以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向に限定されない。
各実施例においては、第1導電型をn型、第2導電型をp型とした例を示しているが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70、ダイオード部80および境界部90を備える半導体チップである。境界部90は、トランジスタ部70の一部であってよい。トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。ダイオード部80は、半導体基板の上面においてトランジスタ部70と隣接して設けられ、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。境界部90は、半導体基板の上面においてトランジスタ部70およびダイオード部80の間に設けられる。図1においてはチップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
また、図1においては半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んでエッジ終端構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。エッジ終端構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
本例の半導体装置100は、半導体基板の上面側の内部に形成されたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、トレンチ部の一例である。また、本例の半導体装置100は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。エミッタ電極52およびゲート金属層50は互いに分離して設けられる。
エミッタ電極52およびゲート金属層50と、半導体基板の上面との間には層間絶縁膜が形成されるが、図1では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して形成される。
エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25は、半導体基板の上面に形成される。
ゲート金属層50は、コンタクトホール49を通って、ゲートランナー48と接触する。ゲートランナー48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲートランナー48は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲートランナー48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例のゲートランナー48は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部まで形成される。ゲートトレンチ部40の先端部においてゲート導電部は半導体基板の上面に露出しており、ゲートランナー48と接触する。
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよく、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
1以上のゲートトレンチ部40および1以上のダミートレンチ部30は、トランジスタ部70の領域において所定の配列方向に沿って所定の間隔で配列される。トランジスタ部70においては、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に形成されてよい。
本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板の上面に平行であって配列方向と垂直な延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分と、2つの延伸部分を接続する接続部分を有してよい。接続部分の少なくとも一部は曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分の端部を接続することで、延伸部分の端部における電界集中を緩和できる。ゲートランナー48は、ゲートトレンチ部40の接続部分において、ゲート導電部と接続してよい。
本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部分の間に設けられる。ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に半導体基板の上面においてU字形状を有してよい。つまり、本例のダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分と、2つの延伸部分を接続する接続部分を有する。他の例においては、ダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してもよい。
なお、境界部90およびダイオード部80においては、複数のダミートレンチ部30が連続して配列されている。また、トランジスタ部70において境界部90と隣接する領域においても、複数のダミートレンチ部30が連続して配列されてよい。なお本例では、それぞれのトレンチ部の直線状の延伸部分を、1つのトレンチ部としている。
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に形成される。ウェル領域11は第2導電型であり、ゲート金属層50が設けられる側の活性領域の端部から、所定の範囲で形成される。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域はウェル領域11に形成される。ダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域11に覆われていてよい。
各トレンチ部に挟まれたメサ部には、ベース領域14が形成される。ベース領域14は、ウェル領域11よりもドーピング濃度の低い第2導電型である。本例のベース領域14はP−型である。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板であって、半導体基板の上面から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。
メサ部のベース領域14の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が選択的に形成される。本例のコンタクト領域15はP+型である。また、トランジスタ部70においては、コンタクト領域15の上面の一部に、半導体基板よりもドーピング濃度が高い第1導電型のエミッタ領域12が選択的に形成される。本例のエミッタ領域12はN+型である。
コンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、隣接する一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで形成される。トランジスタ部70の1以上のコンタクト領域15および1以上のエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向に沿って交互にメサ部の上面に露出するように形成される。コンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、各トレンチ部の延伸方向に沿って所定の長さにわたり、隣接する一方のトレンチ部または他方のトレンチ部に接してよい。
他の例においては、トランジスタ部70におけるメサ部には、コンタクト領域15およびエミッタ領域12がトレンチ部の延伸方向に沿ってストライプ状に形成されていてもよい。例えばトレンチ部に隣接する領域にエミッタ領域12が形成され、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が形成される。
本例のダイオード部80および境界部90のメサ部には、エミッタ領域12が形成されていない。また、ダイオード部80のメサ部には、トランジスタ部70における少なくとも一つのコンタクト領域15と対向する領域にコンタクト領域15が形成される。境界部90のメサ部には、トランジスタ部70のコンタクト領域15およびエミッタ領域12と対向する領域にコンタクト領域15が形成される。
境界部90は複数のメサ部を備えてよい。境界部90において、ダイオード部80側に位置する1以上のメサ部では、トランジスタ部70に隣接するメサ部よりも、コンタクト領域15の半導体基板上面の面積が小さくてよい。境界部90において、ダイオード部80側に位置する1以上のメサ部では、ベース領域14が半導体基板の上面に露出してよい。
トランジスタ部70において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に形成される。コンタクトホール54は、ベース領域14およびウェル領域11に対応する領域には形成されない。
ダイオード部80において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびベース領域14の上方に形成される。本例のコンタクトホール54は、ダイオード部80のメサ部における複数のベース領域14のうち、最もゲート金属層50に近いベース領域14に対しては形成されない。
ダイオード部80は、半導体基板の下面側において、第1導電型のカソード領域82を有する。本例のカソード領域82はN+型である。図1に、半導体基板の上面視でカソード領域82が設けられる領域を破線部で示している。ダイオード部80は、カソード領域82を半導体基板の上面に投影した領域であってよい。カソード領域82を半導体基板の上面に投影した領域は、コンタクト領域15から+X軸方向に離れていてよい。
ダイオード部80のうち、半導体基板の下面においてカソード領域82が形成されていない領域には、P+型のコレクタ領域が形成されてよい。本例では、下面23のカソード領域82を投影した半導体基板の上面のダミートレンチ部30またはメサ部95について、当該メサ部95のコンタクトホール54の外周側(−X軸方向の向き)の端部を半導体基板の下面に投影した位置には、コレクタ領域が形成されている。一例として、半導体基板の下面の一部にカソード領域82が形成されたダミートレンチ部30またはメサ部95で、ダミートレンチ部30の延伸方向の端部(U字状につながる部分も含む)までのダミートレンチ部30またはメサ部95は、半導体基板の下面にコレクタ領域が形成されていても、便宜的にダイオード部80としてよい。トランジスタ部70は、コレクタ領域を半導体基板の上面に投影した領域のうち、トレンチ部またはメサ部が形成されている領域であってよい。
境界部90において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15の上方に形成される。本例のコンタクトホール54は、境界部90のベース領域14に対しては形成されない。境界部90において、ダイオード部80側に位置する1以上のメサ部では、コンタクトホール54はベース領域14の上方に形成されてよい。本例においてトランジスタ部70のコンタクトホール54と、ダイオード部80のコンタクトホール54と、境界部90のコンタクトホール54とは、各トレンチ部の延伸方向において同一の長さを有する。
半導体装置100は、半導体基板の内部において、ベース領域14の下方に選択的に形成された第1導電型の蓄積領域16と、第1導電型の高濃度領域17を有する。図1においては、蓄積領域16および高濃度領域17が形成される範囲を一点鎖線で示している。蓄積領域16は、トランジスタ部70に形成され、高濃度領域17は、ダイオード部80に形成される。
図2aは、図1におけるd−d'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面21に形成される。
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に形成される。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向と称する。
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。半導体基板10の上面側には、P−型のベース領域14が形成される。
当該断面において、トランジスタ部70の上面21側には、N+型のエミッタ領域12、P−型のベース領域14およびN+型の1つ以上の蓄積領域16が、上面21側から順番に形成されている。当該断面において、ダイオード部80の上面21側には、P−型のベース領域14およびN+型の1つ以上の高濃度領域17が、上面21側から順番に形成されている。当該断面において、境界部90の上面21側には、P+型のコンタクト領域15およびP−型のベース領域14が、上面21側から順番に形成されている。
トランジスタ部70において、蓄積領域16の下面にはN−型のドリフト領域18が形成される。ドリフト領域18とベース領域14との間に、ドリフト領域18よりも高濃度の1つ以上の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
本例では、半導体基板10の内部においてトレンチ部に挟まれた領域をメサ部95とする。具体的には、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板10の部分であって、半導体基板10の上面21から、隣り合う2つのトレンチ部のどちらかの最も深い底部の深さまでの部分であってよい。一つ以上の蓄積領域16が、トランジスタ部70の各メサ部95に形成される。本例では、トランジスタ部70の各メサ部95には、半導体基板10の深さ方向の異なる位置に、第1の蓄積領域16−1、第2の蓄積領域16−2および第3の蓄積領域16−3が設けられている。蓄積領域16は、各メサ部95におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。
