間浸漬し、水洗した。続いて、40℃の1%塩酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。続いて40℃の3%苛性ソーダ水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。次いで40℃の3%硝酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。続いて60℃の3.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第1処理槽に1分浸漬し、40℃の0.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第2処理槽に0.5分浸漬し水洗した。これを40℃で15分、60℃で5分間、温風乾燥した。治具より直接指で触れないようにしてアルミニウム合金板を取り出し、各々をアルミ箔で包み、更にこれらをポリエチ袋に入れて封じ保管した。
図1は、アルミニウム合金片とPPS組成物とを一体化したアルミニウム合金と樹脂の複合体である。熱可塑性合成樹脂組成物として、PPS組成物(1)を用いた。140℃の射出成形金型の固定型板2及び可動型板2内に、前述したアルミニウム合金片1をインサートし、PPS樹脂組成物(1)を300℃の射出温度でゲート5から射出した。射出成形金型を開き、図1に示す形のアルミニウム合金と樹脂の複合体3を100個作成した。アルミニウム合金片1とPPS樹脂組成物4は、接合面(接合面積は1.8cm2)6で一体に固着している。これを同日、170℃とした熱風乾燥機内に1時間置いてアニールした。
翌日、10個について引っ張り試験機にかけてせん断破断試験を行った。何れも図1で示すA−A線部分で破断してしまい平均の破断時の引っ張り力は3.2kN(330Kgf)であった。接合面積は1.8cm2であるので破断時に接合面にかかったせん断力は平均で18MPa(1.8kN/cm2)であった。樹脂部の厚みが3mmであり、結果的に薄く、せん断破断する前に曲げ応力による樹脂破断が生じてしまった。しかしながら接合力が十分強いことが確認できた。
翌日、一体化物の残部90個をアルマイト用の治具に装填した。即ち、アルミ側端部にチタン線が接触するように仕組まれた治具である。治具ごとアルミ脱脂剤「NE−6(メルテックス社製)」7.5%濃度を湯に溶かし75℃とした槽(脱脂槽)に5分間浸漬し、水洗槽で水洗した。次いで60℃とした15%濃度の苛性ソーダ水溶液に15秒浸漬してアルカリエッチングし水洗した。次いで85℃とした60%硝酸水溶液に10秒浸漬し化学研磨し水洗した。次いで10%硫酸水溶液で満たし15℃に保った電解槽を用意し、一体化物を浸漬治具に入れてチタン線のもう一端を直流電源の陽極側、液に入れた鉛棒に陰極側を繋いで5A/dm2となるよう通電を20分続けて陽極酸化した。次いで90℃としたブルーブラック染料を溶かした染色槽に10分浸漬して黒色系に染色した。更に90℃とした0.5%リン酸水溶液に20分浸漬して封孔し、十分に水洗した。ついで65℃にした温風乾燥機に1時間置いて乾燥した。綺麗にアルミ合金部分が黒色アルマイトされ、90枚のサンプルの何れの境界線部分にも白粉は観察されなかった。
次いで翌日、全てを引っ張り試験機にかけせん断破断力を加えて破壊した。平均の破断力は3.19kN(325Kgf)であり、破断は全て図1のA−A線部分で生じ、アルマイト化前と同じであった。樹脂部分が付着したままのアルミ合金片の樹脂部分をニッパーで強引に剥がしたが、アルミ合金側に樹脂の残部が点々と付着しており、薬液が侵入した形跡はなかった。破断力の数値は若干減少したが誤差範囲と判断した。
〈実施例2〉
PPS組成物(1)に代えてPPS組成物(2)を使用した他は実施例1と全く同様にして一体化物50個を作成し、全てをアルマイト後に引っ張り破断した。破断は実施例1と同様にA−A線で樹脂部が破断し、アルミ片から樹脂部をニッパーで強引に剥がしたが、全てにアルミ合金側に樹脂の残部が点々と付着しており薬液が侵入した形跡はなかった。
PPS組成物(1)に代えてPPS組成物(2)を使用した他は実施例1と全く同様にして一体化物50個を作成し、全てをアルマイト後に引っ張り破断した。破断は実施例1と同様にA−A線で樹脂部が破断し、アルミ片から樹脂部をニッパーで強引に剥がしたが、全てにアルミ合金側に樹脂の残部が点々と付着しており薬液が侵入した形跡はなかった。
〈実施例3〉
PPS組成物(1)に代えてPPS組成物(3)を使用した他は実施例1と全く同様にして一体化物50個を作成し、全てをアルマイト後に引っ張り破断した。破断は実施例1と同様にA−A線で樹脂部が破断し、アルミ片から樹脂部をニッパーで強引に剥がしたが、全てにアルミ合金側に樹脂の残部が点々と付着しており薬液が侵入した形跡はなかった。
