JP2019014823A - 生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物、及び生体汚れ器具洗浄前処理方法 - Google Patents

生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物、及び生体汚れ器具洗浄前処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】医療器具等に付着した生体由来汚れの固着防止効果に優れ、かつ、ブドウ糖の測定を含む諸検査の偽陽性反応や測定誤差を防止した生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を提供する。【解決手段】(A)糖質(以下、「(A)成分」という)、(B)非イオン界面活性剤(以下、「(B)成分」という)、(C)有機酸もしくはその塩(以下、「(C)成分」という)、(D)無機オキソ酸もしくはその塩(以下、「(D)成分」という)から選択される少なくとも一種を含有し、前記(A)成分がアロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、炭素数3〜5の単糖類、炭素数6のケトース、二糖以上の多糖類、炭素数4〜12の糖アルコール類からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物、及び生体汚れ器具洗浄前処理方法に関する。
近年、院内感染の問題が大きくなってきており、感染リスクを低減させることが病院において必須課題となっている。
一般的に医療器具は高価であるため、可能な限り洗浄リサイクルが行われる。感染因子となる細菌やウイルスが存在している可能性のある血液、体液、組織片等の汚れが付着した医療器具は、洗浄不足による感染リスクを低減させるため、通常、洗浄(第1工程)と消毒(第2工程)の二工程を経て洗浄リサイクルが行われる。
医療機関で使用され、生体由来の汚れが付着した医療器具の洗浄方法には、浸漬洗浄や、超音波洗浄機、ウォッシャーディスインフェクター等による機械洗浄が行われている。また、内視鏡スコープのような医療器具の構造に応じた内視鏡専用洗浄機等も使用されている。
しかし、医療器具に付着した生体由来の汚れが乾燥などによって器具表面と強固に固着した場合、前記のような洗浄を行っても、医療器具に汚れが残存し、感染リスクの観点から問題になっている。
例えば、就業スケジュール上の問題や訪問診療の場合等、使用した器具をすぐに洗浄せずにしばらく放置した後、洗浄作業を行なう場合等が該当する。更に、医療分野に限らず、食品工場や研究室における試験等でも生体由来の汚れの残存は、衛生面やコンタミネーションの抑制等の観点から、問題となる。
そのため、乾燥などによる生体由来汚れの器具表面への固着を防止し洗浄後の汚れの残存をより少なくする方法が模索されてきた。
例えば、特開2012−001651号公報(特許文献1)には、22〜80重量%のグリセリンを含有する水溶液からなり、使用済みで洗浄操作前の医療器具に噴霧することにより、該医療器具に付着した血液の凝固を抑制するために用いられる洗浄前処理剤であって、さらにブドウ糖を含有することが記載されている。
しかしながら、特許文献1に示された洗浄前処理剤は、グリセリン単独の場合は固着防止性が不十分であり、ブドウ糖を併用した場合は固着防止性は向上するものの、ブドウ糖の測定を基本とする血糖値測定や尿糖等の測定においては、ブドウ糖を含む洗浄前処理剤を使ってそれが残存した場合や空気中に拡散したスプレー飛沫が測定機器に付着した場合等、偽陽性反応や測定誤差を誘引し、重大な医療判断ミスを招くリスクとなる問題がある。
特開2012−001651号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、医療器具等に付着した生体由来汚れの固着防止効果に優れ、かつ、ブドウ糖(グルコース)の測定を含む検査の偽陽性反応や測定誤差を防止した生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物及び生体汚れ器具洗浄前処理方法を
提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、医療器具等に付着した生体由来汚れの固着防止効果に優れ、かつ、ブドウ糖の測定を含む諸検査の偽陽性反応や測定誤差を防止した、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物、及び、生体汚れ器具洗浄前処理方法を見出し、本発明を完成するに至った。
なお、ここでいう生体由来汚れの固着防止効果とは、血液などの生体由来汚れ自身の固着を防止することではなく、生体由来汚れと器具との固着を防止することである。
ここには生体由来汚れ自身が固着しても器具との固着が弱く落ちやすいものであれば含まれる。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、(A)糖質(以下、「(A)成分」という)、(B)非イオン界面活性剤(以下、「(B)成分」という)、(C)有機酸もしくはその塩(以下、「(C)成分」という)、(D)無機オキソ酸もしくはその塩(以下、「(D)成分」という)から選択される少なくとも一種を含有し、前記(A)成分がアロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、炭素数3〜5の単糖類、炭素数6のケトース、二糖以上の多糖類、炭素数4〜12の糖アルコール類からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、(A)成分、及び/又は(B)成分を含有し、前記(A)成分がアロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、炭素数3〜5の単糖類、炭素数6のケトース、二糖以上の多糖類、炭素数4〜12の糖アルコール類からなる群から選択される少なくとも一種であり、(A)成分、(B)成分の合計量が0.3〜100質量%であることが好ましい。