一つ以上の高濃度領域17が、ダイオード部80の各メサ部95に形成される。本例では、ダイオード部80のメサ部95には、半導体基板10の深さ方向の異なる位置に第1の高濃度領域17−1および第2の高濃度領域17−2が設けられている。高濃度領域17は、各メサ部95におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。境界部の各メサ部95には、高濃度領域17は形成されない。
ダイオード部80の各メサ部95に1つ以上のN+型の高濃度領域17を設けることで、ダイオード部80のP型のアノード層となるベース領域14と、N型のドリフト領域18との間に、ドリフト領域18より高濃度のN+型高濃度領域17が1つ以上挿入される。この1つ以上の高濃度領域17では、ドリフト領域18と比べて、電荷中性条件により正孔の濃度が減少する。すなわち、1つ以上の高濃度領域17が、ベース領域14からドリフト領域18への正孔の注入を抑制する。これにより、少数キャリアの注入効率が格段に低減する。高濃度領域17の個数が多いほど、少数キャリアの注入効率の低減が可能となる。これにより、ダイオード部80の逆回復特性、特にリカバリー電流が大きく低減される。
なお、少数キャリアの注入効率とは、本例では、エミッタ電極52をコレクタ電極24より高い電圧で印加したときに、エミッタ電極52を流れる全電流密度における、少数キャリアの電流密度(本例では正孔電流密度)の比を意味する。正孔電流密度と電子電流密度との和は、全電流密度である。
トランジスタ部70、ダイオード部80および境界部90のそれぞれにおいて、ドリフト領域18の下面にはN+型のバッファ領域20が形成される。バッファ領域20は、ドリフト領域18の下面側に形成される。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下には、下面23に露出するP+型のコレクタ領域22が形成される。ダイオード部80において、バッファ領域20の下には、下面23に露出するN+型のカソード領域82が形成される。境界部90において、バッファ領域20の下には、コレクタ領域22およびカソード領域82のいずれかが形成される。本例の境界部90において、バッファ領域20の下は、コレクタ領域22が形成される。なお、ダイオード部80は、下面23に垂直な方向においてカソード領域82と重なる領域とする。また、トランジスタ部70は、下面23に垂直な方向においてコレクタ領域22と重なる領域のうち、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を含む所定の単位構成が規則的に配置された領域とする。
上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が形成される。各トレンチ部は、上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達する。エミッタ領域12、コンタクト領域15、蓄積領域16および高濃度領域17の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部が不純物領域を貫通するとは、不純物領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間に不純物領域を形成したものも、トレンチ部が不純物領域を貫通しているものに含まれる。
ゲートトレンチ部40は、上面21側に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
ゲート導電部44は、深さ方向において、少なくとも隣接するベース領域14と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層にチャネルが形成される。
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、上面21側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。当該断面におけるダミートレンチ部30は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。
本例では、上面21側にエミッタ領域12が形成され、下面23側にコレクタ領域22が形成され、且つ、1つ以上の蓄積領域16が形成されている領域をトランジスタ部70とする。また、上面21側に1つ以上の高濃度領域17が形成され、且つ、下面23側にカソード領域82が形成されている領域をダイオード部80とする。また、トランジスタ部70とダイオード部80との間において、上面21側にエミッタ領域12が形成されておらず、ダイオード部80の下面23にカソード領域82が形成されていない領域を境界部90とする。
本明細書では、半導体基板10の深さ方向においてドーピング濃度を積分したものを、積分濃度と称する。トランジスタ部70の少なくとも一つのメサ部95において、1つ以上の蓄積領域16の積分濃度(すなわち、ベース領域14とドリフト領域18との間において、ドリフト領域18よりも高濃度のN型領域の積分濃度)が、ダイオード部80のメサ部95において、1つ以上の高濃度領域17の積分濃度(すなわち、ベース領域14とドリフト領域18との間において、ドリフト領域18よりも高濃度のN型領域の積分濃度)よりも高くてよい。
あるいは、蓄積領域16の積分濃度が、境界部90の高濃度領域17の積分濃度より高くてよい。この場合、例えばターンオフ時の少数キャリアを、トランジスタ部70よりも引抜きやすく、トランジスタ部70の特にダイオード部80側のメサ部95におけるラッチアップを抑制できる。
あるいは、境界部90の高濃度領域17の積分濃度が、ダイオード部80の高濃度領域17の積分濃度より高くてよい。この場合、エミッタ電極52にコレクタ電極24よりも高い電圧が印加されてダイオード部80が導通する動作モードのときに、境界部90の少数キャリア(本例では正孔)の注入を、ダイオード部80の少数キャリアの注入よりも抑えることができる。あるいは、境界部90の高濃度領域17の積分濃度が、ダイオード部80の高濃度領域17の積分濃度と略同じでもよく、低くてもよい。
トランジスタ部70の蓄積領域16の積分濃度と、境界部90の高濃度領域17の積分濃度は略同じであってよい。また、トランジスタ部70の蓄積領域16の積分濃度とダイオード部80の高濃度領域17の積分濃度は、略同じであってよい。
本例では、ダイオード部80の各メサ部95における当該積分濃度は同一である。ダイオード部80の全てのメサ部95が、同一のドーピング濃度分布を有していてもよい。トランジスタ部70の全てのメサ部95における積分濃度が、ダイオード部80の各メサ部95における積分濃度と同じか低くてよい。一方、トランジスタ部70の全てのメサ部95における積分濃度が、ダイオード部80の各メサ部95における積分濃度より高くてもよい。トランジスタ部70の全てのメサ部95が、同一の積分濃度を有してよい。また、トランジスタ部70の全てのメサ部95が、同一のドーピング濃度分布を有していてもよい。
トランジスタ部70およびダイオード部80において、蓄積領域16または高濃度領域17を設けることで、ダイオード部80が動作する場合において、上面21側からドリフト領域18への正孔の注入が抑制できる。このため、半導体装置100の逆回復特性を改善することができる。
本例の境界部90には、ベース領域14とドリフト領域18との間に、ドリフト領域18よりも高濃度の第1導電型の領域(高濃度領域17)が形成されなくてよい。あるいは、トランジスタ部70の蓄積領域16およびダイオード部80の高濃度領域17よりも、境界部90の高濃度領域17の個数が少ないかまたは積分濃度が小さくてよい。これにより、境界部90を介してドリフト領域18の正孔を引き抜くことができる。従って、トランジスタ部70のターンオフ時等において、ダイオード部80のドリフト領域18における正孔が、トランジスタ部70に流れることを抑制できる。図1および図2aの例においては、境界部90は1つのメサ部95を有しているが、境界部90は複数のメサ部95を有してもよい。
図2bは、図1におけるd−d'断面の他の一例を示す図である。図2bに示す半導体装置100は、図2aに示す半導体装置100において、境界部90のメサ部95に高濃度領域17−1が設けられる点で、図2aに示す半導体装置100と異なる。図2bは、高濃度領域17−1が1つ設けられる一例であるが、高濃度領域17は、境界部90の各メサ部95に複数形成されてよい。
境界部90の高濃度領域17の個数は、トランジスタ部70の蓄積領域16の個数より少なくてよい。この場合は、例えばターンオフ時の少数キャリアを、トランジスタ部70よりも引抜きやすく、トランジスタ部70の特にダイオード部80側のメサ部95におけるラッチアップを抑制できる。あるいは、境界部90の高濃度領域17の個数は、トランジスタ部70の蓄積領域16の個数と同じでもよく、多くてもよい。
境界部90の高濃度領域17の個数は、ダイオード部80の高濃度領域17の個数より少なくてよく、同じでもよい。すなわち、トランジスタ部70の蓄積領域16の個数をNt、境界部90の高濃度領域17の個数をNk、ダイオード部80の高濃度領域17の個数をNdとすると、Nt≧Nd≧Nkであってよい。また、Nt、NkおよびNdの関係は、Nd≧Nt≧Nkであってもよい。さらに、Nt>Nd≧Nkであってよく、Nt≧Nd>Nkであってよく、Nt>Nd>Nkであってもよい。あるいは、Nd>Nt≧Nkであってよく、Nd≧Nt>Nkであってよく、Nd>Nt>Nkであってよい。本例では、図2bに示すように、高濃度領域17−1が1つ形成される。
図2cは、図1におけるd−d'断面の他の一例を示す図である。図2cに示す半導体装置100は、図2aに示す半導体装置100において、境界部90のメサ部95に2つの高濃度領域17−1および高濃度領域17−2が設けられ、ダイオード部のメサ部95に1つの高濃度領域17−1が設けられる点で、図2aに示す半導体装置100と異なる。なお、本例においても、トランジスタ部70の蓄積領域16の個数は3個である。
境界部90の一つのメサ部95に設けられる高濃度領域17の個数は、図2cに示すように、ダイオード部80の高濃度領域17の個数より多くてよい。この場合、エミッタ電極52にコレクタ電極24よりも高い電圧が印加されてダイオード部80が導通する動作モードのときに、境界部90の少数キャリア(本例では正孔)の注入を、ダイオード部80の少数キャリアの注入よりも抑えることができる。
トランジスタ部70の蓄積領域16の個数と、境界部90の高濃度領域17の個数、およびダイオード部80の高濃度領域17の個数は、同じでもよい。すなわち、トランジスタ部70の蓄積領域16の個数をNt、境界部90の高濃度領域17の個数をNk、ダイオード部80の高濃度領域17の個数をNdとすると、Nt≧Nk≧Ndであってよい。また、Nt、NkおよびNdの関係は、Nk≧Nt≧Ndであってもよい。さらに、Nt≧Nk>Ndであってよく、Nt>Nk≧Ndであってよい。あるいは、Nk≧Nt>Ndであってよく、Nk>Nt≧Ndであってよく、Nk>Nt>Ndであってもよい。
さらに、半導体基板10の上面21から下面23に向かう深さ方向において、トランジスタ部70の蓄積領域16のドーピング濃度分布と、境界部90の高濃度領域17のドーピング濃度分布、およびダイオード部80の高濃度領域17のドーピング濃度分布は、略同じであってよい。この場合、トランジスタ部70の蓄積領域16、境界部90の高濃度領域17およびダイオード部80の高濃度領域17を、全て同一のイオン注入およびアニール処理で形成してもよいし、別の工程で形成してもよい。
図2dは、図1におけるd−d'断面の他の一例を示す図である。図2dに示す半導体装置100は、図2aに示す半導体装置100において、半導体基板10の深さ方向の中間位置よりも上面21側の深さ位置のドリフト領域18に、結晶欠陥層89が、トランジスタ部70の境界部90に隣接する領域からダイオード部80に渡り、Y軸方向に設けられる点で、図2aに示す半導体装置100と異なる。結晶欠陥層89は、一例として、ヘリウム等のライフタイムキラーを局所的に注入して形成してよい。
結晶欠陥層89は、結晶欠陥を含む層である。結晶欠陥は、再結合中心となる欠陥であればよく、例えば空孔、複空孔、転位、格子間原子、ヘリウム原子、金属原子などであってよい。このようにすることでも逆回復特性を改善することができる。結晶欠陥層89は、トレンチ部の配列方向(Y軸方向)において、ダイオード部80と境界部90に形成し、さらにトランジスタ部の所定のメサ部95を1つ以上含むように延伸してよい。また、結晶欠陥層89は、トレンチ部の延伸方向(X軸方向)において、上面視で、少なくともダミートレンチ部30の延伸方向の端を含むように、ダミートレンチ部30全体を覆うように配置されてよい。
図2eは、図2dのn−n'断面における結晶欠陥層89の濃度分布を示す図である。図2eに示すように、結晶欠陥層89は、結晶欠陥のピーク濃度Peの位置が半導体基板10の深さ方向の中間位置よりも上面21側の深さ位置のドリフト領域18にあればよい。すなわち、結晶欠陥層89のうち、結晶欠陥のピーク濃度Peの位置から深さ方向の下面23側の領域の一部が、半導体基板10の深さ方向の中間位置よりも下面23側に分布していてよい。
また、ダイオード部80における結晶欠陥層89の結晶欠陥濃度分布は、上面21からピーク濃度Peの位置まで裾を引く分布であってよい。この場合、結晶欠陥濃度分布は、下面23には届かなくてもよい。また、上面21からピーク濃度Peの位置まで裾を引く分布であれば、ピーク濃度Peの深さ位置が半導体基板10の深さ方向の中間位置よりも下面23側にあってもよい。本例では、ピーク濃度Peの深さ位置は、結晶欠陥層89の内部にある。
図2fは、本発明の実施形態に係る半導体装置150の断面の一例を示す図である。図2fに示す半導体装置150は、境界部90のメサ部95が複数設けられる点で、図2aに示す半導体装置100と異なる。また、半導体装置150は、半導体基板10の深さ方向の中間位置よりも上面21側の深さ位置のドリフト領域18に、結晶欠陥層89が、トランジスタ部70の境界部90に隣接する領域からダイオード部80に渡り、Y軸方向に設けられる点で、図2aに示す半導体装置100と異なる。結晶欠陥層89は、図2dの例と同様に、空孔、複空孔、転位、格子間原子、ヘリウム原子、などであってよい。
本例の半導体装置150は、境界部90のメサ部95のうち、ダイオード部80に隣接するメサ部95に、ダイオード部80の高濃度領域17の個数よりも多い個数の高濃度領域17が設けられる。また、本例の半導体装置150は、境界部90のメサ部95のうち、トランジスタ部70に隣接するメサ部95には、高濃度領域17が設けられない。
