以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
図1は、実施の形態に係る画像形成装置の概略図である。図1を参照して、画像形成装置100について説明する。
図1には、カラープリンタとしての画像形成装置100が示されている。以下では、カラープリンタとしての画像形成装置100について説明するが、画像形成装置100は、カラープリンタに限定されない。たとえば、画像形成装置100は、モノクロプリンタであってもよいし、ファックスであってもよいし、モノクロプリンタ、カラープリンタおよびファックスの複合機(MFP:Multi−Functional Peripheral)であってもよい。
画像形成装置100は、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、中間転写ベルト30と、一次転写ローラー31と、二次転写ローラー33と、カセット37と、従動ローラー38と、駆動ローラー39と、タイミングローラー40と、定着装置50と、冷却装置80と、筐体90と、制御部101とを備える。二次転写ローラー33および駆動ローラー39は、二次転写装置61として機能する。
また、画像形成装置100は、第1電極部としての二次転写装置61と、第2電極部としての除電電極62と、第1検知部71と、第2検知部72と、を備える。
二次転写装置61は、搬送される記録媒体を挟み込むように設置され、電圧が印加可能に構成されている。除電電極62は、帯電された電荷が移動可能となるように記録媒体に対して非接触で配置される。除電電極62は、記録媒体の搬送方向において、二次転写装置61よりも下流側に配置されている。
第1検知部71は、二次転写装置61に流れる第1電流を検知する。第2検知部72は、記録媒体から除電電極62に流れる第2電流を検知する。第1検知部71および第2検知部72は、たとえば電流センサーによって構成されている。第1検知部71および第2検知部72による検知結果は、制御部101に入力される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、中間転写ベルト30と、一次転写ローラー31と、二次転写ローラー33と、カセット37と、従動ローラー38と、駆動ローラー39と、タイミングローラー40とによって画像形成部が構成される。この画像形成部は、後述する搬送経路41に沿って搬送される記録媒体としての用紙S上にトナー画像を形成する。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト30に沿って順に並べられている。画像形成ユニット1Yは、トナーボトル15Yからトナーの供給を受けてイエロー(Y)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Mは、トナーボトル15Mからトナーの供給を受けてマゼンタ(M)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Cは、トナーボトル15Cからトナーの供給を受けてシアン(C)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Kは、トナーボトル15Kからトナーの供給を受けてブラック(BK)のトナー像を形成する。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、中間転写ベルト30に沿って中間転写ベルト30の回転方向の順に配置されている。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、感光体10と、帯電装置11と、露光装置12と、現像装置13と、クリーニング装置17とを備える。
帯電装置11は、感光体10の表面を一様に帯電する。露光装置12は、制御部101からの制御信号に応じて感光体10にレーザー光を照射し、入力された画像パターンに従って感光体10の表面を露光する。これにより、入力画像に応じた静電潜像が感光体10上に形成される。
現像装置13は、現像ローラー14を回転させながら、現像ローラー14に現像バイアスを印加し、現像ローラー14の表面にトナーを付着させる。これにより、トナーが現像ローラー14から感光体10に転写され、静電潜像に応じたトナー像が感光体10の表面に現像される。
感光体10と中間転写ベルト30とは、一次転写ローラー31を設けている部分で互いに接触している。一次転写ローラー31は、ローラー形状を有し、回転可能に構成される。トナー像と反対極性の転写電圧が一次転写ローラー31に印加されることによって、トナー像が感光体10から中間転写ベルト30に転写される。イエロー(Y)のトナー像、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)のトナー像、およびブラック(BK)のトナー像が順に重ねられて感光体10から中間転写ベルト30に転写される。これにより、カラーのトナー像が中間転写ベルト30上に形成される。
中間転写ベルト30は、従動ローラー38および駆動ローラー39に張架されている。駆動ローラー39は、たとえばモーター(図示しない)によって回転駆動される。中間転写ベルト30および従動ローラー38は、駆動ローラー39に連動して回転する。これにより、中間転写ベルト30上のトナー像が二次転写ローラー33側に向けて搬送される。
クリーニング装置17は、感光体10に圧接されている。クリーニング装置17は、トナー像の転写後に感光体10の表面に残留するトナーを回収する。
カセット37には、用紙Sがセットされる。用紙Sは、カセット37から1枚ずつタイミングローラー40によって搬送経路41に沿って二次転写ローラー33に送られる。二次転写ローラー33は、ローラー形状を有し、回転可能に構成される。二次転写ローラー33は、トナー像と反対極性の転写電圧を搬送中の用紙Sに印加する。
これにより、トナー像は、中間転写ベルト30から二次転写ローラー33側に引き付けられ、中間転写ベルト30上のトナー像が用紙Sに転写される。二次転写ローラー33への用紙Sの搬送タイミングは、中間転写ベルト30上のトナー像の位置に合わせてタイミングローラー40によって調整される。タイミングローラー40により、中間転写ベルト30上のトナー像は、用紙Sの適切な位置に転写される。
このようにトナー像を用紙Sに転写する際に、駆動ローラー39と二次転写ローラー33との間に電圧を印加する場合には、用紙Sを通って二次転写ローラー33側から駆動ローラー39に向けて第1電流が流れる。この第1電流は、第1検知部71によって検知される。