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、前記(B)成分が、高級アルコールアルキレンオキシド付加物、高級アルキル(又は高級アルケニル)アミンアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールアルキレンオキシド付加物、(モノ又はポリ)グリセロール脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物、ショ糖脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、(C)成分、及び/又は(D)成分を含有し、(C)成分、(D)成分の合計量が0.1〜100質量%であることが好ましい。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、(A)成分及び/又は(B)成分、ならびに(C)成分及び/又は(D)成分を含有し、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計量が0.1〜100質量%であることが好ましい。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、前記(C)成分が、アミノ酸、アミノカルボン酸、ケト酸、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、又は炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和脂肪酸及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、前記(D)成分が、リン酸塩、次亜リン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、硫酸塩からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、さらに下記一般式(1)(以下、「(E)成分」という)を含有することが好ましい。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理方法は、前記生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を含有する生体汚れ器具洗浄前処理剤と、生体汚れ器具とを接触させる工程を含むことを特徴とする。
Figure 2019014823
なお、本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物によって、医療器具等に付着した生体由来汚れの固着防止効果が優れる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、(A)、(B)成分の場合は、(A)、(B)成分が生体汚れを構成する糖質、糖蛋白質、あるいは脂溶性の蛋白質や脂質に吸着することで、汚れ成分の構造が変化したり、(A)、(B)成分が、汚れ成分と金属との間に入ることで、生体汚れの金属への固着が低下するものと推察される。
一方、(C)、(D)成分の場合は、生体汚れが金属表面に固着する理由のひとつとして、金属表面のカチオン化した水酸基と生体汚れを構成する蛋白質の酸性アミノ酸残基のカルボキシル基が反応して固着すると考えられるが、(C)、(D)成分の陰イオン基が金属表面のカチオン化した水酸基と反応することで、蛋白質の酸性アミノ酸残基のカルボキシル基との間で競争反応が起こり、蛋白質の酸性アミノ酸残基のカルボキシル基の反応が低下して生体汚れの金属への固着が低下するものと推察される。
本発明によれば、医療器具等に付着した生体由来汚れの固着防止効果に優れ、かつ、ブドウ糖の測定を含む検査の偽陽性反応や測定誤差を防止した生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物及び生体汚れ器具洗浄前処理方法を提供することが可能となる。
以下に本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分から選択される少なくとも一種を含有し、前記(A)成分がアロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、炭素数3〜5の単糖類、炭素数6のケトース、二糖以上の多糖類、炭素数4〜12の糖アルコール類からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、(A)成分、及び/又は(B)成分を含有し、前記(A)成分がアロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、炭素数3〜5の単糖類、炭素数6のケトース、二糖以上の多糖類、炭素数4〜12の糖アルコール類からなる群から選択される少なくとも一種であり、前記(A)成分、(B)成分の合計量が、0.3〜100質量%であることが好ましい。
固着防止性及び経済性の観点から、(A)成分、(B)成分の合計量は、0.5〜70質量%がより好ましく、1〜50質量%が更により好ましい。
また、本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、(C)成分、及び/又は(D)成分を含有し、(C)成分、(D)成分の合計量が0.1〜100質量%であることが好ましい。
固着防止性及び経済性の観点から、(C)成分、(D)成分の合計量は、0.2〜70質量%がより好ましく、0.5〜50質量%が更により好ましい。