なお、境界部95のメサ部95のうち、ダイオード部80に隣接するメサ部95とトランジスタ部70に隣接するメサ部95とに挟まれるメサ部95には、ダイオード部80に隣接するメサ部95に設けられる高濃度領域17の個数よりも多い個数の高濃度領域17が設けられてよく、少ない個数の高濃度領域17が設けられてもよく、高濃度領域17が設けられなくてもよい。
本例の半導体装置150によれば、例えばターンオフ時の少数キャリアを、トランジスタ部70よりも引抜きやすくすることができる。このため、トランジスタ部70の特にダイオード部80側のメサ部95におけるラッチアップを抑制できる。
また、本例の半導体装置150によれば、境界部90のメサ部95のうち、ダイオード部80に隣接するメサ部95に、ダイオード部80の高濃度領域17の個数よりも多い個数の高濃度領域17が設けられるので、図2cに示す例と同様に、エミッタ電極52にコレクタ電極24よりも高い電圧が印加されてダイオード部80が導通する動作モードのときに、境界部90の少数キャリア(本例では正孔)の注入を、ダイオード部80の少数キャリアの注入よりも抑えることができる。
図2gは、本発明の実施形態に係る半導体装置150の断面の他の一例を示す図である。図2gに示す半導体装置150は、図2fに示す半導体装置150において、境界部90のメサ部95のうち、トランジスタ部70に隣接するメサ部95に、高濃度領域17−1が1つ設けられる点で、図2fに示す半導体装置150と異なる。これにより、ダイオード部80が導通する動作モードのときに、当該メサ部95からの少数キャリア(本例では正孔)の注入を、ダイオード部80の少数キャリアの注入よりも抑えることができる。
また、図2gに示すように、境界部90のメサ部95のうち、トランジスタ部70に隣接するメサ部95には、トランジスタ部70に設けられる蓄積領域16の個数よりも少ない個数の高濃度領域17が設けられてよい。この場合は、例えばターンオフ時の少数キャリアを、トランジスタ部70よりも引抜きやすく、トランジスタ部70の特にダイオード部80側のメサ部95におけるラッチアップを抑制できる。
トランジスタ部70の蓄積領域16の個数をNt、境界部90のうちトランジスタ部70に隣接するメサ部95に設けられる高濃度領域17の個数をNkt、境界部90のうちダイオード部80に隣接するメサ部95に設けられる高濃度領域17の個数をNkd、ダイオード部80の高濃度領域17の個数をNdとすると、図2fおよび図2gの例においては、Nkd≧Ndであればよく、Nt≧Nktであればよい。また、NktとNkdとの関係は、Nkt≧Nkdであってもよいし、Nkd≧Nktであってもよい。
一方、ライフタイムキラーを注入すると、トランジスタ部70におけるオン電圧―オフ損失のトレードオフが悪化する場合がある。本例では、ライフタイムキラーを用いないか、または、少なくすることができるので、オン電圧―オフ損失特性の悪化を抑制しつつ、逆回復特性を改善できる。また、ライフタイムキラーに起因する特性ばらつき、および、リーク電流を抑制できる。また、ライフタイムキラー注入用のメタルマスクよりも単価が安いレジストマスクを用いることで、製造コストを低減できる。
なお、ダイオード部80における高濃度領域17の積分濃度が高くなりすぎると、ダイオード部80における順方向電圧に対する、逆回復時のスイッチング損失と、オン損失とのトレードオフが悪化する場合がある。これに対して、ダイオード部80における高濃度領域17の積分濃度を、トランジスタ部70における蓄積領域16の積分濃度よりも低くすることで、トレードオフの悪化を抑制できる。ダイオード部80における当該積分濃度は、トランジスタ部70における当該積分濃度の70%以下であってよく、50%以下であってもよい。
図3は、図2aのe−e'断面およびf−f'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。e−e'断面はトランジスタ部70のメサ部95における断面であり、f−f'断面はダイオード部80のメサ部95における断面である。
それぞれの蓄積領域16および高濃度領域17において、半導体基板10の深さ方向におけるドーピング濃度分布は1つのピークを有する。蓄積領域16または高濃度領域17が半導体基板10の深さ方向に複数個形成される場合は、蓄積領域16および高濃度領域17は、当該深さ方向のドーピング濃度分布において、複数のピーク(極大値)と、深さ方向において当該複数のピークに挟まれた位置に極小値を備える。言い換えると、複数の極小値の間の領域を、一つの蓄積領域16または一つの高濃度領域17としてよい。それぞれの蓄積領域16および高濃度領域17は、上面21または下面23から不純物を注入して形成してよい。
図3においては、エミッタ領域12からドリフト領域18の上端までのドーピング濃度分布を示す。図3のように、不純物の濃度を示す図の縦軸は対数軸である。縦軸における一つの目盛が10倍を示している。本明細書においてドーピング濃度とは、ドナーまたはアクセプタ化した不純物の濃度を指す。図3に示すドーピング濃度は、ドナーおよびアクセプタの濃度差に対応する。
本例のトランジスタ部70の各メサ部95は、複数の蓄積領域16を有する。図3の例では、トランジスタ部70は、第1の蓄積領域16−1、第2の蓄積領域16−2のドーピング濃度、および、第3の蓄積領域16−3を有する。第1の蓄積領域16−1のドーピング濃度をD1、第2の蓄積領域16−2のドーピング濃度をD2、第3の蓄積領域16−3のドーピング濃度をD3とする。ドーピング濃度の値は、ピーク値を用いてよい。
また、それぞれの蓄積領域16の境界におけるドーピング濃度Dvは、蓄積領域16のドーピング濃度分布の極小値である。ドーピング濃度Dvは、ドリフト領域18のドーピング濃度Ddより大きい。ドーピング濃度Dvは、ドーピング濃度D1の1/10以下であってよく、1/100以下であってもよい。
複数の蓄積領域16において、それぞれの蓄積領域16の境界も複数あってよい。それぞれの蓄積領域16の境界におけるドーピング濃度の極小値(Dv)も複数あってよい。複数のドーピング濃度の極小値(Dv)は、それぞれ異なる値であってもよい。本例では、2つのドーピング濃度Dvは略同じ値である。
本例のダイオード部80の各メサ部95は、複数の高濃度領域17を有する。ただし、ダイオード部80の各メサ部95において、深さ方向に形成された高濃度領域17の数は、トランジスタ部70の各メサ部95において、深さ方向に形成された蓄積領域16の数よりも少なくてよい。これにより、ダイオード部80の各メサ部95における1つ以上の高濃度領域17の積分濃度を、トランジスタ部70の各メサ部95における1つ以上の蓄積領域16の積分濃度よりも、容易に小さくできる。図3の例では、ダイオード部80は、第1の高濃度領域17−1および第2の高濃度領域17−2を有する。第1の高濃度領域17−1のドーピング濃度をD4、第2の高濃度領域17−2のドーピング濃度をD5とする。
ダイオード部80のそれぞれの高濃度領域17は、トランジスタ部70のいずれかの蓄積領域16と、同一の深さ位置に設けられていてよい。各領域の深さ位置とは、当該領域においてドーピング濃度分布がピークとなる位置であってよい。本例では、第1の高濃度領域17−1が第1の蓄積領域16−1と同一の深さ位置に形成され、第2の高濃度領域17−2が第2の蓄積領域16−2と同一の深さ位置に形成されている。なお同一の深さ位置とは、所定の誤差を有していてよい。例えば、ピークの位置が、当該ピークを含む山形のドーピング濃度分布の半値幅の10%以内の誤差を有していても、同一の深さ位置とすることができる。それぞれの領域を同一の深さ位置に形成することで、製造工程を簡略化することが容易となる。
また、ダイオード部80のそれぞれの高濃度領域17のドーピング濃度は、トランジスタ部70において同一の深さに設けられている蓄積領域16のドーピング濃度と等しくてよい。ここでドーピング濃度とは、当該領域におけるドーピング濃度のピーク値であってよい。本例では、第1の高濃度領域17−1のドーピング濃度D4は、第1の蓄積領域16−1のドーピング濃度D1と等しい。また、第2の高濃度領域17−2のドーピング濃度D5は、第2の蓄積領域16−2のドーピング濃度D2と等しい。なおドーピング濃度が等しいとは、所定の誤差を有してよい。例えば、ドーピング濃度が10%以内の誤差を有していても、同一のドーピング濃度とすることができる。また、2つの高濃度領域17の境界におけるドーピング濃度Dvは、2つの蓄積領域16の境界におけるドーピング濃度Dvと等しくてよい。
このように、それぞれの高濃度領域17の深さ位置およびドーピング濃度を、いずれかの蓄積領域16と同一にすることで、高濃度領域17を、蓄積領域16と同一の製造工程で形成できる。このため、製造工程を簡略化できる。
トランジスタ部70の各メサ部95における複数の蓄積領域16のうち、いずれかの蓄積領域16のドーピング濃度は、異なる深さ位置に形成された他の蓄積領域16のドーピング濃度よりも高くてよい。本例のトランジスタ部70においては、最も深い位置に設けられた第3の蓄積領域16−3のドーピング濃度D3は、トランジスタ部70の他の蓄積領域16のいずれのドーピング濃度(D1、D2)よりも高い。ドーピング濃度D3は、ドーピング濃度D1の3倍以上、7倍以下程度であってよい。ドーピング濃度D1およびD2は同一であってよい。
なお、トランジスタ部70の各メサ部95における複数の蓄積領域16において、複数のドーピング濃度Dvは、上面21から深くなるにつれて低くなってよい。ドーピング濃度Dvは、ピーク濃度D1、D2、D3に対して、ドーピング濃度分布の谷に相当する。複数のドーピング濃度の谷の濃度が深さ方向に対して低くなることで、ゲートコレクタ間における容量を所定の大きさに調節することができる。
ダイオード部80は、トランジスタ部70の蓄積領域16のうち、最もドーピング濃度が高い領域に対応する高濃度領域17を有さなくてよい。これにより、ダイオード部80の高濃度領域17の積分濃度を、トランジスタ部70における蓄積領域16の積分濃度よりも十分低くすることができる。本例では、ダイオード部80は、トランジスタ部70において最も深い位置に設けられた第3の蓄積領域16−3と同一の深さにおいては、高濃度領域17を有さない。
ダイオード部80の高濃度領域17を3つ以上形成する場合は、複数のドーピング濃度Dvは、上面21から深くなるにつれて低くなってよい。境界部90の高濃度領域17を3つ以上形成する場合は、複数のドーピング濃度Dvは、上面21から深くなるにつれて低くなってよい。
一例として、それぞれの蓄積領域16のドーピング濃度のピーク位置は、深さ方向において等間隔に配置される。他の例では、それぞれの蓄積領域16のドーピング濃度のピーク位置は、深さ方向において不等間隔に配置されてもよい。なお、トランジスタ部70において複数の蓄積領域16を設けることで、ゲート導電部44と、コレクタ電極24との間のターンオン時の過渡的な容量を増加させることができる。これにより、トランジスタ部70におけるオン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善しつつ、ターンオン損失を低減することができる。
図4は、ターンオン時におけるコレクタ電流Icの波形例を示す図である。波形93は、蓄積領域16を設けない場合のコレクタ電流Icを示している。波形94は、第1の蓄積領域16−1を設けた場合のコレクタ電流Icを示している。第1の蓄積領域16−1は、ベース領域14の近傍に設けられるので、ゲートコレクタ間における負性容量を増加させる。このため、ターンオン時のコレクタ電流Icのdi/dtが増加する。第1の蓄積領域16−1を設けることで、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善することができるが、ターンオン時のdi/dtが増大するので、ゲート抵抗を大きくして、di/dt増加を抑えると、ターンオン損失が増大してしまう。
波形91は、第1の蓄積領域16−1および第3の蓄積領域16−3を設けた場合のコレクタ電流Icを示している。第3の蓄積領域16−3は、ベース領域14から離れた位置に設けられるので、ゲートコレクタ間における容量を増加させる。このため、ターンオン時のコレクタ電流Icのdi/dtが減少する。従って、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善しつつ、ターンオン損失を低減することができる。
波形92は、第1の蓄積領域16−1、第2の蓄積領域16−2および第3の蓄積領域16−3を設けた場合のコレクタ電流Icを示している。第2の蓄積領域16−2を設けることで、ゲートコレクタ間の容量が更に増大する。このため、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善しつつ、ターンオン損失を更に低減することができる。
図5は、図2aのe−e'断面およびf−f'断面におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。本例において、トランジスタ部70におけるドーピング濃度分布は、図3の例と同一である。
本例のダイオード部80は、それぞれのメサ部95において一つの高濃度領域17を有する。つまり、ベース領域14およびドリフト領域18の間において、ドリフト領域18よりも高濃度のN型のドーピング濃度分布が、1つのピークを有する。本例の高濃度領域17は、いずれの蓄積領域16よりも、深さ方向において長い範囲に形成されてよい。高濃度領域17のドーピング濃度D6は、高濃度領域17の積分濃度が、トランジスタ部70における1つ以上の蓄積領域16の積分濃度よりも低くなるように設定される。高濃度領域17のドーピング濃度D6は、第1の蓄積領域16のドーピング濃度D1よりも低くてよく、高くてもよい。
このような構成によっても、トランジスタ部70におけるオン電圧―オフ損失特性の悪化を抑制しつつ、逆回復特性を改善できる。また、ダイオード部80における順方向電圧に対する、逆回復時のスイッチング損失と、オン損失とのトレードオフの悪化を抑制できる。