また、二次転写の際には、用紙Sに電荷が蓄積される。用紙Sに蓄積された電荷は、搬送経路に沿って搬送される際に、用紙Sに近接するように配置された第2電極に向けて移動する。これにより、除電電極62に第2電流が流れる。この第2電流は、第2検知部72によって検知される。
制御部101は、第1検知部71によって検知された第1電流と第2検知部72によって検知された第2電流とを用いて、トナー像を用紙Sに転写させる転写条件を設定する。
定着装置50は、自身を通過する用紙Sを加圧および加熱する。これにより、トナー像は用紙Sに定着する。このように、定着装置50は、搬送経路41に沿って搬送される用紙S上のトナー画像を定着させる。トナー像が定着された用紙Sは、トレイ48に排紙される。
なお、上述では、印刷方式としてタンデム方式を採用している画像形成装置100について説明したが、画像形成装置100の印刷方式は、タンデム方式に限定されない。画像形成装置100内における各構成の配置は、採用される印刷方式に従って適宜変更され得る。画像形成装置100の印刷方式として、ロータリー方式や直接転写方式が採用されてもよい。ロータリー方式の場合、画像形成装置100は、1つの感光体10と、同軸上で回転可能に構成される複数の現像装置13で構成される。画像形成装置100は、印刷時には、各現像装置13を感光体10に順に導き、各色のトナー像を現像する。直接転写方式の場合、画像形成装置100は、感光体10上に形成されたトナー像が用紙Sに直接転写される。
図2は、実施の形態に係る二次転写装置の周辺構造を示す概略図である。図2を参照して、実施の形態に係る二次転写装置の周辺構造について説明する。
図2に示すように、接触電極としての二次転写ローラー33と、対向電極としての駆動ローラー39とによって二次転写装置が構成されている。二次転写ローラー33は、搬送される記録媒体に接触する。二次転写ローラー33は、接触電極として機能する。駆動ローラー39は、記録媒体を挟み込むように二次転写ローラー33に対向して配置される。
二次転写ローラー33および駆動ローラー39は、たとえば、芯金と、表層とで構成されている。芯金は、アルミ製または鉄製であり、パイプ形状を有する。表層は、たとえばイオン導電性ゴム材料で構成されている。イオン導電性ゴム材料としては、たとえばNBR(ニトリルゴム)、ECO(エピクロルヒドリンゴム)等をブレンドして用いることができる。駆動ローラー39は、駆動源(不図示)によって回転駆動される。また、中間転写ベルト30は、たとえばポリイミドフィルムで構成されている。
二次転写ローラー33および駆動ローラー39が挟み込まれた状態において二次転写ローラー33および駆動ローラー39との間に電圧を印加することにより、二次転写ローラー33および駆動ローラー39に第1電流としての二次転写電流が流れる。
この二次転写電流は、用紙Sの電気抵抗が小さいほど多く流れる。また、上記二次転写電流は、用紙Sの静電容量が大きいほど多く流れる。
二次転写電流が流れる経路は、以下の二通りがある。第1の経路は、二次転写ローラー33と駆動ローラー39とによって形成される転写ニップ部を通過する経路である。第2の経路は、用紙Sの搬送方向における上記転写ニップ部の上流側および下流側において、二次転写ローラー33と駆動ローラー39との間に形成される空隙を通過する経路である。
第1の経路を流れる電流は、二次転写ローラー33に印加する転写バイアスに対して、第1の経路上の電気抵抗(各ローラーの電気抵抗、用紙Sの電気抵抗、中間転写ベルト30の電気抵抗)に応じて流れる。すなわちオームの法則に従って電流が流れる。このため、用紙Sの電気抵抗が小さいほど電流は多く流れる。
第2の経路を流れる電流は、放電によって流れる。空隙で放電を起こすためには、一定以上の電圧(パッシェン則)が必要であり、用紙の静電容量が大きいほど用紙での電位損失が小さくなる。これにより、空隙での電位差が大きくなり、放電が起こりやすくなる。このため、用紙の静電容量が大きいほど電流は多く流れる。
図3は、実施の形態に係る二次転写装置に流れる二次転写電流と用紙の電気抵抗との関係を示す図である。図3を参照して二次転写装置に流れる二次転写電流と用紙の電気抵抗との関係について説明する。
図3は、厚みがそれぞれ50μm、100μm、150μmである3種類の用紙Sの電気抵抗を適宜変更させて、各用紙Sを二次転写装置に通過させた際に第1検知部71によって検知された二次転写電流を示している。
なお、二次転写装置に通過させる際のプロセススピードは、たとえば100mm/sであり、二次転写装置(より特定的には二次転写ローラー33および駆動ローラー39との間)に印加される二次転写電圧はたとえば、略3000Vである。また、ポリイミドフィルムで構成される中間転写ベルト30の厚さは、たとえば130μmであり、その体積抵抗は、略1E3Ωである。二次転写ローラー33の表層に用いられるイオン導電ゴムの厚さは、たとえば3mmであり、その体積抵抗は、略1E5Ωである。
図3に示すように、用紙Sの電気抵抗が低い領域では、電気抵抗に応じて二次転写電流が変化している。用紙Sの電気抵抗が低い領域では、二次転写ニップ部を流れる電流が支配的となる。
また、用紙Sの電気抵抗が比較的低い領域では、用紙Sの厚さに関わらず一定の電流が流れている。この場合には、用紙Sの電気抵抗が低く、相対的に中間転写ベルト30の電気抵抗、および二次転写ローラー33ならびに駆動ローラー39の電気抵抗が大きくなるため、これらが支配的となる。
一方、用紙Sの電気抵抗が高い領域では、二次転写電流は、各種の電気抵抗にはあまり依存せず、用紙Sの厚み、即ち静電容量に依存する。
二次転写ニップ部の幅を5mmとする場合には、上記100mm/sのプロセススピードでは、1/20秒で用紙Sは、二次転写ニップ部を通過する。このため、二次転写電圧である3000Vのバイアスが仮に用紙Sに印加されたとしても、1E9Ω以上の電気抵抗では、電流は3μA以下しか流れない。用紙Sの電気抵抗が高い領域で流れる電流は、むしろ放電による電流が支配的となる。このため、二次転写電流は、用紙の厚さ、すなわち用紙の静電容量の影響を大きく受けることとなる。
図4は、図3に示す関係において、二次転写電流が145μAとなる場合における用紙の各厚さおよび用紙の電気抵抗の一例を示す図である。図4を参照して、二次転写電流が所定の値となる場合における用紙の厚さおよび用紙の電気抵抗の一例について説明する。
二次転写電流が145μAである場合における、用紙の厚さ(用紙の静電容量)および用紙の電気抵抗の一例としては、図4に示すような3組が挙げられる。このため、第1検知部71によって検知された二次転写電流のみを用いるだけでは、用紙の物性(静電容量および電気的抵抗)を正確に推定することが困難となる。