さらに本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、(A)成分及び/又は(B)成分、ならびに(C)成分及び/又は(D)成分を含有し、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計量が0.1〜100質量%であることが好ましく、0.2〜70質量%がより好ましく、0.5〜50質量%がさらにより好ましい。
次に本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分について説明する。
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、炭素数3〜5の単糖類、炭素数6のケトース、二糖以上の多糖類、炭素数4〜12の糖アルコール類からなる群から選択される少なくとも一種であり、炭素数3〜5の単糖類としてはグリセルアルデヒド、エリトルロース、エリトロース、リボース、キシロース、キシルロース等が挙げられ、炭素数6のケトースとしてはフルクトース、ソルボース等が挙げられ、二糖以上の多糖類としてはスクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、ソホロース、ラフィノース、マルトトリオース、カルボキシルメチルセルロース、デンプン、プルラン、ペクチン、グルコマンナン等が挙げられ、炭素数4〜12の糖アルコール類としてはソルビトール、キシリトール、ペンタエリスリトール、マルチトール、ラクチトール、スクラロース等が挙げられる。
これらの中でも、固着防止効果に加え、溶解性、粘度などの取り扱い性を総合的に考慮すれば、アロース;アルトロース;マンノース;グロース;イドース;ガラクトース;タロース;炭素数3〜5の単糖類;炭素数6のケトース;スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、ソホロース、ラフィノース等の二糖類;炭素数4〜12の糖アルコール類が好ましく、ガラクトース、キシロース、フルクトース、スクロース、ラクトース、セロビオース、ソルビトール、キシリトール、マルチトールがより好ましく、フルクトース、スクロース、ソルビトールが特に好ましい。
(A)成分は、1種又は2種以上を使用することができる。
(A)成分が単独の場合は、固着防止性の観点から、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を基準に、0.3〜100質量%が好ましく、2〜70質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらにより好ましい。
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、具体的には、高級アルコールアルキレンオキシド付加物、アルキル(又はアルケニル)フェノールアルキレンオキシド付加物、スチレン化フェノールアルキレンオキシド付加物、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキシド付加物、高級アルキル(又は高級アルケニル)アミンアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールアルキレンオキシド付加物、(モノ又はポリ)グリセロール脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物、ショ糖脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物等の非イオン界面活性剤が挙げられる。
ここで述べた高級アルコールは通常炭素数8〜24の直鎖又は分岐の不飽和または飽和の高級アルコールであり、アルキルまたはアルケニルフェノールは通常炭素数6〜22の
直鎖又は分岐のアルキル基またはアルケニル基を有するフェノール化合物であり、高級アルキルまたは高級アルケニルアミンは通常炭素数8〜24の直鎖又は分岐の高級アルキルまたは高級アルケニルアミンであり、脂肪酸は通常炭素数8〜24の不飽和又は飽和の脂肪酸であり、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量は900〜5000である。
アルキレンオキシド付加物のアルキレンオキシ基は、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、スチレンオキシ基が挙げられ、それらは、単独でも、それらを2種以上用いてもよい。
2種以上を用いた場合アルキレンオキシドの付加形態に制限はなく、例えば、ランダム付加、ブロック付加、ランダムとブロックを混合する方法などが挙げられる。アルキレンオキシド付加物の付加モル数は1〜1000である。
これらの中でも、固着防止効果に加え、溶解性、粘度などの取り扱い性を総合的に考慮すれば、ソルビタン脂肪酸エステルアルキレンオキシド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、高級アルキル(又は高級アルケニル)アミンアルキレンオキシド付加物、グリセリンの重合度が2〜12のポリグリセロール脂肪酸エステル、高級アルコールアルキレンオキシド付加物、重量平均分子量900〜5000のポリプロピレングリコールのアルキレンオキシド付加物等が好ましく、ソルビタン脂肪酸エステルアルキレンオキシド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、高級アルキル(又は高級アルケニル)アミンアルキレンオキシド付加物、ポリグリセロール脂肪酸エステルがより好ましく、ソルビタン脂肪酸エステルアルキレンオキシド付加物、高級アルキル(又は高級アルケニル)アミンアルキレンオキシド付加物が更により好ましい。
(B)成分は、1種又は2種以上を使用することができる。
(B)成分が単独の場合は、固着防止性と組成物粘度の観点から、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を基準に、0.3〜100質量%が好ましく、0.5〜40質量%がより好ましく、1〜30質量%がさらにより好ましい。