図6は、トランジスタ部70の所定のメサ部95および当該メサ部95に接するゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30において、第1の蓄積領域16−1、第2の蓄積領域16−2および第3の蓄積領域16−3を備える場合におけるターンオン時の電子電流および変位電流を示す図である。チャネルを通過した電子は、第1の蓄積領域16−1において配列方向(X軸方向)に行きかける。ただし本例においては、第1の蓄積領域16−1の下方に第2の蓄積領域16−2および第3の蓄積領域16−3が設けられている。
本例において、電子電流にとってのインピーダンスは、第1の蓄積領域16−1の中央近傍からゲートトレンチ部40近傍に戻って第2の蓄積領域16−2に流れる経路よりも、第1の蓄積領域16−1から第2の蓄積領域16−2に直接流れる経路の方が低い。同様に、第2の蓄積領域16−2の中央近傍からゲートトレンチ部40近傍に戻って第3の蓄積領域16−3に流れる経路よりも、第2の蓄積領域16−2から第3の蓄積領域16−3に直接流れる経路の方が低い。
蓄積領域16のそれぞれの下方のうち、ゲートトレンチ部40に隣接するホール高濃度領域87には正孔が蓄積されやすい。また、電子電流がゲートトレンチ部40の近傍ではなく、メサ部95中央近傍を流れることで、ホール高濃度領域87への正孔の蓄積が促進される。このため、電子電流がメサ部95中央近傍に流れることが促進される。図6においては、正孔が蓄積されたホール高濃度領域87を模式的に示しているが、ホール高濃度領域87は、ゲートトレンチ部40と半導体基板10との境界近傍だけに存在していてもよい。
上述したように、本例の電子電流は、ゲートトレンチ部40近傍に戻ることなく、ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30に挟まれたメサ部95の中央付近を下方に進む。つまり、本例の電子電流は、ゲートトレンチ部40近傍ではなくメサ部95の中央付近を流れる。この電子電流がメサ部95の中央付近を流れる効果は、複数の蓄積領域16−1〜16−3を深さ方向に配列することで生じる。
電子電流がメサ部95の中央付近を流れると、メサ部95の底部近傍における正孔分布は、メサ部95中央付近で分断される。このため電子電流の経路よりもダミートレンチ部30側の正孔は、ゲートトレンチ部40側には流れない。このメサ部95中央部における正孔分布の分断が、ゲートトレンチ部40の下端における正孔の蓄積を抑制する。その結果、変位電流を小さくできる。変位電流を小さくできるので、ゲート導電部44の充電も小さくなり、ゲート電極Vgeの瞬間的な増加も抑制される。これにより、コレクタ電極24とエミッタ電極52との間の電圧減少率(dV/dt)も抑制できる。
図6の例における正孔分布は、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30間の正孔分布が電子電流により分断されたことに起因すると考えられる。また、当該正孔分布に起因して、ターンオン時には、ダミートレンチ部30の下端近傍からゲートトレンチ部40の下端近傍へ流れる変位電流を低減できる。
なお、第2の蓄積領域16−2および第3の蓄積領域16−3は、ダミートレンチ部30に接していなくてもよい。この場合、正孔は、ダミートレンチ部30の下端からダミートレンチ部30の側部における第1の蓄積領域16−1の直下まで存在することができる。これにより、ターンオフ時における、エミッタ電極52への正孔の引き抜きを促進することができる。
図7aは、図1におけるd−d'断面の他の例を示す図である。本例において、ダイオード部80および境界部90の構造は、図1から図5に示したいずれかの例と同一である。
本例のトランジスタ部70のメサ部95のうち、最もダイオード部80側に設けられたメサ部95−1における1つ以上の蓄積領域16の積分濃度は、トランジスタ部70の他のメサ部95(例えば、メサ部95−2)における1つ以上の蓄積領域16の積分濃度よりも低い。これにより、隣接するメサ部95の間における積分濃度の変化を緩やかにすることができ、電界または電流等が集中することを抑制できる。トランジスタ部70のメサ部95のうち、ダイオード部80側の複数のメサ部95において、ダイオード部80に近いほど積分濃度が減少してもよい。
また、メサ部95−1における1つ以上の蓄積領域16の積分濃度は、ダイオード部80のメサ部95−3における1つ以上の高濃度領域17の積分濃度よりも高くてよい。トランジスタ部70の端のメサ部95−1における積分濃度を、ダイオード部80のメサ部95−3における積分濃度よりも高くすることで、トランジスタ部70からダイオード部80に正孔が注入されることを抑制できる。
図7bは、図7aにおけるe−e'断面、f−f'断面およびg−g'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。e−e'断面は、メサ部95−2における断面であり、f−f'断面は、メサ部95−3における断面であり、g−g'断面は、メサ部95−1における断面である。
本例においては、トランジスタ部70の端のメサ部95−1における蓄積領域16の個数は、トランジスタ部70の他のメサ部95−2における蓄積領域16の個数よりも少ない。また、ダイオード部80における高濃度領域17の個数は、メサ部95−1における蓄積領域16の個数よりも少ない。このような構成により、それぞれのメサ部95における積分濃度を容易に調整できる。
本例では、メサ部95−1におけるそれぞれの蓄積領域16は、メサ部95−2におけるいずれかの蓄積領域16と同一の深さ位置に設けられる。同一の深さに形成された蓄積領域16のドーピング濃度は同一である。図7bの例におけるメサ部95−1には、メサ部95−2に設けられた蓄積領域16のうち、最もドーピング濃度が高い第3の蓄積領域16−3に対応する蓄積領域16が形成されていない。他の例では、メサ部95−1には、最もドーピング濃度が高い第3の蓄積領域16−3に対応する蓄積領域16が形成されていてもよい。この場合、メサ部95−1には、第1の蓄積領域16−1または第2の蓄積領域16−2に対応する蓄積領域16が形成されない。
メサ部95−3における高濃度領域17は、メサ部95−1におけるいずれかの蓄積領域16と同一の深さ位置に設けられる。本例では、第1の蓄積領域16−1と同一の深さ位置に設けられる。
メサ部95−1、メサ部95−2およびメサ部95−3において、同一の深さ位置に形成された高濃度のN型領域は、同一のドーピング濃度を有してよい。図7bの例においては、D1=D6=D8、D2=D7である。このような構成により、製造工程を簡略化することができる。
なお、それぞれのメサ部95における高濃度N型領域のドーピング濃度分布は、図7bに示した例に限定されない。例えば、メサ部95−1と、メサ部95−3には、それぞれ一つの高濃度N型領域が形成されてよい。この場合、メサ部95−1における高濃度N型領域のドーピング濃度は、メサ部95−3における高濃度N型領域のドーピング濃度よりも高い。
図8は、図1におけるd−d'断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、図2aから図7bにおいて説明したいずれかの半導体装置100の構成に加え、フローティング領域84を更に備える。フローティング領域84は、ダイオード部80において、下面23側に設けられる。本例において下面23側とは、半導体基板10の深さ方向における中央と、カソード領域82の上端との間の領域を指す。本例のフローティング領域84は、カソード領域82の上端と接して形成されている。
フローティング領域84は、電気的にフローティング状態である、第2導電型(本例ではP+)の領域である。電気的にフローティング状態とは、コレクタ電極24およびエミッタ電極52のいずれにも電気的に接続されていない状態を指す。フローティング領域84を設けることにより、カソード領域82からの電子の注入を抑制できる。これにより、半導体基板10の裏面側においてライフタイムキラーを形成しなくとも、半導体基板10の深さ方向におけるキャリア分布を調整できる。このため、コストを低減することができ、また、ライフタイムキラーに起因するリーク電流を低減できる。
なお、フローティング領域84は、カソード領域82を部分的に覆うように形成されている。つまり、カソード領域82の一部分は、フローティング領域84に覆われていない。これによりフローティング領域84を設けても、ダイオード部80がダイオード動作できる。電子の注入を抑制すべく、フローティング領域84は、カソード領域82の上面の半分より大きい範囲を覆って形成されていてよい。
図9は、フローティング領域84の配置例を説明する断面図である。図9においては、フローティング領域84の近傍を拡大して示している。なお、図9においては、コレクタ電極24を省略している。なお、図9においてはダイオード部80に隣接して境界部90が設けられているが、他の例では、ダイオード部80に隣接してトランジスタ部70が設けられていてもよい。
本例においては、下面23と平行な面内において、コレクタ領域22およびカソード領域82の境界位置をP1とする。図9においては、d−d'断面と平行な断面における境界位置をP1としている。一例としてd−d'断面は、下面23と垂直であり、且つ、各トレンチ部の配列方向と平行な面である。
また、下面23と平行な面内において、フローティング領域84の端部位置をP2とする。端部位置P2は、フローティング領域84のうち、境界位置P1に最も近い端部位置である。下面23と平行な面内における、境界位置P1から端部位置P2までの距離をL1とする。距離L1は、d−d'断面と平行な断面における距離L1であってよい。
また、下面23と平行な面内において、フローティング領域84の幅をL2とする。フローティング領域84の幅L2は、境界位置P1および端部位置P2を結ぶ直線方向におけるフローティング領域84の幅である。直線方向は、トレンチ部の配列方向と平行な方向であってよい。
本例において、境界位置P1から端部位置P2までの距離L1は、フローティング領域84の幅L2よりも小さい。距離L1は、幅L2の半分以下であってよく、1/4以下であってもよい。距離L1は、0より大きくてよい。つまり、フローティング領域84は、コレクタ領域22とつながっていなくともよい。他の例では、フローティング領域84は、コレクタ領域22の上まで形成されていてもよい。
なお、当該断面においてフローティング領域84が複数設けられている場合、フローティング領域84の幅L2は、複数のフローティング領域84の幅の平均値を用いてよい。距離L1を小さくすることで、ダイオード部80の端部において、カソード領域82からの電子の注入を抑制できる。
また、ダイオード部80は、フローティング領域84と同一の深さ位置においてフローティング領域84が設けられていない開口領域85を有する。開口領域85は、フローティング領域84に挟まれた領域を指してよい。一例として開口領域85は、N型の領域である。開口領域85のドーピング濃度は、ドリフト領域18またはバッファ領域20のドーピング濃度と同一であってよい。開口領域85は、フローティング領域84が形成されずに残存したドリフト領域18またはバッファ領域20であってよい。
本例では、前述した直線方向における開口領域85の幅をL3とする。境界位置P1から端部位置P2までの距離L1は、開口領域85の幅L3より小さくてよい。距離L1は、幅L3の半分以下であってよく、1/4以下であってもよい。また、幅L2は、幅L3の2倍以上であってよく、3倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。
なお、当該断面において開口領域85が複数設けられている場合、開口領域85の幅L3は、複数の開口領域85の幅の平均値を用いてよい。距離L1を小さくすることで、ダイオード部80の端部において、カソード領域82からの電子の注入を抑制できる。
また、フローティング領域84の深さ方向の長さをL4とする。深さ方向とは、下面23と垂直な方向を指す。境界位置P1から端部位置P2までの距離L1は、フローティング領域84の深さ方向の長さL4よりも大きくてよい。距離L1は、長さL4の倍以上であってよく、3倍以上であってもよい。L4は、1μm以下であってよく、0.75μm以下であってもよい。また、半導体基板10の深さ方向および下面23と平行な方向の少なくとも一方におけるフローティング領域84のドーピング濃度分布は、ガウス分布かそれに近い分布で良い。フローティング領域84のピーク濃度は、5×1016/cm3以上、1×1018/cm3以下であってよく、本例では3×1017/cm3である。
図10は、ダイオード部80におけるフローティング領域84を、半導体基板10の下面23側から半導体基板10の上面21に投影したときの配置例を示す上面図である。フローティング領域84は、半導体基板10の上面21において、ダミートレンチ部30が設けられた領域に配置されている。本例のフローティング領域84は、X軸方向において、ダミートレンチ部30の長手方向(延伸方向)の端の位置、またはダミートレンチ部30がエミッタ電極52に電気的に接続する接続部25の位置を超える位置まで配置されている。本例のフローティング領域84は、ゲートランナー48またはゲート金属層50と重なる位置までは達していない。トレンチ部の延伸方向におけるフローティング領域84の端部は、ウェル領域11と重なる位置に設けられてよい。
本例のカソード領域82は、コンタクトホール54の端に形成されたコンタクト領域15よりも内側(+X軸方向の向き)に位置する。ダミートレンチ部30の延伸方向におけるフローティング領域84の端部は、コンタクトホール54のX軸方向の端より外周側(−X軸方向の向き)に位置している。
図11は、ダイオード部80におけるフローティング領域84の配置例を示す上面図である。図10はダイオード部80の一部を示していたが、図11においては、ダイオード部80においてダミートレンチ部30が設けられた領域全体を示している。ダイオード部80は、カソード領域82が形成された領域としてもよい。
本例では、半導体基板10の上面において、複数のフローティング領域84が離散的に配置されている。それぞれのフローティング領域84の間には、開口領域85が配置されている。それぞれの開口領域85は互いに接続されていてよい。
半導体基板10の上面において、フローティング領域84および開口領域85の総面積に対する、フローティング領域84の面積比は、80%以上であってよく、90%以上であってよく、95%以上であってもよい。フローティング領域84の距離L2は、5μm以上1000μm以下でよく、本例では720μmである。隣り合うフローティング領域84の間の開口領域85の距離L3は、1μm以上200μm以下でよく、本例では180μmである。