ここで、本実施の形態においては、除電電極62に流れる第2電流としての除電電流を第2検知部72によって検知可能に構成されている。
図5は、実施の形態に係る除電電極の周辺構造を示す概略図である。図5を参照して、実施の形態に係る除電電極の周辺構造について説明する。
図5に示すように、二次転写ローラー33と駆動ローラー39との間に形成される二次転写ニップ部を通過した用紙Sは、二次転写時に二次転写ローラー33と駆動ローラー39との間に高電圧が印加されることにより、帯電する。
帯電された用紙Sから放電によって除電電極62に流れる除電電流は、用紙Sの電荷量と用紙の静電容量に依存する。帯電による用紙Sの電荷量は、基本的に二次転写で与えられた電荷量であるため、二次転写電流量に依存する。すなわち、帯電による用紙Sの電荷量は、用紙Sの電気抵抗と静電容量に依存する。
さらに、帯電による用紙Sの電荷量が、除電電極62に到達するまでに保持されている量が重要となる。実施の形態に係る二次転写装置61は転写ローラー方式であるため、二次転写ニップ部では、用紙の表面と裏面とでほぼ同量かつ異極性の電荷が与えられる。
このため、用紙Sの電気抵抗が低い場合には、二次転写後から除電電極62に到達するまでの間で、表面と裏面との電荷が中和されるため、除電電流が少なくなる。
一方で、除電電極62は、用紙Sの裏面側に配置されており、除電電極62への放電は、用紙Sの裏面と除電電極62の電位差が所定の値以上の電位にならないと起こらない。用紙Sに蓄えられた電荷によって生じる電位は、用紙Sと除電電極62との静電距離に依存する。
上述のように用紙Sの表面と裏面にはそれぞれ異なる極性の電荷が存在するため、異なる極性の電荷同士の静電距離が近い場合、大きな電位差を発生しない。一方で、用紙の異なる極性の電荷同士の静電距離が遠い場合には、電位差が大きくなる。つまり、用紙の表面と裏面の静電距離が大きいほど、すなわち、用紙の静電容量が小さいほど除電電流は、大きくなる。
図6は、実施の形態に係る除電電極に流れる除電電流と用紙の電気抵抗との関係を示す図である。図6を参照して、実施の形態に係る除電電極に流れる除電電流と用紙の電気抵抗との関係について説明する。
図6は、厚みがそれぞれ50μm、100μm、150μmである3種類の用紙Sの電気抵抗を適宜変更させて、各用紙Sを二次転写装置に通過させた後に、用紙Sから除電電極62に流れ、第2検知部72によって検知された除電電流を示している。
なお、二次転写装置に通過させる際のプロセススピードは、たとえば100mm/sであり、二次転写装置(より特定的には二次転写ローラー33および駆動ローラー39との間)に印加される二次転写電圧はたとえば、略3000Vである。また、ポリイミドフィルムで構成される中間転写ベルト30の厚さは、たとえば130μmであり、その体積抵抗は、略1E3Ωである。二次転写ローラー33の表層に用いられるイオン導電ゴムの厚さは、たとえば3mmであり、その体積抵抗は、略1E5Ωである。
また、除電電極62は、鋸刃形状を有し、接地電極(GND)に接続されている。除電電極62と用紙Sとの間の距離は、略0.1mmである。除電電極62は、SUSによって構成されている。
図6に示すように、用紙Sの電気抵抗と除電電流の関係は、横軸を用紙の電気抵抗とし、縦軸を除電電流とした場合に、用紙の電気抵抗の分布は、ピークを有する凸形状で表される。
用紙の電気抵抗が1E8Ω以下の領域では、用紙の電気抵抗の低下に伴って除電電流が急激に減少して、ほぼゼロになる。用紙の電気抵抗が1E8Ω以下の領域では、二次転写ニップ部で用紙Sに流れる電流が多くても、用紙Sの電気抵抗が低いことにより用紙の表面および裏面で電荷が中和されてしまう。このため、除電電極62に到達するまでに、電荷を保持することが困難となり、除電電流が減少する。
一方、用紙の電気抵抗が2E8〜3E8Ωの領域で、除電電流はピークを持ち、それ以上の領域では、用紙の電気抵抗の上昇に伴って除電電流が減少する。用紙の電気抵抗が高い場合には、二次転写ニップ部で用紙Sに流れる電流が小さくなるため、除電電流が減少する。
全体的に、用紙の厚みが厚いほど、すなわち静電容量が小さいほど、除電電流は多く流れる。これは、上述のように、用紙Sの表面と裏面との静電距離の違いによるものである。
図7は、二次転写電流と除電電流とから特定される用紙の厚さと用紙の電気抵抗との一例を示す図である。
図7に示すように、第1検知部71によって検知された二次転写電流が略145μmである場合であっても、第2検知部72によって検知される除電電流の値がそれぞれ異なる場合には、用紙の厚さ、用紙の電気抵抗もそれぞれ異なる。
このように、本実施の形態においては、二次転写電流と除電電流とを検知することにより、二次転写電流のみを検知するだけでは特定できなかった用紙の物性(静電容量および電気的抵抗)を正確に推定することができる。
厳密には、除電電流の値は用紙の電気抵抗に対してピークを持つため、ピークに対して前後のどちら側にあるのかが特定できなければ、用紙の物性を一意に決定することが困難となる場合もある。
この場合には、再度、用紙Sを搬送し、二次転写ローラー33と駆動ローラー39との間に異なる二次転写電圧を印加して、二次転写電流を第1検知部71によって検知するとともに、異なる二次転写電圧を印加した後に用紙Sから除電電極62に流れる除電電流を第2検知部72によって検知する。
用紙の電気抵抗が低いことにより除電電流が減少する領域(ピークの左側(前側))では、二次転写電圧の影響を受けにくい。一方で、用紙の電気抵抗が高いことにより除電電流が減少する領域(ピークの右側(後側))では、二次転写電圧を上げれば除電電流が上昇する。
このため、二次転写電圧を変化させて、除電電流がどのように変化するかを検知することにより、最初に測定された除電電流の値が、ピークに対してどちら側にあるかを切り分けることができる。
図8は、実施の形態に係る画像形成装置において用紙の物性を算出する際に用いるテーブルの一例を示す図である。図8を参照して、用紙の物性を算出する際に用いるテーブルの一例について説明する。
制御部101の記憶部(不図示)には、図8に示すように、用紙の物性を算出する際に用いるテーブルが格納されている。
当該テーブルにおいては、検知時にて使用する二次転写電圧、用紙の厚み、用紙の静電容量、用紙の電気抵抗、二次転写電流、および除電電流が対応付けられている。上記テーブルにおいては、検知時にて使用する二次転写電圧、用紙の厚み、用紙の静電容量、用紙の電気抵抗、二次転写電流、および除電電流の組み合わせとして、(V1、T1、Q1、R1、TI1、RI1)〜(Vn、Tn、Qn、Rn、TIn、RIn、)が記憶されている。なお、nは自然数である。