<(C)成分>
本発明の(C)成分は有機酸またはその塩が挙げられる。
前記有機酸としては、例えば、分子内にカルボキシ基、スルホ基、リン酸基、チオール基、フェノール性水酸基等の酸性基を有する有機化合物が挙げられ、これらの塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
より具体的には、カルボキシ基を有する有機化合物としては、アミノ酸、アミノカルボン酸、ケト酸、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、炭素数1〜24の飽和または不飽和脂肪酸等が挙げられ、スルホ基を有する有機化合物としては、ベンゼンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、硫酸モノエステル等が挙げられ、リン酸基を有する有機化合物としては、アデニル酸、エチドロン酸、ホスフィン酸モノエステル塩、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル等が挙げられ、チオール基を有する有機化合物としては、4−メルカプトアセトフェノン、チオサリチル酸、チオ安息香酸、チオグリコール酸等が挙げられ、フェノール性水酸基を有する有機化合物としては、フェノール、2−ナフトール、カテコール等が挙げられる。
アルカリ金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、アルカノールアミン塩としてはモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
これらの中でも、固着防止効果に加え、溶解性、粘度などの取り扱い性を総合的に考慮すれば、ポリカルボン酸塩、オキシカルボン酸塩、脂肪酸塩等のカルボキシ基を有する有機酸もしくはその塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、硫酸モノエステル塩等のスルホ基を有する有機酸もしくはその塩、エチドロン酸、ホス
フィン酸モノエステル塩、リン酸モノエステル塩、リン酸ジエステル塩等のリン酸基を有する有機酸もしくはその塩が好ましく、カルボキシ基を有する有機酸もしくはその塩、スルホ基を有する有機酸もしくはその塩がより好ましく、カルボキシ基を有する有機酸もしくはその塩が更により好ましい。カルボキシ基を有する有機酸もしくはその塩の中では、ポリカルボン酸塩が好ましく、次にオキシカルボン酸塩が好ましく、次に脂肪酸塩が好ましい。
前記ポリカルボン酸塩は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、オレフィン−マレイン酸共重合体、アクリル酸−スルホン酸共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−アクリル酸エステル共重合体等の重量平均分子量500〜1,000,000のポリカルボン酸塩が挙げられる。
前記オキシカルボン酸塩は、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、キナ酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、没食子酸、フェルラ酸、リシノール酸等の炭素数2〜20のオキシカルボン酸塩が挙げられる。
前記脂肪酸塩は、炭素数1〜24の不飽和又は飽和の脂肪酸塩が挙げられる。
前記直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩は、炭素数7〜24の直鎖アルキル基を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
前記α-オレフィンスルホン酸塩は、炭素数8〜18のα-オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。
前記硫酸モノエステル塩は、エステル結合を構成する酸素に炭素数1〜24のアルキル基、または炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基が結合した硫酸モノエステル塩が挙げられる。
前記ホスフィン酸モノエステル塩は、エステル結合を構成する酸素に炭素数1〜24のアルキル基、または炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基が結合したホスフィン酸モノエステル塩が挙げられる。
前記リン酸モノエステル塩は、エステル結合を構成する酸素に炭素数1〜24のアルキル基、または炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基が結合したリン酸モノエステル塩が挙げられる。
前記リン酸ジエステル塩は、エステル結合を構成する酸素に炭素数1〜24のアルキル基、または炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基が結合し、炭素数の合計が2〜30であるリン酸ジエステル塩が挙げられる。
(C)成分は、1種又は2種以上を使用することができる。
(C)成分が単独の場合は、固着防止性と組成物の安定性の観点から、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を基準に、0.1〜100質量%が好ましく、0.2〜40質量%がより好ましく、0.5〜30質量%がさらにより好ましい。
<(D)成分>
本発明の(D)成分は無機オキソ酸またはその塩が挙げられる。
前記無機オキソ酸とは、例えば、リン、硫黄、窒素、ホウ素、塩素、臭素、ヨウ素、ケイ素等のオキソ酸であり、これらの塩としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