図12は、ダイオード部80におけるフローティング領域84の他の配置例を示す上面図である。本例では、半導体基板10の上面において、複数の開口領域85が離散的に配置されている。それぞれの開口領域85の間には、フローティング領域84が配置されている。それぞれのフローティング領域84は互いに接続されていてよい。ダイオード部80は、カソード領域82が形成された領域としてよい。
半導体基板10の上面において、フローティング領域84および開口領域85の総面積に対する、フローティング領域84の面積比は、80%以上であってよく、90%以上であってよく、95%以上であってもよい。フローティング領域84の距離L2は、5μm以上1000μm以下でよく、本例では720μmである。隣り合うフローティング領域84の間の開口領域85の距離L3は、1μm以上200μm以下でよく、本例では180μmである。
図13は、図1におけるd−d'断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、図2aから図7bにおいて示したいずれかの半導体装置100の構成に対して、第2導電型(本例ではP+)のダミー領域86を更に備える。ダイオード部80の下面23においては、ダミー領域86と、カソード領域82とが交互に露出するように設けられている。ダミー領域86は、コレクタ電極24と電気的に接続されていてよい。
このような構成によっても、カソード領域82からの電子の注入を抑制できる。下面23においてダミー領域86が形成される面積は、カソード領域82が形成される面積よりも大きくてよい。
図14は、図1におけるd−d'断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、図2aから図7bにおいて示したいずれかの半導体装置100の構成に対して、ライフタイムキラー88を更に備える。ライフタイムキラー88は、下面23側に形成されている。本例において下面23側とは、半導体基板10の深さ方向における中央と、下面23との間の領域を指す。
また、ライフタイムキラー88は、半導体基板10の深さ方向において局所的に形成されている。つまり、ライフタイムキラー88が形成された領域は、半導体基板10の他の領域に比べて欠陥密度が高くなっている。本例のライフタイムキラー88は、所定の深さ位置に注入されたヘリウムである。ヘリウムを注入することで、半導体基板10の内部に結晶欠陥を形成できる。ライフタイムキラー88は、トランジスタ部70、ダイオード部80および境界部90の全面に形成されてよい。
なお、上面21側には、局所的なライフタイムキラーが設けられていなくてよい。本例において上面21側とは、半導体基板10の深さ方向における中央と、トレンチ部の底部位置との間の領域を指す。本例では、上面21側に、ヘリウム濃度(または結晶欠陥密度)が局所的に高い領域が形成されていない。
上述したように、半導体装置100はトランジスタ部70およびダイオード部80の各メサ部95に高濃度N型領域を設けているので、上面21側にライフタイムキラーによる結晶欠陥層を形成しないか、または、結晶欠陥層の結晶欠陥密度を少なくすることができるので、ダイオード部80の少数キャリアの注入効率を調整することができる。このため、ライフタイムキラーを形成するためのコストを低減でき、また、ライフタイムキラーに起因するリーク電流等を抑制できる。
なお、下面23側においても、局所的なライフタイムキラーが形成されていなくともよい。この場合、下面23側は、図8または図13に示したような構造を有することが好ましい。これにより、ライフタイムキラーを形成するためのコストを更に低減でき、また、ライフタイムキラーに起因するリーク電流等を更に抑制できる。
図15は、ライフタイムキラー88の他の配置例を示す図である。本例のダイオード部80には、フローティング領域84および開口領域85が設けられている。本例では、フローティング領域84の上方の少なくとも一部の領域には、ライフタイムキラー88が設けられており、開口領域85の上方の少なくとも一部の領域には、ライフタイムキラー88が設けられていない。これにより、フローティング領域84から注入されるキャリアのライフタイムを調整できる。また、開口領域85の上方においては、ライフタイムキラーの注入に起因する欠陥の密度を低減できる。
フローティング領域84の上方全体にわたって、ライフタイムキラー88が設けられてよい。また、開口領域85の上方全体にわたって、ライフタイムキラー88が設けられていなくともよい。
本例の半導体装置100は、深さ方向における位置が異なる複数のバッファ領域20を有する。複数のバッファ領域20は、プロトン等の不純物を、飛程を変更して複数回注入することで形成できる。図15においては、それぞれのバッファ領域20の、ドーピング濃度の深さ方向におけるピーク位置を示している。それぞれのバッファ領域20の間のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高くてよい。
また、図15においては、ライフタイムキラー88の濃度の、深さ方向におけるピーク位置をバツ印で示している。ライフタイムキラー88のピーク位置は、バッファ領域20のピーク位置とは異なっていることが好ましい。これにより、ライフタイムキラー88における欠陥が、バッファ領域20におけるプロトンで終端されてしまうことを抑制できる。ライフタイムキラー88の濃度のピーク位置は、2つのバッファ領域20のドーピング濃度のピーク位置の間に配置されてよい。
図16は、ダイオード部80の構成の一例を示す図である。本例のダイオード部80は、それぞれのメサ部95に、二つ以上の高濃度領域17が設けられている。一例としてそれぞれのメサ部95には、二つの高濃度領域17が設けられてよい。
また、下面23側の構造は、図1から図15に示したいずれかのダイオード部80と同一であってよい。図16の例のダイオード部80は、図8に示した例と同様に、フローティング領域84および開口領域85を有する。
なお、図1から図15においては、トランジスタ部70、境界部90およびダイオード部80を備える半導体装置100を説明した。他の例では、半導体装置100は、ダイオード部80だけを備えていてもよい。
図17は、ダイオード部80の構成の他の例を示す図である。本例のダイオード部80は、高濃度領域17の配置以外は、図16に示したダイオード部80と同一である。本例では、フローティング領域84の上方に配置されたメサ部95のうちの少なくとも一つのメサ部95における高濃度領域17の積分濃度が、開口領域85の上方に配置されたメサ部95のうちの少なくとも一つのメサ部95における高濃度領域17の積分濃度よりも低い。一例として、メサ部95の全体がフローティング領域84の上方に配置されているメサ部95は、メサ部95の全体が開口領域85の上方に配置されているメサ部95よりも、高濃度領域17の積分濃度が低い。
図17の例では、フローティング領域84の上方に配置されたメサ部95において深さ方向に配置された高濃度領域17の個数が、開口領域85の上方に配置されたメサ部95において深さ方向に配置された高濃度領域の個数よりも少ない。このような構造により、フローティング領域84を設けた部分と、開口領域85を設けた部分とで、ダイオード特性の差異を小さくできる。
図18は、半導体装置100の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、フローティング領域84を備えており、蓄積領域16および高濃度領域17を備えていない。他の構造については、図1から図17に示した半導体装置100と同一である。なお、上面21側および下面23側の少なくとも一方において、局所的なライフタイムキラーが設けられてよく、設けられていなくともよい。また、境界部90は設けられていなくともよい。
図19は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置200の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置200は、ダイオード部80の上面におけるベース領域14とコンタクト領域15が、トレンチ部の延伸方向に沿ってメサ部95の上面に露出するように、交互に隣接して設けられる点で、図1に示す半導体装置100と異なる。一例として、ベース領域14のトレンチ部延伸方向の幅は、コンタクト領域15のトレンチ部延伸方向の幅よりも大きく設けられてよい。
ダイオード部80において、トレンチ部の延伸方向に沿ったコンタクト領域15の長さをLA、トレンチ部の延伸方向に沿ったベース領域14をLBとしたときに、LA>LBであってよい。例えば定格電流密度の2〜3倍でdIAK/dVAKが大きくなり、サージ電流耐量を強く確保できる。
あるいは、ダイオード部80において、トレンチ部の延伸方向に沿ったコンタクト領域15の長さをLA、トレンチ部の延伸方向に沿ったベース領域14をLBとしたときに、LA<LBであってもよい。例えば定格電流密度の5〜10倍でdIAK/dVAKが大きくなるので、定格電流密度程度の逆回復では逆回復電流の低減効果を維持し、定格電流密度の5倍以上のサージ電流に対してはサージ電流耐量を強く確保できる。例えば、長さLAを長さLBで割った比率、LA/LBは、10%以上90%以下であってもよい。
カソード領域82のX軸方向の外周側の端の位置を上面21に投影した位置には、X軸方向で隣り合うコンタクト領域15に挟まれていて、コンタクト領域15が形成されていない領域があってよい。カソード領域82のX軸方向の外周側の端の位置を上面21に投影した位置よりも外周側(−X軸方向)のメサ部95表面には、ベース領域14が露出していてよい。
図20は、図19におけるd−d'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置200は、当該断面において、ベース領域14上にコンタクト領域15を有する点で、図2aに示す半導体装置100と異なる。ダイオード部80の上面を、ベース領域14およびコンタクト領域15が隣接する交互配置とすることで、大電流時の順電圧Vfを小さくすることができる。
図21aは、本発明の他の実施形態に係る半導体装置300の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置300は、コンタクトホール54が、半導体基板10の上方に、ダミートレンチ部30のY軸方向負側からY軸方向正側に渡って設けられる点で、図1に示す半導体装置100と異なる。
トランジスタ部70の境界部90に隣接する領域からダイオード部80までは、ゲートトレンチ部40が設けられず、ダミートレンチ部30が設けられる。このため、トランジスタ部70の境界部90に隣接する領域からダイオード部80にわたり、コンタクトホール54のY軸方向の幅は、トランジスタ部70のうち境界部90を除く領域に設けられるコンタクトホール54よりも広い。
なお、ダイオード部80のX軸方向の端に形成されたコンタクト領域15のうち+X軸方向(半導体装置の内周側)の端の位置は、図1に示す半導体装置100と同様に、カソード領域82を半導体基板10のおもて面に投影した位置よりも、−X軸方向(外周側)にあってよい。ダイオード部80のベース領域14のおもて面における面積は、カソード領域82を半導体基板10のおもて面に投影した領域よりも、大きくてよい。
ダイオード部80のコンタクトホール54は、ダミートレンチ部30の配列方向において、複数のメサ部95およびダミートレンチ部30にわたって形成されてよい。当該コンタクトホール54が、ダイオード部80における複数のメサ部95およびダミートレンチ部30にわたって形成されることで、ダイオード部80におけるエミッタ電極52との接触面積が広くなる。このため、層間絶縁膜38の直下にキャリアが蓄積され難くなるので、少数キャリアの注入効率を低くできる。
ダイオード部80のコンタクトホール54は、境界部90に延伸してよい。さらに、ダイオード部80のコンタクトホール54は、境界部90を含めて、トランジスタ部70のゲートトレンチ部40のうち、Y軸方向において最もダイオード部80側に位置するゲートトレンチ部40に、ダイオード部80側で接するメサ部95まで延伸してよい。これにより、境界部90を含めたトランジスタ部70とダイオード部80の境界の領域から、蓄積されたキャリアを引き抜きやすくできる。
図21bは、図21aにおけるs−s'断面の一例を示す図である。s−s'断面は、本例の半導体装置300のトランジスタ部70において、ゲートトレンチ部40のY軸方向負側で隣り合うダミートレンチ部30からY軸方向正側で隣り合うダミートレンチ部30に渡り、エミッタ領域12を通過するYZ面である。
s−s'断面において、半導体装置300は、下面23に設けられたコレクタ電極24および上面21に設けられたエミッタ電極52を有する。また、上面21側には、N+型のエミッタ領域12、P−型のベース領域14およびN+型の1つ以上の蓄積領域16が、上面21側から順番に配置される。蓄積領域16の下方には、N−型のドリフト領域18が形成される。ドリフト領域18の下方には、N+型のバッファ領域20が形成される。バッファ領域20の下方には、下面23に露出するP+型のコレクタ領域22が形成される。
ゲートトレンチ部40の上方には、上面21に層間絶縁膜38が設けられる。Y軸方向において、ダミートレンチ部30と、ゲートトレンチ部40上の層間絶縁膜38との間には、上面21に層間絶縁膜38が設けられない。また、ダミートレンチ部30の上方には、上面21に層間絶縁膜38が設けられない。
s−s'断面において、幅Wiは、ゲートトレンチ部40のY軸方向の端部P3からコンタクトホール54の端部P4までのY軸方向の幅である。端部P3は、XZ面内において、ゲートトレンチ部40のトレンチ側壁が上面21と接する位置である。端部P4は、層間絶縁膜38のXZ面内の端面の、YZ面と平行な断面における位置である。より具体的には、端部P4は、層間絶縁膜38のXZ面内の端面が、上面21と接する位置であってよい。層間絶縁膜38の上面や側面が平面ではなく曲面の場合は、端部P4は、層間絶縁膜38が上面21と接する位置であってよい。