制御部101は、上記テーブルを用いて、検知時にて使用する二次転写電圧と、第1検知部71によって検知された二次転写電流、および第2検知部72によって検知された除電電流から、用紙Sの物性として用紙Sの静電容量および用紙Sの電気抵抗を推定する。
制御部101は、推定された用紙Sの静電容量および用紙Sの電気抵抗に基づいて、トナー像を用紙Sに転写させる転写条件を設定する。
なお、上記テーブルは、各種の条件を変更して予め実験を行ない作成される。また、温度、および湿度といった環境等で二次転写ローラー33および中間転写ベルト30の特性が大きく変化する場合には、各環境に対応する複数のテーブルを作成することが好ましい。用紙Sを通紙しない状態における二次転写装置における二次転写電圧と二次転写電流とのV−I特性を用いて上記テーブルを補正してもよい。
また、制御部101は、第1検知部71によって検知された二次転写電流と、第2検知部72によって検知された除電電流とを用いて、冷却装置80の冷却条件を設定する。
図9は、実施の形態に係る冷却装置の第1状態を示す概略図である。図10は、実施の形態に係る冷却装置の第2状態を示す概略図である。図9および図10を参照して、実施の形態に係る冷却装置80について説明する。
図9および図10に示すように、冷却装置80は、用紙Sの搬送方向において定着装置50の下流側に配置されている。冷却装置80は、用紙Sに転写されたトナー像が定着された後に用紙Sを冷却する。
冷却装置80は、冷却部81および押圧機構82を有する。冷却部81は、筒状形状を有し、冷却ファン(不図示)から送風される空気が冷却部81の内部を通過する。押圧機構82は、搬送される用紙Sに向けて冷却部81を押圧する。
図9に示すように、第1状態においては、冷却装置80の冷却部81は、用紙Sの搬送経路から離間して配置されている。図10に示すように、第2状態においては、冷却装置80の冷却部81は、搬送経路上に位置する用紙Sに向けて押圧される。
冷却部81が用紙Sに押圧された状態で、冷却ファンを用いて冷却部81の内部に向けて空気を送風することにより、用紙Sを冷却することができる。
制御部101は、冷却ファンの回転数、押圧具合等の冷却条件を調整することにより、用紙Sからの吸熱量を調整する。
定着後に用紙Sを冷却することにより、用紙Sからの水分の蒸発を抑制することができる。これにより、特に電気抵抗の高い用紙を使用する場合において、2面目の転写性の低下を抑制することができる。なお、電気抵抗の低い用紙を使用する場合においては、用紙Sの冷却は不要となり、冷却装置80を使用しなくてもよい。
このため、制御部101は、第1検知部71によって検知された二次転写電流および第2検知部72によって検知された除電電流に基づいて、上記冷却条件を決定することにより、冷却装置80の駆動に使用される無駄なエネルギーを低減することができる。
より具体には、制御部101は、検知された二次転写電流および除電電流を用いて用紙の電気抵抗を推定し、推定された記録媒体の電気抵抗が大きい場合に冷却装置80による用紙Sからの吸熱量を大きくする。
なお、冷却装置80は、冷却ファンによって構成されていてもよい。この場合には、制御部101は、冷却ファンの回転数等を調整することにより、用紙Sからの吸熱量を変更する。また、冷却装置80は、中実の金属ローラーによって構成されていてもよい。この場合には、金属ローラーの押圧具合を調整することにより、用紙Sからの吸熱量を変更する。
図11は、実施の形態に係る第1検知部および第2検知部によって測定された二次転写電流および除電電流と、当該二次転写電流および除電電流から算出される用紙の物性と、当該用紙の物性から決定される転写条件および冷却条件の一例を示す図である。
二次転写電流および除電電流と、当該二次転写電流および除電電流から算出される用紙の物性と、当該用紙の物性から決定される転写条件および冷却条件の一例は、図11に示す通りである。
制御部101は、たとえば、二次転写電流および除電電流と、当該二次転写電流および除電電流から算出される用紙の物性と、当該用紙の物性から決定される転写条件および冷却条件が対応付けられたテーブルを用いて、検知された二次転写電流および除電電流に基づいて、転写条件および冷却条件を決定する。
電気抵抗が高い用紙の場合には、用紙に対して電荷の付与による電界の形成が支配的となる。ここで、電荷の付与が不均一である場合、転写ニップ通過後に用紙面での沿面放電が起こり、画像ノイズが発生することが知られている。この現象は、二次転写電圧を上げて用紙に付与する電荷を均一化することで抑制することができる。
このため、本実施の形態においては、6.00E+06のように用紙の電気抵抗が高い場合には、制御部101は、二次転写電圧を3300V〜4000V程度と大きくする。電気抵抗の大きい用紙は、比較的高い電圧に対しての耐性が大きいため、二次転写電圧を大きくしても支障がない。
一方で、1.50E+06のように用紙の電気抵抗が低い用紙に、比較的高い電圧を設定する場合には、用紙内での放電によるノイズが発生しやすくなるため、二次転写電圧は、3000V〜3300V程度と低くすることが好ましい。
電気抵抗が大きい用紙に対して転写を行なう場合には、ある程度用紙の静電容量の大きさを考慮して電界を形成する。ここで、通常の用紙の場合、用紙の静電容量は、用紙が含む水分に影響される。一般的に、熱を利用した定着プロセスにおいては、定着後に用紙の温度が高いことで水分が失われ、静電容量が低下して2面目を印字する際には、転写電界不足による転写不良になりやすい。
このため、本実施の形態においては、定着後に冷却装置80を用いて用紙の冷却を行なうことにより、水分の低下とこれに伴う静電容量の低下を抑制することができる。特に、6.00E+06のように、電気抵抗の高い用紙を使用する場合において、冷却装置80を用いることにより、2面目の転写性の低下を効果的に抑制することができる。
なお、電気抵抗の高い用紙を使用する場合であっても、1.2E‐07のように静電容量の小さい用紙に対しては用紙の冷却効果が期待できないため、冷却を行なわなくてもよい。この場合には、プロセススピードを下げて対応することが好ましい。一方で、1.50E+06のように用紙の電気抵抗が低い用紙においては、用紙Sの冷却は不要となり、冷却装置80を使用しなくてもよい。
このように、用紙の物性に応じて冷却装置80の使用の有無、および吸熱量を調整することにより、冷却装置80の駆動に使用される無駄なエネルギーを低減することができる。