PPS組成物(1)に代えてPPS組成物(3)を使用した他は実施例1と全く同様にして一体化物50個を作成し、全てをアルマイト後に引っ張り破断した。破断は実施例1と同様にA−A線で樹脂部が破断し、アルミ片から樹脂部をニッパーで強引に剥がしたが、全てにアルミ合金側に樹脂の残部が点々と付着しており薬液が侵入した形跡はなかった。
〈比較例1〉
PPS組成物(1)に代え、ポリオレフィンを含んでいない組成物であるPPS組成物(4)を使用した他は実施例1と全く同様にして一体化物50個を作成した。10個をアルマイト化前に引っ張り破断したところ破断時の引っ張り力は平均で3.10kN(316Kgf)であったが6個がせん断破断、4個がA−A線で折れた樹脂破断であった。
PPS組成物(1)に代え、ポリオレフィンを含んでいない組成物であるPPS組成物(4)を使用した他は実施例1と全く同様にして一体化物50個を作成した。10個をアルマイト化前に引っ張り破断したところ破断時の引っ張り力は平均で3.10kN(316Kgf)であったが6個がせん断破断、4個がA−A線で折れた樹脂破断であった。
残り40個をアルマイト化したところ、38個で樹脂とアルミ合金が為す境界線部分に小さな白点が確認された。針で擦ったところ剥がれて取れ、アルミニウムの酸化物とみられた。引っ張り破断したところ破断は全てせん断破断で平均のせん断破断力は2.50kN(255Kgf)であった。又、アルミ合金側の破断面には薬液が侵入した跡が全てに確認できた。
〈実施例4〉
市販の1mm厚のA5052アルミ合金板(住友軽金属工業社製)を購入した。270mm×275mmの長方形板30個に切断した。プレス型を使った十数のプレス工程にて端部を曲げ且つ細かく端部を切断して平面部が270mm×190mmのプレス形状物を得た。浸漬治具に充填し、市販のアルミ脱脂剤「NE−6(メルテックス社製)」を7.5%濃度で湯に溶かし75℃とした槽(脱脂槽)に5分間浸漬し、水洗した。続いて、40℃の1%塩酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。
市販の1mm厚のA5052アルミ合金板(住友軽金属工業社製)を購入した。270mm×275mmの長方形板30個に切断した。プレス型を使った十数のプレス工程にて端部を曲げ且つ細かく端部を切断して平面部が270mm×190mmのプレス形状物を得た。浸漬治具に充填し、市販のアルミ脱脂剤「NE−6(メルテックス社製)」を7.5%濃度で湯に溶かし75℃とした槽(脱脂槽)に5分間浸漬し、水洗した。続いて、40℃の1%塩酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。
続いて40℃の3%苛性ソーダ水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。次いで40℃の3%硝酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。続いて60℃の3.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第1処理槽に1分浸漬し、40℃の0.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第2処理槽に0.5分浸漬し水洗した。これを40℃で15分、60℃で5分間、温風乾燥した。治具より直接指で触れないようにしてアルミニウム合金板を取り出し、各々をアルミ箔で包み、更にこれらをポリエチレン製の袋に入れて封じ保管した。
熱可塑性合成樹脂組成物として、PPS組成物(1)を用意した。140℃とした射出成形金型に前記のアルミニウム合金片をインサートし、前記樹脂組成物を300℃の射出温度で射出した。金型を開き、複合体30個を作成した。これを同日、170℃とした熱風乾燥機内に1時間置いてアニールした。翌日、これらをアルマイト工程にかけた。
即ち、バフ機にかけてアルミニウム合金部の樹脂の付着していない方の面をバフ掛けした。次いで60℃とした15%濃度の苛性ソーダ水溶液に15秒浸漬してアルカリエッチングし水洗した。次いで85℃とした60%硝酸水溶液に10秒浸漬し化学研磨し水洗した。次いで10%硫酸水溶液で満たし15℃に保った電解槽を用意し、一体化物を浸漬治具に入れてチタン線を樹脂付着側のアルミニウム合金部に接触させ、チタン線に陽極、液に入れた鉛棒に陰極を繋いで5A/dm2となるよう通電を20分続けて陽極酸化した。次いで90℃とした青染料(奥野製薬社製)を溶かした染色層に10分浸漬して青色に染色した。更に90℃とした0.5%リン酸水溶液に20分浸漬して封孔し、十分に水洗した。次いで65℃にした温風乾燥機に1時間置いて乾燥した。綺麗にアルミ合金部分が着色アルマイトされ、30枚のサンプルの何れの境界線部分にも白粉は観察されなかった。このアルマイト品の樹脂側の写真を写真2に示す。うち10枚について、ニッパーを使用して各接合部を強引に剥がしたが、全てで薬液が侵入した跡は発見できなかった。
〈実施例5〉