幅Wmは、ゲートトレンチ部40の端部P3から、当該ゲートトレンチ部40に隣り合うダミートレンチ部30における、当該ゲートトレンチ部40側の端部P3'までの幅、即ちメサ幅である。幅Wmは、幅Wiの1.5倍以上3.5倍以下であってよい。幅Wmは、一例として0.5μmであってよい。幅Wiは、一例として0.2μmであってよい。
端部P4から、ゲートトレンチ部40に隣り合うダミートレンチ部30の端部P3'までの幅は、幅Wiより長くてよい。端部P4から端部P3'までの幅が幅Wiよりも長いことで、トランジスタ部70の、特にターンオフ時のキャリアを引き抜きやすくできる。また、トランジスタ部70のラッチアップも抑制される。
あるいは、端部P4から、ゲートトレンチ部40に隣り合うダミートレンチ部30の端部P3'までの幅は、幅Wiより短くてもよい。端部P4から端部P3'までの幅が幅Wiよりも短いことで、ゲートトレンチ部40のまわりにキャリア濃度を増加させやすくなる。このため、トランジスタ部70のオン電圧低減につながる。
本例の半導体装置300は、ダミートレンチ部30の上方、並びにダミートレンチ部30のY軸方向正側および負側の半導体基板10の上方に、層間絶縁膜38が設けられない。すなわち、エミッタ電極52が、複数のダミートレンチ部30およびメサ部95上面にわたって、Y軸方向に沿って連続的に接する。このため、メサ部95において、コンタクトホール54の端部P4のY軸方向における位置の設定に、余裕度を多く取ることができる。即ち、幅Wmに対して幅Wiを大きくして幅Wmに占める幅Wiの割合を大きくしても、エミッタ領域12とコンタクトホール54に設けられるエミッタ電極52との接触面積を確保することができる。また、幅Wmに対して幅Wiを大きくすることにより、ゲート金属層50とゲート導電部44とを、より確実に絶縁することができる。
また、本例の半導体装置300は、エミッタ領域12の上方において、端部P4から端部P3'までの間に層間絶縁膜38が設けられないので、幅Wiに対して幅Wmを小さくして幅Wmに占める幅Wiの割合を大きくしても、エミッタ領域12とコンタクトホール54に設けられるエミッタ電極52との接触面積を確保することができる。即ち、メサ幅Wmを小さくすることができる。このため、トランジスタ部70の特性を改善することができる。また、コンタクトホール54の微細加工が不要なので、半導体装置300の製造コストを低減することができる。
図21cは、図21aにおけるt−t'断面の一例を示す図である。t−t'断面は、本例の半導体装置300のトランジスタ部70からダイオード部80に渡り、エミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14を通過するYZ面である。
t−t'断面において、トランジスタ部70は、下面23に設けられたコレクタ電極24および上面21に設けられたエミッタ電極52を有する。また、上面21側には、N+型のエミッタ領域12、P−型のベース領域14およびN+型の1つ以上の蓄積領域16が、上面21側から順番に形成される。蓄積領域16の下方には、N−型のドリフト領域18が形成される。
ドリフト領域18の下方には、N+型のバッファ領域20が形成される。バッファ領域20の下方には、下面23に露出するP+型のコレクタ領域22が形成される。ゲートトレンチ部40の上方には、上面21に層間絶縁膜38が設けられる。
トランジスタ部70のt−t'断面のY軸方向において、ダミートレンチ部30と、ゲートトレンチ部40上の層間絶縁膜38との間には、上面21に層間絶縁膜38が設けられない。また、ダミートレンチ部30の上方には、上面21に層間絶縁膜38が設けられない。すなわち、エミッタ電極52が、複数のダミートレンチ部30およびメサ部95上面にわたって、Y軸方向に沿って連続的に接する。
t−t'断面において、境界部90は、下面23に設けられたコレクタ電極24および上面21に設けられたエミッタ電極52を有する。また、上面21側には、P+型のコンタクト領域15およびP−型のベース領域14が、上面21側から順番に形成される。ベース領域14の下方には、N−型のドリフト領域18が形成される。
ドリフト領域18の下方には、N+型のバッファ領域20が形成される。バッファ領域20の下方には、下面23に露出するP+型のコレクタ領域22が形成される。コレクタ領域22は、トランジスタ部70のコレクタ領域22がY軸方向に延伸した領域であってよい。境界部90のt−t'断面におけるY軸方向において、ダミートレンチ部30の上方およびコンタクト領域15の上方には、上面21に層間絶縁膜38が設けられない。
エミッタ電極52は、最も境界部90側に設けられたゲートトレンチ部40から境界部90まで、層間絶縁膜38を含まずに、Y軸方向に沿ってダミートレンチ部30およびメサ部95上面と連続的に接する。
t−t'断面において、ダイオード部80は、下面23に設けられたコレクタ電極24および上面21に設けられたエミッタ電極52を有する。また、上面21側には、P−型のベース領域14およびN+型の1つ以上の蓄積領域16が、上面21側から順番に形成される。蓄積領域16の下方には、N−型のドリフト領域18が形成される。ドリフト領域18の下方には、N+型のバッファ領域20が形成される。バッファ領域20の下方には、下面23に露出するN+型のカソード領域82が形成される。
t−t'断面において、ダイオード部80には、ダミートレンチ部30の上方およびベース領域14の上方の上面21に層間絶縁膜38が設けられない。すなわち、エミッタ電極52が、複数のダミートレンチ部30およびメサ部95上面と、Y軸方向に沿って連続的に接する。エミッタ電極52は、境界部90とダイオード部80の間に層間絶縁膜38を含まずに、連続的にダミートレンチ部30およびメサ部95の上面と接する。
本例の半導体装置300は、コンタクトホール54が、トランジスタ部70のうち境界部90に隣接する領域からダイオード部80に渡り、Y軸方向に連続的に設けられる。ここで、コンタクトホール54がY軸方向に連続的に設けられるとは、トランジスタ部70のうち境界部90に隣接する領域からダイオード部80に渡り、Y軸方向に、コンタクトホール54が設けられない領域が無いことをいう。
本例の半導体装置300は、エミッタ領域12の上方において、端部P4から端部P3'までの間に層間絶縁膜38が設けられないので、幅Wmに対して幅Wiを大きくして幅Wmに占める幅Wiの割合を大きくしても、エミッタ領域12とコンタクトホール54に設けられるエミッタ電極52との接触面積を確保することができる。即ち、端部P3と端部P4との余裕度を多く取ることができる。また、幅Wmに対して幅Wiを大きくすることにより、ゲート金属層50とゲート導電部44とを、より確実に絶縁することができる。
また、本例の半導体装置300は、エミッタ領域12の上方において、端部P4から端部P3'までの間に層間絶縁膜38が設けられないので、幅Wiに対して幅Wmを小さくして幅Wmに占める幅Wiの割合を大きくしても、エミッタ領域12とコンタクトホール54に設けられるエミッタ電極52との接触面積を確保することができる。即ち、メサ幅Wmを小さくすることができる。このため、トランジスタ部70の特性を改善することができる。また、コンタクトホール54の微細加工が不要なので、半導体装置300の製造コストを低減することができる。
図22は、比較例の半導体装置350の断面図である。比較例の半導体装置350は、ゲートトレンチ部40の上方およびダミートレンチ部30の上方に、層間絶縁膜38が設けられる。このため、端部P4に加え、ダミートレンチ部30の端部P3'からゲートトレンチ部40の側に、ダミートレンチ部30上方の層間絶縁膜38の端部P4'が、幅Wiをおいて配置される。このため、比較例の半導体装置350は、幅Wmに対して幅Wiを大きくして幅Wmに占める幅Wiの割合を大きくすると、端部P4と端部P4'とが近接する。このため、比較例の半導体装置350は、図21bの半導体装置300と比較して、エミッタ領域12とコンタクトホール54に設けられるエミッタ電極52との接触面積を確保することが困難である。即ち、端部P3と端部P4との余裕度を多くとることが困難である。また、端部P3'と端部P4'との余裕度を多く取ることが困難である。
また、比較例の半導体装置350は、端部P4に加え、ダミートレンチ部30の端部P3'からゲートトレンチ部40の側に、ダミートレンチ部30上方の層間絶縁膜38の端部P4'が配置されるので、幅Wiに対して幅Wmを小さくして幅Wmに占める幅Wiの割合を大きくすると、端部P4と端部P4'とが近接する。このため、比較例の半導体装置350は、図21bの半導体装置300と比較して、エミッタ領域12とコンタクトホール54に設けられるエミッタ電極52との接触面積を確保することが困難である。即ち、メサ幅Wmを小さくすることが困難である。このため、トランジスタ部70の特性を改善することが困難である。また、コンタクトホール54の微細加工が必要なので、半導体装置300の製造コストを低減することが困難である。
図23aは、本発明の他の実施形態に係る半導体装置300の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置300は、ダミートレンチ部30が上面視でU字形状を有し、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の上方において、Y軸方向に、ゲートトレンチ部40に複数のダミートレンチ部30が挟まれる点で、図21aの半導体装置300と異なる。本例の半導体装置300は、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の上方において、Y軸方向に、ゲートトレンチ部40に複数のダミートレンチ部30が挟まれるので、トランジスタ部70において、図21aに示す半導体装置300よりも、コンタクトホール54のY軸方向の幅が大きく設けられる。
カソード領域82のX軸方向の外周側の端の位置を上面21に投影した位置には、X軸方向で隣り合うコンタクト領域15に挟まれていて、コンタクト領域15が形成されていない領域があってよい。カソード領域82のX軸方向の外周側の端の位置を上面21に投影した位置よりも外周側(−X軸方向)のメサ部95の表面には、ベース領域14が露出していてよい。
図23bは、図23aにおけるu−u'断面の一例を示す図である。u−u'断面は、本例の半導体装置300のトランジスタ部70において、ゲートトレンチ部40のY軸方向正側に配置される2つのダミートレンチ部30のうちY軸方向正側に位置するダミートレンチ部30から、ゲートトレンチ部40のY軸方向負側に配置される2つのダミートレンチ部30のうちY軸方向負側に位置するダミートレンチ部30に渡り、エミッタ領域12を通過するYZ面である。
本例の半導体装置300は、エミッタ領域12の上方において、端部P4から端部P3'までの間に層間絶縁膜38が設けられないので、図21bに示す半導体装置300と同様に、幅Wmに対して幅Wiを大きくして幅Wmに占める幅Wiの割合を大きくしても、エミッタ領域12とコンタクトホール54に設けられるエミッタ電極52との接触面積を確保することができる。即ち、端部P3と端部P4との余裕度を多く取ることができる。また、幅Wmに対して幅Wiを大きくすることにより、ゲート金属層50とゲート導電部44とを、より確実に絶縁することができる。
また、本例の半導体装置300は、エミッタ領域12の上方において、端部P4から端部P3'までの間に層間絶縁膜38が設けられないので、図21bに示す半導体装置300と同様に、幅Wiに対して幅Wmを小さくして幅Wmに占める幅Wiの割合を大きくしても、エミッタ領域12とコンタクトホール54に設けられるエミッタ電極52との接触面積を確保することができる。即ち、メサ幅Wmを小さくすることができる。このため、トランジスタ部70の特性を改善することができる。また、コンタクトホール54の微細加工が不要なので、半導体装置300の製造コストを低減することができる。
図23cは、図21aにおけるv−v'断面の一例を示す図である。v−v'断面は、本例の半導体装置300のトランジスタ部70からダイオード部80に渡り、エミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14を通過するYZ面である。
本例の半導体装置300は、図21cに示す半導体装置300と同様に、コンタクトホール54が、トランジスタ部70からダイオード部80に渡って設けられる。本例の半導体装置300は、エミッタ領域12の上方において、端部P4から端部P3'までの間に層間絶縁膜38が設けられないので、図21cに示す半導体装置300と同様に、幅Wmに対して幅Wiを大きくして幅Wmに占める幅Wiの割合を大きくしても、エミッタ領域12とコンタクトホール54に設けられるコンタクトとの接触面積を確保することができる。即ち、端部P3と端部P4との余裕度を多く取ることができる。
また、本例の半導体装置300は、エミッタ領域12の上方において、端部P4から端部P3'までの間に層間絶縁膜38が設けられないので、図21cに示す半導体装置300と同様に、幅Wiに対して幅Wmを小さくして幅Wmに占める幅Wiの割合を大きくしても、エミッタ領域12とコンタクトホール54に設けられるエミッタ電極52との接触面積を確保することができる。即ち、メサ幅Wmを小さくすることができる。このため、トランジスタ部70の特性を改善することができる。また、コンタクトホール54の微細加工が不要なので、半導体装置300の製造コストを低減することができる。
図24は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置300の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置300は、図21aの半導体装置300において、ゲートトレンチ部40とゲート金属層50とを電気的に接続するゲートランナー48が設けられず、ゲート金属層50が、ゲートトレンチ部40のX軸方向最も負側において、ゲートトレンチ部40上に設けられたコンタクトホール49を通じて、ゲートトレンチ部40と電気的に接続される点で、図21aの半導体装置300と異なる。
本例の半導体装置300は、ダミートレンチ部30の上方に層間絶縁膜38が設けられないので、図21aから図21cに示す半導体装置300と同様に、ダミートレンチ部30の上方に層間絶縁膜38が設けられる場合と比較して、コンタクトホール54に設けられるコンタクトとエミッタ領域12との接触面積を確保することができる。このため、トランジスタ部70の特性を改善することができる。また、コンタクトホール54の微細加工が不要なので、半導体装置300の製造コストを低減することができる。