用紙に対して電荷を付与することにより電界を形成する場合、高圧電源の出力上限の制約等によって、通常の転写プロセスのみで付与できる電荷に制約がある場合がある。この場合には、電気抵抗の高い用紙に対しては、通常の転写プロセスを行なう前に予め用紙を帯電させてもよい。転写プロセスを行なう前に予め用紙を帯電させることにより、転写品質を向上させることができる。
1.80E+06のように用紙の電気抵抗が中程度の場合であって、かつ、静電容量が小さい場合には、二次転写電圧を大きくすることにより、転写電界の大きさを確保することができる。この場合において、二次転写電圧の出力上限の制約がある場合には、プロセススピードをたとえば半分程度に抑制することが有効である。プロセススピードを抑制することにより、二次転写ニップ部を用紙が通過する時間が長くなるため、用紙内での電荷の移動量が増加することで結果として転写電界を大きくすることができる。
なお、電気抵抗が高い用紙に対しては、プロセススピードを遅くすることはあまり効果的でないため、上述のように転写プロセスを行なう前に予め用紙を帯電させることが好ましい。
図12は、実施の形態に係る画像形成装置において転写条件を決定するフローの第1例を示す図である。図12を参照して、実施の形態に係る画像形成装置100において転写条件を決定するフローの第1例について説明する。
転写条件は、最初の一枚目の用紙または用紙の種類を変更後の最初の一枚目の用紙に画像を印刷する際に決定される。なお、用紙の物性情報(用紙の厚さおよび用紙の静電容量)は、カセット毎に記憶されるものである。
第1例は、たとえばカセットに収容された用紙のサイズがA4である場合において、最初の一枚目の用紙を印刷する際、および用紙のサイズの変更が行われた後に変更された用紙の最初の一枚目を印刷する際に、転写条件を決定するフローである。
図12に示すように、転写条件を決定するに際して、制御部101は、ステップS10にて、用紙物性の検出を開始する。次に、制御部101は、ステップS20にて、第1検知部71および第2検知部72によって検知された検知情報があるか否かを判断する。具体的には、制御部101は、二次転写電流および除電電流が検知されているか否かを判断する。二次転写電流および除電電流が検知されていないと判断された場合(ステップS20:NO)には、制御部101は、ステップS30を実施する。二次転写電流および除電電流が検知されていると判断された場合(ステップS20:YES)には、制御部101は、ステップS110を実施する。
ステップS30においては、制御部101は、用紙情報(用紙の幅、厚み)および湿度情報を取得する。制御部101は、使用されるカセットの情報、操作パネル等によって設定された内容から用紙の情報を取得する。制御部101は、湿度計から湿度情報を取得する。
次に、ステップS40において、制御部101は、ステップS30にて取得した用紙情報および湿度情報に基づいて、概ね適正と考えられる二次転写電圧を仮決定する。この際、制御部101は、用紙情報および湿度情報と二次転写電圧との関係が予め設定されたテーブルを使用する。
続いて、ステップS50において、制御部101は、画像出力指示を行なう。これにより、画像形成部によって出力すべき画像に対応したトナー像が形成される。
次に、ステップS60において、制御部101は、搬送経路に沿って用紙Sをカセットからトレイ48に向けて通紙する。
続いて、ステップS70において、二次転写電流を検知する。具体的には、用紙Sが二次転写ニップ部を通過する際に、二次転写装置を流れる二次転写電流を第1検知部71によって検知する。検知された二次転写電流は、制御部101に入力される。
次に、ステップS80において、除電電流を検知する。具体的には、二次転写ニップ部を通過して帯電した用紙Sから除電電極62に流れる除電電流を第2検知部72によって検知する。検知された除電電流は、制御部101に入力される。
続いて、ステップS90において、制御部101は、用紙の物性(より特定的には、用紙の静電容量、および用紙の電気抵抗)を推定する。この際、制御部101は、上述のように、検知時にて使用する二次転写電圧、用紙の厚み、用紙の静電容量、用紙の電気抵抗、二次転写電流、および除電電流が対応付けられたテーブルを参照して、上記用紙の物性を推定する。
なお、参照できるテーブルが内場合には、近傍のテーブルから内挿処理または外挿処理を行なうことにより補完してもよい。
次に、ステップS100において、制御部101は、転写条件として二次転写電圧を決定する。制御部101は、推定された用紙の静電容量および用紙の電気抵抗に基づいて、二次転写電圧を決定する。この際、制御部101は、上記テーブルを用いてもよいし、用紙の静電容量および用紙の電気抵抗から二次転写電圧を決定可能に予め設定された演算式を用いてもよい。
なお、ステップS100は、ステップS90の次に実施される場合を例示して説明したが、これに限定されず、ステップS90とステップS100とが同時に行なわれていてもよい。
ステップS100が終了すると、ステップS10に戻る。2枚目以降を印刷する場合には、ステップS20においては、検知情報がある(ステップS20:YES)と判断される。この場合には、ステップS110が実施される。
ステップS110においては、制御部101は、カセットの開閉があるか否かを判断する。カセットの開閉がないと判断された場合(ステップS110:NO)には、用紙の種類が変更されていないと判断される。この場合には、ステップS170が実施され、ステップS100にて決定された二次転写電圧が維持される。
カセットの開閉があると判断された場合(ステップS110:YES)には、用紙の種類が変更されていると判断される。この場合には、ステップS120が実施される。
ステップS120においては、制御部101は、変更されていると判断された用紙の情報を取得する。続いて、ステップS130において、制御部101は、取得された用紙の情報に基づいて所定のサイズであるか否かを判断する。本フローにおいては、取得された用紙のサイズがA4であるか否かを判断する。なお、用紙の情報については上記と同様に、使用されるカセットの情報、操作パネル等によって設定された内容から用紙の情報を取得する。
用紙のサイズが所定のサイズであると判断された場合(ステップS130:YES)には、カセットの開閉が行なわれたものの用紙の種類が変更されなかったと判断され、ステップS170が実施される。ステップS170では、上述のように、ステップS100にて決定された二次転写電圧が維持される。
一方、用紙のサイズが所定のサイズでないと判断された場合(ステップS130:NO)には、用紙の種類が変更されたと判断され、ステップS131が実施される。