PPS組成物(1)に代えてPBT組成物(1)を使用した他は実施例1と全く同様にして一体化物3を50個作成した。ただし射出接合時の射出温度は290℃とし金型温度は140℃であった。全てをアルマイト後に引っ張り破断した。破断力は平均で2.74kN(279Kgf)であり、破断は実施例1と同様にA−A線で樹脂部が破断していた。アルミ片に残った樹脂部をニッパーで強引に剥がした。薬液が侵入した形跡はゼロではなかったが極めて小さなものであり、実質的に接合面が侵食されている様子ではなかった。これは以下の比較例2と比べてみるとはっきりした。
PPS組成物(1)に代えてPBT組成物(1)を使用した他は実施例1と全く同様にして一体化物3を50個作成した。ただし射出接合時の射出温度は290℃とし金型温度は140℃であった。全てをアルマイト後に引っ張り破断した。破断力は平均で2.74kN(279Kgf)であり、破断は実施例1と同様にA−A線で樹脂部が破断していた。アルミ片に残った樹脂部をニッパーで強引に剥がした。薬液が侵入した形跡はゼロではなかったが極めて小さなものであり、実質的に接合面が侵食されている様子ではなかった。これは以下の比較例2と比べてみるとはっきりした。
〈比較例2〉
PBT組成物(1)に代え、ポリオレフィンを含んでいない組成物であるPBT組成物(2)を使用し、射出温度を270℃(PBTメーカーが指示する標準的な温度)とした他は実施例5と全く同様にして一体化物50個を作成した。10個をアルマイト化前に引っ張り破断したところ破断時の引っ張り力は平均で2.91kN(297Kgf)あり、2個がせん断破断、8個がA−A線で折れた樹脂破断であった。残り40個をアルマイト化したところ、全てに樹脂とアルミ合金が為す境界線部分に小さな白点が確認された。引っ張り破断したところ破断は全てせん断破断で平均のせん断破断力は1.85kN(189Kgf)に下がっていた。又、アルミ合金側の破断面には薬液が侵入した跡が全てに確認できた。
PBT組成物(1)に代え、ポリオレフィンを含んでいない組成物であるPBT組成物(2)を使用し、射出温度を270℃(PBTメーカーが指示する標準的な温度)とした他は実施例5と全く同様にして一体化物50個を作成した。10個をアルマイト化前に引っ張り破断したところ破断時の引っ張り力は平均で2.91kN(297Kgf)あり、2個がせん断破断、8個がA−A線で折れた樹脂破断であった。残り40個をアルマイト化したところ、全てに樹脂とアルミ合金が為す境界線部分に小さな白点が確認された。引っ張り破断したところ破断は全てせん断破断で平均のせん断破断力は1.85kN(189Kgf)に下がっていた。又、アルミ合金側の破断面には薬液が侵入した跡が全てに確認できた。
1…アルミニウム合金形状物
2…熱可塑性合成樹脂組成物
3…複合体
4…接合面
5…線A
2…熱可塑性合成樹脂組成物
3…複合体
4…接合面
5…線A
Claims (3)
- アルミニウム合金からアルミニウム合金形状物を形成する工程と、
前記アルミニウム合金形状物をアンモニア、ヒドラジン、水溶性アミン化合物のいずれかの1以上の水溶液に浸漬する工程と、
前記浸漬工程で処理された前記アルミニウム合金形状物を射出成形金型にインサートする工程と、
前記射出成形金型に、ポリフェニレンサルファイド樹脂を主成分としポリオレフィン系樹脂を従成分とする熱可塑性合成樹脂組成物を射出する工程と、
射出成形され一体化された前記アルミニウム合金形状物と前記熱可塑性合成樹脂塑性物の複合体を電解酸化する工程と
を含むことを特徴とするアルミニウム合金と樹脂の複合体の製造方法。 - アルミニウム合金からアルミニウム合金形状物を形成する工程と、
前記アルミニウム合金形状物をアンモニア、ヒドラジン、水溶性アミン化合物から選択される1以上の水溶液に浸漬する工程と、
前記浸漬工程で処理された前記アルミニウム合金形状物を射出成形金型にインサートする工程と、
前記射出成形金型に、ポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分としポリオレフィン系樹脂を従成分とする熱可塑性合成樹脂塑性物を射出する工程と、
射出成形され一体化された前記アルミニウム合金形状物と前記熱可塑性合成樹脂塑性物の複合体を電解酸化する工程と
を含むことを特徴とするアルミニウム合金と樹脂の複合体の製造方法。 - アルミニウム合金と硬質の樹脂成形物が直接的に接合しており、しかもアルミニウム合金側は電解酸化処理されているアルミニウム合金と樹脂の複合体であって、
前記樹脂成形物の成分がポリオレフィン系樹脂を含むポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含むポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とするアルミニウム合金と樹脂の複合体。
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