図25は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置300の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置300は、図23aの半導体装置300において、ゲートトレンチ部40とゲート金属層50とを電気的に接続するゲートランナー48が設けられず、ゲート金属層50が、ゲートトレンチ部40のY軸方向最も負側において、ゲートトレンチ部40上に設けられたコンタクトホール49を通じて、ゲートトレンチ部40と電気的に接続される点で、図23aの半導体装置300と異なる。
本例の半導体装置300は、ダミートレンチ部30の上方に層間絶縁膜38が設けられないので、図23aから図23cに示す半導体装置300と同様に、ダミートレンチ部30の上方に層間絶縁膜38が設けられる場合と比較して、コンタクトホール54に設けられるコンタクトとエミッタ領域12との接触面積を確保することができる。このため、トランジスタ部70の特性を改善することができる。また、コンタクトホール54の微細加工が不要なので、半導体装置300の製造コストを低減することができる。
図26は、本発明の実施形態に係る半導体チップ120の一例を示す図である。図26に示すように、本例の半導体チップ120は、トランジスタ部70およびダイオード部80が、XY面内において交互に周期的に配列されている。図26は、トランジスタ部70がX軸方向に3つ、Y軸方向に7つ設けられ、ダイオード部80がX軸方向に3つ、Y軸方向に6つ設けられる一例を示している。
幅WIは、トランジスタ部70のY軸方向の幅である。幅WFはダイオード部80のY軸方向の幅である。幅Whは、図27aにおいて後述するように、X軸方向正側のウェル領域11の端部から、X軸方向負側のウェル領域11の端部までの、ベース領域14が半導体基板10の上面21側に形成され、且つウェル領域11が形成されていない部分の幅である。
幅Whは、トランジスタ部70においては、X軸方向正側のウェル領域11の端部に接し且つ半導体基板10の上面21に露出して形成されるベース領域14のウェル領域11に接する端部から、半導体基板10の上面21に露出して形成されるコンタクト領域15およびエミッタ領域12を経て、X軸方向正側のウェル領域11の端部に接し且つ半導体基板10の上面21に露出して形成されるベース領域14のウェル領域11に接する端部までの幅である。幅Whは、ダイオード部80においては、X軸方向正側のウェル領域11の端部に接し且つ半導体基板10の上面21に露出して形成されるベース領域14のウェル領域11に接する端部から、半導体基板10の上面21に露出して形成されるコンタクト領域15およびベース領域14を経て、X軸方向正側のウェル領域11の端部に接し且つ半導体基板10の上面21に露出して形成されるベース領域14のウェル領域11に接する端部までの幅である。
半導体チップ120の外周縁と、トランジスタ部70およびダイオード部80の間には、エッジ終端部があってよい。また、エッジ終端部とトランジスタ部70およびダイオード部80の間には、ゲート金属層50と、ゲート金属層50が集約されたゲートパッド部(不図示)、または他の所定のパッド部があってよい。トランジスタ部70およびダイオード部80の配列方向(Y軸方向)において、トランジスタ部70が外周側の端に配置されて、エッジ終端部と対向していてよい。
図27aは、図26における領域Aの拡大図である。図27aは、ダイオード部80におけるカソード領域82およびフローティング領域84の構成を示す図である。図27aにおいては、ダイオード部80およびトランジスタ部70に設けられるゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30等、カソード領域82およびフローティング領域84以外の構成を省略して示している。
本例の半導体装置300は、図27aに示す通り、ダイオード部80において、カソード領域82のXY平面内における内側に、フローティング領域84が、一例としてX軸方向に10個、Y軸方向に2個設けられる。また、ダイオード部80およびトランジスタ部70のX軸方向正側には、P+型のウェル領域11の端部Sが設けられる。また、ダイオード部80およびトランジスタ部70のX軸方向負側には、P+型のウェル領域11の端部S'が設けられる。ウェル領域11は、トランジスタ部70とダイオード部80が交互に配置された領域の外側に形成されている。言い換えると、端部Sよりトランジスタ部70およびダイオード部80の内部には、ウェル領域11は形成されていない。
カソード領域82と、コンタクトホール54、ダミートレンチ部30、コンタクトホール54のX軸方向端部に形成されたコンタクト領域15および高濃度領域17等カソード領域82以外の構成との位置関係は、図1、図19、図21a、図23a、図24および図25の上面図に示した位置関係であってよい。
本例の半導体装置300は、図27aに示すように、ダイオード部80とトランジスタ部70の配列方向の一方側であるY軸方向正側および当該配列方向の他方側であるY軸方向負側の双方に、ダイオード部80と隣接して、トランジスタ部70が設けられる。トランジスタ部70のY軸方向の幅WIは、ダイオード部80のY軸方向の幅WFより大きくてよい。幅WIは、幅WFの2倍以上5倍以下であってよい。幅WIは、一例として1500μmであってよい。幅WFは、一例として500μmであってよい。即ち、本例の半導体装置300は、図1から図18に示した半導体装置100および図19から図20に示した半導体装置200と比較して、幅WFが小さい一例である。
また、X軸方向正側のウェル領域11の端部Sから、X軸方向負側のウェル領域11の端部S'までの幅Whは、幅WIより大きくてよい。幅Whは、幅WIの1.5倍以上3倍以下であってよい。幅Whは、一例として3100μmであってよい。
幅Whは、幅WIと幅WFの和よりも大きくてよい。トランジスタ部70がオン状態となるとき、あるいはダイオード部80が導通状態となるときに、コレクタ電極24とエミッタ電極52との間に流れる電流の増加に対して、コレクタ電極24とエミッタ電極52との間の電圧が急に減少するスナップバック現象を抑制できる。
図27bは、図27aにおける領域B1の拡大図である。図27bは、図27aにおけるダイオード部80のX軸方向正側のウェル領域11の端SからX軸方向負側のウェル領域11の端S'までを、拡大して示している。図27bに示す通り、本例の半導体装置300は、ダイオード部80において、カソード領域82のXY平面内における内側に、フローティング領域84が、一例としてX軸方向に10個、Y軸方向に2個設けられる。
X軸方向正側のウェル領域11の端部Sからカソード領域82のX軸方向正側の端までの上面視におけるX軸方向の幅Wwcは、ダイオード部80の幅WFより小さくてよい。幅Wwcは、幅WFの0.25倍以上0.75倍以下であってよい。幅Wwcは、一例として250μmであってよい。
コンタクトホール54のX軸方向正側の端部Tは、図27bに示すように、ウェル領域11のX軸方向正側の端部SからX軸方向負側に幅Wwcaを置いて設けられる。また、コンタクトホール54のX軸方向負側の端部T'は、ウェル領域11のX軸方向負側の端部S'からX軸方向正側に幅Wwcaを置いて設けられる。コンタクトホール54は、端部Tから端部T'まで、X軸方向に設けられる。
なお、コンタクトホール54は、図27bにおいては1つを図示しているが、実際には、図1、図19、図21a、図23a、図24および図25の上面図から明らかなように、当該コンタクトホール54の端部TのY軸方向の位置および端部T'のY軸方向の位置がそれぞれ等しいコンタクトホール54が、Y軸方向に複数設けられる。
ウェル領域11のX軸方向正側の端部Sから、ダイオード部80に形成された複数のコンタクトホール54のX軸方向正側の端部Tまでの幅Wwcaは、当該端部Tからカソード領域82のX軸方向正側の端までの上面視におけるX軸方向の幅Wwcbより小さくてよい。幅Wwcaは、幅Wwcbの0.1倍以上0.9倍以下であってよい。一例として、幅Wwcaは100μm、幅Wwcbは150μmであってよい。幅Wwcaと幅Wwcbの和は、幅Wwcである。また、ウェル領域11のX軸方向負側の端部S'から、ダイオード部80に形成された複数のコンタクトホール54のX軸方向負側の端部T'までの幅も、幅Wwcaに等しくてよい。当該端部T'からカソード領域82のX軸方向負側の端までの上面視におけるX軸方向の幅も、幅Wwcbに等しくてよい。
なお、X軸方向負側のウェル領域11の端部S'からカソード領域82のX軸方向負側の端までの上面視におけるX軸方向の幅も、幅Wwcに等しくてよい。図27bのコンタクトホール54は、複数のコンタクトホールの1つを図示したものである。また、コンタクトホール54は、図21a〜図25に示したコンタクトホール54であってもよい。
カソード領域82のXY平面内における内側には、図27bに示すように、フローティング領域84が設けられる。フローティング領域84は、電気的にフローティング状態である第2導電型の領域である。本例においては、フローティング領域84はP+型である。電気的にフローティング状態とは、コレクタ電極24およびエミッタ電極52のいずれにも接続されていない状態を指す。
本例の半導体装置300においては、フローティング領域84は、XY平面内において格子状に設けられる。ここで、格子状とは、フローティング領域84がX軸方向およびY軸方向の双方に、周期的に配列されることをいう。図27bは、フローティング領域84がY軸方向に2つ設けられ、X軸方向には、カソード領域82のX軸方向負側からX軸方向正側に渡り、開口領域85を挟んで、10個設けられる一例を示している。
幅Wff1は、開口領域85のX軸方向の幅である。幅Wff1は、フローティング領域84のX軸方向の幅Wf1よりも小さい。幅Wff1は、ダイオード部80の幅WFより小さくてよい。幅Wff1は、幅WFの0.01倍以上0.05倍以下であってよい。幅Wff1は、一例として10μmであってよい。
フローティング領域84のX軸方向の幅Wf1は、ダイオード部80の幅WFより小さくてよい。幅Wf1は、幅WFの0.25倍以上0.75倍以下であってよい。幅Wf1は、一例として240μmであってよい。
フローティング領域84のY軸方向の幅Wf2は、ダイオード部80の幅WFより小さくてよい。幅Wf2は、幅WFの0.25倍以上0.75倍以下であってよい。幅Wf2は、幅Wf1と等しくてもよいし、異なっていてもよい。幅Wf2は、一例として240μmであってよい。
カソード領域82のX軸方向正側の端から、X軸方向の最も正側に配置されるフローティング領域84のX軸方向正側の端までの幅Wcf1は、幅Wff1より小さくてよい。幅Wcf1は、幅Wff1の0.1倍以上0.9倍以下であってよい。幅Wcf1は、ゼロでなければよい。幅Wcf1は、一例として5μmであってよい。なお、カソード領域82のX軸方向負側の端から、X軸方向の最も負側に配置されるフローティング領域84のX軸方向負側の端までの幅も、幅Wcf1に等しくてよい。
本例の半導体装置300においては、フローティング領域84は、Y軸方向に、開口領域85を挟んで2つ設けられる。ここで、幅Wff2は、開口領域85のY軸方向の幅である。幅Wff2は、幅Wf2よりも小さくてよい。幅Wff2は、ダイオード部80の幅WFの0.01倍以上0.05倍以下であってよい。幅Wff2は、幅Wff1と等しくてもよいし、異なっていてもよい。幅Wff2は、一例として10μmであってよい。
カソード領域82のXY平面内における面積に占めるフローティング領域84のXY平面内における面積の割合は、50%以上99%以下であってよい。すなわち、フローティング領域84のXY平面内における面積は、カソード領域82のXY平面内における面積より小さくてよい。一例として、Whが3100μm、Wwcが250μm、Wf1およびWf2が240μm、Wcf1およびWcf2が5μm、並びにWff1およびWff2が10μmの場合、XY平面内において、カソード領域82の面積に占めるフローティング領域84の面積の合計は、88.6%となる。
カソード領域82のY軸方向正側の端から、Y軸方向正側のフローティング領域84のY軸方向正側の端までの幅Wcf2は、ダイオード部80の幅WFより小さくてよい。幅Wcf2は、幅WFの0.01倍以上0.05倍以下であってよい。幅Wcf2は、ゼロでなければよい。また、幅Wcf2は、幅Wcf1と等しくてもよいし、異なっていてもよい。なお、カソード領域82のY軸方向負側の端から、Y軸方向負側のフローティング領域84のY軸方向負側の端までの幅も、幅Wcf2に等しい。
なお、本例においてコンタクトホール54の配列方向(Y軸方向)の幅Wcntは、Wff1より小さくてよい。本例において幅Wcntは、Wff2より小さくてよい。本例において幅Wcntは、Wcf1より小さくてよい。本例において幅Wcntは、Wcf2より小さくてよい。一例として、幅Wcntは、0.5μmである。
図27cは、図27bにおける領域B2の拡大図である。図27cに示す通り、本例の半導体装置300において、幅Wcf1は、カソード領域82のX軸方向正側の端から、X軸方向の最も正側に配置されるフローティング領域84のX軸方向正側の端までの幅である。また、幅Wcf2は、カソード領域82のY軸方向正側の端から、Y軸方向正側のフローティング領域84のY軸方向正側の端までの幅である。幅Wcf2は、一例として5μmであってよい。幅Wff1は、開口領域85のX軸方向の幅である。幅Wf1は、フローティング領域84のX軸方向の幅である。
図27dは、図27aにおけるh−h'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置300は、ダイオード部80において、カソード領域82の上方に設けられたバッファ領域20内に、フローティング領域84が設けられる。フローティング領域84は、h−h'断面において、Y軸方向に2つ設けられる。
本例においては、図27dに示す通り、半導体基板10の下面23と平行な面内において、コレクタ領域22とカソード領域82との境界位置が2つ存在する。境界位置P1は、当該2つの境界位置のうち、Y軸方向正側の境界位置である。また、境界位置P1'は、当該2つの境界位置のうち、Y軸方向負側の境界位置である。境界位置P1およびP1'は、h−h'断面と平行な断面における境界位置である。一例として、h−h'断面は、下面23と垂直であり、且つ、ダミートレンチ部30の配列方向と平行な面である。