ステップS131において、制御部101は、画像出力指示を行なう。これにより、画像形成部によって出力すべき画像に対応したトナー像が形成される。
次にステップS140において、制御部101は、検知情報(二次転写電流および除電電流)を取得する。具体的には、ステップS60同様に異なるサイズの用紙をカセットからトレイ48に向けて通紙して、用紙が二次転写ニップ部を通過する際に、二次転写装置を流れる二次転写電流を第1検知部71によって検知し、二次転写ニップ部を通過して帯電した用紙Sから除電電極62に流れる除電電流を第2検知部72によって検知する。検知された二次転写電流および除電電流は、制御部101に入力される。
続いて、ステップS150において、制御部101は、用紙の物性(より特定的には、用紙の静電容量および用紙の電気抵抗)を推定する。用紙幅がA4でない場合には、二次転写は、用紙紙幅ごとに電流の流れ込み分がことなる。このため、予め設定した用紙サイズごとの換算テーブルを用いて、検知された二次転写電流を、A4横方向の幅に対応する値に変換する。除電電流は用紙幅に比例するため、検知された除電電流をA4横方向の幅に対応する値に変換する。
制御部101は、変換された二次転写電流の値および除電電流の値に基づいて、上述のように、検知時にて使用する二次転写電圧、用紙の厚み、用紙の静電容量、用紙の電気抵抗、二次転写電流、および除電電流が対応付けられたテーブルを参照して、上記用紙の物性を推定する。
次に、ステップS160において、制御部101は、転写条件として二次転写電圧を決定する。制御部101は、推定された用紙の静電容量および用紙の電気抵抗に基づいて、二次転写電圧を決定する。この際、制御部101は、上記テーブルを用いてもよいし、用紙の静電容量および用紙の電気抵抗から二次転写電圧を決定可能に予め設定された演算式を用いてもよい。
なお、ステップS160は、ステップS150の次に実施される場合を例示して説明したが、これに限定されず、ステップS150とステップS160とが同時に行なわれていてもよい。また、ステップS160またはステップ170が行なわれた後は、ステップS10に戻る。
図13は、実施の形態に係る画像形成装置において転写条件を決定するフローの第2例を示す図である。図13を参照して、実施の形態に係る画像形成装置100において転写条件を決定するフローの第2例について説明する。
上述の第1例においては、画像印刷時に用紙物性の推定を行なったが、転写条件を決定するフローの第2例においては、転写条件は、最初の一枚目の用紙または用紙の種類を変更後の最初の一枚目の用紙に画像を形成することなく搬送する際に決定される。
用紙のカバレッジが多い場合には、二次転写電流と除電電流はトナーの帯電の影響を受けるため、カバレッジや湿度の如何によっては正確に用紙の物性を推定することができなくなる場合がある。
第2例のように、画像を形成しない状態で、二次転写電流と除電電流とを検知することにより、用紙の物性を正確に推定することができる。
また、上記第2例においては、検知された除電電流が、横軸を用紙の電気抵抗とし縦軸を除電電流とした場合における用紙の電気抵抗の分布のピークに対して前後のどちら側にあるか特定するフローが含まれている。
図13に示すように、転写条件を決定するフローの第2例は、第1例と比較した場合に、画像出力を指示するステップS50に代えて、二次転写電圧を仮決定するステップS40と用紙を通紙するステップS60との間にステップS41からステップS43が実施される点、用紙の物性が推定されるステップS90と二次転写電圧が決定されるステップS100との間に、ステップS91からステップS96が実施される点において相違する。
転写条件を決定するに際して、上記第1例と同様に、ステップS10からステップS40が実施される。
次に、ステップS41においては、制御部101は、印字情報(画像情報)を入手する。制御部101は、印字情報(画像情報)を入手することにより、両面印刷を行なうか、片面印刷を行なうかを判断する。両面印刷または片面印刷の印字情報に基づいて、後述するステップ60において、通紙の方法が決定される。
続いて、ステップS42において、制御部101は、非画像形成モードであるか否かを判断する。非画像形成モードであると判断された場合(ステップS42:YES)には、ステップS60が実施される。一方、非画像形成モードでないと判断された場合(ステップS42:NO)には、ステップS43が実施される。
ステップS43においては、非画像形成モードに設定される。たとえば、ユーザーが操作パネル等を用いて非画像形成モードを選択する。
次に、ステップS60において、制御部101は、搬送経路に沿って用紙Sをカセットからトレイ48に向けて通紙する。この際、上述のようにステップS41にて、両面印刷を行なうと判断された場合には、下記ステップS70からステップS90が行なわれた後、画像形成可能となるように両面経路を通紙される。すなわち、転写条件を決定するために通紙された用紙を、画像形成時に再度利用できるように通紙される。
一方、ステップS41にて、片面印刷を行なうと判断された場合には、トレイ48に排出するように通紙される。すなわち、転写条件を決定するために通紙された用紙は、トレイ48に排出されることとなる。この際、トレイ48に排出された用紙をカセットに戻すためのアラームを操作パネル等の表示部に表示することが好ましい。
続いて、第1例と同様に、ステップS70からステップS90が実施される。ステップS90によって用紙の物性が推定される際または、推定された後にステップS91が実施される。
ステップS91においては、制御部101は、検知情報が不足しているか否かを判断する。
第2検知部72によって検知された除電電流が、用紙の電気抵抗の分布に対してピークの近傍の値である場合には、ピークに対して低抵抗側と高抵抗側とでほぼ同程度の値となるため、低抵抗側に位置するか高抵抗側に位置するか否かを判断する必要が生じる。
この場合には、第1検知部71によって検知された二次転写電流のみでは用紙の物性を正確に推定することが困難となり、制御部101は、検知情報が不足すると判断する。具体的には、たとえば、制御部101は、検知された除電電流がピークの値の80%以上の範囲にある場合には、検知情報が不足であると判断する。一方、検知された除電電流が上記ピークの値から離れた値である場合、たとえば、検知された除電電流が上記ピーク値の80%よりも小さい場合には、検知情報が不足していないと判断される。
検知情報が不足していないと判断された場合(ステップS91:NO)には、ステップS100が実施される。