より具体的には、リンのオキソ酸としては、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸、ピロリン酸、重合度が3〜6のポリリン酸塩等が挙げられ、硫黄のオキソ酸としては、次亜硫酸、
亜硫酸、硫酸、過硫酸、ピロ硫酸、二亜硫酸、チオ硫酸、スルファミン酸、アミド硫酸、亜ジチオン酸等が挙げられ、窒素のオキソ酸としては、亜硝酸、硝酸等が挙げられ、ホウ素のオキソ酸としては、メタホウ酸、ホウ酸、過ホウ酸等が挙げられ、塩素のオキソ酸としては、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸等が挙げられ、臭素のオキソ酸としては、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸等が挙げられ、ヨウ素のオキソ酸としては、次亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸等が挙げられ、ケイ素のオキソ酸としては、オルトケイ酸、メタケイ酸、メタ二ケイ酸等が挙げられる。
アルカリ金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、アルカノールアミン塩としてはモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
これらの中でも、固着防止効果に加え、溶解性、粘度などの取り扱い性を総合的に考慮すれば、リンのオキソ酸もしくはその塩、硫黄のオキソ酸もしくはその塩が好ましく、リンのオキソ酸もしくはその塩がより好ましい。リンのオキソ酸もしくはその塩の中では、重合度が3〜6のポリリン酸塩、リン酸塩、次亜リン酸、ピロリン酸塩が好ましく、トリポリリン酸塩がより好ましい。
(D)成分は、1種又は2種以上を使用することができる。
(D)成分が単独の場合は、固着防止性と組成物の安定性の観点から、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を基準に、0.5〜100質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらにより好ましい。
<E成分>
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、さらに(E)成分を含有することが好ましい。
Figure 2019014823
(E)成分について具体的に説明する。
(E)成分は、固着防止性と組成物粘度の観点からn=1〜5が好ましく、n=1〜3がより好ましい。具体的には、グリセリン(n=1)、ジグリセリン(n=2)、トリグリセリン(n=3)、テトラグリセリン(n=4)、ペンタグリセリン(n=5)、デカグリセリン(n=10)等を挙げることが出来る。
(E)成分は、1種又は2種以上を使用することができる。
(E)成分は、固着防止性と乾燥防止性及び経済性の観点から、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を基準に、1〜50質量%が好ましく、4〜25質量%がより好ましい。
<その他配合可能な成分>
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、さらに上記(C)成分以外の両性界面活性剤を含有することが好ましい。
(C)成分以外の両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。両性界面活性剤は、固着防止性と起泡性の観点から、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を基準に、0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%が
より好ましい。
さらに本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、水、水溶性溶剤、カチオン性界面活性剤、着色剤、香料、防食剤等を配合することができる。
水としては、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。
水溶性溶剤としては、メタノールやブタノール等の炭素数1〜4の1価アルコール類;エチレングリコールやプロピレングリコール;炭素数2〜6の(A)成分および(E)成分に含まれない多価アルコール類;ヘキシレングリコールやエチレングリコールモノエチルエーテル等の炭素数3〜8のグリコールエーテル類;ポリオキシアルキレングリコール類等が挙げられる。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物が水溶液の場合、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物のpHは、特に限定されないが、固着防止性の観点から、3〜14が好ましく、4〜13がより好ましい。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物が液状の場合、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物の粘度は、特に限定されないが、固着防止性と生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物の塗布性の観点から、0.2〜20,000mPa・sが好ましく、0.5〜10,000mPa・sがより好ましい。
<生体汚れ器具洗浄前処理方法>
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理方法は、前記生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を含有する生体汚れ器具洗浄前処理剤と、生体汚れ器具とを接触させる工程を含むことを特徴とする。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、生体汚れ器具洗浄前処理剤としてそのまま使用してもよいし、該組成物を希釈剤などで希釈して使用してもよい。