本例においては、図27dに示す通り、下面23と平行な面内において、フローティング領域84の端部位置が2つ存在する。境界位置P2は、下面23と平行な面内において、Y軸方向に配列される2つのフローティング領域84のうち、Y軸方向正側に配置されるフローティング領域84の、境界位置P1に最も近い端部位置である。また、境界位置P2'は、下面23と平行な面内において、Y軸方向に配列される2つのフローティング領域84のうち、Y軸方向負側に配置されるフローティング領域84の、境界位置P1'に最も近い端部位置である。
また、本例においては、Z軸方向において、フローティング領域84と略同一の深さ位置には、フローティング領域84が設けられていない開口領域85が存在する。開口領域85は、フローティング領域84に挟まれた領域を指してよい。一例として、開口領域85はN+型の領域である。開口領域85のドーピング濃度は、ドリフト領域18またはバッファ領域20のドーピング濃度と略同一であってよい。開口領域85は、フローティング領域84が形成されずに残存したドリフト領域18またはバッファ領域20であってよい。
幅Wcf2は、端部位置P1から端部位置P2までの距離である。また、幅Wcf2は、端部位置P1'から端部位置P2'までの距離である。幅Wcf2は、図9の例における距離L1と同じであってよい。
幅Wff2は、Y軸方向において、開口領域85を挟んで隣り合うフローティング領域84の間隔である。幅Wff2は、図9の例における距離L3と同じであってよい。
幅Wdは、フローティング領域84のZ軸方向の幅である。幅Wdは、図9の例における距離L4と同じであってよい。フローティング領域84のZ軸方向の幅Wdは、幅Wcf2より小さくてよい。幅Wdは、幅Wcf2の0.05倍以上0.5倍以下であってよい。一例として、幅Wdは0.5μmであってよい。
図27eは、図27aにおけるj−j'断面の一例を示す図である。j−j'断面は、図27dにおけるJ''―J'''線を通るXZ平面である。本例の半導体装置300は、ダイオード部80において、カソード領域82の上方に設けられたバッファ領域20内に、フローティング領域84が設けられる。
本例においては、図27eに示す通り、半導体基板10の下面23と平行な面内において、コレクタ領域22とカソード領域82との境界位置が2つ存在する。境界位置P5は、当該2つの境界位置のうち、X軸方向負側の境界位置である。また、境界位置P5'は、当該2つの境界位置のうち、X軸方向正側の境界位置である。境界位置P5およびP5'は、j−j'断面と平行な断面における境界位置である。一例として、j−j'断面は、下面23と垂直であり、且つ、ダミートレンチ部30の延伸方向と平行な面である。
本例においては、図27eに示す通り、下面23と平行な面内において、フローティング領域84の端部位置が2つ存在する。境界位置P6は、下面23と平行な面内において、X軸方向に複数配列されるフローティング領域84のうち、X軸方向の最も負側に配置されるフローティング領域84の、境界位置P5に最も近い端部位置である。また、境界位置P6'は、下面23と平行な面内において、Y軸方向に複数配列されるフローティング領域84のうち、X軸方向の最も正側に配置されるフローティング領域84の、境界位置P5'に最も近い端部位置である。
また、本例においては、Z軸方向において、フローティング領域84と略同一深さ位置には、フローティング領域84が設けられていない開口領域85が存在する。開口領域85は、フローティング領域84に挟まれた領域を指してよい。一例として、開口領域85はN+型の領域である。開口領域85のドーピング濃度は、ドリフト領域18またはバッファ領域20のドーピング濃度と略同一であってよい。開口領域85は、フローティング領域84が形成されずに残存したドリフト領域18またはバッファ領域20であってよい。
幅Wf1は、フローティング領域84のX軸方向における幅である。幅Wcf1は、端部位置P5から端部位置P6までのX軸方向における距離である。また、幅Wcf1は、端部位置P5'から端部位置P6'までのX軸方向における距離である。また、幅Wff1は、X軸方向において、開口領域85を挟んで隣り合うフローティング領域84の間隔である。幅Wcf1は、幅Wff1よりも小さくてよい。本例の半導体装置300は、ダイオード部80において、フローティング領域84をXY平面内において格子状に設けているので、ダイオード部80の逆回復時のサージ電圧(オーバーシュート電圧)を抑制することができる。
図28aは、図26における領域Aの他の拡大図である。本例の半導体装置300は、図27aに示す半導体装置300と同様に、ダイオード部80のY軸方向正側および負側に、ダイオード部80と隣接してトランジスタ部70が設けられる。
本例の半導体装置300は、ダイオード部80におけるフローティング領域84の配置が、図27aに示す半導体装置300と異なる。図28aに示す通り、本例の半導体装置300は、ダイオード部80において、XY平面内におけるカソード領域82の内側に、フローティング領域84が、破線部で示すカソード領域82のY軸方向正側の境界側から、破線部で示すY軸方向負側の境界側まで、連続的に設けられる。ここで、フローティング領域84がY軸方向に連続的に設けられるとは、カソード領域82のY軸方向正側の境界側からY軸方向負側の境界側までのY軸方向何れの場所においても、X軸方向に、フローティング領域84が設けられない領域が無いことをいう。
図28bは、図28aにおける領域C1の拡大図である。図28bは、図28aにおけるダイオード部80のX軸方向正側のウェル領域11の端SからX軸方向負側のウェル領域11の端S'までを、拡大して示している。
本例においては、フローティング領域84は、XY平面内においてストライプ状に設けられる。ここで、ストライプ状とは、長方形状のフローティング領域84が、当該長方形の短辺方向に、所定の間隔を置いて複数設けられることをいう。図28bは、Y軸方向を長辺、X軸方向を短辺とする長方形状のフローティング領域84が、X軸方向に、幅Wff1'を置いて、XY平面内におけるカソード領域82のX軸方向の最も負側から最も正側に渡り、複数設けられる一例を示している。幅Wff1'は、ダイオード部80の幅WFより小さくてよい。幅Wff1'は、幅WFの0.01倍以上0.05倍以下であってよい。幅Wff1'は、一例として10μmであってよい。
フローティング領域84のX軸方向の幅Wf1'は、ダイオード部80の幅WFより小さくてよい。幅Wf1'は、幅WFの0.04倍以上0.13倍以下であってよい。幅Wf1'は、一例として40μmであってよい。
フローティング領域84のY軸方向の幅Wf2'は、ダイオード部80の幅WFより小さくてよい。幅Wf2'は、幅WFの0.5倍以上0.99倍以下であってよい。幅Wf2'は、一例として490μmであってよい。
幅Wcf1は、カソード領域82のX軸方向正側の端から、X軸方向の最も正側に配置されるフローティング領域84のX軸方向正側の端までの幅である。幅Wcf1は、幅Wff1'よりも小さくてよい。幅Wcf1は、幅Wff1'の0.1倍以上0.9倍以下であってよい。幅Wcf1は、ゼロでなければよい。幅Wcf1は、図27bの例と同様に、一例として5μmであってよい。なお、カソード領域82のX軸方向負側の端から、X軸方向の最も負側に配置されるフローティング領域84のX軸方向負側の端までの幅も、幅Wcf1に等しい。
カソード領域82のXY平面内における面積に占めるフローティング領域84のXY平面内における面積の割合は、図27bの例と同様に、50%以上99%以下であってよい。すなわち、フローティング領域84のXY平面内における面積は、カソード領域82のXY平面内における面積より小さくて良い。一例として、Whが3100μm、Wwcが250μm、Wf1'が40μm、Wf2'が490μm、Wcf1およびWcf2が5μm、並びにWff1'が10μmの場合、フローティング領域84は、上面視で、カソード領域82の内側にX軸方向に51個、Y軸方向に1個、設けられる。この場合、カソード領域82のXY平面内における面積に占めるフローティング領域84のXY平面内における面積の合計は、76.8%となる。
カソード領域82のY軸方向正側の端から、フローティング領域84のY軸方向正側の端までの幅Wcf2は、図27bの例と同様に、ダイオード部80の幅WFよりも小さくてよい。幅Wcf2は、幅WFの0.01倍以上0.05倍以下であってよい。また、幅Wcf2は、幅Wcf1と等しくてもよいし、異なっていてもよい。幅Wcf2は、ゼロでなければよい。なお、カソード領域82のY軸方向負側の端から、フローティング領域84のY軸方向負側の端までの幅も、幅Wcf2に等しい。
図28cは、図28bにおける領域C2の拡大図である。図28cに示す通り、本例の半導体装置300において、幅Wcf1は、カソード領域82のX軸方向正側の端から、X軸方向の最も正側に配置されるフローティング領域84のX軸方向正側の端までの幅である。また、本例の半導体装置300において、幅Wcf2は、カソード領域82のY軸方向正側の端から、フローティング領域84のY軸方向正側の端までの幅である。幅Wcf2は、一例として5μmであってよい。幅Wff1'は、開口領域85のX軸方向の幅である。幅Wf1'は、フローティング領域84のX軸方向の幅である。
図28dは、図28aにおけるk−k'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置300は、ダイオード部80において、カソード領域82の上方に設けられたバッファ領域20内に、フローティング領域84が設けられる。フローティング領域84は、k−k'断面において、フローティング領域84がY軸方向正側から負側に渡って連続的に設けられる。
本例においては、図28dに示す通り、図27dの例と同様に、境界位置P1および境界位置P2、並びに境界位置P1'および境界位置P2'が存在する。本例においては、フローティング領域84が、端部位置P2から端部位置P2'にわたり連続的に設けられるので、開口領域85は存在しない。また、幅Wcf2は、図27dの例と同様に、端部位置P1から端部位置P2までの距離である。また、幅Wcf2は、端部位置P1'から端部位置P2'までの距離である。フローティング領域84のZ軸方向の幅Wdは、図27cと同様に、幅Wcf2より小さくてよい。の0.05倍以上0.5倍以下であってよい。一例として、幅Wdは0.5μmであってよい。
図28eは、図28aにおけるm−m'断面の一例を示す図である。m−m'断面は、図28dにおけるm''―m'''線を通るXZ平面である。本例の半導体装置300は、ダイオード部80において、カソード領域82の上方に設けられたバッファ領域20内に、フローティング領域84が設けられる。
本例においては、図28eに示す通り、図27eの例と同様に、境界位置P5および境界位置P6、並びに境界位置P5'および境界位置P6'が存在する。一例として、m−m'断面は、半導体基板10の下面23と垂直であり、且つ、ダミートレンチ部30の延伸方向と平行な面である。本例においても、図27eの例と同様に、Z軸方向において、フローティング領域84と同一深さ位置には、フローティング領域84が設けられていない開口領域85が存在する。
幅Wf1'は、フローティング領域84のX軸方向における幅である。幅Wcf1は、図27eの例と同様に、端部位置P5から端部位置P6までの距離である。また、幅Wcf1は、端部位置P5'から端部位置P6'までの距離である。また、幅Wff1'は、X軸方向において、開口領域85を挟んで隣り合うフローティング領域84の間隔である。幅Wcf1は、幅Wff1'よりも小さくてよい。
本例の半導体装置300は、ダイオード部80において、フローティング領域84が、端部位置P6から端部位置P6'に渡り、開口領域85を挟んで複数設けられる。本例の半導体装置300は、フローティング領域84をXY平面内においてストライプ状に設けているので、ダイオード部80の逆回復時のサージを抑制することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。一例として、境界部90において、第1導電型の高濃度領域を形成しても構わない。この場合、境界部90における高濃度領域の積分濃度は、トランジスタ部70における蓄積領域16の積分濃度より小さくてよく、ダイオード部80の高濃度領域17の積分濃度より小さくてよい。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
また、図1においては半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んでエッジ終端構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。エッジ終端構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフまたはこれらを組み合わせた構造を有する。
各トレンチ部に挟まれたメサ部には、ベース領域14が形成される。ベース領域14は、ウェル領域11よりもドーピング濃度の低い第2導電型である。本例のベース領域14はP−型である。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板の部分であって、半導体基板の上面から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。
本例においては、図28dに示す通り、図27dの例と同様に、境界位置P1および境界位置P2、並びに境界位置P1'および境界位置P2'が存在する。本例においては、フローティング領域84が、端部位置P2から端部位置P2'にわたり連続的に設けられるので、開口領域85は存在しない。また、幅Wcf2は、図27dの例と同様に、端部位置P1から端部位置P2までの距離である。また、幅Wcf2は、端部位置P1'から端部位置P2'までの距離である。フローティング領域84のZ軸方向の幅Wdは、図27cと同様に、幅Wcf2より小さくてよい。幅Wdは、幅Wcf2の0.05倍以上0.5倍以下であってよい。一例として、幅Wdは0.5μmであってよい。