検知情報が不足していると判断された場合(ステップS92:YES)には、ステップS92が実施される。ステップS92においては、制御部101は、二次転写電圧を変更する。たとえば、制御部101は、二次転写電圧を数百V高くする。
次に、ステップS93において、制御部101は、搬送経路に沿って用紙Sをカセットからトレイ48に向けて通紙する。上記のように、両面印刷と判断された場合には、ステップS60にて通紙された用紙を再度通紙する。一方、上記のように、片面印刷と判断された場合には、トレイ48に排出されてカセットに戻された用紙を通紙する。なお、トレイ48に排出された用紙がカセットに戻されていない場合には、次の用紙を通紙してもよい。
続いて、ステップS94において、二次転写電流を検知する。具体的には、用紙Sが二次転写ニップ部を通過する際に、二次転写装置を流れる二次転写電流を第1検知部71によって検知する。検知された二次転写電流は、制御部101に入力される。
次に、ステップS95において、除電電流を検知する。具体的には、二次転写ニップ部を通過して帯電した用紙Sから除電電極62に流れる除電電流を第2検知部72によって検知する。検知された除電電流は、制御部101に入力される。
続いて、ステップS96において、制御部101は、用紙の物性(より特定的には、用紙の静電容量、および用紙の電気抵抗)を推定する。
二次転写電圧を変更した場合には、用紙の電気抵抗が低いことにより除電電流が減少する領域(ピークの左側(前側))では、二次転写電圧の影響を受けにくく、一方で、用紙の電気抵抗が高いことにより除電電流が減少する領域(ピークの右側(後側))では、二次転写電圧を上げれば除電電流が上昇する。
このため、二次転写電圧を変化させて、除電電流がどのように変化するかを検知することにより、最初に測定された除電電流の値が、ピークに対してどちら側にあるかを切り分けることができる。
制御部101は、上記の切り分けを行ない、検知時にて使用する二次転写電圧、用紙の厚み、用紙の静電容量、用紙の電気抵抗、二次転写電流、および除電電流が対応付けられたテーブルを参照して、用紙の物性を推定する。
次に、ステップS100において、制御部101は、転写条件として二次転写電圧を決定する。制御部101は、推定された用紙の静電容量および用紙の電気抵抗に基づいて、二次転写電圧を決定する。この際、制御部101は、上記テーブルを用いてもよいし、用紙の静電容量および用紙の電気抵抗から二次転写電圧を決定可能に予め設定された演算式を用いてもよい。
なお、第2例において、ステップS91において、検知情報が不足していないと判断された場合には、初回の検知情報(初回に検知された二次転写電流および除電電流)のみを用いて二次転写電圧を決定する場合を例示して説明したが、これに限定されない。二次転写電圧を決定後に用紙を通紙して画像を形成する際に、二次転写電流および除電電流を測定し、除電電流がどのように変化するかを検知することにより、最初に測定された除電電流の値が、ピークに対してどちら側にあるかを切り分けてもよい。当該切り分けを実施した後に、用紙の物性を推定し、次以降に印刷する際の転写条件として二次転写電圧を決定してもよい。
図14は、実施の形態に係る画像形成装置において転写条件および冷却条件を決定するフローの第3例を示す図である。図14を参照して、実施の形態に係る画像形成装置100におい転写条件および冷却条件を決定するフローの第3例について説明する。
上述の第2例においては、非画像形成モードにおいて、転写条件を決定するための二次転写電流および除電電流を検知して転写条件を決定したが、転写条件および冷却条件を決定するフローの第3例においては、画像形成モードにおいて、転写条件を決定するための二次転写電流および除電電流を検知して転写条件を決定するとともに、冷却条件を決定する。
図14に示すように、第3例は、第2例と比較した場合に、ステップS42およびステップS43に代えてステップS42AおよびステップS50が実施され、さらにステップS100の後にステップS180が実施される点において相違する。
第3例においては、転写条件および冷却条件を決定するに際して、上記第2例と同様に、ステップS10からステップS41が実施される。
次に、ステップS42Aにおいて、制御部101は、1枚目から実施するか否かを判断する。すなわち、制御部101は、用紙Sに画像形成を実施する画像形成モードであるか否かを判断する。
1枚目から実施すると判断された場合(ステップS42A:YES)には、ステップS50が実施される。ステップS50においては、制御部101は、画像出力指示を行なう。これにより、画像形成部によって出力すべき画像に対応したトナー像が形成される。続いて、第2例同様に、ステップS60以降が実施される。
一方、1枚目から実施しないと判断された場合(ステップS42A:NO)には、非画像形成モードによって転写条件および冷却条件を決定すると判断される。この場合には、第2例同様に、ステップS60以降が実施される。
二次転写電圧が決定されるステップS100が実施された後には、ステップS180が実施される。なお、ステップS180は、ステップS100と同時に行なわれてもよい。
ステップS180においては、制御部101は、冷却条件として冷却ファンの回転数を決定する。具体的には、制御部101は、検知された二次転写電流および除電電流を用いて用紙の電気抵抗を推定し、推定された用紙の電気抵抗が大きい場合に冷却装置80による用紙Sからの吸熱量を大きくする。
定着後に用紙Sを冷却することにより、用紙Sからの水分の蒸発を抑制することができる。これにより、特に電気抵抗の高い用紙を使用する場合において、2面目の転写性の低下を抑制することができる。
一方で、制御部101は、用紙の電気抵抗が低い場合には、たとえば用紙Sの冷却は不要であると判断し、冷却ファンの回転数を低減させたり、冷却ファンを停止させたりする。これにより、消費電力を削減することができる。
図15は、実施の形態に係る第1検知部および第2検知部によって検知された二次転写電流および除電電流と、検知された二次転写電流および除電電流から、用紙の物性、転写条件、および冷却条件を決定する際に用いられるテーブルの一例を示す図である。
上述のように、ステップS180にて、冷却条件として冷却ファンの回転数を決定する場合には、たとえば図15に示すような、検知された二次転写電流、除電電流、用紙の静電容量、用紙の電気抵抗、転写条件としての二次転写電圧、および、冷却条件としての冷却ファン回転数が対応付けられたテーブルを用いる。