希釈する場合、固着防止性の観点から、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物として(A)成分、及び/又は(B)成分を含む場合は、(A)成分、及び/又は(B)成分の合計量は、生体汚れ器具洗浄前処理剤を基準に、0.3〜80質量%が好ましく、0.5〜70質量%がより好ましい。
また生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物として(C)成分、及び/又は(D)成分を含む場合は、(C)成分、及び/又は(D)成分の合計量は、生体汚れ器具洗浄前処理剤を基準に、0.1〜80質量%が好ましく、0.2〜70質量%がより好ましい。
さらに生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物として(A)成分及び/又は(B)成分ならびに(C)成分及び/又は(D)成分を含む場合は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計量が0.1〜80質量%であることが好ましく、0.2〜70質量%がより好ましく、0.5〜50質量%がさらにより好ましい。
希釈剤としては、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を希釈することができれば特に限定されないが、具体的には、水、グリコール系溶剤、アルコール類が挙げられる。
本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、医療器具等に付着した生体由来の汚れに対して直接接触させて使用する。接触させる方法としては、特に限定されないが、例えば、スプレーガン等の噴霧器具、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を付着させた刷毛や布等を用いて生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を接触させる方法や、生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物中に浸漬させる方法等が挙げられる。安全性や経済性、その他使用環境に合わせ、選択すればよい。
また、汚れの固着防止効果をより高めるため、処理後から洗浄前までは、蓋のついた容器で器具を保管してもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。
まず、実施例で用いた評価方法を説明する。本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物の効果を確認するために、血液汚れの固着防止性試験、尿糖検査薬を用いたブドウ糖の検出試験を行った。
(1)汚れの固着防止性試験
<疑似汚れ>
ヘパリン添加羊血液((株)日本バイオテスト研究所製)と硫酸プロタミン(ナカライテスク(株)製)1質量%水溶液を体積比で10:1 に混合した血液を疑似汚れとした。
<洗浄前処理剤組成物>
試験に供試した生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、それぞれ表1〜6に記載した成分を配合した。
水和物を形成する化合物および水を含む原料は、成分が表1〜6に記載された配合率となるように調製を行なった。水はイオン交換水を使用した。
生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、各成分を含む化合物および原料を採取した後、イオン交換水で希釈し、混合溶解した。溶解し難い場合、超音波洗浄機[製品名:ASU−6(アズワン(株))]を使用し、加熱および超音波を照射し、完全溶解した。
<試験方法>
前記疑似汚れと、前記調整した各生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物と、を体積比で1:1に混合した混合液100μLをSUS304試験板(50mm×25mm×1mm)上に20mm×20mmで薄く塗り拡げ、室温(約25℃)で24時間放置した。混合液100μL中にはタンパク質量として約70,000μg含まれる。
<評価方法>
45℃に加温したイオン交換水50mL中に前記試験板を5分間浸漬した。試験板を取り出した後、疑似汚れ付着部に対し、洗瓶を使用してイオン交換水を30秒間当てることで流水すすぎを行なった。すすぎ後、60℃に設定した乾燥機で30分間乾燥した。
超音波洗浄機[製品名:ASU−6(アズワン(株))]を使用し、乾燥表面に残留している汚れを1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液10mLに全量抽出した後、BCA法でタンパク質量(以下残留タンパク質量)を測定した。ここでタンパク質量を測定するのは固着防止効果が高いと擬似汚れが落ちやすく固着防止効果が低いと擬似汚れが落ちにくいという思想からで、擬似汚れの主成分であるタンパク質量を測定し、残留タンパク質量を器具表面への固着防止性の評価として用いた。タンパク質量70μg以下(最初に塗布したタンパク質量に対して70μg以下は0.1質量%以下に相当する)を合格とする。
(2)ブドウ糖の検出試験
<評価方法>
尿検査薬[製品名:新ウリエースGa(テルモ(株)販売)]の添付説明書に則り、ブドウ糖濃度を判定した。
具体的には、検査薬の貼り付けられたスティックを、各生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物に1秒間直接浸漬接触させ、30秒後の検査薬の色変化を5段階で読み取った。−を合格とする。
−:0mg/dL〜(検出限界以下)
±:50mg/dL
+:100mg/dL
++:500mg/dL
+++:2000mg/dL
試験結果を表1〜6に示す。表1〜6に示したように本発明の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物は、ブドウ糖の検出試験においていずれもブドウ糖が検出されず、また、汚れの固着防止性試験において残留タンパク質量がいずれも70μg以下で優れた固着防止性を示した。さらに表4の実施例40〜42の結果から、(E)成分の追加配合により固着防止性がより向上した。
以上説明したように、本発明によれば、医療機器等に付着した生体由来汚れの固着防止効果に優れ、ブドウ糖の測定を含む諸検査の偽陽性反応や測定誤差を防止した生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を提供することが可能となる。
生体由来汚れの付着する医療器具としては、鉗子、鑷子、剪刀等の鋼製小物類、医用内視鏡、医療用ロボットのマニピュレータ、透析機器等の器械類、カテーテル、チューブ等の樹脂製器具類等が挙げられ、広く利用可能である。更に、医療分野に限らず、食品工場や研究室における試験等、生体由来の汚れが器具へ付着する分野への利用も可能である。
Figure 2019014823
Figure 2019014823
Figure 2019014823
Figure 2019014823
Figure 2019014823
Figure 2019014823

Claims (9)

  1. (A)糖質(以下、「(A)成分」という)、(B)非イオン界面活性剤(以下、「(B)成分」という)、(C)有機酸もしくはその塩(以下、「(C)成分」という)、(D)無機オキソ酸もしくはその塩(以下、「(D)成分」という)から選択される少なくとも一種を含有し、前記(A)成分がアロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、炭素数3〜5の単糖類、炭素数6のケトース、二糖以上の多糖類、炭素数4〜12の糖アルコール類からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物。
  2. 前記(A)成分、及び/又は前記(B)成分を含有し、前記(A)成分がアロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、炭素数3〜5の単糖類、炭素数6のケトース、二糖以上の多糖類、炭素数4〜12の糖アルコール類からなる群から選択される少なくとも一種であり、(A)成分、(B)成分の合計量が0.3〜100質量%であることを特徴とする請求項1に記載の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物。
  3. 前記(B)成分が、高級アルコールアルキレンオキシド付加物、高級アルキル(又は高級アルケニル)アミンアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールアルキレンオキシド付加物、(モノ又はポリ)グリセロール脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物、ショ糖脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加物からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1または2に記載の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物。
  4. 前記(C)成分、及び/又は前記(D)成分を含有し、(C)成分、(D)成分の合計量が0.1〜100質量%であることを特徴とする請求項1に記載の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物。
  5. 前記(A)成分、前記(B)成分から選ばれる少なくとも1種と、前記(C)成分、前記(D)成分から選ばれる少なくとも1種とを含有し、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計量が0.1〜100質量%であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物。
  6. 前記(C)成分が、アミノ酸、アミノカルボン酸、ケト酸、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、炭素数1〜24の飽和、不飽和脂肪酸、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜5いずれか1項に記載の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物。
  7. 前記(D)成分が、リン酸塩、次亜リン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、硫酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜6いずれか1項に記載の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物。
  8. さらに下記一般式(1)(以下、「(E)成分」という)を含有することを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物。
    Figure 2019014823
  9. 請求項1〜8に記載の生体汚れ器具洗浄前処理剤組成物を含有する生体汚れ器具洗浄前処理剤と、生体汚れ器具とを接触させる工程を含むことを特徴とする生体汚れ器具洗浄前処理方法。
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