制御部101は、検知された二次転写電流が所定の値(同じ値)であっても、検知された除電電流に応じて冷却ファン回転数を適宜設定する。また、制御部101は、検知された除電電流が所定の値(同じ値)であっても、検知された二次転写電流に応じて冷却回転数を適宜設定する。これにより、冷却条件を適切に設定することができる。
図16は、実施の形態に係る画像形成装置において転写条件および冷却条件を決定するフローの第4例を示す図である。図16を参照して、実施の形態に係る画像形成装置100において転写条件および冷却条件を決定するフローの第4例について説明する。
転写条件および冷却条件を決定するフローの第4例においては、上記第3例と比較して、ステップS92にて二次転写電圧を変更後にステップS95で検知した除電電流と、二次転写電圧変更前にステップS80にて検知した除電電流とを比較して、異常が検知された場合に、当該異常を報知する点において主として相違する。
二次転写電流は、無通紙時にバイアスを印加することにより、環境やローラー抵抗に応じた自動補正を行なうことができる。このため、二次転写電流として異常がある場合には、この補正の際に検知することができる。
一方で、除電電流に関しては、無通紙状態においては異常を検知することができない。また、用紙の物性が分かっていなければ、通紙時であっても測定された除電電流だけでは異常を検知することが困難である。用紙の電気抵抗が低い場合には除電電流は流れにくいため、異常があって流れていないのか、用紙の抵抗が低くて流れていないのか切り分けができない場合がある。除電電流に関する異常としては、たとえば、用紙の紙粉および異物による導通不良が挙げられる。
本実施の形態においては、検知された二次転写電流と除電電流との双方の値を用いて、用紙の物性を推定しているため、除電電流に関する異常が発生した場合には、誤って用紙の物性を推定してしまう可能性がある。そこで、第4例においては、上述のように除電電流に関する異常を検知できるフローとなっている。
具体的には、第4例においては、変更前後で印加した互いに異なる二次転写電圧のうち高い方の電圧を印加した際に第2検知部72によって検知された除電電流が、互いに異なる二次転写電圧のうち低い方の電圧を印加した際に第2検知部72によって検知される除電電流よりも大きく無い場合に、画像形成装置に備えられた報知部が異常を報知する。
また、第4例においては、報知部によって異常が報知された場合に、画像形成処理を停止するか、第1検知部71によって検知された二次転写電流のみを用いて二次転写電圧を設定する。
図16に示すように、上記第4例は、上記第3例と比較した場合に、ステップS191からステップS193が実施される点において相違する。
第4例においては、転写条件および冷却条件を決定するに際して、上記第3例と同様に、ステップS10からステップS96が実施される。
ステップS96が実施されると、ステップS190が実施される。ステップS190においては、制御部101は、除電電流に関する異常が発生しているか否かを判断する。具体的には、制御部101は、二次転写ローラー33と駆動ローラー39との間に印加した互いに異なる二次転写電圧のうち高い方の電圧を印加した際に第2検知部72によって検知された除電電流が、互いに異なる二次転写電圧のうち低い方の電圧を印加した際に第2検知部72によって検知される除電電流よりも大きくなっているかを判断する。
互いに異なる二次転写電圧のうち高い方の電圧を印加した際に検知された除電電流が、互いに異なる二次転写電圧のうち低い方の電圧を印加した際に検知された除電電流よりも大きい場合には、異常が発生していないと判断される。
一方、互いに異なる二次転写電圧のうち高い方の電圧を印加した際に検知された除電電流が、互いに異なる二次転写電圧のうち低い方の電圧を印加した際に検知された除電電流よりも大きくない場合には、異常が発生していると判断される。
除電電流に関する異常が発生していないと判断された場合(ステップS190:NO)には、ステップS100が実施される。
一方、除電電流に関する異常が発生していると判断された場合(ステップS190:YES)には、ステップS191が実施される。
ステップS191においては、報知部が除電電流に関する異常を報知する。具体的には、表示パネル等に異常が表示されるか、有線または無線通信を用いて保守サービス会社等に異常が報知される。
次に、ステップS192において、検知された除電電流の値を使用せずに、第1検知部71によって検知された二次転写電流の値のみを用いて、二次転写電圧を暫定的に決定する。続いて、ステップS193において、冷却ファンの回転数を暫定的に決定する。
なお、ステップS192およびステップS193は、同時に実施されてもよく、ステップS191、ステップS192、およびステップS193も同時に実施されてもよい。
以上のように、本実施の形態に係る画像形成装置にあっては、第1検知部71によって検知された二次転写電流と第2検知部72によって検知された除電電流とを用いて、トナー像を記録媒体に転写させる転写条件を設定することにより、二次転写電流および除電電流のいずれか一方を検知して転写条件を設定する場合と比較して、精度よく転写条件を設定することができる。
また、転写条件を設定する際に、検知された二次転写電流と除電電流とを用いて、用紙の電気抵抗および静電容量を推定し、推定された用紙の電気抵抗および静電容量に基づいて転写条件を設定することにより、用紙の電気抵抗および静電容量のいずれか一方では一意に決定することが困難な転写条件を精度よく転写条件を設定することができる。
なお、本実施の形態においては、搬送される用紙に接触する接触電極および搬送される用紙を挟み込むように接触電極に対向して配置される対向電極を含む第1電極部が二次転写装置によって構成されている場合を例示して説明したが、これに限定されない。
接触電極および対向電極によって用紙が挟み込まれた状態において接触電極および対向電極に電圧を印加できるように構成される限り、接触電極および対向電極が板状に形成されていてもよいし、ローラー状に形成されていてもよい。この場合には、接触電極および対向電極は、用紙の搬送方向において二次転写装置の上流側に配置されていてもよいし、二次転写装置の下流側に配置されていてもよい。
なお、上述のように第1電極部を二次転写装置によって構成する場合には、部品点数を削減できる。
用紙に帯電された電荷が移動可能となるように用紙に非接触で配置される第2電極部が除電電極によって構成される場合を例示して説明したが、これに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
以上、今回発明された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。